1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | 安 | 失 | 本 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
DeNA | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 | 6 | 0 | 1 |
ソフトバンク | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 10 | 0 | 0 |
勝利投手:東 克樹(1勝0敗0S) (セーブ:森原 康平(0勝0敗1S)) 敗戦投手:大津 亮介(0勝1敗0S) 本塁打 |
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◆DeNAは同点で迎えた5回表、桑原のソロと筒香の犠飛で2点を奪い、勝ち越しに成功する。そのまま迎えた8回には、戸柱の適時二塁打が飛び出し、貴重な追加点を挙げた。投げては、先発・東が7回1失点の好投。敗れたソフトバンクは、打線が相手を上回る10安打を放つも、1得点のみとつながりを欠いた。
◆日本シリーズ第3戦のスタメンが発表され、第2戦はベンチ外だったDeNAタイラー・オースティン内野手(33)が「4番DH」でスタメン出場。また、東克樹投手(28)が先発マウンドに上がる。1軍に合流していた山本祐大捕手(26)はベンチ入りしなかった。注目のDHにはオースティンが入った。第1戦の6回の第3打席で自打球を左足に受けた影響で、左足甲を打撲。28日の前日練習は欠席していたが、第3戦でスタメン復帰となった。東は12日の阪神とのCSファーストステージ第1戦(甲子園)で先発するも、安打を放った際に負傷し、4回で降板。翌13日に出場選手登録を抹消されてからは、日本シリーズでの登板を目指し、リハビリを重ねてきた。
◆左足甲の打撲で日本シリーズ第2戦を欠場したDeNAタイラー・オースティン内野手(33)が、試合前に外野でウオーミングアップに現れた瞬間、左翼スタンドから大きな拍手と歓声が起こった。日本シリーズ第1戦の第3打席に自打球を受けた影響で、第2戦はベンチから外れた。28日のみずほペイペイドームで行われた練習は治療に専念。この日は「4番DH」でスタメンに復帰した。第2戦の試合後には「自分以上にあの場に出たいと思っている男はいないと思います」と覚悟を示した通り、決戦の場に2試合ぶりに戻った。
◆DeNAが待望の先制点を奪取した。初回に1番の桑原将志外野手(31)が2球目を右翼への二塁打にすると、続く梶原昂希外野手(25)の犠打で1死三塁。牧秀悟内野手(26)の遊ゴロの間に三走・桑原が生還し先制した。敵地に乗り込んだ日本シリーズ3試合目で初の先制点を挙げた。
◆DeNA東克樹投手(28)が、ソフトバンク近藤健介外野手(31)に技ありの適時二塁打を浴び、先制した直後に同点に追いつかれた。1回に柳田、栗原の連打で1死一、二塁とされ、山川の遊撃へのゴロは併殺コースだったが、遊撃の森敬は二塁走者の柳田と打球が少し重なったのか、一瞬ファンブル。すぐに二塁に送球し、1アウトは奪ったが、一塁はセーフで一、三塁のピンチを迎えた。5番近藤に対し、フルカウントからのチェンジアップを左中間にはじき返された。今シリーズ初めて先制したが、その裏に追いつかれ、試合は振り出しに戻った。
◆ソフトバンク近藤健介外野手(31)が、スタメン復帰後1打席目でいきなり同点打を放った。「5番DH」で日本シリーズ初先発。1点リードされた直後の初回、2死三塁で、フルカウントからの6球目、DeNA東の低めのチェンジアップを左中間にはじき返す適時二塁打ですぐに1点を返した。「とにかく自分のバッティングをしようと打席に入りました。追い込まれてからいい集中力を出せたと思います。今日王手をかけられるように、どんどん得点に絡んでいきたいです」DH制のなかった横浜ではシーズン終盤に痛めた右足首に配慮して代打待機していた。
◆DeNA桑原将志外野手(31)が、ファインプレーでチームを救った。1-1の2回先頭。ソフトバンク正木の中堅方向への飛球にダイビングキャッチ。落ちるか、微妙な打球に対して、抜群の守備範囲の広さを見せた。テレビ解説を務めた今季限りで現役引退した前ヤクルト青木宣親氏(42)も「めちゃくちゃいいスタートですね。彼、いつもダイブしている印象」と思わずうなるほどだった。
◆ソフトバンク先発のカーター・スチュワート投手(24)が3回のピンチを3者連続三振で乗り切った。1-1で9番森敬、1番桑原を連続四球で歩かせた。無死一、二塁で2番梶原は犠打を試みたが、スチュワートの剛速球にてこずる。最後はスプリットで空振り三振に斬った。3番の牧、4番のオースティンにも仕事をさせず、ほえた。スチュワートは日本シリーズ初登板、初先発。来日6年目で悲願のマウンドに立っている。
◆DeNAが、ソフトバンク・スチュワートの前に3者連続三振で勝ち越しのチャンスを逃した。同点の3回、先頭の森敬がセーフティーバントの構えで揺さぶりをかけ、四球で出塁。次打者の桑原もバントの構えを交えながら揺さぶり、連続四球で一、二塁の絶好機をつくった。1回無死二塁と同様に、2番梶原は犠打を指示されたが、ファウルでカウント1-2と追い込まれた後、ヒッティングに切り替えて、空振り三振。3番牧も空振り三振、4番オースティンは見逃し三振に倒れた。
◆もう1度、福岡から。DeNA東克樹投手(28)と山本祐大捕手(26)の鉄板コンビはここから始まった。昨年3月19日のオープン戦。前回登板が乱調で「今日ダメなら確実にファーム行き。ラストチャンスの覚悟でした」と気合の入ったマウンドで6回3安打無失点と好投。開幕ローテ最後の1枠にすべり込んだ。そのとき、19年以来4年ぶりにバッテリーを組んだのが、同期入団の山本だった。そこからの2人の名コンビぶりはもはや説明するまでもない。昨季は東が登板した全24試合でバッテリーを組み、16勝3敗、防御率1・98と最多勝&最優秀バッテリーに輝いた。お立ち台での「祐大のおかげです!」の感謝のセリフはグッズ化もされるほど定着した。今季も鉄板だったバッテリーが再び福岡の地で再結集した。登板前日の28日、左太もも裏の肉離れから復帰を控えた東と右尺骨骨折から約1カ月半ぶりに1軍合流した山本は、懐かしそうにグラウンドを見つめた。「良い思い出がある球場。去年オープン戦で初めて組んだのがここだった。懐かしいねという話はしました」と山本。東も「お互いケガで離脱する中で心境は一緒だと思う」と共鳴した。CSでの同僚たちの激闘をロッカールームからもどかしく見つめてきた背番号11。通常なら約4週間かかるところ、「気合です」と約2週間の"最短リハビリ"でマウンドに帰ってきた。山本はベンチ入りせず、福岡での再タッグはかなわなかったが、2連敗からの逆襲日本一への導くべく、東は懸命に腕を振った。【小早川宗一郎】
◆DeNAタイラー・オースティン内野手(33)が復帰初戦から存在感を発揮した。左足甲の打撲で第2戦を欠場していたが「4番DH」でスタメン復帰。第1打席から左翼線へ痛烈な打球を放つと、激走で二塁打を勝ち取った。四球も2つ選び、3打数1安打で3出塁の活躍。「今日の試合は必ず勝たないといけない試合だと思っていたので、何よりまず1つ勝てたことがうれしかったです」とチームの勝利を喜んだ。
◆ソフトバンク柳田悠岐外野手(36)が、執念のジャンピングキャッチでDeNAの大量得点を阻止した。1点ビハインドの無死満塁の大ピンチで、DeNA筒香の右翼フェンス際への打球を背走し、フェンスに激突しながらボールをつかみ捕った。右犠飛となり、結果的に無死満塁から奪われた得点はこの1点のみにとどめた。捕球後に体勢を崩し、定位置に戻りながら「危ね~」と話していた。ベテランが守備で体を張り、チームを鼓舞した。
◆DeNA桑原将志外野手(31)が攻守にわたって、チームをけん引した。「1番中堅」で出場し初回、先頭打者として打席に立つとソフトバンク・スチュワートの2球目153キロ直球を捉えた。右翼線への二塁打を放ちいきなりチャンスを演出。梶原の犠打で三進し、牧の遊ゴロの間に先制のホームを踏んだ。日本シリーズ3戦目にして初となる待望の先制点に三塁ベンチが、青く染まった左翼スタンドが沸いた。5回の第3打席には2番手大津の代わりばなを捉え、左中間席に運ぶソロ本塁打を放った。ベンチ前でチームメートとハイタッチを交わした後は、左翼席のファンに向かってデスターシャポーズを披露。チームの士気を高めた。守備でもチームに流れを呼び込んだ。2回先頭の正木が放った、中堅前に落ちそうな飛球をダイビングキャッチ。ガッツあふれるプレーでチームを救った。27日の第2戦に敗れ、シリーズ2連敗を喫した後のミーティングではナインの前に立って自らの口で思いをぶつけた。「とにかく自分たちが出せるモノを全て出さないと勝てない。それに尽きる」。戦いの舞台を福岡に移した仕切り直しの一戦で、有言実行のプレーを見せつけた。【水谷京裕】
◆DeNA桑原将志外野手(31)が均衡を破った。初回に先制するも、4回まで3四球と制球が安定しないソフトバンク先発のスチュワートから追加点を奪えず。1-1で迎えた5回、2打席連続出塁していた先頭の桑原が、この回からマウンドに上がったソフトバンク大津の141キロのカットボールを左中間ホームランテラスへ放り込んだ。「先頭だったのでとにかく塁に出ることを意識していました。捉えた感触は良かったですが、正直スタンドまで届くとは思いませんでした」と貴重な勝ち越し弾を振り返った。反撃の手は緩めない。内野安打と2四球で無死満塁のチャンスを作ると、筒香嘉智外野手(32)が大きな右犠飛を放ち、追加点を奪った。
◆ソフトバンクの大津亮介投手(25)が痛恨被弾を含む2失点で降板した。1-1の5回に2番手でマウンドに上がった。先頭の桑原将志外野手(31)への2球目、141キロカットボールを左中間スタンドに運ばれた。さらに、二塁内野安打と2者連続四球で無死満塁のピンチ。筒香嘉智外野手(32)に右翼フェンスギリギリの犠飛を許した。3点目を献上し、3番手のルーキー岩井俊介投手(23)と交代した。大津は2年目の今季、先発に転向。中継ぎ起用はレギュラーシーズンを含めて今季初だった。シリーズ初登板の大津が最初に対戦した桑原に決勝弾を浴びた。シリーズ初登板で最初の打者に被本塁打は、15年第3戦千賀(ソフトバンク)が山田(ヤクルト)に打たれて以来、通算15人目。大津は勝ち越しソロを打たれて黒星となったが、15年千賀も決勝点となる逆転3ランを打たれて負け投手になった。
◆DeNA筒香嘉智外野手(32)が、追加点となる右犠飛を放ち、リードを広げた。5回、1点を勝ち越し、なおも無死満塁。1ストライクからの速球を強振し、右翼フェンスギリギリの犠飛を放った。3、4回と2イニング連続で無死一、二塁の好機で無得点に終わり、嫌なムードが漂いかけたが、17年の日本シリーズも経験した主砲が、貴重な追加点をスコアボードに刻んだ。
◆ソフトバンク-DeNAの日本シリーズ第3戦で、投手が投げる間際の口笛を注意するアナウンスが流れた。DeNAが2点リードの6回1死一塁、ソフトバンクの攻撃で今宮への3球目の直前に、東克樹投手(28)が球審に投球前の指笛が投球の妨げになることを訴え、試合が一時中断。「試合進行の妨げになるような行為はご遠慮願います」とアナウンスが流れた。1度はプレーが再開されかけたが、再び、球審がアナウンスをお願いし「投手が投げる間際の口笛はご遠慮いただきますよう、お願い申し上げます」と行為の詳細を説明し、プレーが再開した。
◆ソフトバンク先発のカーター・スチュワート投手(24)が4回1失点で試合をつくった。1-1の3回に森敬と桑原に連続四球を献上。無死一、二塁のピンチを背負ったが、梶原、牧、オースティンの上位打線を3者連続三振に仕留めて激しいガッツポーズを見せた。「もう少し長いイニングを投げなければいけなかったけど、最低限の投球はできたかな」。かつて米大リーグのドラフト会議で1巡目指名を受けた来日6年目の右腕が、初登板の大舞台で力を見せた。
◆CSのMVP男・DeNA戸柱恭孝捕手(34)が、日本シリーズ初打点を挙げた。2点リードの8回1死一塁。ソフトバンク5番手右腕・杉山の高めに浮いた140キロフォークを捉え、右中間を破る適時二塁打とした。「フォークをしっかり自分のスイングで捉えることができました。一生懸命走ってくれたリン(林)に感謝です!」。先発・東も巧みにリードし、扇の要として安定した働きだった。
◆ソフトバンクが今シリーズ初黒星を喫し、18年10月30日の広島戦から続いた日本シリーズの連勝は14で止まった。初回、先発のカーター・スチュワート投手(24)が先頭の桑原将志外野手(31)に2球目直球を右翼線へ運ばれ、いきなり1死三塁のピンチ。3番牧秀悟内野手(26)の遊ゴロの間に先制点を許した。それでも直後に5番近藤健介外野手(31)が左中間へ同点の適時二塁打。DHがない横浜での第2戦までは、シーズン終盤に痛めた右足首に配慮して代打待機していた。日本シリーズ初スタメンできっちりと役割を果たした。援護をもらったスチュワートは4回1失点の力投。1-1の5回に小久保裕紀監督(53)は2番手大津亮介投手(25)への交代を告げた。だが、先頭の桑原への2球目、141キロカットボールを左中間スタンドに運ばれた。さらに、二塁内野安打と2者連続四球で無死満塁の。続く筒香嘉智外野手(32)に右翼フェンスギリギリの犠飛。1死しか奪えず、2失点で降板した。打線はDeNAの先発東克樹投手(28)を前に7回まで10安打を集めながら、追加点を奪えなかった。レギュラーシーズンとCSファイナルステージを含めて10連勝で福岡に帰ってきたタカ。本拠地での日本シリーズ黒星は中日との11年11月19日の第6戦以来で、本拠地での同シリーズの連勝は16で止まった。
◆DeNAが接戦を制し、日本シリーズ初白星を挙げた。左太ももの肉離れから復帰したエース東克樹投手(28)が、105球を投げ、7回10安打1失点と好投。強打のソフトバンク打線を封じた。先制した直後、1回2死一、三塁のピンチで近藤に左中間二塁打を打たれ、すぐさま同点にされる。それでも集中力は切らさなかった。2回以降も強力打線に毎回安打を浴びるも、追加点は許さなかった。2点リードの6回には球審に投球前の指笛が投球の妨げになることを訴え、試合が一時中断する事態が発生。直後に今宮に安打を打たれ、ピンチを招くも2死一、三塁で甲斐を一邪飛に打ち取った。東の好投に打線も応えた。1-1の同点で迎えた5回に桑原将志外野手(31)が均衡を破る勝ち越し弾を放った。さらに無死満塁から筒香嘉智外野手(32)が、追加点となる右犠飛を放ち、リードを広げた。8回にも1死一塁で戸柱恭孝捕手(34)が右中間への適時二塁打を放ち、貴重な追加点を挙げた。ソフトバンクの日本シリーズ連勝を14で止め、1勝2敗とした。
◆パリ五輪でブレイキン女子金メダリストのAMI(25)が、日本シリーズ第3戦(みずほペイペイドーム)で始球式を行った。場内アナウンスで紹介されると、華麗なダンスを披露。マウンドに上がり、捕手の甲斐をめがけて懸命に左腕を振った。ボールは2バウンドとなったが、スタンドから大きな拍手が送られた。「すごく緊張しました。思いを込めて投げました」と笑顔で振り返った。
◆DeNAが接戦を制し、日本シリーズ初白星を挙げた。左太ももの肉離れから復帰したエース東克樹投手(28)が、105球を投げ、7回10安打1失点と好投。強打のソフトバンク打線を封じた。東が7回を1失点に抑えてシリーズ初登板初勝利。東の被安打は1回から3、1、1、1、1、2、1で毎回の10本。シリーズで2桁被安打の勝利投手は、10安打、3失点で完投勝利の94年第5戦桑田(巨人)以来、30年ぶり。今回のように2桁被安打で1失点以下の白星は、10安打で完封勝利の51年第1戦藤本(巨人)13安打で完封勝利の81年第5戦西本(巨人)に次いで3人目だ。10安打されながら無四球の東が粘りの投球で、初登板を白星で飾った。
◆DeNAが接戦を制し、日本シリーズ初白星を挙げた。左太ももの肉離れから復帰したエース東克樹投手(28)が、105球を投げ、7回10安打1失点と好投。強打のソフトバンク打線を封じた。DeNAがシリーズ初勝利。シリーズでソフトバンクに勝ったチームは18年第2戦広島以来となり、みずほペイペイドームで勝利は11年第6戦中日以来。DeNAがソフトバンクの連勝を14、本拠地連勝を16で止めた。2連敗後(引き分け含む)に初勝利を挙げたのは22年オリックス以来20度目。過去19度のうち逆転優勝は7度で、V確率は37%。逆転Vの7度は次の試合も勝ってタイに戻しており、第4戦は負けられない。
◆「SMBC日本シリーズ2024」第3戦で、DeNA桑原将志外野手(31)が「有言実行」の活躍を見せた。1回先頭で二塁打を放って今シリーズ初の先制点を演出し、5回には決勝ソロ。守備でもダイビングキャッチでピンチの芽をつんだ。2連敗直後の緊急ミーティングで熱く厳しい言葉で逆襲を呼びかけた男が、勝利への思いを体現。敵地で初勝利を挙げて1勝2敗とし、日本シリーズ14連勝、本拠地に限っては16連勝中だったソフトバンクの進撃を止めた。ここで打たなきゃ男じゃない。同点の5回先頭、桑原が代わったばかりのソフトバンク大津のファーストストライクを仕留めた。左中間席への柵越えを確認してようやく、全力疾走を緩める。「スタンドまで届くとは思いませんでした」と気持ちが打球に乗った。「負けて悔しくないんか?」。27日の第2戦で2連敗後、選手全員参加の緊急ミーティングで思いをぶつけた。17年の日本シリーズは全試合に先発も、第3戦まで13打数無安打6三振でチームも3連敗。「あの時は自分のことで精いっぱいで周りの人に助けられた」。7年の時を経て、視野はチーム全体へと広がった。13年目の31歳。礼儀がなってない若手をしかって、嫌われ役を買って出たこともある。同時に、選手全員参加の決起集会やビールかけでは誰よりもはしゃいで盛り上げた。桑原を含めた選手数人で行うベース上の「しょうゆムース(SHOW YOUR MOVES)」ポーズもゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」のキャプテンファルコンから着想を得て、上茶谷と始めた。若手をしかるのも盛り上げるのも、全てはチームのためだった。だからこそ、言った言葉には責任を持つ。1回先頭、右翼線への二塁打で勢いをつけ、今シリーズ3戦目で初めての先制のホームを踏んだ。2回先頭の守備でも、正木の中前の飛球にダイビングキャッチ。気迫あふれるプレーでナインの気持ちを1つにしたが「別に1つ勝っただけなので特にない。明日も死に物狂いでやるだけです」と繰り返した。1勝で満足する気はさらさらない。逆襲は、ここから始まる。【小早川宗一郎】▽DeNA牧(選手ミーティングでナインにゲキを飛ばした桑原の活躍に)「クワさんらしいというか、クワさんのそのままのスタイルだと思います」
◆左太もも裏の肉離れから復帰したDeNAのエース東克樹投手(28)が、105球を投げ、7回10安打1失点と好投。強打のソフトバンク打線を封じた。ヒーローインタビューでは「CSでは本当にチームに迷惑かけてしまったので、復帰戦でしたけど、しっかりと自分らしい投球ができるように心がけてマウンドに上がりました」と振り返った。2連敗中だったが、流れを引き寄せるピッチングを披露。「まさか7回まで投げられると思っていなかったですけど、チームの期待に応えることができてよかった。ランナー出しながらも抑える自分らしい投球ができた」と安堵(あんど)した。東の好投に打線も応えた。1-1の同点で迎えた5回に桑原将志外野手(31)が均衡を破る勝ち越し弾。さらに無死満塁から筒香嘉智外野手(32)が、追加点となる右犠飛を放ち、リードを広げた。東は「とても大きな2点が入ったので、自分もここからまたさらにのっていこうという思いで見ていました」とギアを上げた。ソフトバンクの日本シリーズ連勝を14で止め、1勝2敗。最後に「今日のように粘り強く勝つことができたらいいと思うので、これからも熱い声援よろしくお願いいたします」と福岡に駆けつけたファンに呼びかけた。▽DeNA戸柱(CSのMVP男が日本シリーズ初打点。東も巧みにリード)「コントロールを間違えない。高さを間違ってもコースはしっかりしてますし、コースを間違っても高さはしっかりしていた。2つ間違いがない。本当にええピッチャー」日本シリーズ・ニッカンMVP査定 7回1失点でチーム初勝利をもたらした東に4ポイント。打者では桑原が初回先頭の二塁打とVアーチで貢献した。
◆ソフトバンクが今シリーズ初黒星を喫し、18年10月30日の広島戦から続いた日本シリーズの連勝は14で止まった。小久保裕紀監督(53)の一問一答は以下の通り。-惜しくも敗れた「短期決戦の敗因を振り返る意味がないんで、別に。いいとこはいっぱいありましたね。前純、日本シリーズ初登板、育成選手からはい上がって日本シリーズでね、あれだけ投げきった。あとは長谷川もよかったですね。杉山は点取られましたけど、硬さが取れたと思うんで、明日以降につながるでしょうね」-打線も10安打っていうとこでしたけど「そう、まあ3者凡退はなかったんですけど、敗因を振り返るというよりは、やっぱり先頭バッターが1回も出塁してないっていうのが、得点入らなかったんで。もっと言うと、カーター(スチュワート)がよくあそこ(4回)しのいだなって感じですね。もっと大味なゲームで、負けのパターンで進んでもおかしくない試合やったんで、もうどっちかというとね、向こうに助けられたような、4回まであの攻撃やったですからね」-先頭出られなかったという意味では1番ダウンズが無安打でしたけども「ジーター(ダウンズ)、先頭バッター(で打席に立ったの)なんかあった?」-初回ぐらいです、「っていうことですね(笑い)」-監督としてはあと2つ勝つって中で、逆に言えば3つは負けられる「そう、そうです。何回も言ってるじゃないですか。だから明日以降につながるところを見極めないといけないんで。そういう点では前田の使い道も言えませんけど決まったし、尾形、ヘルナンデス、オスナはね、今日は出してないんで、勝てるゲームにつぎ込むっていうところでしたね」-東も桑原も相手の気持ちが伝わってくる試合だった「東がすごかったですよ、本当そうです。先頭出して、その後、やっぱりそっから点やらないのが、それはエースでしょ。もう向こうが立派です」
◆ソフトバンク小久保裕紀監督(53)は、日本シリーズ初黒星にも収穫を強調した。試合後の囲み取材では開始早々に「短期決戦では敗因を振り返る意味がないので」とさらり。「いいところはいっぱいありましたね」と前田純の好リリーフに言及した。前田純は6回から4番手で登板し、打者6人に無安打無四死球。7回は牧、オースティン、筒香の強力クリーンアップを危なげなく打ち取った。今シーズン支配下登録された左腕にとっては日本シリーズ初登板。小久保監督は「日本シリーズ初登板。育成選手から這い上がって日本シリーズであれだけ投げきった」と称賛が止まらない。この日はビハインド展開で登板だったが「明日以降につながる。やっぱり見極めないといけないんでね。そういう点では前田の使い道も言えませんけど決まった」と評価を大幅に上げたもようだ。先発スチュワートを4回1失点で降板させ、5回から継投策に入った。1-1で2番手の大津が桑原にV弾を献上。早めの継投は裏目に出たが、打線も10安打を放ちながら1得点と援護できなかった。故障明けのDeNA東を打ち崩せず。指揮官は「東がすごかった。本当にそうです。(連打の)その後もやっぱりそっから点をやらない。それはエースでしょ。向こうが立派です」と脱帽した。2勝1敗となったが、勝ち星は先行している。第4戦、第5戦も本拠地開催。福岡で胴上げを目指し、連勝あるのみだ。【只松憲】
◆ソフトバンク柳田悠岐外野手(36)が攻守でハッスルした。守備では1-2の5回無死満塁で筒香の右翼フェンス際への打球に背走し、フェンスに激突しながらキャッチ。犠飛となったが、無死満塁から奪われた得点はこの1点のみにとどめた。定位置に戻りながら「危ね~」とつぶやいた。打っては第1打席で全力疾走から内野安打をもぎとるなど、猛打賞の活躍をみせた。
◆DeNA東克樹投手(28)が、異例のお願いをした。試合後、報道陣に囲まれた時だった。「各社にぜひ書いてもらいたいんですけど、別にペイペイドームが指笛は禁止されてないんで全然問題ないんですけど、ただ投げる瞬間、モーションに入ってからわざと口笛を吹くような感じだったので、ただそれだけはやめてほしいと。ほんとにたったそれのだけのことっていうか。たったそれだけで繊細すぎるっていう意見もあるかもわかんないですけど、ただ僕たちはこれが仕事で人生かけてやってるんで、そういった、なんて言うんですかね、悪気はなかったかもしれないですけど、僕にとってはすごく気にしてしまったというか、それだけのことって感じですかね」と報道陣を通じて、リクエストした。東の指摘した口笛とは、試合開始から鳴っていた。そして、DeNAが2点リードの6回1死一塁。ソフトバンクの攻撃だった。マウンド上の東が、ソフトバンク今宮への3球目の直前に、球審に投球前の指笛が投球の妨げになることを訴え、試合が中断した。直後に「投手が投げる間際の口笛はご遠慮いただきますよう、お願い申し上げます」と異例のアナウンスが流れ、試合が再開していた。東は「違和感というか、わざとやってるように感じた。モーション入ってからわざと。やっぱバックネットでやってたと思うんで、すごく聞こえるんですよ。で、それが気になったというか、本当に。別に禁止されてないんで、ダメとは言えないですけど、ただタイミングというか、それはちょっと考えてほしいなっていうのはありましたね。投げる瞬間にやったりしてきてたので、僕たちやっぱり1球1球が勝負の世界でやってる中で、そういったことはやめてもらいたいなっていうのはあります」とお願いした。
◆DeNA三浦大輔監督(50)が、日本シリーズ初勝利を挙げた。1回は無死二塁から犠打で三塁に進め、牧の遊ゴロの間に先制。同点の5回には桑原のソロで勝ち越した。先発東は7回1失点と好投し、投打ががっちりかみ合った。「1つ勝ってホッとすることなく、また明日の試合に全員で集中して、全力で出し切る準備をしていきます」と気を引き締めた。
◆仲間の思いも背負い、もう1度、福岡から。DeNA東克樹投手(28)が復帰登板で貫禄の投球を見せつけた。毎回の10安打を浴びながらも7回1失点。「自分らしく粘り強い投球ができた」とうなずいた。12日のCSファーストステージ初戦で左太もも裏を肉離れ。急ピッチで復帰し、「足がちぎれてもいいぐらいのつもりでした」と投内連係でも恐怖心を振り払って走った。左足に負担をかけないため、走者なしでもクイック気味のフォームで105球を投げきった。振り返れば、「鉄板コンビ」誕生は福岡だった。昨年3月19日のオープン戦。「今日ダメなら確実にファーム行き。ラストチャンスの覚悟」と気合を入れたマウンドで好投し、開幕ローテ最後の1枠にすべり込んだ。同戦で19年以来4年ぶりにバッテリーを組んだのが同期入団の山本だった。東はエースへの階段を駆け上がり、山本も正捕手へと成長。練習日の28日、右尺骨骨折から約1カ月半ぶりに1軍合流した山本とグラウンドを見つめて懐かしんだ。この日はベンチ入りしなかった山本だが、球場内で"相棒"に声援を送っていた。東は「思い出の地でまた勝つことができて特別な1勝になった」と、かみしめた。【小早川宗一郎】▽DeNA山本(右尺骨骨折でベンチ入りはせずに球場でチームの勝利を見届け)「貢献できたらもちろん一番いいですけど、今まではテレビで見てたので、雰囲気を味わえて幸せだなと思いながらみてました」
◆DeNA山本祐大捕手(26)が相棒の投球を称賛した。7回1失点の好投でチームを勝利に導いた東克樹投手(28)について「粘り強く、ヒットは打たれましたけど、この1勝をものにしたというのはすごく大事だと思いますし。ピンチになりながら粘り強く投げたことで、多分野手の活気も生まれたと思いますし。すごくいいピッチングだったと思います」とたたえた。この日はベンチ入りしなかったが、28日の全体練習から1軍に合流し、球場から試合を見届けた。「今まではテレビで見てたので。あの雰囲気を味わえるかすごい幸せ」とした上で「(チームに)貢献できたらもちろん一番いいですけど」と復帰に意欲を燃やした。
◆DeNA筒香嘉智外野手(32)が、追加点となる貴重な犠飛でリードを広げた。5回、1点を勝ち越し、なおも無死満塁から、右翼フェンスギリギリの犠飛。「勝つことが大事なので、勝てたというのがすごく良かった」。3、4回と2イニング連続で無死一、二塁の好機で無得点に終わり、嫌なムードが漂いかけたが、17年の日本シリーズも経験した主砲が、貴重な追加点をスコアボードに刻んだ。
◆頼れる背番号3が帰ってきた! ソフトバンク近藤健介外野手(31)が「SMBC日本シリーズ2024」第3戦で「5番DH」で初スタメン即、一時同点の適時二塁打を放った。1点を追う1回2死一、三塁の第1打席でDeNA東から左翼へ。DHのなかった敵地横浜では、負傷した右足首に配慮して代打待機だったが、マルチ安打も決めて完全復活をアピールした。日本シリーズ連勝記録は14でストップしたが、首位打者の復帰は頼もしい限り。きょうこそ日本一へ王手をかけ、31日に福岡で舞う。手負いの右足首をものともせず、近藤は勢いよく一塁を蹴った。自軍のベンチに向かって、二塁ベース上で何度も右のこぶしを突き上げた。1点を追う1回2死一、三塁の場面。今回の日本シリーズで初めて響く「5番近藤」の場内アナウンスに、タカ党のボルテージが一気に上がる。フルカウントからの6球目。東の真ん中134キロチェンジアップを仕留め、左へ流し打ち。すぐさま試合を振り出しに戻してみせた。「打席の中での対応は良かったかなと。追い込まれてからいい集中力を出せたと思います」。今季は一、三塁の場面で打率5割(14打数7安打)だった男が、短期決戦でも勝負強さを発揮。しかも第1打席で決めるのだから、これ以上頼れる男はいない。9月終盤に右足首を捻挫して戦線離脱。V記念日は松葉づえ姿だった。懸命のリハビリでCSファイナルステージに間に合わせたが、日本シリーズは負担を考慮し、DHのなかった敵地横浜は第1戦、第2戦と代打待機が続いた。出番は1打席で、結果は申告敬遠。この日が実質、初打席だった。「打つ方はまったく問題はない」。6回にはチームメートが苦戦した東から中前打をマーク。シリーズ初黒星の試合で気を吐いた。日本ハムからFA移籍2年目の今季は打率3割1分4厘、19本塁打、72打点。自身初の首位打者のほか、出塁率4割3分9厘で2年連続の最高出塁率のタイトルを獲得した。ハイアベレージを残せる要因に「スイングを仕掛けていくことですね」と言う。四球数92個はリーグで断トツだが、初球から積極的にスイング。振ることで投手のタイミングにアジャストさせ、安打や粘っての四球につなげている。DeNAを4本上回る10安打を放つもあと1本が出ず、日本シリーズで無双を続けてきた連勝記録は「14」でストップ。本拠地での連勝も「16」で止まった。「出ている以上はチームの勝ちに貢献できるようにと考えている。本数よりは、いいところで1本」。地元福岡での日本一実現へ-。仕切り直してきょうこそ王手をかけ、31日に歓喜を分かち合う。【佐藤究】
◆2勝0敗で本拠地に戻り、第3戦を迎えるソフトバンクは近藤健介外野手(31)が「5番・DH」で今シリーズ初めて先発出場する。横浜での2戦はスタメンを外れ、第1戦で代打の1打席のみの出場。村上打撃コーチは「状態は悪くはないんで、やってくれると信じています」とこれまで同様にポイントゲッターの役割を託して決戦に送り出す。
◆DeNAのタイラー・オースティン内野手(33)が第1打席で二塁打を放った。1-0の一回2死、カウント1-1から真ん中付近のスプリットを捉え、左翼線への二塁打とした。自打球による左足甲の打撲で、日本シリーズ第2戦を欠場。28日の練習には参加しなかったが、この日は試合前練習には参加して「4番・DH」に入った。
◆ソフトバンクが1点を追う一回、近藤健介外野手(31)のセンターへの適時二塁打で1-1の同点に追いついた。1死から柳田が遊撃内野安打で出塁し、栗原陵矢内野手(28)が右前打を放って一、二塁。山川の遊ゴロで2死一、三塁としたところで打席は「5番・DH」で今シリーズ初スタメンの近藤。フルカウントから東のチェンジアップをたたいて左翼への適時二塁打で1-1。「とにかく自分のバッティングをしようと打席に入りました。追い込まれてからいい集中力を出せたと思います。今日王手をかけられるように、どんどん得点に絡んでいきたいです」。第1、2戦でベンチスタートとなり、活躍できなかった分、打席ごとでの完全燃焼を誓った。
◆パリ五輪ブレイキン女子で金メダルに輝いたブレイクダンスダンサー・湯浅亜実(25、ダンサーネーム・AMI)がソフトバンクのユニホーム姿で始球式に登場。左投げからの投球は大きく外れてツーバウンドでミットに収まった。「すごく緊張しました。全力で投げようと思いましたが、ちょっと曲がってしまって悔しいなという気持ちもあります。思いを込めて投げました。皆さんやり切って出し切っていい試合をしてほしいと思います」と両チームを応援した。
◆DeNA・桑原将志外野手(31)が「1番・中堅」で出場。五回に今シリーズ、チーム1号となる勝ち越しソロを放った。1―1の五回。先頭で代わったばかりの2番手大津に対し1ボールからの2球目、甘く入った変化球を捉えた。快音を残した打球は左中間、テラス席へと飛び込んだ。一回の第1打席でも右翼線へ二塁打を放ち先取点を演出。二回の守備ではダイビングキャッチも見せた。本拠地で連敗を喫した第2戦の試合後、主将の牧が主導し行われた選手間ミーティングで、前回のシリーズ経験者として牧に意見を求められ厳しい声を掛けた桑原。「負けて悔しくないんか? と僕は思います」と語っていたガッツマンが、熱い思いをグラウンドで体現した。
◆DeNA・筒香嘉智外野手(32)が「5番・左翼」で出場。2―1の五回に右犠飛を放ち、貴重な追加点を挙げた。桑原のソロで勝ち越した五回、なお打線がつながり無死満塁の絶好機。筒香は、大津の真ん中に入ってきた直球を振り抜いた。美しい放物線を描いた打球は右翼フェンス際へ。あと一伸びで満塁弾だった大飛球は、右翼手柳田が好捕したが三塁走者がタッチアップし、3点目のホームを踏んだ。4番で出場した第2戦では4打数無安打に終わり「僕が打てていたら流れが変わったと思うし、勝ちに近づいてたと思うので、僕の責任」と語っていた背番号25。次戦で第2打席に左中間を破る二塁打を放つなど、しっかり結果を残した。
◆ホークスグッズを身につけたファンの歓声が降り注ぐ。舞台が本拠地・福岡に移った第3戦。ソフトバンク・スチュワートが念願のマウンドに上がった。「ソフトバンクと契約したときに『日本シリーズで投げて活躍したい』と言っていた。私のキャリアの中で一番大切な登板になる」今季9勝を挙げた米国出身の助っ人は高校卒業時の2018年6月の米大リーグのドラフト会議でブレーブスから1巡目指名を受けた逸材だが、入団前の身体検査で手首の異常が見つかり、入団には至らなかった。その年にソフトバンクからオファーを受け、19歳で日本行きを選択した異色の経歴を持つ。来日6年目。身も心も日本に染まっている。日本シリーズと同時期に米国で開催中の大谷、山本の所属するドジャースと人気球団のヤンキースとのワールドシリーズでは「日本の選手を応援しているよ」とニヤリ。特に昨年までオリックスに所属していた山本は「すごくいい投手。米国で活躍している姿を見ることができてすごくうれしい」と絶賛する。自身も大舞台に向け、「今年最後の登板になると思うから全力を出し切りたい」と気合十分だった。一回先頭の桑原に右翼線二塁打を浴び、梶原の捕前犠打で1死三塁を招き、牧の遊ゴロの間に三走の生還を許した。わずか7球で先制点を献上したが、その裏に打線が反撃。1死から柳田、栗原が連打でチャンスをつくり、2死一、三塁で指名打者として今シリーズ初先発出場の近藤が右足首の痛みを抱えながらも、左中間へ同点二塁打。頼もしい野手陣の援護を得て、4回1失点、69球で降板した。その直後の五回、2番手の大津が桑原に手痛い一発を浴びた。(柏村翔)
◆DeNA・東克樹投手(28)がマウンド上にいる六回1死一塁の場面で試合が中断し、観客への注意喚起として場内アナウンスが2度流れた。中断直後、場内に「試合進行の妨げとなる行為はご遠慮ください」というアナウンス。試合再開かと思われたが、「投手が投げる間際の口笛はご遠慮ください」と2度目の場内アナウンスが行われた。東は1死一、二塁のピンチを招いたが、後続を打ち取って無失点に抑えた。
◆DeNA・梶原が、自身初の日本シリーズで存在感を放っている。大分県出身の3年目外野手は第1、2戦ともに2安打を記録し、初戦では守護神のオスナから中前適時打をマークした。本拠地の横浜スタジアムから敵地のみずほペイペイドームに舞台を移した第3戦。梶原の活躍を見届けようと、故郷の両親や友人が応援に駆け付けた。両親からは「チームの力になれるように頑張れ」と励まされたという。大分県に隣接する福岡県にある球場では、幼少期に何度かプロ野球の試合を観戦した。だが「小さかったので覚えていないです」と苦笑する。緊張感が増す頂上決戦に「シーズンの感じで入れた」と頼もしく語る25歳が、記憶を上書きする。(智)
◆ソフトバンクの先発、カーター・スチュワートJr.投手(24)は4回3安打3四球、1失点だった。立ち上がり、桑原にいきなり二塁打を許すと、1死三塁を招き、牧の遊ゴロの間に先制を許した。すぐさま味方打線が同点に追いついた後の二回以降は走者を出しながらも無失点にしのいだ。4回を投げたところで降板し、救援陣にマウンドを譲った。「先発としては、もう少し長いイニングを投げなければいけなかったという気持ちはありますが、最低限の投球はできたと思います。何とかチームが勝つように、応援します」とチームメートの応援に回った。
◆先発したDeNA・東克樹投手(28)が7回1失点、105球でマウンドを降りた。先制点をもらった直後、一回2死一、三塁から近藤に適時二塁打を浴びて同点。しかし後続を抑えて最少失点とした。毎回安打を浴び、走者を背負う投球が続いたが、要所を締めた。先発した12日の阪神とのCSファーストステージで、走塁の際に負傷して緊急降板。左太もも裏の肉離れで翌13日に登録抹消されていたが、約2週間で復帰。日本シリーズの舞台に間に合わせた。
◆ソフトバンク・柳田悠岐外野手(36)が守備で存在感を示した。「2番・右翼」で出場し、1─2の五回無死満塁で筒香の右翼への大飛球にフェンスにぶつかりながら捕球し、犠飛ににとどめた。今季は5月末の試合で右太もも裏を痛め離脱したが、10月の日本ハムとのクライマックスシリーズファイナルステージに間に合った。試合前に村上打撃コーチは「調子どうこうじゃない。存在だけでいい」と厚い信頼を寄せていた。
◆ソフトバンクの日本シリーズの連勝が14で止まった。1─1の五回に2番手・大津が先頭の桑原に左中間へのソロ本塁打を浴び、その後、無死満塁で筒香に右犠飛を許した。八回にも5番手・杉山が戸柱に適時二塁打されビハインドが広がった。打線は0─1の一回に指名打者として今シリーズ初先発出場した近藤が右足首の負傷を抱えながら左中間への同点二塁打で追いついたが、二回以降は先発・東らの相手投手陣の前に沈黙。これで4戦先勝の今シリーズは2勝1敗となった。
◆試合前のシートノック前、円陣で声を出すDeNA・森敬斗(中央)=みずほペイペイドーム(撮影・佐藤徳昭)
◆DeNA・ケイが30日の日本シリーズ第4戦に先発する。巨人とのCSファイナル第6戦から中8日のマウンドへ「しっかりリカバリーに(時間を)充てることができたので、状態的には万全」とうなずいた。強力打線に対し「シーズンを通して素晴らしいチームだが、どんな選手でも弱点は必ずある。そこを突くことがすごく大事」と意気込んだ。
◆DeNAは1―1の五回に桑原のソロ本塁打と筒香の犠飛で2点を勝ち越し。八回は戸柱の適時二塁打で突き放した。東が七回まで毎回の10安打を浴びながらも、1失点と粘った。試合後の東のヒーローインタビューは以下の通り。――ナイスピッチング「ありがとうございます」――10月12日以来の試合。どういう思いでマウンドへ「クライマックスは本当にチームに迷惑をかけてしまったので。何としても、復帰戦でしたけど、しっかりと自分らしい投球ができるように心がけてマウンドに上がりました」――強力なホークスに連敗中だったが「ノーヒットに抑えるのは絶対無理だと思ってマウンドに上がってましたし、ランナー出しながらも抑えるという自分らしい投球ができたのかなと思います」――毎回走者を出しながらも7回105球の熱投「これでも病み上がりなんで、まさか7回まで投げると思ってなかったですけど。なんとかチームの期待に応えることができてよかったと思います」――五回に大きな追加点「本当に大きな2点が入ったので、自分もここからまたさらに乗っていこうという思いで見ていました」――今日勝って1勝2敗、明日が大事になる。ファンへ一言「今日のように粘り強く勝つことができたらいいと思いうので、これからも熱いご声援をよろしくお願いします」
◆ソフトバンクの日本シリーズの連勝は14で止まった。試合後の小久保裕紀監督の一問一答は次の通り。──惜しくも敗戦「短期決戦は敗因を振り返る意味はない。良いところはいっぱいありました。前純(前田純)は日本シリーズ初登板(2回無失点)。(今年7月に)育成選手から(支配下に)上がって投げ切った。あと(長谷川)も(1回無失点で)良かった。杉山も点を取られましたけど硬さが取れたんじゃないですか。明日以降につながると思います」──打線は10安打で1得点どまり「三者凡退はなかったですが、敗因を振り返るというよりは、先頭打者が1回も出塁していなかったので得点が入らなかった。もっと言うとカーター(スチュワート)がよくあそこ(三、四回)をしのいだなと思う。もっと大味なゲームで負けのパターンに進んでもおかしくなかった。どちらかと言うと向こうに助けられた四回までの攻撃だったと思います」──六回の攻撃中には観客の口笛で試合が中断「よくわかんないですね。口笛って笑ってしまいました。みんな大爆笑していました」──今シリーズ2勝1敗。あと3つ負けられる「何回も言っているじゃないですか。そうそうそう。明日以降につながる、見極めないといけないので前田の使い道も言えませんけど決まりましたし、尾形、ヘルナンデス、オスナは出していない。勝てるゲームにつぎ込むというところ」──先発の東や1番の桑原の気合が伝わった「東がすごかったですね。本当にそうです。連打も一回だけやったのかな。そこから点をやらないのがエースでしょ。向こうが立派です」
◆DeNAは1―1の五回に桑原のソロ本塁打と筒香の犠飛で2点を勝ち越し。八回は戸柱の適時二塁打で突き放した。東が七回まで毎回の10安打を浴びながらも、1失点と粘った。DeNA・東のデータは以下のとおり。?DeNA・東が7回を投げて毎回の10安打を浴びたが、1失点に抑えシリーズ初勝利。シリーズで被安打10以上を打たれて勝利投手となったのは、1994年第5戦の巨人・桑田真澄(完投=9回10安打3失点)以来30年ぶり11人目(12度目)。これまでの10人(11度)はいずれも四球を出しており、無四死球は東が初めて。?DeNA(前身を含む)の投手が被安打10で白星を挙げたのは、98年第1戦の野村弘樹(先発6回?、4失点)の被安打9を上回る最多被安打勝利。
◆DeNAは1―1の五回に桑原のソロ本塁打と筒香の犠飛で2点を勝ち越し。八回は戸柱の適時二塁打で突き放した。東が七回まで毎回の10安打を浴びながらも、1失点と粘った。DeNAのデータは以下のとおり。?DeNAが対戦成績を1勝2敗とした。日本シリーズで開幕2連敗から初勝利を挙げたケースは過去19度。そのうち日本一は7度で、優勝確率36・8%。逆転で日本一になった過去7度はいずれも次の試合に勝ってタイに持ち込んでいる。?2000年以降の開幕2連敗から1勝したケースで過去7度のうち、00年の巨人、11年のソフトバンク、16年の日本ハム、22年のオリックスが逆転で日本一になった。?桑原が五回に勝ち越し本塁打。日本シリーズでDeNA(前身を含む)の選手が本塁打を放ったのは、2017年第6戦の白崎浩之以来7年ぶり通算14本目。本塁打が勝利打点となったのは1960年第1戦の金光秀憲(先制)、同第3戦の近藤昭仁(勝ち越し)、2017年第4戦の宮崎敏郎(先制)に次いで7年ぶり4人目。勝ち越し弾が勝利打点となったのは、60年の近藤以来64年ぶり2人目。
◆DeNA・東克樹投手(28)がマウンド上にいる六回1死一塁の場面で試合が中断し、観客への注意喚起として場内アナウンスが2度流れた。中断直後、場内に「試合進行の妨げとなる行為はご遠慮ください」というアナウンス。試合再開かと思われたが、「投手が投げる間際の口笛はご遠慮ください」と2度目の場内アナウンスが行われた。東は試合後「ペイペイドームは指笛は禁止されていないので、駄目とはいえないですが、ただ、投げる瞬間、モーションに入ってからわざと口笛を強くしている感じだったので、ただそれだけはやめてほしい、タイミングは考えてほしい。繊細すぎるという意見もあるか分からないですけど、僕たちはこれが仕事で、人生かけてやっているので、悪気はなかったかもしれないですけど、わざとやっているように感じた。僕にとってはすごくそれが気になった」と明かした。
◆DeNAは1―1の五回に桑原のソロ本塁打と筒香の犠飛で2点を勝ち越し。八回は戸柱の適時二塁打で突き放した。東が七回まで毎回の10安打を浴びながらも、1失点と粘った。試合後の三浦大輔監督のヒーローインタビューは以下の通り。――日本シリーズ初勝利。今の気持ち「そうですね、ほっとしています」――ホームで連敗してから福岡に。選手に何か声はかけたか「選手自らがミーティングしたりとかしながらね。選手の表情を見ても下向くことなく、昨日の練習から今日の試合に向けていい形で入れたと思います」――今日の勝敗を分けたポイント「桑原がね、先頭で1番打者として打線に勢いをつけてくれました。何と言っても東がね、復帰戦で本当にしっかりとゲームを作って、流れを渡さない投球をしてくれたのが大きかったと思います」――東が七回まで投球。想定内だったか「もう行けるところまででね。本当に我慢しながら我慢しながら、初回から最後まで丁寧な投球をしてくれたと思います」――敵地での1勝の意味「これでもう一度流れを掴めるように。それもありますし、この福岡でも本当にたくさんのDeNAファンの方が駆けつけていただき、本当にありがとうございます。感謝します」――ファンへ明日への意気込み「この福岡のファンもそうですし、横浜スタジアムでもたくさんの方が応援してくれています。そのファンの方たちのためにも、チームのためにもみんなで一つになって、また明日戦っていきたいと思います」
◆左足甲の打撲で第2戦を欠場したDeNAのタイラー・オースティン内野手(33)が「4番・DH」で復帰。第1打席で二塁打を放つなど勝利に貢献し「状態は正直よくないですけど、出られる方法を模索してきょうにいたった。勝てたことが何よりうれしい。きょうの試合は必勝をしないといけない試合だと思っていたので、何よりまず一つ勝てたことをうれしく思う」と語った。第1戦の六回、第3打席で自打球が左足を直撃。「チームのトレーナーさんに非常に良い治療をしていただいて、いろんなことをやってはれを落ち着かせようとしているが、期待していたペースでは正直まだはれは引いていない。2017年に同じところを自打球で痛めて、それ以来ちょっと治りが遅い部分ではあるのでその影響もあるかなと。自分のしているフットガードもけっこう分厚いものなので、ここまで長引くとは思わなかったけど、現状まだはれは残っています」と明かした。
◆やられたままでは終わらない。「5番・左翼」で先発したDeNA・筒香嘉智外野手(32)が1安打1打点。貴重な追加点をたたき出す活躍を見せ、「勝つことが大事。僕がどうこうより、勝てたことがいいゲームだった」とうなずいた。1-1の四回に左中間への二塁打。五回の勝ち越し直後には無死満塁から右犠飛を放ち、3点目をもたらした。フェンス際への大飛球にスタンドからは歓声も上がったが、「ホームランはいかないかなと。もう少し手前かと思った」と感触を口にした。27日の第2戦はオースティンに代わって4番に座り、4打数無安打。好機で一本が出ず「打てていたら流れが変わったと思う。負けたのは僕の責任」と唇をかんだ。それでも第3戦で挽回し、三浦監督は「どっしり構えてくれる打者がいると打線に厚みが出る」とたたえた。本拠地で2連敗を喫した後、敵地での初戦に勝利。2017年の日本シリーズを知るベテランは「違う流れになる。大きい1勝」とうなずいた。頼れる大砲が、白星を手繰り寄せた。(原田優介)
◆戸柱が八回、右中間への適時二塁打を放った。捕手としては、けがから復帰戦となった東を好リードし「久しぶりに組んだんですけど、改めていいピッチャーだと感じた」とたたえた。第1戦から3試合連続で先発マスクをかぶる34歳は「3つ負けるのと1個取るのは全然違う。いい結果になった」とうなずいた。
◆戻ってきたエースがチームを救った!! 左太もも裏の肉離れで離脱していたDeNA・東克樹投手(28)がソフトバンクとの日本シリーズ第3戦に先発。復帰登板で7回1失点、105球の力投。日本シリーズ初登板で、チームに待望の1勝目をもたらした。1998年以来26年ぶりの日本一へ、本拠地で喫した2連敗から左腕が敵地で流れを一変させた。まるでジェットコースターのような、17日間の復帰ロード。今季13勝のエースが、マウンドに帰ってきた。東が日本シリーズでの〝ぶっつけ〟復帰登板で力投。重圧の中で待望の1勝をもたらし「投げられる喜びを感じながら、脚がちぎれてもいいくらいのつもりでマウンドに上がった。これでも病み上がりなので、まさか七回まで投げられると思っていなかったけど、チームの期待に応えることができてよかった」と胸を張った。一回に3安打を許し失点。決して万全とはいえない状況で毎回の10安打を浴びながらも、無四球で粘り、二回以降追加点は許さず。「無安打に抑えることは絶対に無理だと思っていたし、走者を出しながらも抑える自分らしい投球ができた」と六回2死一、三塁では甲斐を一邪飛に仕留め、拳を握り雄たけびをあげた。先発した12日の阪神とのCSファーストステージの走塁で左太もも裏を肉離れ。「ああもう無理だって感じ」と当時を振り返る。13日に出場選手登録を抹消されたが「投げるのは全然問題なかった」と1軍に同行したまま復帰への道を探った。チームが日本シリーズ進出を決めたことで、登板の可能性が再浮上。自身不在でCSを制した際は「うれしさ半分、悔しさ半分」と語った左腕が、大一番で存分に力を発揮した。東にはこのオフ、やりたいことがある。最多勝と勝率第1位のタイトルのほか、ベストナインやゴールデングラブ賞などを受賞し大忙しだった昨年は果たせなかった「人生初」の富士急ハイランドへ行くこと。「あの心臓が『浮く』感じが怖いけど大好き」。日本一高い富士山を横目に、大好きな絶叫系アトラクションを一日中たんのうする至福のときを思い描く。球団56年ぶりの開幕8連勝で大きく駆け上がった今季、CSで離脱し一度は底に沈んだ悔しさもエネルギーに変えて、東はさらに高い日本一の山へと上りつめる。(浜浦日向)観客の指笛で試合が中断した。六回1死一塁でのソフトバンク・今宮の打席中に、東が球審に客席での指笛をやめさせてほしいとアピール。2度も場内放送で注意喚起が入る異例の事態の背景について、東は試合後「ペイペイドームでは禁止されてはいないので駄目とは言えないが、投げる瞬間、モーションに入ってからわざと口笛を強くしている感じだったので、タイミングは考えてほしい。僕たちはこれが仕事で、人生をかけてやっているので」と明かした。
◆「SMBC日本シリーズ2024」は第3戦が行われ、セ・リーグ3位のDeNAはパ・リーグ王者のソフトバンクに4-1で勝ち、対戦成績を1勝2敗とした。1番打者の桑原将志外野手(31)が、五回の決勝ソロを含む2安打と打線を牽引(けんいん)。中堅の守備では好捕でナインをもり立てた。桑原とともに2017年の日本シリーズを経験した筒香嘉智外野手(32)、戸柱恭孝捕手(34)も打点を挙げ、ソフトバンクの日本シリーズでの連勝を14で止めた。気迫がほとばしる。全身全霊を込めた桑原のプレーから、勝利への渇望があふれ出た。ガッツマンの異名を取る31歳は、「勝つ」という言葉を何度も繰り返した。「もう、絶対に勝つと思っていたので。勝たないと駄目だったので」同点の五回。代わりばなの大津に先頭で対し、甘く入った2球目の速球を迷わず振り抜いた。左中間のホームランテラス席に飛び込む勝ち越し弾にも表情を緩めず、淡々とダイヤモンドを一周する姿に、慢心は見当たらなかった。本拠地の横浜スタジアムで2連敗を喫し、敵地のみずほペイペイドームに舞台を移して第3戦を迎えた。一回にはスチュワートの2球目を右翼線に運ぶ二塁打で先制機を演出し、内野ゴロの間に生還。三浦監督は「切り込み隊長として最高の働きをしてくれた」と賛辞を惜しまなかった。守備も抜群だった。同点に追いつかれた直後の二回には、中前に落ちそうな先頭打者・正木の打球をダイビングキャッチ。相手のファンも拍手を送るほどの好プレーを見せ、流れを渡さなかった。誰よりも勝利を求めていた。2連敗を喫した27日の第2戦後。主将の牧がナインに呼び掛け、緊急ミーティングが行われた。牧に求められて発言したうちの一人が、ソフトバンクに2勝4敗で日本一を成し遂げられた2017年の日本シリーズを経験した桑原だった。「厳しい言い方になるかもしれないけど、今のソフトバンクに勝てる感じがしないと伝えた。負けて悔しくないんかと」チームメートの奮起を願って発破を掛けた夜、取材エリアに姿を見せたのは試合終了の約2時間後となる午後11時30分頃。誰よりも遅く球場を去り「ずっと考えていた。当たり前のレベルが低かったら到底、強い相手にはかなわない。ここでやらないと終わるぐらい、みんなが自問自答しないと」と危機感をにじませていた。7年前の日本シリーズは、1番で全6試合の先発メンバーに名を連ねながら打率・154(26打数4安打)。役目を果たせず〝戦犯〟扱いもされた。「それを受け止める覚悟はできている。打線を打線にできなかったら自分の責任」。闘志あふれるリードオフマンに導かれ、同じく7年前の屈辱を知る筒香が五回に右犠飛、戸柱も八回に右中間へ適時二塁打を放った。ソフトバンクが18年の第3戦から続けていた日本シリーズの連勝記録を14で止め、反撃ののろしを上げた。指揮官が「一つ目がないと二つ目もない。積み重ね」と言えば、桑原は「明日また死に物狂いでやるだけ。全然ホっとしていない」と呼応した。最後まで口元を緩めず、戦う者の光を瞳に宿したまま球場を後にした。(鈴木智紘)
◆2連勝で迎えた本拠地初戦でつまずいた。ソフトバンクはプロ野球記録を更新していた日本シリーズでの連勝が14で止まり、本拠地での連勝も16でストップ。初黒星を喫した小久保監督は「短期決戦で敗因を振り返る意味はない」と、さばさばと話した。1―1の五回、先発のスチュワートを代え、大津をマウンドへ送ったが、ソロを浴びるなど痛い2失点。継投がはまらなかったが、指揮官は「いいところはいっぱいありましたね」と収穫を口にした。シーズン終盤に痛めた右足首の状態がまだ完調ではない近藤が、今シリーズで初めて「5番・DH」でスタメン出場し、適時二塁打を含む2安打。「出ている以上は勝ちに貢献できるように」。1点を追う一回2死一、三塁でフルカウントから東のチェンジアップを左翼に打ち返して三塁走者をかえすと、自らもしっかり走って二塁に駆け込んだ。「とにかく自分の打撃をしようと打席に入り、追い込まれてからいい集中力を出せた」と好感触をつかむと、六回1死でも中前打を放った。16日のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦に先発出場。二塁打を放つなど勝利に貢献したが、全力疾走など手を抜かないプレーで、朝起きた時に足に痛みを感じるなど影響は否めない。それでも、快音を響かせたのはチームに明るい材料だ。日本シリーズ出場は日本ハムで日本一となった2016年以来。「日本シリーズを経験している人も多いし、自分の役割をしっかりできれば」と集中を切らさず臨んでいる。「(4番手の)前田純は育成選手からはい上がって、日本シリーズであれだけ投げた。(6番手の)長谷川も良かった。第4戦以降へつながる」小久保監督は敗戦にも前向き。ここから連勝し、本拠地の鷹党の前で日本一をかなえる。(上阪正人)
◆サンケイスポーツ専属評論家の江本孟紀氏はソフトバンク打線に、2戦先勝したことによる「おごりが垣間見えた」と、ホークスOBならではの辛口分析。もちろん、DeNA・東の力投をたたえ、精神面の充実ぶりにも言及した。連勝したあとに、ありがちなパターン。一回にすぐ追いつくなど計10安打。また楽に打てるさ...とばかりのムードになったとしてもおかしくない。結局、走者が出ても後続がなく、打線が「線」になっていなかった。ソフトバンクは、コレが怖かったはず。山川にしても、第2戦に本塁打が出たせいか、リキみかえっていた。インローのボールを振ってばかりで、タメがなく、大振りそのもの。主砲がこうでは、打線全体に影響しないわけがない。エモトは第2戦で、先発のモイネロが森敬に対し、ろくにモーションをとらず、ひょいと投げて強襲安打を喫したシーンを「相手を軽くみて調子に乗った」と指摘した。今度は打線? 慢心や油断とまでは言わないが、あえてシビアに、おごりは垣間見えたと再び警鐘を鳴らしておく。もちろん、「線」にさせなかった東の力投も、褒めたい。球は走っていたし、変化球も効いていた。それほど点は取られないと、自信を持っていたことだろう。先頭打者を一度も出塁させない集中力もさすが。そうした精神面をよく表していたのが六回。1死一塁の場面で、試合を中断させたところ。投げる瞬間、スタンドから指笛だか口笛を吹かれることを球審にアピールした。見たことのないシーンだ。気になるのなら、アピールするのは当然だし、神経の細やかさと落ち着きを感じたね。東のマウンドさばきが打線に安心感を植え付け、奮起を呼んだともいえる。DeNAは一見すると「打」のチームで、実は「投」。今シリーズでもリリーフ陣が踏ん張ってきた。そこを見落としたら、いけないよ。(サンケイスポーツ専属評論家)
◆SMBC日本シリーズ2024は30日、みずほペイペイドームで第4戦が行われ、対戦成績2勝1敗とリードするパ・リーグ王者のソフトバンクと、セ・リーグ3位から勝ち上がったDeNAが対戦する。先発投手はそれぞれ石川、ケイ。4年ぶり12度目の日本一を狙うソフトバンクは第3戦で、2018年第3戦から続けていたシリーズ連勝記録が14で途切れた。DeNAは26年ぶり3度目のシリーズ制覇に挑む。第5戦も同球場で開催され、第6、7戦は横浜スタジアムで行われる。
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