阪神(0対0)ヤクルト =リーグ戦25回戦(2021.10.20)・阪神甲子園球場=
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ヤクルト
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阪神
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勝利投手:-
敗戦投手:-
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◆阪神の先発・ガンケルは、8回途中無失点の好投を披露。対するヤクルトの先発・高橋も、7回を4安打無失点に抑える投球を見せた。両先発の降板後、ヤクルトは清水とマクガフ、阪神は岩崎とスアレスがそれぞれ無失点に抑え、息詰まる投手戦は0-0のまま9回引き分けに終わった。

◆阪神のドラフト6位ルーキー中野拓夢内野手(25)が30盗塁に王手。 新人のシーズン30盗塁以上は19年近本(阪神)まで過去16人。ドラフト制後は6人が達成しているが、6位以下の新人がシーズン30盗塁以上を記録すれば中野が初めて。

◆阪神先発ジョー・ガンケル投手(29)が、今季最後の首位ヤクルト戦でベストピッチを見せた。7回2/3を4安打9奪三振無失点。先発の役目を十二分に果たしてマウンドを降りた。 「良い仕事ができたね。0点になんとか抑えてゲームを作ることができたことがよかったよ。これからチームが点を取ってしっかり勝てるように応援するよ」とコメントした。 最初のピンチは3回。1死から元山の左前打と9番高橋の犠打で2死二塁。ここで1番塩見を内角低めのスプリットで空振り三振に仕留めた。 圧巻は4回だ。2番からの好打順で青木を空振り三振、3番山田を見逃し三振、4番村上を空振り三振。4回まで無安打投球のヤクルト先発高橋を相手に、1歩も引かない。8回2死でサンタナに内野安打を許すと岩崎に後を託し、ベンチへ退く際には、大きな拍手が球場に響いた。 前回10日の登板もヤクルト戦(神宮)で、3回2失点で降板。「前回は体が流れてしまい、ボールを制御できなかった。だからいいリリースポイントで投げられるように取り組んできたよ」と修正し、中9日のマウンドでリベンジに値する投球を披露した。

◆負けられない一戦が続いている阪神だったが、1点が遠く、引き分けた。前日19日には16安打11得点で大勝したが、この日は猛虎打線が息を潜めた。首位ヤクルトに痛いドローで、マジックを「3」に減少させた。 打線がヤクルト先発の高橋奎二投手(24)を相手に苦しんだ。4回まで無安打に抑えられ、5回には先頭の糸原健斗内野手(28)のチーム初安打となる左前打から無死一、二塁の好機をつくったが後続が倒れ、ホームベースが遠かった。 一方先発のジョー・ガンケル投手(29)は完璧な投球を見せた。6回まで許した安打は散発2本。3回には2死二塁のピンチを招いたが、塩見泰隆外野手(28)から空振り三振を奪い、ピンチを脱した。7回2/3を投げ、4安打9奪三振無失点と好投。3者凡退のイニングを4度つくるなど、ヤクルト打線を寄せ付けなかったが、打線の援護なく10勝目はお預けとなった。

◆阪神先発ガンケルは3回まで2安打無失点に封じた。ヤクルト先発高橋は3回までに5奪三振。1人の出塁も許さなかった。 阪神は5回、先頭糸原のチーム初安打から無死一、二塁の好機をつくったが後続が倒れた。6回まで両軍無得点。投手戦となった。 両チームとも継投で無失点リレーをつなぎ、試合は0-0で引き分けた。首位ヤクルトのマジックは「3」に減少した。

◆互いに三塁を踏ませない投手戦で引き分けた。阪神のガンケルは8回2死まで無四球の散発4安打で9奪三振。岩崎、スアレスが無安打で乗り切った。ヤクルトは高橋が7回4安打で8三振を奪い、清水、マクガフとつないでしのいだ。

◆6年ぶりのリーグ優勝に突き進むヤクルトが、スコアレスドローでマジックを1つ減らした。 先発高橋奎二投手(24)が7回を4安打無四球ピッチング。三塁を踏ませず、8三振を奪う力投で2位阪神打線を封じた。8回は清水、9回はマクガフが抑え、0-0の投手戦で終了。ヤクルトの優勝マジックは「3」となり、最短で22日に優勝が決まる。ヤクルトは引き分けでM3。ヤクルトの0-0引き分けは5月12日広島戦、9月25日中日戦に次いで今季3度目。0-0引き分けのシーズン最多記録は1リーグ時代の40年翼の4度で、セ・リーグでシーズン3度は今年の中日に並び最多。また、清水がホールドを挙げ、今季のヤクルトは146ホールド。19年阪神の145ホールドを抜いてチーム最多ホールドのセ・リーグ新記録となった。

◆2位阪神が首位ヤクルトとのレギュラーシーズン最後の対戦で引き分けた。ヤクルトのマジックは3に減った。 先発ジョー・ガンケル投手(29)が今季最長の7回2/3を無失点と踏ん張り、岩崎、スアレスも無失点でつないだ。残りは4試合で、逆転優勝に厳しい状況に追い込まれたが、矢野燿大監督(52)は「チャンスはまだ残っている」と前を向いた。試合後の一問一答は以下の通り。 ? (テレビ) -引き分けに終わった うちの立場では勝たないと状況的には厳しくなるのは分かっているんですけど。全員で精いっぱい戦った結果なんで、これは変えられないんで、受け止めて、残りの試合やるしかないですね。 -先発ガンケルが素晴らしい投球 本当にコントロールも良かったですし、球のキレもしっかりありました。そういうところで大事な場面で素晴らしいピッチングをしてくれました。 -攻撃では5回無死一、二塁で小野寺がバスターを試みた(結果は右飛) どうしても点を取りたかったら、いろいろ考えはありますけど、まあでも自分たちがしっかり点を取ろうと中でやったことなんでね。それは自分自身が受け止めてやっていきます。 -9回も先頭の中野が出塁。あと1歩 どんな形でもいいんで勝ちたかったというのが正直なところですけど。先ほども言いましたけど、この引き分けは変えられないし、でも残りの試合でこの引き分けがあって優勝できたなというものに変えられるチャンスはまだ残っているんでね。残りの試合で自分たちで引き寄せるように全力で戦っていきます。 ? (囲み) -ガンケルは気持ちも入っていた いやいやもう完璧じゃない? コーナーもしっかりいって、インサイドも攻めながら、丁寧に丁寧にいきながら、それでも球の力もしっかりあったんでね。本当に大事な試合っていうのは、ガンケルもよく分かっている中でね。コントロールミスやそういうのも少なく、こういうピッチングをしてくれたというのが、こういう試合になったと思う。 -相手の先発高橋もよかった カーブがちょっとね、いい形で使われたかなという感じはあったので。ちょっとそこが普段と変わったところで、球の力もあったし、カーブがよかったからなかなか簡単ではなかったけどね。何とか1点取りたかったなと思います。 -ヤクルト打線を2試合無得点、勢いを止めた それは今後のことなんでね、よく分からないですけど、投手がよく投げてくれたということですね。 -引き分けて、残り4試合に向けて さっき言った通り、引き分けは返ってこないんでね。残りの試合で、引き分けがあってよかったなというふうにできるのは僕たちだけなんで。もちろん僕たちが優勝するにはヤクルトの勝敗が関係してくるんで。自分たちだけではできない部分もあるけど、自分たちができるというのは1戦1戦勝ちをつなげていくということしかできないんで。はい、そうやっていきます。

◆阪神の大山悠輔内野手(26)は6番起用でこの日一番の好機をつくり出した。 2戦ぶりのスタメン出場。5回裏無死一塁、高橋の直球を押し返して一、二塁間を破ったが、得点にはつながらなかった。18日広島戦で4打席連続三振を喫し、前日19日ヤクルト戦は終盤出場で1安打。背中の張りを抱えながら、優勝の可能性を最後まで追い求める。

◆阪神中野拓夢内野手が9回、先頭で安打を放ち、最後まで勝利へのチャンスメークした。 「自分が出塁することでチームの雰囲気も変わるんじゃないかという思いもあったので、何とか必死に食らいついていきました」。ヤクルト守護神マクガフの5球目、153キロ直球をコンパクトにライナーで中前へはじき返した。続く近本が初球で犠打を決め、1死二塁。4番マルテにつなぎ、球場の雰囲気は一変。一気に押せ押せムードとなった。 6回にも中前安打を放ち今季33度目のマルチ安打。今季通算125安打で阪神新人歴代5位の赤星にあと3本に迫った。21日の中日先発柳に対しても今季4打数2安打、打率5割と苦手ではない。「負けられない試合が続くので、積極的に走攻守で攻めていきたい」。10月は打率3割1分1厘(61打数19安打)と好調なバットで、最後まであきらめず全力プレーを続ける。

◆2年連続セーブ王を確定させている阪神ロベルト・スアレス投手が、ヤクルトの勝利を消した。 両軍無得点の9回に登板。先頭を四球で出したが、バントを試みた塩見に外角いっぱいの直球で犠打すら許さず見逃し三振を奪った。青木からも空振り三振を奪い、2死一塁までこぎつけると、山田を161キロで押し込み、二ゴロに打ち取った。ここまでチーム最多の61試合に登板し、防御率は1・17。虎の守護神は驚異的な安定感を誇っている。

◆阪神岩崎優投手が8回2死一塁からの登板にも落ち着いて無失点で抑え、ピンチの芽を摘んだ。」互いにスコアレスの8回2死から先発ガンケルがサンタナに内野安打を許したところで、今季60試合目の救援登板。カウント2-2から元山の内角に141キロ直球を投じ、力のない左飛で難なく打ち取り、40ホールド目を挙げた。ベンチではガンケルと力強いハイタッチを交わし、互いの好投をたたえた。

◆阪神先発ジョー・ガンケル投手(29)が、首位ヤクルトとのシーズン最終戦でベストピッチを見せた。来日2年目で最長の7回2/3を4安打9奪三振無失点。8回2死一塁で2番手岩崎に後を託すと、大きな拍手に包まれてマウンドを降りた。 「サカモトさんがいい配球をしてくれて、配球通りに投げることもできたね。ホントにいいピッチングができたと思うよ」 今季初めてバッテリーを組んだ坂本のリードに導かれ、ツバメ打線を寄せ付けなかった。圧巻は4回。2番からの好打順で青木、山田、村上を3者連続三振。7回1死一塁では再び村上を空振り三振に仕留め、坂本が山田の二盗を阻止。息ぴったりの“三振ゲッツー”に珍しく右拳を握り、感情をあらわにした。 「『やりかえす』って気持ちはなかったね。シーズン通して何回も戦う相手。悪い時があってもまたイチから新しい気持ちで取り組んでいるよ」 前回10日の登板もヤクルト戦(神宮)で、3回2失点で降板。リベンジに燃えている…と思いきや、いたって冷静だった。7回無失点の高橋に1歩も引かず、これで今季ヤクルト戦は6試合で無傷の2勝、防御率1・77。ツバメキラーとして、クライマックスシリーズにも期待がかかる。 初の10勝はお預けも、ローテの一角として走り続けたことは事実だ。「投手コーチ、ブルペンキャッチャー、トレーナーの方。スタッフが1年間支えてくれたおかげで投げることができたよ」。優しいまなざしで感謝の言葉を並べた。 矢野監督も「完璧じゃない? インサイドも攻めながら丁寧に丁寧に行きながら、球の力もしっかりあった」と手放しでたたえた。泣いても笑っても残り4試合。助っ人の魂の94球を無駄にはしない。【中野椋】

◆ヤクルトは無失点リレーに救われたが、打線は阪神2連戦で0点と沈黙した。2日間とも長打なし。 4番村上はガンケルに3三振と苦しんだ。高津監督は相手投手をたたえた上で「9月の終わりから投手中心にロースコアで負けないゲームをしている。明日は打者に期待したい」と奮起を促した。マジックを1減らし、広島2連戦での本拠地Vに可能性を残した。「一生懸命、目の前のゲームを戦うだけ。もちろんいい形で終わりたいとは思いますけども、正直(神宮で決めようとは)あんまり考えてないです」と足元を見つめた。

◆阪神が痛恨のドローで22日にもV逸の危機に立たされた。前夜は11得点の猛攻で圧勝したが、5回無死一、二塁の好機で無得点に終わるなど拙攻でホームが遠かった。首位ヤクルトとのシーズン最後の直接対決を勝利で飾れず、逆転Vは厳しい状況になった。残り4試合。猛虎よ、死力を尽くせ!10月の甲子園に白いため息が漏れた。0-0の9回2死二塁。土壇場で得点圏まで走者を進めたが、最後は守護神マクガフの9球目高め直球を糸原が打ち上げて左飛。首位ヤクルトとのシーズン最終戦は両軍ともスコアボードに1点も刻むことが出来ずドローに終わった。阪神にとっては絶対に落とせない一戦で痛すぎる引き分け。矢野監督も「どんな形でもいいんで勝ちたかったというのが正直なところ」と、悔しさをにじませた。 前夜の16安打11得点の大勝から一転、序盤から重たい空気に包まれた。大山を2試合ぶりに先発で起用し、前日のヒーロー1番島田、3番近本とそのままの打順で並べたが、先発の左腕高橋の前に打線が沈黙。指揮官も「いい形で(カーブを)使われたかなという感じはあった。球の力もあったし、カーブが良かったからなかなか簡単ではなかった」と振り返った。4回まで無安打に抑えられるなど7回4安打無得点。無情にもゼロが並んだ。 最大のチャンスも不発に終わった。5回には先頭糸原、大山と2連打で無死一、二塁と攻め立てたが、7番小野寺が初球をバスターで右飛。後続も倒れた。矢野監督は勝負手のシーンを「どうしても点を取りたかったらいろいろ考えはありますけど、自分たちがしっかり点を取ろうとした中でやったこと」と説明。積極的なタクトが裏目となってしまった。 首位ヤクルトの優勝マジックは1つ減って「3」になった。22日にも16年ぶりリーグ優勝の可能性が消滅する。「この引き分けは変えられないし、でも残りの試合でこの引き分けがあって優勝できたなというものに変えられるチャンスはまだ残っている。残りの試合で自分たちで引き寄せるように全力で戦っていきます」。ここで振り返っても仕方がない。泣いても笑ってもシーズンは残り4試合。すべて勝利するしか道は開けない。【桝井聡】 ▼阪神の逆転優勝は極めて困難になった。ヤクルトが3勝すれば、阪神の成績にかかわらず終戦。2勝以下に終わった場合にのみ、かろうじて可能性が生まれる。阪神が残り4勝や3勝1分けならヤクルト2勝4敗など、3勝1敗や2勝2分けならヤクルト1勝5敗の場合などで阪神が優勝となる。いずれにせよ、ヤクルトが残り試合を負け越すことを期待するしかない。

◆投手陣が粘って優勝へ1歩近づいた。 ヤクルトは先発高橋奎二投手(24)が7回4安打無失点と好投。打線は4安打無得点に封じられたが、8回清水、9回マクガフと0封リレーで引き分け。優勝へのマジックを1つ減らし、3とした。チームは21日から神宮で広島2連戦を迎え、最短22日に優勝が決まる。連勝で、本拠地のファンの前での胴上げを実現させる。高橋が“前後”に揺さぶった。敵地甲子園でのマウンド。優勝を争う大一番の独特な雰囲気でも落ち着いたままだった。「緊急事態宣言も解けて観客が増えるのも分かっていた。アウェー感でも自分の力に変えるというか。今日は冷静に投げられた」。最速は149キロ止まりだったが、110キロ台のカーブやスライダーを織り交ぜ、130キロ台のチェンジアップも要所で効いた。力感が抜け、打たせて取ることを心がけ、結果的に8奪三振。ストライクゾーンで勝負することが、好投を招いた。 チーム防御率は20年が4・61、19年は4・78と2年連続でリーグワースト。一方で今季は現在3・37と大幅に改善された。その要因は-。今季復帰した伊藤投手コーチは「一番はストライクを取れていること」と分析する。春季キャンプでは、ストライクを意識せずにブルペンで投げる投手陣の姿を疑問に思った。本拠地神宮は他球場に比べて狭いため、本塁打が出やすい。「打者優位のところで、まずは投手有利なカウントを作りましょうというところから」と説明する。無駄な走者を出さないことに加え、どんどんカウントを稼いで、投手自身を楽にさせる。ストライク先行を徹底的にたたき込んだ。 成果は数字に表れている。与四球率は昨季の3・42に対し、今季は2・53。この日の高橋も、4回1死無走者で中野にカーブが抜けて死球を与えたが、四球はなし。コーチ陣の意識改革が、首位を走る投手陣を支える。 マジック3とはいえ、2位阪神とは1・5差のまま。気が抜けない試合が最後まで続く。6年ぶりの優勝へ向けて。成長した投手陣の“強気”で流れを呼び込み続ける。【湯本勝大】

◆ヤクルトは先発高橋奎二投手(24)が7回4安打無失点と好投。打線は4安打無得点に封じられたが、8回清水、9回マクガフと0封リレーで引き分け。優勝へのマジックを1つ減らし、3とした。 ▼ヤクルトは引き分けでM3。ヤクルトの0-0引き分けは5月12日広島戦、9月25日中日戦に次いで今季3度目。0-0引き分けのシーズン最多記録は1リーグ時代の40年翼の4度で、セ・リーグでシーズン3度は今年の中日に並び最多。また、清水がホールドを挙げ、今季のヤクルトは146ホールド。19年阪神の145ホールドを抜いてチーム最多ホールドのセ・リーグ新記録となった。

◆投手陣が粘って優勝へ1歩近づいた。ヤクルトは先発高橋奎二投手(24)が7回4安打無失点と好投。打線は4安打無得点に封じられたが、8回清水、9回マクガフと0封リレーで引き分け。優勝へのマジックを1つ減らし、3とした。チームは21日から神宮で広島2連戦を迎え、最短22日に優勝が決まる。連勝で、本拠地のファンの前での胴上げを実現させる。高橋が強気に攻めた。負ければ0・5差に縮まるマウンド。舞台は敵地甲子園。「緊急事態宣言も解けて観客が増えるのも分かっていた。アウェー感でも自分の力に変えるというか。今日は冷静に投げられた」。149キロの直球を軸に、110キロ台のカーブやスライダーなどを織り交ぜ、緩急で揺さぶった。力感が抜けて8奪三振。4回1死無走者で中野にカーブの抜け球で死球は与えたが、四球は0。ゾーンで勝負することが、好投を呼んだ。 19年は20試合で53与四球と、高橋は制球が課題だった。今季は12試合で23個に改善。今季ヤクルトに復帰した伊藤投手コーチの意識改革が投手陣を立て直した。きっかけは2月のキャンプでのブルペン。伊藤コーチは、投手陣全体にストライクを取る意識が希薄だと感じた。本拠地神宮は他球場に比べて狭く、本塁打が出やすい。「まずは投手有利なカウントを作りましょうというところから」取り掛かった。無駄な走者を出さず、早めにカウントを稼ぎ、自身を楽にする。ストライク先行をたたき込んだ。 成果は数字に表れている。チーム防御率は19年4・78、20年が4・61と2年連続でリーグワースト。一方で今季は3・37と大幅に改善された。与四球率(9イニングあたりの四球数)は昨季の3・42に対し、今季は2・53。投手陣がリズムを作り、攻撃につなげる。その投手陣をベンチから見守る同コーチは「みんな恐れずにというか、ゾーンに投げる率は上がった。それが一番大きい」とうなずいた。 なんとか引き分けるも2位阪神とは1・5差のまま。気が抜けない試合が最後まで続く。6年ぶりの優勝へ向けて、成長した投手陣の“強気”が、流れを呼び込み続ける。【湯本勝大】

◆優勝マジックを4にしているヤクルトは2位・阪神と直接対決。先発の高橋は7回を投げ8三振を奪うなど4安打無失点と好投した。八回から2番手・清水かマウンドに上がった。 重要な一戦で先発を任された6年目の高橋は、甲子園のマウンドで躍動した。150キロに迫る直球とカットボール、スライダー、カーブ、チェンジアップを自在に操った。 高橋は一回から打者9人は直球とカーブを軸にパーフェクト。四回からの2巡目からはチェンジアップを織り交ぜ、阪神打線に的を絞らせなかった。五回には糸原、大山に連打を浴び無死一、二塁。それでも小野寺を右飛、坂本を二飛、ガンケルを空振り三振。六回は1死一塁から近本を二ゴロ併殺打とし、拳を握った。 高橋は今季、開幕1軍を逃したが前半戦途中からローテーション入り。1軍昇格後は奥川と並び安定した投球を続け、チームを支えてきた。試合前時点で3勝1敗、防御率2・76の成績。この日も七回までゼロを並べている。 しかし、打線が相手先発・ガンケルに苦戦。一回は1死から青木が右前打を放ったが山田が投ゴロ併殺打。三回は2死二塁から塩見が空振り三振。七回は1死一塁から村上が空振り三振、一走の山田が二盗失敗の併殺に倒れた。 それでも高橋が崩れなかった。京都・龍谷大平安高出身で2年春には選抜大会で優勝したマウンドでもある甲子園。自信のある球を投げ込んで、阪神打線を沈黙させた。 ◆好投した高橋の話 「今日は先頭打者をださないことと低めに丁寧に投げる事を意識し投げました。大事な試合ですが、何とか7回まで投げれて良かったかと思います」

◆先発した阪神のジョー・ガンケル投手(29)は今季最長の7回?を投げて4安打無失点、9奪三振と好投した。緩急を織り交ぜ、球を低めに集めてヤクルト打線を手玉に取った。 一回、1死から青木に右前打を浴びたが、山田を投ゴロ併殺に。三回は2死二塁とされたが、塩見をスプリットで空振り三振に仕留めた。四回、五回、六回は三者凡退。八回2死からサンタナに内野安打を許し、降板。2番手の岩崎が無失点で切り抜けた。 ガンケルは10勝目をかけて先発したが、打線の援護に恵まれず、2018年のメッセンジャー(11勝)以来、3年ぶりとなる助っ人投手の2桁勝利はならなかった。

◆ヤクルトの先発、高橋奎二投手(24)が7回80球を投げ4安打無失点と好投した。 「先頭打者を出さないことと、低めに丁寧に投げることを意識しました。大事な試合ですが、何とか7回まで投げれて良かったと思います」 優勝へのマジックナンバーを「4」として臨んだ阪神2連戦で、前日19日は0―11と大敗。この日もなかなか打線の援護はなかったが、力強い直球と変化球を制球し、阪神打線から凡打の山を築いた。 白星がつけば2019年に並ぶ自己最多の4勝目だったが、この日はお預け。それでも、8三振を奪う好投でスコアボードに「0」を並べた。

◆ヤクルトは2位・阪神と直接対決を引き分け、優勝マジックを1つ減らして「3」とした。先発の高橋奎二投手(24)が7回を投げ8三振を奪うなど4安打無失点と好投。八回は清水、九回はマクガフが無失点でつないだ。21日はヤクルトが広島(神宮)、阪神は中日(甲子園)と対戦する。 重要な一戦で先発を任された6年目の高橋は、甲子園のマウンドで躍動した。150キロに迫る直球とカットボール、スライダー、カーブ、チェンジアップを自在に操った。 一回から打者9人は直球とカーブを軸にパーフェクト。四回からの2巡目からはチェンジアップを織り交ぜ、阪神打線に的を絞らせなかった。五回には糸原、大山に連打を浴び無死一、二塁。それでも小野寺を右飛、坂本を二飛、ガンケルを空振り三振。六回は1死一塁から近本を二ゴロ併殺打とし、拳を握った。 高橋は今季、開幕1軍を逃したが前半戦途中からローテーション入り。1軍昇格後は奥川と並び安定した投球を続け、チームを支えてきた。この日も七回までゼロを並べ、防御率を2・49とした。

◆阪神は打線が沈黙し、首位ヤクルトとの直接対決で、手痛いドロー。両チームのゲーム差は1・5のままだが、ヤクルトは優勝マジックを一つ減らして「3」となった。 阪神・ガンケル、ヤクルト・高橋両先発投手の緊迫した投手戦となった。四回まで無安打だった阪神は五回、糸原、大山の連打で無死一、二塁としたが、小野寺強攻で右飛。坂本、ガンケルと後続が倒れて無得点に終わった。六回、七回と安打を放ったが、得点できず。九回も先頭の中野が安打で出塁し、近本がバントで送り、1死二塁を作ったが、マルテが一邪飛、糸原が左飛に倒れた。 先発したガンケルは、目標の10勝目はならなかったが、今季最長の7回?を投げて4安打無失点、9奪三振の好投。0-0の九回はスアレスが無失点に抑えたが、打線の援護がなかった。

◆2桁得点を挙げた勢いはどこへやら…。前夜は面白いようにつながり、16安打11得点の猛攻をみせた打線が沈黙。1点が遠い展開となった。 「明日(20日)取って、おもしろい形にするのが、(ヤクルトにとって)一番の怖さだと思う。もう一回、全員でもぎ取りにいきます」 19日に11―0で勝利した後には、そうキッパリと言い切った矢野監督だったが、なかなか得点をもぎ取れなかった。 首位・ヤクルトとの今季最後の直接対決。何としても勝ちたい重要な一戦で大山を「6番・三塁」で2試合ぶりにスタメンに起用。前日にプロ初となる4安打をマークした島田を1番、先制3ランを放った近本を3番に置き、前日同様のつながりを期待した。 だが、ヤクルトの先発・高橋の前にその思惑は散った。今季、ここまで2度対戦して1勝を献上。前回9日に神宮で戦ったときには、勝ち負けこそつかなかったが、5回を1得点に抑えられていた。 その左腕にこの日も三回までパーフェクトに封じられると、四回1死で中野が死球。初めて走者を出したが、近本とマルテが内野ゴロに倒れて無得点に終わった。 五回には先頭の糸原がチーム初安打となる左前打を放つと、大山が右前打でつないで無死一、二塁と初めて得点圏に走者を置いた。だが、小野寺がバスターで打ちにいくも右飛に倒れると、坂本が二飛、ガンケルも空振り三振。九回、先頭の中野が左前安打で出塁、近本の犠打で1死二塁としたが、マルテ、糸原が倒れ、引き分けに終わった。 ヤクルトの優勝へのマジックナンバーがひとつ減り「3」へ。奇跡の逆転優勝にはもうがけっぷち。スタンドからはため息ばかりが漏れた。(菊地峻太朗)

◆阪神のジョー・ガンケル投手(29)は7回2/3を投げて4安打9奪三振で無失点の好投を見せたが、打線は19日の16安打11得点から一転して、5安打。九回1死二塁のサヨナラ機を逃すなど、決定力に欠け、スコアレスドローとなった。ヤクルトのマジックは「3」。試合後の矢野耀大監督(52)の一問一答は以下の通り。 (テレビ) ーー引き分けに終わった 「うちの立場では勝たないと状況的には厳しくなるのは分かっているんですけど、全員で精いっぱい戦った結果なんで、これは変えられないんで、受け止めて、残りの試合やるしかないですね」 ーー五回無死一、二塁で小野寺がバスター 「どうしても点取りたかったから、色々考えはありますけど、自分たちが点を取ろうとする中でやったことなんでね。それは自分自身が受け止めてやっていきます」 ーー九回も、あと一歩 「どんな形でもいいんで勝ちたかったというのが正直なところですけど、先ほども言いましたけど、この引き分けは変えられないし、でも残りの試合で、この引き分けがあって優勝できたなというものに変えられるチャンスはまだ残っているんでね。自分たちで引き寄せるように全力で戦っていきます」 (囲み) ーーガンケルは気持ちも入っていた 「もう完璧じゃない? コーナーもしっかり行って、インサイドも攻めながら、丁寧に丁寧に行きながら、それでも球の力もしっかりあったんでね。大事な試合っていうのはね、ガンケルもよく分かっている中でね。コントロールミスやそういうのも少なくてね、こういうピッチングをしてくれたというのが…うん、こういう試合になったと思う」 ーー相手の高橋もよかった 「カーブがちょっとね、いい形で使われたかなという感じはあったので。そこが普段と変わったところで、球の力もあったし、カーブがよかったから、簡単ではなかったけどね。何とか1点取りたかったなと思います」 ーー2試合無得点で相手打線の勢いを止めた 「それは今後のことなんでね、よく分からないですけど、ピッチャーがよく投げてくれたということですね」 ーー残り4試合 「いや、さっき言った通り、引き分けは帰ってこないんでね。残りの試合で、引き分けがあってよかったなというふうにできるのは僕たちだけなんで。もちろん僕たちが優勝するにはヤクルトの勝敗が関係してくるんで。自分たちだけでは、できない部分もあるけど、自分たちができるのは一戦一戦、勝ちをつなげていくことしかできないんで。はい、そうやっていきます」

◆ヤクルトは2戦連続で無得点に終わったが、負けなかった。先発の高橋奎二投手(24)が7回4安打無失点と好投。2軍監督時代から成長を見守ってきた高津臣吾監督(52)も目を細めた。優勝へのマジックナンバーは1つ減って「3」に。最短で22日にも6年ぶりのリーグ優勝が決まる。 ――負けなかった 「(得点が)0点で負けなかったんだから、よしとしないといけないのかもしれない。奎二(高橋)がよく頑張ったと思います」 ――大事な試合で好投 「彼は気持ちが強い子なので、そういうところがすごく充実していたと思います。気持ちが乗ったピッチングができたのかなと思います」 ――前半戦は出遅れた 「本当は最初から、若手のリーダーじゃないけど、ローテーションに入って、しっかりシーズンをこなしてというところができたら満点かもしれないですけど、こうやって先輩に引っ張られながら、何とか1軍のローテーションに入って頑張っているというのは少しずつですけど、成長しているのかなと感じます」 ヤクルト先発・高橋奎二=甲子園球場(撮影・甘利慈) ――2軍監督時代からずっと期待していた 「ここまでなるとは思わなかったわけではないですけど、こういう姿を見るとうれしいですね。若い頃から鍛えてきてここまで来たわけだから。これで終わりじゃない。また次また次、また来年ってやっていかないといけない。でも、本当に大きくなったなと思います」 ――終盤戦は負けないことに意味がある 「少し考え方としては消極的なのかなと思いますけど、残り試合も少ないですし、勝つことを目標に負けないというのもすごく大事なのかなと思います」 力投する清水昇=甲子園球場 (撮影・水島啓輔) ―清水とマクガフも無失点でつないだ 「すごく難しいと思います。スコット(マクガフ)は最後上位のところだし、清水のところも、一人出るとガラッと雰囲気とかが変わってくるところで、八回をピシャといったのは大きかったですし、スコットは先頭出しても、その後冷静に対処できたのは、彼らがリリーフとしてチームを支えてきた象徴するゲームだったのかなと思います」 ――神宮で優勝 「正直あまり考えていないです。本当に一生懸命、目の前の試合を戦うだけで。もちろんいい形で終わりたいとは思いますけど、あまり考えてないです」

◆優勝を争うチーム同士の、最高の投手戦をみせてもらった。走者が二塁に進んだのは両軍合わせて3度。ガンケル、高橋には拍手を送りたい。 ただ、阪神の立場からすれば、絶対に勝たなければいけない試合。得点するチャンスがなかったか、といえば五回に一度だけあった。連打で無死一、二塁。打席に小野寺を迎えた場面で、阪神ベンチは初球からバスターの策を選んだ。 相手の守備体形を見て、送りバントよりもバスターと感じたのだろう。ならば、小野寺は何が何でも打球を転がさなければいけない。三塁に進めなければいけない。細かなミスを指摘したくないが、優勝を争って押し詰まった状況では、求められるのは結果だけ。走者三塁の状況を作れなかったのは惜しまれる。 阪神OBとして、後輩たちに言いたいのは1つ。優勝の可能性を残した中で試合に出られることを幸せに感じてほしい。優勝争いすらしたことのない選手ばかりなのだから。何が起こるか分からないのが勝負事。最後の最後まで緊張感を持って戦ってもらいたい。(本紙専属評論家)

◆お互い1点も取れずに迎えた最終回。サヨナラ勝利を願う虎党がこの日一番盛り上がった。阪神・中野が2安打3出塁の活躍。スコアレスドローに終わったが、ルーキーがバットで存在感をみせた。 「自分が出塁することでチームの雰囲気も変わるんじゃないかという思いもあったので、なんとか必死に食らいついていきました」 九回先頭、引き分けは頭になかった。勝利だけがほしい試合。ヤクルトの守護神・マクガフに対し、「回の先頭だったので、何としても塁に出る」と気合を入れて打席に立った。 カウント2―2から153キロ直球を捉えた。中前へはじき返して、力強くガッツポーズ。チャンスメークで役割を果たすと、球場全体の雰囲気を変えた。近本の犠打で二塁へ。歓喜のホームインをみんなが信じていた。後続が倒れ、得点にはつながらなかったが、最後まで勝利への執念をみせた。 中野は九回にも中前打。サヨナラのチャンスを作った 四回1死ではそこまで完璧に抑えられていた高橋から死球を受けて、チーム初出塁。六回1死では中前打を放っており、今季33度目のマルチ安打を記録した。これで今季125安打。2001年に赤星憲広が記録した球団新人5位の128安打まであと「3」と迫った。 優勝争いのなか、10月の月間打率・311(61打数19安打)とシーズン終盤で結果を残している。走っては29盗塁で、2位の近本に5個の差をつけてリーグトップを独走。守備でもチームを救う好プレーを見せ続ける。虎を支えているルーキーが、残り4試合に向けて力を込めた。 「負けられない試合が続くので、消極的にならずに積極的に走攻守で攻めていきたい」 この引き分けでさらに虎は追い詰められたが、頼りになる新人は輝きを失わない。優勝の可能性があるかぎり、最後まで強い気持ちで戦い続ける。(菊地峻太朗)

◆両軍のスコアボードに次々とゼロが刻まれ、甲子園の空気もピンと張りつめる。しびれる投手戦は意地と意地のぶつかり合いとなった。大一番で今年イチの快投を見せた阪神・ガンケルは、納得の出来に大きくうなずいた。 「全体的にストライク先行でいいピッチングができた。(捕手の)坂本がいい配球をしてくれて、その配球通りにいいところに投げることができた」 見せ場は七回。1死で山田に右前へはじき返され、4番・村上を迎えた。長打が出れば、先制点を与えかねない場面でもコントロールも気持ちも一切乱れなかった。6球目に内角低めへ直球で見逃し三振を奪うと、同時にスタートを切っていた一走・山田は盗塁失敗。無失点で乗り切り、笑顔で仲間とハイタッチした。 今季最長の7回2/3を投げ、4安打無四球無失点。ヤクルト・高橋との投げ合いに決着はつかず、自身初の10勝目はならなかったが、シーズン最終盤に最高のプレーを披露して虎を負けさせなかった。 「投手コーチとブルペン捕手が一緒になって修正点を考えて取り組んでくれたので、こういう結果につながったと思う」 右腕は周囲の支えに感謝した。残り試合数の関係で登板機会はないとみられるが、まだ戦いは続く。クライマックスシリーズも含め、出番に備えて心身ともにスタンバイしていく。(織原祥平)

◆勝たなあかん!! 阪神はヤクルトに0-0で痛恨のドロー。五回無死一、二塁でバスターを試みた小野寺暖外野手(23)が右飛に倒れ、矢野燿大監督(52)の勝負采配は不発に終わった。ヤクルトの優勝マジックは1つ減って「3」。22日にも阪神のV逸が決まるが、指揮官は奇跡を信じて戦う姿勢を強調した。バットを寝かせたままなら、確実だったかもしれない。だが、寝たまま果報を待つつもりはなかった。勝負のバスターに出たが、力ない飛球でつなげず。たたきたい、たたかなければならなかった最後の直接対決はスコアレスドローに終わり、最短で22日にもV逸だ。采配不発の矢野監督は、責めを負った。 「どうしても点を取りたかったらいろいろ考えはありますけど、まあでも自分たちがしっかり点を取ろうという中でやったことなんでね。それは自分自身が受け止めてやっていきます」 九回も守護神のマクガフを追い詰めた。だが、現実に無得点で終わってしまうと、やはり悔やまれるのは五回だ。5番・糸原が左前打、2試合ぶりスタメン復帰の6番・大山が右前打でつないで無死一、二塁。打席には「7番・左翼」で3試合ぶりにスタメン起用した小野寺が立っていた。 同学年の高橋からは9月9日(甲子園)の初顔合わせで左前適時打を放ち、プロ初打点を挙げていた。確実に走者を進め、1死二、三塁にしたい場面。北川打撃コーチは小野寺が打席に立つ前にネクストの坂本に熱い言葉を投げかけていた。 五回無死一、二塁で小野寺はバスターも右飛。矢野監督の勝負手は不発に終わった 指揮官と井上ヘッドは声をひそめ、マスク越しに何度も会話した。最初はヒッティングの構えを見せていた小野寺だが、二塁へけん制の偽投が入り、バントの構えに変えて、一転して初球を打ちに行った。結果は力ない右飛。続く坂本も二飛。投手のガンケルは空振り三振で、2人の走者は一歩も動けず。様々な思惑が絡み合って選んだ策は、完全に裏目に出た。 矢野監督は高橋について「球の力もあったし、カーブがよかったからなかなか簡単ではなかった」。だからこそ「何とか1点取りたかった」。この試合だけでなく一気にシーズンの流れも奪い返したかったから、強攻に出たに違いなかった。だが、結果的に逆転Vへ後退する事態となってしまった。 1・5ゲーム差は保ったが、優勝へのマジックナンバーは「3」に減らされてしまった。21日に阪神が中日戦(甲子園)に敗れ、ヤクルトが21、22日の広島戦(神宮)に2連勝すると、そこで望みはすべて絶たれる。 「この引き分けがあって優勝できたな、というものに変えられるチャンスはまだ残っているんでね。残りの試合で自分たちで引き寄せるように全力で戦っていきます」 虎将は自らに言い聞かせた。あのワンプレーも0-0ドローも受け止めるしかない。すぐに立ち上がらなければ、すべて終わってしまう。(長友孝輔)

◆ヤクルトは20日、阪神最終戦(甲子園)に0―0で引き分け、優勝へのマジックナンバーを1つ減らして「3」とした。先発した高橋奎二投手(24)が7回4安打無失点、8奪三振と快投。高津臣吾監督(52)の〝秘蔵っ子〟の活躍でスコアレスドローに持ち込む、今季のチームを象徴するような内容で6年ぶりのリーグVへ一歩前進した。最短でのV決定は22日。本拠地での胴上げへ、21日からは神宮球場で広島との2連戦に臨む。 1勝分に匹敵する価値あるドローだ。スコアボードに並んだ0、0、0…。九回2死二塁、マクガフが粘る糸原を153キロの直球で左飛に仕留め、両軍合わせて18個目の「0」を刻むと、高津監督はベンチで力強く手をたたいた。 「点が取れなくても負けなかった。勝つことを目標に、負けないこともすごく大事なこと」 指揮官の前向きな言葉が全てを表していた。2位・阪神との今季最終戦。0-11で大敗した前日に続き打線が振るわず、二塁に走者を進めたのは1度だけだった。2試合連続無得点。それでも投手陣が踏ん張り、優勝マジックを1つ減らして「3」とした。まさに、1勝と同価値の1分けといえた。 大一番で快投を見せたのが、先発を託された高橋だ。自己最多タイの4勝目こそ逃したが、7回4安打無失点と仕事を果たし「アウェーの感じも、自分の力に変えようと思っていた。いい意味で、力を抜きながら投げられた」とうなずいた。 三回まで直球、スライダー、カーブを主体に完全投球。四回の2巡目からチェンジアップを織り交ぜ、的を絞らせなかった。七回1死一塁では大山、小野寺を連続で空振り三振斬り。2軍監督時代から熱心に高橋を指導してきた高津監督は「気持ちが乗った投球ができていた」と称賛した。そんな指揮官が最近、6年目左腕の成長を感じる場面があった。出場選手登録を外れていた9月19日の神宮外苑。ブルペン捕手のミットを借り、高橋のキャッチボール相手を務めると〝直伝の宝刀〟の切れに目を見張った。「チェンジアップが良くなったね。回転が良くなったよ」チェンジアップは高橋が2年目だった2019年に当時2軍監督だった高津監督が西都キャンプで習得を指示したボール。「シンカーみたいに横回転をかけるんだ」と助言された左腕は「今年、やっと自分のものにできるようになった」と明かす。この日もそのボールで、ホームベースの奥行きを巧みに使った。高橋だけではない。奥川、清水、大西、今野ら今季の快進撃を支える監督の〝秘蔵っ子〟ともいえる若き投手陣が、石川、小川、助っ人頼みだった昨季までと違うチームをつくり出している。昨季4・61でリーグ最下位だったチーム防御率は同3位の3・37と劇的に改善した。スコアレスドローは2リーグ制(1950年)以降で最多タイの3度で、チームのホールド数はセ・リーグ記録の146。0-0は、まさしく今季のヤクルトの強さの一端を示すスコアだ。「もちろん、いい形で終わりたい」と高津監督は力を込めた。最短でのV決定は22日の広島戦(神宮)。本拠地での胴上げへ、舞台は整った。(横山尚杜)★リーグ新146ホールド 高橋からバトンを受けた救援陣も無失点で踏ん張った。八回に登板した清水が三者凡退に抑え、自身のプロ野球記録を更新する49ホールド目。これでチームの今季ホールド数が146となり、リーグ新記録を樹立した。九回はマクガフが走者を許しながら無失点。高津監督は「彼らがリリーフとしてチームを支えてきたことを象徴するゲームだった」と賛辞を惜しまなかった。

◆ドローで上等。ヤクルトは険しい山を乗り越えた。素直に評価したい。 2試合連続の無得点で連敗でもしていたら、空気がよどみ、プレッシャーも増すところ。敵地での阪神との最後の直接対決。粘って守ってマジックを減らしたことが、何よりの戦果だ。 またも打てなかったではないか…という声も上がるかもしれない。その点も尾を引くことはないはずだ。なにしろ、ガンケルの投球内容が素晴らしすぎた。 よく腕が振れたフォークに、走りのよいストレート。特にベース板の左サイドには、揺らぎがなかった。つまり右打者の外角、左打者の内角。その一角のギリギリへ、あれほどきっちり決められたら、そうそう打てるものではない。 8回終了時、選手交代を告げた阪神・矢野燿大監督=甲子園球場 (撮影・水島啓輔) 七回1死から一走・山田がスタートを切り、村上が見逃し三振。「ラン・エンド・ヒット」が併殺となった場面も、責められない。フルカウントからの内角低めストレート。村上はボールで四球になると判断した結果だ。ストライクゾーンを明らかに外すこともなければ、真ん中へ甘く入ることもない。手を出せないコースに投げ切ったガンケルをほめるべきだ。 一歩も引かずに投げ合った高橋も、打たれる気配を感じさせないほど好調だった。前回登板の内容が悪く、調整のため中10日も空いての先発となったことが、功を奏した。この時期になんという余裕だろう。首脳陣の思い切った起用法も、相変わらず光っている。 あとはこれまで通り、自信を持って、神宮でじっくり戦うこと。歓喜のときはほどなく訪れると思う。(本紙専属評論家)

◆引き分けではダメなんや! 前日の11得点から1点でいい、この試合に回せないのかなぁ。まさか、1点も取れないなんて。 大一番だった。 試合前、ミラクル逆転Vへ向かうタテジマ軍団の微妙な変化を求めて、甲子園記者席のトラ番キャップ・長友孝輔に電話してみたら…。 「阿蘇山、大変ですよね。ネット上も噴火のニュースで埋め尽くされてますよ。ソフトバンク時代は休日を利用してドライブに行きました。すごくいい所だったので心配です。エッ、甲子園ですか? みんな平常心というか。試合が始まったら、変わってくるんでしょう」 大決戦より大噴火だった。 わがサンスポ編集局にも電話した。世の中で、阪神vsヤクルトより大事件は起きているか? 「テレビも阿蘇の噴火ばかり報じてます。地震同様に噴火って予測できないみたいですね。怖いです」 当番デスク席は白石大地。噴煙のすさまじさも伝えてきた。 子供の頃、家族旅行で阿蘇の噴火口まで行ったことがある。 「すごいなぁ。噴火したらどうしよう」 話していたら、案内係のおじさんが「当分は大丈夫。何十年もここで見ている私が保証する」と優しく教えてくれた。その翌日、ニュースで阿蘇噴火を報じていた。そんなものだ。誰にも分からない。地球の脅威と一緒にしたらいけないのかもしれないが、セパの優勝も最後の最後までもつれて、どうなるか予想困難だ。20日の昼間の時点で、みんなで協力して、入念に計算してみた。もしオリックスが2連勝、ロッテが2連敗したら、24日がオリックスの最短優勝日。あぁ、今思えば空しい計算だった。阪神が4連勝して、ヤクルトが5連敗したら、阪神の最短優勝も24日だった。こちらも、メチャクチャにムシのいい皮算用だった。夢の関西2球団同日Vの可能性だってあるぞ、と大はしゃぎしていた、あの頃が懐かしい。「阪神の優勝紙面、オリックスの優勝紙面、どちらも準備を進めています。全く読めませんが、どちらも最短で24日に決まる可能性があったわけですから」先が読めない、息がつまるような状況でも、白石デスクは力強かった。長い長い日本プロ野球の歴史で、セパ同日優勝は3例しかない。1951年9月23日の巨人と南海、54年10月19日の中日と西鉄、58年10月2日の巨人と西鉄。つまり、関西球団の同日Vに至っては一度もない。それぐらいに奇跡のような話だったのだ。10・24は大阪サンスポ史に残る歴史的な日になる可能性がまだあった時間帯のこと。20日の紙面総括の局次長・酒井哲也とも電話で話した。レース部在籍が長いが、かつては近鉄、阪神担当も経験。近鉄担当時代の88年に、プロ野球史に残る「伝説の10・19ダブルヘッダー」の死闘を目撃している。プロ野球の最終盤の難しさは知り尽くしている。「実は10・24も僕が紙面総括です。運命の日の采配を振るう準備はできていたんですが…」さあ、気を取り直して、計算し直そう。阪神とオリックスの最短優勝日は…。これもプロ野球の楽しみ方です。

◆く~っ、痛い痛い痛い引き分けや~!! 先発ガンケルは7回?を4安打無失点と見事なマウンドだった。そしてそれ以上に俺が感動したのは八回2死からサンタナの内野安打(記録はそーだけど二ゴロエラーやろ~! 糸原しっかり守ったれ~!!)で交代を告げられるのだが、自身の2桁勝利がかかっているのにチームの勝利最優先で納得の表情でマウンドを降りたあの姿…。できることなら勝たせてやりたかったよ~!! ガンケル―岩崎―スアレスを完封リードした坂本にもうなったのだ!! 一方、打線はわずか5安打って…。いやいやここまできて怒ってもむしろ逆効果では? 残り4試合、猛虎打線爆発を信じるのみなのだ!! この引き分けで逆転Vがさらに苦しくなったけど、勝負はゲタをはくまで分からへ~ん!! こ~なったら自力他力なんでもええわ~!! ヤクルトは残り6試合中、巨人2試合、広島3試合なので阪神を応援しつつ、俺は「♪闘魂こめて~大空へ鯉はとぶとぶ真っ赤に燃えて~カープカープカープ広島~読売カープ」と2チームの力にすがりま~す!!

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
ヤクルト
714818 0.597
(-)
M3
(↑1)
6598
(-)
491
(-)
140
(-)
70
(-)
0.255
(↓0.001)
3.370
(↑0.03)
2
(-)
阪神
75559 0.577
(-)
1.5
(-)
4527
(-)
500
(-)
120
(-)
111
(-)
0.248
(↓0.001)
3.350
(↑0.02)
3
(-)
巨人
606120 0.496
(↑0.004)
12
(↑0.5)
2537
(+3)
534
(+2)
166
(+2)
65
(-)
0.242
(-)
3.630
(↑0.01)
4
(-)
広島
596711 0.468
(-)
15.5
(-)
6523
(-)
566
(-)
118
(-)
63
(-)
0.263
(-)
3.830
(-)
5
(-)
中日
546817 0.443
(-)
18.5
(-)
4398
(-)
463
(-)
69
(-)
57
(-)
0.238
(-)
3.210
(-)
6
(-)
DeNA
527116 0.423
(↓0.003)
21
(↓0.5)
4549
(+2)
610
(+3)
135
(-)
30
(-)
0.258
(-)
4.170
(↑0.01)