ヤクルト(☆6対5★)阪神 =リーグ戦11回戦(2024.06.30)・明治神宮野球場=
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阪神
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ヤクルト
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勝利投手:木澤 尚文(3勝1敗2S)
(セーブ:田口 麗斗(1勝1敗7S))
敗戦投手:漆原 大晟(0勝3敗0S)

本塁打
【阪神】大山 悠輔(5号・4回表ソロ)
【ヤクルト】オスナ(10号・4回裏ソロ)

  DAZN
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◆ヤクルトが逆転勝利。ヤクルトは4点ビハインドで迎えた8回裏、村上と長岡の適時打で同点とする。なおも続く好機で代打・山田の適時打が飛び出し、勝ち越しに成功した。投げては、3番手・木澤が今季3勝目。敗れた阪神は、先発・西勇が好投するも、救援陣が振るわなかった。

◆近本光司外野手(29)が3試合ぶりにスタメン復帰した。不振で2試合連続で欠場していた。当たりが止まり、打率は2割5分2厘まで降下。本来の活躍をできれば低迷する打線の大きな力になる。近本の「代役」として2試合連続で2安打1四球と活躍していた島田海吏外野手(28)も引き続きスタメン。「3番右翼」に入る。森下翔太外野手(23)が先発を外れた。前日29日に1軍デビューした野口恭佑外野手(23)もベンチスタート。先発は西勇輝投手(33)。6月は完封も含めて3試合で防御率0・82と絶好調。4勝目をかけて今季初のヤクルト戦に臨む。

◆阪神大山悠輔内野手(29)が先制のソロアーチを放った。0-0の4回1死からヤクルト先発サイスニードにカウント2-2から低めの直球を振り抜いた。打球は風に乗って右翼スタンドに吸い込まれ、大山も驚いた表情だった。大山のアーチは22日のDeNA戦(甲子園)以来5試合ぶり。これで4試合連続安打を記録した。

◆阪神が風に笑って、風に泣いた。4回に大山悠輔内野手(29)の右中間への飛球が風に乗って柵越え。岡田彰布監督(66)はじめベンチも驚く1発で先制した。その裏に今度は先頭ホセ・オスナ内野手(31)の打球は左翼ポール際へ。前川右京外野手(21)が早々にフェンス前の「落下点」に入ったかと思われたが、高く上がった打球は風に押されて、そのままスタンドに届いた。打たれた西勇輝投手(33)はぼうぜんと打球方向を見つめていた。

◆阪神野口恭佑外野手(23)が試合前から声出しでナインを和ませた。初めて担当した試合前円陣での声出しの様子が、球団公式インスタグラムに投稿された。「今日はテーマとして1球入魂。この1球に魂を込めてということで。1球1球集中して。この1球に全力を注ぐということで。1球1球集中して、勝って大阪に帰りましょう!さあいこう!」。多少詰まりながらも元気よく締めくくった。しかしナインの輪は解けず「テーマ変えよう!」と"洗礼"のイジり。「今日のテーマは、全力プレー!今日は絶対勝ちましょう!さあ行こう!」とすぐさま切り返し、笑いを誘った。28日にプロ初の1軍昇格を果たした大卒2年目。初の声出しながら、チームを盛り上げた。

◆好調の阪神西勇輝投手(33)が防御率0点台で6月を締めた。6回1失点でリードを保って降板した。初回から毎回走者を出したが、要所の1本を許さなかった。失点は4回にオスナに打たれたソロアーチだけだった。6月は完封したオリックス戦など4試合に登板して、月間防御率0・96で終えた。今回は雨天中止で、登板予定だった28日から2日間ずれたが、ベテランらしく仕事をこなした。この日先発予定だったジェレミー・ビーズリー投手(28)が「西勇の方が調子がいい」と順番を譲った経緯があり、西勇も感謝していた。

◆阪神が8回にダメを押す5点目を奪った。1死一、三塁で代打糸原健斗内野手(31)が登場。たたきつけた打球に一塁手のオスナが猛然と突っ込んだが、送球を焦ってか、つかみそこねてオールセーフ。三塁走者も生還した。記録員の発表は「一塁手のエラー、打点なし」だった。三塁走者の佐藤輝明(25)のスタートがよく、かりにオスナが素早く本塁送球していても、間に合わないタイミングのように見えた。1点は入ったものの、糸原の個人成績に限れば、不運な結果となった。

◆本拠地・神宮の強風が、ヤクルト先発サイスニード投手(31)の行く手を阻んだ。初回からストライク先行でテンポよく投げ込みゼロを並べたが、4回に3安打と打ち込まれた。1死走者なしから打席に立った4番大山に対し、6球目に投じた低めの直球を狙われた。右翼・宮本が見上げる中、打球は風に乗ってぐんぐん伸び、右翼席に着弾した。バックスクリーン上部の球団旗が激しく揺れるほどの風の影響は絶大だった。打った大山すら驚きを隠せない1発で先制点を与えた。続く前川には左前打を許し、2死一塁で7番梅野には左翼フェンス直撃の適時二塁打を浴びて2点目。その直後にオスナの10号ソロで1点差に詰め寄るが、6回にも梅野にタイムリーを許し突き放された。6回97球を投げ、8安打3失点と試合はつくったが、勝ち投手の権利は得られなかった。サイスニードは「結果としては6回3失点というカタチだったがチームを有利に進めることができる投球ができなかった」と悔やんだ。

◆阪神がまさかの逆転負けを喫した。5-1でリードしていた8回裏に、4点差をひっくり返された。連敗で貯金0。勝率5割に戻ってしまった。巨人が広島に勝利したため、3位から4位に転落した。4回に4番大山が先制5ソロ。ヤクルト・サイスニードから放った打球は右翼へ伸び、風に押されてスタンドイン。打った大山も岡田監督も驚きの表情を見せる「神風弾」だった。大山は7回にも適時打。一時はヤクルトを突き放していた。ただ、8回に桐敷、漆原、岩崎がリードを守り切れず。先発西勇輝投手(33)は粘り強いピッチング。6回3安打1失点だったが、4勝目を逃した。7月2日からは敵地マツダスタジアムで首位広島に挑む。

◆阪神にとっては「魔の8回」になった。自慢の救援陣が軒並み崩れて4点差をひっくり返された。必勝の継投で逃げ切りに入っていた8回。3番手の桐敷拓馬投手(25)が1死後に四球と安打でピンチを作り、2死としながら村上宗隆内野手(24)に中前打を打たれて、5-2の3点差。ここでピンチに強い漆原大晟投手(27)が投入された。だが四球で2死満塁とされ、続く長岡秀樹内野手(22)に走者一掃に二塁打を浴びて、またたく間に同点にされた。さらに松本直樹捕手(30)に左前打を打たれ、2死一、三塁となったところで、守護神の岩崎優投手(33)まで投入。しかし、最後の砦(とりで)となるはずの左腕も代打山田哲人内野手(31)に勝ち越し打を打たれた。先発西勇輝(33)の好投と、打線の奮起で楽勝ムードが漂っていたが、最も信頼できるブルペン陣が打たれるというショッキングな展開に。ベンチの岡田彰布監督(66)も、ぶぜんとするしかなかった。

◆阪神岡田彰布監督(66)が最後の「暴走」に激怒した。1点を追う9回。2死一塁から佐藤輝明内野手(25)が左翼越えに二塁打。代走の切り札、植田海内野手(28)は打った瞬間にスタート。本塁をめがけて快足を飛ばしたが、相手の中継プレーが完璧だった。左翼から遊撃を経由して、本塁にどんぴしゃりのストライク返球。何度も劇的なホームインをしてきた植田でも、本塁のかなり手前でタッチアウト、試合終了となった。阪神ベンチは全員がぼうぜんと立ち尽くした。岡田監督の怒りの矛先は、本塁へのGOサインを出した三塁コーチャーの藤本敦士コーチ(46)に向いた。「負けてんねんやで、1点負けてんねんやで。信じられんわ、おまえ。なんでも行けじゃないやろ、状況判断やんか、それは。当たり前やろ、こんな狭い球場で。びっくりしたわ、オレも最後。ええ? って思ったわ。先攻で1点負けててなあ。(走者)二塁、三塁でええんちゃうの? (投手が)左で、次が今日2本、タイムリー打ってるバッター(梅野)で」と、あきれ返っていた。6月21日のDeNA戦(甲子園)では、同点の9回に二塁から植田がサヨナラ生還を果たした。かなり厳しいタイミングだったが「あれを止めたらもう(監督を)辞めるよ」と、突っ込ませるのは当然の判断だったと語っていた。

◆ゲームセットも「まさか」だった。阪神ベンチは誰1人動けず、本塁手前で突っ伏す植田海内野手(28)を眺めるしかなかった。8回に4点差を逆転され、逆に1点を追うことになった9回。2死一塁から佐藤輝明内野手(25)が左翼越えに二塁打。代走の切り札、植田は本塁をめがけて快足を飛ばしたが、相手の中継プレーが完璧だった。左翼から遊撃を経由して、本塁にどんぴしゃりのストライク返球。植田は本塁のかなり手前でタッチアウト、試合終了となった。手を回した三塁コーチャーの藤本敦士コーチ(46)は「自分の中では勝負したいというのがあった。植田も出ているから。(フェンスからの)クッションも完璧に返ってきたのもあった。あとはもう送球がそれてくれるのも、ちょっと願っていた。どっちが正しいかと言ったらちょっと分からない」と振り返った。

◆阪神がまさかの逆転負けで4位に転落した。5-1でリードしていた8回裏に、4点差をひっくり返された。9回は2死一塁から佐藤輝明内野手(25)が左越えの当たりを放つも、一塁走者が本塁でタッチアウトとなった。痛すぎる敗戦で連敗となり貯金0。勝率5割に戻ってしまった。岡田監督の一問一答は以下の通り。-結果的にフォアボールから「まあ、そらお前、準備の問題やろな」-整理してマウンドに上がれていなかった「いやいや、上がってるやろ。桐敷は」-漆原のところが準備不足「漆原なんか投げさすつもりなかったよ。ゲラと岩崎が(ブルペンで準備を)やってないんやから。投げさせられへんやんか。なんで、準備せえへんのやろうなぁ。見たらお前、今度(準備させていたのは)島本やった。昨日2イニング投げてんのに。教育やなぁ、しかし。そこまで全部やらなあかんねんなぁ。しかし、なぁ」-岩崎も結果的に慌ててマウンドに上がる形になった「だって(準備を)やってないんやもん。だってそんなん、もう普通通りお前、なぁ、きっちり3人でいって、お前、桐敷、ゲラで最後いくって言うてお前、そんなうまいこといかん場合もあるわけやんか。それが準備やんか。ブルペンなんか。そんなんいつもいつもやったら、誰もいらんやんか、こっちから指示したらええだけやんか。何かあった時用の準備をせなあかんわけやろ? 島本?(が準備していると聞いて)、ええ? 昨日2イニング投げてるんやで。今日なんか投げさせる予定なんかないピッチャーやんか」-今日は打たれたピッチャーを責めることはできない「できんよ、そらおまえ。島本はあないしてピッチングせえって言われたんやろな。信じられんわ。そこまでやらなあかん? 1人でおまえ」-投打がかみ合っていないが、もう少し修正すれば一気に勝てそうな空気がありそう「いや、そうやろ? 今日でも。今日勝つために、何のために昨日最小限のピッチャーでやってるんよ、ブルペンを。そんなんわかるやろって思うけどな」-打線は中軸に当たりが出てきた。「打線は出てきてるよ。昨日でもああいうビハインドやから、ああいう展開になっただけであって。やっとちょっと反発力がでてきたのに、お前。なんでそんな楽観的なことするんやろな。準備というか、なあ、備えへんのやろなあ。こんな、この風なんか、何があるか分からへんのに、当たり前やろ。初めてやわ、漆原、島本やったもんな。ええ? ゲラいくぞ言うたら、漆原しかやってませんて、ええ? って。そらお前、あそこで漆原も酷やで。俺は思うよ。なんでと思ったけど。そんなんきっちりお前、3人ずつでいくわけないやん。何が起きるか分かれへんねんからさあ。桐敷いって、4点差やから9回はゲラでとか、そんなん一番ええことは絵に描いてるけど、そんなん何があるか分からへんやん、ゲームなんかなあ。なんで準備せえへんのやろ」-相手の打順を見ても8回をしっかり抑えれば「そうやん、あっこ左左でなあ。俺もサンタナからゲラいくつもりやったけど。びっくりしたわ。びっくりしたわ、漆原1人でやってたな。ええ? と思ったわ。一番悔い残るやろ、出し惜しみして負けるのが。いつも言ってるやろ。出し惜しみはあかんて。なんのために何人あいてるんよ。昨日2イニング投げたやつをなんでピッチングさすねんやろ、ほんま分からん。ひどいなしかし」-9回は勝負にいった結果「負けてんねんやで、1点負けてんねんやで。信じられんわ、おまえ。なんでもいけじゃないやろ、状況判断やんか、それは、当たり前やろ、こんな狭い球場で」-代打も残っている「びっくりしたわ、オレも最後。ええ? って思ったわ。先行で1点負けてて、なあ。二塁、三塁でええんちゃうの? 左で今日2本タイムリー打ってるバッターで」-タラレバだが今日をとれていれば「いや、そら全然ちゃうよ。今日の負けはめっちゃくちゃ大きいよ、はっきり言って。そんな簡単な1つの負けちゃうで、今日なんかは」-火曜からの広島戦の戦い方、入り方も変わってくる。「いや、戦い方もクソもお前、そらお前、こういうことをやってるとやっぱり終盤になって、勝っててもそういうのがなるやないか。そんなん当たり前やんか、お前。継続してるんやからな、そんなお前、毎日試合っていうのはな。それをお前、きっちり当たり前のことをやってるから、ちゃんと継続しているのがええ方向にいくわけであって、お前。そんなもん、こっちで歯車を崩してしまうわけやからな。そんなお前、1つの負けですまんよ、これ、ほんまに。大変な負けやで、こんなん」

◆阪神の自慢のブルペン陣がそろって崩れた。岡田彰布監督(66)は投手コーチのプランニングに疑問を呈した。6回1失点の西勇輝(33)のあとを受け、7回から継投に。2番手石井大智(26)は7回を無難に抑えたが、4点リードで迎えた8回が大誤算だった。セットアッパー桐敷拓馬(25)が1死から四球を出し、2安打されまず1点を返された。安定感のある左腕の乱調に、ブルペンも対応に追われた。ピンチでの途中登板に強い漆原大晟投手(27)がマウンドに向かったが、四球で満塁とし、長岡秀樹内野手(22)に3点二塁打を浴びて同点にされた。実は岡田監督は桐敷のあとは漆原ではなく、ハビー・ゲラ(28)を想定していた。開幕から岩崎優(33)とダブル守護神を組んで活躍したが、調子を落とし、2軍調整をへて、26日に復帰登板を果たしていた。セーブシチュエーションになれば岩崎の登板も当然考えていた。「漆原なんか投げさすつもりなかったよ。ゲラと岩崎が(準備を)やってないんやから、投げさせられへんやんか。なんで準備せえへんのやろうなあ。見たら、今度(準備しているのが)島本やった。昨日2イニング投げてんのに。そんなうまいこといかん場合もあるわけやんか。それが準備やんか。ブルペンなんか」結局、ほとんど準備できていない守護神・岩崎優(33)が漆原のあとにマウンドへ。頼みの左腕は、代打の山田哲人内野手(31)に決勝左前打を打たれた。岡田監督は「できんよ、そら」と打たれた3投手を責めることはしなかった。ベンチに入っている安藤優也投手コーチ(46)と、ブルペン担当の久保田智之投手コーチ(43)に対して「教育やなあ、しかし。そこまで全部やらなあかんねんな。しかし」と嘆き節が止まらなかった。

◆惜しかった! 阪神佐藤輝明内野手(25)の全開が近そうだ。二塁打3本で打線をけん引。1試合3安打は今季初めて。複数の長打も同様だった。ショッキングな負けでも少しだけ前を向ける。そんな弾道だった。まさかの1点を追いかける状況になった9回。大山の併殺打で万事休すと思われたが、前川が四球で出塁。佐藤輝は追い込まれながら、左腕田口のスライダーにバットを合わせた。逆方向への鋭いライナーは、深く守っていた左翼手並木の頭を一瞬で越えた。同点の期待感が高まったが、植田が本塁タッチアウトになった。「球場にも助けられながら。感覚はよかったと思います。できることはやったので。また火曜日から頑張ります」と、佐藤輝は淡々と試合を振り返った。打席内容も充実していた。6回は高々と打ち上げ、風にも乗ったか、右中間フェンスを直撃。8回の先頭では力強く引っ張ってライナーで右翼線を襲った。ともに貴重なホームを踏んだ。9回も含め、すべて2ストライクからの快打だ。岡田監督の"予言"は的中している。27日の中日戦(甲子園)で2ストライクから放った左前2点打を「あの打ち方ができるんやったら、最初からやってくれと思うよ」と良化の兆しを認めた。その後も打ち続け、6試合連続Hランプ。開幕から2割前後をうろついた打率も、今季最高の2割3分2厘まで上がった。あとは2カ月以上「3」で止まっている本塁打だけ。その雰囲気はプンプンとにおっている。【柏原誠】岩崎(8回に緊急救援も山田に決勝打を許し)「勝負に負けたということです」漆原(8回2死一、二塁で救援したが長岡に同点3点二塁打を浴びて3敗目)「次は打たれないように修正しないといけない」桐敷(8回に3番手で登板も四球から崩れ今季ワースト3失点)「あの四球が全て。ウルシさん(漆原)にも申し訳ないことをしてしまいました」

◆4番の復調が希望の光だ。阪神大山悠輔内野手(29)が5号ソロと中前適時打で打線を勢いづけた。6月21日の1軍再登録以降、28打数9安打で打率3割2分1厘、2本塁打、5打点と好調を維持している。「とにかく先に点が欲しかったので、いい結果になってくれてよかったです」追い風に乗った。0-0の4回1死からヤクルト先発サイスニードの6球目、148キロ低めの直球を強振。打ち損じかと思われた打球はホームから中堅方向への強風に押されてぐんぐんと伸び、右翼スタンド最前列に吸い込まれた。三塁手前で着弾点を確認した大山は驚いた表情だった。本塁打は22日のDeNA戦(甲子園)以来5試合ぶり。前日29日にも8回に右前打を放ち、これで4試合連続安打を記録した。さらに3-1の7回。2死から2者連続四球で一、二塁の好機。2番手左腕、山本の内角変化球をコンパクトに振って中前に運んだ。4点目をたたき出し、4番の役割をきっちりとこなした。打線はこの日13安打5得点で、今季15度目の2桁安打と息を吹き返しつつある。背番号3が快音で打線をけん引する。【村松万里子】

◆両手の感触が心地よかった。ヤクルト山田哲人内野手(31)が、阪神との乱打戦にけりをつけた。8回に代打で決勝適時打を放ち「技術どうこうよりも気持ちで打ちました」と執念の一打で逆転勝利をもたらした。4点差を追いつき、なお2死一、三塁。武岡に代わって打席に立つと、本拠地・神宮に「山田コール」がこだました。左腕の岩崎にも動じない。「早い段階で左ピッチャーが来たら、コーチから『いくから』と言われていたので」と準備はできていた。カウント2-1からのチェンジアップを左前へ運んだ。打球が内野の頭を越えると、自然と感情が高ぶった。右拳を握って力強くガッツポーズを作り、割れんばかりの歓声に応えた。お立ち台では声援に後押しを受けたと明かした。「打席の中での大きな『山田哲人コール』が心に響きました」と感謝した。チームは中日と並んで最下位に沈むが、リーグはまだまだ混戦模様。優勝は諦めていない。下半身のコンディション不良などで前半戦は2度の離脱を強いられたが「残り半分ということで前を向いて、チームも、個人的にもしっかり成績を残したい」。頼れる主将の活躍が浮上の鍵を握っている。【平山連】○...長岡が貴重な同点打を放った。8回に打線がつながり1点をかえし、なおも3点を追う2死満塁。「誰1人諦めてなかったので、僕も後ろにつなぐという気持ちで打席に入りました」と、阪神4番手の漆原の直球に絞った。真ん中寄りにきた狙い球を逃さず、右中間フェンス直撃の3点適時二塁打。逆転劇を呼び込み「この勢いで後半戦もいきたい」と話した。高津監督(代打決勝タイムリーの山田について)「結構腹をくくるところはくくっていきますよ、あいつは。代打での経験がたくさんあるわけではないけど、1打席にかける集中力としっかり振る思いきりが素晴らしい」村上(8回に反撃の口火となる適時打)「後ろにつなごうという意識でした。うまくセンターには運べたんでよかった」

◆これは大変な負けよ...。阪神岡田彰布監督(66)が激怒した。ヤクルトに4点差をひっくり返され、まさかの逆転負け。6月15日以来、半月ぶりに4位転落でBクラスだ。5失点した8回は、救援陣の準備不足により指揮官のイメージ通りの継投ができず。9回は代走植田が本塁憤死しゲームセット。怒りの矛先は安藤、久保田の両1軍投手コーチ、三塁コーチャーを務める藤本内野守備走塁コーチに向いた。神宮に降る小雨が、雰囲気の重さに拍車をかける。貧打に泣く打線が13安打で5得点。盤石のリリーフ陣に試合を任せればうまくいく-。そんな想像は甘かった。ショッキングな逆転負け。岡田監督は、ただの1敗ではないと強調する。「1つの負けですまんよ。大変な負けやで、こんなん」4点リードの8回に投入したのは桐敷。1点を失い2死一、二塁でサンタナを迎えると漆原にスイッチしたが...。「漆原なんか投げさすつもりなかったよ。ゲラと岩崎が(ブルペンで準備を)やってないんやから。なんで、準備せえへんのやろうな」。ここで指揮官の頭にあったのはゲラの起用。サンタナにぶつけるつもりだった。「ゲラいくぞ! って言うたら『漆原しかやってません』って」。ベンチの安藤投手コーチとの会話を回想すると「何があるか分からへんやん。なんで準備せえへんのやろ」と続けた。一方、島本はいつでも登板できるよう準備を進めていたが、前日に2回を投げていた。「今日投げさせる予定なんかないピッチャーやんか」とバッサリ。「教育やなぁ、しかし。そこまで全部(監督が)やらなあかんねんなぁ」。ベンチにいる安藤投手コーチとブルペンを預かる久保田投手コーチの連携不足、想定不足に怒りが収まらない。結局、漆原は2死満塁で長岡に3点適時二塁打を浴び、同点に。十分な準備だったとは言いがたい岩崎に代わると、2死一、三塁で代打山田に決勝打を浴びた。1点ビハインドの9回2死一塁では、佐藤輝の左越えの当たりに一塁走者植田が本塁を狙ったが、中継プレーで本塁タッチアウトにされた。本塁突入を判断した三塁コーチャーの藤本内野守備走塁コーチに対しては「信じられへんわ。状況判断やんか。当たり前やろ、こんな狭い球場で」。貯金0で4位転落。重い空気のまま、7月2日の首位広島戦に臨むことになった。【中野椋】

◆阪神梅野が今季初の2打点を挙げた。まずは先制直後の4回2死一塁。先発サイスニードの直球を捉え、左翼フェンス直撃の適時二塁打を放った。6回2死二塁の場面では変化球を捉え、三遊間を破る左前適時打。13日オリックス戦以来となるマルチ安打を決めた。守備面でも3回2死一塁でワンバウンド投球をはじいた際、二塁を狙った走者をアウトにする好送球を見せた。それでもチームは逆転負け。「本当に負けたことが悔しいです。それだけかな。やることは変わらないので」と球場を後にした。

◆阪神西勇が好調の1カ月を6回3安打1失点で締めくくった。5回まで毎回走者を出しながらも要所を締める粘投。初回から2死一、二塁を招いたが、5番サンタナを三ゴロに打ち取った。4回にはオスナに1発を浴びたが、これが唯一の失点。白星こそ逃したが、リードを渡さなかった。6月は4試合に登板し、1勝1敗の防御率0・96。全試合でクオリティースタート(6回以上、自責3以下)を達成した。「悪い状況でもまとめられていたし、修正もできてきていたので。プラスに捉えていますね」と登板を振り返った。

◆阪神近本が3試合ぶりのスタメン復帰も、即安打とはならなかった。2試合の欠場を挟み「1番中堅」で6月26日中日戦(甲子園)以来の先発出場。しかし5打数無安打に倒れ、久々の快音は響かなかった。「ヒットを打てなかったので。ヒットを打ちたかったです」。月間打率1割5分7厘と、苦しい6月を終えた。

◆阪神前川が今季10度目のマルチ安打で好機を演出した。2回先頭で直球を捉えて右前打。4回にも直球を左前に運び、梅野の適時打をお膳立てした。25日中日戦(倉敷)から5試合連続の「5番左翼」出場で、期待に応えた。「ちゃんと捉えられたので、よかったかなと思います」と振り返った。

◆阪神森下が意地を見せた。22日DeNA戦以来、5試合ぶりのベンチスタート。7回2死一塁で代打出場し、まずは四球で好機拡大。1点を追う9回先頭では右腕大西の速球を強振。三遊間を抜く左前打で出塁した。前日6月29日には岡田監督から「ナンボ言うてもアカン」と厳しい言葉を投げかけられていた。「後から行くときに打てないとやっぱり監督にもアピールできないと思う。1本出たのは良かったかなと思いました」と振り返った。

◆まさかの幕切れだった。阪神は9回2死一塁から佐藤輝が左越え打を放ったが、代走植田が本塁のかなり手前でアウト。完璧なクッション処理、中継プレーでタイミングは絶望的だった。三塁コーチャーの藤本コーチは「勝負したいというのがあった。送球がそれてくれるのもちょっと願っていた。どっちが正しいかは分からない」。植田は「回してたから行ったという感じですね」と短く話した。

◆阪神は近本光司外野手(29)が「1番・中堅」で3試合ぶりに先発する。6月は月間打率・167(78打数13安打)と低調の中、27日の中日戦(甲子園)から2試合続けて出場がなかった。「3番・右翼」には2試合で6出塁の島田が入り、森下が22日のDeNA戦(甲子園)以来となるスタメン落ち。西勇輝投手(33)は2020年8月22日以来、4年ぶりの神宮星を目指す。

◆スタメンに復帰した阪神・近本光司外野手(29)の第1打席は左飛に倒れた。不調により27日の中日戦(甲子園)から2試合続けて出場がなかった近本。3試合ぶりに「1番・中堅」に名を連ね、虎党の大声援に迎えられて打席に入った。初球からスイングをかけるも一塁線へのファウル。カウント1―2からの5球目の直球を左翼に打ち上げた。カード負け越しを避けるべく、帰ってきたリードオフマンの2打席目以降に期待だ。

◆阪神・佐藤輝明内野手(25)がファインプレーで失点を防いだ。一回の守備、先発の西勇は安打と四球で2死一、二塁のピンチを迎える。打席には29日の試合で2打点のサンタナ。2球目を打ち返し、鋭い打球が三遊間を襲った。しかし三塁の佐藤輝がこれに素早く反応。スライディングしながら見事にさばき、回転して素早く一塁に転送。立ち上がりのピンチに飛び出した好守でチームを救った。

◆阪神・大山悠輔内野手(29)が四回、先制の5号ソロ本塁打を放った。打った本人も驚いた表情で、スタンドに飛び込むボールを見つめた。カウント2-2からサイスニードが投じた6球目、外角低めの直球を捉えると、一度は捕球できるかと構えた右翼手がずるずる下がり、強い風にあおられた打球がそのまま右翼スタンドへ。三塁ベース付近まで全力で走っていた大山が、不思議そうにホームを踏んだ。自身22打席ぶりの一発で好投の先発・西勇を援護した。続く前川が左前打で出塁し、2死から梅野が左中間へ二塁打。前川が一塁から一気に生還し、2点目を加えた。

◆阪神・大山悠輔内野手(29)が四回、先制の5号ソロ本塁打を放った。打った本人も驚いた表情で、スタンドに飛び込むボールを見つめた。カウント2-2からサイスニードが投じた6球目、外角低めの直球を捉えると、一度は捕球できるかと構えた右翼手がずるずる下がり、強い風にあおられた打球がそのまま右翼スタンドへ。三塁ベース付近まで全力で走っていた大山が、不思議そうにホームを踏んだ。自身22打席ぶりの一発で好投の先発・西勇を援護した。続く前川が左前打で出塁し、2死から梅野が左中間へ二塁打。前川が一塁から一気に生還し、2点目を加えた。大山は「打ったのはストレート。とにかく先に点が欲しかったので、いい結果になってくれてよかったです。これ以降の打席もまた次の1点が取れるようにチームに貢献できればと思います」とコメントした。

◆阪神・西勇輝投手(33)がヤクルト・オスナに今季初の本塁打を浴びた。2点を先制した直後の四回。先頭のオスナが変化球を打ち上げた打球は、風にも乗って左翼ポール際に吸い込まれた。西勇は今季は10試合で被本塁打ゼロ。昨年9月5日の中日戦(バンテリン)で細川に浴びて以来1本も打たれていなかったが、約9カ月ぶりに浴びる一発で1点差で詰め寄られた。しかしこの後は村上、サンタナ、長岡を3人で抑え、追加点は与えなかった。

◆「3番・一塁」で先発出場したヤクルトの助っ人砲、ホセ・オスナ内野手(31)が四回に今季10号となるソロ本塁打をマークした。2点を先制された直後の攻撃。先頭で右打席に入ると、カウント1ー1から西勇が投じた内角寄りのチェンジアップを豪快に引っ張った。高々と上がった打球は大きな放物線を描いて左翼ポール際へ消えた。6月14日のオリックス戦(京セラ)以来、10試合ぶりの一発とし、来日4年目の右打者は、球団を通じて「(点を)取られた直後に1点を返せて良かった。風の力もあった。勝てるように頑張ります」とコメントした。

◆阪神・西勇輝投手(33)が先発し、6回3安打1失点と好投した。燕打線との今季初対決は多彩な球種を駆使して立ち向かった。一回は安打と四球などで2死一、二塁のピンチを迎えたが、三遊間へ放たれたサンタナの鋭いゴロを華麗にさばいて処理した三塁・佐藤輝の好守にも助けられ、無失点発進。二、三回は四球で走者を出塁させるも、ここもゼロを刻んだ。2点の援護点をもらった四回はオスナに左翼ポール際へソロアーチを架けられて1点差に迫られたが追加点は許さず、先頭の松本に三塁線を破る二塁打で出塁された五回も後続を断ち、六回はこの試合初めて走者を出さずに三者凡退で抑え、95球を投げて最少失点にしのいだ。当初は28日の今カード初戦に先発予定だったが、雨天中止を受けて2日スライド。中8日で臨んだ今季初のデーゲーム登板だったが、安定感抜群の投球を神宮のマウンドでも披露した。

◆阪神・大山悠輔内野手(29)が「4番・一塁」で出場。3―1の七回に中前適時打を放った。この回は代打・野口、近本がともに内野ゴロに倒れて2死となったあと、中野と代打・森下が四球で出塁してチャンス到来。ここで打席に立った4番が1ストライクから投じられたスライダーに反応して中前に落とし、二走・中野を4点目のホームに迎え入れた。大山は四回にも右翼へ、22日のDeNA戦(甲子園)以来5試合ぶりの一発となる右翼への5号ソロを放っており、これでこちらも5試合ぶりとなる1試合複数打点。勝利に向けて、打棒でチームをけん引している。

◆阪神が梅野隆太郎捕手(33)の2打席連続適時打で追加点を奪った。2-1の六回。2死から佐藤輝が直球を弾き返し、右中間フェンス直撃の二塁打でチャンスを作る。続く梅野は2球で追い込まれながらも、変化球を1球見逃して4球目。鋭い打球で三遊間を破り、佐藤輝が生還した。これで3-1とし、好投を続ける西勇に女房役が再び2点のリードをプレゼント。梅野は「しっかりといいスイングができました。1点で終わらずに追加点を取ることができてよかったです」とコメントした。

◆阪神の救援陣が崩れて逆転を許した。5-1と4点リードの八回。3番手の桐敷が1死から四球、安打でピンチを背負うと、2死から村上に中前適時打を浴びる。ここで4番手・漆原にスイッチするも四球を与えて満塁となり、長岡に右中間へ走者一掃の適時二塁打で同点を許した。続く松本直にも安打を浴びて2死一、三塁で5番手・岩崎にスイッチ。ところが代打・山田に左前適時打を打たれて一挙逆転。八回は5安打2四球、打者一巡の攻撃で逆転を許した。

◆阪神は終盤に救援陣が打ち込まれ、逆転負けした。四回に大山悠輔内野手(29)のソロ本塁打で先制。梅野が2本の適時打を放つなど八回までに5点を加え、4点差をつけた。先発の西勇輝投手(33)は6回1失点と試合を作り、迎えた八回の守備が誤算だった。3番手・桐敷が2死一、二塁から村上に中前適時打を許して1点を失うと、代わった4番手・漆原が満塁で長岡に走者一掃の適時二塁打を浴びて同点に追いつかれた。なお一、三塁となって岡田監督はマウンドに岩崎を送ったが、代打・山田に勝ち越しの適時打を許して逆転された。攻守がかみ合わずに連敗を喫し、34勝34敗5分けで再び勝率5割に逆戻りとなった。

◆ヤクルトは4点を追う八回、長岡秀樹内野手(22)の3点二塁打で同点に追いつくと、代打・山田哲人内野手が(31)が勝ち越し打を放ちチームは連勝を飾った。以下、長岡のヒーローインタビュー。--今の気持ちは「嬉しいです」--3点差の八回2死満塁、どんな気持ちで打席へ「点差は少し離れましたけど、誰一人あきらめていなかったので、僕も後ろにつなぐ気持ちで打席に入りました」--打ったのは狙っていた球種「真っすぐ一本で狙っていました」--手応えは「間は抜けてくれたかなと思いました」--同点に追いついてベンチは大盛りあがり「(二塁上で)もう1点と思ってました」--チームは連勝「このような雨の中、最後までご声援ありがとうございます。まだまだ、前半も終わってないので、優勝目指して頑張りましょう」

◆ヤクルトが逆転勝ち。1―5の八回に村上の適時打と長岡の3点二塁打で追いつき、代打山田の適時打で勝ち越した。西勇が6回1失点と好投した阪神は大山の5号ソロなどで順調に得点したが、八回に3投手が5安打2四球と崩れた。

◆ヤクルトは4点を追う八回、長岡秀樹内野手(22)の3点二塁打で同点に追いつくと、代打・山田哲人内野手が(31)が勝ち越し打を放ちチームは連勝を飾った。以下、山田のヒーローインタビュー。--ファンの声援を聞いて「打席の中でも大きな山田哲人コール、心に響きました」--今日はベンチスタート「自分の出番が来たら結果を残そうとしっかり準備してました」--八回2死一、三塁、勝ち越しの場面で代打を告げられて「技術どうこうよりも気持ちで打ちました。チームもいい流れできていたのでその流れで。、そしてファンのご声援のおかげで打つことができました」--打った瞬間にガッツポーズ「自然と出ました」--最後にファンに向けて「優勝目指して次の試合も勝てるように、勝ちにつながるヒットを打てるようにがんばります」

◆九回、阪神・佐藤の左越え二塁打で本塁に突入するも憤死した植田海=神宮球場(撮影・長尾みなみ)

◆ヤクルトは30日、阪神に6-5で逆転勝ちした。ヒーローインタビューは同点3点三塁打の長岡秀樹(左)と決勝適時打の山田哲人=神宮球場(撮影・長尾みなみ)

◆阪神が逆転負けで勝率5割となり、4位に転落した。5ー1の八回、桐敷拓馬投手(25)が1点を失い、漆原大晟投手(27)に交代。しかし満塁から長岡秀樹内野手(22)に同点の3点二塁打を浴び、岩崎優投手(33)が代打・山田哲人内野手(31)に勝ち越し打を許した。大山悠輔内野手(29)、梅野隆太郎捕手(33)が揃って2打点を挙げたが、〝魔の八回〟となった。九回2死一塁で佐藤輝明内野手(25)の左越え二塁打で、一走の代走・植田海内野手(28)が本塁に突入したが憤死した。佐藤輝は6試合連続安打で今季初の猛打賞。3戦ぶりスタメン復帰の近本光司外野手(29)は無安打。森下翔太外野手(23)は途中出場で1四球1安打。6月を9勝12敗1分で終えた岡田彰布監督(66)の主な一問一答は以下の通り。(成績=34勝34敗5分、観衆=2万9460人)。ーー結果的に八回1死からの四球から「そらお前、準備の問題やろな」ーー整理してマウンドに上がれなかった「上がってるやろ。桐敷は」ーー漆原が準備不足「漆原なんか投げさすつもりなかったよ。ゲラと岩崎が(ブルペンで準備を)やってないんやから。投げさせられへんやんか。なんで、準備せえへんのやろうなぁ。見たらお前、今度島本やった。昨日2イニング投げてんのに。教育やなぁ、しかし。そこまで全部やらなアカンねんなぁ。しかし、なぁ」ーー岩崎も慌ててマウンドへ「だって(準備を)やってないんやもん。普通通り、きっちり3人で行って、桐敷、ゲラで最後行くって言うて、うまいこといかん場合もあるわけやんか、それが準備やんか。ブルペンなんか。いつもいつもやったら、誰もいらんやんか、こっちから指示したらええだけやんか。何かあった時用の準備をせなアカンわけやろ? 島本? ええ? 昨日2イニング投げてるんやで。今日なんか投げさせる予定なんかないピッチャーやんか」ーー打たれたピッチャーを責められない「出来んよ。島本はあないしてピッチングせえって言われたんやろな。信じられんわ。そこまでやらなアカン? 1人でお前」ーー投打が噛み合ってないが、もう少し修正すれば「いや、そうやろ? 今日でも。今日勝つために、何のために、昨日最小限のピッチャーでやってるんよ、ブルペンを。そんなんわかるやろって思うけどな」ーー打線は中軸に当たりが出て来た「打線は出て来てるよ。昨日もビハインドやから、ああいう展開になっただけであって。反発力が出て来たのに、お前。なんで、そんな楽観的なことするんやろな。準備というか。備えへんのやろなあ。この風なんか何があるか分からへんのに当たり前やろ」(さらに続けて)「初めてやわ、漆原、島本やったもんな。ええ、ゲラ行くぞ言うたら、漆原しかやってませんて、ええって。そらお前、あそこで漆原も酷やで。俺は思うよ。なんでと思ったけど。そんなんきっちりお前、3人ずつで行くわけないやん。何が起きるか分かれへんねんからさ。桐敷行って、4点差やから九回はゲラでとか、そんなん一番ええことは絵に描いてるけど、何があるか分からへんやん、ゲームなんかなあ。なんで準備せえへんのやろ」ーー相手の打順を見ても八回を抑えれば「そうやん、あっこ左左でなあ。俺もサンタナからゲラ行くつもりやったけど、ビックリしたわ、漆原1人でやってたな。ええ? と思ったわ。一番悔い残るやろ、出し惜しみして負けるのが、いつも言ってるやろ。出し惜しみはアカンて。なんのために何人あいてるんよ。昨日2イニング投げたヤツをなんでピッチングさすねんやろ、ホンマ分からん。ひどいな、しかし」ーー九回は勝負に行った結果「負けてんねんやで、1点負けてんねんやで。信じられんわ、お前。何でも行けじゃないやろ、状況判断やんか、当たり前やろ、こんな狭い球場で」ーー代打も残っている「ビックリしたわ、俺も最後。ええ? って思ったわ。先攻で1点負けてて。二塁、三塁でええんちゃうの? 左(ヤクルトの左腕田口)で今日2本タイムリー打ってるバッター(次打者が梅野)で」ーータラレバだが、取れていれば「いやそら全然ちゃうよ。今日の負けはめっちゃくちゃ大きいよ、はっきり言って。そんな簡単な1つの負けちゃうで、今日なんかは」ーー7月2日から広島戦。入り方も変わってくる「いや戦い方もクソも、こういうことをやってると、終盤になって勝ってても、そういうのがなるやないか。当たり前やんか。継続してるんやからな。毎日試合っていうのはな。当たり前のことをやってるから、ちゃんと継続しているのが、ええ方向に行くわけであって、そんなもん、こっちで歯車を崩してしまうわけやからな。1つの負けですまんよ、コレ。ホンマに。大変な負けやで」

◆阪神が逆転負けで勝率5割となり、4位に転落した。5ー1の八回、桐敷拓馬投手(25)が1点を失い、漆原大晟投手(27)に交代。しかし満塁から長岡秀樹内野手(22)に同点3点二塁打を浴び、岩崎優投手(33)が代打・山田哲人内野手(31)に勝ち越し打を許した。大山悠輔内野手(29)、梅野隆太郎捕手(33)が揃って2打点を挙げたが、〝魔の八回〟となった。九回2死一塁、佐藤輝明内野手(25)の左越え二塁打で、一走の代走・植田海内野手(28)が本塁に突入したが憤死した。佐藤輝は6試合連続安打で今季初の猛打賞。3戦ぶりスタメンの近本光司外野手(29)は無安打。森下翔太外野手(23)は途中出場で1四球1安打。チームは6月を9勝12敗1分で終えた。主な選手とコーチのコメントは以下の通り(成績=34勝34敗5分、観衆=2万9460人)。九回、植田の本塁突入に三塁コーチャーの藤本敦士内野守備走塁コーチ 「どっちが正しいかといったら、分からないですけど、自分自身の中では勝負をしに行って」九回の走塁に植田海 「迷いなくというか、(腕を)回していたから行ったという感じ」八回、ヤクルト・山田に勝ち越し打を浴びた岩崎優 「勝負に負けたということですね」八回、ヤクルト・長岡に同点打を浴びた漆原大晟 「反省するところはして、次は抑えられるように頑張ります」八回、ヤクルト・村上に適時打を浴びた桐敷拓馬 「(1死から西川に与えた)フォアボールが全てですね。ウルシさん申し訳ないことをしました」適時打2本の梅野隆太郎 「負けたことが悔しい。コメントとしてはそれだけかな」途中出場で1四球1安打の森下翔太 「後から行く時に打てないと監督にもアピール出来ないと思うので、一本出たのは良かった」3安打の佐藤輝明 「球場にも助けられながら、感覚はよかったと思います」2安打の前川右京 「とらえられたので、良かったかなと思います」救援陣が打ち込まれ、4勝目を逃した西勇輝 「いつも抑えてくれてんねんし、責める必要ないから」

◆「5番・左翼」で出場した阪神・前川右京外野手(21)がマルチ安打で好調をアピールした。二回先頭で右前打を放つと、四回には大山の先制アーチの直後に左前へ。梅野の二塁打で2点目のホームを踏んだ。九回2死からは四球を選んで佐藤輝につなげ「ちゃんと(球を)捉えられたので良かったなと思います」と振り返った。最近5試合で3度も2安打を放っており奮闘を続けるが、まさかの逆転負けに笑顔はなかった。

◆不振の阪神・近本光司外野手(29)は3試合ぶりに「1番・中堅」でスタメン復帰するも5打数無安打。チームもまさかの逆転負けとなり「ヒットを打てなかったので。ヒットを打ちたかったです」と声を振り絞った。これで25日の中日戦(倉敷)の2打席目で安打を放ったのを最後に13打席連続無安打だ。打率も・247となった。

◆ヤクルトが1―5の八回のビッグイニングで逆転勝ち。2死一、二塁から村上の適時打、満塁から長岡の3点三塁打で同点に。さらに一、三塁から代打・山田が勝ち越し適時打を放った。?ヤクルトの最大4点差以上からの逆転勝利は昨年5月5日のDeNA戦(5点差=七回表終了4-9→最終10-9、九回に長岡のサヨナラ2ラン、神宮)以来。対阪神では2022年3月25日の開幕戦(7点差=四回裏終了1-8→最終10-8、九回にサンタナの勝ち越し2ラン、京セラ)以来2年ぶり。?山田の代打起用は6月27日の広島戦(マツダ、犠飛、1打点)に次ぐ今季4度目。安打は昨年9月2日の阪神戦(神宮、単打)以来通算8本目で、適時打は初。通算36度の起用で打率・286、2打点。

◆勝てば打のヒーローの一人だった。阪神・梅野隆太郎捕手(33)は今季初のマルチ打点で存在感を示したが、4点差をひっくり返されての逆転負けに笑顔はなかった。「(2安打を放った)打席、どうこうというよりも本当に負けたことが悔しい」ベンチからクラブハウスへ向かう途中、歓喜にわく燕党を横目にグッと唇をかみしめた。まずは大山の先制弾が飛び出した四回2死一塁でサイスニードの直球を振り抜き、左中間フェンス直撃の適時二塁打。「しっかりといいスイングができた」という納得の一打で、一走・前川を本塁に迎え入れた。2-1の六回には2死から佐藤輝が右中間を破る二塁打を放つと、続く梅野がスライダーを左前へ。貴重な追加点となる適時打に、一塁ベース上で喜びを爆発させた。今季もリードはもちろん、ブロッキング、肩では魅せてきたが、打撃は打率1割台に低迷してきた。5月下旬から6月上旬にかけては23打席連続無安打とドン底だった。捕手陣の打撃が振るわないことも、チームの得点力が上がらない一因に違いなかった。チャンスで打てず「本当はバットで、もっともっと投手陣を援護したい」と漏らしたこともあった。6月最後の一戦で快音を響かせ、あとは勝利のハイタッチのときを迎えるだけだったが、まさかの暗転。「(勢いを)止められなかった。それが一番でかいよね」。リリーフ陣を導けずに自分を責めたが、前を向くしかない。2日からの広島3連戦(マツダ)こそは、攻守で体を張って白星へたどり着く。(三木建次)

◆八回、右中間を破る同点の3点二塁打を放った長岡はポーズを決めた(撮影・長尾みなみ)

◆さあ、7月反攻へ!! ヤクルトは30日、阪神11回戦(神宮)に6-5で逆転勝ちした。1ー5の八回、打者10人の猛攻で一挙5点を奪った。同点の八回2死一、三塁で代打で登場した主将の山田哲人内野手(31)が勝ち越しの左前適時打を放ち、試合を決めた。今季初となる4点差以上の逆転勝利を飾り、6月は2連勝で締めて13勝9敗。レギュラーシーズンの折り返しの72試合を終え、首位広島と7ゲーム差の5位タイから奇跡の大逆転を狙う。背番号1の登場に、沸き返る神宮球場のボルテージがさらに上がった。5-5の八回2死一、三塁。押せ押せムードの中、代打で登場した山田が、左前へ勝ち越しの適時打をマークした。八回に4点差をひっくり返す大逆転勝利を呼び込み、主将はベンチに向かって右拳を突き出した。「打席の中で、大きな『山田哲人コール』が心に響いた。ありがとうございます。技術どうこうよりも気持ちで打った」1-5で迎えた八回。劣勢でも誰一人諦めていなかった。1死から西川が四球を選んで出塁すると、続く宮本が中前打でつなぐ。2死一、二塁からは村上が中前適時打をマークし、なお満塁で長岡が走者一掃の3点二塁打を放って同点に追いついた。ビッグウエーブは加速する。松本直が左前打で続き、2死一、三塁にチャンスを拡大。左腕の岩崎がマウンドに上がると、代打として山田の名前がコールされた。「早い段階から『左投手が来たら行く』と言われていた。準備はできていた。チームが勢いに乗っていたので、自分も乗れたらと思った」。カウント2-1から変化球を引っ張り、「自然に出た」と一塁へ走りながら、珍しくガッツポーズ。打者10人の猛攻で一挙5得点して試合をひっくり返し、ベース上では満面の笑みを浮かべた。4点差以上の逆転勝利は今季初。リーグ最多257得点を誇る打線が真価を発揮した。

◆阪神は八回に4点リードからひっくり返されヤクルトに5-6で大逆転負け。岡田彰布監督(66)はバタバタと継投の準備がままならずに逆転を許した投手コーチと、九回2死で植田海内野手(28)を本塁憤死させた三塁ベースコーチの判断に怒りが収まらず「大変な負けやで、こんなん」と怒りをぶちまけた。またも貯金ゼロとなり4位転落。2カ月連続負け越しとなった6月を、とんでもない形で締めくくった。神宮の空を覆った雨雲のように、虎の白星も真っ黒に染まった。この日ばかりは選手のせいではなく準備をさせられなかった男たちの責任だと、岡田監督の口調はいつになく鋭かった。悪夢大逆転負けで怒りの矛先を向けたのは、コーチ陣だ。「漆原なんか投げさすつもりなかったよ。ゲラと岩崎が(ブルペンで準備を)やってないんやから。投げさせられへんやんか。なんで準備せえへんのやろうなぁ。教育やなぁ。そこまで全部やらなあかんねんなぁ」振り返れば振り返るほど、怒りがこみ上げる。大山の先制弾から野手陣は久々の奮起を見せ、小刻みな得点で5-1として八回を迎えた。桐敷が2死一、二塁から村上に適時打を浴びて3点差。投手交代を告げようとした虎将は目を丸くした。「サンタナからゲラ行くつもりやったけど、びっくりしたわ。漆原1人で(ブルペン投球)やってたな。『ええ?』と思ったわ」準備していなければマウンドに上げるわけにはいかない。「あそこで漆原も酷やで」。その漆原も、村上の打席からブルペン投球を始めていた。準備不足の右腕はサンタナに四球。満塁から長岡に同点の3点二塁打...。そしてまた、岡田監督はあぜんとする。「一番悔い残る。いつも言ってるやろ。出し惜しみはあかんて」岩崎も準備を終えていなかった。それどころか八回頭からブルペン投球を続けていたのが島本だった。「きょうなんか投げさせる予定なんかない投手やんか。何のためにきのう(6月29日)、最小限のピッチャーでやってるんよ」。序盤に5点を先行された29日、指揮官は島本に複数イニングを任せている。すべてはこの一戦に勝つため。常に最悪の場合を想定するのが岡田野球。「なんでそんな楽観的なことするんやろな」。その意図を選手に伝えるはずのコーチが理解していない。岩崎が代打・山田に浴びた勝ち越し打も、コーチ陣に非があると語気を強めた。

◆ヤクルトが1―5の八回のビッグイニングで逆転勝ち。村上宗隆内野手(24)の適時打、長岡秀樹内野手(22)の3点三塁打で同点に追いついた後、代打の山田哲人内野手(31)が勝ち越し適時打を放った。苦しい時間を過ごした分だけ、笑顔がはじけた。山田は今季、プロ14年目。打率は2割台前半で本来の姿を見せられていない。昨季までの2年間も下半身を痛めて不本意な成績に終わった。プロ野球は結果の世界。SNSを中心に批判的なコメントも多かった。かつては見向きもしなかったが、調子が上がらず、つい目にしてしまった。「2年間は本当に落ち込む日々が多かった。去年の途中までアンチコメントも読んでいた。結果を出せない本人が一番分かっているし、つらい...。でも、周りに見せないようにあえて普通に振る舞っていた」主将として、中心選手として、つらい姿は見せないという覚悟の表れだったのだろう。試合前には体にテーピングを巻くなど決して万全とはいえない中、勝利に貢献したいという強い思いでグラウンドに立っている。記者は同じ1992年生まれ。今では各球団の中心選手となっている「92年組」だが、世代を引っ張ってきたのは間違いなく山田哲人だ。「過度の期待にはご注意をという感じだよ」と冗談めかすが、期待せずにはいられない。もう一度、とんでもない輝きを放つ姿をみんなが待っている。(ヤクルト担当キャップ・赤尾裕希)

◆チームメートが、ファンが、誰もが希望を抱く打球が左翼手を越えてフェンスにはね返る。阪神・佐藤輝明内野手(25)は二塁に到達し、頭から本塁に突っ込む植田を見守った。アウトが宣告され、無念さに口をゆがめる。3本の二塁打で特大の存在感を示すも勝ちには届かず。ヘルメットを脱ぎ、二塁ベース付近で雨に打たれながら悔しさをかみしめた。「できることはやったので」会心の当たりだった。4点差をひっくり返され5―6で迎えた九回。1死から前川が四球で出塁し、すぐさま代走・植田が登場。佐藤輝は田口のスライダーを捉え、左越えの二塁打。今季初の猛打賞となる一打で同点の夢を一瞬見せたが、生還を試みた植田は本塁でアウトとなり、白星はつかめなかった。持ち味を存分に発揮した。六回2死からサイスニードの151キロ直球を捉えて右中間のフェンス直撃の二塁打。八回も先頭で木沢から右翼線へ二塁打を放ち、今季初の〝マルチ長打〟を放った。「球場にも助けられながら、感覚はよかったと思います」糸原の当たりが一塁手の失策となって佐藤輝が5点目のホームを踏み、この時点では4点差。勝負ありかと思われたが...。まさかの逆転を許し、自らのバットでチームを救うことはできなかった。投打がかみ合わずに敗れ、岡田監督も「打線は(当たりが)出てきてるよ。やっとちょっと反発力がでてきたのに」と嘆いた。だが、佐藤輝は今季最長の6試合連続安打で、直近5試合は打率・474(19打数9安打)、4打点だ。自己ワーストの118打席ノーアーチこそ更新中だが夏本番を前に調子を上げてきた。梅雨の神宮上空を覆った分厚い雲のように、チームを覆う空気もジメッと重たい。それでも、佐藤輝のバットだけは乾いた快音を連発している。その視線はすでに、2日からの首位広島との3連戦(マツダ)に向いていた。「また火曜日から頑張ります」よみがえった佐藤輝のバットで、すべてを振り払うしかない。(邨田直人)

◆さあ岡田阪神、ついに勝率5割、面白くなってきましたー!!1点を追う九回2死一塁で佐藤輝がレフトオーバーを放ち、一塁から一気にホームを狙った植田が悲しいくらい前でタッチアウト!! 「三塁コーチャー藤本! 何であのタイミングで回すねん!?」と岡田さんが言ったとしたら、そっくりそのまま、その言葉を監督に返したるわー!!焦ってるのは、あんたでっせ!! 4点リードをよもや追いつかれて、なお2死一、三塁で虎のクローザー、岩崎投入(結果山田に決勝タイムリー)はないやろー!! まだペナントは半分、勝負は焦った者負けやでェ!! 昨年38年ぶりのアレ(日本一)を達成してくれた岡田さんだけど、どーしても以前から納得できない采配があるのだ!!4-1と3点リードの八回無死で先頭の佐藤輝がツーベース、続く梅野がこの日2安打しているからか、そのまま打たせて三振。あの場面は送りバントやろー!! さあ、ここから鬼采配をせな、アレンパは厳しいでェ!!

◆こういう負け方をするチームは、絶対に強くはないと思う。アッという間の大逆転負けだった。でも、だからといって優勝できないか? といえば、それは分からない。どんなひどい試合をしても1敗は1敗。大逆転負けが2敗になることはない。次の試合は、われらが大エース・才木が先発だ。勝てばチャラだと考えれば、こんな負け、どうってことない(と思うことにしよう)。決勝打のヤクルト・山田は試合前、誰よりも早くグラウンドに姿を見せて練習していたそう。努力はウソをつかない。敵ながら...だ。いろいろあるのが、プロ野球。負け方を楽しんだっていいんです。「そうですよね。神宮球場は、他球場にはない楽しみがあるんですよ」いつも元気なトラ番最年少・中屋友那は、神宮球場の記者席がお気に入りだ。スタンドの高い位置にある他球場と違って、この球場の記者席はバックネットの真下。選手たちレベルの視線から野球を眺める。ということは、グラウンドの音が、リアルに聞こえてくるのだ。「記者席の前の窓を開けたら、ベンチの声が結構、耳に入るんです。平田ヘッド、嶋田バッテリーコーチの大声を楽しんでいます」激励もあれば、ヤジもある。これが意外に新鮮だったりする。ただ、一番聞こえてくるのが、64歳・平田ヘッドと62歳・嶋田コーチというのは、どう受け止めたらいいのか。若いコーチたちは何をしているんや...もっと声を出さんかい! と、これは中屋記者ではなく虎ソナの個人的意見です。

◆指揮官復帰後、最大級のカミナリだったかもしれない。苦闘の6月を象徴する敗戦だったのが30日のヤクルト戦(神宮)。4点リードの八回、まさかの大暗転。しかも、ブルペンとの意思相通がうまくいかずに、後手後手を踏んでの逆転負け。試合後の阪神・岡田彰布監督の怒りは、凄まじいモノだった。「ゲラ行くぞ言うたら、漆原しかやってませんて、ええって。そらお前、あそこで漆原も酷やで」桐敷拓馬が1点を失って、さらに2死一、二塁。しかし、ブルペンではハビー・ゲラも岩崎優も準備していなかった。後は、無抵抗。漆原大晟が同点打を浴びて、押っ取り刀で登板した岩崎が代打・山田哲人に勝ち越し打を浴びた。「何があるか分からへんやん、ゲームなんかなあ。なんで準備せえへんのやろ」。ベンチの安藤優也、ブルペンを預かる久保田智之の両投手コーチに反省すべき点はある。しかし、九回の攻撃での三塁コーチャーの藤本敦士内野守備走塁コーチの判断に対する批判は、聞いている方が萎縮してしまう。1点を追う九回2死一塁で佐藤輝明の当たりは左翼フェンスを直撃した。一走は代走の植田海。藤本コーチの手が回る。しかし無情タッチアウト。「負けてんねんやで、1点負けてんねんやで。信じられんわ。何でも行けじゃないやろ、状況判断やんか、当たり前やろ、こんな狭い球場で」。さらに藤本コーチへの叱責は続いた。「ビックリしたわ、俺も最後。ええ? って思ったわ。先攻で1点負けてて。二塁、三塁でええんちゃうの? 左(田口)で、今日2本タイムリー打ってるバッターで」2死二、三塁で適時打2本の梅野隆太郎。相手は敬遠する。フルベースになって、代打・原口文仁。当然、そこまで考えていたはず。原口がアウトなら仕方がない。それでも、あの場面でゴーは禁じ手なのか。もしセーフだったら、おホメの言葉が飛んでいたのか。サヨナラ勝利を飾った6月21日のDeNA戦(甲子園)。九回2死一、二塁、小幡竜平の右前打で、二走・植田がヘッドスライディングで生還した。虎将の反応は「あんなん止めたらもう、辞めるよ、俺は」だった。二塁からの突入で、今回は一走。2つのプレーを比較はできない。それでも、だ。この一件で、ここまで言われたら、誰でも、右腕を回せなくなる。機能不全の三塁コーチャーを〝壊れた信号機〟と昔から呼ぶが、ランナーよりも、ベンチの視線に過敏に反応してしまう。投手コーチに、走塁コーチだけではない。打撃コーチにも不満を募らせている。それはチーム打率を見ればわかる。1950年の2リーグ分立後の球団ワーストは65年の打率・22036と71年の打率・22038。シーズン折り返しを過ぎ、今季は打率・2211。38年ぶり日本一に輝いた昨季は「・247」でリーグ3位。開幕9戦全敗を喫した22年ですら「・243」だった。暗黒時代の〝出口〟にあたる2001年以来、17年ぶり最下位に沈んだ金本知憲監督最終年の2018年は「・253」。今年は異常な数字だ。だから仕方なく、自ら動いた。森下翔太へのマンツーマン指導が典型的な例だ。不振の大山悠輔がソロを含む2打点。打撃の調子が上がらない梅野も2打点。佐藤輝は今季初の猛打賞。落とせなかった試合で逆転負け。そして叱責。岡田政権でのコーチ業は改めて過酷で重労働だと思う。活字を通して、糾弾されながら、それでも、またグラウンドに向かう。「(止めるかどうか)どっちが正しいかといったら、分からないですけど、自分自身の中では勝負をしに行って」と藤本コーチは言葉少なに語った。中間指導者の喜びは何処にある? 日々の努力は、いつ報われる? ボスに絶対服従を貫き、身を粉にして働くコーチのために選手は動くのか? 意気に感じて...と言い切れないところがまた、ツラい。■稲見 誠(いなみ まこと) 1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年、18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
広島
37294 0.561
(↓0.008)
-
(-)
73207
(+2)
163
(+3)
31
(-)
39
(-)
0.236
(↑0.001)
2.050
(↓0.01)
2
(-)
DeNA
36341 0.514
(↓0.008)
3
(-)
72242
(-)
242
(+3)
45
(-)
37
(-)
0.250
(↓0.001)
3.050
(-)
3
(1↑)
巨人
35345 0.507
(↑0.007)
3.5
(↑1)
69205
(+3)
195
(+2)
37
(-)
36
(-)
0.235
(↑0.001)
2.480
(-)
4
(1↓)
阪神
34345 0.500
(↓0.007)
4
(-)
70205
(+5)
200
(+6)
29
(+1)
23
(-)
0.221
(↑0.002
2.220
(↓0.05)
5
(-)
ヤクルト
31374 0.456
(↑0.008)
7
(↑1)
71257
(+6)
248
(+5)
52
(+1)
35
(+1)
0.237
(↑0.001
3.230
(↓0.02)
5
(-)
中日
31376 0.456
(↑0.008)
7
(↑1)
69171
(+3)
233
(-)
30
(-)
25
(+1)
0.231
(↑0.001)
2.700
(↑0.04)