オリックス(☆4対3★)ヤクルト =日本シリーズ1回戦(2021.11.20)・京セラドーム大阪=
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ヤクルト
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ORIX
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勝利投手:比嘉 幹貴(1勝0敗0S)
敗戦投手:マクガフ(0勝1敗0S)

本塁打
【ヤクルト】村上 宗隆(1号・8回表2ラン)
【オリックス】モヤ(1号・7回裏ソロ)

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◆オリックスがサヨナラで日本シリーズ初戦を制した。オリックスは2点ビハインドで迎えた9回裏、無死満塁から宗の2点適時打で同点とする。なおも続く好機で吉田正が適時二塁打を放ち、試合を決めた。敗れたヤクルトは、先発・奥川が力投を見せるも、守護神・マクガフが誤算だった。

◆試合開始の3時間前、京セラドーム大阪の扉が開いた。午後3時に開門。各ゲートからファンがスタンドに入ってきた。 グラウンドはオリックスの練習の真っ最中。主力は打撃練習を終え、山足、後藤らが打撃ケージで快音を響かせていた。 打球捕では、右翼のラオウ杉本が三塁の守備位置に。ジョーンズが中堅の位置に就いた。吉田正は左翼の定位置で、打球を追いかけていた。打撃練習を終えた安達は、二塁で動きをチェック。先発のエース山本は午後2時39分に、一塁側ベンチに姿を消した。 三塁側ベンチからはヤクルトナインが登場。アップでベンチ前に散らばり、オリックスの練習を見つめる。普段とそれほど変わらない風景ながら、静かに決戦ムードが高まってきた。

◆日本シリーズ開幕前に、「プチ秋田県人会」が行われた。 オリックスの打撃練習中に、ヤクルトの選手たちはアップのためグラウンドに姿を現した。 ヤクルトの石川雅規投手(41)と石山泰稚投手(33)は、連れだって小走りで二塁方面へ。オリックス中嶋聡監督(52)の元を訪れ、言葉を交わした。共通点は、秋田県出身。石川は秋田商、石川は金足農で、中嶋監督は鷹巣農林卒。試合前にまず、同じ地元出身の大先輩にあいさつに行っていた。 2人はその次に、同じく秋田出身のオリックス高山郁夫投手コーチ(59)の元へ走って移動。石川にとっては秋田商の先輩でもあり、あいさつしていた。

◆日本シリーズ初戦のスタメンが発表された。 セ・リーグ王者のヤクルトの先発は、プロ2年目の奥川恭伸投手(20)。キャッチボールのためユニホーム姿でグラウンドに姿を現すと、ヤクルトファンから拍手が起こった。 指名打者にはサンタナ。右翼手には宮本丈(26)内野手が入った。

◆日本シリーズ初戦のスタメン、ベンチ入りメンバーが発表された。 ヤクルトは、10月21日の広島戦(神宮)で右手首に死球を受けた元山飛優内野手(22)がベンチ入りした。 ベンチを外れたのは西田明央捕手(29)内川聖一内野手(39)長岡秀樹内野手(20)並木秀尊外野手(22)坂口智隆外野手(37)らとなった。

◆今季限りで引退した「平成の怪物」西武松坂大輔投手(41)が、日本シリーズ第1戦のゲスト解説として出演し、引退後初"解説"を行った。 99年のデビュー戦で対戦し、155キロの直球で"尻もち"をつかせて空振り三振を奪った片岡篤史氏(52=中日2軍監督)と共演。 試合前にオリックス山本由伸投手(23)について問われると「今現在の右ピッチャーの中では日本NO・1の投手だと思います」と好印象を口にした。 ヤクルト先発の奥川恭伸投手(20)については「あの年齢ですごみを感じさせるピッチングをしてますし、彼の世代では、今彼がNO・1じゃないでしょうか」と高評価した。 試合展開については「僕はピッチャーなので、なかなか見られない2人の投げ合いですし、投手戦を期待したいですね」と心待ちにしていた。

◆今季限りで引退した「平成の怪物」西武松坂大輔投手(41)が、ヤクルト奥川恭伸投手(20)を「01年世代」のNO・1投手と評価した。 日本シリーズ第1戦のゲスト解説として生出演し、引退後初"解説"を行った。 ヤクルト奥川について問われると「(オリックス)宮城くんとか(ロッテ)佐々木くんがいますけど、今彼が世代ではNO・1だと思います」と印象を語った。 奥川は今季9勝(4敗)を挙げ、CSファイナルステージ初戦では巨人を完封した。オリックス宮城は今季13勝(4敗)、ロッテ佐々木朗は3勝(2敗)を挙げるなど同世代の活躍が目立つ中で、松坂の目には現時点では「奥川世代」と映っているようだ。 80年生まれの松坂は、ソフトバンク和田、元巨人杉内、村田、元阪神藤川ら逸材がそろった「松坂世代」の中心として活躍。日米通算170勝を挙げた。 98球の完封から中9日で先発した奥川のポイントについては「前回完封してますし、体調が戻っているのかが気になるところ。精神的にも完投すると負担はある。彼は僕と違って球数が少ないのでそこまで心配はないのかなと思います」と見通しを示した。

◆オリックス福田周平外野手(29)が、両チーム通じて今日本シリーズ初の安打を放った。 エース山本が初回のヤクルトの攻撃を3人で片付けたあと、初回裏の先頭の打席へ。カウント1ストライクから2球目の変化球を捉え、中前に運んだ。一塁ベース上で、チームメートのラベロの決めポーズ「ラベロ・ハンド・シェーク」を軽快に決めた。

◆ヤクルト宮本丈内野手(26)が、アクシデントに見舞われた。 8番右翼で先発出場。0-0で迎えた2回2死一、二塁のピンチの場面では、若月の打球をジャンピングキャッチ。捕球した直後にそのままフェンスに激突した。うつぶせで倒れたまま立ち上がれず。トレーナーや塩見、山田、青木、福地コーチ、宮出ヘッドが駆けつけた。自力で立ち上がり、トレーナーと福地コーチに挟まれ、歩いてベンチへ引き揚げた。 3回の守備ではそのまま右翼へ就いたが、4回2死一塁からの打席で代打山崎が送られ、途中交代となった。

◆今季限りで引退した「平成の怪物」西武松坂大輔投手(41)が、右翼に入ったヤクルト宮本丈内野手(26)の好捕に「ああいうプレーを見せられるとピッチャーも乗っていく。大きなプレーだと思います」と評した。 日本シリーズ第1戦を中継するフジテレビにゲスト解説として出演し、引退後"初解説"。 2回2死一、二塁のピンチから、オリックス若月の打球をジャンピングキャッチした宮本は、捕球した直後にそのままフェンスに激突。うつぶせで倒れたまま立ち上がれなかったが、トレーナーに付き添われ、歩いてベンチへと引き揚げていた。気迫あふれるプレーに、解説席から称賛の声を送った 序盤は投手戦の展開。ヤクルト打線は、オリックス山本由伸投手のフォークに苦しんだ。松坂は「どんなカウントからでも投げられるフォークはバッターにとってはやっかい」と話し「甘いところにきても、バッターはストライクと思って振っているのでゴロになることが多い」と解説。無双状態の右腕の攻略ポイントには「ヤマを張って、そのボールがきたら1球で仕留めることも必要かもしれない」と、狙い球を絞り込むことも選択肢としていた。

◆ヤクルトが、選手会長中村悠平捕手(31)の適時打で先制した。 0-0で迎えた6回1死一、二塁、中村はオリックス山本の2球目、低めの150キロ直球を捉えて中前へ。二塁走者の山田が生還し、1点を先制した。 一塁を回ったところで、中村は右手で大きくガッツポーズ。京セラドーム大阪のスタンドには、ヤクルトファンの傘の花が開いた。 先発した奥川をリード面で支えた女房役が大きな先制点を挙げ、試合の均衡を破った。中村は「絶対に先に点を取りたいという気持ちがありました。みんなが初回から何とかしようという気持ちが強かったし、打席の中でみんな粘って後ろにつなぐ気持ちが山本投手の球数にもつながったと思います」とコメントした。

◆ヤクルトが、オリックス山本由伸投手の111球目をとらえ、待望の先制点を奪った。 6回に2四球でつくった1死一、二塁のチャンスで、中村悠平捕手が先制の中前適時打を放った。 レギュラーシーズン18勝の右腕に、5回までに95球を投げさせる展開。6回112球で、ヤクルト奥川恭伸投手(20)より先に降板させた。 引退後初"解説"としてフジテレビの中継にゲスト出演した西武松坂大輔投手(41)は「まさかの展開です」と驚いた。「それだけヤクルトの打者が、三振も多かったですが、徐々にプレッシャーをかけた成果が出た」と球数を投げさせた姿勢を評した。奥川への先制点の影響については「あのタイムリーは非常に勇気づけられる。大ピンチ(5回2死一、二塁)を切り抜けた直後なのでなおさら。ランナーがいてもいなくても変わらない。素晴らしいと思います。(若手投手の)出てくる選手のレベルの高さに驚かされてます」と感嘆した。 解説の元楽天監督、田尾安志氏も「ずっとボディーブローのように打ってきた。ここまで球数を投げさせて」とヤクルト打線の一体感を評価した。

◆オリックス山本由伸投手(23)が24イニングぶりに失点し、6回1失点で降板した。 両軍無得点の6回。2四球などで1死一、二塁のピンチを招くと、中村に中前適時打を浴び、先制を許した。 10月25日の楽天戦(楽天生命パーク)、11月10日のクライマックスシリーズ・ファイナルステージ、ロッテ戦(京セラドーム大阪)と2戦連続で完封勝利を挙げており、10月16日、日本ハム戦(札幌ドーム)の6回以来となる失点になった。 「全体的にランナーを許しながらの苦しいピッチングとなってしまっていたと思います。中盤までは、なんとか粘りながら投げることができていたと思いますが、最後(6回)、甘く入ってしまったボールを打たれてしまって悔しいです」 7回からは吉田凌投手(24)が2番手でマウンドに上がった。

◆オリックスのスティーブン・モヤ外野手(30)が代打で登場し、山本由伸投手(23)の負けを消した。 1点を追う7回1死、若月の代打で左打席に入った。カウント1-1からヤクルト先発奥川恭伸投手(20)の外角高めに抜けたスライダーを強振した。快音とともに高く上がった打球が右翼席に着弾した。打たれた奥川はその場にかがみ込んだ。 「甘く入ってきたボールをしっかりと捉えることができたし、打った瞬間、(スタンドに)入ってくれると思ったよ! 大事な場面で打てて最高だね! でも、まだまだ試合は続いていくし、しっかりと切り替えてチーム全員で頑張っていくよ」 6回までに4度の得点機をつくっていたが、いずれもあと1本が出ず、ホームベースが遠かった。モヤの起死回生の1発でようやくスコアボードに「1」を刻んだ。 ▼代打モヤが7回にシリーズ初打席で本塁打。日本シリーズの代打本塁打は08年<7>戦のボカチカ(西武)以来、29人目(31度目)。このうち初打席は70年<2>戦の井石礼司(ロッテ)、81年<1>戦の松原誠(巨人)、95年<1>戦の大野雄次(ヤクルト)に次いで4人目。オリックスの代打アーチは阪急時代の78年河村健一郎以来43年ぶり。

◆ヤクルトがオリックス山本由伸から先制し、ツイッターでは「ムーチョ」がトレンド入りした。 「ムーチョ」はカラムーチョ好きの中村悠平捕手のニックネーム。1年目に「たまたまカラムーチョを食べていたら目撃されて広まった」と話したこともあり、ファンからピリリと辛いお菓子の差し入れを受けることもある。 6回1死一、二塁から中村が中前に先制適時打を放ち、コメント欄には「ムーチョすげえよ!」「山本からムーチョが打ったぞ!」「俺たちのムーチョ」などファンからの声が寄せられた。 さらに「奥川くん」「村上くん」「ヤクルト」などもトレンド入り。チームの注目度も着実に上がっているようだ。

◆オリックスが9回にヤクルトのクローザー、マクガフから3点を奪い、逆転サヨナラで初戦を取った。 1-3の9回。先頭紅林が右前打で出塁。四球と犠打野選で無死満塁とし、宗佑磨外野手(25)。低めのスプリットを振り抜き、二遊間をゴロで抜いた。中前適時打で走者2人が生還し、同点とした。 なお無死、一、二塁から、吉田正尚外野手(28)が一振りで決めた。初球の高め真っすぐを振り抜き前進守備の中堅の頭を越した。二塁走者が生還し、サヨナラ勝利。吉田正は歓喜のウオーターシャワーを浴びた。

◆ヤクルト打線はオリックス山本の前に3回まで無得点。ヤクルト奥川もオリックス打線を3回まで無得点に封じる投手戦となった。 ヤクルトは6回、6番中村の中前適時打で先制に成功。オリックス打線はヤクルト奥川の前に6回まで無得点。 オリックスは7回に同点ソロも、ヤクルトは8回に村上の2ランで勝ち越し。オリックスは9回に3点を奪い逆転サヨナラ勝ち。

◆ヤクルトの若き4番村上宗隆内野手(21)が、勝ち越しの2ランを放った。 1-1で迎えた8回無死一塁、カウント0-2と追い込まれてからオリックス3番手ヒギンズの3球目、外角への139キロのチェンジアップをとらえ、バックスクリーンへ運んだ。 一塁を回ったところで大きく右手でガッツポーズを決めた村上は、ベンチでチームメートと歓喜のハイタッチをかわした。「追い込まれていたので何とか食らいついてという気持ちでした。奥川があれだけ良い投球をしていたので絶対取り返したかった」と話した。 CSファイナルでは本塁打なしに終わっており、ポストシーズンに入って初めての本塁打。10月13日の中日戦(バンテリン)以来の1発となった。 ▼21歳9カ月の4番村上が8回に2ラン。ヤクルトでは78年<2>戦角の22歳4カ月を抜き、日本シリーズでの球団最年少本塁打となった。また、21歳で4番で本塁打を打ったのは86~88年清原(西武)に次いで2人目。清原は19歳の86年に1本、87年1本、88年3本の計5本をすべて4番でマークした。

◆オリックスが9回にヤクルトのクローザー、マクガフから3点を奪い、逆転サヨナラで初戦を取った。▼ヤクルトはシリーズワーストのチーム1試合15三振を喫した。これまで9回試合では19年<3>戦の巨人まで9チームが記録した13個が最多だった。ヤクルトは13年<2>戦の巨人以来、シリーズ9度目となる毎回三振も記録した。

◆「SMBC日本シリーズ2021」が開幕し、オリックスが劇的な逆転サヨナラで白星発進を決めた。 2点ビハインドで迎えた9回、無死満塁の好機をつくると、宗佑磨内野手(25)が守護神マクガフから中前に同点タイムリー。続く吉田正尚外野手(28)が中越え二塁打を放って試合を決めた。ミラクル・オリックスに京セラドーム大阪はお祭り騒ぎ。目指す25年ぶりの日本一へ弾みのつく先勝だ。4冠右腕がペットボトルを抱え、一塁側ベンチを飛び出した。オリックス山本由伸投手(23)がウオーターシャワーの祝福に加わる。ヒーロー吉田正、まわりを囲むチームメートに浴びせた。「こういうのが今年の強さ。終盤の粘りですね」と声が弾む。勝利は山本につかなくても、浮かべた笑顔は勝利投手のものだった。 16連勝は5月28日のヤクルトに始まり、ヤクルトで終わりかけた。奥川との投げ合いで、先に失点したのは山本。6回、山田、サンタナへの四球で1死一、二塁のピンチを招き、中村に先制打を許した。 「納得いくフォームで投げられずにダラダラいってしまい、途中まで粘れたけど、最後に打たれて悔しいです」。6回9奪三振1失点。先発の役割を果たしても、相手に先制を許したことをエースは悔やんだ。 小学校1年生で出会った野球。プロ野球選手を目指し、日本一を求めた。右腕を振り続け、17年でついに日本シリーズにたどり着いた。「野球人生初の経験なので、楽しむことを忘れず、思い切ってやりたいです」。その一心で頂上決戦開幕のマウンドに立った。 勝利だけを期待する周囲の思いを受け止め、中盤まで投げ抜いた。ビハインドで降板しても、7回にモヤが同点弾で負けを消し、最後は吉田正らが勝利を運んでくれた。山本が投げる試合、やはりバファローズは負けない。これでエースの登板試合は13連勝だ。次回は27日予定の第6戦が予想される。出番が回れば、日本シリーズ初勝利に再挑戦する。【堀まどか】

◆「SMBC日本シリーズ2021」が20日に京セラドーム大阪で開幕。オリックスが先勝した。 2点を追う9回にヤクルトの守護神マクガフを攻め無死満塁とすると、宗の中前打で同点。続く吉田尚が今シリーズ初安打となるサヨナラ打を放った。

◆ヤクルトは「扇の要」中村悠平が奥川を後押しする先制適時打を放った。 6回1死一、二塁から、オリックス山本の111球目、低めの150キロ直球を中前へはじき返した。ほしかった先制点を挙げ、一塁を回ったところで、ベンチに向かって右手でガッツポーズ。 「絶対に先に点を取りたいという気持ちがありました。みんなが初回から何とかしようという気持ちが強かったし、打席の中でみんな粘って後ろにつなぐ気持ちが山本投手の球数にもつながったと思います」。サヨナラ負けは喫したが、エースを6回でマウンドから引きずり降ろした。 試合前の円陣では、CSファイナルステージに続いて声だし役を務めた。シーズン終盤から恒例となった全員が肩を組んで円陣をつくり、勝利に向けて気持ちを1つにするシーン。第2戦以降につなげていく。

◆オリックスが9回に3点を奪う大逆転劇で日本シリーズ初戦を白星で飾った。 試合を決めたのは主砲、吉田正尚外野手(28)。同点に追いつきなお無死一、二塁からマクガフの初球をとらえ、前進守備の中堅の頭上を越した。サヨナラ適時二塁打で歓喜のウオーターシャワーを浴びた。 吉田正は文句なしでヒーローに選ばれ「しびれました」と喜びを表現。第2戦以降に向けても「大丈夫です。ここからいきます。興奮して寝られるかどうか心配ですけど、しっかり寝て明日また頑張ります」と必勝を誓った。 吉田正のヒーローインタビュー全文は以下の通り。-今の気持ちを いや、しびれましたね。 -打席に入る前はどんな考えで 宗がこれまでないくらい球場を盛り上げてくれたので、ヒットのその勢いで(打席に)行かせていただきました。 -感触は 最後、ラストチャンスをいただいたので、その前にパワーなかったので、なんとか最後抜けてくれて安心しました。 -初の日本シリーズの初戦を終えて チーム全体としても最後まで1年間諦めない戦いというのをできていたので、この日本シリーズでも初戦でできたというのは大きな勝ちだったと思います。 -オリックスファンは25年待っていた 待ちすぎですもんね、これ。大丈夫です。ここからいきます。 -このあとも厳しい戦いは続く ほんとしびれるゲームだったんで、今日も僕もファンのみなさんも興奮して寝られるかどうか心配ですけど、しっかり寝て明日また頑張りますので、応援よろしくお願いします。

◆9回を3者凡退に抑えたオリックス比嘉幹貴投手が勝利投手。 比嘉は38歳11カ月で、日本シリーズでは50年<1>戦若林(毎日)の42歳8カ月、02年<3>戦工藤(巨人)の39歳5カ月に次ぐ史上3位の年長勝利になった。 前記2人はともに先発勝利で、救援勝利では87年<1>戦加藤(巨人)の37歳10カ月を抜く最年長。

◆オリックスは連勝へのバトンが、宮城大弥投手に託された。第2戦に先発する左腕は帰り際に取材に応じ「こっち側がイケイケになれる投球を頑張りたいなと思います」と明かした。 高校日本代表のチームメートだったヤクルト奥川が、第1戦で好投。「まだちゃんと中6日で回っていないのにもかかわらず9勝を挙げたり、中6で回ったときにどうなるのか気になるのもあります」と敬意を払いながらも「負けずに頑張りたいなと思います」とシーズン13勝の真価を披露する。

◆ヤクルトは、第1戦をサヨナラ負けで落とした。高津臣吾監督(52)は、淡々と試合を振り返った。現役時代は守護神としての経験が長く、負け投手となったマクガフを気遣っていた。一問一答は以下の通り。 ? -今日の試合を振り返って 高津 ぜひ奥川に相手の山本投手をぶつけたいと、初戦に指名しました。相手打者を抑えることもすごく大事かもしれないけど、相手の投手をしっかり意識しながら、いいゲームの引っ張り方、よく粘っていい投球ができたのかなと思う。なかなか点を取れる投手ではないので難しかったですけど、少ないチャンスをつないだところはよかったんですけど。 -打線は、山本に対して球数を投げさせた 高津 三振も多かったですけど、ボール球を振らさせることも多かったですし、なかなかまっすぐが前に飛ばなかったですけど、できないなりにしっかり対策を練って、それをやっていこうという姿勢は見えましたね。 -今日の粘りは今後につながる 高津 つながっていってほしいなと思う。なんとか粘って粘ってというところをやっていかないといけないなと思います。 -村上に1発が出た 高津 (山田)哲人が四球で出たり、ヒットも出て、ああやって次へ次へという形で、ムネ(村上)が1発でホームランで2点は取りましたけど、向こうの投手もそんな簡単な投手ばかりが出てくるわけではないので、つないでつないでというところは意識してやっていきたい。 -CSファイナルステージで不調だった山田が1安打出た 高津 うちの中心を打っている選手なので、1本出ると得点にもからみますし、今日は1本出てよかったんじゃないですか。 -守護神マクガフについては 高津 そういうこともあると思う。すごく難しいイニングを任せているので、全力でいった結果だと思います。 -宮本の好プレーと状態について 高津 (宮本)丈のプレーもそうだし、いろんなところでいいプレーがあってね、失点を防ぐシーンがあったんだけど。丈(の状態)に関しては何とも言えないです。

◆オリックスが9回に3点を挙げてサヨナラ勝ち。シリーズのサヨナラ勝ちは18年<5>戦のソフトバンク以来40度目。オリックスは阪急時代の69年<2>戦(長池のサヨナラ安打で2-1)以来、52年ぶり2度目になる。この日は9回表終了時のスコアが1-3。最終回に2点差を逆転したサヨナラ勝ちは50年<3>戦で松竹が毎日相手に記録(4-6→7-6)して以来、71年ぶり2度目だった。なお、<1>戦のサヨナラ勝ちは03年ダイエー以来8度目。 ▼初めて前年最下位チーム同士の対戦となった今年のシリーズ<1>戦はオリックスが勝利。これでパ・リーグのチームは18年<3>戦から13連勝となった。前年最下位チームのシリーズ出場は過去6度あり、<1>戦に勝利した60年大洋は日本一で、勝てなかった5チームはV逸。白星発進のオリックスが大洋に続いて史上2度目の前年最下位から日本一になれるか。なお、過去71度のシリーズで先勝チーム(△○を含む)は45度優勝し、V確率は63%。

◆第1戦はサヨナラ負けで落としたが、ヤクルト高津監督は守護神マクガフを気遣った。「そういうこともあると思う。すごく難しいイニングを任せているので、全力でいった結果だと思います」と冷静に話した。自身も守護神として日本シリーズを戦った経験があるだけに、大変さは痛いほど分かっている。 つなぐ打線は、日本シリーズでも持ち味を発揮した。5回先頭の西浦は、ファウルで粘って10球を投じさせるなど、オリックスのエース山本を6回112球で降板させた。作戦について明言はしなかったが、指揮官は「できないなりに、しっかり対策を練って、それをやっていこうという姿勢は見えましたね」と、先制点を奪った打線をねぎらった。4番村上に1発が飛び出し、CSファイナルで不調だった山田も1安打。「簡単な投手ばかり出てくるわけではないので、つないでつないでというところは意識してやっていきたい」と切り替えていた。

◆オリックスが9回にヤクルトのクローザー、マクガフから3点を奪い、逆転サヨナラで初戦を取った。▼高卒2年目で19歳9カ月のオリックス紅林が2安打。シリーズで1試合複数安打を記録した10代選手は、52年森下正夫(南海)54年仰木彬、高倉照幸(西鉄)63年柴田勲(巨人)86年清原和博(西武=4度)に次いで35年ぶり6人目。このうちシリーズデビュー戦でマークしたのは、86年に広島との<1>戦で2安打を放った高卒新人の清原以来2人目。

◆ヤクルトの若き4番村上が"ポストシーズン第1号"となる一時、勝ち越しの2ランを放った。 1-1の8回無死一塁、カウント1-2からオリックス・ヒギンスの6球目、外角139キロチェンジアップを捉えバックスクリーンへ。ベンチでは、奥川が笑顔で待っていた。「追い込まれていたので何とか食らいついてという気持ちでした。奥川があれだけ良い投球をしていたので絶対取り返したかった」。20歳が粘投し、21歳が1発を放つ。ヤングスワローズの存在感を見せた。 初のポストシーズンで4番。重圧は、並大抵ではない。CSファイナルステージでは、打率2割2分2厘と満足のいく結果ではなかった。高津監督からは「バットに穴開いているんじゃないの?」という明るい声かけもあった。レギュラーシーズン中の10月13日の中日戦以来の1発。サヨナラ負けで空砲になったが、待望の1発は明るい材料だ。

◆オリックス中嶋聡監督(52)は劇的勝利を飾った第1戦を「良かったですしかない」と振り返った。 1-3の9回無死一塁でレギュラーシーズンの代打打率4割2分9厘のアダム・ジョーンズ外野手(36)を代打に送ると、四球を選んで起用に応えた。無死一、二塁から福田周平内野手(29)に三塁方向へセーフティー気味のバントを命じ、これが野選を誘った。 無死満塁として宗佑磨外野手(25)の中前2点適時打で同点。最後は無死一、二塁から吉田正尚外野手(28)の中越え適時二塁打でサヨナラ勝利をつかんだ。 指揮官は「諦めることなく、ジョーンズもしっかり四球を選んでくれましたし、すべての選手が最後まで諦めなかったことが勝ちにつながったと思います」と、ナイン一丸の逆転劇を称賛した。 試合後には21日の第2戦(京セラドーム大阪)の先発投手について「宮城」と明言した。

◆ヤクルト奥川恭伸投手が感情をむき出しに投げ抜いた。「大事な初戦を任せていただいて、すごく緊張があった」。高ぶる鼓動をボールに乗せるかのように、自然と力が入った。最速は152キロを計測。普段は140キロ前後のフォークも、この日は145キロまで達した。投げ合う相手は、パ・リーグでタイトルを独占した山本。「粘り負けないように頑張りたい」と語った意気込みを投球で表現した。 喜んだり、笑顔を見せることはあるが、普段はマウンド上ではあまり表情を変えない。どちらかと言えばクールな若者が、喜怒哀楽を隠さなかった。0-0で迎えた5回1死から若月に8球目を中前に運ばれると、左腕を振って悔しさをあらわにした。2死一、二塁では吉田正を中飛に打ち取って乗り切ると、ほえながらガッツポーズをとった。1点リードで迎えた7回1死では、モヤに右中間への同点ソロを浴びると、大きくうなだれた。8回無死一塁で村上が一時勝ち越しの2ランを放つと、ベンチで両手を上げて喜びを爆発させた。感情を素直に出した1日だった。 7回を6安打1失点3奪三振。4回以外は安打を許したが、要所で踏ん張った。初めての日本シリーズの大舞台で、堂々の投球。自分の仕事をやり遂げた。「自分的にはいい内容とは言えないが、中村さんのリードであったり、野手の方の守備に助けてもらいながら、7回までは投げることができた」と周りに感謝。現状に満足せず、さらに先を見据えた。 今季はプロ初勝利を含む9勝。CSファイナルステージや、日本シリーズの初戦を任されるまでに急成長した。飛躍した1年の集大成として、パ・リーグを代表する好投手相手にも1歩も引かなかった。まだ高卒2年目の20歳。この経験を糧に、誰もが予想もつかない成長曲線を描いていく。【湯本勝大】

◆19歳オリックス紅林弘太郎内野手(19)が1-3の9回先頭で右前打を放ち、サヨナラへの口火を切った。 「後ろにジョーンズがいたので回すことだけ考えた。追い込まれても、その前(8回)に安達さんが粘っていたし、僕も粘っていこうと思った」。CSファイナルステージでは3試合に「8番遊撃」で出場したが、9打席無安打。この日は第1打席の中前打と合わせてマルチ安打で悔しさを晴らした。 ▼高卒2年目で19歳9カ月のオリックス紅林が2安打。シリーズで1試合複数安打を記録した10代選手は、52年森下正夫(南海)54年仰木彬、高倉照幸(西鉄)63年柴田勲(巨人)86年清原和博(西武=4度)に次いで35年ぶり6人目。このうちシリーズデビュー戦でマークしたのは、86年に広島との<1>戦で2安打を放った高卒新人の清原以来2人目。

◆「ここ一番の宗」が最終回に本領を発揮した。2点を追う9回無死満塁で、オリックス宗佑磨外野手(25)がヤクルトの守護神マクガフから千金の同点打。カウント1ボール2ストライクからの変化球を捉えて中前に運び、試合を振り出しに。吉田正のサヨナラ打を呼び込んだ。 「福宗正杉」と呼ばれるリーグ王者の打線。「後ろに(吉田)正尚さんとかラオウさんがいたので、別に三振OKのつもりで、当てにいかないように心がけました」。頼もしい中軸の前を打つ強みを、最大限に発揮した。 同点の8回、ヒギンスが村上に勝ち越し弾を浴びても、今のオリックスはあきらめない。「それも野球だし、日本シリーズ1位同士の戦いなんで、もうゲーム勝つしかないと思って、9回全員が最後まで諦めずに戦っていったんで、すごいつながりできたんじゃないですかね」と宗はチームの思いを代弁する。 ドラマチックな活躍が、今や代名詞になった。10月12日ロッテ戦では8回に同点2ランを放ち、打った宗も打たれた小島も涙。今月12日のCSファイナルステージ、ロッテ戦の岩下からの2ランは、日本シリーズ進出につながった。 故障に苦しんだシーズン序盤。連日、自宅を訪れてマッサージをし、手料理で励ましてくれた母ミカさんの優しさが支えだった。「ぼくが頑張ることが、元気でプレーすることが一番うれしいことだと思うので」。リーグ優勝が決まったときの、母の笑顔が忘れられない。「優勝してまた喜んでもらいたい」。勝利を呼ぶ全力プレーは、そこが原点だ。 「すごくチームにとって勢いの出る初戦の1勝だと思いますし、相手もあることですけど、しっかりいい戦いをチームでやっていきたいと思います」。より絆を強めたバファローズ。その中心に、宗がいる。【堀まどか】

◆オリックスが今度はセオリー通りの「バント」で劇的フィナーレを導いた。 9回無死一、二塁で福田周平内野手(29)は2球目を三塁側に転がした。マクガフの三塁送球が間に合わず犠打野選となり好機拡大。福田は「三塁手に取らせないと」と反省したが効果的な一手になった。中嶋采配では、CSファイナル2戦目では9回の無死一塁、無死一、二塁と連続してバスターを成功。極端なバントシフトを敷いたロッテの裏をかく作戦が話題になっていた。

◆「SMBC日本シリーズ2021」が開幕し、オリックスが劇的な逆転サヨナラで白星発進を決めた。2点ビハインドで迎えた9回、無死満塁の好機をつくると、宗佑磨内野手(25)が守護神マクガフから中前に同点タイムリー。続く吉田正尚外野手(28)が中越え二塁打を放って試合を決めた。傷だらけの主砲は、9歳下の"代役"に敬意を示す。オリックス吉田正は、自身が負傷離脱中に3番を務めた19歳紅林弘太郎内野手をほめた。「高卒2年目。1年間試合に出た経験は糧になる。優勝した年のメンバー。これから入団する後輩に伝えられますよね」。真剣な目で話していると、突然、表情を崩した。「平気で僕のお尻をたたいてきますよ(笑い)」。2年連続首位打者を相手にも、紅林はお構いなし。選手会長は教育係? として「(打率)2割2分が何しとんねん! と。(CSは)0割0分0厘でしょ? まぁ、いい関係ですよ」とツッコミを入れる。 取材後、吉田正は1本の電話をくれた。「紅林の記事、書きますか? じゃあ追加で...。巨人の坂本勇人さんみたいな、スケールの大きな選手になってほしい。ルックスもスタイルも全然、程遠いですけどね(笑い)」。愛あるメッセージが響く。若手が伸び伸びプレーできる裏には、頼もしい選手会長の存在がある。【オリックス担当 真柴健】

◆オリックスが劇的な逆転サヨナラで白星発進を決めた。2点を追う9回、無死満塁の好機をつくると、宗佑磨外野手(25)が守護神マクガフから中前に同点適時打。続く吉田正尚外野手(28)が中越え二塁打を放って試合を決めた。ミラクル・オリックスに京セラドーム大阪はお祭り騒ぎ。目指す25年ぶりの日本一へ弾みのつく先勝だ。折れたままの右手を高々と突き上げた。痛みに耐えた吉田正が、劇的サヨナラ打で日本シリーズ初戦にピリオドを打った。 「しびれましたね! ラストチャンスを頂いて、最後。流れが来ている中で、心拍数が上がっていた」 2点ビハインドで敗色濃厚の9回。宗の2点適時打で追いついてなお無死一、二塁。心臓はバクバクでも冷静に構えた。「宗がこれまでないぐらい、球場を盛り上げてくれたので、その勢いで」と初球をロックオン。前進守備のセンター頭上を越すサヨナラ打を決め、歓喜のウオーターシャワーを浴びた。 超速復帰の連続から、大仕事をやってのけた。9月上旬に全力疾走した際に痛めた左太ももの全治は6週間だったが「ポジションに穴をあけたくない」と3週間で復帰。だが、10月上旬に死球を受け、今度は右尺骨を骨折。全治2カ月の失意の中で、栄養管理や8時間睡眠を徹底して行い、1カ月後のCSファイナル初戦で不死鳥のごとく帰ってきた。「ここまで来たら日本一しかない...。リハビリは気持ちが下がるとダメなので。絶対に復帰すると強い気持ちで」。骨は折れても、心は折れなかった。 背番号34は必ず、打席に一番後ろから入る。2度のスイングで体の可動域を確認し、センター方向に進んで投手と対峙(たいじ)する。「僕のルーティンですね。投球の軌道を頭の中で描きながら、インパクトの点を合わせるように、気持ち良く入っています」。再現性は抜群だ。5月30日の交流戦でも8回に決勝打を放ったマクガフの球筋は「覚えてますよ」。実に71年ぶりという、2点差逆転サヨナラ勝ちを完結させた。 「1年間、最後まで諦めない戦いができていた。日本シリーズ初戦でも、それができた。大きな勝ちだと思う」と会心の笑顔。25年ぶりの頂上決戦に「待ちすぎですよね...」と笑いを誘い「大丈夫です!(日本一へ)ここからいきます!」。熱い視線先には、チャンピオンフラッグがある。【真柴健】

◆オリックス38歳の比嘉幹貴投手が初の日本シリーズで白星をつかんだ。 4番手で9回を3者凡退。最後は山田を106キロのカーブで空振りに。「すごく緊張しました。公式戦自体が1カ月ぶりなので不安もあった。持っているボールを全部使って抑えようと思っていた」と逆転サヨナラを呼ぶ好救援を興奮気味に振り返った。 ▼9回を3者凡退に抑えたオリックス比嘉幹貴投手が勝利投手。 比嘉は38歳11カ月で、日本シリーズでは50年<1>戦若林(毎日)の42歳8カ月、02年<3>戦工藤(巨人)の39歳5カ月に次ぐ史上3位の年長勝利になった。 前記2人はともに先発勝利で、救援勝利では87年<1>戦加藤(巨人)の37歳10カ月を抜く最年長。

◆オリックス本塁打王の杉本裕太郎外野手(30)はノーヒットに終わった。 初回、強くとらえた打球は惜しくも中堅正面。あとは3三振で初戦を終えた。「甘い球が来なかったですね。みんなすごいので自分も負けないようにしたい。正尚は今日とらえていたので(9回は)打つやろなと思って見ていました」とチームの勝利を喜んだ。

◆「平成の怪物」からの最大級の賛辞かもしれない。 今季限りで引退した西武松坂大輔投手(41)が、第1戦を中継したフジテレビにゲスト解説として生出演し、引退後"初解説"を行った。 ヤクルトが1点を先制した直後の7回。マウンドに上がった奥川恭伸投手(20)の投球について問われると、こんな言葉を発した。 「投げている姿を見ていると、球場を支配しているように見えますね」 野球の試合では聞きなれない響きの「支配」。 ルーツは高校時代にさかのぼる。横浜高(神奈川)の恩師、渡辺元智氏が長く愛用してきた言葉に「目標がその日その日を支配する」がある。松坂にとっては春夏甲子園優勝を果たした98年を含め、支えとしてきたフレーズ。西武入団後も自らのキャッチフレーズに「球場を支配する」を挙げたこともあった。 ヤクルトはサヨナラ負けを喫したものの、次世代の怪物候補となる奥川は7回1失点と好投した。松坂は試合前「(オリックス)宮城くんとか(ロッテ)佐々木くんがいますけど、今彼が世代ではNO・1だと思います」と印象を語っていた。さらに1試合、じっくりと投球を見て選んだ言葉に、若き右腕への期待が詰まっていた。

◆ヤクルトは、サヨナラ負けの悔しさを第2戦以降につなげる。 9回に2点差を追いつかれ、3-3でなおも無死一、二塁、オリックス吉田正尚外野手(28)の打球が、前進守備を敷いていたヤクルト塩見泰隆外野手(28)の頭上を越えた。ベンチで座って状況を見ていた高津臣吾監督(52)は、微動だにせず。オリックスの選手たちが歓喜する光景を目に焼き付けるように、ポジションに立ちつくす選手もいた。日本シリーズという最高の舞台での悔しい経験は、必ずこれからの糧になるはずだ。 サヨナラの場面を、村上宗隆内野手(21)は三塁から見つめた。日本シリーズ開幕前に対戦が「楽しみ」と話していたのが、サヨナラ打を放ったオリックス吉田正だった。19年に初選出されたオールスターのホームラン競争で対戦。敗れはしたが、バットを譲り受けるなど交流につながった。 今年の東京五輪では、チームメートとしてともに戦い金メダルを獲得。「試合の中で修正する力だったり、1打席目に凡退した結果をふまえて2打席目にいったりとか、そういったところがすごいなと感じました」と同じ左打者として刺激を受けた。 日本一をかけての舞台でも「サードから見て、いいところは吸収できればなと思います」と貪欲に学ぶ姿勢だ。第1戦で、村上はレギュラーシーズン中の10月13日の中日戦(バンテリン)以来となる"ポストシーズン第1号"の2ランをマーク。打撃好調を印象づけた。悔しさを胸に、チームを勝利へと導く。

◆また福を招いた。オリックス吉田正尚はこの日の私服に、ツノが付いたジバンシーの帽子をチョイス。骨折から復帰を果たし、勝利に貢献したCSファイナル初戦と同じだった。報道陣にも「おやすみなさい!」と笑顔で声をかけて、球場をあとにした。

◆<日本シリーズ・ニッカンMVP査定> サヨナラ打の吉田正に最高の4ポイント。過去のMVPを見ても、V打点を挙げた打者は評価が高い。宗の2打点も大きかった。

◆高校出2年目で日本シリーズ初出場を果たしたオリックスの紅林が初打席で安打を放った。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージは無安打と沈黙。勢いをつかむために重要な打席で快音を響かせた。 0―0の二回2死一塁で同学年の奥川の低めのフォークボールを中前に運んだ。静岡・駿河総合高時代に届かなかった甲子園大会で活躍した奥川らに「何とかプロでやり返そう、見返そうとやってきた」。旺盛な対抗心を大舞台で発揮した。 ドラフト2位で入団し、中嶋監督が2軍監督時代から育てた186センチの大型遊撃手。ことしレギュラーをつかみ、思い切りのいい打撃に加え、日に日に成長を遂げた守備でも貢献してきた。今回の頂上決戦でも気後れせずにプレーしている。

◆先発したオリックス・山本由伸投手(23)が6回1失点で降板した。 ヤクルト先発の奥川との投げ合いになり、ピンチを招きながら要所を抑える投球で五回までは無失点。しかし、六回に珍しく2与四球で一死一、二塁としてしまい、中村に中前適時打を浴びた。ヤクルト打線の粘りで、六回までに112球。想定以上に球数が増えてしまい、1点ビハインドでの交代になった。

◆オリックスのスティーブン・モヤ外野手(30)が七回1死から代打で登場し、好投を続けるヤクルト先発・奥川から右翼席へ同点ソロ本塁打を放った。 オリックスは奥川に対して、チャンスは作りながら決定打が出ない苦しい展開。絶対的エースの山本が六回で降板し、ムードも悪かった。それまで2打席がいい当たりの右飛、中前打と打席内容の良かった若月を、あえて代えての代打。中嶋監督の勝負手が実った形だ。

◆選手会長が白熱の投手戦で均衡を破った。ヤクルトは0-0で迎えた六回1死一、二塁で中村が先制の中前適時打。オリックス先発、山本が投じた150キロの低め直球をはじき返し、両手を何度もたたいて喜んだ。ベンチに戻ると、「打ったのはストレート。絶対に先に点を取りたいという気持ちがありました。みんなが初回から何とかしようという気持ちが強かったし、打席の中でみんな粘って後ろにつなぐ気持ちが山本投手の球数にもつながったと思います」とコメントした。

◆ヤクルトは4番・村上が大仕事だ。二回先頭でオリックス先発、山本が投じた7球目のフォークボールを中前にはじき返し、シリーズ初安打を放つと、1-1の八回無死一塁で3番手のヒギンスから中越えに勝ち越し2ラン。「追い込まれていたので何とか食らいついて、という気持ちでした。奥川があれだけ良い投球をしていたので絶対取り返したかった」と第1戦から主砲の役割を果たした。

◆20歳で最高峰の〝開幕マウンド〟に立った。奥川が日本シリーズの初戦に先発。重圧のかかる一戦で、序盤から快投を見せた。三回2死二塁では4番・杉本を高めの150キロ直球で空振り三振に仕留め、雄たけびを上げた。七回にモヤに同点弾を浴びたが7回6安打1失点。八回に村上が2ランを放つと、ベンチの前で笑みがこぼれた。 「日本シリーズの大事な初戦を任せていただいてすごく緊張がありました。自分的には良い内容とはいえないのですが、中村さんのリードであったり、野手の方の守備に助けてもらいながら7回までは投げることができました。村上さんのホームランにしびれました」 オリックスのエース、山本との投げ合いに一歩も引かない構えを見せ、勝負に臨んだ。一回は先頭の福田に中前打を許したが、2―4番を打ち取りスコアボードに最初のゼロを刻んだ。 二回は2死から四球と中前打で一、二塁のピンチを迎えたが、若月に右翼後方へライナー性の打球を右翼手・宮本がフェンスに激突しながら好捕。ビッグプレーに助けられ、奥川は思わず手を叩いて味方の奮闘に感謝した。三回は1死から宗に右中間を破る二塁打を浴びたが、主軸の吉田正、杉本に仕事をさせなかった。 3回、ピンチに杉本裕太郎を三振に斬ったヤクルト先発・奥川恭伸=京セラドーム大阪(撮影・中島信生) ピンチになってもストライクゾーンから逃げない。シーズンでは計105回を投げて、四球はわずか10。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージの初戦では6安打で無四球完封勝利を飾った。 四回には直球が152キロをマークし、この日初めてとなる三者凡退に斬った。CS後には「いずれは自分がチームを引っ張っていけるような選手になりたい」と強い決意を示した奥川。日本シリーズのマウンドは、その真価を示す舞台となった。

◆オリックスが劇的な逆転サヨナラ勝ちで先勝した。1-3の九回、ヤクルトの守護神・マクガフから無死満塁のチャンスを作ると、宗の中前2点打で同点。続く吉田正が中越えにサヨナラ打を放った。16連勝中だった絶対的エースの山本は6回1失点で降板し、勝ち負けはつかなかった。

◆6年ぶりにセ・リーグを制したヤクルトは2点リードで迎えた九回に登板したマクガフが崩れ、サヨナラ負けを喫した。無死満塁のピンチを招くと、オリックス・宗に中前2点打で同点に追いつかれ、続く吉田正に中越え適時二塁打を許した。先発の奥川恭伸投手(20)が7回を投げ6安打1失点で八回には4番・村上宗隆内野手(21)が3番手・ヒギンスから中越え2ランを放ち主導権を奪ったが、悪夢の初戦となった。 大事な初戦。均衡を破ったのはヤクルトだった。六回、先頭の山田が山本由伸から四球を選び、1死後にサンタナが四球で一、二塁。続く6番・中村が山本由伸から中前適時打を放ち、1点を先制した。先発の奥川は一回、2死三塁のピンチを招いたが、杉本を中直を打ち取った。二回は2死一、二塁のピンチを招き、若月に右翼後方への大飛球を浴びたが、宮本がフェンスに激突しながら好捕した。三回は1死から宗に右中間二塁打を浴びたが、後続を断った。四回は三者凡退。五回は2死一、二塁で吉田を中飛に打ち取った。六回も点を許さなかったが、七回に代打・モヤに同点ソロを許した。八回は清水が2死一、二塁でラベロを見逃し三振で無失点。勝ちパターンに持ち込んだが、九回に守護神・マクガフが1死も取れずに逆転された。 6回、先制の適時打を放つヤクルト・中村悠平=京セラドーム大阪(撮影・松永渉平) ◆先制打を放った中村 「打ったのはストレート。絶対に先に点を取りたいという気持ちがありました。みんなが初回から何とかしようという気持ちが強かったし、打席の中でみんな粘って後ろにつなぐ気持ちが山本投手の球数にもつながったと思います」 ◆7回1失点の奥川 「日本シリーズの大事な初戦を任せていただいてすごく緊張がありました。自分的には良い内容とはいえないのですが、中村さんのリードであったり、野手の方の守備に助けてもらいながら7回までは投げることができました。村上さんのホームランにしびれました」 ◆八回に勝ち越し2ランを放った村上 「追い込まれていたので何とか食らいついて、という気持ちでした。奥川があれだけ良い投球をしていたので絶対取り返したかった」

◆オリックスがサヨナラで勝利し、先勝した。中嶋聡監督(52)が試合後に勝利インタビューに応じた。主な一問一答は以下の通り。 --すごい試合だった 「はい、すごかったです」 --今の気持ち 「いや、すごかったとしか」 --平常心で送り出したいといっていたが、選手の表情は 「全然駄目でしたね。平常心というよりもガッチガチに固まっていました」 --勝利をつかめた要因は 「よく粘ったと思います」 --全員でサヨナラまでもぎとった 「本当にあきらめることなく、ジョーンズも四球を選んでくれましたし。全ての選手があきらめなかったことが勝ちにつながったと思います」 --今後に 「ひとつひとつ、しっかりと戦っていきたい。相手も非常に強いという印象を受けたので、本当に強いなと。こちらもそれ以上の気迫で戦っていきたいと思います」 --ファンに向けて 「最後まで応援してください。何かを起こします!」

◆パ・リーグ王者のオリックスがサヨナラ勝利を収め、先勝した。サヨナラ打を放った吉田正尚外野手(28)が試合後、勝利インタビューに応じた。主な一問一答は以下の通り。 9回、サヨナラ安打を放ったオリックス・吉田正=京セラドーム(撮影・宮沢宗士郎) --今の気持ちから 「いやぁ、しびれましたね」 --しびれる展開を振り返って。打席に入ったときの 「(同点打の)宗がこれまでにないくらい、球場を盛り上げてくれたので。その勢いでいかせていただきました」 --感触は 「最後、ラストチャンスをいただいたので。その前に、パワーがなかったので(五回2死一、二塁ではフェンス手前の中飛)。何とか最後、抜けてくれて安心しました」 --初の日本シリーズ。1戦目を終えて 「チーム全体として1年間、あきらめない戦いというのをできていたので。この日本シリーズでも初戦でできたのは、大きな勝ちだったと思います」 --今後に向けて 「しびれるゲームだったので、僕もファンの皆さんも興奮して寝られるかどうか心配ですけど。しっかり寝てあしたまた頑張りますので、応援よろしくお願いします」

◆日本シリーズ初戦はもちろん勝敗が一番大事なのだが、各選手がいかに雰囲気に慣れるかも重要な要素になる。一人でも多くの選手が独特の空気に慣れた方が、この先の戦いを有利に運べる。 そういう意味で、八、九回の打席で簡単に終わらない粘りを見せたオリックスが、最後は勝利を呼び込んだ。とくに光ったのは九回無死一塁から代打で登場し、追い込まれながらもしっかり見極めて四球を選んだジョーンズだ。この出塁で流れを完全に引き寄せ、一気呵成の逆転サヨナラにつなげた感じだ。 九回先頭の紅林もフルカウントまで粘っての安打だったし、八回のセットアッパー清水に対してT-岡田の安打、安達の四球も同様だ。前に飛ばすことだけがバッティングではないということを改めて教えてくれた。雰囲気に慣れたからこそ、できる打撃だった。 序盤は、剛腕・山本に対して粘りの打撃で球数を投げさせたヤクルトの攻撃も見事だったが、オリックスの粘りがやや勝ったといえる。 2戦目でヤクルトがどう巻き返すか。もしオリックスが勝てば、一気に行く可能性も出てきた。(本紙専属評論家)

◆パ・リーグ球団は2018年の第3戦でソフトバンクが広島に勝ってから13連勝となった。ホームゲームに限ると、楽天が巨人を破り球団初の日本一に輝いた13年の第7戦から20連勝となる。

◆高校出2年目で日本シリーズに初出場したオリックスの紅林が逆転サヨナラ勝ちへの起点となった。九回先頭で右前に運び「後ろがジョーンズだったので回すだけ。何とか出塁だけを考えていた」と振り返った。 クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでは無安打だったが、二回の初打席で同学年の奥川から中前打。静岡・駿河総合高時代に届かなかった甲子園で活躍した奥川らに「何とかプロでやり返そう、見返そうとやってきた」と語ったことがある。旺盛な対抗心を大舞台で発揮した19歳の遊撃手は「攻撃の形はつくれている。一本出せるように頑張りたい」と意気込んだ。 杉本(4番で4打数無安打、3三振)「甘い球が来なかった。また、頑張ります」

◆オリックスの比嘉がプロ12年目、38歳でシリーズ初登板勝利を挙げた。1―3の九回を三者凡退に抑え、その裏の逆転サヨナラ勝ちで勝ち星がつき「すごく緊張した。自分の投球をすることだけを考えていた」とほっと息をついた。 緩急を生かす持ち味を発揮し、2死では3番山田を106キロのカーブで空振り三振に仕留めた。「外の出し入れだけで抑えられる打者じゃない。自分の持っている球を全部使っていこうと思っていた」とうなずいた。

◆ヤクルトは、日本シリーズ第1戦でオリックスに3―4の逆転サヨナラ負けを喫した。まさかの展開で敗れたセ・リーグ王者だが、シリーズ初出場の4番・村上宗隆内野手(21)が、1―1の八回に中越えの2ランを放つ活躍。久々に飛び出した主砲の一発が、20年ぶりの日本一を目指すチームを勢いづける。 悔しさを押し殺し、表情を変えずベンチを後にした。九回に同点に追い付かれ、なお無死一、二塁。吉田正が放った中越えのサヨナラ打を村上は、三塁から見送ることしかできなかった。だが、試合終盤で放った一発は、チームを勇気づけるものとなった。 「追い込まれていたので何とか食らいついてという気持ちでした。奥川があれだけ良い投球をしていたので絶対に取り返したかったです」 そう振り返ったのは1―1の八回無死一塁の場面。追い込まれながら、ヒギンスが投じたチェンジアップを捉え、バックスクリーン右に2ランを突き刺した。公式戦では10月13日の中日戦(バンテリンドーム)以来、実に38日ぶりとなる一発。遠ざかっていた感触を久々に4番が取り戻した。 打線、そして若き先発右腕の粘りに報いるアーチでもあった。オリックスのエース・山本に対し、打線は一回からファウルなどで粘り、六回までに112球を投げさせて降板に追い込んだ。先発した20歳の奥川は7回1失点。難敵相手に、理想的な流れをチーム全体で呼び込んだ。 しかし、九回に守護神・マクガフが1死も取れず、まさかの逆転サヨナラ負け。無死一、二塁からの福田はバントは、マクガフがつかんで三塁に送ったものの悪送球(記録は野選)となり、満塁のピンチを生んだ。 三塁の村上は、この送球を足を伸ばして懸命につかもうとしたが、あと一歩で捕球しきれず、ボールはグラブからこぼれた。続く宗に同点の2点打、無安打に封じていた吉田正の適時打で試合が決まっただけに、あまりに悔しい結果となってしまった。 それでも、高津監督は「そういうこともある。全力でいった結果だと思います」と守護神をかばった。さらに「ムネ(村上)が一発で2点は取りましたけど、つないでつないで...というところは意識していきたい」とチームの粘りを前向きに捉え、第2戦を見据えた。 これでセ・リーグ球団はシリーズ13連敗。しかし、今年の頂上決戦はまだ始まったばかりだ。頼もしい4番とともに、セ王者が巻き返しを期す。(横山尚杜)

◆プロ野球の日本一を決める「SMBC日本シリーズ2021」は20日、京セラドーム大阪で開幕し、25年ぶりのパ・リーグ優勝を果たしたオリックスが6年ぶりにセ・リーグを制したヤクルトに4―3で逆転サヨナラ勝ちした。1―3の九回に宗佑磨外野手(25)の2点打と吉田正尚外野手(28)の適時二塁打で試合を決めた。阪急時代を含めて25年ぶり5度目の日本一へ、オリックスが劇的なスタートを切った。快音とともに、白球は前進守備の中堅手・塩見の頭上を越えていった。打球を見届けたオリックスナインは一塁ベンチから飛び出し、ヒーローのもとへ駆け寄る。吉田正がひと振りで決めた。チームにとって25年ぶりの日本シリーズ初戦は、主砲のサヨナラ打で白星スタートだ。 「いやぁ、しびれましたね。(同点打の)宗がこれまでにないくらい、球場を盛り上げてくれたので。その勢いでいかせていただきました」 歓喜のウオーターシャワーを浴びた男が、笑顔で振り返った。劇的勝利は1─3の九回に起きた。相手守護神のマクガフから先頭の紅林が右前打で出塁し、代打・ジョーンズが四球を選ぶ。福田は犠打野選で、無死満塁と好機を作った。 ここで宗が「後ろに(吉田)正尚さん、ラオウ(杉本)さんがいたので、三振OKの気持ちで」と中前へ同点の2点打。京セラドームに詰めかけたオリックスファンのボルテージが最高潮に達すると、主砲が初球153キロ直球を一閃。「正直、あんまり覚えていない。おいしかったですね」と笑った。 それまでヤクルトの投手陣を前に打線が振るわず、6回1失点の絶対的エース山本を援護できない。0─1の七回に代打・モヤが一時同点となるソロを放ったが、吉田正、4番の杉本ら主軸が抑え込まれ、苦しい試合展開だった。それでもファイティングポーズを取り続けるのが今年のチーム。中嶋監督も「なかなか序盤で(打球が野手の)間を抜けなくて、向こうの守備もすごく良くて。流れが悪いなと思ったんですけど、よくひっくり返したと思います」とナインをたたえた。 レギュラーシーズンでチームは両リーグ最多となる5度のサヨナラ勝ちをマーク。12日のクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第3戦でも〝サヨナラドロー〟で日本シリーズ進出を決めた。指揮官が常々口にしてきた「最後まであきらめない」という姿勢を、頂上決戦の場でも体現。選手会長の吉田正も「今年の一年間、あきらめずに戦ったのが、日本シリーズの舞台で出せた。この勝ちを自信にして、チームとして上に行けると思う」とうなずいた。 四半世紀ぶりの大舞台。最高の形で先勝した。中嶋監督も「どっちも勢いはある。向こうにもありますし、うちにもあります。そのせめぎ合い。変なミスがなかったら、なんとかいけると思う」と手応えを口にした。試合終了の瞬間まで、何が起こるか分からない。最後には中嶋オリックスが笑ってみせる。(西垣戸理大)

◆両軍のヤング右腕が、しびれる投手戦を演じた。20歳7カ月で先発を託されたヤクルト・奥川恭伸投手は、7回97球を投げ6安打1失点と好投。勝利投手の権利を持って降板したが、セ・リーグ最年少記録となる日本シリーズでの初戦勝利はならなかった。それでも強打のオリックス打線を翻弄。第7戦までもつれた場合には中7日で先発する可能性がある。また、オリックス・山本由伸投手(23)は6回5安打1失点と粘投を見せた。 球場を包む独特の雰囲気に飲まれる気配もなく、20歳にして初めて立った大舞台で奥川は堂々と腕を振った。7回6安打1失点。白星こそ挙げられなかったが、大役を全うし、試合後はその胸の内を明かした。 「大事な初戦を任せていただいて、すごく緊張しました。良い内容とは言えないのですが、中村さんのリードや野手の方の守備に助けてもらいながら7回まで投げることができました」 ピンチをつくっても先制点を与えなかった。五回2死一、二塁では、吉田正を150キロの直球で中飛に仕留め、グラブをたたいて叫んだ。七回には代打・モヤに右越えソロを浴びて一時同点とされながら、後続をしっかり打ち取った。 直後の八回に2学年上の村上が中越え2ランを放って勝ち越した場面には「しびれました」と奥川。その裏に勝利投手の権利を持って降板したが、セ・リーグ最年少記録となる20歳7カ月での初戦勝利はスルリと、その手からこぼれ落ちた。 ただ、最高峰の戦いを肌で感じた意味は大きい。大事な初戦を託した高津監督は「奥川を山本投手にぶつけたいと思っていた。相手投手を意識しながら、いい試合の引っ張り方ができたと思う」とたたえた。 レギュラーシーズンでは中9日以上の間隔を保ってきた奥川だが、第7戦までもつれた場合には中7日で登板する可能性も十分にある。〝次〟に備え、緊張の糸は切らさない。(赤尾裕希)

◆第1戦から野球の醍醐味(だいごみ)、面白さが詰まった日本シリーズ。プロ野球最高峰の舞台で起きた事象、プレーを、豊富な取材経験を持つ東山貴実編集委員が、主観をまじえて考察する。 「何か起こします」-。オリックス・中嶋監督の言葉通り、初戦はあまりに劇的な幕切れとなった。 シリーズ史上初となる前年の最下位チーム同士の対戦。一部に視聴率を懸念する声もある中、歴代のシリーズ視聴率ランキング(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)を振り返ると、1位は1978年の阪急-ヤクルト第7戦の45・6%。2位が96年第2戦のオリックス-巨人の43・3%、3位が同第1戦の43・1%。全てが前身を含めオリックスの試合なのが実に意外で面白い。今年も、日本シリーズの〝キラーコンテンツ〟となってきた、オリックスの本領発揮だった。 試合を面白くしたのは、山本に対して、ヤクルト打線が積極的にカーブを打っていったことだった。 今や球界ナンバーワンとなった山本の投球で、直球、フォークボールに次いで割合が大きい球種がカーブ。10日のロッテとのCSファイナルステージ第1戦では126球中23球を投じ、初球の5球を含む計8球の見逃しストライクを奪った。 この日のヤクルトはカーブ全17球中、見逃しはわずか2球。安打こそなかったが、凡打3、ファウル5、空振り4、見送りボール3と、積極的に狙っていった。CSでカウント球として有効に使えていた〝第3の球種〟にバットを出された山本は、序盤から球数がかさんで6回まで112球。心身ともに消耗させられての降板となった。 山本のカーブは昔で言う「ドロップ」のように縦に大きく割れる。落差の大きいフォークと合わせ、打者を「高低」で揺さぶるのが特長だ。スライダーなど内、外角への横の変化は打者の視線は平行に移動するだけだが、「高低」だと視線が大きく上下する。このため投球をラインで見ることができなくなり、点でしか捉えられなくなる。 2014年、15年の日本シリーズ。阪神、ヤクルトが山本と似たカーブの軌道を描くソフトバンク・武田と対峙(たいじ)した後、カーブの〝亡霊〟を見るかのように他の投手にも沈黙したのは決して偶然ではない。その意味で、山本のカーブに果敢にコンタクトできたヤクルト打線の2戦目以降が楽しみだ。(編集委員)

◆短期決戦では、リリーフの交代機を誤ったらいけない。最大で延長十二回まで考える必要も確かにあるけど、調子の悪い投手はスパッと代えるべき。これは両チームにいえることだよ。 ヤクルトのサヨナラ負けを招いたのは、明らかにマクガフの自滅。九回無死一塁から、代打・ジョーンズを四球で歩かせたのが全て。ストライクとボールがはっきりしているのだから、あそこが見切り時だった。 オリックスも八回、ヒギンスが山田を左前打で出し、村上に中越え2ランを浴びた。クライマックスシリーズでも本塁打を打たれているのだから、なおさら、村上には左腕のワンポイントをぶつけるべきだった。 要するに、一人一殺。細かい継投だよ。 どちらも2年連続最下位からの日本シリーズ出場。似たもの同士の対決だから、試合展開も何かの拍子で、どちらに転ぶかわからない。それだけに、ベンチワークがポイントになるわけだ。 オリックスは1つ勝っただけでなく、奥川より先に降板した山本が黒星を免れたことも大きい。まさかまたパの4連勝? そんな結末にならないよう、ヤクルトはペナントレースと同じようなこだわりを捨て、あの手この手で巻き返してもらいたいね。(本紙専属評論家)

◆今年の日本シリーズが幕を開けた。中嶋聡監督(52)が率いるオリックスと、高津臣吾監督(52)が指揮を執るヤクルトが激突。ともにリーグ優勝を成し遂げたチーム同士が、日本一を目指して戦う。 オリックスは吉田正や4番・杉本が攻撃の軸。杉本といえば、11月11日のロッテとのクライマックスシリーズファイナルステージ(京セラ)の第2戦で決勝弾を放った。 その際、思わぬ舞台裏を明かしていた。改めて紹介すると、0─0の六回2死一塁。相手先発の美馬が投手強襲の打球を受け負傷降板し、2番手・東妻が投球練習を行っている際だった。ネクストバッターズサークルで準備する杉本のそばに、藤田通訳が歩み寄り、「クイック速いから気をつけろ」と助言。その言葉を受け、初球133キロのスライダーをフルスイング。左翼席まで運び、「そのアドバイスでうまくタイミング取れました。クイックにタイミングを合わせるように、という感じで」と振り返っていた。 後日、藤田通訳に杉本に送った助言の経緯について聞いてみた。 「あれは中嶋監督から『ラベロに(東妻は)クイックが速い、と伝えてくれ』と頼まれたときに、『杉本にも言っておいてくれ』と言われたので、打順が前の杉本に先に言いに行ったんです。ラベロの前を通過したので、ラベロも驚いていましたけど。杉本にも『監督が言っている』と伝えたんですけどね(笑)」 杉本が監督からの伝言だということを忘れてしまったのか、藤田通訳から言われたことに驚きすぎたのか、藤田通訳からの助言ということが独り歩きしてしまったという。 「ちゃんと通訳という立場は心得ているので、そんな出過ぎたことはしませんよ」 藤田通訳はそう言って笑顔を見せたが、ナインの活躍の影には中嶋監督の存在があった。(西垣戸理大)

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