阪神(☆2対1★)ヤクルト =リーグ戦9回戦(2023.05.11)・阪神甲子園球場=
このエントリーをはてなブックマークに追加

 123456789
ヤクルト
0001000001700
阪神
01000001X2820
勝利投手:石井 大智(1勝0敗0S)
(セーブ:岩崎 優(1勝0敗2S))
敗戦投手:清水 昇(0勝1敗0S)
  DAZN
チケットぴあ 阪神戦チケット予約 ヤクルト戦チケット予約

DAZN

◆阪神は2回裏、木浪の適時三塁打で1点を先制する。その後同点とされるも、8回には1死二三塁から糸原の野選出塁の間に1点を加え、再びリードを奪った。投げては、2番手・石井がうれしいプロ初勝利。敗れたヤクルトは、打線が中盤以降の好機を生かしきれなかった。

◆阪神中野拓夢内野手(26)が今季31試合目で初失策を喫した。1回表1死、2番浜田の一、二塁間へのハーフバウンドの打球を巧みに捕球したが、一塁送球が三塁方向にそれた。一塁大山が懸命に左手を伸ばしたが、グラブの先からボールがこぼれた。記録は中野の悪送球となった。中野は岡田監督が就任した昨秋、遊撃から二塁にコンバートされた。プロ1年目から昨季まで2年連続で遊撃ワースト失策も、今季は二塁で好守を連発していた。

◆阪神が珍しい2連続三塁打で先制点を挙げた。2回1死走者なしの場面。8番坂本がヤクルト・サイスニードの直球を強振すると、打球は背走する中堅手塩見のグラブをはじく三塁打になった。続く木浪が2球目変化球を振り抜き、右中間フェンスにぶち当たる三塁打になった。前日まで2試合連続でゼロ封負けを喫した打線が序盤から奮起。チームにとっては、これが23イニング得点になった。7試合連続安打となった木浪は「なんとしても先制点を取りたいという気持ちでした。(坂本)誠志郎さんがいい形でチャンスメークしてくれたので、思い切ってスイングすることができました」とコメントした。

◆ヤクルト中村悠平捕手(32)が「特例2023」で出場選手登録を抹消された。球団が「体調不良のためコロナ特例で抹消」と発表した。前日10日は石川雅規投手(43)をリードし、石川の1年目からの22年連続勝利をアシストしていた。中村は今季25試合に出場し、打率2割1分3厘、3本塁打、10打点を記録。3月にはWBCに侍ジャパンのメンバーとして出場し、決勝では大谷翔平投手(28=エンゼルス)をリードして優勝捕手となっていた。

◆打率1割台と不振にあえぐ3年目のヤクルト内山壮真捕手に同点打が飛び出した。0-1で迎えた4回2死一、二塁、1ボールから伊藤将の136キロ変化球を左翼線に適時二塁打。「打ったのはスライダー。先制されてしまい、早いイニングで追いつきたいという気持ちがありました」と語った。今季7試合目のスタメンマスクだが、過去6試合は全て敗れており期する思いがあった。

◆阪神伊藤将司投手(27)の甲子園12連勝は2戦連続でお預けとなった。1点リードの4回2死一、二塁、6番内山に三塁線を抜く適時二塁打で同点とされた。それでも6回1死一、三塁で今度は内山を遊ゴロ併殺打に仕留めるなど、7回102球で7奪三振6安打1四球で1失点。同点の状況で降板した。現在、甲子園11連勝中。この日も勝ち負けはつかず、次回甲子園登板で球団では70~71年村山実以来となる甲子園12連勝を目指す。

◆阪神石井大智投手(25)が、プロ初勝利を挙げた。1-1の8回に2番手で登板し1イニング無失点。直後の8回裏、チームが勝ち越しに成功した。石井は秋田高専、独立リーグの四国IL高知を経て20年ドラフト8位で阪神入り。高専出身では09年ドラフト2位で巨人に入団した近大高専の鬼屋敷正人捕手以来だが、3年終了時でプロ入りしたため卒業した選手では初となる。「高専卒」で勝利を挙げた投手も史上初だ。極めて特殊な環境で実力を磨いてきた。高専は5年制。「野球で飯を食っていきたい、と考えるような子が来る学校じゃないですから」と、秋田高専の教員は口をそろえてそう語る。卒業後の進路は、就職か大学への編入がほとんど。石井も環境都市工学を専攻し、文武両道の日々を送った。エースとして臨んだ3年夏は秋田県大会2回戦で敗退。4年冬には、卒業研究のため研究室に配属され、木造住宅の耐震性について研究した。関東の大手企業から内々定も出ていたというが、秋田東中の同級生だった秋田商・成田翔が15年ドラフト3位でロッテに入団したことで「翔ができるなら俺にも...」と野球への思いが強くなった。5年生になる前の17年春、「野球で飯を食っていきたい」と覚悟を決めた。研究室にダンベルを持ち込み、警備員から「片付けなさい」と注意を受けたこともあった。ずっと、雪辱の時を待っていた。プロ1年目の21年開幕戦。7回に登板するも失点し、先発藤浪の勝ち星を消してしまった。その相手が、ヤクルトだった。「変化球が入らなくて、あの時は直球を投げるしかなかったんです」と未熟だった。もうあの時の姿はない。2年の時を経て、勝ちパターンの一角を任されるようになった右腕が、うれしい1勝をつかんだ。【中野椋】

◆阪神が土壇場に勝ち越して今季初の3連敗を逃れた。1-1で迎えた8回。1死一塁から8番木浪の三塁強襲の二塁打で二、三塁。続く代打糸原の遊撃への当たりが野選となり1点を勝ち越した。先発伊藤将は7回6安打1失点で降板。1点リードの4回2死一、二塁で6番内山に三塁線を抜く適時二塁打で同点とされた。勝ち負けはつかず甲子園12連勝は持ち越しとなった。8回から2番手登板した石井大智が1イニングをゼロに抑えて今季初勝利を挙げた。

◆ヤクルトが開幕以来のカード3連勝を逃した。ホームが遠かった。高津監督は「こういう展開はあと少しのところで勝敗を分ける。目に見えるミスも見えないミスもあった」と敗因を語った。6回1死一、三塁で内山が遊撃への併殺打でチャンスを逃す。7回無死一塁では長岡が送りバントを投飛とし、一塁走者のオスナが戻れずこちらも併殺プレーで波に乗れなかった。得点機は0-1で迎えた4回2死一、二塁で内山が放った左翼線の適時二塁打のみ。内山にとって今季7試合目となったスタメンマスクでの初勝利はならなかったが、リードについて高津監督は「配球に関しては、その場でやっているピッチャーとキャッチャーが感じるものがあると思うので、僕から正直こうして欲しいと思うことがあってもそちらを優先するべきだと思う」と述べた。今後に向けて「いろんなことは勉強して欲しいですけど、型にはめた配球などはしてほしくない。やられて勉強して、抑えて勉強しての繰り返しだと思います」と期待した。

◆阪神伊藤将司投手(27)は甲子園での連勝記録を「11」のまま継続した。先発で7回6安打1失点、102球の力投。1点リードの4回2死一、二塁の場面で6番内山壮に三塁線を抜く適時二塁打で同点とされたが、勝ち越しは許さなかった。「野手のみなさんの守備にも助けられながら、低めに丁寧に粘り強く投げることができたと思います」。降板後もベンチで必死に声を出し仲間を鼓舞した。今月8日に誕生日を迎えたが、27歳初登板も粘りの投球だった。6回1死一、三塁のピンチでは4回に同点打を浴びた内山壮を高め直球で遊ゴロ併殺。7回には無死一塁から犠打を試みた長岡を投飛に打ち取り、一塁送球で併殺を完成させた。まだ甲子園連勝は途絶えていない。「負けなかったことは非常に良かった。継続まだできているんで、1つでも多くできればいい」。次回の甲子園で、球団では70~71年の村山実以来となる聖地12連勝を目指す。

◆阪神がヤクルトに競り勝った。岡田彰布監督(65)は終盤8回に代打&代走で攻めまくり、最後は1死二、三塁から代打糸原の遊ゴロの間に走者が生還(記録は野選)。勝ち越しに成功した。巨人に敗れた首位DeNAに2ゲーム差と迫った。今季31試合目にしてまだ3連敗がない。指揮官の一問一答は以下の通り。(テレビ)-接戦をものにした「いやいや、まあ(2回に)1点取ってねえ。そのままグッと追加点くると思ったけど。まあ、なかなか取れなくて。でも、まあ、悪い流れをねえ。昨日、一昨日と0点だったんで、まあ、そういう意味では、今日の勝ちは大きいと思いますね」-8回はミエセスがヒットを打った後は代走攻勢。3人使いました「はいはい。いや、次の回は(ミエセスが)先頭バッターだったので、(8回表の)ライトの守備は代えれんかったから。あれでピンチを招いてしまったんだけど。まあねえ、出たら当然代走いくつもりだったんで。(坂本が)バント失敗したけど、木浪がよくつないだですよね」-糸原の遊ゴロで小幡がよくホームにかえってきた「(代走の)1番は植田なんですけどね。9回にもう1回、あると思ったんでね。だから島田をいって...。まあ坂本は足が速くないんで。まあ、ずっと抑えていたキャッチャーは普通は代えないんですけど、まあ勝負でね。残っているので足が速いのは小幡だったんで」-8回に執念を感じた「いやいや、まあ、(走者)サードでね、何回かあったと思いますけど、三振とかね、何とか前に転がせばね、足が速いサード(ランナー)がいてると、なんとかなると思ったんで。糸原も、ちょうどいいところに打ちましたね」-石井が初勝利「いや、知らなかったです。初勝利というのはね。石井が勝ち投手やなというのは分かってたんですけど、初勝利は知らなかったです」-先発伊藤将が7回1失点「まあ前回もね、2点だったけど、7回まで投げ切って100球投げたし、ちょっと出遅れましたけど、これでローテーションで普通に回せると思いますね」-次は首位ベイスターズとの3連戦「いや、まだまだね、これでね。明日は(DeNA先発が)今永みたいなんで、なんとかもうちょっとヒットを打って、もうちょっと点を取りたいですね」(囲み)-糸原みたいな代打は貴重な存在「そうやなあ、渡辺(諒)とかなあ、いろいろ、今日はアレやったけど、伊藤(将)もな、そういうのあったけど、何とかなりそうやったもんな(笑い)。前にボール飛ばしたらな」-小幡のナイス走塁「だから(ゴロが)正面じゃなかったからな、ショート一番投げにくいところに飛んだからな、それもよかったんやろな」-石井は味方のエラーもあった中で踏ん張った「そうやなあ、(2死二塁で)村上歩かせようと思ってたけどね。それで安藤(投手コーチ)行かせたんやけど、まあ去年3連発打たれた1人らしいから、勝負させたんやろな、おーん」-今年になって初めて勝敗に関わるところを任されている「それはやっぱり、抑えることがあのへんは、若いピッチャーというか、石井というか、そういうのがつくわけやから、おーん」-3連敗しなかった「まあ、3連敗しないって言うたら、いつも1勝2敗になるやんか(笑い)。まあ、そら勝てたら、そんなもん、まだ長いシーズンで5連敗、6連敗はするよ。はっきり言って。まあ、2、3回しても全然平気やからな。長いシーズンから考えるとな。まあ、でもしない方がええけどな。だから、早く止めた方がな。まあ、明日なんか今日の勝ち負けで明日なんか気持ち的に全然違うし、それはやっぱり、ましてこういうゲームをしのいだいうのはすごく大きいよな、やっぱりな」-連敗を止めるのは投手陣の頑張り「そら頑張りやん、2点やもん」-下位打線での先制も大きい「そら大きい、大きい。もう1点欲しかったよな、やっぱりなあ。あそこは」-木浪が打っている「そら数字見たら打ってるやん。小学生でも分かる」-何がいい「いや、調子ええからちゃう? 技術も良くなったんやろな、そら。調子だけじゃ、そんな長いこと続けへんと思うよ。やっぱ打ち方とか、タイミングの取り方とか、いろんな面でよおなったから、あないして、ずっと継続していい結果残してるんちゃう」

◆阪神石井大智投手(25)が、プロ初勝利を挙げた。1-1の8回に2番手で登板し1イニング無失点。直後の8回裏、チームが勝ち越しに成功した。どこまでもストイックな男が記念の1勝をつかみ取った。夢の国でも石井のストイックぶりは健在だった。昨年12月、愛妻と東京ディズニーランドに"プチ新婚旅行"した時のこと。普段から食生活に細心の注意を払う男でも、さすがにポップコーンの1つや2つ、ほおばっているだろう...。そんなこちらの考えは甘かった。「カレーライスとターキーレッグですね、食べたのは。そんなに脂質はないし、ターキーレッグはターキー(七面鳥)なので大丈夫」。夢の国でもタンパク質摂取には余念がなかったことを真顔で説明された。夢の国どころか、妻の両親へ結婚のあいさつに行く時も、だ。愛妻は「私の両親にあいさつに来る直前にもジム行っていたんです。筋肉に刺激を入れてから両親に会いに来た」と笑顔で懐かしむ。今年の正月、妻の実家で過ごした際には「この料理の脂質、大丈夫かしら」と妻の両親も細心の注意を払って、もてなしてくれたそうだ。どこまでも自分を貫き、つかみ取った初勝利。今夜くらいは、愛する妻と祝杯をあげていい。【阪神担当=中野椋】

◆3年目の石井大智投手(25)が、プロ初勝利を挙げた。1-1の8回に2番手で登板。1イニング無失点で封じ、直後の8回裏でチームが勝ち越しに成功した。試合後は周囲への感謝、記念球の贈り先などを口にした。石井の一問一答は以下の通り。-初勝利「記録的にはうれしいことですし、去年のオフシーズンから多くのひとに関わってくださって、自分の中では結果につながるような助けをいただいたので、本当にそういう人たちに感謝しいたいですし、自分の力だけではない。本当にこれからもこういう成績を残せるようにやっていきたいなと思います」-1番打者からのスタートも平常心で「いい緊張感で相手に向かって行く気持ちでいった結果がすごく、ピンチを背負って褒められるピッチングじゃないと思うんですけど本当にゼロで帰って来ることだけを考えてまずはゼロで抑えられたのがよかったです」-監督との記念撮影「もちろん前監督の矢野さんも1年目から使っていただいて、その経験が今年発揮できた部分もありますし、岡田監督になってチャンスをいただいてこう言う場所で投げたことは本当にうれしいですし、本当に感謝したい気持ちです」-サンタナを抑えたところ「自分の中では村上選手で勝負しにいってと(坂本)誠志郎さんとも話して、『勝負にいくからには全力でこい』とマウンドで言っていただいて。結果四球だったんですけど、四球もなんていうんでしょう、いい四球で、空振り取りに行った結果の四球だったので自分の中で後悔はないです。サンタナ選手を打ち取れてゼロで抑えることができてよかったです」-記念球はどなたに「どうしようかな...とは思っているんですけど。本当に周りの方々に感謝したい気持ちもあるので、いつもブルペンで捕ってもらっている片山ブルペン捕手に(笑い)。冗談です。妻にあげようかなと思います」-奥様の支えあっての勝利「もちろんそうです。それがなかったら、もちろんこう言う場所で戦えていないと思いますし、本当に料理や私生活の面で支えてもらっている部分がすごく、自分の多くのところを占めているので本当に感謝したいですし、これからも妻のために頑張りたいと本当に思っています」-石井の活躍が独立の希望の光りになる「独立リーグでやったときは、未来が分からないというか本当にお先真っ暗というか。心からなんとか光りを探しながらというところがあった。もちろん戦っている選手もそういう気持ちでいる選手もいると思いますし、そこの少しでも光りになれるような、目指してもらえるような選手になりたいなと思います。独立リーグに限らず、子どもが目指したいと思ってもらえるような選手になりたいなと思います」-勝ちパターンとしてどういう所を目指す「自分の中では1年間戦ったことがないので、まずはそこの言い方は悪いかもですけど、経験がないので、本当に自分はがつがつ行くだけかなと思っているので。またその経験をして、どうするのかっていうのも考えながら1歩ずつ進んでいきたい気持ちがあるので、今のスタイルを変えずに本当に相手に向かって投げていきたいなと思います」

◆支えてくれた妻にありがとう-。阪神石井大智投手(25)が、3年目でプロ初勝利を挙げた。2番手で登板した同点の8回を1安打無失点に抑え、直後にチームは勝ち越し。秋田高専、独立リーグの四国IL・高知を経て夢をつかんだ苦労人だ。NPB史上初となる「高専卒」の選手が、うれしい勝ち星をつかんだ。高専は5年制。「野球で飯を食っていきたい、と考えるような子が来る学校じゃない」と教員は口をそろえる。秋田東中の同級生だった秋田商・成田翔が15年ドラフト3位でロッテに入団。これが転機となった。「翔ができるなら俺にも...」。5年生になる前の17年春、「野球で飯を食っていきたい」と覚悟を決めた。研究室にダンベルを持ち込み、警備員から「片付けなさい」と注意を受けたこともあった。そんな、どこまでもストイックな男だ。昨年1月に結婚。年末、2泊3日で東京へプチ新婚旅行に出かけても、1日は都内のトレーニング施設巡りに時間を費やした。全てはプロ野球の世界で生き抜くため、だ。「妻のおかげで野球に集中できている。『後悔しないようにやって』って毎回言われるので。僕以上に大変なことがあると思うけど、抑えること、勝つことが妻のためでもある。これからも妻のために頑張りたいと、本当に思っています」結婚後、アスリートフードマイスターの資格を取得した妻の手料理で体を作る日々。この日は、ひとあし早く出勤した妻を最寄り駅まで車で送り届け、甲子園に向かった。「気をつけてね(妻)」「行ってらっしゃい(夫)」。愛する人との何げない会話が、腕を振るエネルギー源だ。独立リーグ時代からの付き合いの愛妻は西宮市内の自宅で勝利を見届けた。「高知時代から1分1秒を無駄にしないように生きている人。それを続けてきた彼自身の努力が、勝利になって表れてくれてうれしいです」。石井が愛車を走らせて帰宅すると、記念球を待つ妻が待っていた。【中野椋】

◆【日刊スポーツ西日本写真映像チームのとっておき映像プレイバック】阪神小幡竜平が代走で神走塁!土壇場の8回、糸原健斗の内野打球で本塁へ突入。際どいタイミングも捕手のタッチをかいくぐり決勝のホームイン。勝負を決めました!

◆"恐怖の8番"だ。阪神木浪聖也内野手(28)が値千金のマルチ安打で3連敗阻止に大貢献した。同点の8回に三塁強襲二塁打で好機を広げ、相手野選での決勝点を呼び込んだ。2回には連続無得点を22イニングで止める先制三塁打を放つなど、打率は驚異の3割7分。今季失策0で正遊撃に躍り出た5年目が覚醒の時を迎えている。首位DeNAが敗れ、2ゲーム差に再接近。12日からの首位攻防戦も背番号0にお任せだ。お立ち台に木浪の姿はなかった。だがこの男の大活躍なくして、3連敗阻止はなかった。ロッカー室へ続く通路で、打のヒーローは静かに喜びをかみしめた。「真っすぐがきてもいける準備をしていた。でも二つ空振りしていますし、低めに来るだろうと、(バッテリーの)サインが決まって1歩前に行きました」充実の表情で振り返った場面は同点の8回だ。1死一塁で打席が回った。3番手清水のフォークに2球続けて空振りし、その後粘って1-2からの5球目。セットポジションに入った直後、打席位置を1歩前に進め、読み通りにきた外角の落ち球を捉えた打球は三塁村上のグラブをはじいた。「抜けてくれ、でしたね」。左翼方向へ転がる二塁打で1死二、三塁と好機を広げ、糸原の遊ゴロ野選と小幡の好走塁がもたらした決勝点をお膳立てした。23イニングぶりの得点も木浪のバットからだった。2戦連続完封負けの重苦しいムードを背番号0が振り払った。0-0の2回に1死から坂本が三塁打を放って打席が回ると、会心の一振りが右翼フェンスを直撃。20年9月以来、自身3年ぶりの三塁打で待望の1点を運んだ。「何としても先制点を取りたい気持ち。(坂本)誠志郎さんがいい形でチャンスメークしてくれた。思い切ってスイングすることができた」と珍しい連続三塁打に胸を張った。4月8日ヤクルト戦以降「8番遊撃」で出場し続け、打率は3割7分まで上昇。規定に4打席足りていないものの、現時点で隠れ3位の好成績だ。7試合連続安打中の5月の打率は、24打数12安打で5割を誇る。岡田監督も「そら数字見たら打ってるやん。小学生でも分かる」と絶賛。「技術も良くなったんやろな、調子だけじゃ、そんな長いこと続けへんと思うよ。打ち方とか、タイミングの取り方とか、いろんな面でよおなったから、ずっと継続していい結果残してるんちゃう」と、褒めちぎった。首位DeNAが敗れ、ゲーム差は2に縮まった。12日からは交流戦前最後の首位攻防3連戦。"恐怖の8番"の勢いは止まりそうもない。【波部俊之介】

◆阪神が控えの二遊間組の活躍で、泥臭く決勝点をもぎ取った。1-1の8回1死二、三塁。代打糸原が遊撃右にゴロを転がすと、代走の三塁走者小幡は頭から飛び込んで間一髪ホームを掃いた。バットにボールが当たった瞬間にスタートを切る「当たりゴー」のサインだったようで、「とっさに頭から行きました。キャンプの成果が出て、ホームベースを触る位置も良かった」としてやったり。「糸さんが、『ミスターコト起こし』がやってくれました」と先輩に頭を下げた。遊撃手の野選となり、今季初打点が勝利打点になった糸原も「小幡がセーフになってくれた」と感謝。「三振だけはダメだったので、本当にバットに当てることだけを考えていた」と食らいついた。岡田監督も「何とかなりそうやったもんな、前にボール飛ばしたら。(ゴロが)正面じゃなかったからな。遊撃手が一番投げにくいところに飛んだのもよかったんやろな」と、2人の働きをほめた。代打糸原、代走小幡の2人でお立ち台。糸原は「小幡も途中から出ている選手なんで、2人でお立ち台に立てて最高です!」と叫んだ。来たるべき出番に備えた集中力が、大きな白星を呼び込んだ。【石橋隆雄】小幡の神走塁 8回表阪神1死一塁。木浪の三塁への当たりを三塁村上がはじく。カバーしようとした遊撃長岡も逆を突かれ、ボールは左翼へ。その動きを見た一塁走者小幡は二塁を蹴り、一気に三塁を陥れる。次打者糸原の遊ゴロ野選で勝ち越しの生還。

◆"恐怖の8番"だ。阪神木浪聖也内野手(28)が値千金のマルチ安打で3連敗阻止に大貢献した。同点の8回に三塁強襲二塁打で好機を広げ、相手野選での決勝点を呼び込んだ。2回には連続無得点を22イニングで止める先制三塁打を放つなど、打率は驚異の3割7分。今季失策0で正遊撃に躍り出た5年目が覚醒の時を迎えている。首位DeNAが敗れ、2ゲーム差に再接近。12日からの首位攻防戦も背番号0にお任せだ。<岡田監督 一問一答>-接戦をものにした岡田監督 昨日、一昨日と0点だったんで、まあ、そういう意味では、今日の勝ちは大きいと思いますね。-8回糸原の遊ゴロで小幡がよくホームにかえってきたが(代走の)一番は植田なんですけどね。9回にもう1回、あると思ったんでね。だから島田をいって...。まあ坂本は足が速くないんで。まあ、ずっと抑えていたキャッチャーは普通は代えないんですけど、まあ勝負でね。残っているので足が速いのは小幡だったんで。-小幡のナイス走塁だから(ゴロが)正面じゃなかったからな、ショート一番投げにくいところに飛んだからな、それもよかったんやろな。-石井は味方のエラーもあった中で踏ん張ったそうやなあ、(2死二塁で)村上歩かせようと思ってたけどね。それで安藤(投手コーチ)行かせたんやけど、まあ去年3連発打たれた一人らしいから、勝負させたんやろな、おーん。-3連敗しなかったまあ、3連敗しないって言うたら、いつも1勝2敗になるやんか(笑い)まだ長いシーズンで5連敗、6連敗はするよ。はっきり言って。まあ、2、3回しても全然平気やからな。長いシーズンから考えるとな。まあ、でもしない方がええけどな。-木浪が打っているそら数字見たら打ってるやん。小学生でも分かる。-何がいいいや、調子ええからちゃう? 技術も良くなったんやろな、そら。調子だけじゃ、そんな長いこと続けへんと思うよ。やっぱ打ち方とか、タイミングの取り方とか、いろんな面でよおなったから、あないして、ずっと継続していい結果残してるんちゃう。

◆阪神岩崎は完全投球で今季2セーブ目を挙げた。1点リードの9回に登板。6番内山を直球で一飛に仕留めると、7番オスナはチェンジアップで空振り三振に。最後は8番長岡をスライダーで二ゴロに封じた。今季初セーブを記録した4日中日戦以来、中6日の登板で7試合連続無失点。後輩石井のプロ初勝利をお膳立てし「良かったです。自分のことのようにうれしい」と目尻を緩ませた。

◆両軍のスターティングメンバーが発表。阪神は新助っ人のシェルドン・ノイジー外野手(28)が「3番・左翼」で、ヨハン・ミエセス外野手(27)も「6番・右翼」で2試合ぶりにスタメン復帰した。先発投手は甲子園11連勝中の伊藤将。1971年の村山実に並ぶ12連勝を目指して燕を斬る。

◆阪神・木浪聖也内野手(28)が0-0の二回、1死三塁で右翼へ先制の適時三塁打を放った。この回1死から坂本が中堅を襲う大飛球を放ち、中堅手が捕球できずに三塁打。好機で木浪がヤクルトの先発・サイスニードの2球目チェンジアップを捉えた。打球はぐんぐん伸びて右翼フェンスに直撃。三塁まで進んだ木浪はベンチに喜びの合図を送った。2試合続けて無得点で敗れていた阪神は、これで23イニングぶりの得点。甲子園12連勝を目指す先発の伊藤将司投手(27)を幸先よく援護した。

◆お笑いコンビ「マテンロウ」のアントニーが試合開始前のファーストピッチセレモニーに参加し、ノーバン投球を披露して観客を盛り上げた。「(今年から阪神に)ミエセスが来たので。弟を応援するような気持ちです。試合前にツーショットを撮って、インスタグラム交換しました。まさかの向こうが鍵垢(非公開アカウント)だった(笑) 認証してくれて、だから日本で唯一つながっているのは僕じゃないかな」と大柄な体格と笑顔が共通点の〝弟分〟とのエピソードを披露。打者として打席に立った大トニーは「夢でした。(アントニーの球は)あまりにも打ちごろだった」と笑わせた。この日は「オーダースーツ SADA DAY」を開催。同社は阪神のスーツサプライヤーを務めている。ファーストピッチセレモニーに参加した佐田社長は「今年こそ、うちのスーツを着て、盛大にリーグ優勝パーティーをやっていただけるんではないかと期待しています」と声を弾ませ、アントニーは「あんま選手がスーツで祝っているのをみたことない」とツッコんだ。

◆阪神先発の伊藤将司投手(27)が同点打を許した。1-0の四回、1死から山田にこの日初安打となる左前打、4番・村上にも左前へはじき返されて一、二塁とピンチを招く。サンタナは変化球で空振り三振に仕留めて2死としたが、内山に三塁線を破る適時打二塁打を許して同点とされた。なおも二、三塁とし、オスナは申告敬遠。長岡は中飛に打ち取って逆転のホームは踏ませなかった。

◆阪神のシェルドン・ノイジー外野手(28)が満塁の絶好機で快音を響かせることができなかった。1-1とされた直後の四回、2死からチャンスを作る。伊藤将と近本が四球を選ぶと、中野も中前打でつないで満塁に。ここで2試合ぶりにスタメン復帰したノイジーが打席に立ったが、一邪飛に倒れて無得点。スタンドからはため息が漏れた。5月の月間打率が・190(21打数4安打、試合前時点)と不振のN砲は前日10日に今季初めてベンチスタート。この日は2試合ぶりにスタメン復帰したが、チャンスで走者をかえすことができなかった。

◆阪神・伊藤将司投手(27)は7回6安打1失点の好投を見せたが、打線の援護に恵まれず、1971年の村山実に並ぶ甲子園12連勝の記録は次回に持ち越しとなった。ピンチを招いても粘った。四回に連打で2死一、二塁とされて内山の左翼線二塁打で同点とされたが、以降は踏ん張った。六回に1死から連打で一、二塁とされるも内山を遊ゴロ併殺に料理。七回も先頭のオスナに右前へはじき返されても続く長岡には犠打を成功させずに投飛に打ち取り、すぐに一塁送球。飛び出していた一走をアウトにして併殺とした。なんとか最少失点で試合を作ったが、二回以降の打線の援護はなし。同点の状態で降板となった。

◆阪神が1-1の八回、三塁走者が生還する遊ゴロで勝ち越しに成功した。この回先頭のミエセスが左前打で出塁。続く坂本は犠打で走者を進められず、1死一塁。ここでこの回先制打を放った木浪が三塁手のグラブを弾く二塁打で二、三塁と好機を拡大する。一打勝ち越しの場面で石井に代わって代打で出場した糸原健斗内野手(30)は、前進守備の正面を突く遊ゴロ。それでも三走に入っていた小幡が果敢にヘッドスライディングで本塁へ突っ込んで生還し、1点を勝ち越した。

◆阪神は終盤に勝ち越し、勝利。連敗を2で止めた。 二回1死三塁で木浪の適時三塁打で先制に成功。23イニングぶりに得点を挙げた。 三回以降は無得点が続いたが、八回に試合が動く。木浪の二塁打などで1死一、三塁とチャンスを作り、代打・糸原の遊ゴロの間に三走が生還して勝ち越しに成功した(記録は野選)。 先発の伊藤将は、四回に同点打を浴びたが、7回1失点にまとめて役割を果たした。 八回に登板した2番手の石井はピンチを招きながらも無失点に抑えて通算49試合目でプロ初白星を挙げた。

◆阪神が3連敗を回避。八回1死二、三塁で代打・糸原健斗内野手(30)の遊ゴロによる本塁への野選が決勝点となった。2試合連続完封負けを喫していた打線は二回、木浪聖也内野手(28)の適時三塁打がチーム23回ぶりの得点で、29イニングぶりの適時打。1970年から71年にかけて村山実が記録した甲子園12連勝を目指した伊藤将司投手(28)は7回1失点で五回から3イニング連続併殺の粘投も勝ち星付かず。八回に登板した石井大智投手(25)がプロ初勝利。九回は岩崎優投手(31)が締めて2セーブ目。中野拓夢内野手(26)は一回の一塁悪送球で開幕31試合目にして初失策。12球団唯一の「3連敗ナシ」を死守した岡田彰布監督(65)の主な一問一答は以下の通り(成績=17勝13敗1分、観衆=4万978人)。ーー糸原のような代打は貴重な存在「そうやなあ、渡辺とかなあ、いろいろ、今日はアレやったけど、伊藤もな、そういうのあったけど、何とかなりそうやったもんな(笑)。前にボール飛ばしたらな」ーー小幡はナイス走塁(八回1死二、三塁からの糸原の遊ゴロでヘッドスライディングで生還)「だから(ゴロが)正面じゃなかったからな、ショート一番投げにくいところに飛んだからな、それも良かったんやろな」ーー石井は味方のエラーもあった(八回2死走者なしからの山田の右前打をミエセスがファンブル。その後、村上四球でサンタナを一邪飛)「そうやなあ、村上歩かせようと思ってたけどね。それで安藤行かせたんやけど、まあ去年3連発打たれた一人らしいから、勝負させたんやろな、おーん」ーー3連敗しなかった「まあ、3連敗しないって言うたら、いつも1勝2敗になるやんか(笑い)。長いシーズンで5連敗、6連敗はするよ。はっきり言って。まあ、2、3回しても全然平気やからな。長いシーズンから考えるとな。でも、しない方がエエけどな。だから、早く止めた方がな。今日の勝ち負けで明日なんか気持ち的に全然違うし、ましてこういうゲームをしのいだのは、すごく大きいよな」ーー連敗を止めるのは投手陣の頑張り「そら頑張りやん、2点やもん」ーー下位打線での先制も大きい「大きい。もう1点欲しかったよな、やっぱりなあ。あそこは」ーー木浪が打っている「そら数字見たら打ってるやん。小学生でも分かる」ーー何がいい「いや、調子エエからちゃう。技術も良くなったんやろな。調子だけじゃ、そんな長いこと続けへんと思うよ。打ち方とか、タイミングの取り方とか、いろんな面でよおなったから、あないして、ずっと継続して、いい結果残してるんちゃう?」

◆近鉄、西武で主砲として465本塁打&2452安打をマークし、西武コーチ時代には清原和博らを育てたサンケイスポーツ専属評論家・土井正博氏(79)は左飛、中飛、2つの一ゴロで4打数無安打に終わった阪神・佐藤輝明内野手(24)に言及。「自分の形」を習得していないと断言した。脇役が活躍して、代走起用が的中し、内野ゴロで決勝点をもぎとった価値ある1勝だ。近本が3四球、中野が2安打しながら生還していない。走者を返す役割のクリーンアップが機能していない証拠だ。特に気になったのは佐藤輝。長く野球界に携わって、強打者、好打者を見てきたが、こちらが分からなくなりそうな珍しい選手だ。素質は文句なしに素晴らしいが、好不調の波が激しすぎる。結局「自分の形」がまだ身に付いていないのだろう。技術的に言えば、以前にも指摘したが、内角の真っすぐに差し込まれ、外角の変化球に泳いでしまう。普通は差し込まれても変化球には対応できたり、変化球に泳いでも真っすぐは打ち返せるもの。好打者ならどちらかに絞れるはずなのだが、両方がダメになってしまっている。二重苦に陥って、絶不調時に逆戻りしている。2日連続の雨天中止を境におかしくなった。練習内容をみていないので言及しにくい部分ではあるが、調子を維持する練習ができていないのではないか。状態がいい時は打ち込む必要はない。さらに打てるようにとガンガンやるのは逆効果。「自分の形」が分かっていれば、このさじ加減も分かってくるのだが...。幸いにして岡田監督の采配も的確で、貯金を持った戦いができている。ただし現状は1、2番や7、8番の頑張りのおかげ。特に坂本、木浪の活躍は目を見張る。脇役だけで長いシーズンは乗り切れない。中軸の奮起が待たれる。チームが好調なうちにクリーンアップの3人が調子を上げること。優勝争いする絶対条件だ。

◆一歩目を踏み出した。ヤクルトのドラフト3位・沢井廉外野手(22)=中京大=が七回に代打でプロ初出場を果たした。初球でいきなりフルスイングするなど持ち味を見せたが、結果は一ゴロに終わった。「呼ばれたからにはやってきたことを出そうと思って打席に立ったのですが、それができなかった。悔しい」試合後の表情に笑顔はなかった。今季イースタン・リーグでは26試合に出場し、打率・284、4本塁打、16打点。プロの投手に対応するべく、打席での意識は「前でさばくということをやってきた。ただ今日は遅れてしまった」と唇をかんだ。身長180センチ、98キロと恵まれた肉体を持つ左の長距離砲。バーベルを持ち上げて下半身や広背筋を鍛えるデッドリフトは230キロを持ち上げる。今後に向けて「数少ないチャンスをものにできるか。冷静に2軍ででた反省を生かしてやっていきたい」と闘志を燃やした。

◆節目の試合で悔しさを味わった。ヤクルト・清水昇投手(26)が1―1の八回に4番手で登板したが、1死二、三塁から糸原の遊ゴロ野選で決勝点を献上。自身の通算200試合目の登板で、今季初黒星を喫した。「こういう失敗を2回目しないように頑張っていきたい。切り替えて、次踏ん張っていきたいと思います」先頭のミエセスに左前打とされたが、続く坂本の投前のバントを二塁に送球しアウトに。だが、木浪の三塁への打球が村上のグラブをはじき、結果的に二塁打となりピンチが広がった。最後は、遊撃手・長岡が懸命に本塁へ送球したがわずかにずれて失点。不運な打球もあったが、終盤で勝ち越された。セ・リーグ新記録となる開幕から14試合連続でホールドを記録していたが、ストップ。開幕からの連続試合ホールド記録は2015年にバリオス(ソフトバンク)が打ち立てた17試合が最長だったが、あと3試合届かなかった。開幕に限らない場合のプロ野球記録も、05年の藤川球児(阪神)による17試合が最長となっている。「昨日、一昨日と完封、完封で来ていて、いい流れだったんですけど、そこで、流れに乗ってつなぐことができなかったので、そこは反省して次の登板に生かしていきたいなと思います」と清水。これまで抜群の安定感を誇り、勝利の方程式を支えてきただけに責められない。この試合を糧に、前を向く。

◆体調不良のため1軍に帯同していないヤクルト・伊藤智仁投手コーチ(52)が、14日の中日戦(神宮)からチームに合流する見込みとなった。高津臣吾監督(54)が「ちょっと用心して、日曜日から帰ってくることにしました」と明かした。伊藤コーチは9日の阪神戦(甲子園)からベンチを外れており、代わりに小野寺2軍投手コーチがベンチ入りし、ブルペンを担当。また、石井投手コーチも体調不良のためベンチから外れ、この日は嶋バッテリーコーチがタイムを取った際にマウンドに向かった。

◆終盤までもつれる展開だったが、ヤクルトは1―1の八回に勝ち越されて惜敗。勝てば勝率5割復帰だったが再び借金2となった。先発したサイスニード投手(30)は5回6安打1失点と粘投だったが、勝ち負けはつかず。高津臣吾監督(54)の主なコメントは以下の通り。――サイスニード「ちょっとボール球が多くて、球数が進んでしまった。五回まで行ったんですけど、もう1回もう2回投げてくれると後ろのリリーフが助かる。でも、ピンチを作りながらもよく粘れた」――阪神・伊藤将に対して四回は内山が適時二塁打で一時同点となった「(内山は)思い切りはよく打ったんですけど、なかなか(伊藤将を)絞りきれなかった。打つのが難しい球を投げてくるなという印象が強いです」――清水は不運なあたりだった「反省するところはいくつかありますけど、ギリギリのところの勝負をしているので。良い方に出たり、吉に出たり凶に出たりというところもある。今日も一つ間違えたらゲッツーになるところが二、三塁になってしまった。配球やピッチングフォームといろいろなところを含めて、反省と次に切り替えが大事なのかなと思います」――好守でちょっとしたミス「こういうゲーム展開はあと少しというところが勝敗を分けてしまう。目に見えたミスもありましたけど、それ以外のもうちょっとできたんじゃないかなというところがいくつかありますね」――内山のスタメンマスクでまだ未勝利。リード面について「配球に関しては、その場でやっているピッチャーとキャッチャーが感じるモノがあると思うので、正直こうして欲しいと思うことがあっても、そちらを優先すべきだと思う。もちろんいろんなことは勉強してほしいですけど、こういう型にはめた配球などはしたくないので、やられて勉強して、抑えて勉強しての繰り返しだと思います」

◆狙いすまして振り抜いた。ヤクルト・内山壮真捕手(20)が0―1の四回2死一、二塁で左翼線を破る適時二塁打を放ち、ほっとした表情を見せた。「先制されてしまって早いイニングで追いつきたいという気持ちがあった。抜けてくれてよかった」勝負強さを発揮した。山田、村上の連続安打でチャンスをつくり、迎えた第2打席。阪神先発、伊藤将の内角カットボールにうまく反応した。3日の巨人戦(東京ドーム)以来、6試合ぶりにスタメンマスクをかぶった石川・星稜高から入団3年目の捕手が起用に応えた。昨季のオリックスとの日本シリーズ第2戦。0―3の九回無死一、二塁に代打で起死回生の同点弾を放つなど勝負強い打撃が持ち味。正捕手の中村がいるため今季から出場機会を増やそうと、少年野球時代を含めて経験のなかった外野の練習を始めた。3月31日の開幕戦(対広島)では「7番・右翼」でスタメン出場。不慣れなポジションに挑戦し、成長につなげている。打撃の調子が上がらず、外野での出場は4月12日のDeNA戦が最後で直近は捕手での出場がメイン。この日は中村が体調不良を訴え、新型コロナウイルス感染拡大防止特例の対象選手として出場選手登録を抹消されたこともあり、先発出場した。開幕前に掲げた目標は「スタメンで70試合に出場して打率3割、2桁本塁打」。アピールするべく、必死に食らいついた。しかし、チームは八回に登板した清水がつかまり、野選の際に1点を奪われる。これが決勝点となり、連勝は「2」でストップした。(森祥太郎)

◆粘り勝てなかった。ヤクルトは1―1の八回に勝ち越しを許し、連勝が2でストップ。勝てば勝率5割復帰だったが、再び借金2となった。高津臣吾監督(54)は通算200試合に到達するも今季初黒星を喫した清水昇投手(26)の雪辱に期待した。「ギリギリのところの勝負をしているので、吉に出たり凶に出たりというところもある。一つ間違えたらゲッツーになるところが二、三塁になってしまった。反省と切り替えが大事だと思う」開幕からのセ・リーグ記録を更新する14試合連続ホールドを記録し(プロ野球記録は17試合)、抜群の安定感を誇ってきた右腕だけに責められない。それよりも、七回無死一塁での長岡のバント失敗など細かいミスが響いた。「こういうゲーム展開は、あと少しのところが勝敗を分けてしまう」と高津監督。接戦を勝ち切り、浮上につなげたい。(赤尾裕希)

◆八回1死二、三塁で遊ゴロを放ち、決勝点をたたき出したのは阪神の代打・糸原だった。お立ち台では「めちゃくちゃ緊張していました。とにかくバットに当てることだけ考えて打席に入りました。小幡がセーフになってくれて、きょうは小幡さまさまです」と感謝。二塁のレギュラーは中野に譲る形となりベンチスタートがメインだが、しぶとい打撃を証明した。

◆阪神・ミエセスが甲子園初ヒットを放って、勝ち越し劇を演出した。1-1の八回先頭で清水の低めのフォークに食らいついて左前打を放ち、代走・島田とチェンジ。続く坂本はバント失敗も、打線はつながって1点をもぎとった。記念の一打は「素直にうれしい」と声を弾ませ、直前の右翼守備で記録した失策については「いいことも悪いことも試合のなかであるが前向きにやりたい。申し訳ない気持ち」と成長を誓った。

◆神采配や! 神走塁や! 阪神はヤクルトに2-1で勝利。今季初の3連敗を逃れた。岡田彰布監督(65)は同点の八回に代走を連発。快足を託された小幡竜平内野手(22)が執念のヘッドスライディングで決勝点をもぎった。12日からは2ゲーム差に迫る首位DeNAと甲子園で3連戦。勝利への気持ちはどこにも負けない!勝利への執念よ! 1-1の八回1死二、三塁。代打・糸原が遊ゴロを放った瞬間、三走・小幡は猛然とスタートした。捕手のタッチをかいくぐってヘッドスライディング! そのまま1回転! セーフの判定に、岡田監督は、してやったりの表情をみせた。「昨日、一昨日と、0点(零封負け)だったんで。まあ、そういう意味では、きょうの勝ちは大きいと思いますね」負ければ今季初の3連敗だった。八回、先頭のミエセスが左前打。指揮官はすかさず代走・島田を告げた。「一番は植田なんですけどね。九回にもう1回あると思ったんでね」。目先だけにとらわれず、先の先まで読んで植田を〝温存〟。それでも積極的な采配を繰り出せるのは、さすがの勝負師だ。坂本が犠打を失敗(二塁封殺)すれば今度は代走・小幡を投入。「坂本は足が速くない。ずっと抑えていた捕手は普通は代えないけど。まあ勝負でね」木浪の三遊間への痛烈なゴロを村上が弾いて白球が左翼前に転がる間に二、三塁。糸原の遊ゴロ野選で勝ち越した。小幡は「あそこは、もう頭でいくしかないんで。キャンプの成果も出て、ホームベースを触る位置もすごくよかった」と息を弾ませた。岡田監督は再びタテジマのユニホームを着た今季の宜野座キャンプでサインプレーなど連係面などを徹底した。報道陣をシャットアウトして1点を取る野球をたたき込んだ。それが、ここ一番で生きた。レギュラー争いは横一線ではなく、濃淡を明確にした。遊撃の筆頭だったのが小幡。ところが、それに固執せず、開幕7試合目には遊撃を木浪に切り替えた。采配の基準を明確にし、競争の火を消すのではなく、あおる。それが小幡のこの日の神ヘッスラに表れた。

◆絶好調の木浪が、細部に宿る〝神〟を自力で引き寄せた。2度捉えられなかった低めを狙い打ち、白球は三塁手・村上のグラブを弾いて、遊撃手の後方へ-。ミラクルを呼び込む一打で勝利をもたらした。「もう『抜けてくれ』でしたね。チャンスを広げられたのでよかった」勝負を決める八回の立役者になった。1死一塁で4番手・清水との勝負。フォークを2球空振りした後、打席の立ち位置を1歩前に動かした。「2球空振りしていますし、『たぶん低めが来るだろう』で、1歩前に行きました」。想定通りに外角低めのフォークを仕留めた。熱気が渦巻く甲子園で冷静に策を練り、二、三塁と好機を広げて勝ち越しにつなげた。〝0の呪縛〟を解いたのも背番号0のバットだった。二回1死三塁で真ん中に入ってきた変化球を見逃さず、右越えの先制三塁打。あと少しでフェンスオーバーだった。「なんとしても先制点を取りたいという気持ちでした」チーム23イニングぶりの得点を生む適時打は、2020年9月13日以来、970日ぶりの三塁打になった。5月はここまで打率・500(24打数12安打)と〝恐怖の8番〟ぶりを存分に発揮。規定打席到達にもあと4打席に迫る。下位でチャンスを作り、好機ではきっちり打点も稼ぐ獅子奮迅の働きで、連敗を止める白星を手繰り寄せた。「(三塁打が)3年ぶり? まあ、足遅いんで。(もう少しでスタンドインに)みんなに『ウエート、ウエート』って言われました」チームの全2得点に貢献し、言葉を弾ませた。勢いに乗った木浪は手が付けられない。(邨田直人)

◆ウイニングボールを握りながら、カメラのフラッシュを浴びると感情がこみ上げた。石井は岡田監督の手のぬくもりを肩で感じながら、喜びをかみしめる。プロ3年目、通算49試合でようやくつかんだプロ初勝利。うれしさとともに湧いてきたのは感謝の思いだった。「去年のオフから多くの人に関わってもらって、結果につながるような助けをいただいて。そういう人たちに感謝したいです」最後まで攻めの姿勢を貫いた右腕に野球の神様もほほ笑んだ。同点の八回に登板すると、2死から山田に右前へはじき返され、失策も絡んで二塁に進まれた。ここで打席には4番・村上。昨季、5打席連続本塁打につながる一発を許している相手にもひるまずに挑んだ。捕手の坂本からは「勝負にいくからには全力でこい」と言われ、奮い立った。攻めた結果、四球で歩かせたが、サンタナを直球で一邪飛に料理して乗り切った。秋田高専、四国IL高知を経て2021年ドラフト8位で阪神入団。高専卒の選手が勝利するのはNPB史上初の快挙だ。記念球は感謝を込めて昨年1月に結婚した愛妻にプレゼントする。「料理だったり、私生活の面で支えてもらっている部分が大きいので本当に感謝している」

◆今季は多くの球団が、試合終盤の戦いに苦心している。抑えや、抑えにつなぐ中継ぎが安定感を欠いているからだ。まだ失敗がない守護神でも、走者を出して何とか抑えたという試合が多い。抑えというのは大変なポジションだ。球威はもちろん経験も大事で、Aが駄目ならBでいこう、とはならない。何年も続けて安定した成績を残せる投手はまれで、3、4年目は〝肩や肘を回復させる年〟。今季はたまたま、そういう選手が重なったのかもしれない。私がこれまで見てきた抑えのナンバーワンは、日米通算381セーブの佐々木主浩(大洋、横浜-マリナーズ-横浜)。実際に対戦して、コントロールの良さが印象に残っている。特に外角低めの真っすぐは、手が出ない。ポンポンと追い込まれて勝負球のフォークボールがくると、まず打てなかった。高津臣吾(現ヤクルト監督)はシンカーが素晴らしかったし、真っすぐだけで抑えていた藤川球児(阪神、カブスなど)もすごい。昔と今では野球の違いがある。私の現役時代は抑えが七回に登板し、3イニングを投げることが珍しくなかった。ゲーム終盤に3点を追う展開だと、ベンチが「きょうは厳しいな」というムードになったものだ。ウエートトレーニング全盛の今は、打順に関係なくホームランを打てる選手がいて、3点差くらいならなんとかなる。DH制があるパ・リーグはなおさらだ。投手の球速は上がっているのだが、野手はそれを打ち返す練習をしているし、バットの芯で捉えると速い球ほど飛んでいく。圧倒的な力のある投手でなければ簡単に抑えることはできないし、そこまでの投手は見当たらない。昨季、26年ぶりの日本一に輝いたオリックスのストロングポイントは、球に力のある投手を何人もそろえたブルペン陣だった。最終戦まで優勝を争った2位・ソフトバンクとは、最後の1カ月でブルペン陣の差が出た。今月30日からはセ・パ交流戦。ここで大きく負け越すと、取り返すのが難しくなる。交流戦までにブルペン陣を立て直すことができるかが、ペナントの行方を左右するのではないだろうか。(サンケイスポーツ専属評論家)

◆伊藤将の甲子園連勝記録は、勝ち投手でもなければ負け投手でもない、という結末で継続されることに。どんな状況でも試合を作る安定感は、群を抜いている。1週間少し前のこと。中日担当記者が阪神戦を前にして、甲子園の記者席で話していた。「この3連戦の阪神先発は青柳、西勇、伊藤将。3戦目は勝てないから、1、2戦に勝たないと...」ちょっと前なら聞き間違いでないかと思ってしまう内容だ。青柳、西勇といえば、タテジマが誇るダブルエース...のはずだった。が、今や両輪の信頼度は急降下。代わりに伊藤将は相手担当記者が戦う前から戦意を失う男になっているらしい。甲子園で勝ち続ける投手-。阪神ファンにとって、こんな頼もしい存在はない。予告先発のご時世だから、その投手が先発する日に甲子園に行けば、試合後に六甲おろしを大合唱できる確率が限りなく高くなる。令和のトラ番記者は実に優秀だから、背番号27の甲子園連勝記録を書き続けてきた。あの「血が騒ぐ」「ザトペック」村山実さんに並ぼうかという活躍。プロ3年目ですごい存在になっている。朝の情報番組にサンケイスポーツ専属評論家・藪恵壹氏がゲスト出演。伊藤将の甲子園連勝記録を伝えるスポーツコーナーで「藪さんも甲子園で9連勝しているんですね!」と紹介されていた。藪氏は「すでに追い抜かれているんですね。知りませんでした」と苦笑い。2002年に4連勝。03年に5連勝で、しっかりと本拠地9連勝をマークしていた。「していた」という表現。当時のトラ番も気づいていたのだろうが、今ほど大騒ぎされていたっけ?

◆阪神タイガースは3連敗はせーへんでェ!! 恐るべきは岡田彰布監督の野球観なのだ!! 八回先頭のミエセスがヒットで出塁、しかし次打者坂本のバントは二塁封殺されたのだ。次の瞬間、坂本に代えて一塁に代走・小幡を告げていた...。ちょ、ちょっと待ってよ、岡田さ~ん。まだ八回、延長は十二回まであんのよ! 坂本に代走を送るってことはキャッチャー交代...。現在、阪神投手陣をリードさせたら右に出る者はいないでしょう? 本日だって八回までマスクをかぶってわずか1失点の好リードしているじゃないの...。それなのに坂本交代ってブルブルブル...と不安に震えていたら、木浪がヒットで続き、代打・糸原のショートゴロで俊足小幡が内山のミットをかいくぐり、決勝点となる虎の子の1点をもぎとったのだ。まるで藤井聡太六冠を思わせる駒の使い方。勝負師の姿にうなった夜であった。

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
DeNA
19110 0.633
(↓0.022)
-
(-)
113118
(+1)
104
(+4)
29
(+1)
7
(-)
0.259
(↓0.003)
3.220
(↓0.03)
2
(-)
阪神
17131 0.567
(↑0.015)
2
(↑1)
112105
(+2)
86
(+1)
15
(-)
16
(+1)
0.239
(-)
2.580
(↑0.05)
3
(-)
広島
16150 0.516
(↑0.016)
3.5
(↑1)
11298
(+3)
89
(+2)
22
(-)
10
(+1)
0.250
(↑0.001)
2.630
(↑0.04)
4
(-)
ヤクルト
15171 0.469
(↓0.015)
5
(-)
110108
(+1)
122
(+2)
28
(-)
25
(+1)
0.224
(↓0.001)
3.470
(↑0.04)
5
(-)
巨人
15180 0.455
(↑0.017)
5.5
(↑1)
110122
(+4)
137
(+1)
36
(-)
6
(-)
0.250
(↑0.003)
4.060
(↑0.1)
6
(-)
中日
12200 0.375
(↓0.012)
8
(-)
11182
(+2)
95
(+3)
6
(-)
7
(-)
0.243
(-)
2.600
(↑0.01)