西武(☆1対0★)阪神 =オープン戦1回戦(2025.03.11)・ベルーナドーム=
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阪神
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西武
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勝利投手:佐藤 隼輔(1勝0敗0S)
(セーブ:ウィンゲンター(0勝0敗1S))
敗戦投手:早川 太貴(0勝1敗0S)
  DAZN
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◆西武は、4年目の菅井が5回無安打無失点の好投を披露。対する阪神も、ドラフト1位ルーキーの伊原が4回無失点の投球。開幕ローテーション入りを狙う両チームの若手左腕が、首脳陣へのアピールに成功した。

◆阪神小野寺暖外野手(26)が、1軍に合流した。9日までは春季教育リーグに出場していた。9日にジャイアンツタウンで行われた春季教育リーグ巨人戦に登板していた桐敷拓馬投手(25)、ドラフト3位の木下里都投手(24=KMGホールディングス)もこの日から合流した。桐敷は1回無安打1四球3奪三振無失点と快投。木下は1回5安打1四球4失点と苦しんだ。登板予定のない先発陣らとともに、島本浩也投手(32)、ハビー・ゲラ投手(29)はゼロカーボンベースボールパークでの練習に参加した。梅野隆太郎捕手(33)、大山悠輔内野手(30)、近本光司外野手(30)は関西に残留している模様。9日までオープン戦に帯同していた井上広大外野手(23)も姿を見せなかった。

◆阪神はドラフト1位の伊原陵人投手(24=NTT西日本)が先発マウンドに上がる。1軍初先発で3~4イニングを投げる予定だ。1軍合流した小野寺暖外野手(26)が7番左翼でスタメン。1番中堅には井坪陽生外野手(19)が、6番一塁には原口文仁内野手(33)が入った。梅野隆太郎捕手(33)、大山悠輔内野手(30)、近本光司外野手(30)、井上広大外野手(23)は帯同していない。

◆西武の是沢(これさわ)涼輔捕手(24)がオープン戦阪神戦に「8番捕手」でスタメン出場する。この日は開幕ローテーション入りが決定的な隅田知一郎投手(25)がファームの試合で先発することもあり、正捕手候補の古賀悠斗捕手(25)も2軍に帯同。代わって是沢らが1軍に招集された。これまで練習参加も含め1軍の経験はなし。スポット昇格とみられるが、育成契約3年目で初めての舞台になる。三重県出身。健大高崎(群馬)、法大時代はともに控え捕手ながら、強肩と野球への姿勢が高く評価されて西武入り。大事な一戦でバッテリーを組むのは左腕の菅井信也投手(21)で、2軍でもバッテリー経験は豊富。試合前には「(チャンスが)来い、来いとずっと思っていました。3年間で初めての1軍で、人生かけて来ました。菅井のためにも一生懸命頑張ります」と口にしていた。【金子真仁】

◆「3・11」に、秋田出身のルーキーが好投を届けた。0-0のまま迎えた5回、阪神育成ドラフト1位で、7日に支配下登録されたばかりの工藤泰成投手(23=四国IL徳島)が、初めて背番号「24」を背負い、マウンドへ上がった。先頭の源田にいきなり156キロ直球を投げ込み見逃しを奪うと、4球目の153キロ直球で二ゴロ。続く長谷川はフォークで遊ゴロに仕留めると、最後は西川を154キロ直球で遊ゴロ。3者凡退と完璧な投球を見せた。秋田出身の工藤はまだ9歳だった小学3年時に被災。「ガスとろうそくで何とか...。食料はどこも、スーパーでも買えませんでした。みんなで鍋とかを食べていました」。寒い秋田で不自由な生活を余儀なくされたが、家族で身を寄せ合い乗り切った。登板後、「低め中心に投げられたのはよかった」と手応え十分。「被害に遭われた方で、野球がしたくてもできなかった方もいたと思う。今日はそういう思いを感じながら、試合に臨みました」と力を込めた。この日に向けて「津波にあった地域だけじゃなくて、東北全体で頑張ろうという形で震災の時もやってきた。やっぱり東北人として頑張っている姿を見せて、まだ復興されていない地域もあるので、そういう方々に元気を送りたい」と決意を新たにしていた。新たな2桁のユニホームをお披露目。「今日届いたんですけど、すごく似合っているかなと思います」と笑顔を見せた。これでデビューから6試合連続無失点。故郷の完全復興を願う右腕の無双はまだまだ続きそうだ。

◆阪神前川右京外野手(21)が西武投手陣によるノーヒットノーランを阻止した。8回まで西武先発菅井、平良、佐藤隼、ラミレスの継投に出塁は中野、小野寺の四球だけで無安打が継続。9回2死走者なしで前川が西武5番手ウィンゲンターから、第2打席で二遊間深く遊撃内野安打を放った。際どいプレーだったため西武西口監督がリプレー検証を要求したが、判定は変わらず。阪神がノーヒットノーランを「あと1人」で阻止。ライトスタンドの阪神ファンからは大歓声が上がった。球団ではオープン戦ではノーヒットノーランをされたことはなく、球団史上初の屈辱を回避した。執念の一打を放った前川だが「安打より、1点を取られた方の送球をちゃんとしないといけない」と、7回2死一、二塁から左前打で二塁走者の生還を許した場面を反省した。第1打席は二ゴロで凡退。「1打席目よりかはタイミングよく振れたことはよかった」と手応えは確かだ。

◆阪神があと1人で西武投手陣継投によるノーヒットノーランを回避した。9回2死まで西武5継投の前に5継投の前に無安打を継続。途中出場の前川右京外野手(21)が、5番手ウィンゲンターから二遊間深くへの遊撃内野安打を放った。阪神がオープン戦でノーヒットノーランを許したのは、2リーグ制後で球団史上初の屈辱をギリギリで回避した。初回、西武先発の菅井を前に、先頭井坪から3者凡退。3回に先頭の小野寺が四球、4回に先頭の中野が四球で出塁するも、5回まで無安打に抑え込まれた。6回に登板した平良にも坂本が右飛、小幡が空振り三振、代打前川も二ゴロに倒れた。7回は佐藤隼を前に、中野が初球で中飛に打ち取られるなど3者凡退。7回裏に西武に先制を許した後、8回1死から原口がフェンス際への打球を放つも左飛となり、続く代打糸原も初球で一ゴロとなった。ノーヒットノーランは回避したが、阪神のオープン戦連敗は3に伸びた。

◆西武は継投でのノーヒットノーラン達成はならなかった。先発した菅井-是沢の若いバッテリーが5回まで2四球のみの無安打投球。6回からマスクをかぶったベテラン捕手炭谷が、平良、佐藤隼、ラミレスのリリーフ陣もノーヒットピッチングに導いた。だが、9回2死走者なしから5番手ウィンゲンターが、前川に二遊間深くへの遊撃内野安打を許した。際どいプレーだったため西口監督がリプレー検証を要求したが、判定は変わらず。後続は三振に仕留めて、5投手の継投による1安打完封勝ち。現役時代に3度の"ノーノー未遂"がある西口監督は「打たれるなら2死からだと思っていました」と話した。

◆阪神ドラフト1位の伊原陵人投手(24=NTT西日本)が1軍初先発で、4回62球3安打2四球1奪三振無失点の好投を披露した。初回は2死から3番ネビンに三塁線を破る左前打で出塁を許すも、4番セデーニョから空振り三振を奪った。2回は3者凡退。3回は2死から右翼と中堅の間に落ちる、伊原にとっては不運な形での二塁打でピンチを背負うも、2番西川を冷静に2球で中飛に打ち取った。4回は先頭のネビンに四球、セデーニョは中前打で無死一、二塁のピンチを背負った。平沢、渡部聖は中飛、左飛に打ち取ったが、外崎に四球を与え、2死満塁。それでも落ち着いて、是沢を遊ゴロに打ち取り、ピンチを切り抜けた。4回までに奪った12個のアウトのうち、10個がフライ。打たせてとる球数の少ない投球で、アピールに成功した。西武ドラフト2位の渡部聖弥外野手(22=大商大)とは、大学時代の先輩・後輩の関係。6番左翼でスタメン出場した後輩との対決は、2回1死から1球で左飛、4回1死一、二塁から左飛と抑えた。伊原は好投にも「よくなかった。カウントの作り方が悪かった。結構ボールが先行していた」と反省した。それでも開幕ローテーション入りに向けて好アピールとなり「投球の内容的にはまだまだ足りない部分が多いし、見ている方が評価することなのでなんとも言えないですけど、とにかくゼロで抑えるというところは1つの目標ではあったので、今日できたっていうところは1つ自信にして、次につなげていきたい」と力を込めた。

◆阪神ドラフト1位の伊原陵人投手(24=NTT西日本)が1軍初先発で4回3安打無失点と好投した。12アウトのうち10個がフライアウト。右翼手の森下が見失った飛球も含めれば、実に11個も凡飛を打たせた。なぜフライアウトを取れたのか。試合後、バッテリーを組んだ坂本誠志郎捕手(31)に尋ねた。「あんなにフライアウトになるとは思わなかった」女房役もさすがに驚いていた。意図的にフライを打たせたわけではないのだという。フライアウト10個の勝負球は直球4球、スライダー4球、カーブとフォークがともに1球だった。「やっぱりスピンの利いた真っすぐを投げられるのが特徴だと思う。それがいろいろ利いている。変化球でも結構フライを取れた。タイミングをちょっとズラして、泳がせてフライアウトとかも取れていた。それもやっぱり真っすぐの質が大前提だと思います」大半の直球は140キロ台前半だった。それでも打者はボールの下をたたき、変化球に泳がされていた。「フライが取れるというよりは、意図したボールで意図したアウトを取れることが大事。それを膨らませていきたい」一方の左腕は試合後、この日の投球内容を「良くなかった」と振り返った。良くなくても試合を作れる。ハイレベルな開幕ローテ争いの中で、ドラ1ルーキーが食らいついている。【佐井陽介】

◆阪神藤川球児監督(44)がドラフト1位伊原陵人投手(24=NTT西日本)を評価した。即戦力左腕はこの日が1軍初先発。4回62球3安打2四球1奪三振無失点と好投した。12個のアウトのうち、10個がフライ。打たせてとる球数の少ない投球術でアピールに成功。試合後、藤川監督は「カウントを有利に進められていない状況でも落ち着いて見られた。(得点圏に走者を置いても)落ち着いて見えるのが投手コーチと同様に感じてる」とマウンドさばきを称賛した。伊原の起用法に関しては、一時はリリーフ起用の可能性も示唆していたが、「マウンド上でのセットポジション入った姿とか見たら、落ち着きがある。(先発ローテ候補として)十分なところにはいるのかなと。あとは兼ね合い」と話した。

◆意地の激走だ。阪神前川右京外野手(21)が土壇場で屈辱を阻止した。敵地西武戦の9回表2死走者なし。1ボールから右腕ウィンゲンターの外角154キロを二遊間にはじき返し、遊撃内野安打をもぎ取った。「1打席目は真っすぐのタイミングで全部遅れていた。2打席目はだいぶ早めに始動した。タイミングよく振れたことは良かった」オープン戦では虎が1度も経験していない"ノーヒットノーラン"献上まで残り1アウトだった。遊撃手の滝沢が目いっぱいグラブを伸ばし、体を回転させて一塁送球。タイミングはアウトだったが、ショートバウンド送球がそれた。一塁手の右足がベースからわずかに離れる。西武西口監督のリクエストでも判定は覆らず。Hランプが灯ると、黄色く染まった右中間席はこの日一番の大騒ぎだ。藤川監督は途中出場でも結果を残した若虎を絶賛した。「ベンチでも非常にゲームに集中して座っていますしね。自分たちの前で見てる姿も立派なものがあります」。ただ、当の本人は開口一番、「そっちよりも1点を取られた送球をちゃんとしないといけない」と猛省するから頼もしい。9日巨人戦では1回2死一、三塁から左中間安打で三塁送球がそれ、一塁走者の三塁進塁を許した。この日も7回2死一、二塁で前進守備を敷きながら、左前打でカットマンへの送球が二塁側にそれて本塁に生還された。「低く強い送球をしないといけない。ラインがそれてしまったら勝負できない」。もう安打1本で喜べる立場ではない。ベルーナドームでは高卒2年目、23年5月30日の1軍デビュー戦で3打数無安打。翌31日は全3打席空振り三振。そんな苦い記憶を吹き飛ばし、これでオープン戦は打率4割5分5厘、3本塁打、6打点だ。「ボールの見え方とかは2年ぶりでだいぶ成長していると思う。ヒットが出たことより、ちゃんと振れてきているのはいいかな」高卒4年目にして責任感は主軸級。攻守で課題をつぶしていく。【佐井陽介】

◆7日に支配下登録された阪神育成ドラフト1位の工藤泰成投手(23=四国IL徳島)が、新背番号で1回無失点の快投を披露した。「皆さん24番で投げている姿も初めて見ると思う。すごく楽しみにしてくれていると声援で感じました」この日届いた「24」のユニホーム姿でマウンドへ。期待を背に受けると、先頭源田の初球にいきなり156キロをマーク。4球目の直球で二ゴロに打ち取ると、続く長谷川をフォークで、西川を直球でともに遊ゴロ。持ち味の剛速球だけでなく変化球も駆使し、3者凡退で終わらせた。これでデビューから6試合連続無失点。快進撃を続けるルーキーは、夢に見た2桁背番号に顔をほころばせた。「『似合ってんじゃん』って。マウンドに行った時に原口さんとかにも言われましたし、誠志郎さん(坂本)にも言われました。すごく似合ってるかなと思います」。そんな初々しさとは正反対の堂々たる投げっぷり。藤川監督も「(変化球に)バッターも反応してましたしね。あとは球が高めに浮かないですしね。非常に良い状態じゃないかな」と目を細めた。3月11日、東日本大震災の発災から14年。試合前には黙とうが行われた。秋田市出身の工藤は9歳の時に被災。東北出身者として強い思いがある。「地震もすごく(記憶に)鮮明に残っている。被害に遭われた方で、野球したくてもできない、できなかった方も、いたと思う。今日はそういう思いを、試合前に感じながら試合に臨みました」。野球ができる喜びを胸に、これからもマウンドで躍動する。【磯綾乃】

◆2試合連続「4番右翼」で先発した阪神森下翔太(24)は、攻守に反省した。3回2死の守備で、長谷川の高く上がった飛球を追うも見失い、自身の手前にポトリ。二塁打としてしまった。白い天井と重なり白球が見えにくい状況だったが「自分の普通にミスなので、特にそれ以上それ以下でもないです」と言い訳はなし。この日はバットでも3打数無安打に終わり「自分の実力で(投手に)合わす、合わせないとかじゃなくて。調整します」と語った。

◆西武菅井信也(21)が開幕先発ローテーション入りに前進した。育成選手時代にもCS直前の阪神打線を6回1失点に抑え、この日も5回無安打無失点。最速147キロの直球に左右への変化球も効果的に配した。ストレートの四球が2つあったものの、全体的には「カウント有利に進められたので、今日の投球は本当に良かったと思います」と手応えを口にした。

◆阪神のドラフト4位町田隼乙捕手(21=BC埼玉)が第3捕手争いで猛アピールした。0-0の6回から3番手早川太貴(25)とともに途中出場。6回2死から早川が西武平沢への四球で作ったピンチも強肩での二盗阻止で救った。7回に先制打を許したが、早川と3イニングを1失点で切り抜けた。「いろんな球種を使って最少失点には抑えられたけど、配球のことであったり、課題が多く出ました」と反省。自慢の強肩発動には「いい感じの準備はできたかな。一発で決められたので、次もしっかりと決めたい」と胸を張った。沖縄キャンプでは具志川組発進も2月24日のDeNA練習試合での左越え二塁打をきっかけに宜野座組に合流し、1軍に同行している。藤川監督も「横から見ていても座っている姿もいいし、送球も良かった。(早川に)頑張って低めを要求し続けて我慢強くリードできた」と評価した。

◆西武の佐藤隼輔投手(25)は宮城・仙台市出身だ。東日本大震災の時は小学5年生だった。仙台市内でも海抜の高いエリアに住んでいたから、直接の被害はなかった。でも「めちゃくちゃ揺れて、教室で泣いてる子もいました」と記憶は鮮明だ。停電の中で「親はラジオを付けていました」。沿岸部の被害状況も耳で理解する。電気がつながり、映像を見る。「うわー...って」。少年野球で訪れたことのあるグラウンドも大津波で流されていた。原発事故の影響も気にしないといけないエリアだった。「親は原発が爆発して『えーっ!?』って慌ててるんです。でも僕は不安どころか、まだ原発のことも当時は理解できていなくて」。だから物事を知り、映像もたくさん見るようになった今だからこそ「普通じゃない経験だったんだなと思います」と振り返る。そんな3・11は、7回にリリーフ登板、阪神中野、佐藤輝、森下をわずか6球で3者凡退に仕留めた。「力感の割に球がいいです」と手応えを口にしていた。【金子真仁】

◆西武が阪神相手に"ノーノー未遂"で完封勝ちした。9回2死まで継投でのノーヒットノーランも、阪神前川に数センチの差での内野安打を許し、リクエストでも覆らなかった。西武の新指揮官、西口文也監督(52)といえば、現役時代に3度のノーノー未遂でも有名。ただ未遂年は全てAクラス入りと吉兆もある。昨季は借金42、91敗。ノーモアどん底。ノーマークからひょうひょうと勝ち上がる。「9回2死」への敏感度では、球界に類を見ない。予感もあった。「心の中でひょっとしたら打たれるんじゃねえのかな...思ったりしなくはなかったけどね」。西口文也だからこそ。「自分がツーアウトから2回打たれてるから、打たれるならそこしかないって」。獅子党はこの言葉の深意を知る。担当記者のSNSで紹介した。瞬く間にコメントや拡散が始まる。試合後2時間で13万人に届く。「経験者は語る」「説得力が段違い」「言葉に重みが」。とめどない通知に、スマホの充電が一気に危険水域にまで減っていく。通算182勝118敗の大投手ゆえ、この"未遂"っぷりがある種のネタに昇華する。「ノーノーの難しさ? 何もございません。私の場合は途中から打たれてもいいと思って投げてたから」と悟りの域だ。演出はした。先発候補の21歳左腕の菅井に対し、組ませた捕手は1軍初昇格の育成3年目是沢。「本当は違う捕手でいこうかなと思ってたけど」。菅井と是沢はファームで20回近く、バッテリーを組んでいる。「せっかくなんでね。大正解でした。ナイスリードでした」。若い2人が5回無安打でゲームを作った。唯一の内野安打を打たれた新外国人トレイ・ウィンゲンター投手(30=カブス)も、ボスの未遂歴を耳にしていた。「後悔してます。反省してます」。笑いながら謝る。昨季勝率3割5分のチームだ。でも助っ人は「今はそういうチームに見えないですね。ここまですごくいい戦いができている」と実にうれしそう。平良を抑えに配置してもなお、今井、高橋、隅田、いずれは戻る新人王武内...と先発陣は強力だ。ペナントレースで誰かがノーヒットノーランをする可能性は十分に。「それはもう、楽にずっとベンチで座って見てられるんでね」と指揮官もちょっと願う。この日は本拠地初戦。楽しそうな西口監督が、何よりの吉兆だ。【金子真仁】【西口監督の無安打無得点未遂】02年8月26日ロッテ戦 7回の福浦への四球だけでノーヒット。9回2死から1番小坂の打球は二塁後方、右中間の前にポトリと落ちるヒットに。「ちょっと悔しいけど僕にはまだ早い」。05年5月13日巨人戦 2回の清原への死球だけで再び9回2死までノーヒット。しかし1番清水に本塁打を浴びてまたも快挙ならず。"あと1人"から本塁打されるのは初のケースだったが「あれだけ完璧に打たれて、すがすがしかった」。05年8月27日楽天戦 9回まで1人の走者も出さない完全投球に抑えるも、打線の援護なく0-0のまま延長戦に突入。10回に先頭の沖原に右前安打を許し、三たび28人目の打者に初安打されて快挙を逃すことに。チームは10回裏にサヨナラ勝ちを決め「まぁ、チームが勝ったんで。ボクには縁がないんでしょう」。

◆逆転開幕ローテ大前進! 阪神ドラフト1位の伊原陵人投手(24=NTT西日本)が、1軍初先発で4回3安打無失点と猛アピールに成功した。テンポよくアウトを重ねて12個のアウト中10個がフライアウト。4回満塁の場面も冷静にピンチを脱出した。虎の開幕ローテはデュプランティエや伊藤将、富田らと「ローテ6枚目」を争う大激戦の構図。即戦力左腕が大まくりでつかみ取る可能性は十分にある。マウンドの伊原が必死に食らいついた。開幕ローテーション入りをかけたマウンド。「とにかく(走者を)ホームに返さないことが一番大事なことなので、ゼロで抑えられたことは1つ、そこだけはよかった」。春季キャンプから中継ぎ調整もしていた中での1軍初先発で62球。4回3安打無失点の内容は十分なインパクトを残した。3回まではわずか37球で2安打無四球無失点も、4回に四球と中前打で無死一、二塁とピンチ。それでもドラ1左腕は冷静だった。「全然、焦ることはなかった。打者1人1人に自分の持っている球で対戦することや、時間をかけていいところはかけることが大事になる。ゆっくりできた」まず、中飛で走者を進ませずに1死を奪うと、大学の後輩の西武ドラフト2位渡部聖弥外野手(22=大商大)を1ストライクから、2球続けて内角に直球を投じ、左飛に打ち取った。その後、四球で2死満塁も、遊ゴロでピンチ脱出。落ち着き払ったマウンドの表情を見れば、とてもプロ1年生には見えない。特筆すべき点は冷静さだけではない。12個のアウトのうち、初回の空振り三振と最後の遊ゴロを除く10個がフライ。3回に右翼手森下が見失った飛球も含めれば、実に11個もフライを打たせた。伊原は「どんどん押し込むようなタイプではないので、そういうところでフライアウトは増えたかな」。藤川監督は「キレがあるんでしょうね」と分析した。試合後は無失点に手応えを感じつつ「良くなかった。カウントの作り方が悪かったのと、結構ボールが先行していた」と反省。ストイックな姿は変わらない。藤川監督は先発6人の枠を争う中で「十分なところにはいるのかなと。あとは兼ね合いね。そのあたりですね」と明かした。虎ルーキーの開幕ローテ入りなら22年桐敷以来、3年ぶり。結果に一喜一憂せず、実戦の反省点を生かし、鍛錬を積み続ける。【塚本光】阪神安藤コーチ(伊原について)「しっかり投げてくれたし、4イニング投げたっていうのは一番大きいんじゃないですか。もちろん(開幕ローテ)候補の1人ではありますけどね」

◆阪神ドラフト1位の伊原陵人投手(24=NTT西日本)が1軍初先発で4回3安打無失点と好投した。阪神藤川監督一問一答-伊原は先発で4イニングを投げた「カウントを有利に進められていない状況でもうまくカウントを取ったりとか。調子が良ければもっとカウントが有利にいくんですけど、そうではない状況からでも落ち着いて見られましたね」-打線は近本、大山ら不在「今日は井坪とか自分が1軍で戦えるかどうか、はねのけるのか、はね返されるのかという1日だったと思います。非常にいろんなことを感じるような何日間なんじゃないかなと思いますけど、出ていた選手にとってはね」-もう少し見せてほしい部分もあったか「レギュラーシーズンでは4打席目に入ってくるんですけど、オープン戦なんで、みんな2打席ずつとかですから、どうしてもぶつ切りにはなってしまう。ただその中でも1人ずつ、越えなければいけない壁がある。これを経験としてどんどん次に生かしていかなきゃいけないですから」-早川は複数イニング「プラン通りです。緊張感が非常にブルペンであったようで、それも1つずつ経験しなければいけない。次回に生かしてくれるんじゃないかなと思います。始まった、もしくは始まっていない状態ですから。みんながね。3イニングを投げられたのは大きいんじゃないですかね」

◆阪神・小野寺暖外野手(26)が1軍本隊に合流した。8、9日は東京・稲城市のジャイアンツタウンスタジアムで行われた巨人戦に出場。大商大出身の26歳が大学の後輩であるD1位・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=が先発する試合で合流した。梅野隆太郎捕手(33)、大山悠輔内野手(30)、近本光司外野手(30)は帯同していないとみられる。

◆阪神が6試合を戦う関東遠征初戦のスタメンを発表。D1位・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=が先発する。西武打線には大商大時代の2学年後輩、D2位・渡部聖が名を連ねた。開幕ローテの残り1枠をかけ、左腕が勝負のマウンドに上がる。打線はこの試合で帯同していない近本、大山に代わり、「1番・中堅」で井坪陽生外野手(19)、「6番・一塁」で原口文仁内野手(33)が先発出場する。

◆先発した阪神D1位・伊原陵人投手(24)は4回3安打無失点でマウンドを降りた。最速145キロの直球と変化球を低めに集めて、凡打を量産。12個のアウトのうち10個をフライで奪った。一回、先頭の長谷川を初球142キロ直球で遊飛に打ち取ると、続く西川を左飛。ネビンに安打を許すも、4番・セデーニョを変化球で空振り三振に斬った。三回2死から不運な安打で得点圏に走者を背負ったが、西川を中飛に打ち取りピンチを脱出した。四回は安打と2四球で満塁のピンチを招くも、無失点。結果が求められるマウンドで、期待に応える投球を披露した。

◆阪神の育成D1位・工藤泰成投手(23)=四国IL徳島=が新背番号24をお披露目した。7日に支配下登録され、8日のDeNA戦(甲子園)でマウンドに上がった時は背番号127を背負っていた。0-0の五回から2番手で登板。先頭・源田への初球は外角低めへ突き刺さり、156キロを計測。場内に球速が表示されるとスタンドからはどよめきが上がった。源田をニゴロ、長谷川、西川を遊ゴロに打ち取り3者凡退に抑え、スコアボードにゼロを刻んだ。

◆阪神は0-1で西武に敗戦。先発のD1位・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=は4回3安打無失点でアピールに成功。五回からは支配下登録された育成D1位・工藤泰成投手(23)=四国IL徳島=がMAX156キロの直球などで1回を三者凡退。六回から3番手でバトンを受けた育成D3位・早川太貴投手(25)=くふうハヤテ=が七回一死一、二塁から西武・長谷川に適時打を浴び、先制を許した。打線は西武の5投手の前に九回二死までノーヒット。前川右京外野手(21)が遊撃への内野安打でノーヒットノーランを土壇場で阻止したが、あっけない敗戦となった。

◆試合後、阪神・町田隼乙と言葉を交わす野村克則バッテリーコーチ=ベルーナドーム(撮影・根本成)

◆阪神が3連敗。西武の5投手継投に九回2死まで無安打に抑えられたが、前川右京外野手(21)の遊撃内野安打で屈辱を免れた。打線は8日のDeNA戦(甲子園)の五回を最後に、22イニング適時打なし。投手陣は3人のルーキーが登場。D1位・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=が1軍初先発で4回無失点。12アウトのうち、10が飛球で、3安打1三振2四球だった。2番手の育成D1位・工藤泰成投手(23)=四国IL徳島=は背番号24で1回三者凡退だった。育成D3位・早川太貴投手(25)=くふうハヤテ=は3回1失点。主な選手、コーチのコメントは以下の通り(OP戦成績=2勝4敗1分、観衆=9500人)。2三振1併殺に森下翔太 「自分の実力じゃないですか。合わす合わさないとかじゃないです。調整します」24番で初マウンドの工藤泰成 「今日届いたんですけど、すごく似合ってるかなと思います。マウンドに行った時に原口さんとかにも言われましたし、誠志郎さんにも言われました」3回1失点に早川太貴 「流れが来ないピッチングになってしまった。九回2死からの遊撃内野安打に前川右京 「そっちより、1点を取られた方の送球をちゃんとしないといけない(七回2死一、二塁での左前打で二走生還許す)」10個のフライアウトに伊原陵人 「ずらしたりするタイプなので、基本的に押し込むようなタイプではないんで、フライアウトは増えたかなと思う」伊原の投球に坂本誠志郎 「あんなにフライアウトになると思わなかった」六回、二盗を阻止したD4位・町田隼乙 「準備はある程度していて、いい感じの準備はできたかなと思います」1安打零敗に小谷野栄一打撃チーフコーチ 「ここで、どうこうということはないですね。ここを乗り越えて、みんなの状態を上の方に上げていけたら、シーズンに入ったとしても最高なのかと思う」

◆阪神が3連敗。西武の5投手継投に九回2死まで無安打に抑えられ、前川右京外野手(21)の遊撃内野安打で屈辱を免れた。打線は8日のDeNA戦(甲子園)の五回を最後に、22イニング適時打なし。投手陣は3人のルーキーが登場。D1位・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=が1軍初先発で4回無失点。12アウトのうち、10が飛球で、3安打1三振2四球だった。2番手の育成D1位・工藤泰成投手(23)=四国IL徳島=は背番号24で1回三者凡退だった。育成D3位・早川太貴投手(25)=くふうハヤテ=は3回1失点。藤川球児監督(44)の主な一問一答は以下の通り(OP戦成績=2勝4敗1分、観衆=9500人)。ーー伊原はしっかりとしたものを見せてくれた「カウントを有利に進められていない状況でもうまくカウントを取ったりとか。調子が良ければもっとカウントが有利にいくんですけど、そうではない状況からでも落ち着いて見られましたね」ーー四回のピンチでも3ボールから粘った部分も含めてか(2死満塁で窮地脱出)「今はDHでやっているけれども、セ・リーグも投手が入るパターンがありますからね。その前後の打順とか、というところも一応は見ながら、できているのではないかな、とも思いますね」ーーフライアウトが多かった「切れがあるんでしょうね。また本人と話をしてみますけど」ーー引き続き開幕ローテ候補「マウンド上で、セットポジションに入った姿を見たら落ち着きがありますよね。十分なところにはいるのかな、と。あとは兼ね合いね。その辺りですね」ーー得点圏でも堂々と「そういった部分が落ち着いて見えることが、投手コーチと同様に感じているところです」ーー工藤は変化球主体で引き出しの多さも見せた「バッターも反応をしていましたしね。球が高めに浮かないですね」ーー打線は大山らがリフレッシュで「向こうでやることがあるので。今はシーズンに向けて打ち込んだりしている状況ですから。今日は井坪とか、自分が1軍で戦えるかどうか、はねのけるのか、はね返されるのか、という一日だった。(試合に)出ていた選手にとっては、非常にいろいろなことを感じるような何日間なのではないかな、と思いますけど」ーー1安打。井坪を含めもう少し見せてほしい部分も「オープン戦なので、みんな2打席ずつとかですから、どうしてもぶつ切りにはなってしまう。その中でも越えなければいけないハードルではないけど、壁があって。彼らに聞いてもらった方がね。これを経験として次に生かしていかなければいけないです」ーー最後に前川が安打。気持ちの強さか「ベンチでゲームに集中して座っていますしね。自分たちの前で見ている姿も立派。年齢などを別にしてありますけど」ーー町田は二盗を阻止「横から見ていても、捕手の座っている姿もいいし、送球ももちろん良かったですけど。早川をリードしながら、頑張って低めを要求し続けて、我慢強くリードができたのではないですかね」ーー早川は複数イニング「プラン通りですけどね。ブルペンでは緊張感があったようで、それも一つずつ経験をしなければいけないので。次回に生かしてくれるのではないかな、と思います」

◆中日、西武、阪神で通算1560安打を放ち、楽天初代監督を務めたサンケイスポーツ専属評論家の田尾安志氏(71)は4回無失点の阪神D1位・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=に言及した。前回、伊原を見たのはキャンプ終盤の練習試合だった。「長いイニングはどうなのか?」という不安が残ったが、今回の投球でそれを吹き飛ばしてくれた。打者目線で言えば、思った以上にタイミングをずらす投球がうまく、非常に打ちにくい。緩い球が効果的で、打者は凡フライを重ねていた。いくつかの変化球を投げてくるが「今のは何かな?」「あれっ、今の球種は?」と感じてしまうほど、微妙に動く球を投げてくる。打者は何を投げてきたかが確認できれば安心するが、それができにくい、見極めが難しい投手だ。反省材料は四回の先頭打者を簡単に歩かせてしまったこと。ゼロに切り抜けたが、細かな部分も大事にしてほしい。盤石と言われていた阪神の開幕ローテだが、故障、不調などで不透明な投手が意外に増えてきている。新しい候補として内容が抜群の富田を第1候補に挙げるが、伊原もそれに次ぐ存在。今の投球ができれば、候補の1人に入れてもいいだろう。

◆阪神育成D3位・早川太貴投手(25)=くふうハヤテ=は3番手で六回から登板。七回に外崎、炭谷に連打を浴びると、2死一、二塁で長谷川に左前適時打を許して負け投手。「ボール先行でこの前と同じ課題が出てしまった」と悔やんだ。それでも3回を4安打1失点でまとめ、藤川球児監督(44)は「ブルペンでは非常に緊張感があったようで、それも一つずつ経験をしなければいけない。次回に生かしてくれるのではないかな、と思います」とうなずいていた。

◆阪神D4位・町田隼乙捕手(21)=BCL埼玉=は六回の守備から出場。育成D3位・早川太貴投手(25)=くふうハヤテ=とバッテリーを組むと、その回の2死一塁で平沢の二盗を阻止。いきなり強肩で見せ「準備はある程度していて、いい感じの準備はできたかなと思います」と胸を張った。懸命のリードも見せ、藤川球児監督(44)は「捕手の座っている姿もいいし、送球ももちろん良かった。早川をリードしながら、ずっと頑張って低めを要求し続けて、我慢強くリードができたのではないですかね」と高く評価した。

◆フル出場した阪神・森下翔太外野手(24)は2三振と併殺打で3打数無安打。OP戦打率は・167(12打数2安打)まで低下した。パ・リーグ投手が相手だったが「別に自分の実力じゃないですか? 合わす合わさないとかじゃなくて。まあ調整します」と淡々と話した。右翼守備では三回2死から前方に高々と上がった飛球をポテンヒットとし二塁打となってしまう場面も。照明が目に入ったかと問われても「普通に自分のミスなんで。特にそれ以上でもそれ以下でもないです」と話した。

◆継投でのノーヒットノーランを逃したことに九回を任されたウィンゲンターは「(記録は)意識せずに自分のピッチングに集中していたんだけど...」と振り返った。メジャー通算97試合登板の実績がある201センチの長身右腕。西口監督が現役時代に2度、九回2死から大記録を逃してることを知り「今日で西口さんが関わった試合で3回目になっちゃって後悔している」と肩を落とした。

◆異様な雰囲気に包まれた。無安打のまま九回2死走者なし。あと一人で継投ノーヒットノーランの屈辱-。最悪の事態を阻止したのは、オープン戦絶好調男の阪神・前川右京外野手(21)だ。「1打席目は真っすぐのタイミングも全部遅れていた。だいぶ早めに(スイング時に)始動をとっていけた」六回に代打で登場。守護神・平良の151キロ直球に詰まって二ゴロに倒れた反省を生かした。ウィンゲンターの150キロ超の速球をミートすると、打球は二遊間へ。好捕した遊撃手・滝沢の一塁送球がショートバウンドとなり、体を伸ばして捕球した一塁手の足がキャンバスから離れて判定はセーフ。西武・西口監督はリクエストしたが、判定は覆らなかった。決して会心の当たりではなかったが、屈辱を免れるべく全力疾走で「H」ランプをともした。オープン戦は打率・455(22打数10安打)、3本塁打、6打点と打ちまくり「左翼」の定位置は決定的だ。藤川球児監督(44)も「ベンチでも、非常にゲームに集中をして座っていますしね。自分たち(首脳陣)の前で見ている姿も立派なものが(ある)」と今やチームに不可欠な存在の一人として認めた。だが、ノーノー危機を救う一打を放っても笑顔はない。「そっち(ヒット)より、1点を取られた方の送球をちゃんとしないといけない」と反省が口をついた。0-0で迎えた七回2死一、二塁から決勝点を許した場面。長谷川の左前打にチャージしたが、カットに入った高寺への送球が一塁側へやや逸れた。体勢を崩して捕球した高寺の本塁送球も逸れ、刺せなかった。前川は「低く、強い送球を投げられるようにしないといけない」と猛省した。前川の1軍デビュー戦は2023年5月30日、この地での西武戦だった。「6番・DH」で先発出場するも3打数無安打。31日も3打席連続三振。2試合で6打数無安打と快音を響かせることはできず、1軍と2軍の違いを痛感した。「2年ぶりだったので。(当時と比べて)だいぶ成長してきていると思う。ちゃんと(バットが)振れている」またも課題を手にしたが、チームを屈辱から救う一打も放ち、前進している。右京はまだまだ、たくましくなる。(三木建次)...レギュラーシーズンで九回2死から無安打無得点阻止は昨年9月25日のソフトバンク戦(スチュワート-和田-又吉-杉山-オスナの継投)での西武(●0ー2)。九回2死から野村大が三塁打を記録した。...オープン戦では2007年3月4日のソフトバンク戦(和田-甲藤-ニコースキー-竹岡-藤岡の継投)での巨人(●0ー5)の例がある。九回2死から脇谷の中前打で完全試合を阻止した。

◆筋肉隆々の逆三角形の背中に「24」がお披露目だ。支配下登録された阪神育成D1位・工藤泰成投手(23)=四国IL徳島=が、ようやく届いた2桁番号のユニホームをまとって西武打線を軽々と片付けた。「(新ユニホームが)きょう届いたんですけど、似合っているかなと思います。『似合ってんじゃん』ってマウンドに行ったときに原口さんにも(坂本)誠志郎さんにも言われました」D1位・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=の後を受け五回に2番手でマウンドに上がると、先頭の源田の初球であいさつ代わりの156キロ。敵地をどよめかせ、その後は153キロの直球で二ゴロに。わずか9球で三者凡退に打ち取って役目を終えた。これまでは150キロ台後半に迫る剛速球でグイグイ押してきたが、この日はスライダーやフォークを多投する変化球中心の組み立てだった。「投げる前に坂本さんと『きょうはどういう感じでいこう』とは話さなかったんですけど、終わった後に『こういう配球をする時もあるよ』っていうのを言ってもらいました」と〝柔〟の配球で、投球の幅の広さを示した。藤川球児監督(44)も「球が高めに浮かないですしね。非常に良い状態ではないかな、と思います」と目を細める。6日に行われた電鉄本社主催の激励会で、壇上であいさつを行った指揮官からサプライズで支配下登録を告げられたばかり。それでも、リリーフとして勝ちパターンの一角に食い込んできそうなほど、質の高い投球を続けている。試合前には、14年前のこの日起きた東日本大震災の被災者への黙とうをささげた。秋田出身の工藤も小学3年生の時に被災。「野球したくてもできない、できなかった方もいたと思う。きょうはそういう思いを感じながら、試合に臨みました」と東北に思いをはせた。偉大な先輩たちが背負った「24」とともに、1軍の舞台で輝いてみせる。(渡辺洋次)

◆阪神・坂本誠志郎捕手(31)がD1位・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=を好リード。10個の飛球に「あんなにフライアウトになると思わなかった。それも持ち味になると思う。四回にランナー(先頭打者への四球)出たりして色んな場面を考えて、実戦的な感じになったんで、よかったと思います」。試合中、ベンチで会話をするシーンもあり「伊原からも言ってほしいと伝えて。こっちからの一方通行にならないように」と相互理解の重要性を力説していた。

◆これぞ西口劇場!? 西武は11日、本拠地ベルーナドームで今季初開催となる阪神とのオープン戦に臨み、5投手による継投で九回2死まで無安打無得点に封じながら、あと1人で初安打を許した。現役時代に3度、〝ノーヒットノーラン未遂〟の経験がある就任1年目の西口文也監督(52)は苦笑しつつも、開幕に向けて1-0の白星に手応えを得た。九回、5番手の新外国人右腕ウィンゲンターが連続三振を奪い、継投によるノーヒットノーラン達成まで1人。興奮が高まる本拠地のスタンドとは対照的に、ベンチで見守る西口監督の顔には一瞬、影が差していた。「心の中でひょっとしたら打たれるんじゃないかと...」阪神・前川が低めの直球にバットを出した。中堅へ抜けようかという当たりを遊撃・滝沢が好捕して一塁送球。しかし、判定は「セーフ」。西口監督はすかさず就任後初のリクエストを要求したが、覆らなかった。現役時代の悪夢が頭をよぎっていた。西武のエースとして君臨していた2000年代、九回2死まで無安打無得点を続けながら最後の1人で失敗すること2度。さらに、パーフェクト投球のまま0-0で九回を終え、延長十回の先頭に打たれたこともある。通算182勝を挙げながら、計3度の〝ノーノー未遂〟をすべて本拠地で体験。「自分が(九回)2死から2度打たれているからね。打たれるならそこしかないって」。監督になってもつきまとう宿命に、苦笑いを浮かべるしかなかった。それでも「守り勝つ野球」を理想に掲げる指揮官は1-0の勝利に「何も言うことはございません。ナイスゲームです」と胸を張った。ベルーナドームでの今季初開催に集まった9500人の観衆は、最後は少しガックリしながらも温かい拍手。いきなり「らしさ」全開の〝西口劇場〟を堪能した。先発した高卒4年目左腕の菅井は立ち上がりから切れのある球を投げ込み、一、二回と三者凡退。同じ左投げで昨季新人王の武内の肘痛もあり、「しっかりアピールして開幕ローテーション入りできるように頑張りたい」と意気込む。2軍監督時代から指導してきた指揮官は「年々、体つきも良くなって球速も上がり、全体的によくなってきている」と成長を喜んだ。昨季球団ワーストの91敗を喫した。再建を託された西口監督は宮崎・南郷での1軍キャンプに菅井、羽田、黒田、山田ら若手投手陣を初めて抜てき。チームの世代交代を推し進める。「守り勝つ野球という意味でも、こういう勝利は大きい。これからも目指していきたい」。常勝軍団と呼ばれた、かつての西武の野球を取り戻すため、選手とともに汗を流す。(石井孝尚)★2002年8月26日 ロッテ戦(西武ドーム)。七回2死に四球を出すまで完全投球。その後も安打を許さず、九回2死から小坂誠に直球を中前へはじき返された。★05年5月13日 巨人戦(インボイス)。捕手・細川亨が「左手人さし指がはれた」と振り返るほど直球に威力があり、九回2死まで許した走者は二回の死球のみ。しかし、迎えた清水隆行にスライダーを右翼席へ運ばれるソロ本塁打を浴びた。★05年8月27日 楽天戦(インボイス)。走者を一人も許さずに迎えた九回2死。27人目の打者、藤井彰人を遊ゴロに打ち取ったが、今度は打線の援護がなく、0-0のまま延長に突入。十回も続投し、先頭の沖原佳典にスライダーを右前に運ばれた。レギュラーシーズンで九回2死から無安打無得点試合を逃したのは、昨年9月25日にソフトバンク(○2-0西武、スチュワート-和田-又吉-杉山-オスナの継投)が記録。九回2死から西武・野村大に三塁打を許した。オープン戦では2007年3月4日のソフトバンク(○5-0巨人、和田-甲藤-二コースキー-竹岡-藤岡の継投)の例がある。九回2死から巨人・脇谷に中前打を打たれ完全試合を逃した。

◆所沢に乗り込んだ2連戦初戦で、阪神は継投ノーヒットノーランこそ阻止したものの、内野安打1本のみで3連敗。2時間14分の敗戦で浮かび上がった課題を、藤川球児監督(44)は厳しく振り返った。「井坪とか、自分が1軍で戦えるかどうか、はねのけるのか、はね返されるのか、という一日だったと思いますけど」この日は梅野、大山、そして近本がチームに帯同せず関西に残って調整を行った。代わって「1番・中堅」を任されたのが井坪だったが、打席では左腕・菅井相手に一回先頭で三振に倒れると、三回2死二塁では143キロに差し込まれた右邪飛で先制機を生かせず、四回1死一、二塁の左翼守備では、渡部聖が左中間方向へ放った飛球を、ほとんど走者のケアをせずに捕球。二走はスタートせず結果的に進塁は許さなかったが、スキがあった。六回の打席で代打・前川を送られた。シーズン開幕まで3週間を切り、開幕1軍へ当落線上の選手たちに与えられるチャンスはもう、そう多くない。若手の目の前には〝1軍の壁〟が確かにある。指揮官が求めるのは、その壁をどうするか、だ。「(試合に)出ていた選手にとっては、非常にいろいろなことを感じるような何日間なのではないか、と思いますけど」マツダスタジアムに乗り込む「3・28」は、この正念場を乗り越えた先にある。(須藤佳裕)

◆開幕ローテへ、舞い上がれ! 阪神のドラフト1位・伊原陵人(たかと)投手(24)=NTT西日本=が11日、西武戦で先発としてオープン戦初登板し、4回3安打無失点と好投した。全12アウトのうち「10」を飛球で奪い、評価も急上昇! 打線が九回2死まで無安打と苦しんだ一戦で投球術がキラリと輝き、藤川球児監督(44)は開幕ローテーション争いで「十分なところにはいる」とうなった。所沢の地で鈍い打球音が響くたび、観客の視線は上を向く。そして再び視線を落とすと、ボールは野手のグラブに収まった。開幕ローテの生き残りをかけた勝負のマウンドで、D1位・伊原が新たな可能性を見せた。「基本的にはどんどん押し込むのではなく、ずらしたりするタイプ。そういう点でフライアウトが増えたと思う」奪った12アウトのうち実に10個を飛球で奪った。ショートアームから投げ込まれる切れのある直球と多彩な変化球で凡打の山を築き、西武打線を相手に4回3安打無失点。持ち味は制球力だけではない。打者のタイミングをずらしてバットの芯を外す投球術も駆使し、D1位左腕が新たな一面を披露した。白球だけでなく、先発投手としての評価もグングン上昇だ。藤川監督は「マウンド上で、セットポジションに入った姿とかを見たら落ち着きがありますよね。(開幕ローテに)十分なところにはいるのかな、と。あとは〝兼ね合い〟ですね」と評した。3月に入り中継ぎへの配置転換が検討された時期もあったが、指揮官がここで初めて「開幕ローテ候補」だと明言した。実戦3試合で計7回無失点の伊原に負けず劣らず、同6試合で11回無失点の富田もいる。失点は続いているが伊藤将、デュプランティエらも虎視眈々とその席を狙っている。他者との〝兼ね合い〟になるとはいえ、このオープン戦初登板で伊原が大きな一歩を刻んだことは確かだ。

◆ちょっと野球に詳しい人なら知っている。「九回2死の西口には、何かが起きる」目の前の大記録を何度も逃してきた〝悲運のエース〟が、監督になったらどうなるのか?歴史は繰り返す。結末は大エースでも指揮官でも一緒だった。前川の内野安打で、またも快挙を逃してしまう。「気の毒ではありますが、編集局内も大いに盛り上がっていました。リクエストをしても、流れを変えることができませんでしたね」電話口の当番デスク・長友孝輔も苦笑いだった。実は、紙面で阪神戦を分析してもらったサンケイスポーツ専属評論家・田尾安志さんも、現役時代の西口監督に断崖絶壁に追い詰められた経験の持ち主。2005年8月27日。西武・西口の快投の前に、楽天打線は沈黙。九回まで27人の打者がすべてアウトになって、本来なら完全試合が成立するはずだった。ところが、西武も1点も奪えず、延長戦に突入。迎えた十回。楽天の先頭・沖原佳典が初安打を放って、大記録を阻止したのだ。当時の楽天を指揮していた初代監督が田尾さん。「評論家として、阪神でプレーする沖原を見ていて、まだ頑張れると思っていた。楽天1年目のシーズン途中に、戦力的に本当に苦しくて、阪神に『譲ってください』とお願いしたら、快く応じてもらってね。その沖原が完全試合を喫する寸前の大ピンチを救ってくれた。あの年、沖原は3割(正確には打率・313)打ったからなぁ」オープン戦のノーノー寸前の展開が、まさかの昔話に発展した。大記録阻止の裏に、阪神の温情があった-。タテジマでは出場機会のない選手が、移籍したら3割打者に。阪神がいかに戦力充実、メッチャ強い時期だったかが分かる。当時は岡田彰布前監督の第1次政権。あの年はリーグ優勝を果たしている。あれから20年-。

<オープン戦順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
日本ハム
511 0.833
(↑0.033)
-
(-)
21
(+5)
16
(+4)
3
(-)
6
(+1)
0.220
(↑0.005)
2.030
(↓0.33)
2
(1↑)
ヤクルト
630 0.667
(↑0.042)
0.5
(-)
27
(+5)
23
(+3)
4
(-)
8
(-)
0.232
(↑0.014)
2.220
(↓0.16)
2
(-)
ソフトバンク
422 0.667
(-)
1
(↓0.5)
32
(+4)
29
(+4)
4
(-)
11
(+3)
0.265
(↑0.008)
2.920
(↑0.27)
4
(1↓)
巨人
531 0.625
(-)
1
(↓0.5)
37
(+4)
30
(+4)
5
(-)
1
(+1)
0.256
(↑0.002)
2.560
(↑0.07)
5
(1↑)
西武
320 0.600
(↑0.1)
1.5
(-)
15
(+1)
12
(-)
1
(-)
3
(-)
0.253
(↓0.004)
2.090
(↑0.56)
6
(1↓)
中日
441 0.500
(↓0.071)
2
(↓1)
33
(+3)
32
(+4)
3
(-)
10
(-)
0.233
(↑0.002)
3.490
(↑0.06)
6
(2↑)
DeNA
442 0.500
(↑0.071)
2
(-)
27
(+2)
29
(+1)
1
(+1)
8
(+1)
0.206
(↓0.01)
2.480
(↑0.17)
8
(2↓)
ロッテ
341 0.429
(↓0.071)
2.5
(↓1)
28
(+4)
26
(+5)
6
(+1)
7
(+1)
0.208
(↑0.004)
2.150
(↓0.12)
9
(-)
阪神
241 0.333
(↓0.067)
3
(↓1)
32
(-)
34
(+1)
6
(-)
4
(-)
0.306
(↓0.032)
4.210
(↑0.46)
10
(-)
楽天
252 0.286
(↓0.047)
3.5
(↓1)
35
(+3)
31
(+5)
3
(-)
10
(-)
0.234
(↑0.001)
3.000
(↑0.17)
10
(2↑)
ORIX
251 0.286
(↑0.119)
3.5
(-)
21
(+4)
40
(+3)
0
(-)
1
(-)
0.229
(↓0.001)
4.690
(↑0.25)
10
(-)
広島
252 0.286
(↓0.047)
3.5
(↓1)
17
(+1)
23
(+2)
3
(+1)
1
(-)
0.200
(↓0.001)
2.420
(↑0.02)