ヤクルト(☆4対0★)巨人 =クライマックスシリーズ1回戦(2021.11.10)・明治神宮野球場=
このエントリーをはてなブックマークに追加

 123456789
巨人
0000000000600
ヤクルト
30000010X4701
勝利投手:奥川 恭伸(1勝0敗0S)
敗戦投手:山口 俊(0勝1敗0S)

本塁打
【ヤクルト】サンタナ(1号・1回裏2ラン)

  DAZN
チケットぴあ ヤクルト戦チケット予約 巨人戦チケット予約

DAZN

◆ヤクルトがファイナルステージ初戦を制した。ヤクルトは初回、サンタナの2ランなどで幸先良く3点を先制する。そのまま迎えた7回裏には、塩見の適時二塁打が飛び出し、貴重な追加点を挙げた。投げては、先発・奥川が9回無失点の完封。敗れた巨人は、投打ともに振るわなかった。

◆セ・リーグ優勝のヤクルトが、全体練習前に"チーム一丸"となった。グラウンドで行われた青空ミーティングで、高津臣吾監督(52)は「僕たちはセ・リーグでチャンピオンになったけれども、決して横綱ではない。横綱というのは、どっしり構えて、相手の力をしっかり受け止めて、そこから前にいく。かかと体重でも、それでも前にいくのが横綱。でも僕らは、常に前のめりで、積極的にチャレンジ精神を持ってここまで戦ってきた。これは、今日から戦う巨人相手も一緒のこと。絶対に受け身になってはダメ」と選手へ訴えかけた。 全体練習が始まる前に、普段は神宮外苑で練習を行う投手陣がグラウンドに移動。スタッフから「集合!」の声がかかると、早出練習を行っていた野手は手を止め、外野の右翼付近に全員が集まった。 高津監督は9日に「明日、ミーティングはしようかなと思っています」と話していた通り、全員にCSファイナルステージに向かう熱い思いを伝えた。「絶対にやってはいけないのは、腰を引いて受け身になること。絶対にやらないといけないことは前のめり、積極的に、全力でバットを振る、しっかり腕を振る、そのことだけに集中してやっていければ絶対に勝てる。絶対できる。何度も繰り返して申し訳ないけど、大丈夫だから。君らは絶対やると僕らは信じている。君らは全力で、グラウンドでパフォーマンスを発揮してくれ。僕らは全力で君たちを応援します」。指揮官の言葉に、選手たちは大きくうなずいた。 シーズン終盤の合言葉となった「絶対大丈夫」と同じように、選手のパワーを引き出す言葉が並んだ。大きな輪をつくって行われた約3分間のミーティングが終わると、選手は気合の入った表情でそれぞれの練習に戻った。

◆4番の不在が続く。巨人岡本和真内野手(25)がヤクルトとのCSファイナルステージ初戦のメンバーから外れた。ポストシーズンに入ってから3戦連続での欠場となる。 10月31日の東京ドーム練習でフリー打撃を回避。上半身のコンディション不良とみられ、以降は別メニュー調整が続いていた。9日、神宮で行われた前日練習でも別メニュー調整。原監督は「練習でほぼ100%に近い状態じゃないと。ゲームはその上にいくわけだから」と話していた。 今季、リーグ戦では全143試合に4番で先発出場。本塁打&打点でリーグ2冠王に輝いたが、6日から行われた阪神とのファーストステージでは2戦続けて出場選手登録から外れていた。

◆CSファイナルステージ初戦に臨むヤクルトは、6選手を出場選手登録した。 野手では、"代打の神様"川端慎吾内野手(34)と、CSでは通算打率3割5分8厘、歴代最多10本塁打、MVP3度と短期決戦で抜群の勝負強さを誇る内川聖一内野手(39)が登録された。 投手陣では、初戦で先発する奥川恭伸投手(20)。さらに、勝利の方程式の清水昇投手(25)、スコット・マクガフ投手(32)が登録。今季、主に先発で4勝1敗の金久保優斗投手(22)が中継ぎ強化のため入った。

◆下克上を狙う3位巨人が首位ヤクルトに挑む。今季ヤクルト戦で3割6分8厘、7本塁打、神宮では打率4割2分9厘と好相性の丸がファーストステージから3試合連続で4番に座る。大城は10月7日ヤクルト戦以来約1カ月ぶりの一塁での先発出場。主砲・岡本和は出場選手登録から外れた。 巨人先発は今季2勝8敗の山口。ヤクルトは今季、チーム最多タイの9勝を挙げた高卒2年目の奥川が先発マウンドに上がる。 同シリーズは最大6試合で4勝先取。首位ヤクルトは1勝のアドバンテージを持ってスタートする。

◆マスコット界のBIGBOSS(?)ヤクルトのつば九郎が、CSファイナルステージ初戦でファンにメッセージを送った。 本拠地神宮で迎える大舞台に「すたんどのふぁんのかず すべて じょうけんは そろってます」。「2020ちゃんぴおんちーむを なんとか どんなてをつかっても げきはしましょう!」とまさかの呼びかけ。 さらに人気アニメにかけて「2018のりべんじ とうきょう 卍(まんじ) りべんじゃーず です」と命名した。 スタンドのファンに向けては「11がつより あるこーる はんばい しております。さむいので たくさんのむと WCがちかくなります」と警告。「じぶんのぼうこうはじしんでおまもりください ぼうこうじけんはごえんりょください」と笑いを誘った。 締めは「ごじしんのぼうこうが いつまでもBIGBOSSだとおもったら もらしますよ~」とまさかのオチだった。

◆「2021 JERA クライマックスシリーズ セ」のシリーズ冠スポンサーを務めるJERAの代表取締役会長の佐野敏弘氏が、始球式を行った。背番号0のユニホームを着て登場。ノーワインドアップから、ストライク投球で、捕手中村のミットに収まった。

◆ヤクルト塩見泰隆外野手(28)が"神走塁"で先制点を挙げた。1番中堅で先発し、1回の第1打席で左中間へ二塁打。三塁走者で迎えた1死一、三塁。4番村上が遊撃後方に飛球を放つと、一時はハーフウエーで打球を見極めた。三塁に戻り、遊撃手坂本が下がりながら捕球をすると、スタート。快足を飛ばし、先制のホームを踏んだ。 塩見は「ショートの坂本さんが体勢が悪かったので、(三塁コーチャーの)福地コーチから体勢が悪かったら思い切っていけよと言われていたので、思い切って走ることができました。なんとかまず1点というところを思って本当に積極的な走塁で1点をもぎ取れたことはよかったと思います」と振り返った。 直後の1回2死一塁の場面では、5番サンタナが初球の127キロスライダーをフルスイング。左翼席へ運ぶ2ランで、ヤクルトは1回に3点を先制した。サンタナは「しっかり打てる球を待っていて、初球にきて、なによりホームランになったのがとても良かったです」と振り返った。先発した奥川を強力に援護し「先制するのはとても大事ですし、奥川の投球がすばらしかったので、彼がすべてでした」とチームメートをたたえた。

◆ヤクルトが「ショートフライタッチアップ」で先制点を挙げた。 1回に先頭の塩見泰隆外野手が左中間への二塁打で出塁。1死三塁から4番村上宗隆外野手が放った打球が遊撃後方へと上がると、後退しながら左手が伸び切った状態で捕球した巨人坂本勇人内野手の態勢を見て、三塁走者の塩見がスタート。俊足を生かして本塁に滑り込み先制点を挙げた。 ベンチの高津臣吾監督も両手をたたいて喜びを表現。 試合前の円陣では指揮官が「僕たちはセ・リーグでチャンピオンになったけれども、決して横綱ではない。常に前のめりで、積極的にチャレンジ精神を持ってここまで戦ってきた。これは、今日から戦う巨人相手も一緒のこと。絶対に受け身になってはダメ」と話していただけに、言葉通りの積極的プレーで先制した。 さらに5番サンタナには2ランが飛び出し、1回に3点を先取した。

◆巨人が阪神戦に続いての"カメムシ円陣"でナインの結束を強めた。「8番捕手」でスタメン出場の小林がファーストステージから3試合連続で円陣の声出し役を務めた。 「ヤクルトは強いですけど、みんな1つになっていけば絶対勝てると思う。初戦、全員1つになって。亀さん(亀井)がベンチにいますけど、良いにおいを出して、やっていきましょう!さあいこう!」と呼びかけた。ファーストステージ第2戦から続く"カメムシイジり"に今季限りで現役を引退するベテラン亀井は「誰がカメムシや言うてんねん!」とキレ味鋭くツッコんだ。 7日の阪神とのファーストステージ2戦目の試合前、同じく声出し役を務めた小林は「ロッカーにカメムシがいた。(中略)僕たちは亀さんがいる。しっかり盛り上げて、今日勝って!東京帰って!1つになってやっていきましょう!さあいこう!」とかけ声。亀井は「誰がカメムシや!」と切れ味鋭いツッコミを見せていた。

◆ヤクルト先発の2年目右腕、奥川恭伸投手(20)が大舞台でプロ初完封を飾った。 球数は98球。100球未満の完封を意味する「マダックス」で達成。6安打9奪三振で無四球無失点に抑え、歓喜の輪の中心に立った。レギュラーシーズンでは最長7回までだった右腕が、チームに貴重な白星をもたらした。 パ・リーグCSではオリックス山本由伸投手も完封。同日に若手2人が完封するゲームとなった。 ヤクルト打線も若き右腕を強力に援護。1回には塩見泰隆外野手(28)の"神走塁"で先制点を挙げた。1回の第1打席で左中間への二塁打で出塁すると、1死一、三塁から4番村上が遊撃後方に飛球でスタートを切った。一時はハーフウエーで打球を見極め、巨人坂本が下がりながら捕球をすると、スタート。快足を飛ばし、先制のホームを踏んだ。 直後の2死一塁の場面では、5番サンタナが初球の127キロスライダーをフルスイング。左翼席へ運ぶ2ランで、1回に3点を先制した。7回には塩見の適時二塁打で4点目を奪い、終始試合を優位に進めた。 ▽ヤクルト・サンタナ(初回に2ラン)「塩見が素晴らしい走塁をしてくれてチームに勢いをつけてくれた。先制してくれて楽な気持ちで打席に入れたし、自分の打撃に集中することができた」 ◆マダックス 100球未満での完封を意味する言葉として使われる。86~08年にブレーブスなどで通算355勝を挙げ、殿堂入りした大投手グレグ・マダックスは、通算35完封のうち13度を100球未満で達成。抜群の制球力は「精密機械」と呼ばれた。球数で降板のタイミングを管理する現代の大リーグで、100球未満の完封は先発投手の理想となる。 ▽ヤクルト高津監督(奥川の投球に)「勝っても負けても彼のゲームだと思っていた。最後まで投げ切るイメージはしてなかったが、非常に少ない球数で、どんどん勝負をしていった結果。素晴らしいピッチングだった」

◆ヤクルトは初回、村上の遊飛の間に先制。サンタナの2ランで、巨人先発山口から一挙3点。ヤクルト先発奥川は3回まで無失点。 巨人は5回1死一、三塁の好機も無得点。先発山口は4回3失点で降板。ヤクルト奥川は、6回まで毎回奪三振で無失点の好投。 奥川が、プロ初の完封で初戦を白星で飾り、ヤクルトはアドバンテージと合わせ2勝とした。巨人は打線が6安打に抑えられた。

◆3位からの下克上を狙う巨人が初戦を落とした。ファーストステージ勝者が日本シリーズ進出を懸けたステージの初戦を落として勝ち上がったのは、17年DeNAの1度だけ。日本シリーズに進出する確率は3%となった。 1回1死一、三塁、先発山口がヤクルト村上を遊飛に打ち取った。しかし、風に流されたのか、捕球体勢を崩した坂本の隙を見逃さなかった三塁走者塩見がタッチアップに成功し、先制点を許した。さらに直後のサンタナへの初球スライダーを左翼席に運ばれた。痛恨の2ランを被弾し、この回一挙3点を献上した。8回には3番手畠が塩見に左前適時打を浴び、追加点を許した。 打ってはヤクルト先発の高卒2年目右腕・奥川に6安打完封された。5回の2死一、三塁のチャンスも代打の亀井と八百板が倒れ、スコアボードに「1」を刻むことは出来なかった。阪神とのファーストステージ(甲子園)を連勝で勝ち抜け、下克上ロードをまい進してきたが、王者の前に、重要な初戦をものにすることはできなかった。

◆CSファイナルステージ初戦の先発を任された奥川恭伸投手(20)が、大舞台でプロ初の完封勝利を挙げた。 ヒーローインタビューでは「試合前からとても緊張していたので、ホッとしています。なんとかチームに勢いをつけられるような投球をできればと思っていたので、これで勢いづいて、日本シリーズに出場できればなと思います」と笑顔で話した。 巨人打線を相手に、プロ2年目右腕は1歩も引かなかった。この日最速149キロの直球と、キレのある変化球を制球よく投げ込んだ。 3-0で迎えた5回2死一、三塁のピンチで代打の八百板を外角直球で見逃し三振に仕留めると、ガッツポーズで喜んだ。 終盤になっても球威は衰えず、「ここまできたら完封してやるぞ」と臨んだ9回もしのいだ。被安打6の9奪三振、無四球で無失点で勝利投手となった。中堅手の塩見が「すごすぎて、何も言えない」と表現するほどの投球だった。 弱冠20歳。CSファイナルステージで、球団史上最年少の勝利を挙げた。最後の打者を打ち取ると、両手で大きなガッツポーズを決めて笑顔を見せた。 去年の11月10日は、広島戦(神宮)で先発し1軍デビューを飾ったが2回0/3を5失点で降板した。「昨年の今日は悔しい思いをしましたので、借りを返せたかなと思います」と明かした。 まだ続く厳しい戦いに向けて「明日からも一生懸命戦います。チームスワローズで、ファンのみなさんと、選手と一体となって日本シリーズ出場、日本一とれるように頑張りましょう。応援よろしくお願いします」と呼びかけた。

◆ヤクルト先発の2年目右腕、奥川恭伸投手(20)が100球未満の完封を意味する「マダックス」でプロ初完封を達成したことで、ツイッターでは「マダックス」がトレンド入りした。 86~08年にブレーブスなどで通算355勝を挙げた「精密機械」グレグ・マダックスは、通算35完封のうち13度を100球未満で達成したことで生まれた言葉。 「奥川くん」「すわほー」などとともにトレンド入りし「まじエースすぎ」「マダックスやってんのはやばすぎて笑う」「マダックス奥川ああああ!!」などのコメントが寄せられ、ヤクルトファンも大興奮だった。

◆3位巨人が王者ヤクルトとの第1ラウンドで完敗した。先発山口が初回に3失点。打線も今季2戦2敗の奥川に6安打に抑えられ、プロ初完封まで献上した。原監督は「結果的に最初の3点が大きい3点になりましたね」と振り返った。  阪神を撃破したファーストステージでの、投打のきめ細やかさが影をひそめた。4イニングで先頭打者が出塁したが好機を拡大できず、3回無死一塁では8番小林が3球三振で9番山口は犠打失敗。守備でも山口が先制点を献上した直後、警戒すべき初球で2ランを許した。原監督は「(本塁打は)なかなかちょっとフォローはできないよね」。犠打や8人継投など、各自が役割を全うして勝ち上がってきた勢いをそがれた。  ファーストステージ勝者が日本シリーズ進出を懸けた舞台の初戦を落として突破する確率は、わずか4%しかない。原監督は「しかし、こっちも0点だからね。逆に思い切って切り替えられるというかね。打線においても投手においても。わかりやすい反省点が多いから」と顔を上げた。第2戦先発は、ファーストステージ初戦の好投で2連勝の流れを生んだ菅野。下克上への好気配を、エースで取り戻す。【浜本卓也】 ▽巨人元木ヘッドコーチ(1回1死一、三塁の遊飛で三塁走者の生還を許した場面に)「もうしょうがないよ。塩見のナイスランじゃない? (左翼ウィーラーが捕球するのは)きついよ。風もあるし、難しい」

◆巨人の山口俊投手(34)が立ち上がりに崩れた。 リーグ戦ではイニング別最多の12失点と苦手の1回、1死一、三塁から村上の遊飛の間に先取点を献上。続くサンタナに初球を運ばれ、2ランでこの回一挙3失点。「2死からの本塁打が全てだと思います」と4回3安打3失点4四球の投球を振り返った。宮本投手チーフコーチは「今日はツキがなかったかなと。3点は失ったけど、次につながる投球ができたのでは」と先を見据えた。

◆ヤクルトは奥川が6安打で無四球完封した。直球、変化球ともに精度が抜群で、長打を許さずに相手を寄せ付けなかった。打線は1回に村上の遊飛で三塁走者の塩見がタッチアップして先制し、続くサンタナが2ラン。7回は塩見の適時二塁打で加点した。 巨人は山口が4回3失点と精彩を欠いた。戸郷や畠を投入したが、流れを変えられなかった。

◆神宮にマダックスの化身が現れた。ヤクルト奥川恭伸投手(20)が、「2021 JERA クライマックスシリーズ セ」ファイナルステージ第1戦でプロ初完投初完封を決めた。9回を6安打無失点の9奪三振。緊張感が漂うマウンドで、わずか98球の圧巻劇をみせ、メジャーの大投手、グレッグ・マダックスが由来の100球未満の完封勝利を達成した。星稜(石川)時代に培った経験が、勝負どころでの快投を呼び込んだ。球場の視線を独り占めした。奥川のプロ最長イニングは7回。大一番で初めての境地に入った。8回裏の攻撃が終わると、ゆっくりと9回のマウンドへ。息を長く吐き、ロジンに手をやり、最後の一仕事に備えた。先頭若林に左前打を浴びたが表情は崩さず。最後はウィーラーを中飛に打ち取り、両手を掲げた。「初戦で投げると聞いたのはすごく前だったが、そのときから緊張していた。勝利の瞬間ホッとしました」と胸を投げ下ろした。 高校時代は満員の甲子園で何度も投げた。修羅場を経験したからこそ、今がある。「緊張はほぐすというより受け止める。緊張感あるゲームは投げていて楽しい」と笑う。今季155キロを計測した直球も、この日は149キロ止まり。それでもスライダーとフォークで的を絞らせず、ストライクゾーンで果敢に攻めた。無四球での"マダックス"達成。巨人打線を圧倒した。 ちょうど1年前の20年11月10日。神宮でプロ初登板を果たした。2回0/3を9安打5失点。プロの洗礼を浴びた。体作りやフォームのバランス、球の質など、すべてを見直し、一から鍛えた1年間。開幕後も投げながら理想の投球を追ってきた。中10日の間隔を空けながら、シーズン通して先発ローテを守り抜き、1歩ずつ成長してきた。結果で、悔しかった1日を最高の1日に上書きする-。それでも、この試合後も「まだ球を速くしたい。走者を置いたときはもっと球を操りたい。変化球はもっとキレのある球を投げたい」と言った。飽くなき向上心。絶対的なエースになるまでの道のりはまだまだ半ば。ひたむきに鍛錬を続けながら、日本一を目指す。【湯本勝大】 ▽ヤクルト高津監督(奥川の投球に)「勝っても負けても彼のゲームだと思っていた。最後まで投げ切るイメージはしてなかったが、非常に少ない球数で、どんどん勝負をしていった結果。素晴らしいピッチングだった」

◆初回に魅せたヤクルト塩見泰隆外野手(28)の"神走塁"が話題となっている。1死一、三塁。三塁走者の塩見は、村上の飛球で遊撃・坂本の捕球体勢が悪いと見るやタッチアップ。ホームに滑り込み先制点を足と好判断でもぎ取った。 このプレーで村上に記録されたのは「遊飛」。なぜ「犠飛」ではないのか。公認野球規則9・08「犠牲バント、犠牲フライ」の(d)の項には「0アウトまたは1アウトで、打者がインフライトの打球を打って、フェア地域とファウル地域を問わず、外野手または外野の方まで廻り込んだ内野手が、捕球した後、走者が得点した場合(中略)には、犠牲フライを記録する」と記載されている。 つまり、この日の坂本の捕球は「外野の方まで廻り込んだ」と判断されなかったため、「遊飛」となった。なお村上に打点1は記録される。

◆巨人宮本和知投手チーフコーチ(57)が、ファイナルステージの重要な初戦の先発マウンドを任せた巨人山口俊投手(34)の不運を嘆いた。 山口は1回、先頭のヤクルト塩見に左中間へ二塁打を浴びると、その後1死一、三塁のピンチを招く。村上を遊飛に抑えるも、その間に三塁走者塩見にタッチアップを許し、1点を先制された。続くサンタナには初球スライダーを左翼席に運ばれ、この回一挙3失点。以降は4回まで無失点で踏みとどまるも、4回3安打3失点4四球で敗戦投手となった。 宮本投手チーフコーチは痛恨の1発を食らったスライダーについて「甘かったね。高めのスライダーですか。あれはたぶん見逃せばボールだったと思う。バットの先っぽでしたけど、最後は強い風に放り込まれたといった部分においても、やっぱり今日はちょっとツキがなかったかなという感じがします」と嘆いた。 阪神とのファーストステージ(甲子園)が1勝1敗となれば、第3戦(8日)に先発させる予定だったが、2戦で勝ち抜けを決めたため、この日のファイナルステージ初戦にスライドさせた。「調整というのも難しいと思う。これはやっぱり我々がペナントを制すことが出来なかった、3位に終わってしまったというところ。それなりのツケというのが回ってくる。ただ、それを言っても仕方ない。攻めるのみなので」と難しさを口にしつつも、下克上を見据えて前を向いた。【小早川宗一郎】

◆ヤクルトのベテラン青木宣親外野手(39)の匠(たくみ)の技が、CSファイナルステージ初戦で光った。 初回、先頭の塩見泰隆外野手(28)が二塁打を放ち、2番青木に打席が回ってきた。2ボールで迎えた3球目、いきなりバントの構えを見せて相手を揺さぶった。カウント2-2となり、巨人先発山口俊投手(34)の5球目、見逃せばボールとなりそうな外角の131キロフォークに大きく踏み込んでバットに当て、引っ張って投ゴロとした。二塁走者の塩見は三塁へ。狙い通りの進塁打になった青木は、笑顔でベンチへ戻った。出迎えた嶋も川端もコーチ陣も、チームのためにアウトとなったベテランを拍手でたたえていた。 そして1死一、三塁となり、村上宗隆内野手(21)の遊飛で三塁走者の塩見がタッチアップし生還。青木の投ゴロは、見事に先制点につながった。 適時打を狙いたくなる場面だが、最低限の仕事に徹した。記録上は「投ゴロ」。しかしその一打には走者を進塁させたい、先制点を奪いたい、勝ちたいという思いが詰まっていた。高津臣吾監督(52)の「今まで通りのつなぐ野球をやっていければ」という思いを、体現した。 打線がつながって先制点を奪い、2年目の奥川恭伸投手(20)が初の完封。投打も、ベテランも若手もかみ合って、大事な初戦を勝利で飾った。高津監督が「明日どういうゲームになるか分からないですけど、今日のゲームがあったから、明日こういうゲームになりました、勝つか負けるか分からないですけども、やっぱり先にいい形で1勝できたというところは、明日に続けていかないと」と評した1勝。日本一へと続く道で、ベテランの一打とともに大きな1歩を踏み出した。【保坂恭子】

◆神宮にマダックスの化身が現れた。ヤクルト奥川恭伸投手(20)が、「2021 JERA クライマックスシリーズ セ」ファイナルステージ第1戦でプロ初完投初完封を決めた。9回を6安打無失点の9奪三振。緊張感が漂うマウンドで、わずか98球の圧巻劇をみせ、メジャーの大投手、グレッグ・マダックスが由来の100球未満の完封勝利を達成した。星稜(石川)時代に培った経験が、勝負どころでの快投を呼び込んだ。最後に奥川スマイルがはじけた。8回裏の攻撃が終わると、ゆっくりと9回のマウンドへ向かった。息を長く吐き、ロジンを手に。先頭に安打を許すも、最後はウィーラーを145キロの高め直球で中飛に打ち取った。「初戦で投げると聞いたのはすごく前だったが、そのときから緊張していた。勝利の瞬間ホッとしました」。両手を掲げ、全身で喜びを爆発させた。 高校時代は満員の甲子園で何度も投げた。修羅場を経験したからこそ、今がある。「緊張はほぐすというより受け止める。緊張感あるゲームは投げていて楽しい」と笑う。今季最速155キロを計測した直球も、この日は149キロ止まり。それでもスライダーとフォークで的を絞らせなかった。打者32人と対し、フルカウントは2度のみ。その1つは5回2死一、三塁で迎えた代打八百板。カウント1-3から147キロ直球で空振りを奪うと、最後は外角低めに142キロ直球。見逃し三振に仕留め、渾身(こんしん)の1球にほえた。ストライクゾーンで果敢に攻め続け、無四球での"マダックス"達成。巨人打線を圧倒した。 ちょうど1年前の20年11月10日。神宮でプロ初登板を果たした。2回0/3を9安打5失点。プロの洗礼を浴びた。体作りやフォームのバランス、球の質など、すべてを見直し、一から鍛え直した。今季は中10日の間隔を空けながら、先発ローテを守り抜き、投げながら成長。これまでは7回が自己最長イニングも、大一番で最高の結果を見せた。 役目を全うし、勝ち進めば次回登板は日本シリーズとなる。後は先輩たちの応援に徹する。投げるたびに成長を感じさせる今シーズン。試合後には「まだ球を速くしたい。走者を置いたときはもっと球を操りたい。変化球はもっとキレのある球を投げたい」と言った。飽くなき向上心。絶対的なエースになるまでの道のりはまだまだ半ば。日本一を懸けたマウンドでも、全力で応える。【湯本勝大】 ▽ヤクルト高津監督(奥川の投球に)「勝っても負けても彼のゲームだと思っていた。最後まで投げ切るイメージはしてなかったが、非常に少ない球数で、どんどん勝負をしていった結果。素晴らしいピッチングだった」

◆セ・リーグ王者のヤクルトが、「前のめり」に攻めて初戦に勝った。高津監督は「萎縮したプレーだけはしてほしくなかった。どんどんスイングして、腕を振っていくところはできたと思う」と言った。 CSファイナルステージを戦う極意は、ミーティングの言葉に詰まっていた。全体練習前の本拠地グラウンド。普段は神宮外苑で練習する投手陣も集結し、全員で約3分間の青空ミーティングが行われた。指揮官は角界を例えに攻める姿勢を説いた。 「僕たちはセ・リーグでチャンピオンになったけれども、決して横綱ではない。横綱というのはどっしり構えて、相手の力を受け止めて前にいく。かかと体重でも前にいくのが横綱。でも僕らは、常に前のめりで、積極的にチャレンジ精神を持って戦ってきた。これは巨人相手も一緒。絶対に受け身になってはダメ」 選手は、立ち合いで巨人を押し込んだ。初回。先頭塩見が左中間を破る二塁打。続く青木は投ゴロを放ち進塁打とした。1死三塁。村上の遊飛で三塁走者の塩見が"神走塁"を見せた。落球に備えて塁間にいたが、遊撃手坂本の捕球体勢が悪いと見るやすぐに帰塁。タッチアップで、足から滑り込みながら手袋を持った左手でホームにタッチした。塩見は「なんとかまず1点と思って、積極的な走塁で1点をもぎ取れたことはよかった」と振り返った。 指揮官の「絶対できる。大丈夫だから。君らは絶対やると僕らは信じている」という熱い思いを、全員が共有し、「前のめり」で戦った。【保坂恭子】

◆ヤクルト先発の2年目右腕、奥川恭伸投手(20)が大舞台でプロ初完封を飾った。 球数は98球。100球未満の完封を意味する「マダックス」で達成。6安打9奪三振で無四球無失点に抑え、歓喜の輪の中心に立った。レギュラーシーズンでは最長7回までだった右腕が、チームに貴重な白星をもたらした。 パ・リーグCSではオリックス山本由伸投手も完封。同日に若手2人が完封するゲームとなった。 ▼20歳6カ月の奥川がCS初登板で完封勝利。プレーオフ、CSの完封投手では、07年CSファーストステージ<3>戦の成瀬善久(ロッテ=21歳11カ月)を上回る史上最年少となった。日本シリーズを含めたポストシーズンでも、67年日本シリーズ<2>戦の堀内恒夫(巨人=19歳9カ月)に次ぐ2番目の若さ。 ▼奥川は公式戦の1試合最長イニングが7回(5度)だった。公式戦で完封勝利のない投手がポストシーズンで完封勝ちしたのは、66年日本シリーズ<6>戦の益田昭雄(巨人)、13年CSの岡本洋介(西武)菅野智之(巨人)美馬学(楽天)に次いで5人目。 ▼奥川の投球数は98球。ポストシーズンで100球未満の完封は、77年プレーオフ<5>戦の足立光宏(阪急)がロッテを88球で完封して以来44年ぶり5人目。足立の他には日本シリーズでスタンカ(南海)が3度、別所毅彦(巨人)が2度、杉下茂(中日)が1度マークしている。 ▼ヤクルトの投手が完封勝ちしたのはCS初。ポストシーズンでは日本シリーズ78年<7>戦の松岡弘、97年<1>戦の石井一久に次いで24年ぶり3人目。

◆下を向いている暇はない。巨人原辰徳監督(63)は完敗した直後、すぐに次なる戦いに視線を向けていた。 「わかりやすい反省点が多いから。明日また切り替えて行く、と」 2位阪神を2連勝で撃破したファーストステージで発揮したきめ細やかさが、投打で影をひそめた。1死一、三塁から左翼と遊撃への飛球で三塁走者塩見の生還を許して先制点を献上。先発山口は続くサンタナの初球、スライダーを左翼席へ運ばれた。 「まあまあ、なかなかちょっとフォローはできないよね」 今季2戦2敗だった奥川相手に、いきなりの3失点は重すぎた。 「結果的に最初の3点というのがね、やっぱり大きい3点になりましたね」 打線も先頭打者が計4イニングで出塁したが、好機を拡大できなかった。3回には先頭吉川が安打を放つも、8番小林が3球三振で9番山口が犠打を失敗。打線がつながりを欠いた。 「そういうものが得点に結びつかなかったということでしょうかね。1番、2番、3番もそうだしね。なかなかやっぱりつながらなかったというところ」 ファーストステージ勝者が日本シリーズ進出を懸けた舞台の初戦を落として突破する確率は、わずか4%。王者ヤクルトは投打で隙を見せなかったが、悲観するにはまだ早い。 「しかし、こっちも0点だからね。明日、逆に思い切って切り替えられるというかね。打線においても投手においても、という点でね」 第2戦の先発は、ファーストステージ初戦の7回2安打無失点の好投で下克上ムードを色濃くした菅野。エースを中心に、もう1度流れを呼び戻す。

◆6年ぶりにリーグ優勝したヤクルトが、レギュラーシーズン3位から勝ち上がった巨人と対戦。ヤクルトが一回に3点を奪い、主導権を握った。先頭の塩見が左中間二塁打を放つなど1死一、三塁の好機で、4番・村上の打球は遊撃後方へのポップフライとなったが、三走・塩見がタッチアップで積極的に本塁へスライディングで突っ込み、先制した。続くサンタナは2死二塁から左翼席へ2ランを放ち、いきなり3点を奪った。 1回、サンタナが左越え2ラン本塁打=神宮球場(撮影・今野顕) 先発の奥川は二回まで無失点。 ◆2ランを放ったサンタナ 「打ったのはスライダーです。塩見が素晴らしい走塁をしてくれてチームに勢いをつけてくれた。先制してくれて楽な気持ちで打席に入れましたし自分の打撃に集中することができました。良い角度で上がってくれました」

◆巨人・山口俊投手(34)が4回3安打3失点でKOされた。 一回、1死一、三塁のピンチで4番・村上を遊飛に打ち取ったが、塩見の好走塁で先制点を献上。さらに2死一塁から5番・サンタナに左翼席に飛び込む2ランを被弾し、いきなり3失点を許した。 二回以降は走者を背負いながらも無失点に抑えたが、五回の打席で代打を送られた。山口は「(一回)2死からの本塁打が全てだと思います」と悔しさをにじませた。

◆6年ぶりにリーグ優勝したヤクルトが、レギュラーシーズン3位から勝ち上がった巨人と対戦。ヤクルトは3点リードの七回、先頭の西浦の左翼線二塁打と続く奥川の犠打で1死三塁のチャンスを作ると、塩見が前進守備の遊撃・坂本を強襲する適時二塁打を放ち追加点を挙げた。 塩見は一回の攻撃で左中間二塁打を放つなど1死一、三塁の好機で、4番・村上の打球は遊撃後方へのポップフライとなったが、三走・塩見がタッチアップで積極的に本塁へスライディングで突っ込み、先制した。先発の奥川は七回まで無失点。

◆6年ぶりにリーグ優勝したヤクルトが、レギュラーシーズン3位から勝ち上がった巨人に快勝した。先発の奥川恭伸投手(20)がプロ初完投を完封で飾った。球数98で、9三振を奪い被安打6、無四球の圧巻の投球だった。 臆せず巨人打線に立ち向かった。奥川は六回まで毎回三振を奪う力投を見せた。日本シリーズ進出へ、勢いをつけたい初戦。〝開幕投手〟を託された20歳右腕が、神宮を沸かせた。 「クライマックス初戦の大切な試合で先発ということで、チームに勢いがつくようなピッチングを心掛けたい」と話していた奥川。一回は先頭の松原を遊ゴロ、続く若林を空振り三振、坂本を右飛とし、三者凡退でスタートすると、三回無死一塁からは4者連続三振。巨人打線を寄せ付けなかった。五回は先頭のウィーラーに左前打、1死から吉川に右前打を浴び一、三塁。それでも代打・亀井を浅い左飛、続く代打・八百板を見逃し三振。グラブをたたいてガッツポーズした。 打線は一回、塩見が左中間二塁打を放つなど1死一、三塁の好機で、4番・村上の打球は遊撃後方へのポップフライとなったが、三走・塩見がタッチアップで積極的に本塁へスライディングで突っ込み、先制。続くサンタナが2死二塁から左翼席へ2ランを放ち、いきなり3点を奪った。七回には先頭の西浦の左翼線二塁打と続く奥川の犠打で1死三塁のチャンスを作ると、塩見が前進守備の遊撃手・坂本を強襲する適時二塁打を放ち追加点を挙げた。

◆6年ぶりにリーグ優勝したヤクルトが、レギュラーシーズン3位から勝ち上がった巨人に快勝した。先発の奥川恭伸投手(20)がプロ初完投を完封で飾った。球数98で、9三振を奪い被安打6、無四球の圧巻の投球だった。 大一番を終え、お立ち台に上がったヒーローの奥川。「試合前からとても緊張していたのでホッとしています。チームを勢いづける投球ができればと思っていたので、これで勢いがついて日本シリーズに出場できれば」と安堵の表情を浮かべた。 ちょうど1年前の11月10日はプロデビューとなった広島戦(神宮)。2回9安打5失点とプロの洗礼を浴びた。あれから1年。「昨年の今日は悔しい思いをしたので、借りを返せたかなと思います」と笑みがこぼれた。九回のマウンドについて「ここまできたら完封してやる気持ちでした」と頼もしい一言。最後にファンに向けて「明日からも一生懸命戦います。チームスワローズとして、ファンと選手が一体となって日本一を取れるように頑張りましょう」と呼びかけた。同じくヒーローの塩見も奥川について「本当にすごいピッチングで、すごすぎて何も言えないです」とたたえた。

◆セ・リーグ3位から下克上に挑む巨人は零封負けで初戦を落とした。先発の山口が一回にサンタナに2ランを浴びるなど3失点。打線はヤクルト・奥川の前に散発6安打で無得点に終わった。セ覇者のヤクルトに与えられた1勝のアドバンテージを含め、同ステージ(6試合制)は0勝2敗となった。原辰徳監督(63)が試合を振り返る。 ――山口は一回に3失点。立ち上がりに苦しんだ 「まあ、そうですね」 ――サンタナに許した2ランが痛かった 「まあまあ、なかなかちょっとフォローはできないよね。結果的に最初の3点がやっぱり大きい3点になりましたね。しかし、こっちも0点だからね。明日、逆に思い切って切り替えられる。打線においても投手においても、という点でね」 ――三回、先頭の吉川の安打の後に8、9番が走者を進められず 「もちろん、そういうものが得点に結びつかなかったということでしょうかね。1、2、3番もそうだしね。なかなかやっぱりつながらなかった。しかし、分かりやすい反省点が多いから。明日また切り替えて行く、と」

◆6年ぶりにリーグ優勝したヤクルトが、レギュラーシーズン3位から勝ち上がった巨人に快勝した。一回に巨人・山口俊から左越え2ランを放ったサンタナの一問一答は以下の通り。 --一回の2ランは先制した直後の打席 「しっかり打てる球が初球にきて、なによりホームランになってよかったです」 --ホームランを打った感触は 「感触はそこまでよくなかったですけど、神宮ですから、いいところに飛んでくれました」 --初戦大きな勝利 「先制するのはとても大事ですし、奥川のピッチングが素晴らしかった。彼がすべてでした」

◆巨人は完封負けで手痛い1敗を喫した。先発の山口が立ち上がりに捕まり、4回3失点KO。宮本和知投手チーフコーチ(57)は「立ち上がりだけでしたね。あとリリーフ陣も頑張ってくれて、不運なヒットもありましたけど、投手は立ち上がり。向こうに勢いを与えてしまったというのが今日の反省点」と振り返った。 アドバンテージの1勝を含め、0勝2敗と厳しい状況となった。11日の第2戦には菅野が中4日で先発する。同コーチは「彼はジャイアンツの18番なので、期待するものは大きい」と話した。

◆ファーストステージを勝ち上がった勢いは、セ・リーグ王者に見事に打ち砕かれた。巨人は寒風吹きすさぶ神宮で、ヤクルトの20歳・奥川に零封負け。原辰徳監督(63)は「0点だからね。なかなか(打線が)つながらなかった」と首を振った。 シーズンでも2戦2敗を喫した好右腕に、攻略の糸口を見つけられなかった。先頭打者を4度出しながら、得点圏に走者を進めたのは五、九回の2回だけ。長打はゼロ、小技も決められず、元木ヘッドコーチは三回1死一塁で送りバントを失敗した山口に「しっかり決めなきゃ駄目。反省しなきゃ」と厳しかった。 一回に先制された場面は遊飛で三走・塩見に生還を許した。打球が風にあおられ、下がりながら捕球した名手・坂本の姿勢がわずかに崩れたところを狙われた。同コーチは「あれは仕方ない。ナイスラン」と塩見をたたえるしかなかった。 左脇腹痛を抱える岡本和はこの日も欠場。今後の状況も不透明だ。2年連続2冠の主砲を欠く中、代わりに4番に入る丸らが奮起するしかない。 原監督は「分かりやすい反省点が多い。また切り替える」と前を向き直した。日本シリーズ出場をかけたプレーオフ、CSで0勝2敗となったケースは両リーグ合わせて過去24度あり、勝ち上がったのはそこから4連勝した2017年のDeNAだけ。突破率は4%と厳しい状況に追い込まれた。(伊藤昇)

◆〝神走塁〟で勝利をつかんだ!! ヤクルト・塩見泰隆外野手(28)が一回、先頭で左中間二塁打を放つと、1死一、三塁から村上宗隆内野手(21)の遊飛で生還。貴重な先制点、決勝点を生むビッグプレーを見せた。試合前には、高津臣吾監督(52)が「前のめりで積極的にチャレンジ精神を持って戦っていく」と訓示。その言葉をナインが見事に体現した。 1回、ヤクルト・村上宗隆の打球をキャッチする巨人・坂本勇人=神宮球場(撮影・松永渉平) 行けるのか? 1万7792人の観衆が、固唾をのんだ。一回1死一、三塁。高く上がった飛球が遊撃手・坂本のグラブに収まると、三塁走者の塩見がスタート。本塁を陥れた。 「何とかまず1点と思っていて、積極的な走塁でもぎ取れたことはすごく良かったと思う」 一瞬の好判断が生んだ貴重な先制点だった。村上の打球は強風で左翼方向に流れ、背走した坂本がやや体勢を崩しながら捕球。一度はハーフウエーで構えた塩見は瞬時にタッチアップに切り替え、生還を果たした。 まさに、CSファーストステージを連勝して突破し、勢いに乗る巨人の出ばなをくじく〝神走塁〟。高津監督も「いろいろな状況、判断でスタートを切ったのは素晴らしかった」と賛辞を惜しまなかった。 ポストシーズンの走塁といえば、1987年の日本シリーズで西武・辻発彦(現監督)が一塁から一気に生還した〝伝説の走塁〟が有名だ。今回はミスに乗じたものではないが、ヤクルトが20年ぶりの日本一を果たせば、これもまた〝伝説〟として刻まれ得るビッグプレーだ。 布石は、練習前にあった。指揮官は神宮球場の右翼付近に選手、コーチ、スタッフを集め、決戦を前にこう訓示した。 「僕らは常に前のめりで積極的にチャレンジ精神を持って戦っていく。絶対受け身になっては駄目。積極的に全力でバットを振る、全力で腕を振ることだけを集中してやっていけば絶対勝てる、絶対できる、君らは絶対やると信じている」 完封勝利の奥川恭伸をねぎらう高津臣吾監督 =神宮球場(撮影・今野顕) それは、レギュラーシーズン中に「絶対大丈夫」とナインを鼓舞し、優勝につなげた高津監督の新たな〝魔法の言葉〟となった。一回に2ランを放ったサンタナも、捉えたのは初球。「前のめり」な姿勢が流れを呼んだ。 塩見はお立ち台で「これからも、積極的な走塁でチームにいい流れを持って来られるように頑張っていきたい」と宣言した。日本一へ、ヤクルトは前のめりに進む。(赤尾裕希) ■村上の一打は「犠飛」にならず 一回に塩見を生還させた村上の遊飛は、公式記録で「犠飛」とならなかった。公認野球規則で犠牲フライの定義は「外野手または外野の方まで廻り込んだ内野手が、(1)捕球した後、走者が得点した場合」とされており、巨人・坂本の捕球は外野まで回りこんだと解釈されなかった。村上には打点がつき、打数もカウントされた。

◆プロ野球のクライマックスシリーズ(CS)は10日、セ、パ両リーグのファイナルステージ(6試合制)が開幕。「2021 JERA クライマックスシリーズ セ」は、リーグ王者のヤクルトが3位から勝ち上がった巨人を4―0で破った。先発の奥川恭伸投手(20)が、98球でCS史上最年少の完封勝利。エースの称号がふさわしい圧巻の投球を見せた。チームは1勝のアドバンテージを加えて2勝とし、日本シリーズ進出に大きく前進した。 中堅への飛球で27個目のアウトを取ると、両拳を天に突き上げた。わずか98球、6安打無四球、9奪三振。奥川がプロ初完投を完封で飾り、チームを初戦勝利に導いた。 「何とかチームに勢いをつけられるような投球ができればと思っていた。大きな1勝。すごくホッとしています」 20歳6カ月での完封はCS史上最年少。〝開幕投手〟の重責を果たし、白い歯を見せた。 最速149キロを計測した直球は終盤まで球威が衰えず、スライダー、フォークボールも低めに制球された。四回まで毎回奪三振。五回1死一、三塁のピンチでは代打・亀井を1球で左飛に、代打・八百板をフルカウントから外角低めの直球で見逃し三振に斬り、雄たけびを上げた。打席でも七回に無死二塁で犠打を決め、追加点につなげた。 高卒2年目の今季、初勝利から9勝と飛躍を遂げたが、最長でも7回しか投げていなかった。それでも「勝っても負けても、彼のゲームだと思っていた」と高津監督は迷いなく八回、九回のマウンドに送り出し、奥川もその信頼に応えた。 11月10日-。ちょうど1年前、昨季最終戦(対広島)が行われた日に、この神宮球場で苦い思いを味わった。プロ初登板で三回途中9安打5失点。365日を経て、看板投手に駆け上がった奥川は「昨年の今日は、すごく悔しい思いをした。借りを返せたかな」とポツリ。一日も無駄にせず過ごしてきたことを、大一番で証明した。

◆まずは奥川から論じよう。いいピッチングだった。大事な初戦のマウンドを託されて、この一戦に全てをかけたい巨人を寄せ付けなかった。ヤクルトに圧倒的な優位をもたらしたね。 何といってもコントロールだ。70%以上がストライクだもの。現役時代、ノーコンだったエモトからすれば、うらやましい限り。 さらに、子供の頃から投球術がしみついているのがよく分かる。五回1死一、三塁。まず代打・亀井は初球のフォークボールをポーンと打たせて浅い左飛。続く代打・八百板はフルカウントから、こん身の外角低め速球で見逃し三振。勝負どころの見極め方。ストライクの取り方、外し方。押し引きが実にうまい。 ただし、巨人にもシビアな目を向けざるをえない。なにしろその五回が、チャンスらしい唯一のチャンス。しかも、実質的には一回にいきなり3失点したところで、終わっていた。まさに連敗にあえいだ公式戦終盤の姿、そのまま。思い出したくない記憶がよみがえったか。阪神に2つ勝ったくらいでは、払拭できなかったということよ。 重ねていうと、もはやヤクルトが圧倒的優位に立っている。巨人とすれば、第2戦先発の菅野に頼るしかない。中4日だからといって五回や六回くらいで交代させているようでは、リリーフ陣に不安があるだけに勝利はままならない。最後までいかせるべし、とクギを刺しておこうか。(本紙専属評論家)

◆1軍デビューから1年越しに〝雪辱〟を果たしたヤクルト・奥川恭伸投手(20)。2020年の入団時から取材する本紙ヤクルト担当の横山尚杜記者(27)が、その知られざる内面に迫った。 プロ初登板となった、ちょうど1年前の11月10日。広島相手に2回0/3で9安打5失点と打ち込まれた奥川は失意の中、2日後に宮崎のフェニックス・リーグ組に合流したが、数日たっても悔しさを拭い切れていなかった。 「踏み込むステップ幅が小さい」「高校時代の方が良かった」「身体が細い」...。わずか57球の投球で自身を全否定するような文言が紙面やネット上に散らばっていた。 「絶対、見返します。誰からも何も言われない投手になりますよ」 鋭い視線でそう宣言し、グラブを強くたたいていたことを覚えている。奥川は、いい意味で執念深い。この日の完封の後も「まだ1試合。(自分は)まだまだ。野手の皆さんのファインプレーがあって紙一重だった」と自身を認めることをしなかった。 それだけ高いレベルのエース像を描いているともいえる。そのために石川や五十嵐の取り組む姿勢を見てトレーニング本を手に取り、苦手だった読書が日課となった。食事も根本から改善し、朝食は決まったメニューしか取らなくなった。登板間にある休養日も必ずマッサージに時間を割く。 あの屈辱から1年。全てはマウンドで自身が納得するパフォーマンスを発揮するためだった。奥川は、どこまでも執念深い。

DAZN