西武(★2対3☆)日本ハム =リーグ戦7回戦(2022.05.07)・ベルーナドーム=
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日本ハム
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西武
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勝利投手:上沢 直之(1勝4敗0S)
(セーブ:北山 亘基(3勝1敗2S))
敗戦投手:平井 克典(2勝3敗0S)

本塁打
【日本ハム】宇佐見 真吾(2号・5回表ソロ)
【西武】中村 剛也(2号・4回裏ソロ)

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◆日本ハムが連敗を4で止めた。日本ハムは2点を追う5回表、宇佐見のソロで1点差に迫る。続く6回には、野村の適時打などで2点を挙げ、逆転に成功した。投げては、先発・上沢が7回2失点の好投で今季初勝利。敗れた西武は、先発・内海が試合をつくるも、守備のミスが絡んで痛い敗戦を喫した。

◆西武内海哲也投手兼任コーチ(40)が7日日本ハム戦(ベルーナドーム)で今季初登板、初先発する。6日はベルーナドームで調整。ダッシュなどで体を動かした後には軽くブルペンに入り、フォームのバランスを最終確認した。実績十分な左腕も朝、起床した時から「何かちょっとやっぱ違うな」と胸の鼓動は高まっていた。翌日のマウンドに向けて「緊張しています。がちがちとかじゃなくて、いい緊張というか、久しぶりの感じ」と語った。ファームでは3試合に登板し、18イニングを無失点と好投を続けていた。昨年6月10日以来の1軍マウンドになる。「背伸びしても一緒。ファームで投げているようにしかできないと思いますし、それ以上背伸びしようとしたら逆に空回りすると思う。変わらず1球1球投げ込めればいいかな」。相手はBIGBOSSこと新庄監督率いる日本ハム。「楽しそうに野球やっているので、負けじと僕も楽しんで。チャンスをいただいたので、思いっきり投げたい」。等身大の姿で、かつ楽しむ心を忘れずに投げ込む。現在、通算投球回は1995。5回を投げきれば、史上92人目の2000投球回にも到達する。「そこは考えずに与えられた1イニング1イニング、1人1人をしっかり投げていきたい。その結果、そうなればうれしい」。記録は考えず、目の前に集中していく。

◆日本ハムのエース上沢直之投手(28)が、今季初勝利へ7日西武戦(ベルーナドーム)に挑む。開幕から6試合で0勝4敗。「早く結果が欲しいという感じ」と熱望する。前回登板後は出来たこと、出来なかったことを見つめ直す期間に充てた。ストレスがたまっていたことも自覚。「何とかここを乗り越えるしかないので、しっかり次の試合は頑張りたい」と切り替えて臨む。

◆4月29日に40歳を迎えた西武内海哲也投手(40)が今季初登板。西武で40代投手の勝利は97年5月30日ダイエー戦で救援勝利を挙げた鹿取が最後。先発勝利を記録すれば85年10月10日阪急戦の高橋直以来、37年ぶりとなる。

◆西武中村剛也内野手(38)が今季2号の記念弾を放った。プロ入り21年目のベテランは、これで通算444本塁打。歴代14位タイとなり、国民的スーパースターの長嶋茂雄氏に並んだ。場面は4回。初球の145キロ直球が真ん中高めに吸い込まれてきた。絶好球をしっかり芯で捉えた。快音の直後に、大きな歓声がわいた。滞空時間の長い129メートル弾。白球は中堅左のスタンドに吸い込まれた。「打ててよかったです。(長嶋氏に)並ぶことができて、すごくうれしく思います」とコメントした。今季は「もう1度しっかりホームランを打てるようにしっかりやっていきたい」と繰り返していた。昨季は打率2割8分4厘も18本塁打。少し物足りなかった。本塁打への意識を強め、原点回帰した。ただプロ21年目のスタートは、かつてないほど不調で始まった。現役最多のアーチを描いた生粋のホームランアーチストは苦しんいた。第1号は出場27試合目となる5月5日。本塁打を放ったシーズンで最も遅かった。オープン戦の好調がうそのようにシーズンはバットは湿った。打率も1割台で「しんどかった」のが本音だった。その中で4月の下旬から調子を上げてきた。特別なことはしない。「普通の打撃ができるように」と思いながら、焦る気持ちを抑え、日々の練習を積み重ねてきた。ここは通過点に過ぎない。「がっつり」意識する数字は通算500本。偉大な記録に並んだが、史上9人目の大台到達となる残り56本に目を向ける。まだまだ打ち続ける。

◆日本ハム新庄剛志監督(50)がピンチの場面で"勘ピューター采配"をさく裂させた。1点を先制された直後の3回2死一、二塁、打者山川の場面で、中堅の万波と左翼のアルカンタラの守備位置をスイッチさせた。前夜も左翼席へ12号2ランを打たれていた山川の打球傾向も踏まえて、本職が内野手のアルカンタラを中堅に回し、強肩で俊足の万波を左翼へ回したとみられる。結局、先発上沢が山川を空振り三振に抑えてピンチを脱した。打球は飛ばなかったが、臨機応変に最善を尽くしたBIGBOSSの"ワンポイント外野布陣"。4回からは中堅万波、左翼アルカンタラへ戻した。

◆西武内海哲也投手兼任コーチ(40)が史上92人目の2000投球回に到達した。今季初登板、初先発で5回を3安打1失点。マウンドを譲った後の6回にチームは逆転され、40代での白星はお預けになったが、念願の節目にたどり着いた。2点リードの4回2死。記録まであと1人の場面で、宇佐見に右翼へソロを浴びた。続く石井の三塁ゴロを中村がエラー。嫌な流れに豊田投手コーチらがマウンドへ集まった。経験がある。そこで崩れない。続く谷内を三ゴロに仕留めた。ベンチに戻ろうとすると、記念のボードを渡された。ベルーナドームは祝福の万雷の拍手に包まれ、何度も頭を下げた。これまでプロ19年で通算投球回は1995。記録は意識しないはずだった。ただ、登板後は思わず本音があふれ出た。「長く野球を続けてきたからこその通算2000投球回。何が何でも達成したい、と実は思っていました。それを今シーズン初登板で達成することができてよかったです」。通算135勝と実績十分な左腕も、約11ヶ月ぶりの1軍マウンドは特別だった。ファームでは3試合に登板し、18イニングを無失点と好投を続けていた。しかし、前日6日に起床した時は「何かちょっとやっぱ違うな」と胸の高鳴りを感じた。「久しぶりの感じ」。いい緊張感が体を包んでいた。美しいワインドアップから初回は3者凡退。ストライク1つに大きな拍手が湧いた。アウトを取ると、その音はより一段と大きくドームにこだました。18歳下のドラフト3位のルーキー古賀とバッテリーを組み、日本ハム打線を相手に丁寧に1人、1人に集中して投げた。ストレートは130キロ台後半が中心。それでも低めに集め続けた。ベースの幅も変化球の緩急も存分に使い、バットの芯を外した。「ファームでやってきたことをそのまま1軍でも出すことができました。どの球種も良かったですし、全体的にバランス良く投げることができたと思います。試合前はものすごく緊張したのですが、古賀とはファームでも何試合かバッテリーを組んでいましたし、マウンドに上がってからは落ち着いて投げることができました」。円熟の63球。念願の節目にたどり着いた。▼通算2000投球回=内海(西武) 7日の日本ハム7回戦(ベルーナドーム)の5回、谷内を三ゴロに仕留めて達成。プロ野球92人目。初投球回は巨人時代の04年5月25日の広島10回戦(宮崎)。40歳0カ月での達成は史上4位の年長記録。

◆BIGBOSSが同郷の後輩に優しく笑顔でマルポーズを送った。5回裏の先頭打者だった西武古賀悠斗捕手(22)の準備が遅れ、試合の進行が一時的にストップ。急いで打撃用の革手袋などを装着して出てきた古賀は球審や一塁側の日本ハムベンチへ向かって「すいません」と頭を下げた。新庄剛志監督(50)はその姿を見て、気にするなと言わんばかりに両手を頭上に挙げてマル印をつくった。自身と同じ福岡出身の若手捕手の焦りを察知してか、懐深く、BIGスマイルで遅延したことも不問にした。

◆日本ハムの両打ち助っ人、アリスメンディ・アルカンタラ内野手(30)が左腕の西武内海哲也投手(40)に対して、まさに両打ちで攻略に挑んだ。2回の第1打席はセオリー通り、サウスポーに対して投球動作が見やすくなる右打席に立った。ただ、初球のチェンジアップにタイミングが合わず、バットの先に当たったボテボテの一ゴロに倒れた。すると、5回の第2打席はセオリーに反して左打席に立った。カウント2-2まで持ち込んだが、最後はカットボールを捉えきれずに二飛。ベテラン左腕に、左右の打席とも手玉に取られてしまった。

◆日本ハム宇佐見真吾捕手(28)が恩返し弾を放った。2点を追う5回、かつて巨人でチームメートだった西武内海哲也投手(40)から2号ソロを放った。「(巨人時代に)内海さんとは、自分がプロ2年目の春季キャンプからオープン戦まで、ずっとバッテリーを組ませていただきました。何も分からなかった自分に『ピッチングとは』というところを教えていただきました。大先輩からホームランを打つことができてよかったです」と、当時を振り返りながら感慨深い1発を喜んだ。

◆西武中村剛也内野手(38)が今季2号の記念弾を放った。プロ入り21年目のベテランは、これで通算444本塁打。歴代14位タイとなり、国民的スーパースターの長嶋茂雄氏に並んだ。大阪桐蔭に入学した直後、西武中村剛也は「盗塁の鬼」だったらしい。貴重な証言の主は高校時代の同期、元阪神岩田稔氏だ。「一番最初に何が驚いたかというと、その足の速さ。高校時代から『ドカベン』みたいな体形でしたが、隙あらば盗塁を決めていました。投手の癖を盗むのもうまくて、確か同期の中で2番目に盗塁数が多かったんじゃないかな」入学当初のポジションは捕手。岩田氏が同校の練習で初めてバッテリーを組んだ相手が、他ならぬ中村だった。もちろん当時から非凡な打撃を披露していたが、最初は現在のスタイルとはやや違っていたそうだ。「どちらかというと、今みたいに高々と打ち上げるというよりは、痛烈なライナーで左中間、右中間を抜いていくイメージ。そこからある日突然、ホームランアーチストに変貌を遂げていったんです」岩田氏には脳裏に焼きついて離れない"事件"がある。「あれは確か高校2年の春だったと思うんですけど...」。試合前のシートノック中、中村が右手小指を骨折。それでも出場を志願して譲らず、仕方なく激痛が走る右手小指の使い方に変化を加えたのだという。「ゴルフの握り方でいうオーバーラッピングのように、左拳にそっと添えるようにして打ってみたら、打球の質が一気に変わったんです。打球がめちゃくちゃ上がるようになって、外野フライがそのままフェンスオーバー。今の剛也のスタイルが徐々にでき上がっていったんです」最終的には高校通算83本塁打。岩田氏は「あの骨折がなかったら、どうなっていたんでしょうね」と懐かしそうに振り返る。プロでは19年6月22日の甲子園で2打席連発を献上。「何を投げても打たれてしまうイメージしかなくて、もうお手上げでした」。リスペクトしてやまない同期は7日、ついに長嶋茂雄氏に並ぶ通算444本塁打に到達した。「阪神で16年間、数え切れないぐらい多くの強打者と対戦させてもらってきたけど、僕の中での最強打者は中村剛也しかいない。剛也にはまだまだ4番に君臨してもらいたい。できることなら50歳近くまで現役を続けてほしい」かつての仲間はもちろん、アーチスト中村剛也のさらなる本塁打量産を信じてやまないようだ。【遊軍=佐井陽介】

◆日本ハム新庄剛志監督(50)は試合前に、臨時コーチ集団「新庄殿の8人」のメンバーである元陸上10種競技日本王者で日本フェンシング協会の会長を務める武井壮氏(49)、元阪神の赤星憲広氏(46)と再会した。2人はテレビ中継にゲスト出演するため、ベルーナドームに来場。日本ハムの試合前練習も、じっくりと視察していた。BIGBOSSは春季キャンプで主に走塁面でコーチングしてくれた2人に「いろいろ積極的に走塁もできているし、ケガなくこれているから、2人のおかげっていうことを言った」と、感謝したという。武井氏からは、ある指摘も受けていた。「ファイターズの選手が忘れているから。"歩き方"を。もう1度、ビッグボスの方から選手の方に言って、歩き方を思い出させて」と言われたという。春季キャンプでは武井氏から選手へ、日常生活から大きな歩幅で歩くことでトレーニングにつなげることを指南していた。新庄監督がすぐに選手に伝えると、行動に移したのは万波。「万波君はずーっと」と、すぐに大股で歩くことを再開したという。ただ、試合中も「ネクストバッターズサークルまで(大きな歩幅で歩いていた)。今じゃないやろ、私生活で」と、思わずツッコミを入れたBIGBOSSだった。

◆日本ハム上沢直之投手(28)が7度目の先発で、ついに今季初勝利を挙げた。3回に暴投で先制点を献上し、4回には中村に2号ソロを被弾。「前半は自分が思ったように投げることが全くできませんでしたが、キャッチャーの宇佐見が僕のことをうまくリードしてくれたおかげで、なんとか乗り切ることができたと思います」と、5回以降は気合満点の投球で追加点は阻止。打線も逆転してくれた。7回4安打2失点で待望の1勝目に「先制点を取られましたが、逆転をしてくれた野手陣にも感謝です」と、コメントした。<エース上沢今季の苦闘アラカルト◆本拠地開幕戦 3月29日の西武との本拠地開幕戦(札幌ドーム)に満を持して今季初先発。2回に山川に被弾。8回にも再び山川に一発を浴びるなど、8回6安打4失点で初黒星。「先に点を取られたのが良くなかった」。◆中4日 中4日での先発となった4月10日楽天戦(札幌ドーム)は5回2安打無失点の好投。味方の援護がなく、0-0で降板し、勝ち負けはつかなかった。「ボールを思った通りに扱えなかった自分に、情けない気持ち」。◆佐々木朗と投げ合い 4月17日ロッテ戦(ZOZOマリン)は前回登板で完全試合を達成した佐々木朗との投げ合い。8回を無安打無得点に抑えた佐々木朗に引っ張られるように、上沢も7回4安打無失点。自身に勝ち負けはつかなかったが、チームは1-0の勝利。「僕も点を取られなければ、負けることはないと分かっていた」。◆3回KO 5度目の先発となった4月23日ソフトバンク戦(札幌ドーム)は立ち上がりから制球が定まらず、今季最短3回7安打7失点でノックアウト。3回KOは4年ぶり。「チームがいい流れで来ていたにもかかわらず、僕の投球でその流れを壊してしまった」。◆9連敗 4月30日ロッテ戦(ZOZOマリン)は山口に決勝2ランを含む3安打4打点と打ち込まれるなど、5回5失点で4敗目。これでロッテ戦は19年から9連敗となった。「3点の援護をもらっておきながら、逆転されるようなピッチングをしてしまい、情けなく思います」。

◆逆転勝利で連敗を4で止めたBIGBOSSだが、心残りが1つあった。新庄剛志監督(50)は試合後に「今日は上沢君と宇佐見君のホームランも大きかったね。全部、点はでかいんだけど、右方向に野村君も振り遅れて打ってくれて」と笑みを浮かべながら総括した後に、言葉を続けた。新庄監督 今日は向こうもプロ野球初の打席で捕手の子がヒットを打ってくれて。何ならショートの子も打ってくれと思いながら見てて...。この日、西武はルーキー2選手がスタメン出場。8番遊撃でドラフト6位の中山誠吾内野手(22)、9番捕手で同3位の古賀悠斗捕手(22)が名を連ねていた。古賀は3回に右前へプロ初安打を放ったが、3打数無安打でプロ初安打はお預けとなった中山の結果だけが、敵将ながら残念だった。野球人としての本能だ。新庄監督は古賀の初安打の際に「俺が『ボール、ボール』って」と、記念球の確保に動こうと思ったという。さらに、打球が右翼へ飛んだ瞬間は「『今川君、取るな』って、ちょっと思ってしまった」。プロ野球全体が盛り上がっていくことを期待するBIGBOSSらしい思考だが、最後は「なんか思ってしまうのよね...」と、ちょっぴり反省もしていた。▽西武古賀(ドラフト3位ルーキーは3回に右前へプロ初安打)「初安打にこだわっていたわけではないが、とにかく思いっ切りバットを振ろうと思った。落ちろと思いながら一塁まで走った。打球が落ちたと分かった瞬間うれしかった」

◆「このまま終わってしまうんじゃないかなと思った時期もありました。腐らず、諦めずにやってきてよかった」史上92人目となる2000投球回を達成した西武内海哲也投手兼任コーチ(40)は試合後、正直な胸中を明かした。葛藤もあった分、安堵(あんど)と達成感も大きかった。「何年も前から言われていて、なかなか達成できなかった。何が何でも達成したいと実は思っていました」。投げたのは20年が19イニング、21年が7イニング。大台に届きそうで届かない。そんな時を長く過ごした。上での出番がいつ来るのかも分からない。周りは若手ばかりの2軍。通算135勝の左腕も、このまま終わるのではないか-。そんな不安を拭えなかった。その中で自分を突き動かしてきた思いは? 答えはシンプルだった。「やっぱり野球が好きだなということ。この舞台は、いっぱい緊張もありますけど、経験すると、やみつきになるというか...。この舞台に帰ってきたいという気持ちになる。そこだけですね」4月29日に不惑、40歳を迎えた。最速140キロのストレートを低めに集め続けた。ベース幅も変化球の緩急も最大限に駆使し、打者の芯を外した。節目まであと1人。5回2死から巨人時代の同僚である宇佐見にソロを許した。その"恩返し弾"をくらって、その内心は「宇佐見の野郎」と笑うが、失点はこれだけ。円熟の63球だった。40歳白星は今後にお預けとなったとはいえ、「緊張したけど、よくやったなと思います」とうなずいた。冷静に現在地を見つめる。「ローテーションに入るというよりは、谷間で『頼むぞ内海』とマウンドに上がると思う。毎週毎週投げられるわけではない。一発回答が求められる。今日だめだったら、もうないんじゃないかという崖っぷちできた。それはこれからも続くと思う」美しいワインドアップの投げる姿は変わらない。ただ、役割は昔のようなエースではない。困った時に頼りになる。そんな仕事を遂行していく。「次に向かうステップとしていい状態で投げられた。1軍で投げることを糧にこれからまた頑張りたい」。新たに得られた手応えも、変わらぬ危機感も胸に刻みながら、次なる舞台の準備を進めていく。【上田悠太】

◆おかわり君がミスターに並んだ。西武中村剛也内野手(38)が通算444号本塁打を放った。国民的スーパースター長嶋茂雄氏(86=巨人終身名誉監督)の数字に到達した。FAの選手流出が多い西武において、中村は入団から一筋21年を貫く。理由を「特にないですよ。別に」と1度、いつものようにはぐらかしてから、笑って続ける。「ライオンズから出て行くという選択肢というのが、僕の中ではなかった。あと僕、人見知りなので。だから環境を変えて、野球をやれるほどコミュニケーション能力は高くないので」。もちろん球団の愛着もある。「人見知り」という言葉で残留のわけを語るのは、中村らしいが、いずれにしても環境を変えないことで野球に集中してきた。冬の自主トレも温暖な地で行うのが球界の主流だが、ここ数年は所沢の球団施設にその姿がある。「少し寒いですけど、立派なトレセンがあるので。(他の場所に)行くといろいろ準備することも多くなりますし」。何よりここが居心地がいい。【上田悠太】

◆日本ハム上沢直之投手(28)が、"七度目の正直"で今季初勝利を挙げた。7日、西武7回戦(ベルーナドーム)は4与四死球、2暴投と乱れながら7回4安打2失点にまとめ、10年目で最遅の先発7試合目での白星。前回登板後には北海道神宮へ参拝し、神にもすがる思いで勝利へのパワーを注入した。出遅れたエースが、自身の巻き返しとともにチームを上昇させる。苦悩の末に生まれた1勝は、上沢の涙腺を刺激した。「泣きそうです。マジで。ここ数年で一番うれしいです」。涙の代わりに、素直な思いをこぼした。エースとして勝てない苦しさから、精神面を保つのに必死だった。7回4安打2失点で、登板7試合目での初勝利。試合後のロッカールームは「キャリア初勝利くらい祝ってくれた」と価値ある1勝を物語っていた。負のループを抜け出すため、向かったのは北海道神宮。前回登板後、心配する妻の誘いで、娘も連れてお花見を兼ねて参拝した。「今までは、なかった。そのくらい(精神的に)やられていました。そこに、すがってでも...みたいな」。妻には開幕前に勝負パンツを用意してもらうなど、大きな支えを受けて戦ってきた。「多分、待っていたと思う」と、待望の勝利球をプレゼントにする。今季の目標の1つに「メンタルの波をつくらない」を設定。元々、感情の浮き沈みを表に出さないタイプだが、今年ばかりは違った。力になったのはファンの存在。SNSを通じて「絶対に、いつか報われる」、「信じて応援しています」など前向きな言葉に「マジで泣きそうになりました。早く喜ばせてあげたい。ファンの有り難さを実感した期間でした」と感謝した。覚悟が違った。この日は3回に暴投で先制を許し、4回に被弾。流れが傾きかけたが、味方打線の奮起で6回に逆転に成功した。「みんなの気持ちを感じるところもあった」とギアを入れ直した。7回2死、古賀から空振り三振を奪い、ほえた。「本当に命懸けて抑えにいきました」と闘志をむき出しに、リードを守り切った。試合後、新庄監督に両肩をもまれ「8回いけよ」と笑顔で声を掛けられた。「次はもっと長いイニング投げられるように頑張ります、と。もう1回、気持ちを引き締めてやっていきたい」。北海道神宮には、御礼と勝利の報告へ。心身で強さが増した上沢が、帰ってきた。【田中彩友美】▽武田投手コーチ(7度目の先発で今季初勝利の上沢に)「本当に本人は試行錯誤していました。ほぼ真っすぐしか投げないブルペンの練習もあった。困ったら原点に返ってシンプルにストレートの大事さも必要なんじゃないかという話はしていました。エースの定めというか、勝っても負けてもやっぱりチームを背負わなければいけない。この1勝で波に乗っていけると思う。まず一番は心が落ち着いて、ゆっくり寝られるんじゃないですか」

◆おかわり君がミスターに並んだ。西武中村剛也内野手(38)が通算444号本塁打を放った。国民的スーパースター長嶋茂雄氏(86=巨人終身名誉監督)の数字に到達した。1-0の4回。日本ハム上沢からバックスクリーン左に高い放物線での1発。4月まで打率1割4分1厘、本塁打0と極度の不振だったが、5日の今季1号から中1日での2号ソロ。まだまだ通過点。目標に掲げる500号へ向けて、1本ずつ積み重ねていく。444号-。ミスターがかけたアーチ数に並ぶ1発は、長い滞空時間でバックスクリーン左へ伸びていった。4回。中村は先頭打者で打席に入った。初球145キロ直球は、真ん中高めに吸い込まれてきた。「ちょっと詰まり気味やった」。ただ残した快音は、2万1577のファンに着弾点がスタンドだと知らせるに十分だった。大歓声と拍手。打球の行方を見つめ、ダイヤモンドを一周した。目標は通算500号だと言い続ける。その到達点へ向けた決意が強いからこそ、今、特別な感慨はない。「ミスタープロ野球と呼ばれている方のホームラン数に並べたのはすごくうれしい」の言葉は事実だが、特別な感情が起こらないのもまた事実だった。憧れの打者は「いないですね」。4295グラムで誕生。幼稚園で足のサイズは20センチを超え、げた箱に靴が入らなかった。ずっと変わらぬ、あんこ形の体。独自の個性を貫き通し、栄光と実績を積み重ねてきた。他人と比べて感慨に浸らないのは、まさに生きざまでもあった。ぶれない姿勢の一方、「そこは変わっていますね」と明確に自覚する点もある。プロ21年目。髪も少し白くなった。体の変化、感覚の誤差と向き合いながら、日々を積み重ねる。「今はホームランを意識しないとホームランが出ないなという感覚がある」。以前は無意識でも打球に角度がついた。その感覚で今、打席に入れば、昔のようにはいかない。だから打席では毎回、以前より鮮明に本塁打のイメージを描く。練習でも常にボールの下にバットをもぐらせる。その意識を強くし、体の変化に向き合ってきた。4月は打率1割4分1厘、0本塁打と苦しんだ。ただ5月は全5試合で安打を放ち、2発とギアが上がってきた。「もうちょっと打てるように頑張ります」。まだまだ通過点。記録に満足できるのは、あと56発を打った時になる。【上田悠太】<中村剛也とホームラン◆交流戦1号&キング 05年に始まった交流戦で、5月6日広島戦の2回に1発。交流戦での本塁打12球団一番乗りだった。通算では79発で、阿部(巨人)の60本を抑えてトップ◆1人でロッテ超え 11年は統一球導入で本塁打が出ない中、リーグ最多の48本塁打。2位松田(ソフトバンク)に23本差をつける独走で、ロッテのチーム本塁打46本よりも多かった◆史上最多の満塁弾22本 15年7月24日日本ハム戦で大谷(現エンゼルス)から満塁弾を打ち、通算最多の王(巨人)の15本に並ぶ。同年に記録を更新し、現在は22本◆バースデー弾 夫人の誕生日、9月10日には高確率でアーチを架ける。08年に結婚。同年をはじめ、09年、10年、11年と4年連続。さらに13年、16年、17年にも"祝砲"を打ち上げた。一方で自身の誕生日8月15日には、3本塁打しか記録していない<長嶋茂雄とホームラン◆ベース踏み忘れ 58年9月19日広島戦(後楽園)で1-1の5回に鵜狩から勝ち越しソロ。しかし一塁ベースを踏み忘れ、本塁打が取り消しに。この年は打率3割5厘、29本塁打、37盗塁で、「幻の1発」でトリプルスリーを逃した◆天覧試合でサヨナラ弾 59年6月25日阪神戦(後楽園)は昭和天皇が来場の天覧試合。4-4の9回に村山から左翼ポール際にサヨナラ弾。「フェアかファウルか」の論争が起きた◆開幕戦で最多本塁打 通算10本は門田(ダイエー)の9本を抑えて歴代最多。70~74年の5年連続本塁打も最長記録◆ONアベック弾は106度 王とのアベック本塁打は通算106度で、これは歴代最多。ちなみに、最初のONそろい踏みが59年の天覧試合だった

◆日本ハム宇佐見真吾捕手(28)が「恩返し弾」で逆転勝利を呼び込んだ。5回の2号ソロは「ピッチングというものを教えてもらった人」である西武内海からの1発だった。巨人でプロ2年目を迎えた5年前の春季キャンプ。那覇での練習試合で初めて大先輩とバッテリーを組んだ。「全然サインが合わなくて、点数を取られて...」。その5日後。ブルペン投球の捕手役に指名され、濃密な144球を受けた。宇佐見 バッターを想定しながら毎球サイン交換して。「今のは、ええなぁ」とか「これの方がピッチャーはいいかもね」とか。細かく教えてくれた。18年オフに西武へ移籍した内海を追いかけるように、宇佐見も19年途中に同一リーグの日本ハムへ移籍。この日が初対戦だった。「自分が投げたい球を、きっちり投げて打ち取っていた。『あぁ内海さんだなぁ』と。本当に偉大な方から打てたのは良かった」と、感慨深く振り返った。守備でも内海から教わった基本をベースにエース上沢らを好リードした。新庄監督も「今日は上沢君と宇佐見君のホームランも大きかったね」と笑顔。正捕手を目指す宇佐見が大先輩の前で示した成長が、チームの連敗を4で止める原動力となった。【木下大輔】

◆日本ハム4番野村佑希内野手(21)が意地の同点打を放った。1点を追う6回無死一、三塁で右前適時打。「ゲッツーで流れを切ってしまった後にホームランを打たれてしまっていたので、なんとか取り返すことができてよかったです」。4回は遊ゴロ併殺打に倒れ、直後に上沢が中村に2号ソロを被弾していた。流れを悪くした責任を感じていたジェームスだったが、名誉挽回の一打で連敗ストップに貢献した。

◆西武・中村剛也内野手(38)が四回に2号ソロを放った。通算444本目として長嶋茂雄氏(巨人)に並んだ。歴代14位タイ。1点リードの四回先頭での打席。上沢の初球の真っすぐを捉え、バックスクリーン左横に運んだ。「打ったのは真っすぐ。(長嶋氏に)並ぶことができて、すごくうれしく思います」とコメントをした。

◆日本ハム・宇佐見真吾捕手(28)が0-2の五回に今季初先発の西武・内海から右中間席に2号ソロ。「内海さんとは、自分が(巨人時代の)プロ2年目の春季キャンプからオープン戦までずっとバッテリーを組ませていただきました。何も分からなかった自分に〝ピッチングとは〟というところを教えていただきました。大先輩からホームランを打つことができて良かったです」と振り返った。

◆今季初登板の西武・内海哲也投手(40)が先発して5回を投げ、プロ野球史上92人目となる2000イニング登板を達成した。「どの球種も良かったですし、全体的にバランス良く投げることができた。長く野球を続けてきたからこその通算2000投球回で、何が何でも達成したいと思っていた。それを今シーズン初登板で達成することができて良かった」昨年の6月10日以来の1軍マウンド。立ち上がりの一回はわずか8球で三者凡退に仕留めると、その後も打たせて取る投球で四回まで無失点。五回2死から宇佐美に右越えソロを浴びたが、5回を1失点にまとめマウンドを降りた。

◆西武・中村剛也内野手(38)が四回に今季2号ソロ。21年目で通算444本塁打に達し、プロ野球歴代14位の長嶋茂雄氏(巨人)に並んだ。「誰もが知っているミスタープロ野球と言われている方なので、並べてうれしく思います」この回は先頭打者として日本ハム・上沢が投じた初球の真っすぐを捉えた。白球をバックスクリーン左へ運び「ちょっと詰まり気味でしたが、いいバッティングができた」と自賛。今季1号は27試合目となった5日と遅れたが、徐々に状態を上げてきた。この一発でリードを広げたものの、逆転を許して連勝は2でストップ。辻監督は「いいところで(中村の)本塁打が出たけどね。2点リードしたところで、うまく乗り越えられれば...」と肩を落とした。(石井孝尚)

◆日本ハムが競り勝ち、連敗を4でストップ。試合後の新庄剛志監督(50)の一問一答は以下の通り。――連敗ストップ「(六回無死一、二塁で)野村君がバントのミスを装い、今川君がちょっと飛び出してキャッチャーに投げさせてサード(三進)。狙い通り。すごい作戦やろ?(笑い)」(もちろん、二塁走者・今川のミス)――投手陣も踏ん張った「良かったね、上沢君。あのままもう一回投げさせたかったけど、ピッチングコーチが『堀君、北山君でいこう』と。やっぱり勝っている試合の時のボールの方が堀君はいい。力あるし、メンタル的な問題ってすごい大事なのかなと思いますね。そういうところで戦ってきた投手なので」――ナイスゲーム?「今日は向こうもプロ野球初の打席で捕手の子(西武・古賀)がヒットを打ってくれて、俺が『(記念の)ボール、ボール』って。ライト前に(ライナー性の打球を)打った瞬間、〝(右翼手の)今川君、捕るな!〟ってちょっと思ってしまった。なんか思ってしまうのよね」

◆西武のドラフト3位・古賀悠斗捕手(22)=中大=は先発マスクを被り、三回、ライナー性の打球で右前にはじき返し、プロ初安打を記録した。「打った瞬間、ライトに捕られるかどうか際どいと思ったが、落ちろと思いながら一塁まで走った」。試合は逆転負けしたが、ホッとしたような表情も隠せなかった。

◆西武のルーキー古賀がプロ初安打を放った。0―0の三回1死無走者で外角速球を捉えて右前へ運び「打った瞬間に右翼手に捕られるかどうかで際どく落ちろと思いながら走った。打球が落ちてうれしかった」とほほえんだ。中大からドラフト3位で入団した強肩が売りの捕手。プロ4打席目の快打に「何とか打ちたいと思っていた。思い切ってバットを振ろうと打席に入った」と振り返った。

◆日本ハムの宇佐見が攻守で連敗ストップに貢献した。捕手では制球の不安定だった上沢を巧みにリードして2失点にまとめ、バットでは0―2の五回2死で2号ソロ。内海の外角変化球を右翼席へ運び反撃につなげた。巨人時代の大先輩でもある内海からの一発に感慨もひとしお。「2年目のキャンプですごくお世話になった。ピッチングというものを教えてもらった人。本当に偉大な方なので、打てたのは良かった」と話した。

◆バッテリーで連敗を4で止めた。ゲームセットの瞬間、ビッグボスに肩をもまれた日本ハム・上沢直之投手(28)の目は心なしか潤んでいた。7回2失点。今季7試合目の登板で待望の初勝利を挙げ、「泣きそう、マジで。ここ数年で一番うれしい。ロッカールームでもみんなが〝プロ初勝利〟ぐらい祝ってくれて...。本当に迷惑を掛けていたんだな」と安堵(あんど)の息をついた。開幕投手を務めた昨季はキャリアハイの12勝を挙げた右腕は、4敗目を喫した前回登板後に夫人の勧めもあって、道内最大のパワースポットである北海道神宮に家族全員で足を運んだ。「今まで神頼みなんてしたことなかったけど、何かにすがってみたくて」。それほどに精神的に追い詰められていた。もう一人の女房、捕手の宇佐見真吾(28)も後押しした。五回に反撃の号砲となる2号ソロ。打った相手は巨人時代の大先輩、内海だった。「本当に偉大な方。プロ2年目(2017年)のキャンプの時にオープン戦までずっと組ませてもらって、〝ピッチングとは何か〟を教えていただいた」最初の実戦でサインが全然合わず、内海が失点を重ねた。その2日後。ブルペンでの投げ込みの際に、内海から指名され、打者を想定しながら約120球。1球1球、球種選択の意図を説明されながらサイン交換した。6年越しの〝恩返し〟の一打だった。(東山貴実)

DAZN

<パ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
楽天
2261 0.786
(↑0.008)
-
(-)
114126
(+7)
77
(+1)
23
(-)
29
(+2)
0.248
(↑0.007)
2.520
(↑0.05)
2
(-)
ソフトバンク
20121 0.625
(↑0.012)
4
(-)
110146
(+16)
108
(-)
22
(+2)
18
(+2)
0.273
(↑0.007)
2.720
(↑0.09)
3
(-)
西武
17171 0.500
(↓0.015)
8
(↓1)
108110
(+2)
105
(+3)
24
(+1)
12
(-)
0.225
(↓0.002)
2.450
(↑0.04)
4
(-)
ORIX
15200 0.429
(↓0.012)
10.5
(↓1)
10884
(+1)
120
(+7)
10
(-)
21
(-)
0.208
(-)
3.100
(↓0.12)
5
(-)
ロッテ
12191 0.387
(↓0.013)
11.5
(↓1)
11192
(-)
112
(+16)
10
(-)
35
(-)
0.211
(↓0.003)
2.630
(↓0.39)
6
(-)
日本ハム
11230 0.324
(↑0.021)
14
(-)
109107
(+3)
143
(+2)
32
(+1)
20
(+1)
0.227
(-)
4.110
(↑0.06)