ソフトバンク(★1対2☆)阪神 =日本シリーズ1回戦(2025.10.25)・みずほPayPayドーム福岡=
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阪神
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ソフトバンク
1000000001800
勝利投手:村上 頌樹(1勝0敗0S)
(セーブ:石井 大智(0勝0敗1S))
敗戦投手:有原 航平(0勝1敗0S)
  DAZN
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◆阪神がシリーズ初戦を制した。阪神は1点を追う6回表、佐藤輝の適時二塁打などで2点を挙げ、試合をひっくり返す。投げては、先発・村上が7回1失点の好投。その後は及川、石井とつないでリードを守った。敗れたソフトバンクは、打線が相手を上回る8安打を放つも、初回の1得点のみとつながりを欠いた。

◆今年こそ! 日本シリーズが25日にみずほペイペイドームで開幕する。2年連続出場のソフトバンク小久保裕紀監督(54)は、先行逃げ切りを理想に掲げ5年ぶりの日本一奪還を誓った。セ・リーグを圧倒的な強さで制した阪神では中軸のドラ1トリオとNPB最長50試合連続無失点を樹立した石井大智投手(28)ら勝ちパターン投手を警戒。虎の必勝パターンを封じ、昨年の日本シリーズ敗退の雪辱を果たす。小久保監督は同じ名球会メンバーの阪神藤川監督との頂上決戦に胸を躍らせた。「2年前の名球会では同じテーブルだった。まさか2年後にこういう舞台でこうなっているとは夢にも思わなかった」。2年ぶりのセ・パ王者同士の対決。打倒阪神へのシミュレーションはバッチリだった。打撃陣では森下、佐藤輝、大山のドラ1トリオを「チームの中心となっていて軸がしっかりしたチーム」と分析。投手陣では初戦に先発するエース村上を筆頭にあげ「2軍監督時代に鳴尾浜でよく見ていた村上君。あそこまで伸びるか、という印象」と急成長ぶりに驚いた。さらに「なんといっても」と切り出したのは盤石勝ちパターン。「レギュラーシーズンでほとんど点を取られなかった石井、クローザー岩崎を出させないのも勝つために必要」。石井はNPB最長50試合連続無失点で防御率0・17。岩崎は守護神として31セーブをあげている。先行逃げ切りを理想に掲げ「もちろん、ホークスはそういう戦いですから」と言い切った。虎の必勝パターンを封じながら、こちらは藤井、松本裕、杉山のリレーで逃げ切る。「我々の戦いに持っていくことが一番大事。今年の中盤以降、非常に活躍した藤井、松本、杉山で締めくくるのがホークスの野球。その形に持っていくことが一番大事」。打線については「臨機応変、変幻自在」と日替わりオーダーも辞さない。先制点を奪い、僅差でも最大3連戦の日本シリーズを勝ち切る。左脇腹痛から1軍復帰した近藤も準備完了だ。「泣いても笑っても1週間で終わり。選手を信じ切って、みんなへとへとで力を振り絞った戦いをやって、最後は日本一をつかみたい」。昨年のDeNAとの日本シリーズでは2連勝から4連敗で敗退。再び頂上決戦にたどり着いた小久保ホークスが、今年こそ栄冠をつかみきる。【只松憲】(1)サスペンデッド・ゲームは行わない。(2)第7戦までは延長12回で打ち切り。第8戦以降は延長回の制限なし。(3)雨天などで中止の場合、その球場で順延とする。第1、2戦で中止の場合は、1日移動日を設け第3戦を行う。その際第5、6戦の間に移動日は設けない。第3戦以降に中止の場合も、第5、6戦の間の移動日は設けない。(4)引き分けがあり、第7戦で優勝が決定しない場合は、翌日に第7戦を行った球場で第8戦を行う。さらに第9戦が必要な場合は、1日移動日を設け、もう一方のチームの球場で行う。(5)パ本拠地ではDH制を採用。(6)全試合で予告先発を採用。

◆今年こそ! 日本シリーズが25日にみずほペイペイドームで開幕する。2年連続出場のソフトバンク小久保裕紀監督(54)は、先行逃げ切りを理想に掲げ5年ぶりの日本一奪還を誓った。セ・リーグを圧倒的な強さで制した阪神では中軸のドラ1トリオとNPB最長50試合連続無失点を樹立した石井大智投手(28)ら勝ちパターン投手を警戒。虎の必勝パターンを封じ、昨年の日本シリーズ敗退の雪辱を果たす。小久保監督は23日のドラフト会議で1位指名し、交渉権を獲得した米スタンフォード大の佐々木麟太郎内野手(20=花巻東)について「来年の戦力にはならないけど、その先の将来性を考えて」と言及した。事前にフロント陣から佐々木1位指名の方針を聞いていたというが「僕が考えることじゃない。思考は巡らせていない」と一任していたことを強調した。

◆ソフトバンク柳町達外野手(28)が完全燃焼を誓った。CSファイナルステージでは打率4割1分7厘で日本シリーズ進出に貢献。シーズン打率2割9分2厘、リーグトップの出塁率3割8分4厘を残した実力を発揮した。前日練習を終え「もう戦いは短いので。一瞬で過ぎていくと思うので頑張ります」と気合を入れた。

◆頂上決戦に向けソフトバンク山川穂高内野手(33)が静かに闘志を燃やした。「明日になったら(気持ちも)高鳴るんじゃないですか」。この日の打撃練習では快音を響かせ、見守った王会長からも「キレがいいぞ」と声をかけられた。19日のCSファイナル第5戦では左中間へ豪快に1発を放っており、打撃上昇の手応えもある。「どういう場面で出たり、(打席が)回ってくるかは分からないですけど、いい準備をしたい」と気持ちを高めた。

◆ソフトバンク選手会長の周東佑京内野手は体を張って勝利に貢献する。背部痛からCSファイナルで復帰したばかりだが「この時期に体の状態がいい人なんて多分いない。やるだけかなと思います」と自らを鼓舞した。シリーズでは1番スタメンが濃厚。「1番だから流れがどうとかはない。全員が打てればいいだろうけど、打てない時もある。そんなに構えないでやることをしっかりやるだけ」と平常心で最終決戦に挑む。

◆パ・リーグの本拠地で開幕する。セ・リーグ王者の阪神にとってはDHの使い方が1つのカギになる。今年の交流戦ではラモン・ヘルナンデス内野手(29)が4試合で最多。豊田寛外野手(28)が3試合、糸原健斗内野手(32)と森下翔太外野手(25)が1試合ずつ。オリックスと対戦して4勝3敗だった前回23年の日本シリーズは渡辺諒内野手(30)、ヨハン・ミエセス外野手(30)、糸原、原口文仁内野手(33)の順で1試合ずつDHを務めた。ソフトバンクの先発は右腕の有原航平投手(33)。チームは長らく対戦がなく相性のデータも少ない。有原は今季、対左打者の被打率が2割7分6厘と、対右より5分高い。

◆日本シリーズがきょう25日に開幕する。阪神とソフトバンクによるセ・パ1位同士の対決。6月に行われた交流戦では2勝1敗でソフトバンクが勝ち越しに成功した。第1戦はソフトバンクが2-1で勝利。1-1の延長10回に石塚綜一郎捕手(24)が勝ち越し打を放った。先発したリバン・モイネロ投手(29)は6回8安打1失点。阪神先発の村上頌樹投手(27)に対しては8回1失点と抑え込まれたが、野村勇内野手(28)がチームで唯一マルチ安打を放った。第2戦は阪神が勝利。1回に佐藤輝明内野手(26)、小幡竜平内野手(25)の適時打で3点先制し、そのまま3-0で逃げ切った。ソフトバンク打線は阪神先発の大竹耕太郎投手(30)の前に6回途中1安打無失点と沈黙。元タカ戦士に抑え込まれて完封負けとなった。第3戦はソフトバンクが3-1で勝利し、交流戦優勝を決めた。ジーター・ダウンズ内野手(27)、中村晃外野手(35)の適時打が飛び出し、先発した松本晴投手(24)も5回1失点(自責0)と粘った。第1戦から1点差→3点差→2点差と3試合とも3点差以内の接戦。日本シリーズでも息詰まる接戦が予想される。

◆パ・リーグ王者のソフトバンクはセ王者の阪神と日本シリーズを戦う。交流戦では2勝1敗で勝ち越し。中軸を打つ森下翔太外野手(25)を10打数無安打に抑えて仕事をさせなかった。一方で1番の近本光司外野手(30)に対しては12打数4安打、2番の中野拓夢内野手(29)には9打数4安打を許している。虎の1、2番コンビを封じることができるかが勝敗のカギを握りそうだ。森下と同じく中軸の佐藤輝明内野手(26)には13打数3安打、大山悠輔内野手(30)には9打数3安打と、言わずもがなこちらも警戒は必須になる。阪神と交流戦を行った6月20日~22日は柳田悠岐外野手(37)、近藤健介外野手(32)、山川穂高内野手(33)が不在だった。柳田は「右脛骨(けいこつ)骨挫傷」でリハビリ中、近藤は左足のかかとを痛めて出場できず、山川は打棒を取り戻すための2軍調整期間だった。3試合連続3点差以内の接戦だった交流戦の最終カード。鷹打線の中軸を担う3人は今季初の阪神戦となる。

◆ソフトバンク小久保裕紀監督(54)が左脇腹痛から1軍復帰した近藤健介外野手(32)のスタメン起用を明言した。試合前取材に対応し「その予定です」と明かした。また、中村晃外野手(35)についてはコンディション不良でこの日の出場は難しい見込み。指揮官は「今日はアクシデント。でも今年はそういう年」と話した。スタメンについては「違うバージョンで組みなおしました」と語った。

◆ソフトバンク小久保裕紀監督(54)が母校の青学大を祝福した。青学大は前日24日に6季連続18度目の優勝。中日に1位指名された中西聖輝投手(4年=智弁和歌山)の完封劇で頂点に立った。指揮官は「すごいね。6連覇。中西がよく投げたね」とうれしそうだった。

◆阪神は"博多初勝利"を挙げて、2年ぶりの日本一へ勢いをつけられるか。阪神は南海、ダイエー時代を含めて日本シリーズで過去3度ソフトバンクと対決したが、1度も日本一にはたどり着けなかった。さらに博多に移ってからの敵地での試合は、これまで7戦7敗と1度も勝てていない。史上最速のリーグ優勝を成し遂げた猛虎軍団で"博多の呪縛"を解きたいところ。藤川球児監督(45)は前日24日の会見で「私たちは、ビジターに乗り込んでゲームをするというのは非常にワクワクしています。得意とするチームであります」と敵地での試合を心待ちにしていた。★阪神対ソフトバンクの日本シリーズ64年南海(鶴岡一人監督)○●●○●○○阪神(藤本定義監督)関西本拠地のチーム同士では初のシリーズ。3完封の南海スタンカが外国人投手で初のMVP。03年ダイエー(王貞治監督)○○●●●○○阪神(星野仙一監督)ダイエーが福岡ドーム、阪神が甲子園で勝つ初の「内弁慶シリーズ」。第7戦は新人の和田毅が完投勝利。MVPは2勝の杉内。14年ソフトバンク(秋山幸二監督)●○○○○阪神(和田豊監督)阪神は公式戦2位からCSを勝ち上がり進出。第1戦ではメッセンジャーが7回2失点の好投で先勝したが、第2戦以降は4試合連続で5安打以下に抑えられた。内川がMVP。

◆ソフトバンク中村晃外野手(35)が右股関節のコンディション不良で別メニュー調整となった。試合前の練習に姿を見せず、この日は欠場する見込み。小久保裕紀監督(54)は「今日はアクシデント。今日はとにかく無理」と話した。スタメン起用する予定だったが、急きょ変更を余儀なくされた。中村は日本ハムとのCS第4戦で一塁塁審と衝突し、試合中に救急搬送されるアクシデントがあった。同6戦で2試合ぶりにベンチ入り。前日24日の全体練習には参加していた。

◆2年ぶりの日本シリーズ初戦先勝を目指す阪神は、定番の1番近本光司外野手(30)から5番大山悠輔内野手(30)に、指名打者(DH)に高寺望夢内野手(23)を加えた。高寺は5年目の今季67試合に出場し、2本塁打7打点4盗塁、打率2割3分1厘と頭角。パ・リーグ本拠地での打線のキーマンに指名された格好だ。また左翼には23年の日本シリーズ出場経験のある島田海吏外野手(29)を起用した。先発は今季最多勝、最高勝率、最多奪三振の投手3冠に輝いた村上頌樹投手(27)。23年日本シリーズではオリックス山本由伸投手(27=現ドジャース)と投げ合い1勝1敗と分けた実績十分の右腕を送り込んだ。

◆ソフトバンクの日本シリーズ第1戦のスタメンが発表された。左脇腹痛で戦列を離れていた近藤健介外野手(32)が「4番DH」でスタメン復帰。柳田悠岐外野手(37)は「1番左翼」で先発出場する。また中村晃外野手(35)は右股関節コンディション不良でベンチから外れた。先発は今季14勝(9敗)をマークし、2年連続でパ・リーグ最多勝の有原航平投手(33)がマウンドに上がる。

◆ソフトバンク近藤健介外野手(32)が復活の先制打を放った。「4番DH」でスタメン出場し、0-0の1回2死二塁で中前適時打。左脇腹痛で出場は9月26日の楽天戦(楽天モバイルパーク)以来だが、1カ月のブランクを感じさせない打棒を披露した。近藤は「打ったのは真っすぐです。先制のチャンスで絶対にランナーをかえそうと集中しました。しっかりスイングを仕掛けにいった中で、いいアプローチができたと思います。とにかく大事な先制点を取ることができて良かったです。日本シリーズ1戦目を勝ちにもっていけるように、自分たちの野球をしていきたいと思います」とコメントした。試合前に小久保裕紀監督(54)は「万が一再発したとしても、どっちにしても今年は(シーズンが)終わりなので。再発しないのが一番だけど、本人が行けるなら行こうと」と起用の意図を説明していた。

◆阪神先発の村上頌樹投手(27)が「遅球」で敵地・みずほペイペイドームのスタンドを沸かせた。2回2死の場面、ソフトバンク牧原大成内野手(33)への初球、外角へ59キロカーブを投球し、ストライクを奪った。

◆日本シリーズの初安打は阪神森下翔太外野手(25)のバットから生まれた。初回2死から有原航平投手(33)の甘い149キロをフルスイング。鋭く三塁線を抜く二塁打となった。佐藤輝明内野手(26)が三振に倒れて先制点は奪えなかった。23年のオリックスとの頂上決戦では日本シリーズ新人記録の7打点を挙げたお祭り男。試合前には場内を暗転しての選手紹介演出があり、藤川球児監督とスタメン野手はボードの前で腕組みして待機。1人ずつ呼び込まれた。カメラでアップになった森下は、両目に指をかざすアイブラックポーズを見せて博多の阪神ファンを喜ばせていた。

◆阪神村上頌樹投手(27)が大舞台で59キロの超遅球でストライクを奪った。虎のエース右腕は初回に1点を失点する立ち上がり。2回2死無走者で9番栗原大を迎えると初球に59キロのスローボールでストライク。2球目137キロツーシームでボテボテの三ゴロに打ち取り3者凡退を完成させた。村上は今季超遅球も駆使しながら最多勝、最高勝率、最多奪三振の投手3冠に輝いた。23年日本シリーズではオリックス山本由伸投手(27=現ドジャース)と投げ合い1勝1敗と分け、この日はシリーズ3度目の登板になる。

◆審判にとっても晴れ舞台の日本シリーズ。第1戦の球審を務めたのはベテラン敷田直人。この日が54歳の誕生日だった。見逃し三振の際に両腕を曲げて、体を傾ける「卍」のようなポーズを作ることで有名。3回に阪神坂本誠志郎捕手(31)、その裏にはソフトバンク柳町達外野手(28)、近藤健介外野手(32)と2連続で卍ポーズを決めた。

◆阪神島田海吏外野手(29)が起用に応えた。DHが誰になるかが注目されていたが、初戦は左翼でのスタメンが濃厚とみられた高寺望夢内野手(22)が「7番DH」。そして島田が「6番左翼」に入る意外な組み合わせとなった。0-1の5回先頭で、しぶとく二遊間に転がし、快足を飛ばして内野安打をつかんだ。さらに二盗も決めてチャンスを作った。左翼席の阪神ファンは大盛り上がりだった。島田は今季、28試合の出場。スタメンはわずか4試合。8月8日が最後の1軍出場だった。

◆阪神の自慢の3、4番コンビがついに有原航平投手(33)をとらえた。0-1の6回無死二、三塁から森下翔太外野手(25)が遊ゴロを転がして同点。さらに佐藤輝明内野手(26)が右中間に二塁打を放って2-1と逆転に成功した。40本塁打、102打点でセ・リーグ冠王に輝いた佐藤輝は、二塁塁上で両手を大きくたたいて喜びを表現した。

◆また阪神近本光司外野手(30)の足が試合を動かした。有原航平投手(33)を打ちあぐね、0-1で6回へ。先頭の近本はこの日2本目となる中前打で出塁。次の中野拓夢内野手(29)の初球に完璧なスタートを切り、二盗に成功した。中野はバント安打で続き、二盗。無死二、三塁から森下翔太外野手(25)が遊ゴロを放って同点とした。さらに佐藤輝明内野手(26)の二塁打で逆転に成功した。近本はDeNAとのCSファイナル初戦でも意表を突く三盗を決めて先制点を導いていた。シリーズ全体の流れを決めたといえるビッグプレーだったが、今回の盗塁も敵地の重たい空気を一変させる効果があった。

◆ソフトバンク柳田悠岐外野手(37)が5回の第2打席で右前に安打を放ち、8度目の日本シリーズも安打をマークした。「1番・左翼」でスタメン出場。5回1死、1ボールから阪神村上のカーブを右前へはじき返した。昨年の日本シリーズでは全6試合に出場し打率3割2分(25打数8安打)、1本塁打、2打点。20年のシリーズでも打率4割2分9厘(14打数6安打)、1本塁打、3打点と打ちまくっている。柳田は14、17、18、20年と4度優秀選手賞に選ばれているが、まだMVPはない。

◆阪神ファンがジェット風船の演出を楽しんだ。甲子園では新型コロナ禍以来、禁止となり、来年から解禁になることが決まっている。ただ、みずほペイペイドームではすでに解禁されている。ビジターも同様で、それを知っていた阪神ファンはドーム内に持ち込み、7回表の攻撃前に「六甲おろし」が流れたあと、一斉に飛ばした。

◆CSファイナルでは不振だったソフトバンク牧原大成内野手(33)が日本シリーズは第1戦で安打を放った。7回1死走者なしでの第3打席、阪神村上の外角148キロ直球を逆らわず左前へはじき返した。育成出身で初めてリーグ首位打者を獲得したが、CSファイナルでは4試合、15打席無安打と苦しみ第6戦でようやく2安打を放っていた。この時に日本シリーズへ向け「もう1回初心に返って。持っている自分の力を出し切る」と話していたが、2戦目以降にもつながる1打となった。

◆ソフトバンク先発有原航平投手(33)が6回に逆転され降板した。味方が初回に1点を先制。5回まで3安打無失点と好投してきたが6回、近本、中野に連打と盗塁を許し、無死二、三塁から森下の遊ゴロで同点に追いつかれると続く佐藤輝に右中間へ勝ち越し適時二塁打を許した。中8日で登板し6回90球、6安打2失点。「とにかく粘り強くチームが勝てるようにしっかり投げます」と前日24日には話していたが、阪神村上より先に降りる悔しいマウンドとなった。

◆阪神が敵地で逆転勝ちし、第1戦を制した。博多で行われた日本シリーズの試合は過去7戦7敗だったが、"博多の呪縛"を解いて、2年ぶり日本一へ幸先の良いスタートを切った。初回、先発の村上頌樹投手(27)が先制点を献上。先頭のソフトバンク柳田に四球を与えると、2死二塁から近藤に先制の中前適時打を許した。打線はソフトバンク先発有原を前に5回まで散発3安打。しかし、6回に一気に襲いかかった。6回、先頭の近本光司外野手(30)が中前打で出塁。続く中野拓夢内野手(29)の初球で完璧なスタートを切り二盗に成功。さらに中野がバント安打で無死二、三塁とすると、続く森下が遊ゴロを放ち同点。そして、4番佐藤輝明内野手(26)が勝ち越しの適時二塁打を放ち、この回一気に逆転に成功した。先発の村上は初回の失点のみにとどめ、7回6安打1失点115球の熱投で白星を手にした。8回からは盤石のリリーフ陣が無失点でつなぎ、試合を締めた。

◆阪神先発の村上頌樹投手(27)が7回6安打6三振1失点で降板した。0-0の初回2死二塁、4番近藤と対戦。フルカウントからの7球目、148キロ直球を中前に運ばれ、先制適時打を許した。しかし、先制点を許したものの、その後は粘投。5回にも2死一、二塁のピンチを迎えたが、近藤を一ゴロに仕留めた。打線が6回に2点を奪って逆転に成功した。村上は115球の熱投。日本シリーズ自身2勝目(23年1勝)の権利を持った状況で降板した。今季は14勝4敗、144奪三振で最多勝、最多奪三振、最高勝率の3冠を獲得。大舞台でもエースの貫禄を見せつけた。

◆ソフトバンクが逆転負けした。第1戦を落とすのは同じく阪神と対戦した14年以来。初回、2死二塁から4番近藤健介外野手(32)が中前に適時打を放ち先制。先発有原航平投手(33)が6回に逆転され降板した。5回まで3安打無失点と好投してきたが6回無死二、三塁から森下の遊ゴロで同点に追いつかれると続く佐藤輝に右中間へ勝ち越し適時二塁打を許した。1点を追う8回2死二塁で代打山川穂高内野手(33)が四球でつなぎ、2死一、二塁とチャンスを広げたが、続く野村勇内野手(28)が左飛に倒れ、生かせなかった。

◆阪神島田海吏外野手(29)がスーパープレーを繰り出した。2-1の8回。先頭柳町達外野手(28)が左翼線に大きな飛球を放った。左翼の島田は俊足を飛ばして追いかけ、グラブの先でキャッチした。リードはわずか1点。抜けていれば無死二塁で近藤健介外野手(32)を迎えるところだった。この回はピンチを招きながら無失点。今季スタメンがわずか4試合の島田の好守がチームを救った。

◆阪神石井大智投手(28)がポストシーズン初セーブを挙げた。1点リードの8回2死二塁のピンチに2番手及川雅貴投手(24)のバトンを受け登板。代打山川に四球を与えたが、野村を初球150キロのストレートで左飛に打ち取った。9回もまたいで続投した。先頭代打今宮を空振り三振に打ち取ると、牧原大を左飛。2死から柳田に中前打を許し、周東のスイングが坂本のミットに当たる打撃妨害で出塁を許し、得点圏に同点の走者を背負った。それでも最後は柳町を中飛に打ち取り、1点差を守り切った。今季は53試合1勝0敗9セーブ、36ホールド。驚異の防御率0・17で、日本新の50試合連続無失点記録をつくった。ポストシーズンでの無失点試合を23年から12試合連続に伸ばし、日本シリーズでの初セーブを手に入れた。

◆阪神が日本シリーズ0勝の敵地で逆転勝ちし、第1戦を制した。先発村上頌樹投手(27)が7回1失点とゲームメーク。打線も1点を追う6回に森下翔太外野手(25)の同点内野ゴロ、佐藤輝明内野手(26)の勝ち越し二塁打と虎打線の主役たちがけん引した。博多で行われた日本シリーズの試合は過去7戦7敗だったが、"博多の呪縛"から脱出。2年ぶり日本一へ幸先の良いスタートを切った。

◆阪神が敵地で逆転勝ちし、第1戦を制した。博多で行われた日本シリーズの試合は過去7戦7敗だったが、"博多の呪縛"を解いて、2年ぶり日本一へ幸先の良いスタートを切った。阪神が逆転で<1>戦に勝利。過去75度のシリーズで先勝チーム(△○を含む)は46度優勝しており、V確率は61%。敵地で先勝は過去32度のうち23度優勝でV確率は72%になる。阪神の<1>戦勝利は62、85、14、23年に次いで5度目。本拠地で勝利の62、14年はV逸も、敵地で勝った85、23年は日本一になっている。また、これまでみずほペイペイドームの阪神は03年<1>戦から0勝7敗で、同球場では初勝利。同一球場連敗のシリーズワースト記録を7で止めた。村上と有原の両リーグ最多勝対決は村上に軍配。シリーズ開幕戦で両リーグの最多勝投手が先発は20年(巨人菅野対ソフトバンク千賀)以来7度目となり、セ・リーグの最多勝投手が白星は72年の堀内(巨人)対山田(阪急)で堀内が完投勝利して以来2度目だ。村上のシリーズ開幕投手は23年オリックス戦以来2度目で、前回も勝利。開幕投手で2勝以上は12人目(阪神では初)で、初の開幕投手から連勝は12、13年内海(巨人)以来7人目。

◆今季12勝のソフトバンク上沢直之投手(31)が第2戦の先発マウンドを託された。日本ハム時代にも経験のない大舞台に「初の日本シリーズのマウンドを楽しみながらチームの勝ちにつながる投球をしたい。本拠地での試合なのでファンのみなさんに楽しんでもらえるようにしたい」と、気合十分だ。今季本拠地みずほペイペイドームでは13試合に登板し7勝2敗。防御率2・11と好成績を残す。CSファイナルでは第3戦で7回途中6失点で負け投手となっただけに、今度は好投でチームを1勝1敗のタイに持ち込む。

◆25年の日本シリーズが開幕し、阪神が佐藤輝明内野手(26)の決勝打で先勝した。1点を追う6回に3番森下の内野ゴロで追いつくと、4番がソフトバンクの最多勝右腕有原から右中間へタイムリー二塁打を決めた。佐藤輝は23年の日本シリーズは1打点止まりで、これが同8戦目の初適時打。阪神はみずほペイペイドームでの日本シリーズも7戦全敗だったが、リーグ2冠が呪縛を解き放ち、会心の逆転勝ち発進に導いた。4番の佐藤輝が6回に決勝点となる勝ち越し二塁打。阪神4番がシリーズでV打は23年<4>戦でサヨナラ打の大山以来。シリーズ<1>戦で決勝打を打った4番は14年ゴメス(阪神)以来10人、15度目で、阪神では前記ゴメスに次ぎ2人目。また、敵地での<1>戦でV打を打った4番は、55年川上哲(巨人)67年長嶋(巨人)76年マルカーノ(阪急)88、94年清原(西武)に次いで5人、6度目。

◆阪神藤川球児監督(45)の起用がズバリと的中した。「面白い野球でしたね」。試合後の場内インタビューでは、満足そうにうなずいた。この日「6番左翼」に入ったのは、島田海吏外野手(29)。今季リーグ戦ではわずか先発4度のみのプロ8年目が攻守で躍動した。2回1死の第1打席では、セーフティーバントを試みわずかに及ばずアウト。5回先頭の第2打席でソフトバンク有原のチェンジアップに食らいつき、二塁への内野安打をもぎとった。さらに次打者高寺の4球目には二盗に成功。パ・リーグ王者に果敢に挑んだ。逆転に成功し、1点リードで迎えた8回には守備で見せた。先頭柳町が放った左翼後方への飛球に、走り込み後ろを向きながらキャッチ。落ちていれば長打性の当たりだっただけに、チームを救うファインプレーだった。島田は8月8日のヤクルト戦で先発して以来の出場。CSファイナルでは第3戦でベンチ入りも出場機会はなかった。「今年チームに迷惑かけてばっかりで何もできなかった。本当に監督の期待に応えたいって、それだけでした」。指揮官も「良い活躍だったんじゃないでしょうか」とねぎらいの言葉。日本シリーズでも藤川野球がさえ渡った。【磯綾乃】

◆今日こそ勝つ! 25年の日本シリーズが開幕し、パ・リーグ王者のソフトバンクは14年以来11年ぶりに初戦黒星スタートとなった。左脇腹痛から1軍復帰した近藤健介外野手(32)は1回2死二塁の好機で中前適時打。第4打席も左翼越えに二塁打を放つなど完全復活を証明した。本拠地開幕の第1戦を落としたが、主軸の復帰を追い風に第2戦こそ勝利を手にする。1点ビハインドでも勝ちパターン投手を惜しみなくつぎ込んだ。7回藤井、8回松本裕、9回杉山。3者凡退リレーで反撃を試みたが、最後まで2点目、3点目のホームが遠かった。小久保監督は「先を考えずにいきましたけどね。まぁ明日です」と切り替えた。阪神との日本シリーズが開幕。鷹VS虎のマッチアップは14年以来だが、同年以来のシリーズ初戦黒星となった。本拠地での敗戦は重くのしかかるが、左脇腹痛から1カ月ぶりに1軍出場した近藤が戦列復帰。その第1打席で快音を放つのだから恐ろしい。1回2死二塁で先制の中前適時打を放った。「しっかりスイングを仕掛けにいった中で、いいアプローチができた」。役者の快音にみずほペイペイドームが沸いた。1点を追う8回1死の第4打席では左越え二塁打。あと数センチでホームランテラスに飛び込む大飛球だった。逆方向への長打は近藤の持ち味。これには指揮官も「振れるようになっているのでね」と敗戦の中の光にうなずいた。今季序盤は腰を手術した。連覇を目指す船出で早々に離脱。同じ主軸の山川に対し「1人に背負わせてしまってますよね。相当インコースを攻められてますし」と責任感を抱いていた。復帰を急ぐ気持ちを必死に抑え、リハビリに専念した。離脱中は何かチームに貢献を、と新人や若手との会食をセッティングして打撃論を交わしたこともある。左脇腹痛から再起を目指していたCSファイナルステージ期間中も、祈る思いでチームを応援していた。紆余(うよ)曲折を経て立った晴れ舞台。25年の悔しさを一打で晴らした。ベテラン中村がコンディション不良で欠場した日本シリーズ初戦。力負けしたソフトバンクだが、近藤の帰還は追い風だ。第2戦こそ勝つ。【只松憲】

◆電撃的だった。阪神近本光司外野手(30)の足がまた試合を動かした。0-1で6回。先頭の近本は中前打で出塁。セ・リーグの4年連続盗塁王だ。相手は最大級の警戒をしていた。けん制球をはさみ、次の中野の初球。何の迷いもなく、有原の背後で完璧なスタートを切った。余裕の二塁セーフ。重い空気はどこかに消えた。こうなると王者阪神はノンストップ。中野は三塁線へのバント安打で続き、さらには二盗。無死二、三塁から森下が遊ゴロを転がして同点。さらに佐藤輝の二塁打で逆転に成功した。「楽しんで、日本シリーズを味わうしかない。楽しみしかないでしょ。勝っても負けても。どれだけ長くても7試合。今シーズン最後の7試合だから」。そう話して初戦に臨んだ切り込み隊長。緻密にして大胆なメンタルがあるから、大きな舞台でもこんなプレーが生まれる。DeNAとのCSファイナル初戦でも意表を突く三盗で、東から先制点を導いた。シリーズ全体の流れを決めたと称されたビッグプレーだった。短期決戦に強いのはコンディション調整のうまさと、解像度の高い分析力。「結局は自分がどんなプレーをするかです」が口癖だが、研究の労力は惜しまない。2年前の日本シリーズは初戦で山本由伸を打ち崩しMVPに輝いた。近本が演出した「6回表」の攻撃。のちのち振り返れば、大きな意味を持つことになる。【柏原誠】

◆阪神の今シリーズ初安打と初得点をたたき出したのは、短期決戦の申し子だった。1点を追った6回無死二、三塁で、阪神森下翔太外野手(25)がソフトバンク有原の150キロツーシームを捉えて遊ゴロ。三塁走者の近本が同点のホームを踏んだ。続く佐藤輝の決勝打を呼ぶ"同点打"になった。「何か事を起こせば1点入ると思っていた。ショートの位置は見えていた。でもどこに打とうとかではなく自分のスイングをしようと思った」と振り返った。チーム初安打も森下だ。初回2死の初打席で、プロ3年間で初対戦の有原から三塁線を破る電光石火の打球。二塁ベース上にすっくと立った。23年の日本シリーズで新人史上最多7打点をマークして優秀選手賞も受賞。今季はDeNAとのクライマックスシリーズ・ファイナルステージでMVPを獲得した。「短期決戦は最後に1点多く取っていれば勝ち。その積み重ねで日本一になれる思う」。大接戦に貢献し「森下のシリーズ開幕」を高らかに告げた。

◆阪神中野拓夢内野手(29)がバント安打で好機を広げた。1点を追う6回無死二塁。犠打を試みると勢いを殺したゴロは三塁線をコロコロ。相手守備陣は見送ったがファウルにならず、内野安打で無死一、三塁とチャンスが広がった。続く森下の打席で二塁への盗塁を成功させ、佐藤輝の適時二塁打で勝ち越しのホームを踏んだ。「小技が大事になってくると、常に自分でも言っていたのでそういう役割ができてよかった。走ったからこそ、2点目につながった」と胸を張った。

◆阪神石井大智投手(28)がポストシーズン初セーブを挙げた。1点リードの8回2死二塁で及川を救援。代打山川に四球を与えたが、野村を左飛に打ち取った。9回も続投。2死から柳田に中前打を許し、周東は打撃妨害で出塁させて2死一、二塁。サヨナラのピンチで柳町を中飛に打ち取り1点リードを守った。日本新の50試合連続無失点記録を作った実力をパ王者相手に発揮。ポストシーズンでの無失点も23年から12試合連続に伸ばし「明日も勝てるように。そこでチームの力になれるように頑張りたいなと思います」と第2戦を見据えた。

◆就任1年目の藤川球児監督(45)の采配がバッチリはまった。開幕投手、クライマックスシリーズと今季の初戦を託した先発村上頌樹投手(27)が、日本シリーズ初戦でも7回1失点とゲームメークし、ソフトバンク有原に投げ勝った。「それがエースですからね。有原投手もそうだし、両チームとも、こういうところはさすがだな、というところで。素晴らしい投げ合いでしたね」。打線も1点を追う6回にクリーンアップの看板、森下翔太外野手(25)が同点内野ゴロを決めると、続く4番佐藤輝明内野手(26)が勝ち越し二塁打で貴重な1点をもぎ取った。スタメンには6番左翼に島田海吏外野手(29)を日本シリーズスタメンに初起用。5回には得点にはつながらなかったが、内野安打で出塁し二盗も決めた。さらに8回2死一、二塁の守備では左翼線への野村の当たりを足を使って好捕。回またぎで初セーブをあげた石井大智投手(28)を援護した。「(島田は)良い活躍だったんじゃないでしょうか」とニヤリ。博多で行われた日本シリーズの試合は過去7戦7敗。"博多の呪縛"を解くミラクルを披露。就任1年目の2年ぶり日本一へ幸先の良いスタートを切った。

◆ソフトバンク藤井皓哉投手(29)が日本シリーズ初登板で1回を無失点、2奪三振の3者凡退に抑えた。1-2の7回から2番手で登板。先頭の高寺を右飛、続く坂本と小幡はともに空振り三振に仕留めた。「短期決戦とかはあまり関係なく、自分のやるべきことをしっかりやるっていうこと」。同シリーズは最大で残り6試合。「全部投げるつもりで準備したい」と話した。

◆「1番左翼」で出場のソフトバンク柳田悠岐外野手(37)がマルチ安打を放った。5回1死、1ボールから阪神村上のカーブを右前へ。「(村上は)制球がよくて、甘い球が少なかった印象」と話した。1点を追う9回2死からも中前へはじき返し粘りを見せた。昨年の日本シリーズでは打率3割2分(25打数8安打)、1本塁打、2打点。20年のシリーズでも打率4割2分9厘(14打数6安打)、1本塁打、3打点と打ちまくるシリーズ男は「また明日です」と切り替えた。

◆これぞ4番の働きだ! 25年の日本シリーズが開幕し、阪神が佐藤輝明内野手(26)の決勝打で先勝した。1点を追う6回に3番森下の内野ゴロで追いつくと、主砲がソフトバンクの最多勝右腕、有原から右中間へタイムリー二塁打を決めた。佐藤輝は23年の日本シリーズは1打点止まりで、同8戦目の初適時打が千金のV打。阪神はみずほペイペイドームでの頂上決戦で7戦全敗だったが、リーグ2冠が呪縛を解き、会心の逆転勝ち発進に導いた。嫌なムードをひっくり返したのは、阪神が誇る4番だった。敵地を埋めた虎党を佐藤輝が歓喜させた。0-1から追いついた直後の6回1死三塁。3ボールから先発有原のチェンジアップをしっかり拾い、右中間へはじき返した。直前までの2打席は無安打に抑えられたが高い対応力を発揮。打球は人工芝に勢いよく弾み、一気に二塁を陥れた。「いい形で、いいところに落ちてくれた。3回目でね、イメージもつかめたので。よかったです」有原の前に打線は5回まで無得点。だが、6回に近本と中野で無死二、三塁の好機をつくり、3番森下が遊ゴロでしぶとく同点。そして4番が最高の結果で応えた。みずほペイペイドームの三塁側は阪神ファンでビッシリ。関西からもはるばる駆けつけた虎党に最高の逆転白星発進を届けた。日本一をつかんだ23年の日本シリーズ7試合は、打率1割4分8厘。内野ゴロで挙げた1打点のみで、目立った活躍はできなかった。だが40本塁打&102打点の2冠に輝いた今季は違う。2年間の成長を初戦から見せつけ、日本シリーズ初適時打が値千金の決勝打となった。これが藤川監督の日本シリーズ1勝目。今季4番を託された主砲は、指揮官の言葉で特に印象に残っているフレーズがある。「最初から言われていた『姿勢』。ずっと言われてきたことなので、常に意識している部分ですね」マイペースな性格で、近大時代には三塁守備でも際どい打球に飛びつかず、叱られたこともしばしば。「ドロドロになれ」と怒られたこともあった。プロ5年目を迎え、チームをけん引する立場となった今季は、心身両面で分厚くなった姿を見せている。「いけると思った」と全力疾走で陥れた6回の二塁打。すべてのプレーで、指揮官の求める「姿勢」を体現している。チームは過去、みずほペイペイドームでの日本シリーズは7戦7敗だったが、"8度目の正直"で呪縛を解いた。3、4番の打点で挙げた勝利に藤川監督も「彼らの打撃で得点できたことは明日以降にもつながると思います」と目を細めた。両リーグの王者同士がぶつかる頂上決戦。虎の4番が会心のV撃で、チームを乗せた。【波部俊之介】

◆阪神村上頌樹投手(27)が雄たけびを上げた。逆転直後の6回2死走者なし。野村を低め132キロ落ち球で見逃し三振に斬ると、感情を爆発させた。2回には、牧原大から59キロ超スローボールで見逃しストライクを奪うなど持ち味全開。序盤から何度もほえ、気迫全開の7回を6安打1失点にまとめた。「楽しんで投げられた。相手も本当に強かった。初戦取りたいと思っていたので勝ててよかった」。レギュラーシーズン、CSファイナルに続き今季3度目の"開幕投手"。有原とのセパ最多勝対決を制し、23年の日本シリーズ第1戦以来の勝利投手となった。115球、粘りの熱投だった。初回2死二塁で近藤に先制の中前適時打を献上。だがその後はしっかり立て直し、2回は3者凡退で3~5回は走者を出してもホームは踏ませなかった。その踏ん張りに味方打線が応え、6回に佐藤輝の適時打などで逆転。「チームは強いので逆転してくれると信じていた」。最後も叫びながらマウンドを降りた。今季身につけた「切り替え力」が光った。23年にMVPと新人王に輝くも、昨季はリーグワーストタイの11敗で7勝止まり。「『去年は去年』と割り切ってスタートした」。昨年は、失点した場面で「あー」と引きずることもあった。だが、今年のメンタルは違う。「取られた点が0になることはない。次どう取られないか切り替えるしかない。引きずっても仕方ない」参考にしたのは自軍や相手の投手だった。「俺やったら、こう考えて投げようかな?」「ボール球見られたけど次どういくんかな?」。試合展開に沿って常に自分が投げる姿をイメージトレーニング。引き出しが増え、マウンドでも動じなくなった。シーズン26先発で複数イニングで失点したのは3試合だけ。粘りの投球をモノにしたことで打線の援護も増え、最多勝、最高勝率、最多奪三振の3冠をゲットした。この日も初回の1失点のみで逆転白星を呼び込んだ。藤川監督も「尻上がりに調子を上げて自チームの攻撃を待つ、シーズンそのままの投球。素晴らしかった。それがエースですからね」と高評価。今季3度の開幕投手はすべてチームを勝利に導いた。堂々の115球だった。【塚本光】

◆元中日監督の落合博満氏(71)が26日、TBS系テレビ「サンデーモーニング」にご意見番として出演。鮮やかな逆転勝ちで阪神が先手を奪った日本シリーズについて言及した。阪神が1点を追う6回無死一塁、打席に2番中野の場面。送りバントが定石と考えられたが、藤川監督は一塁走者・近本の単独スチールを選択した。無死二塁となってから中野が転がした絶妙なバントが安打となって好機を広げ、中軸での逆転に成功した。落合氏は「(近本は)その前、ヒットを打って走らなかった。そんなに(ソフトバンク有原の)クイックが速くないと感じでいたはず。スタートがめちゃくちゃ良かった」と分析。中野のバントについては「このバントがすべて。近本が走ったがために、うまくはまった」と勝負の潮目に挙げた。落合氏は、8回から石井がイニングをまたいだ継投についても言及。「阪神は9回、どうするのかと思っていた。9回に岩崎を投げさせなかった、ここに阪神ベンチの不安が見えなくもない。この先、岩崎をどう使うか」と指摘。その上で、両軍投手陣が持ち味を発揮した点を評価し「この先、あまり点の入らない試合が続くだろう。延長12回がラストとなれば、いいピッチャーをつぎ込んでいける」と2戦目以降を占った。

◆元中日監督の落合博満氏(71)が26日、TBS系テレビ「サンデーモーニング」にご意見番として出演。23日に行われたドラフト会議で、ソフトバンクが交渉権を獲得した佐々木麟太郎内野手(20)について言及した。中日でGMを務めた経験のある落合氏。スタンフォード大でプレーしている佐々木を指名する特殊性について「彼には4年後がある。(日米)どっちを選ぶのか、リスクを背負って指名をするか...俺が同じ立場なら、絶対にしない」と断言。日本ハムが「アメリカ一本」を明言していた花巻東の大谷翔平を強行指名し、球団にこぎつけた例を持ち出し「ダブるところがあるが(佐々木は)アメリカでやる方が強いのでは」と予想していた。

◆「SMBC日本シリーズ2025」は25日にみずほペイペイドームで開幕し、阪神とソフトバンクのセパ優勝チーム同士が顔を合わせる。阪神・藤川球児監督(45)は24日、ソフトバンク・小久保裕紀監督(54)との監督会議と前日会見に臨み、ともに今季限りで退任したヤクルト・高津監督とDeNA・三浦監督からエールを受けたことを明かし、「その人たちの気持ちをぶつけたい」と決意を語った。激戦を経て、いまがある。圧倒的な強さを示した虎の陰に、涙をのんだ同志がいる。日本シリーズの舞台でかけるのは、セ・リーグの威信。藤川監督は忘れられない〝別れの言葉〟を胸に、最終決戦へ飛び込む。「リーグ制覇をしたときには、今シーズン限りで退任されたヤクルトの高津監督、ベイスターズの三浦監督、そのお二人から『ぜひセ・リーグを代表して勝ってきてくれ』と。そういうふうな言葉をいただきました」明かしたのはソフトバンク・小久保監督と向かい合った監督会議冒頭のあいさつだった。名前を挙げた2人は、ともに日本一に導いた経験を持つ先輩指揮官。今季最後の対決を終えたときには甲子園で花束を渡したこともあったが、真剣勝負を終えた後に、日本一へ向けたエールを送られていた。「胸と胸を突き合わせて戦う。勝者も敗者もある。だけど常に気を張って、みなさん24時間、野球に時間をかけてやってきていたと思うので、その思いは大事にします」集団を率いる監督の境遇を分かち合える者として、託された願いの重さも理解するところだ。今季のセ・パ交流戦はパ・リーグの63勝に対し、セ・リーグは43勝(2分け)。阪神も8勝10敗と負け越し、「こてんぱんにやられまして」と事実は正面から受け止める。ただ、その悪しき記憶を消し去れるのも日本シリーズであり、成せるのは猛虎だけだ。「他5球団のファン、選手、スタッフ、それから退任されたお二方、監督さんを含めて、その人たちの気持ちを明日からの戦いでパ・リーグ代表のソフトバンクさんに、ホークスさんにぶつけたいと思います」。決意あふれる敵将の前での堂々宣言をもって、熱戦の火ぶたは切られた。「ビジターゲームというのは非常に、乗り込むということを、ワクワクするチームに仕上げていますから、本当にワクワクしかない。あしたが待ち遠しいですね。われわれの集中力を見てほしい」過去、福岡での日本シリーズは7戦7敗だが、荒々しく、楽しみながら立ち向かう。基本的な考えはこれまでと変わらない。待ちわびる大一番のプレーボールの先で、再び人さし指を突き上げる。(須藤佳裕)

◆プロ野球の「SMBC日本シリーズ2025」は25日にみずほペイペイドームで開幕し、セ・リーグを制した阪神とパ・リーグ2連覇のソフトバンクの優勝チーム同士が激突。第1戦の予告先発投手は阪神・村上、ソフトバンク・有原で、セ、パの最多勝同士の対決となる。25日付サンケイスポーツ(関西版)に掲載した予想スタメンは上記の通り(「ギャラリーページで見る」をクリックで拡大できます)。★直接対決 阪神とソフトバンクの今季の交流戦は甲子園で行われ、ソフトバンクが2勝1敗と勝ち越した。3試合全て先制した球団が勝ち、両軍ともに計5得点のロースコアで、得点差はいずれも3点差以内だった。チーム防御率は阪神が0・96、ソフトバンクが1・33。★クリーンアップ 阪神はセ・リーグ史上初めて打点上位3傑を3人(佐藤輝102、森下89、大山75)が独占した。先発3-5番打者の通算成績は打率・273、78本塁打、274打点といずれも両リーグ1位。ソフトバンクのクリーンアップの成績(打率・249=同10位、49本塁打=同5位、209打点=同3位)をいずれも大きく上回った。★投手陣 防御率は阪神が2・21、ソフトバンクが2・39でともにリーグトップ。阪神は無失点勝利試合を28度記録するなど、2失点以下での勝敗が77勝7敗3分けの勝率・917。ソフトバンクの67勝11敗3分けの同・859を大きく上回った。救援陣は阪神が両リーグ唯一の防御率1点台(1・96)。ソフトバンクの救援陣もリーグ1位の同2・42と決して劣らない。

◆阪神が2年ぶりの日本一か、ソフトバンクが5年ぶりの頂点か-。25日の日本シリーズ開幕を前に、サンケイスポーツ専属評論家の4氏が勝敗を予想。江本孟紀氏、若松勉氏、小早川毅彦氏が阪神、井口資仁氏がソフトバンクを有利とした。本来なら「4勝3敗」という予想は、しない主義。どちらに転ぶかわかりません...とサジを投げるようなものだから。ただ今回は、両チームとも素晴らしいシーズンで、コレといった穴や欠点が見当たらず、予想は難しい。ということで、個人的な心情と忖度込みで、阪神に1勝分のアドバンテージを与える。実力は本当に五分五分。それも、違う戦い方で、というのが特徴だ。阪神は故障者がなく、戦力が常に平均化。オーダーを固定できた。投打のバランスがよく、野球の本質を貫けた。間隔の空いたクライマックスシリーズのファイナルステージを3連勝で乗り切ったのも、それが理由。選手個々の調子にも狂いがなかった。ソフトバンクにはシーズンを通して働く選手が少なく、時期ごとに誰かが出てきて補う。選手層の厚さからくる持ち味を取り戻した。いわば、安定した戦いの阪神と、選手任せになりがちなソフトバンク。ここ数年の充実ぶりからしても、阪神がわずかに上か。シリーズ経験豊富なソフトバンクといえども、厳しい戦いになる。

◆本拠地で日本シリーズ開幕を迎えるソフトバンクにとって残念な報が入った。中村晃外野手(36)がこの日、右股関節のコンディション不良でグラウンドに姿をみせず別メニューとなり、初戦を欠場することになった。前日に中村のスタメン起用する予定だった小久保裕紀監督(54)は試合前練習中に報道陣に対応し「打順を決めて(球場に)きたけど、さっき見直して別のバージョンにした」と明かした。レギュラー固定で戦うことを理想としてきたが、故障者続出で日替わりオーダーでレギュラーシーズンからクライマックスシリーズ(CS)を戦ってきたが、日本シリーズでもフルメンバーでの戦いはかなわなくなりそうだ。小久保監督は「結局最後までそろわない。今年はそういう年やったという感じですね」と嘆いたが、改めて臨機応変・変幻自在に戦うしかない。

◆藤川球児監督(45)が率いる阪神の、日本一を目指す戦いが始まる。シーズンでも開幕投手を務めた村上頌樹投手(27)が、セ・投手3冠のプライドを胸にパ・リーグの覇者に挑む。1番から5番には不動のメンバーが並び、敵地のため起用が注目された指名打者には「7番・DH」で高寺望夢内野手(23)が起用され、「6番・左翼」で島田海吏外野手(29)が先発する。

◆元ソフトバンク監督の工藤公康氏(62)が第1戦の始球式に登場した。現役時代を彷彿とさせる投球フォームから高めにストライク投球を投じた。工藤氏は2015年から7年間、監督としてソフトバンクを率い、3度のリーグ優勝、5度の日本一に導いた。また、国歌独唱はソプラニスタの岡本知高氏(48)が務めた。

◆日本一を決める戦いが始まった。先発は阪神・村上頌樹投手(27)、ソフトバンクは有原のマッチアップ。阪神打線は一回から好機を演出した。一回、近本、中野が倒れたが簡単には終わらない。DeNAとのクライマックスシリーズ・ファイナルステージでは3試合で打率・667、1本塁打、3打点を記録した3番・森下翔太外野手(25)が、先発・有原の2球目149㌔ツーシームを捉え、三塁線を破る二塁打で出塁。続く佐藤輝明内野手(26)は空振り三振に倒れたが、初回から好機を作ってパ・リーグ王者に襲い掛かった。

◆先発した阪神・村上頌樹投手(27)は一回にピンチを背負うと、この日、左脇腹痛から復帰した近藤に先制打を浴びた。2死二塁の好機で無得点に終わった直後の一回。先頭の柳田に四球を与えると、1死二塁のピンチを招いた。3番・柳町から空振り三振を奪うも、4番・近藤にフルカウントからの高め148㌔直球を中前に運ばれた。周東の生還を許して先制点を献上。続く栗原に右前打を許して再び得点圏に走者を背負ったが、川瀬は空振り三振に斬って最少失点で切り抜けた。

◆阪神の先発・村上頌樹投手(27)が敵地を沸かせた。0-1の二回、先頭の野村勇を一ゴロ、続く海野を二飛に打ち取って簡単に2死。すると、9番・牧原大への初球にスローボールを投じた。投球はベース盤の上を通り、ストライク。センター後方のビジョンには球速59㌔が計測され、場内はどよめき交じりの歓声に包まれた。2球目の137㌔ツーシームでボテボテのゴロに打ち取ると、三塁・佐藤輝が軽快な守備を披露。村上は一回に1点を失ったが、二回はソフトバンク打線を3人で仕留めた。

◆ソフトバンク・近藤健介外野手(32)が、復帰後即結果で応えた。一回の第1打席で中前へ先制打を放った。「先制のチャンスで絶対にランナーをかえそうと集中しました。しっかりスイングを仕掛けにいった中で、いいアプローチができたと思います。とにかく大事な先制点を取ることができて良かったです。日本シリーズ一戦目を勝ちにもっていけるように、自分たちの野球をしていきたいと思います」一回2死二塁の好機。阪神・村上が投じた高めの直球を中前へ弾き返し、一塁ベース上でガッツポーズを見せた。近藤は左脇腹痛のため、9月28日に出場選手登録を抹消。日本ハムとのクライマックスシリーズ・ファイナルステージでの出場はなく、この日が同26日の楽天戦(楽天モバイル)以来、約1カ月ぶりとなる実戦復帰だった。

◆この日、「6番・左翼」で先発した島田海吏外野手(29)が持ち味を発揮した。0-1で迎えた五回。この日、先発に抜擢された島田海吏外野手(29)が内野安打で出塁すると、続く高寺の打席で即座に二盗を成功させて好機を演出。後続が倒れて得点とはならなかったが、レギュラーシーズンで28試合の出場に終わった男が、藤川球児監督(45)の起用に応える活躍を見せた。

◆阪神の先発・村上頌樹投手(27)が粘りの投球で先発としての役割を果たしている。0-1の五回、1死から1番・柳田に右前打を許すと、3番・柳町に四球を与えて2死一、二塁。ここで一回に適時打を許している4番・近藤に打席が回ったが、一ゴロに仕留めてピンチを脱した。五回まで5安打1失点。ソフトバンク・有原とのセ・パ最多勝同士の投げ合いで、投手戦を演じている。

◆阪神が後半戦の開幕を鮮やかに飾った。グラウンド整備明けのみずほペイペイドームで、上位打線が躍動した。1点を追う六回、先頭の近本光司外野手(30)が打席に立つと、黄色く染まった左翼スタンドからは「突撃」コール。声援を受けた近本はカウント2-2からの133キロチェンジアップを中前にはじき返すと、続く中野拓夢内野手(29)への初球に二盗。中野の三塁線ギリギリへのバントが内野安打となり、無死一、三塁と絶好機を演出した。同点、逆転のチャンスで打席に立ったのは、2023年の日本シリーズで新人打点記録を更新する7打点を挙げた森下翔太外野手(25)。中野の二盗で二、三塁とし、遊ゴロの間に同点の走者が生還した。さらに1死三塁で4番・佐藤輝明内野手(26)がカウント3-0からの低めチェンジアップを右中間にはじき返して逆転に成功。これが2023年の日本シリーズも経験した虎の主砲にとって日本シリーズでの初適時打だった。頼れる4番は「打ったのはチェンジアップ。チャンスで回してもらったので、しっかり打ち返すことができて良かったです。チームとしても一気に同点、勝ち越し、と複数得点できたのは良かったと思います」とコメントした。

◆ソフトバンクの先発・有原航平投手(33)は、6回2失点で降板した。五回まで阪神打線を無得点に抑える好投を見せるが、1点リードの六回に暗転。先頭の近本に中前打を打たれ、二盗を決められる。続く中野には三塁線のフェアゾーンギリギリを転がる犠打が内野安打となり、その後、無死二、三塁とされ、森下には遊ゴロへ同点打。なおも1死三塁のピンチで佐藤輝に右中間へ勝ち越しの適時二塁打を浴びた。そこまでは得点圏に走者を背負いながらも粘りの投球で踏ん張っていたが、六回を投げ終えたところで降板となった。

◆先発した阪神・村上頌樹投手(27)は7回1失点、勝利投手の権利を持って降板した。一回に先頭の柳田に四球を与えると、1死二塁から4番・近藤にフルカウントからの高め148キロ直球を中前に運ばれ、周東の生還を許して先制点を献上した。しかし、その後は本来の投球を取り戻し、7回6安打1失点で降板した。「マウンドとの感触を合わせるまで少し時間がかかってしまいましたが、投球練習からしっかり確認して2回以降粘りの投球ができたと思います。逆転してくれてなんとかリードした状態で繋ぐことができました。あとは勝ち切れるように応援します」今季はシーズン、CSの開幕投手を務め、いずれも勝利に導いた。日本一に輝いた2023年のオリックスとの日本シリーズも初戦に先発し、7回2安打無失点の好投。相手先発の山本(現ドジャース)に投げ勝った。

◆阪神が誇る最強の救援投手陣が、ソフトバンクの反撃を退けた。2-1で迎えた八回、7回1失点と好投した先発の村上頌樹投手(27)に代わり、2番手で及川がマウンドへ。1点リードの緊迫した展開でソフトバンクの強力クリーンアップと対した。先頭の柳町に左翼線へ飛球を飛ばされたが、左翼・島田のランニングキャッチで1アウト。しかし、4番・近藤に左翼フェンス直撃の二塁打を浴びてピンチを迎えた。それでも5番・栗原を外角スライダーで空振り三振。続く川瀬に代打・山川が告げられたところで、藤川監督は3番手・石井をマウンドに送った。石井は山川を四球で歩かせたが、7番・野村を1球で左飛に仕留めてピンチを脱出した。

◆史上最速でセ・リーグを制した阪神が投打がかみ合いソフトバンクに逆転勝ち。日本シリーズの大事な初戦を白星で飾った。今季投手3冠に輝いた村上頌樹投手(27)が、パ・リーグ最多勝右腕の有原との投げ合いを制した。一回に2安打1四球で先制を許したが、二回以降は粘りの投球でゼロを重ねた。六回に打線が逆転し、7回6安打1失点で降板。八回は及川雅貴投手(24)、石井大智投手(28)の2人でゼロを刻み、九回のマウンドにも石井がイニングまたぎで登板。2死から一、二塁のピンチを背負うも、無失点で切り抜けた。打線は六回に先発・有原を攻略した。先頭の近本光司外野手(30)が中前打で出塁すると、続く中野拓夢内野手(29)への初球で二盗。中野は三塁線ギリギリに絶妙なバントを成功させ、内野安打で無死一、三塁。森下翔太外野手(25)の遊ゴロで同点に追いついた。なおも1死三塁で、4番・佐藤輝明内野手(26)の日本シリーズ初適時打となる二塁打で勝ち越し。限られたチャンスをものして接戦を制した。

◆ソフトバンクは初戦を落とした。先発・有原航平投手(33)は6回2失点で黒星を喫した。五回まで阪神打線を無得点に抑える好投を見せたが、1点リードの六回に暗転。無死二、三塁とされ、森下の遊ゴロで同点。なおも1死三塁で佐藤輝に右中間へ勝ち越しの適時二塁打を浴びた。打線は左脇腹痛から1軍に復帰した近藤が一回に先制打を放ったが、追加点を奪えなかった。

◆阪神がソフトバンクに逆転勝ち。日本シリーズの初戦を取った。今季投手3冠に輝いた村上頌樹投手(27)が、パ・リーグ最多勝右腕の有原との投げ合いを制した。一回に先制こそ許したものの、7回6安打1失点の投球。八回は及川雅貴投手(24)、石井大智投手(28)の2人でゼロを刻み、九回のマウンドにも石井がイニングまたぎで登板。ピンチを背負うも無失点で切り抜けた。

◆阪神の石井がピンチで登板し、イニングをまたいで日本シリーズ初セーブを挙げた。2―1の八回2死二塁からマウンドへ。代打山川に四球を与えて一、二塁としたが、野村を力強い内角直球で左飛に抑えて得点を与えず、右拳でガッツポーズをつくった。九回も続投し、2死一、二塁を背負いながら無失点でしのぎ「何とかゼロで抑えられた」と安堵した。レギュラーシーズンではプロ野球記録を大きく更新する50試合連続無失点を記録。3試合連続無失点だったクライマックスシリーズに続き、日本一を懸けた短期決戦でも好投を見せた。「明日も勝てるように。チームの力になれるよう頑張りたい」と次戦を見据えた。

◆近鉄、西武で主砲として465本塁打&2452安打をマークし、西武コーチ時代には清原和博らを育てたサンケイスポーツ専属評論家・土井正博氏(81)は阪神・近本光司外野手(30)の二盗に言及した。打ち合いになると阪神も苦しいと思っていたが、投手陣が踏ん張ってロースコアの接戦に持ち込んだ。シーズン同様の勝ち方ができたことは大きい。シリーズの流れを引き込んだのではないかと思える作戦が見事だった。六回に近本が中前打を放ち、続く中野の初球に二盗を決めた。中野のバント安打から攻撃がつながっての逆転劇だったが、すべては近本の相手の意表を突く二盗だ。五回にも、無死から出塁した島田が二盗を決めている。短期決戦の大事な初戦では、冒険しづらいのだが、藤川監督の思い切りは見事。と同時に相手は疑心暗鬼に陥っているはず。簡単に2度も無死から盗塁を決められたことで、投手は「癖を見抜かれているのではないか」と思い、捕手も「配球が見破られているのではないか」と不安になる。2戦目以降も、バッテリーが平常心で臨めなくなるのだ。短期決戦でこのアドバンテージは大きい。打線で一番重視したいのが1番と4番。近本が2安打を放ち、佐藤輝が決勝打。打つべき人が打った。何から何まで阪神には理想的な勝利だ。

◆阪神が先勝。逆転勝ちで福岡での日本S8戦目にして初勝利を挙げた。1点を追う六回、中前打の近本光司外野手(30)が二盗に成功。さらにバントが三塁内野安打となった中野拓夢内野手(29)も二盗。無死二、三塁から森下翔太外野手(25)の遊ゴロで同点とし、1死三塁での佐藤輝明内野手(26)の右中間二塁打で勝ち越した。一回に1点を失った村上頌樹投手(27)は二回以降無失点で7回降板。八回二死後に及川雅貴投手(24)に代わって登板した石井大智投手(28)が九回も締めた。

◆ソフトバンク・有原航平投手(33)が〝魔の六回〟に2失点で黒星を喫した。五回まで無失点投球を見せたが、1-0の六回に阪神打線につかまり、逆転を許してしまい「結果がすべてなので。(六回に)勝ち越されてしまったことがこういう結果になった」と唇を噛んだ。今季のレギュラーシーズン防御率が6・00と鬼門になっている六回は、この日も例外ではなかった。14勝で2年連続の最多勝右腕は「次に向けてしっかり準備をしていきたい」と気持ちを切り替えた。

◆第1戦は阪神が投打にかみ合って逆転勝利。日本一まで、あと3勝とした。試合後、26日に行われる第2戦(みずほペイペイ)の予告先発が発表された。阪神はジョン・デュプランティエ投手(31)、ソフトバンクは上沢直之投手(31)が先発する。来日1年目のデュプランティエは今季15試合に先発して6勝3敗、防御率1・39。前半戦でフル回転し、6月度月間MVPに輝くなどリーグ優勝に大きく貢献した。下肢の張りのため8月9日のヤクルト戦(京セラ)を最後に1軍での登板から遠かったが、10月3日のオリックスとの練習試合(SGL)で実戦復帰。18日に甲子園で行われたシート打撃では打者17人に対して無安打9奪三振をマークしていた。24日の全体練習では「自分ができる仕事、チームの勝利に貢献することに集中している」とコメント。頼れる助っ人右腕が大一番で帰ってくる。

◆福岡決戦、痛快な逆転劇はこの男からだった。阪神・近本光司外野手(30)が口火打&盗塁でチャンスメーク。同点のホームを踏んだ。「どんな形でも塁に出られたらなとは思っていました。あんまりがっつかず、落ち着いてという感じで打席に入っていました」0―1の六回。先頭で打席に入ると、それまで多彩な変化球と抜群の制球力で立ちはだかった有原のチェンジアップを中前に運んだ。そして、次打者・中野の初球ですかさず二盗に成功。「その前の機会(三回に左前打で出塁)で、ある程度タイミングを見ながらできていたので、初球からいけました」。日本シリーズ初盗塁で反撃ムードを高めると、その後三塁へ進塁し、森下の遊ゴロで生還した。15日のDeNAとのCSファイナルステージ初戦(甲子園)でも0―0の六回に緊迫した場面で三盗を決め、先制点の扉をこじ開けた。「警戒されているシチュエーションでしたが、勇気が勝ちました」。失敗したらシリーズ全体の流れを左右しかねない場面で、今季32盗塁で6度目の盗塁王に輝いた虎のスピードスターの覚悟が光った。日本一に輝いた2023年はシリーズタイ記録となる3度の猛打賞を記録し、打率・483(29打数14安打)でMVPを獲得した。シリーズ男は今年も健在。開幕戦で2安打を重ねて通算打率を・485とした。「勝ちにつながったのがすごく大きい。またあしたはあしたで、きょう何したかはあんまり関係ないと思うので、また頑張りたいと思います」自慢のバットと快足で勝利への道を切り開いた背番号5。白星を2つに増やして甲子園に帰るつもりだ。(渡辺洋次)?...日本シリーズでのゲーム3盗塁は2022年第2戦のオリックス以来3年ぶり。阪神では03年第4戦など過去6度マークした2盗塁を上回る球団新記録?...阪神がシリーズで逆転勝利したのは、23年第5戦(七回表終了0-2→最終6-2オリックス)以来2年ぶり7度目。第1戦で逆転勝利したのは、62年(三回表終了1-5→最終6-5東映)以来63年ぶり2度目?...阪神、ソフトバンクともに投手を含めて外国人選手が先発メンバーに入らず、日本人選手だけが並んだ。日本シリーズでは巨人とダイエーが戦った2000年の第1戦以来、25年ぶりとなった。巨人は松井や清原、ダイエーは小久保らが主力だった

◆「SMBC日本シリーズ2025」が25日、みずほペイペイドームで開幕。2年ぶりにセ・リーグを制した阪神は、パ・リーグ2連覇のソフトバンクに2―1で逆転勝ちして先勝した。六回に佐藤輝明内野手(26)が日本シリーズ初適時打となる勝ち越し打。虎の4番を担う本塁打、打点の2冠王が、これまで福岡でのシリーズで7戦全敗というジンクスを打ち破り、2年ぶりの日本一に向けて好発進だ。勝利を呼び込む白球は右中間で弾んだ。幕を開けた日本シリーズ。2年前とは違う。これぞ、虎の4番、セ・リーグの4番。佐藤輝が立ちはだかるパ・リーグ最多勝右腕とジンクスを打ち砕き、大きな大きな白星をもたらした。「1点入ったので、次の1点を取りたかった。3打席目でイメージもつかめていた。いい形で、いいところに落ちてくれたと思います」0-1で迎えた六回。1、2番コンビが作った無死二、三塁で、森下がしぶとく遊ゴロを放って同点に追い付く。なおも1死三塁。息を吐いて主砲が打席に向かった。カウント3-0から4球目。有原のチェンジアップを捉えた。大歓声を浴び、グラウンドを駆ける。決勝の適時二塁打。歓喜に沸く三塁ベンチを両手で指差し、何度も手をたたいた。佐藤輝にとってこれが日本シリーズでの初タイムリー。同シリーズ初出場だった2023年は、日本一に輝きながらも、7試合で打率・148(27打数4安打)。内野ゴロ間の1打点のみと結果を残すことができなかった。ただ、それは過去の話。覚醒した虎の主砲は今季14勝でパ・リーグの最多勝に輝いた有原でも止められない。さらにさかのぼって、2010年。小学6年生の佐藤少年は、今と同じ縦じまの背番号8を身にまとい、NPB12球団ジュニアトーナメントに出場するため、みずほペイペイドーム(当時ヤフードーム)にいた。「右肘をけがしていたので三塁コーチャーをやりました。悔しいというか、ものすごく楽しみにしていたので試合に出られなくて残念だなって気持ちでしたね」三塁線の外側にいた15年前の〝日本一〟を目指す戦い。あれから心も体も技術も大きく成長した。本塁打王&打点王のタイトルをひっさげ、帰ってきた福岡の地。日本一を懸けた戦いの舞台で、今度は数メートル先、白線の内側に立った。全身全霊で野球を楽しむサトテルの姿があった。

◆阪神・中野拓夢内野手(29)が有言実行の鮮やかなつなぎで逆転勝利をもたらした。1点を追う六回無死二塁で、三塁線上にピタリと止まるセーフティーバントを決めてチャンスを拡大。さらに森下の打席で二盗を決め、佐藤輝の決勝打を呼び込んだ。「自分が生きたことによって、さらにいける、という雰囲気ができたと思う。小技が大事になってくると常に自分でいっていたので、役割ができてよかった」。両リーグダントツの44犠打を記録した猛虎打線を紡ぐ選手会長が大きな1勝に貢献した。

◆虎が誇るシリーズ男が、第1戦の勝利に大きく貢献した。阪神・森下翔太外野手(25)は0―1の六回無死二、三塁で遊ゴロを転がし、ゲームを振り出しに戻した。「近本さんと中野さんが打者有利な場面にしてくれて、何とかコトを起こせば点が入ると思った。いいところに落ちたと思います」追い込まれながらもフルカウントに持ち込み、有原の厳しいツーシームをフェアグラウンドに飛ばした。二走も三塁まで進め、直後の佐藤輝の適時打で一気に勝ち越しに成功した。2年前からの成長を見せつける開幕戦となった。2023年の日本シリーズ第1戦でもチームは初戦で快勝を収めたが、同じ「3番・右翼」で先発した森下は3三振に併殺打。勝負が決した九回に安打を放つのがやっとだった。今年は打点だけでなく、一回にチーム初安打となる三塁線を破る二塁打を放ち、日本一への号砲を鳴らした。「短期決戦は勝つことが全て。きょうの試合は一旦忘れて明日に備えたい」。一戦一戦に集中しながら、頂点まで突き進む。(中屋友那)

◆ほえた。踏ん張った。ガッツポーズも出た。阪神・村上頌樹投手(27)が7回115球の熱投で、ソフトバンク打線を1得点に抑え、パ・リーグ最多勝の有原に投げ勝った。2023年の開幕戦に続き、村山実、ゲイルの球団記録に並ぶ日本シリーズ2勝目。大舞台に強いことを証明した。「マウンドの感触を合わせるまでに少し時間がかかった。投球練習でしっかり確認して、二回以降は粘りの投球ができた」立ち上がりは球が高めに浮いた。一回、先頭の柳田に四球。2死二塁から戦列復帰した4番・近藤に148キロの高め直球を中前に運ばれ、先制点を与えた。二回2死。牧原大に59キロの〝超スローカーブ〟でストライクを奪い、このあと三ゴロに抑えて、本来のリズムを取り戻した。「近藤さんはいいバッターなので。あそこでもう1点取られたらきつかった」0-1の五回2死一、二塁で近藤を148キロ直球で一ゴロに抑えるとガッツポーズ。佐藤輝の一打で勝ち越した直後の六回は三者凡退に抑え、七回も無失点で乗り切り、リリーフ陣に勝利のバトンを託した。日本シリーズ直前だった。最多勝、最多勝率、最多奪三振の3つのタイトルを取った右腕に、今年のベスト投球は-と聞いた。「長嶋さんの追悼試合です」。即答だった。8月16日の敵地・東京ドームで、今年6月に89歳で死去した長嶋茂雄さんを弔う一大イベント。村上は独特の雰囲気が漂った完全アウェーの中、2安打で完封勝利を飾った。「巨人の選手がガチガチに緊張しているのがわかったが、自分は平常心で力を出し切ることができた。今後の野球人生に向けて、すごく自信がついた日になった」今月15日のDeNAとのCSファイナルの第1戦。毎回走者を許しながらも5回無失点と粘りの投球。チームのCS3連勝に弾みをつけ、日本シリーズ開幕戦では気迫の投球。藤川監督は「(有原と)素晴らしい投げ合いでしたね」と絶賛した。「阪神ファンの応援すごかった。そこにも助けられたと思う。あと3つ勝つだけ。それを信じて応援します」もつれても、第6戦となる11月1日のペイペイドームのマウンドには村上が立つ。頼もしい限りだ。(三木建次)村上が日本シリーズで勝利投手となったのは、23年第1戦以来2年ぶり2勝目。シリーズ開幕戦で2勝以上したのは、ソフトバンク・千賀滉大(3勝=17、19、20年)以来5年ぶり13人目で、阪神投手では初。阪神投手がシリーズ通算2勝は最多タイで、村山実(62年2勝)、ゲイル(85年2勝)に次いで3人目

◆貫禄たっぷりの投球で博多を揺らす。阪神・石井大智投手(28)が回またぎの熱投で勝利を運んだ。「『(走者が)塁に出たら行くぞ』ということはある程度(想定していた)」出番は及川からバトンを受けた2―1の八回2死二塁。代打・山川のコール後にマウンドに上がった。ここでの与四球は「予定通り」。続く野村を左飛に仕留め、6球でリードを保った。これで終わらない。「ベンチに戻ったときに『もう一丁行くぞ』と言われたので、『はい』という感じで」とさらに九回も続投。2死から安打と打撃妨害でピンチこそ招いたが、最後はパ・リーグ最高出塁率・384の柳町に攻めの気持ちを貫いて中飛に仕留める。26球で計4つのアウトを奪い、日本シリーズ初セーブを挙げた。石井の続投について藤川監督は「それだけのゲームだった。よくやってくれている」とたたえた。レギュラーシーズンで50試合&49イニングで連続無失点だった右腕の輝きは、しのぎ合いでこそ際立つ。「あした(26日)も勝てるように。そこでチームの力になれるように頑張りたい」と石井。あと3つ、勝利を手繰り寄せる。(須藤佳裕)

◆「6番・左翼」で起用された阪神・島田海吏外野手(29)が走攻守で躍動した。1軍での出場は8月8日のヤクルト戦(京セラ)以来。「チームに迷惑をかけてばかりで何もできなかった。本当に監督の期待に応えたいだけでした」と臨んだ大一番。五回に内野安打で出塁すると二盗を決めて好機を演出し、八回の守備では先頭の柳町の左翼線への飛球をランニングキャッチ。「試合前にしっかり緊張できたので、開き直って思い切ってプレーできました」と笑顔がはじけた。

◆阪神・及川雅貴投手(24)は2―1の八回に日本シリーズ初登板。先頭の柳町の鋭い打球を左翼手・島田の好捕で救われたが、1死から横浜高の先輩にあたる近藤に左中間フェンス直撃の二塁打を浴びた。それでも続く栗原を三振に抑え、代打・山川を迎えたところで代わった石井が後続を抑えて無失点。左腕は「きょうは(島田)海吏さんと(石井)大智さんに助けられた。あした以降、自分が誰かを助けられたら」と誓った。

◆サンケイスポーツ専属評論家の江本孟紀氏(78)が、今年も日本シリーズ全試合を現地でチェック。現役時代にソフトバンクの前身球団、南海と阪神でプレーした江本氏が、最高峰の舞台で実現した古巣対決第1ラウンドを分析した。藤川は10年くらい監督をしているのか? そう感じたほど、見事なベンチワークだよ。六回、先頭の近本が安打で出塁。レギュラーシーズンなら中野にバントさせるであろうケースで、いきなり初球、近本がスタートし、二盗に成功。ソフトバンクを動揺させるには十分だった。実はこのとき、二塁送球が外野へそれたことに、近本は気付いていなかった。無死三塁のはずが二塁止まりでは...と思っていたら、今度は中野が三塁線へバント。ライン際でぴたりと止まり内野安打。普通ならファウルになる転がり方に映っただけに、ツキまでも味方につけたかな。その流れを一気にモノにする。森下の遊ゴロで同点、佐藤輝の右中間二塁打で勝ち越しと、阪神らしい攻撃だった。この1点リードを、きっちり守り切る。八回2死二塁で石井を投入し、九回も石井。ピンチこそ招きながら、絶対的な自信を持つ速球で、押し切った。最後は岩崎で、という型にはまる必要はない。これも流れからして、石井のイニングまたぎで正解だよ。先発・村上も、よく1失点でとどめたものだ。真っすぐは上ずり、変化球は抜ける。これほど低めへ制球の利かない姿も珍しかったからね。また、相手の勝ちパターンのリリーフ陣を引っ張り出したことにも、意義がある。早めに目を慣らしておくことが、できたわけだから。いずれにしても、素晴らしいゲーム運び。ベンチの作戦もヨシ。采配通りに動ける選手もヨシ。勝ち方は、レギュラーシーズンそのままだったね。(サンケイスポーツ専属評論家)

◆阪神ファンに漢字テストをしたとする。「もうこ」を漢字にしろ、と問いかけたら解答は100%「猛虎」に決まっている(と思う)。バカみたいな問題を出すな!と叱られるだろう。ところが、福岡県民に同じ問題を出したら、答案は微妙らしい。友人の友人に「もうこ」を漢字にしろ!と命じたら「蒙古」と答えるヤツがいる。しかも、熱狂的野球ファンのこの男、自慢げに言うのだ。「福岡で『もうこ』は『蒙古』に決まってる。祖先が、元寇(蒙古襲来)に耐え抜いて、これを打ち負かした。われらの誇り。福岡は『もうこ』には強い。負けたことがない。マスコミがいくら『もうこ襲来』と叫んでも、全く怖くない。阪神が日本シリーズでホークスに勝てないのは、鎌倉時代から決まっていること。福岡に勝ちたかったら、『もうこ』をやめればいい」2度にわたって蒙古の襲来をはね返した九州の方々の奮闘には感謝するし、ありがたい話。が、歴史上の出来事まで持ち出して、必死になるってことは、それだけ「猛虎」を恐れている証拠だとは思っていた。ついに、このへ理屈を粉砕する日がやってきた。祝! 日本シリーズ福岡初勝利!

◆日本一まで3勝! あと3勝!! ちゅ~か、わが阪神、なんで勝ったんや~!?先発の村上はDeNAとのCSファイナルステージ第1戦同様、力んで力んでの35点の投球(よくつぶれなかったわ)。一方、ソフトバンク先発の有原はチェンジアップがさえ渡り、5回を投げて3安打と、7割の力でスイスイピッチング!!ところが、終わってみれば、軍配はヒィヒィと悲鳴をあげていた村上に...。野球界で『投球に不思議な負けなし! 投球に不思議な勝ちあり!』との新ワードの誕生です。てか、こんな大舞台でそんなマウンドを演じた村上は、マジに〝村神様〟なんじゃね~のか!? と口をあんぐりと開けるオレだったのだ。一方、好投の有原をたった一度の六回のチャンスで沈めた阪神はやっぱり強えー!!近本がヒットで出塁し、すかさず盗塁(これは大きかった)。そして、2番中野のバント安打で舞台をつくれば、3番森下の内野ゴロで同点、4番佐藤輝の決勝タイムリーツーベース!!石井のイニングまたぎの無失点リリーフもあり、藤川監督の耐えて耐えての一刺し野球は、短期決戦にどんピシャやんかー!!