ヤクルト(★2対4☆)阪神 =リーグ戦16回戦(2023.07.23)・明治神宮野球場=
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阪神
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ヤクルト
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勝利投手:伊藤 将司(4勝4敗0S)
(セーブ:岩崎 優(3勝1敗14S))
敗戦投手:大西 広樹(2勝2敗0S)

本塁打
【ヤクルト】サンタナ(10号・8回裏ソロ)

  DAZN
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◆阪神は1点を追う3回表、木浪の適時二塁打で同点とする。そのまま迎えた7回には、1死二三塁から代打・渡邉諒の内野ゴロの間に1点を加え、勝ち越しに成功した。投げては、先発・伊藤将が6回3安打1失点の好投で今季4勝目。敗れたヤクルトは、打線が再三の好機を生かせなかった。

◆阪神加治屋蓮投手(31)が、1軍に合流した。開幕から中継ぎの一角を担っていたが、6月下旬に調子を落とし、7月5日に出場選手登録を抹消されていた。コンディション不良で15日の中日戦を欠場した岩崎の代役として有事に備え16日に1軍に一時招集されたが、左腕が復調したことで再昇格は持ち越されていた。ウエスタン・リーグでは2試合に登板し、それぞれ3者凡退に抑えていた。前日22日には石井大智投手(25)が体調不良により「特例2023」で出場選手登録を抹消されていた。

◆阪神ヨハン・ミエセス外野手(28)が出場選手登録を抹消された。試合前の練習にも姿を現し、ナインとともにフリー打撃も行っていた。前日22日の同戦では5点を追う6回1死に代打で出場し、空振り三振。直近の出場8試合では16打数1安打と苦しい結果が続いていた。

◆阪神近本光司外野手(28)が死球を受け、場内が騒然となった。1-1の3回1死二塁、ヤクルト小沢の投球が近本の右脇腹付近へ。近本は瞬時に腰を引いて回避し、おなか付近の膨らんだユニホームに直撃。神宮の虎党からヤジが飛び交った。近本は2日巨人戦の7回に左腕高梨から右脇腹に死球を受け、「右肋骨(ろっこつ)骨折」と診断されていた。22日のヤクルト戦で復帰したばかりだっただけに、あわやの1球に場内がザワついた。

◆阪神に「ラッキー」が重なり、勝ち越しに成功した。同点の7回無死一塁。7番梅野が犠打を試みると、マウンド前にはねた打球にバックスピンがかかった。捕手側にはねかえった打球を投手大西が処理できず、無死一、二塁とチャンスを拡大した。その後、8番木浪の犠打で1死二、三塁。代打渡辺諒が一ゴロを放つと、前進守備の一塁手オスナが打球をファンブル。その間に三塁走者は生還し、終盤での1点リードに成功した。

◆阪神近本光司外野手(28)が、神技でチームの危機を救った。1点リードの7回1死二塁、ヤクルト長岡の飛球は右中間最深部へ。近本はダッシュで打球に追いつくと、最後はジャンプしてキャッチ。フェンスに激突しないよう、両手をクッションにしてみせる、とっさの判断も光った。二塁走者はタッチアップに成功したものの、その後のピンチを防いで、この回無失点。抜けていれば同点に追いつかれていた場面で、2番手岩貞を助けた。右肋骨(ろっこつ)骨折から1軍復帰し2戦目。この日は今季13個目となる盗塁も決めた。走攻守で頼れる男が存在感を示した。

◆/やっぱりセンターには彼が似合う\この打球に追いついちゃうんです近本光司がファインプレー?プロ野球(2023/7/23)??ヤクルト×阪神??Live on DAZN#DAZNプロ野球#hanshin pic.twitter.com/E2oYlKkdhP

◆阪神佐藤輝明内野手(24)の適時二塁打で、終盤8回の中押しを決めた。1点リードの8回1死一、二塁。この回から代わった右腕木沢の初球を捉え、左中間の深部にはじき返した。悠々ベースに到達する適時二塁打で、貴重な1点を追加。直後には森下の犠飛でさらに1点追加し、終盤8回に3点リードとした。

◆阪神が接戦をモノにし、単独首位をキープした。2位広島が勝ったため、引き分け以下で2位転落となっていたが、連敗を阻止して首位陥落を免れた。先発伊藤将司投手(27)が6回1失点の粘投で今季4勝目を挙げた。初回に連打でチャンスを与え、サンタナの内野ゴロの間にあっさり先制点を献上したが、その後は丁寧にコーナーを突く投球で打たせて取り追加点を許さなかった。これで神宮球場は5度目の登板で初勝利となり、セ・リーグ本拠地制覇を達成した。打線は1点を追う3回、先頭梅野が左翼線への二塁打で出塁し、無死二塁から木浪が右中間への適時二塁打で同点に追いついた。7回には1死二、三塁から代打渡辺諒が一塁へのゴロを放つも、一塁手オスナがファンブルしたことで本塁への送球が間に合わず勝ち越しに成功。8回には1死一、二塁から佐藤輝が左中間を破る適時二塁打でリードを拡大。なおも1死一、二塁から森下も中犠飛でさらに1点を追加。その裏、浜地がサンタナに1発を浴び2点差に迫られたが、そのまま逃げ切った。

◆ヤクルトが逆転負けで、連勝が4でストップした。初回にサンタナの併殺の間に1点先制。先発小沢が5回3安打1失点とゲームを作ったが、終盤に中継ぎ陣が崩れた。試合後の高津監督の一問一答は以下の通り。-先発の小沢は試合つくった「そうですね。十分だと思います。ちょっと制球のところで苦しむ場面はあったんですけど、少しずつ成長しているかなという感じは受けました」-リリーフが失点「う~ん...。簡単じゃないですけどね。これだけ投げているので、疲れもあるでしょうし。いろいろ気をつかいながら起用していきたいと思います」-打線は阪神伊藤将を打ち崩せなかった「そうですね。2回以降3本ですからね。点をとらないと勝てないですね。ランナーにならないとね」-守備では並木らにいいプレーもあった「そうですね。いいプレーと残念なプレーと、いくつかずつありましたね」-中村にボールが当たった大丈夫?「結構フラフラしていたようですけど。今からあがってから、どういう状況かもう一度確認したいと思います」-山崎が練習不在でベンチ外だったが「昨日のフェンスにぶつかった時に上半身を強く打っているので。いろんなところが痛いと言うところで今日は外しました」-明日以降は様子見て「そうですね。明日また明後日、また次の日と、毎日確認しながらというふうになると思います」-1日休み挟んでまた切り替えて次へ「そうですね。うーん...。そうですね。はい、点取らなきゃいけないですね」-連勝中の広島が相手。前回カードは「新井さんにお返ししたい」と話していて2勝1敗だった「もう何も言わないです(笑い)」

◆阪神が接戦をモノにし、単独首位をキープした。2位広島が勝ったため、引き分け以下で2位転落となっていたが、連敗を阻止して首位陥落を免れた。先発伊藤将司投手(27)が6回1失点の粘投で今季4勝目を挙げた。岡田彰布監督(65)の試合後の一問一答は以下の通り。-先発伊藤将は最初の1点だけで粘った「いやいや、もうなあ。(今季対戦し)2回、3回ぐらいやられているからな。なんとかなあ。ずっとええピッチングしとったけどなあ」-初回、1失点で乗り切ったのが大きかった「そうやなあ。まあ、あそこで1点はしょうがないからな。まあ、ずっと簡単に(2番武岡は)バントと思っていってしまったんやろうな、あれなあ。でも、、サンタナでゲッツー取れたからなあ。大きかったよ」-6回も佐藤輝の失策で嫌な感じになったが「まあ、だから。なあ、1-1で。まあ次の点いうところやからなあ。あっこはよう踏ん張ったよな。球数も、あそこでちょっと増えたからなあ。なんか、ええイニング(7回)で、ええ1点が入ったよ、なんか泥くさい、なんか変なのが」-伊藤将は1つ勝ちがついてきっかけに「そうやな。6連戦でいくと最後の登板なるけど、イニング稼げるからそういう意味では白星付いたのが大きいよな」-7回近本の好守備が大きかった「いやいや、向こう(中堅)見えへんねん。ちょっと(グラウンドが)下がってるやろ。森下のアレも見えへんかったよな。捕ったかどうかが。ランナーからは分かるんやろうけど、ベンチからものすごい見づらいよな」-あれで救った。抜けていれば「やっぱりそういうな、失点防ぐというかな。やっぱりこういうゲーム展開やからな、そういうの大きいよな」-7回の梅野のバントもツキがあった「おおう、うまいことスピンかけたんやろ? 戻ってきとったもんな。そら、アイツもゴルフやるから、うまいことスピンをかけれるよな」-梅野も当たりが戻ってきた「おう、ちょっと戻ってきとんな、おう」-状態は上がってるか「上がってる、上がってる。やっと大台(打率2割台)乗りそうやもんな。あと1本で大台乗るんちゃうか」-結果的には8回の2点が大きかった。「いやいや、ここ(神宮)はもうそら1点じゃなあ、おーん。3点差なって、ちょっとはな、あと2イニングで、ソロホームランオッケーみたいな感じで、ホンマにソロホームランやったけど。なあ、ここはちょっとなあ。1点とかならきついよ、この球場はな」-あそこは2-1の1点差だったとしても8回は浜地を「もう、浜地いくつもりやった。まあ、石井もあれでな、いないし。だから、浜地ひとりやなしにな、左も含めてな。でも、3点開いたからな。それはだいぶ楽になったよな。うん」

◆ヤクルト村上宗隆内野手(23)は3打数無安打1四球で連続試合安打が6で止まり、チームの連勝も4でストップした。初回に1点を先制も、中継ぎ陣が終盤に逆転を許した。8回にサンタナが来日から3年連続2桁となる10号ソロを放ったが反撃も及ばず。高津監督は「2回以降(安打)3本ですからね。点を取らないと勝てないですね。ランナーにならないとね」と振り返った。

◆右肋骨(ろっこつ)骨折の重傷を負いながら、阪神近本光司外野手(28)はなぜ、早期復帰できたのか。その舞台裏に迫る。近本は2日の巨人戦(東京ドーム)で高梨から右脇腹付近に死球を受け、翌3日、兵庫県内の病院で「右肋骨(ろっこつ)骨折」の診断を受けた。それでも夜には4日からの広島戦(マツダスタジアム)に備え、新幹線で広島入り。最終的には4日午後4時に出場選手登録を抹消され、球団広報付き添いのもと広島駅から帰阪した。プロ野球選手は、骨折しながらでも試合に出続けられるものなのか? そんな疑問に近本は鳴尾浜でのリハビリ中、あっけらかんと答えた。「そんなもんちゃう? 誰しも、ケガを持ちながらプレーしてるもんやしな」 プロ5年目、その前提が心の中にある。鳥谷敬氏や福留孝介氏ら一流の先輩を間近で見てきた。自身の体とどう向き合い、ケガと付き合っていくか。野球を職業としている者の宿命は、身に染みて分かっているつもりだ。だからこそ、すぐに動いた。関学大時代から個人トレーナーを務める植松弘樹さん(28=MTXアカデミー所属)に連絡を入れたのは、診断結果が判明した直後。「骨が早く治る最新の方法を教えて」とLINEを送った。植松さんからは「骨を早く治す方法」と題したテキストメッセージが送られてきた。骨折部に刺激を与え、修復を促す効果が期待される微弱超音波を流す治療器具も届けられた。成長ホルモンの分泌を促進する効果があるといわれる腕、脚の付け根をバンドで縛っての加圧トレーニングも実施。カルシウムの吸収を促すビタミン類の摂取も欠かすことはなかった。体の内外から「骨折を早く治す方法」を実践してきた。ファン投票最多得票で選出された球宴を辞退したことで、出場選手登録抹消期間中に1軍が10試合を消化していないと、後半戦開幕ゲームには出場できなかった。近本がリハビリ中に1軍は11試合を消化。前日22日のヤクルト戦が実質"最短復帰"だったといえる。 2軍鳴尾浜球場で過ごしたのは5日から16日までの12日間。チーム練習がなかった17日からは甲子園で体を動かし、準備してきた。ケガと向き合い周囲の助けも借りながら、想定通りに近い形での超速復帰。最初から「いかに早く復帰するか」しか考えていなかった男だから、復帰2戦目、足で守備で躍動することができた。【阪神担当 中野椋】

◆18日に脳腫瘍のため28歳で亡くなった元阪神外野手の横田慎太郎さんに、後半戦2戦目で弔いの白星を届けることができた。13年ドラフト2位で入団した横田さんと同期の3人が思いを語った。今季7度目のマルチ安打を放ち、7月は打率3割1分3厘と状態を上げてきた梅野は「一緒にプレーしてきたプレーヤーとして、最高の報告ができたのでうれしい。しっかり見てくれていると思う」と話した。7回に2番手で登板し、1回無失点で今季16ホールド目をあげた岩貞は「僕と梅とザキと同期で、人一倍そういう思いを背負ってやっていきたい」と言葉に力を込めた。9回を3者凡退で締め、14セーブ目を手にした岩崎は「勝てて良かったです。もちろん(横田さんへの思いを背負って)続けていきたい」と、普段通り落ち着いた表情の中に横田さんへの熱い思いをにじませた。

◆阪神佐藤輝明内野手(24)が、値千金の一打で単独首位キープに貢献した。1点リードの8回1死一、二塁。「初球からしっかりいこうと思って」。木沢の外角への直球系を振り抜いた。打球は一直線にグングン伸び、左中間を真っ二つにぶち破った。貴重な3点目をゲット。二塁に到達すると「そら(気持ち)出るでしょ」と両拳を地面に突き出すマッスルポーズで「シャーッ」と絶叫し、喜びを爆発させた。中押しの一打が出るまでは3打席凡退と苦戦を強いられていた。ヤクルト先発の変則右腕、小沢を相手に2回無死一塁では左飛、4回無死二塁では空振り三振。6回は大西に二ゴロに仕留められた。6回の三塁守備では悪送球も喫していた。「変えたら打てるかなと思って」。上部が茶色、下部が白木のバットから、8回の4打席目は色合いが逆転した"逆ポッキーカラー"のバットにチェンジ。気持ちを切り替え、殊勲打につなげてみせた。得意の球場で輝きを放った。神宮は今季セ・リーグ本拠地別では最高の打率3割6分7厘をマークするなど、敵地ながら"庭"としている。好きな球場の1つと認めつつ「でも好き嫌い言ってられないので」とサラリ。同じドラフト1位で同学年の木沢は通算で6打数3安打の打率5割、5打点と圧倒中。この日もキラーぶりを発揮した。これで球宴を挟んで3試合連続安打。状態は上向きつつある。6月末の2軍落ちを経て、7月中旬まではやや停滞気味だったが、勝負の後半戦で息を吹き返してきた。若き主砲の打棒が、チームに追い風をもたらした。【古財稜明】

◆"5度目の正直"で鬼門を突破した。阪神伊藤将司投手(27)がプロ入り後では未勝利だった神宮で初勝利を挙げた。ビジターながら、虎党で黄色く染まった左翼席、三塁席。ヒーローインタビューで神宮初勝利について質問が出ると、ひときわ大きな拍手とともに「おめでとう」と声が上がった。「阪神ファンの方も多く来てくれたので、勝てて良かったです」。6回を3安打1失点で今季4勝目。クールな表情を少し緩ませ、感謝を口にした。初回に連打を浴びて先制点を許したが、その後は1安打投球。同点の6回には2死一、三塁のピンチを招いたが、4回に中前打を浴びていたオスナを117キロ変化球で中飛に料理した。前回の8日ヤクルト戦(甲子園)では7回途中3失点で3敗目を喫しただけに「2回も3回もやられるわけにはいかなかったので、抑えられて良かった」と踏ん張った。野手陣も粘投に応え、直後の7回に1点を勝ち越し。勝利投手の権利を手に、終盤を救援陣に託した。過去4試合で0勝2敗と相性の悪かった同球場。以前にも「ロースコアというイメージがない。ロースコアで抑えられたらチャンスはある」と印象を語っていた。この日は上々の1失点投球。セ・リーグ6球団本拠地での白星制覇となり、「うれしいです」と笑った。岡田監督も「2回、3回ぐらいやられているからなあ。ずっとええピッチングしとったけどなあ」と満を持しての白星に納得顔だ。前日22日の同戦で敗れ、引き分け以下で首位から陥落していた一戦。「流れを変えられたなら良かった」と後半戦初白星をかみしめた。試合後はフェンス際に駆けつけた少年を見つけると足を止め、ウイニングボールをプレゼント。花火も上がった神宮球場で、子どもたちに夢を与える快投となった。【波部俊之介】

◆阪神岡田監督が7回のラッキーな勝ち越し劇にニンマリだ。無死一塁、梅野がバントで投手前にバウンドさせたボールに強烈なバックスピンがかかり、駆け寄った投手大西の手前で逃げるように本塁方向に戻った。岡田監督は「うまいことスピンかけたんやろ? 戻ってきとったもんな。そら、あいつもゴルフやるから、うまいことスピンをかけれるよな」と"秘打"を絶賛した。8番木浪が犠打を決めて1死二、三塁。先発伊藤将の代打で渡辺諒を投入すると、今度は一塁への詰まったゴロをオスナがファンブルし、本塁への送球を諦めた。ラッキーな勝ち越し劇となり「ええイニング(7回)で、ええ1点が入ったよ。なんか泥くさい、なんか変なのが」とうれしそうに振り返った。運も味方につけて流れをつかみ、8回にも2点を奪うなど、打線に活気が出てきた。

◆耐えた! 阪神が選手会長の復活美技に導かれ、首位を死守した。1点リードの7回1死二塁、右肋骨(ろっこつ)骨折から復帰2戦目の近本光司外野手(28)が右中間最深部への大飛球をジャンピングキャッチし、チームを救った。打線は8回に佐藤輝明内野手(24)の適時二塁打などでリードを拡大。6回1失点の先発伊藤将司投手(27)にセ・リーグ本拠地制覇となる今季4勝目をプレゼントした。引き分け以下で2位転落だった一戦で連敗を阻止。虎は粘り続ける。神宮の夜空に舞った白球が、風でセンター守備範囲に近づいてきた。近本は必死に走った。心の中では「やべー」とさえ思った。最後は右中間最深部でジャンピングキャッチ。1点リードの7回1死二塁、長岡の大飛球をつかんだ。「『ライトや、ライトフライや』と思ったけど、こっちに来てたんで。ジャンプしたら入ったっす」右翼森下の横で帽子を触る。三塁側ベンチで喜ぶ仲間にはクールに左手を上げる。ヤクルトファンは悲鳴を、阪神ファンは歓声をあげていた。クールに見せたが余裕はなかった。2日の巨人戦で高梨から死球を受け、右肋骨を骨折。死球の直後、左中間フェンスに激突する好捕も見せていたが、これが負傷箇所に追い打ちをかけた可能性は低くない。この日の美技でも「よぎることはよぎりました」というが「よぎる前には捕ってます。捕ってからよぎった」と全力だった。フェンスに激突しないよう両手をクッションにして悪夢は繰り返さない。抜けていれば同点の危機を救った。リハビリ期間中「無理と思ったら無理。無理と思わんかったら、できるやろ」と周囲に言った。「肋骨(ろっこつ)なんて折れててもできる部位やから。別に肋骨ぐらいだったら固定する必要もない。手首とか足とかなら固定せなあかんから動けないっていうのは分かるけど、できるやん」だからすぐにバットを持った。鳴尾浜の室内で、患部を確認しながら振り込む日々。不屈の精神で戦闘態勢に戻した。ヘッドスライディングでの帰塁練習を行わず、ぶっつけで前日22日に1軍復帰。5回に四球で出塁すると、リーグ単独トップの13個目となる二盗に成功。「足はめちゃくちゃ動いてたんで」とスライディングもバッチリだった。3回の死球はユニホームをかすめただけで、問題なしだ。岡田監督も「やっぱり失点を防ぐというかな。こういうゲーム展開やからな、大きいよな」とビッグプレーをたたえた。チームは後半戦初勝利で、負ければ首位陥落のピンチを耐えた。「今日勝ったのは、めちゃくちゃ良かったですね」。背番号5が久々の勝利を味わい、神宮の大歓声を浴びた。【中野椋】

◆阪神のヨハン・ミエセス外野手(28)が23日、出場選手登録を抹消された。今季はここまで36試合に出場し、打率・205、4本塁打、13打点。この日の神宮での練習に参加していた。また、前日22日に体調不良のため「特例2023」で出場選手登録を抹消された石井に代わり、加治屋蓮投手(31)が代替選手として登録された。

◆両軍のスターティングメンバーが発表。阪神はルーキーの森下翔太外野手(22)が「6番・右翼」で10試合連続スタメンを果たした。22日の同戦では2点三塁打を放ち、意地をみせた若虎。主力として存在化を増す背番号1が後半戦初勝利に導く。先発は伊藤将司投手(27)。安定した投球を続ける左腕が7月1日の巨人戦(東京ドーム)以来の勝ち星を狙う。

◆阪神が2試合連続で一回に先制を許した。先発の伊藤将司投手(27)が先頭の並木に左前打を許すと、続く武岡に中前打を浴び、いきなり無死一、三塁のピンチ。サンタナの二ゴロ併殺の間に、三走が生還し、あっさりと先制点を献上した。22日の同戦でも先発の青柳が一回に2失点を喫し、主導権を握られて敗戦。後手に回る展開が続いている。

◆ヤクルトが2戦連続で一回に先制に成功した。先頭の並木秀尊外野手(24)が左前打で出塁し、武岡龍世内野手(22)も右中間への安打で続き、1、2番コンビで無死一、三塁の好機を演出。続くサンタナの二ゴロ併殺打の間に1点を先制した。ヤクルトは前日22日も一回に2点を先制。4連勝につなげていた。

◆阪神が同点に追いついた。0-1の三回。先頭の梅野隆太郎捕手(32)が三塁線を破る二塁打。チーム初安打で勢いづけると、続く木浪が小澤の変化球を捉えた。右中間を突き破る二塁打で梅野が一気にホームへと生還。7、8番の下位打線で試合を振り出しに戻した。

◆ヒヤリとするシーンに球場が騒然となった。三回、1-1に追いつき、なおも1死二塁で迎えた近本の第2打席だった。小沢の投じた初球は近本の右脇腹付近へ。近本は7月2日の巨人戦(東京ドーム)で同箇所に死球を受け、右肋骨骨折と診断。長期離脱を強いられ、22日の同戦から1軍復帰したばかりとあって、球場からは悲鳴にも似た声が飛んだ。それでも、今回はひらりと身をかわし、間一髪でユニホームをかすめただけの死球となり、自力で一塁へと進んだ。

◆阪神・近本光司外野手(28)が五回2死から四球で出塁。直後の中野の打席の初球で二盗を決めた。右肋骨骨折から復帰後、これが初盗塁。リーグトップを走る今季12個目の盗塁をマークし、けがの影響を感じさせないプレーをみせている。

◆燕のリードオフマンに定着してきた。ヤクルト・並木秀尊外野手(24)が、チーム最多の今季22度目となる「1番・中堅」で先発出場。定位置をより強固なものにするべく、後半戦でのさらなる活躍を誓った。「与えられたポジションで、しっかりと期待に応えられるようにしたい。自分の持ち味を出して、チームに貢献できるようにしていきたい」いきなり存在感を発揮した。一回は阪神先発、伊藤将の初球ツーシームをうまくたたきつけて三塁手・佐藤輝の頭上を越える左前打。武岡の右前打の間には一気に三塁へ進み、サンタナの二ゴロ併殺打の間で先制のホームを踏んだ。交流戦明けの6月23日の中日戦(バンテリンドーム)から1番を任されると11試合連続安打を放つなどアピール。塩見が下半身のコンディション不良で2軍調整を続ける中、結果を残し続けている。タイトルも視野に入れる。試合前時点で9盗塁はリーグ1位の阪神・近本に3盗塁差。手動計測で50メートル5秒32と球界屈指のタイムで、オフには男子100メートル元日本記録保持者の桐生祥秀(27)=日本生命=から走り方を習うなど磨いてきた脚力で勲章を目指す。後半戦に向けて「目標は20盗塁。出塁したら常に狙っていく形で自然と盗塁王も狙えたらうれしい」。自慢の足でグラウンドを駆け回り、勝利のホームを踏む。(森祥太郎)

◆先発した阪神・伊藤将司投手(27)は6回3安打1失点と試合をまとめた。一回先頭の並木に左前打、続く武岡に中前打を浴び無死一、三塁のピンチ。サンタナの二ゴロ併殺打の間に、三走が生還し、あっけなく先制点を奪われた。それでも、そこからすぐに立ち直る。二回を三者凡退に抑えると、三回2死二塁のピンチでは武岡を二ゴロ。六回2死一、三塁のピンチではオスナを中飛に仕留めた。伊藤将は1-1の七回1死二、三塁の好機で代打を送られ降板。代わって打席に立った渡辺諒の一ゴロの間に1点を勝ち越し。今季4勝目の権利を手にしてリリーフ陣に後を託した。

◆右肋骨骨折から復帰し、「1番・中堅」でスタメン出場した阪神・近本光司外野手(28)がチームを救う超ファインプレーだ。2-1と勝ち越して迎えた七回。2番手の岩貞が1死二塁のピンチを背負う。打席には長岡。高々と舞い上がった白球は風にも乗り、右中間方向を襲った。中堅の位置から激走した近本は背走からフェンス手前でジャンプ。しっかりと白球をグラブにおさめるスーパープレーでアウトをもぎ取った。岩貞は2死三塁から代打・川端を三ゴロに仕留め無失点。近本は右肋骨骨折から1軍復帰し、これが2戦目。帰ってきた選手会長がチームを救った。

◆先発したヤクルト・小沢怜史投手(25)は5回3安打1失点で交代した。1―0の三回無死二塁で木浪に右中間へ適時二塁打を許し同点に追いつかれたが、その後は走者を得点圏に進められながらも無失点。「1、2番が塁に出て足も使えるので、そこを出さないようにしたい」と警戒していた阪神打線に対し、最少失点で踏ん張った。今季はここまで6試合に先発し3勝としていた右腕。4勝目は次戦以降にお預けとなった。

◆阪神・佐藤輝明内野手(22)が貴重な追加点をもぎ取る中越え二塁打を放った。2-1で迎えた八回1死一、二塁の好機。木澤のシュートを捉えた。打球はセンターの頭上を越え外野を転々。5日に1軍再昇格してから初のタイムリーを放ち、二塁ベース上で渾身の雄たけびをあげた。打線はなおも1死二、三塁で森下が中犠飛を放って追加点。4-1とリードを広げた。

◆失点はしても大崩れはしない。逆襲の後半戦にするために阪神・伊藤将司投手(27)が神宮のマウンドで力投した。ロースコアの展開でも最後までチームの勝利を信じて腕を振り、6回3安打1失点で今季4勝目を挙げた。「後半が始まるので、ここから挽回してしっかりとゲームを作れるようにしていけたら」21日にそう意気込んでいた左腕は立ち上がりに失点しながらも修正して投球を立て直した。一回、先頭の並木に左前打を許すと、続く武岡に中前へはじき返されていきなり無死一、三塁のピンチを招く。サンタナを二ゴロ併殺に仕留めるも、その間に三走に先制のホームを踏まれた。伊藤将は試合前時点で最近6試合中5試合で先制点を献上しており、そのうち3試合で黒星を喫しているだけに「まずは点が入るまで粘り強く投げられたら。走者をためてクリーンアップに回さないようにしたい」と気を引き締めて臨んだが、連打でチャンスを作られて先制点を奪われた。左腕は6試合連続でクオリティスタート(先発で6回以上を投げて自責3以内)を達成しており、安定感はこの日も健在だった。二回以降は走者を出しながらもゼロを並べて援護を待った。昨季は7月3試合で3勝0敗、防御率1・17と絶好調だった夏男は、夏バテ対策に余念がない。冷房は27度に設定して体を冷やし過ぎず、食事も管理する。「夏場は(体重が)減りやすい」と話すように、米やパスタなどの炭水化物を多く食べることでカロリーを増やしてベスト体重の85キロ前後をキープしている。神宮では通算4試合で0勝2敗、防御率2・96。この試合でセ・リーグの6球場制覇星が懸かっていた。さらにチームが敗れ、広島が勝利すれば首位陥落の可能性もあったなかで粘りの投球を見せた。1―1の五回に正念場を迎えた。先頭の並木のゴロを三塁手の佐藤輝が一塁へ悪送球。記録は失策となり、塁に出すと、武岡の犠打、サンタナの遊ゴロでそれぞれ進塁を許して2死三塁とピンチを広げた。4番・村上は四球で歩かせたが、最後はオスナをカーブで中飛に打ち取り、危機を脱した。七回の攻撃で1死二、三塁の好機で代打が送られて6回94球、3安打1失点で降板し、4勝目を手にした。(織原祥平)

◆下位打線でキラリと光る一打を放ち、試合を振り出しに戻した。〝恐怖の8番〟として存在感を発揮し続ける阪神・木浪聖也内野手(29)が、神宮でも同点打でチームに貢献。勝敗次第では首位陥落の可能性がある一戦で、チームの思いを代弁するように意地をみせた。「梅野さんがチャンスを作ってくれて、何とか(伊藤)将司に三塁に進めたいい形で回したいという気持ちでした。タイムリーという最高の形になってくれました」チャンスで快音を響かせ、声を弾ませた。0-1の三回。先頭の梅野が三塁線を破る二塁打で口火を切ると、木浪が変則右腕の小沢の外角低めのフォークを右中間へかっ飛ばす適時二塁打で追いついた。試合前の時点で得点圏打率・310という勝負強さをきっちりとみせつけた。球宴で弾みをつけて、後半戦に臨んでいた。19日の第1戦(バンテリンドーム)でヒットは打てなかったが、20日の第2戦(マツダ)は球宴初安打を刻んだ。「1本打ちたかったので、本当に出てよかった」と喜んだが、試合前にはそれ以上の収穫もあった。今年1月に合同自主トレを行い、打撃論を吸収した近藤(ソフトバンク)と約10分間、野球談議をする機会に恵まれた。「1つ聞いたことに対して、10でかえってきた。すごく引き出しが増えましたし、これが後半戦につながればいい。その結果がやっぱり恩返しになる」球界屈指の安打製造機からの金言もいかし、自身16打席ぶりの安打で好投する伊藤将の背中も押した。試合前の時点で、首位の阪神は2位広島を勝率で上回り、ゲーム差はなし。虎が敗れ去れば、6月28日以来となる2位転落の可能性もある。木浪も「後半戦、ここからしっかり切り替えてやっていきたい」と勝負の夏へ気合を高めていた。打線は三回のワンチャンスをいかし、近本も五回に右肋骨(ろっこつ)の骨折から1軍復帰後初盗塁を決めるなど奮闘。七回は先頭の森下が中前打で出塁すると、梅野のバントが内野安打に。木浪の犠打をはさんだ後、代打・渡辺諒の一ゴロの間で1点を勝ち越した。(新里公章)

◆ヤクルトは一回に幸先よく先制したが、二回から六回まで相手先発・伊藤将にわずか1安打に抑え込まれ、得点できず。八回2死でサンタナの10号ソロで1点を返すにとどまり、連勝が4でストップした。試合後の高津臣吾監督(54)の主な一問一答は以下の通り。――先発・小沢は5回3安打1失点「十分だと思います。ちょっと制球のところで苦しむ場面はあったんですけど、少しずつ成長している感じはしました」――同点で登板したリリーフ陣が失点してしまった「(抑えるのは)簡単じゃないですけどね。これだけ(試合数を)投げているので、疲れもあるでしょうし。いろいろ気を使いながら起用していきたいと思います」――打線は阪神先発・伊藤将を打ち崩せず「二回以降(安打)3本ですからね。点を取らないとね。ランナーにならないとね」――九回の守備でワンバウンドした投球が喉付近に当たり手当を受けた中村の状態は「結構ふらふらしていたようですけど。今から(クラブハウスに)あがってからどういう状況かもう一度確認したいと思います」――山崎が練習不在でベンチ入りも外れていたが「昨日の、(七回の守備で)フェンスにぶつかった時に上半身を強く打っているので、いろんなところが痛いと言うことで今日は外しました」――明日以降の起用は様子を見て「そうですね。明日、明後日、また次の日と毎日確認しながらというふうになると思います」――1日休みを挟んでまた切り替えて25日からの広島戦へ向かう「そうですね。うーん...。そうですね。点取らなきゃいけないですね」

◆ヤクルト・山崎晃大朗外野手(29)が、この日の試合前練習から姿を現さず、ベンチ入りメンバーからも外れた。試合後に高津監督は「昨日のフェンスにぶつかった時に上半身を強く打っているので、いろんなところが痛いということで今日は外しました」と説明した。前日22日の阪神戦に「1番・中堅」で先発出場すると、七回無死一塁でノイジーの大飛球をフェンスに激突しながら好捕。その後痛めた様子などはなかったが、八回の守備からベンチに退いていた。24日以降について指揮官は「明日、明後日、また次の日と毎日確認しながらというふうになると思います」と明かした。

◆阪神が逃げ切った。2ー1の八回1死一、二塁で佐藤輝明内野手(24)の左中間を破る二塁打とD1位・森下翔太外野手(22)=中大=の中犠飛で奪った2点がダメ押しとなった。佐藤輝の適時安打は6月14日のオリックス(甲子園)の第1打席以来。6回1失点の伊藤将司投手(28)は自身の連敗を「2」で止め、4勝目(4敗)を挙げた。復帰2試合目の近本光司外野手(28)は無安打だったが、七回1死二塁で長岡秀樹内野手(21)の右中間への大飛球を好捕し、守備で貢献した。2位広島も7連勝でゲーム差0のまま。岡田彰布監督(65)の主な一問一答は以下の通り(成績=47勝36敗3分、観衆=2万9619人)。ーー伊藤将は一回を1失点で乗り切ったのが大きかった「あそこで(無死一、三塁からの二ゴロ併殺で1点献上)、1点はしょうがないからな。サンタナでゲッツーとれたからなあ。大きかったよ」ーー六回も佐藤輝のエラーで嫌な感じになったが「だから1ー1で、次の点いうところやからなあ。あっこはよう踏ん張ったよな。球数も、あそこでちょっと増えたからなあ。なんか、エエイニング(七回)で、エエ1点が入ったよ、なんか泥臭い、なんか変なのが(七回1死二、三塁で代打・渡辺諒の一ゴロを捕球後、本塁送球を試みたオスナが落球。結局一ゴロで勝ち越し)」ーー1つ勝ちがついてきっかけに「6連戦でいくと最後の登板なるけど、イニング稼げるから、そういう意味では白星ついたのが大きいよな」ーー近本のプレーが大きかった「いやいや、向こう(中堅)見えへんねん。ちょっと下がってるやろ。森下のアレ(八回の中犠飛)も見えへんかったよな。捕ったかどうかが。ランナーからは分かるんやろうけど、ベンチからものすごい見づらいよな」ーー抜けていれば「やっぱり失点防ぐというかな。こういうゲーム展開やからな、そういうの大きいよな」ーー梅野のバントもツキがあった(七回無死一塁から犠打を試みて、内野安打に)「うまいことスピンかけたんやろ? 戻ってきとったもんな。アイツもゴルフやるから、うまいことスピンをかけれるよな」ーー梅野も当たりが戻ってきた「ちょっと戻ってきとんな、おう」ーー状態は上がってるか「上がってる、上がってる。やっと大台(打率2割台)乗りそうやもんな。あと1本で大台乗るんちゃうか(試合終了時点で打率・197)」ーー結果的には八回の2点が大きかった「ここはもう、そら1点じゃなあ。3点差なって、あと2イニングで、ソロホームランオッケーみたいな感じで、ホンマにソロホームランやったけど。1点とかなら、きついよ、この球場はな」ーー2ー1だったとしても八回は浜地を「浜地行くつもりやった。まあ、石井もいないし。浜地ひとりやなしに左も含めてな。でも3点開いたからな。だいぶ楽になったよな」

◆現役時代は南海、西武に所属し、引退後は西武、ダイエー、阪神の3球団でヘッドコーチを務めたサンケイスポーツ専属評論家・黒田正宏氏(75)は捕手のリードを含めた守備の勝利だと強調。各選手の自信につながる1勝だと力説した。阪神の守り勝ちだった。近本の七回の美技は素晴らしかったが、それ以上に評価したいのが二回の中野、大山の守備だ。この回先頭のオスナの打球は完全にセンターへ抜けたと思った打球。それを中野が逆シングルで捕球して一塁送球。大山も難しいワンバウンドをすくい上げてアウトにした。このワンプレーが伊藤将を立ち直らせたと言ってもいい。伊藤将は立ち上がり、不運なヒットもあって、先制点を許していた。サンタナを併殺で最少失点で凌いだが、二回もまだ球が高めに浮いて、不安な内容だった。もし、オスナに出塁されていたら、立ち直りはもう少し遅れただろう。崩れていたかもしれない。梅野のリードも良かった。カーブを有効に使って、チェンジアップ、スライダーを効果的にまじえる配球が二回以降のヤクルト打線を完全に沈黙させた。前回の伊藤将の先発時にスタメンマスクを坂本に譲って、悔しい思いをしていたはず。意地を感じたリードだった。守りで先発投手を立ち直らせ、復調した先発のリズムのいい投球が守備に好影響を及ぼす。互いに助け合うことで、接戦でも辛抱することができる。この試合が典型。接戦で辛抱して、後半勝負に持ち込んで、勝ち越す。強いチームの勝ち方だ。プレッシャーがかかる終盤のシビアな試合でも勝ち切ることができるようになる。各選手の自信になる勝利だ。

◆6番で先発出場した阪神のドラフト1位・森下翔太外野手(22)が1-1の七回先頭で中前打。その後、三塁まで進み、代打・渡辺諒の一ゴロの間に勝ち越しのホームを踏んだ。「僅差の場面で、先頭打者としての役割を果たせたのはよかった」。佐藤輝の適時二塁打で1点を加えた八回1死二、三塁では4点目となる中犠飛。「直前に(佐藤)輝さんが打ってくれて、最悪犠牲フライでいいという気持ちで(打席に)入れた。(ヒットにならなかったのは)パワー不足かなと思います」と笑わせた。

◆阪神・梅野隆太郎捕手(32)は2試合連続となるマルチ安打の活躍で得点を呼び込んだ。三回先頭では三塁線を破る二塁打で好機を作り、木浪の二塁打で一時同点のホームを踏んだ。「チームとして点を取れたのはよかった」。七回無死一塁では犠打を狙って転がした打球にバックスピンがかかり、バント安打でチャンスを広げた。同期入団で、18日に脳腫瘍のため死去した横田慎太郎さんにささげる1勝となり、「最高の報告ができたのでうれしい」と語った。

◆2番手で七回に登板した阪神・岩貞祐太投手(31)は1点のリードを必死で守り抜いた。一塁ベースに直撃する不運な右前打から1死二塁のピンチを招いたが、長岡の右中間への飛球を中堅・近本が好捕。代打・川端は外角の直球で三ゴロに仕留めて危機を脱した。18日に死去した横田慎太郎さんについては「僕らウメ(梅野)とザキ(岩崎)と同期というところもあるので、人一倍、思いを背負ってやっていきたい」と話した。

◆天国に旅立った仲間に初めて勝利をささげることができた。4-2の九回に登板した阪神・岩崎優投手(32)が打者3人を抑えて、今季14セーブ目。「勝ててよかったです」と力を込めた。18日に脳腫瘍のため28歳で亡くなった横田慎太郎さんは4学年下だが、2014年に入団した同期生(岩崎はD6位、横田さんはD2位)。病魔に屈せず、現役復帰を目指して、鳴尾浜で練習する姿を何度もみてきた。横田さんは志半ばでこの世を去った。自分は大好きな野球を続けている。横田さんへの思いを持ち続けることを問われると「もちろん、続けていきたいです」とうなずいた。オフには、横田さんが眠る墓前に優勝の報告をする。(三木建次)

◆虎版ザ・キャッチや! 阪神はヤクルトに4-2で勝利。2位広島も勝ったためゲーム差なしは変わらずも首位の座を守った。右肋骨骨折から復帰2戦目の近本光司外野手(28)が1点リードの七回1死二塁で長岡が放った右中間への飛球を好捕。死球を受けながらも二盗を決めるハッスルプレーでチームを窮地から救った!誰もが届かないと思った。飛球がグラブにポンっと吸い込まれると、神宮の虎党から大歓声がわき、ヤクルトファンから悲鳴が上がった。近本が背中に目がついているかのような〝ザ・キャッチ〟を七回のピンチで披露。首位陥落の危機から虎を救ってみせた。「ライトフライやと思ったんですけど、風というか、こっち(中堅の守備範囲に)きていたんで、〝やべ〟と思って、ジャンプしたら入った」2-1の七回。岩貞が先頭の青木に安打を許し、その後、犠打で二進。燕の反撃ムードが最高潮になったところで、長岡がかっ飛ばした白球は右中間フェンス手前まで勢いよく伸びた。万事休すか。ジャンプ一番で伸ばしたグラブに白球はドンピシャで収まった。「フェンスも怖かったので、とにかくジャンプで高いところで。高いところの方が近いので、とにかくジャンプだけと思って」

◆ヤクルトは連勝が4でストップ。高津臣吾監督(54)は2得点の打線に嘆き節だった。「二回以降(安打が)3本ですからね。点を取らないと。ランナーにならないといけない」打線だけでなく、記録に表れないミスがあった。七回無死一塁から梅野の投前へのバント処理に大西が手間取り内野安打に。1死二、三塁からは渡辺諒の打球を一塁手、オスナがお手玉。本塁へ送球できず自らベースを踏む一ゴロの間に勝ち越し点を奪われた。アクシデントもあった。九回2死で中野を打席に迎えた場面。投球が捕手、中村の喉元を直撃し、その場に倒れ込んだ。治療を受けてフル出場したが、指揮官は「結構、フラフラしていたようで」と心配顔。22日の守備でフェンスにぶつかりながら好捕した山崎は上半身の痛みを訴えて練習に参加せず、ベンチ入りメンバーからも外れた。25日からは広島3連戦(マツダ)。一丸で白星をつかむ。(箭内桃子)

◆阪神・木浪が0-1の三回無死二塁から右中間を破る同点二塁打。反撃ムードをつくった。「梅野さんがチャンスを作ってくれて、つなぐという意識でした。タイムリーという最高の形になった」。先頭の梅野が三塁線を破る二塁打で出塁。ヤクルトの先発右腕・小沢のフォークを振り抜いた。13日のDeNA戦(甲子園)以来、16打席ぶりの安打に笑顔がはじけた。

◆阪神・中野は八回先頭で左前打を放つと、今季12盗塁目を決め、佐藤輝の一打で追加点のホームを踏んだ。九回には二塁内野安打で3試合連続の複数安打と絶好調。この日は、母校の日大山形高が夏の甲子園大会出場を決め、「ここ(神宮)に来る前に高校の試合を見ていた。甲子園に出てくれたので、自分も今日の試合、なんとか勝ちたかった」と後輩たちを勝利でねぎらった。

◆試合後の神宮に吹く夜風が心地よかった。虎党からの拍手喝采に、阪神・伊藤将司投手(28)は帽子を取って応える。思い出の神宮でようやく白星をつかんだ。「(ヤクルト相手に)2回も、3回もやられるわけにはいかなかったので、なんとか抑えられてよかったです」一回に連打でピンチを招き、サンタナの二ゴロ併殺の間に先制のホームを踏まれたが、二回以降は粘りを見せた。最大の山場は1―1の六回だ。先頭の並木のゴロを三塁手・佐藤輝が体勢を崩しながら捕球し、一塁へ悪送球。同期入団の失策も、冷静な投球でカバーした。犠打と内野ゴロで進塁を許し、4番・村上を四球で歩かせて2死一、三塁とピンチを広げられたが、最後はオスナをカーブで中飛に仕留めて無失点で乗り切った。「本当に粘れてよかった」直後の七回に代打が送られて降板となり、代わりに打席に立った渡辺諒の内野ゴロで勝ち越しに成功。6回3安打1失点で4勝目を手にした。今季は左肩の違和感で開幕から出遅れたが、これで88回?となり、規定投球回に到達。さらに神宮では通算5度目の登板で初めて白星をマークし、セ・リーグ球団の本拠地6球場すべてで勝利を挙げた。「きょうも阪神ファンの方が多く来てくれたので、勝てて良かった。うれしいです」と充実感をにじませた。

◆負ければ広島に首位を明け渡す大事な一戦。佐藤輝と森下のドラフト1位コンビが、いい仕事をしてくれた!! 1点リードの八回に佐藤輝がタイムリーツーベース、そして森下がヤクルトを引き離す特大犠飛で4点目。その2点で虎党は勝利を確信したのだ!!おおきに!!って甘い言葉を掛けるのは前半戦までや! アレ(優勝)を狙う本当の真剣勝負の後半戦に突入したってのにサトテルちゃん、同点の六回に先頭の並木のサードゴロを一塁悪送球でピンチをつくるなよ(怒)森下も二回1死一塁で初球を気持ち良く引っ張ってサードゴロ併殺打って...。最悪、進塁打を打てるよう、今から考えなきゃアカンやろー!! 本日のヒーローは文句なしに伊藤将と梅野のバッテリー。ありがとう!!

◆「すごい! ザ・キャッチや!」当番デスク・阿部祐亮が絶叫していた。近本のスーパーキャッチ、お見事!「ザ・キャッチ」メジャーのスーパースター、ウィリー・メイズが背走して捕球した歴史的ファインプレーは1954年のこと。あまりにも有名なプレーの主役・メイズが、日本で親しまれる別の逸話がある。野村克也に愛称「ムース」と名付けたのがメイズだった。日米野球で来日した際、周囲を観察して敏感なヘラジカ(北米に生息するシカの一種)に似ていると、ノムさんを評した。「ザ・キャッチ」は海の向こうの伝説だけれど、ノムさんのニックネームの生みの親、と聞くと急に親近感も湧くでしょう。23日は二十四節気の「大暑」。一年で一番暑いと言われてきた日だ。阪神が戦った神宮球場だけでなく、日本列島から「暑い」「暑い」が聞こえてきた。この時期は高校野球、夏の甲子園の地方大会真っ盛り。未来のサンスポを背負って立つルーキー記者・中屋友那は、京都大会準々決勝の速報を送ってきた。過酷な炎天下の高校野球取材はスポーツ新聞記者の第一歩だ。九回2死までノーヒットノーランに封じられていた龍谷大平安高のミラクル勝利を伝える劇的な原稿は、高校野球ファンの〝大好物〟。中屋記者、いい仕事だ。記者だけではない。わがサンスポが誇る専属評論家諸氏も、高校野球中継の解説で大忙し。阪神戦のサンスポ評論も担当だった〝軍師〟黒田正宏氏は姫路での準々決勝で近本の母校・社高が快勝した試合を解説。朝と夜、変則ダブルヘッダーだった。

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
阪神
47363 0.566
(↑0.005)
-
(-)
57311
(+4)
262
(+2)
41
(-)
44
(+2)
0.236
(-)
2.810
(↑0.01)
2
(-)
広島
49380 0.563
(↑0.005)
0
(-)
56301
(+3)
285
(+1)
54
(-)
48
(-)
0.247
(-)
3.010
(↑0.03)
3
(-)
DeNA
43402 0.518
(↓0.006)
4
(↓1)
58310
(-)
294
(+4)
57
(-)
20
(+1)
0.249
(↓0.002)
3.170
(↓0.01)
4
(-)
巨人
42421 0.500
(↑0.006)
5.5
(-)
58307
(+4)
315
(-)
100
(+2)
28
(-)
0.248
(-)
3.570
(↑0.05)
5
(-)
ヤクルト
36472 0.434
(↓0.005)
11
(↓1)
58306
(+2)
328
(+4)
73
(+1)
44
(-)
0.237
(-)
3.600
(-)
6
(-)
中日
34502 0.405
(↓0.005)
13.5
(↓1)
57248
(+1)
284
(+3)
40
(-)
26
(-)
0.241
(↓0.001)
2.940
(-)