巨人(6対6)阪神 =リーグ戦20回戦(2021.09.24)・東京ドーム=
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阪神
2010200016701
巨人
00510000061302
勝利投手:-
敗戦投手:-

本塁打
【阪神】マルテ(19号・5回表2ラン)
【巨人】岡本 和真(38号・3回裏3ラン),丸 佳浩(17号・3回裏2ラン)

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◆巨人は3点ビハインドで迎えた3回裏、岡本和の3ランと丸の2ランで逆転に成功する。一方の阪神は5-6で迎えた9回、サンズの適時二塁打が飛び出し、土壇場で試合を振り出しに戻した。その後の攻防は両軍とも無得点に終わり、試合は規定により引き分けに終わった。

◆今季の巨人坂本勇人内野手(32)はここまで18本塁打だが、本塁打を打った試合のチーム勝敗は13勝2敗1分け。 黒星は4月24日広島戦、5月7日ヤクルト戦だけで、6月以降は10戦負けなしだ。今日も坂本が1発を放って勝利に導けるか。

◆阪神は前日23日の中日戦で2点適時打を放った主砲の大山悠輔内野手(26)を8月27日広島戦以来の4番に起用した。 3番はマルテ、5番に糸原を入れた。1軍復帰した佐藤輝明内野手(22)は、2戦連続で「7番右翼」に入った。前日は4打数無安打で降格前から39打席連続無安打となっている。トンネル脱出なるか。

◆阪神ジェフリー・マルテ内野手(30)が先制打を放った。 9月1日中日戦以来の3番スタメンとなった一戦。1回無死一、二塁、1ボール2ストライクと追い込まれながら、左腕メルセデスの内角直球を中前に運んだ。 この適時打で1点をもぎ取ると、なおも無死一、三塁から4番大山悠輔内野手(26)の遊ゴロ併殺打の間に2点目をゲットした。

◆阪神佐藤輝明内野手(22)が2回の第1打席で左飛に倒れ、連続無安打が40打席となり、2リーグ分立後の球団野手最長タイ記録となった。 「7番・右翼」でスタメン出場し、2回1死で打席がまわってきた。フルカウントからの外角125キロの外角低めにバットを合わせたが、力ない左飛におわった。巨人先発メルセデスとは過去3試合で7打数3安打だった。 植田海内野手(25)が、昨年8月7日広島戦第3打席から11月11日DeNA戦第1打席まで記録した40打席無安打の球団野手最長記録に並んだ。

◆阪神大山悠輔内野手(26)がセ・リーグ単独最多となる今季7犠飛を記録した。 8月27日広島戦以来、28日ぶりの4番スタメン。2点リードの3回1死満塁、ライナー性の飛球を中堅に運んだ。

◆4番の一振りで試合を振り出しに戻した。巨人岡本和真内野手(25)が、3点を追う3回2死一、二塁、阪神西勇の初球チェンジアップをバックスクリーンに運んだ。ベンチも大盛り上がりで「わっしょいポーズ」を披露した。 主砲の38号3ランに不振で苦しむ丸佳浩外野手(32)も続いた。2死二塁から内角スライダーを右翼席に運んだ。19試合ぶりの17号2ランで一気に試合をひっくり返した。

◆阪神佐藤輝明内野手(22)が4回の第2打席で空振り三振に倒れ、連続打席無安打が41となり、2リーグ分立後の球団野手最長記録となった。 序盤から激しい打撃戦で、巨人は4回から2番手桜井に交代。1死後、佐藤輝は打席に立ったが、桜井の緩いカーブにタイミングが合わず、フルカウントからも低めに120キロカーブを投げられバットが空を切った。 1軍復帰から2戦連続で「7番右翼」でスタメン出場し、2回1死での第1打席では先発左腕メルセデスに左飛に抑えられた。 これまでの球団最長は、植田海内野手(25)が昨年8月7日広島戦第3打席から11月11日DeNA戦第1打席まで記録した40打席連続だった。

◆4番の一振りで試合を振り出しに戻した。巨人岡本和真内野手(25)が、3点を追う3回2死一、二塁、阪神西勇の初球フォークをバックスクリーンに運んだ。ベンチも大盛り上がりで「わっしょいポーズ」を披露した。この日、37号を放って並んだばかりのヤクルト村上を突き放す、38号3ラン。「打ったのはフォークです。なんとかランナーをかえしたかったので、ホームランになって良かった。まだまだがんばりますよ」とコメントした。 不振で苦しむ丸佳浩外野手(32)も続いた。2死二塁から内角スライダーを右翼席に運んだ。19試合ぶりの17号2ランで一気に試合をひっくり返した。「しっかりと準備ができて、良いスイングができたと思います。岡本さんの作った流れに乗ることができて良かったです。岡本さんありがとうございます」と、年下の主砲に感謝した。

◆阪神西勇輝投手(30)が今季最短となる3回8安打5失点で降板した。 3-0と3点リードの3回。2死走者なしから2番松原に四球を与えると、3番坂本の左前打を許して2死一、二塁。続く4番岡本和に初球チェンジアップをバックスクリーンに運ばれる3ランを浴びた。その後も6番丸に右越えの17号2ランを浴びて試合をひっくり返された。 西勇は14日に「首の寝違え症状」で出場選手登録を抹消され、1度登板を回避。その後は順調に回復し、最短10日となるこの日、出場選手登録された。今季はこの試合まで5勝9敗、防御率3・48。前回10日広島戦(マツダスタジアム)で5勝目を挙げ、プロ通算100勝を達成した。 ○...矢野監督は試合後に西勇と話し込んだ。試合終了後から30分近く話し合った模様で指揮官は「あいつも苦しんでいるからさ、もがいて。丸々3年ローテを引っ張ってくれて、今年思うような投球、結果につながっていないというところでもがいているから」と説明。「話を聞くことで何か少しでも気持ちが軽くなるとか、何かあいつの気持ちがわかるのであれば、ちょっと話をしておきたいなと思った」と続けた。

◆阪神ジェフリー・マルテ内野手(30)が反撃ムードを高める19号2ランを決めた。 3点を追う5回2死一塁、1ボール1ストライクから2番手桜井の真ん中146キロ直球を豪快に振り抜いた。左翼亀井が1歩も動けない大飛球を左中間中段まで運び、重苦しいムードを一変させた。 9月1日中日戦以来の3番スタメンとなった一戦。1回無死一、二塁でも先制打を放っていた。

◆巨人坂本勇人内野手(32)が、王貞治氏に並ぶ通算171回目の猛打賞を達成した。同点の9回1死、阪神の守護神スアレスから右中間への二塁打でサヨナラのチャンスを演出した。 3点を追う3回2死一塁では左前打で、続く岡本和の3ランにつなげた。4回1死二塁は左前へ適時打を放った。 9月は試合前時点で、3割7分9厘、5本塁打、13打点で本塁打、打点いずれも、月別で最多をマークしていた。 セ・リーグでは長嶋茂雄氏、立浪和義氏に次いで、王貞治氏に並ぶ歴代3位タイとなった。 【セ・リーグの猛打賞回数歴代記録】 1位長嶋茂雄=186回 2位立浪和義=175回 3位王貞治=171回 3位坂本勇人=171回 5位金本知憲=166回 6位石井琢朗=164回 7位若松勉=159回 8位山本浩二=158回 9位谷沢健一=154回

◆阪神佐藤輝明内野手(22)がこの日3打数無安打で連続打席無安打が42となり、55年に藤井弘(広島)が記録したセ・リーグ新人の連続打席無安打記録41打席を更新した。2リーグ分立後の球団記録の40(20年植田)も更新した。 9回はサンズの適時二塁打で同点に追いつき、第4打席が回ってきたが、代打島田と交代しベンチへ下がった。 1軍復帰2戦目のこの日も7番・右翼でスタメン出場したが、左飛、空振り三振、左飛の3打数無安打だった。 ▼ルーキー佐藤輝が3打席無安打に終わり、8月22日中日戦の第1打席から42打席連続無安打。2リーグ制後、新人野手で42打席以上無安打が続いたのは、50年山下(阪急)48打席、57年中野(毎日)42打席に次いで64年ぶり3人目。セ・リーグの新人野手では、55年藤井(広島)の41打席を抜くワースト記録となった。また、新人に限らない球団野手の連続無安打記録は20年植田の40打席で、こちらもワースト記録を更新。

◆2位阪神が土壇場で試合を振り出しに戻し、なんとか引き分けた。1点を追う9回表無死二塁、6番ジェリー・サンズ外野手(33)が中堅フェンス直撃の同点二塁打。首位ヤクルトとのゲーム差は0・5に広げられたが、3位巨人とのゲーム差は2を保った。 主将大山悠輔内野手(26)を28日ぶりに4番起用した一戦。序盤は優位に試合を進めた。1回は4番から3番に打順を移したジェフリー・マルテ内野手(30)の先制打などで2得点。3回には大山の中犠飛で3点目を奪った。 だが、首の寝違えから復帰した先発西勇輝投手(30)が誤算だった。3点リードの3回、2死一、二塁から4番岡本和に痛恨の中越え同点3ランを献上すると、6番丸の右越え2ランで勝ち越された。 それでも打線は3点を追う5回、マルテの特大2ランで反撃し、9回に追いついた。 9回裏は守護神のロベルト・スアレス投手(30)が1死満塁のピンチを招いたが、6番丸の三遊間へのゴロに遊撃のドラフト6位中野拓夢内野手(25)が飛びつき、間一髪で本塁封殺。最後は2死満塁で7番中田を遊撃へのハーフライナーに仕留めた。

◆巨人亀井善行外野手が負傷を恐れずスタンドに飛び込んだ。 9回、同点に追いつかれ、阪神の押せ押せムードが球場に漂う。守護神ビエイラの制球が定まらない。なんとか2死一、三塁にこぎつけた。打者近本のカウント1-2からの4球目はファウルゾーンの三塁側エキサイトシート付近へ飛球が上がった。左翼手のベテラン亀井が必死に追う。グラブをいっぱいに伸ばして体を投げ出すも、わずかに届かず。頭から回転しながらエキサイトシートに転がり込んだ。 ベテランのガッツあふれるプレーに勇気づけられたビエイラは、近本を空振り三振に仕留め、勝ち越しは許さずに踏ん張った。

◆2位阪神が3位巨人との接戦をドローに持ち込んだ。中10日で先発した西勇が3点の援護をもらいながら、今季最短3回5失点KO。打線は最大3点差を5回にマルテの2ラン、9回にサンズの適時打で同点に追い付いた。最後は2死満塁ピンチで中野の好守で踏ん張った。2試合連続7度目のドロー。首位ヤクルトが勝ったため0・5ゲーム差と広がった。

◆巨人の守護神チアゴ・ビエイラ投手(28)が、セーブ失敗も、最後は踏みとどまった。右肘の違和感での抹消から1軍復帰後初登板。5日阪神戦以来19日ぶりのマウンドとなった。1点リードの9回から5番手として登場し先頭の糸原にストレートの四球で出塁を許すと、続くサンズに中越えの適時二塁打を浴び、同点とされた。 犠打で1死三塁と勝ち越しのピンチを招いたが、代打糸井を空振り三振、9番坂本に四球を与えた後、1番近本から空振り三振を奪い、勝ち越しは許さず。最後は豪快なガッツポーズを見せた。

◆阪神は1回にマルテの適時打などで2点を先制し、3回に1点追加。巨人は3回、岡本和の38号3ランと丸の17号2ランで5得点。 巨人は4回1死二塁、坂本の左前適時打でリードを3点に広げた。阪神は5回2死一塁、マルテの19号2ランで1点差に迫った。 阪神は9回無死二塁、巨人守護神ビエイラからサンズの適時二塁打で同点。巨人は9回1死満塁のサヨナラ機を生かせなかった。

◆巨人は勝ちパターンに持ち込んだが逃げ切りに失敗した。 1点リードの9回、右肘の違和感明けの守護神ビエイラを投入。21日の1軍再昇格後は初登板だったこともあってか制球が乱れ、ストレートの四球後にサンズに同点打を浴びた。その裏に1死満塁のサヨナラ機を作ったが引き分け。 同点にされた直後の9回1死三塁で、意思確認で自らマウンドまで行った原辰徳監督は「6点でよく抑えたというところ。7点目を両軍が取れなかったというところでしょうね」と振り返った。

◆これぞ巨人の4番の仕事だ。3点ビハインドの3回、岡本和真内野手(25)が打者一巡の猛攻を呼び込む38号同点3ラン。劣勢ムードを振り払い、同日に37号を放ったヤクルト村上をすぐさま引き離した。同点にされた直後の9回には、1死二塁から中前打で好機を拡大。2位阪神相手にサヨナラ勝ちとはならなかったが、4番が打線を活性化させながら存在感を示した。高く舞い上がった打球から目を切った。岡本和が確信した。3点を追う3回2死一、二塁、阪神西勇の初球フォークをかち上げた。貫禄の"確信歩き"で歩みを進めた。バックスクリーンへ、自己最多を更新する38号3ラン。序盤から3点をリードされる、重たい雰囲気を切り裂いた。「なんとかランナーをかえしたかったので、ホームランになって良かった」と、ベンチ前で表情を崩し、わっしょいポーズを披露した。 「伝統の一戦」のカード頭で流れを引き戻す豪快な一撃を見舞った。本塁打王争いで、ヤクルト村上に並ばれてから約20分で、キングの座に舞い戻った。本塁打と打点で2冠に輝いた昨季、「こういう争いをするのも初めてでしたし、こういう感じなんだなというのも思いました」と、タイトル争いの戸惑いも感じていた。1つの年を越え、25歳には見えない存在感も、にじみ出てきた。 ただ、個人の成績より、チームの勝利を何よりも優先する。プロ通算100号を達成しても、4年連続30アーチをかけても、チームへの貢献を常々口にしてきた。「フォア・ザ・チーム」の精神を追求することで、自然と道は開けてくる。 2年連続で打撃2冠を達成すれば、球団では76、77年の王貞治氏以来の快挙となる。1試合1試合、1本1本の積み重ねが、優勝へつながっていく。その先で「岡本和真」がレジェンドに肩を並べる未来も見える。【小早川宗一郎】

◆阪神ジェリー・サンズ外野手(33)が、執念の一打でチームを救った。1点ビハインドの9回無死二塁、ビエイラのスライダーを渾身(こんしん)の力で振り抜いた。思いを乗せた打球は大きな弧を描き、中堅フェンスを直撃する同点の適時二塁打となった。 「ケント(糸原)が塁に出てくれて、カイ(植田)がすぐ盗塁で得点圏まで進んでくれた。素晴らしい仕事を2人がしてくれた。仕事ができて良かったよ」 先頭の糸原が四球で出塁し、代走植田が重圧かかる中での初球で二盗を決め、つないでくれたチャンス。植田の生還を見届けると、両手を突き上げ感情をむき出しにした。 チームの執念が凝縮された9回の攻撃。なおも無死二塁から、佐藤輝に代打島田が送られた。ビエイラの156キロの剛速球を転がし、きっちり犠打に成功。2死三塁で打席に立った坂本は、四球をもぎとり「よっしゃー!」と叫んだ。あと1本は出なかったが、打線一丸で食らいついた。 開幕から何度もチームを救ったサンズも、ここ最近は苦しんでいた。9月はここまで打率1割7分6厘。12日DeNA戦から7試合で25打席に立つも、わずか1安打。この日も第3打席まで快音は響かなかった。「苦しんで全然貢献できていないけど、引きずってばかりもいられない。1打席、1打席、引きずって打席に立つわけにはいかない」。神宮でのヤクルト戦を控えた13日には、休日返上で室内練習場で打ち込んだ。必死に前を見つめてきた。 悲願の優勝へ思いは来日2年目の助っ人も同じ。 「ジャイアンツは勝ち方を知っている素晴らしいチーム。スアローズも絶好調。どの試合も大事になるし、負けられない戦いが続くので、どの試合も全力を尽くして勝てるように頑張っていきたい」。ライバルをリスペクトする心を持ちながら、最後はトップに立つ。【磯綾乃】

◆トンネルから抜け出すことが出来なかった。阪神佐藤輝明内野手(22)が42打席連続無安打で、55年藤井弘(広島)の41打席を抜いてセ・リーグ新人野手のワースト記録を更新した。 1軍復帰2戦目も「7番右翼」で先発したが、左飛、空振り三振、左飛で3打数無安打。9回に打席が巡ってきた場面では、代打が送られた。この試合まで打率4割、3本塁打と相性の良かった東京ドームだが、ノーヒットに終わった。 前日23日中日戦では右翼ポール際に大飛球を放ち、ダイヤモンドを1周したが、リプレー検証の結果、ファウルと判定された。「結果が出ていないのでなんとも言えないですけど、いい当たりも出た」と話していたが、快音は生まれなかった。

◆162キロの剛球が内角をえぐった。守護神スアレスの魂の1球だった。同点の9回2死満塁、カウント2-2から中田の懐に投げ込み、ドン詰まりの遊直。変則回転のライナーを遊撃手中野が体勢を崩しながらグラブに収めた。絶体絶命のピンチを脱し、ナインは笑顔でグータッチした。矢野監督は「みんな、必死の姿で最後までやりきったことが引き分けにつながった。勝ちたかったけど、よくやってくれた」と褒めた。38年ぶりという2試合連続引き分け。ナインの勝利、優勝に懸ける執念が東京ドームの9回裏に「0」を刻んだ。 9回にようやく同点に追いつき、その裏のマウンドにスアレスが上がった。前日23日の中日戦では2失点し今季49試合目で初めてセーブ機会で失敗していた。2日続けて失点しない。それは守るナインも同じだった。1死から坂本の右中間への飛球に左翼寄りに守っていた中堅手近本が必死に走り込んだが、グラブのわずか横をスルリと抜けて二塁打となった。岡本和の中前打で一、三塁。さらに投球間の進塁で二、三塁。首脳陣は亀井を申告敬遠し、満塁策を選んだ。 そのピンチで、前進守備の三遊間へ丸の強いゴロが飛んだ。身長171センチの中野が横っ跳びし好捕すると、本塁へワンバウンド送球で三塁走者をアウトにした。「1点与えたら終わり。自分自身も割り切って守ることができた。(坂本)誠志郎さんがいいカバーをしてくれた」とやや一塁側へそれた送球を、坂本が目いっぱい足を伸ばしてキャッチ。間一髪のタイミングで巨人原監督からリクエストを求められたが、ビジョンに映るリプレー映像でも、しっかり本塁から足を離していなかった。 練習前、矢野監督はナインを集めて訴えていた。「今やれることを。そういうのがつながったものがオレたちの野球だから」。激しい優勝争いの中、もう1度自分たちを見直そう-。9回の攻守には、阪神のやれることが詰め込まれていた。 首位ヤクルトが勝ち、ゲーム差は0・5に広がった。25日に阪神が勝って、ヤクルトが負けても勝率差で首位奪取とはいかない。それでも最大3点差を追いつき、サヨナラ負けのピンチも乗り切ったドロー。優勝へ大きな1試合となった。【石橋隆雄】 ▼阪神の2試合連続引き分けは、83年7月12、13日巨人戦以来、38年ぶり。12日は巨人先発江川が11イニング1/3の力投から角のリレーに対し、阪神は野村から4投手の継投で応戦も3-3。翌日13日は阪神が真弓、北村、笠間、巨人はスミス2、原、中畑と7本塁打が飛び交ったが、5-5に終わった。球団最長は3試合連続で、64年8月21日国鉄戦~同23日大洋戦。なお同年は2度目のセ・リーグ優勝を果たしている。

◆巨人坂本勇人内野手が3安打を放ち、今季8度目、通算171度目の猛打賞。猛打賞の最多記録は張本(ロッテ)の251度で、坂本の171度は王(巨人)に並ぶ歴代8位タイとなった。 また、マルチ安打は今季24度目で、通算では585度目。585度は古田(ヤクルト)に並ぶセ・リーグ10位タイとなり、猛打賞に続いてマルチ安打の回数でもリーグ10傑入りした。なお、マルチ安打の最多記録は張本の855度で、セ・リーグ記録は王の736度。

◆阪神先発西勇輝投手は試合後、矢野監督と約30分間に及ぶ"緊急ミーティング"を行った。今季最短となる3回8安打5失点で降板。3-0の3回2死無走者から松原に与えた四球をきっかけに岡本和にバックスクリーンへ3ラン、丸に右越え2ランと打ち込まれた。 前回10日の広島戦で通算100勝を達成したが、14日に「首の寝違え症状」で出場選手登録を抹消された。最短10日で再登録されて臨んだマウンドは、4回から捕手の梅野とともにベンチに下げられた。 矢野監督は「丸々3年ローテを引っ張ってくれて、今年は思うような投球、結果につながっていないというところでもがいているから。何かあいつの気持ちが分かるのであれば、ちょっと話をしておきたいなと思った」と説明した。

◆途中出場でマスクをかぶった阪神坂本誠志郎捕手がスーパーキャッチで本塁を死守した。 9回1死満塁で丸の打球を遊撃手中野が横っ跳びで好捕。ワンバウンドの本塁送球は少しそれるも、坂本が体を伸ばしてキャッチ。本塁封殺となった。 矢野監督は「誠志郎(坂本)も粘って捕ったんで、本当にこう、みんなで必死に捕りにいったアウト」と絶賛した。

◆2位阪神が3位巨人との「伝統の一戦」を引き分けに持ち込んだ。5-6の9回にサンズの適時二塁打で追い付くと、最後の守りは申告敬遠で満塁策を取った。1死で丸の三遊間のゴロを中野がダイブ捕球から本塁封殺。2死から中田のライナーを再び中野が好捕した。一打サヨナラの場面から2試合連続ドロー。首位ヤクルトと0・5差となったが、この「土壇場力」はこの先に生きてくる!ルーキー中野がスーパープレーで絶体絶命のピンチをしのいだ。9回。守護神スアレスが2戦連続でつかまり1死二、三塁。ベンチは亀井を申告敬遠し、満塁策で丸との勝負を選んだ。前進守備の三遊間へ強いゴロが飛ぶ。抜ければサヨナラ負け-。身長171センチの背番号51は横っ跳びし好捕すると、すぐに起き上がって本塁へワンバウンド送球。三塁走者をアウトにした。「1点与えたら終わり。自分自身も割り切って守ることができた。(坂本)誠志郎さんがいいカバーをしてくれた」。一塁側へそれた送球を坂本が目いっぱい足を伸ばしてキャッチ。間一髪のタイミングで原監督からリクエストを求められたが、ビジョンに流れるリプレー映像でもしっかり本塁から足を離していなかった。 中野の今季15失策は遊撃手でリーグ最多。それでも「とにかく攻める守備を心掛けていました」と打球に食らい付いた。続く中田はスアレスの162キロに詰まり、変則回転のライナーを再び中野が体勢を崩しながら捕ってゲームセット。矢野監督は「みんな、必死の姿で最後までやり切ったことが引き分けにつながった。勝ちたかったけど、よくやってくれた」とナインをねぎらった。 チームは打線が湿り、先発陣も思うように投げられず、22日に首位陥落。前日23日の中日戦ではスアレスがセーブに失敗して引き分けた。「みんなを今すぐ調子を上げさせる力って、残念だけどないんだよ」。特効薬がない中、矢野監督はこの日の練習前にナインを集めて訴えた。「全員主役になるようなチームになれたらいいなと。オレらはチャレンジしてこそ。今やれることを。そういうのがつながったものがオレたちの野球だから」。就任から3年間貫く「全員野球」という原点を思い返そう-。9回の攻守には各自のやれることが詰め込まれていた。 最大3点差を追い付き、サヨナラ負けのピンチも乗り切り、38年ぶりに2試合連続で引き分けた。不屈だったその戦いぶりを残り25試合となったペナント争いに注ぎ込む。【石橋隆雄】

◆阪神近本光司は両リーグ最多の安打数を151に伸ばした。 1回は先頭で二塁内野安打を放って先制のホーム。3回は無死一塁で左前に運び3点目をお膳立てした。9試合連続安打となり、打率3割1分4厘でリーグトップを走る広島鈴木誠の3割1分5厘に肉薄。ただ、同点で迎えた9回2死一、三塁では空振り三振に倒れ、悔しさも残った。

◆阪神スアレスが最終回をなんとか無失点に抑えた。 先頭の松原を空振り三振に仕留めた直後、坂本に初球を捉えられ右中間へ二塁打を許した。岡本和にも中前打を浴び、亀井の申告敬遠で1死満塁のピンチも、中野のファインプレーに救われた。前夜は16試合ぶりの失点で今季初めてセーブ機会で失敗。同戦後に矢野監督は「スアちゃんがいなければこの位置にいない。もちろん、1年間の中でこういうこともね」と話しており、この日も守護神を責めることはなかった。

◆9月24日から敵地東京ドームに乗り込んでの巨人3連戦。阪神にとって、これから優勝への本当の戦いが始まるといっていいだろう。 その前に、23日の中日戦(バンテリンドーム)を触れておきたい。、守護神スアレスが2点リードの九回を守り切れず、まさかのドロー。直後の矢野監督のコメントを聞いて、正直ホッとした。 「いや、まあ、ギリギリね。何とか、踏みとどまってくれたん。これでも大きいと思うんで。負けるんと引き分けじゃ全然違うんでね」 最近は、思うようにならないと、いら立ちを隠せず、感情的になってしまうことが多かったからだ。首位ヤクルトが好調なだけに、本当は〝痛いドロー〟だったはず。だが、同点に追いつかれたことよりも、なおも1死満塁のピンチをしのいだことをプラスに捉えていた。2003年、虎を18年ぶりの優勝へ導いた星野監督の言葉を思い出した。 「選手は、監督の顔色を見ているんや。監督が動揺してしまったらチームに悪影響を及ぼしてしまう。いつ、どんなときもポーカーフェースが大事なんや。しんどいけどな」 現役時代、捕手として星野監督をそばで見てきた矢野監督は「俺は、星野さんみたいになれないけど」と言いつつ、バイブルにしている。24日からの3連戦、負け越せばV争いから脱落危機の原巨人は、なりふりかまわず挑んでくるだろう。「全員の力で勝ち切る」-。負けたとしても翌日に引きずらないぐらいの気持ちで臨めるか、矢野監督の言動に注目したい。(三木建次)

◆阪神・大山悠輔内野手(26)が8月27日の広島戦(マツダ)以来となる4番でスタメン出場する。23日の中日戦(バンテリンドーム)から1軍復帰した佐藤輝明内野手(22)は2試合連続で「7番・右翼」で出場する。 先発は西勇輝投手(30)。前回11日の巨人戦(甲子園)に登板後、首の寝違えで14日に抹消されていた。

◆阪神は一回、ジェフリー・マルテ内野手(30)の3試合連続となる適時打で先制した。「打ったのはストレート。先制のチャンスだったし、打てるボールをしっかりコンタクトすることに集中していたよ。自分の仕事ができてよかったね」と広報を通じてコメント。先頭の近本が二塁内野安打と中野の死球で無死一、二塁。ここで先発・メルセデスの直球を中前にはじき返した。なおも無死一、三塁で、1カ月ぶりに4番で出場した大山の遊ゴロ併殺の間に三走・中野が生還した。 マルテは22日の中日戦(バンテリンドーム)から3戦連続で適時打を放つなど、調子は上向きつつある。

◆阪神・佐藤輝明内野手(22)が二回、左飛に倒れ、不名誉な球団野手ワースト記録に並んだ。植田海が2020年8月7日の広島戦(マツダ)から11月11日のDeNA戦(甲子園)にかけて記録した40打席連続無安打に並んだ。 佐藤輝は前日23日の中日戦(バンテリンドーム)で1軍復帰し、4打数無安打。この日の1打席目も左飛に倒れ、復帰後5打数無安打となった。

◆阪神・佐藤輝明内野手(22)の2打席目となった四回は空振り三振に。球団野手ワースト記録を更新する連続打席無安打は「41」となった。 佐藤輝は二回、左飛に倒れ、植田海が2020年8月7日の広島戦(マツダ)から11月11日のDeNA戦(甲子園)にかけて記録した40打席連続無安打に並んでいた。 また先発の西勇は3点リードの三回に5点を奪われ、逆転を許した。

◆先発した阪神・西勇輝投手(31)は3回8安打5失点で降板した。3-0とリードした三回、2死走者なしから突然崩れた。松原に四球、坂本に左前打で一、二塁のピンチ。続く岡本和にバックスクリーンに運ばれる同点3ラン。さらに、亀井に右翼線二塁打を許し、丸に右越えの2ランを浴びた。 西勇は前回11日の巨人戦(甲子園)に登板後、首の寝違えで14日に抹消されていた。

◆巨人が打者一巡の猛攻で試合をひっくり返した。0-3の三回2死一、二塁で岡本和がバックスクリーンへ同点の38号3ラン。本塁打王を争う村上(ヤクルト)を突き放すと、さらに2死二塁で丸が勝ち越しの右越え17号2ラン。西勇を攻略して5-3と逆転に成功した。 岡本和は「なんとかランナーをかえしたかったので、ホームランになって良かった」。丸は「岡本さんの作った流れに乗ることができて良かったです。岡本さんありがとうございます」と得意の〝後輩イジり〟が飛び出すなど明るいムードが戻ってきた。

◆阪神のサンズが執念のタイムリーを放った。5-6の九回先頭で糸原がストレートの四球で出塁すると、続くサンズの打席で代走・植田が二盗に成功し、無死二塁から巨人・ビエイラの139キロ変化球を捉え、中堅フェンス直撃の適時二塁打をかっ飛ばした。 この試合前までの直近5試合で打率・059(17打数1安打)と不振に苦しみ、この日も六回の第3打席まで無安打だったが、ここぞの場面で意地をみせた。

◆阪神は5-6の九回にサンズが同点二塁打を放って追いつくと、九回1死満塁のピンチで、丸の三遊間への打球を中野が好捕して本塁封殺。中田も遊直に倒れて、執念のドロー劇となった。 阪神は一回、マルテの先制打と大山の併殺の間に加点。三回には大山の中犠飛で一時はリードを3点に広げたが、先発した西勇が誤算だった。 3-0の三回、岡本和に同点3ランを被弾。さらに、丸にも2ランを浴び、3回5失点で降板した。 3-6の六回、マルテの2ランで1点差に詰め寄り、九回、同点に追いついた。この日、矢野監督は不振だった大山を1カ月ぶりに4番で起用。マルテを3番と、開幕時のオーダーに戻した。「7番・右翼」でスタメン出場した佐藤輝は3打数無安打。球団野手ワースト記録の連続打席安打は「42打席」となり、八回の打席では代打を告げられた。首位ヤクルトは中日に勝って、2位阪神とのゲーム差は「0・5」となった。

◆巨人・坂本勇人内野手(32)が3安打で猛打賞をマークし、通算171度目でセ・リーグ歴代3位、プロ野球歴代8位の王貞治(巨人)に並んだ。坂本は「3番・遊撃」で先発。三回に左前打、四回に左前適時打を放ち、九回の第5打席で右中間を破る二塁打を放った。猛打賞のプロ野球記録は張本勲(東映など)の251度。

◆巨人は1点リードで迎えた九回に復帰登板となった守護神・ビエイラが踏ん張り切れず、痛恨のドロー。球団記録を更新する今季17度目の引き分けに終わった。3点を追う三回に岡本和の38号3ラン、丸の17号2ランで一挙5点を奪い、勝ち越しに成功。六回に坂本の左前適時打で一時3点差とリードを広げたが、終盤に追いつかれた。原辰徳監督(63)が試合を振り返った。 -―最後はあと一歩及ばなかった 「そうですね」 -―九回はビエイラが踏ん張り切れず 「まぁ、6点でよく抑えたというところ。しかし、6点もよく取った。でも、7点目が両軍取れなかったというところでしょうね」 -―九回に自らマウンドに向かったが 「意思確認ですね」 -―岡本和の一発は大きかった 「それはもうね。ムードが、風があまりいい風が吹いていないっていう雰囲気で、ヤオマルが、ヤオマルじゃないや、八百板がね。でも、2アウトを取られてからも、よく粘ったと思いますよ」 -―連日指導している丸も状態がいい 「うん。さっき(九回)もスーパープレーみたいなね。そういうことですね」 -―明日から仕切り直して 「もちろん」

◆阪神はジェリー・サンズ外野手(33)の適時打で同点に追いついた直後の九回裏1死満塁で丸の打球を好捕した中野拓夢内野手(25)が本塁封殺を決め、ロベルト・スアレス投手(30)も粘って、ドローに持ち込んだ。試合後の矢野耀大監督(52)の一問一答は以下の通り。 ーー引き分けはどう受け止めているか 「勝ちたかったけどね。必死の姿というのは最後までやり切ってくれたんで。それが引き分けにつながったというのは、うん、勝ちたかったけどよくやってくれた」 ーー中野がスーパープレー 「バウンド合わすのも難しいと思うしね。(坂本)誠志郎も粘って捕ったんで、本当にこう、みんなで必死に捕りに行ったアウトっていうね。もちろん個人個人が素晴らしいんだけど、そういうプレーだったんじゃないの」 ーー同点の場面も植田が走って、当たりが出ていなかったサンズがかえした 「海に関しては信頼は揺るぎないものがあるからさ。ある意味あれは海レベルであれば当たり前に走ってくれるだろうなと思っているんでびっくりは何もしないね」 ーーサンズが一本出たのは今後にも大きい 「状態上げてもらわないとね、どうしても、えー...何て言うの、複数得点というかね。そういうふうになっていかないのでね。輝もジェリーもまあまあ悠輔も含めてだけど、そこらへんが状態を上げていってもらいたいというのはずっとあるんでね」 ーー練習前にミーティング 「自分の中で残り1カ月くらい。26試合のなかで、もう1回、俺も何が出来るのかなって考えて、特別なっことって思い浮かばないし、申し訳ないけどみんなを今すぐ調子を上げてやれる力って残念だけどないんだよ。でも今まで監督させてもらってから大事にしていた部分。それはスローガンはそういう全員、俺がやるっていう。そりゃ選手も裏方さんもね。主人公っていうか、主役になるようなチームになれたらいいなと」 (さらに続けて) 「今まさに苦しい試合だけど、毎日苦しいけど、そのなかで楽しむ努力をするのが、イッツ・ショー・タイムで、まあ挑戦するって。今まで俺らはトップに立っていたから、なんかそれを守らなあかんって、俺自身も思っているし、でも俺らはチャレンジしてこそのチームだって、そういうことも含めてもう1度、みんな思い出してもらいたいなって。どうしても目の前の調子や勝ち負けに偏ってしまうのでね」 (さらに続く) 「俺たちの野球とよく言うけど。そういうことがつながったものが俺たちの野球だから。今やれることを全員で。俺がきょう話すことも1%かもしれないけど、それぞれが1%あげてくれたら、すごいパーセンテージに変わる可能性があるから。だから、俺もみんなの前でこうやって話をさせてもらって、1%変えられたらと思って話をさせてもらってるというようなことを」 --大事な3連戦前に 「これやからこうなったとは別に思っていないし。俺が監督という立場でできることもそうやし、これからも俺は大事だと思っているからずっとそうやって伝えてきているんだけど、どうしてもとらわれちゃうから。みんな頑張ってくれたのも、そうやって言ってくれると何か俺も1%できたのかなと思えるけど、それは俺にはわからない」 --西勇とはどんな話を 「あいつも苦しんでいるからさ、もがいて。丸々3年ローテを引っ張ってくれて、今年思うような投球、結果につながっていないというところでもがいているから。話を聞くことで何か少しでも気持ちが軽くなるとか、何かあいつの気持ちがわかるのであれば、ちょっと話をしておきたいなと思った。話を聞きたいというのがありました」

◆巨人は右肘の違和感から復帰し、5日以来の登板となった抑えのビエイラが6―5の九回に追い付かれ、球団史上最多だった1978年の16度を上回る17度目の引き分けに終わった。原監督は「(投手陣が)6点でよく抑えたというところ」と負けなかったことを前向きに捉えた。 打線も上り調子の丸を筆頭に劣勢から6点を奪い、6―6の九回も1死満塁と最後まで攻めた。原監督は「6点もよく取った。7点目が両軍、取れなかった」と淡々と振り返った。

◆阪神・佐藤輝明内野手(22)は「7番・右翼」で出場したものの左飛、空振り三振、左飛の3打数無安打で九回には代打を送られた。 これで2リーグ制となった1950年以降の新人野手のワーストを更新する42打席連続無安打となった。これまでの記録は55年の藤井(広島)の41打席。阪神の野手としても昨季、植田が記録した40打席を更新し最長となった。「輝もジェリーも悠輔も含めてだけど、そこらへんが状態を上げていってもらいたいというのはずっとあるんでね」と矢野監督は試合後、主軸の奮起を促していた。

◆劇的なシーン、プレーの連続を喜んでばかりでいいのか? 守護神スアレスが2試合連続で打たれた。これは見過ごせない。通算92勝をマークし、阪神でのコーチ経験も豊富な本紙専属評論家・上田二朗氏(74)は「スアレスは心配いらない」と断言。それよりも、垣間見えた油断を指摘した。「隙を見せるな」-。 ハラハラ、ドキドキの九回の攻防は、死闘、激闘だった。が、阪神サイドからみれば、スアレスは大丈夫? の不安を拭い去ることはできない展開になってしまった。 前日(23日、中日戦)が九回に2点差を守れず、この夜も九回1死満塁の大ピンチを招いてしまった。結果は何とかゼロで抑えたのだが-。 上田氏の見解は「全く心配なし」だった。 「球威は、普段と変わっていなかったし、キレもあった。ツーシーム、チェンジアップも問題はない。守護神でも年中、完ぺきに抑える投手なんて見たこともない。ヒットを打たれた時も最終的にゼロに抑えればいいわけで、この日のスアレスはその仕事を果たした。近本が坂本の(右中間への)打球を捕球していれば、もっとすんなり抑えた。中日戦も勝ち越しは許さなかったわけだから、この程度でシーズンを託した守護神を責めてはいけない」 これまでほぼ完ぺきだったスアレスが、2試合連続で塁上を賑わせたことで噴出した不安視する声を全否定し、「この先も守護神を任せればいい」と言い切った。 その一方で、上田氏が言及したのは油断。三回、突如崩れた先発・西勇だ。 「併殺で2死無走者になって、笑みを浮かべていた。油断があったのでは。そこで松原に四球。制球抜群のエースらしくないミス。しまった、と慌てて、各打者にストライクから入るから、初球を次々と捉えられてしまった。西勇レベルの投手としては、もったいない」 そして、九回の同点打のサンズの走塁も。 「二塁ベース上で大喜びしていたが、返球悪送球があり、三塁へ進めていた。これも油断があったと責められても仕方がない」 TG戦の歴史に残りそうな名勝負だったが、その中に垣間見えた油断。優勝を狙うチームだからこそ、の指摘だ。隙を見せている場合ではない。

◆植田のスピードと思い切りの良さが執念ドローを〝アシ〟ストした。5-6の九回先頭で糸原が四球を選び、代走で出場。続くサンズの初球ですかさず二盗に成功し、中堅フェンス直撃の二塁打で同点のホームを踏んだ。価値ある今季9盗塁目に「初球からいける準備をしっかりしました」と胸を張り「(走力が)こういう展開で生きてくるので、自分の仕事をできるようにやっていきます」。自慢の快足で次こそ勝利に貢献する。

◆1本が遠い。2試合連続でスタメンを任された佐藤輝だったが3打数無安打。昨季、植田が記録した40打席を更新し、球団野手ワーストの42打席連続無安打となった。 二回は低めの変化球に左飛。四回はカーブにタイミングを外されてバットが空を切り、六回は高め直球に差し込まれ左飛に倒れた。同点に追いつきなおも無死二塁の九回は代打を送られ、ベンチで必死に声を出すことしかできなかった。 これで球団ワーストに加えて、2リーグ制となった1950年以降の新人野手のワースト記録だった1955年の藤井弘(広島)の41打席も更新。矢野監督は「状態を上げていってもらいたいというのはずっとある」と復調のときを待つ。まずは1本。一度、「H」ランプがともれば、潮目は変わるはずだ。

◆首の寝違えで抹消後、再登録即先発した西勇は今季最短の3回8安打5失点でKOされた。3-0の三回2死から、岡本和の同点3ラン、丸の勝ち越し2ランはいずれも初球を痛打されるなどあっさり逆転を許した。 試合後にはベンチ裏で20~30分ほど、矢野監督と異例の〝二者面談〟。指揮官は「結果につながっていないというところで、もがいているから。少しでも気持ちが軽くなるとか、あいつの気持ちがわかるのであれば、ちょっと話をしておきたいなと思った」と説明した。

◆痛恨のドローに終わった。巨人は24日、阪神20回戦(東京ドーム)で序盤に先行されながら一発攻勢で逆転したが、最大3点のリードを追い付かれ、球団最多となる今季17度目の引き分け。6-5の九回、右肘違和感で出場選手登録を抹消され、この日が復帰登板となった守護神のチアゴ・ビエイラ投手(28)が同点打を浴びた。首位・ヤクルトとのゲーム差が2・5に広がり、原辰徳監督(63)は仕切り直しを強調した。 打ち上げられた打球は無情にもセンターのフェンスに直撃した。6-5と1点リードで迎えた九回無死二塁で、ビエイラのスライダーをサンズが一閃。中堅手・丸が捕球体勢に入る必死のフェイクを入れたが、二走・植田に同点のホームを踏まれてしまった。 「6点(目まで)でよく抑えたというところ」 原監督にとっては帰ってきた守護神が誤算だった。5月から外国人のプロ野球記録となる32試合連続無失点を達成したが、右肘の違和感で9日に出場選手登録を外れた。21日に昇格もここまで登板はなく、この日が19日ぶりの実戦だった。先頭を四球で歩かせ、二盗を許すと、続くサンズが同点打。犠打で1死三塁となったところで原監督は自らマウンドに向かい、ナインの鼓舞と守備隊形の確認。勝ち越しこそ許さなかったが、ぶっつけの守護神は明らかに本調子ではなく、阪神に押し切られてもおかしくない展開だった。ゲームプランはすでに序盤に狂っていた。メルセデスが3回3失点でKO。三回に岡本和、丸の一発で逆転し、四回には坂本の適時打で6-3と押せ押せムードも、五回に2イニング目の桜井がマルテに2ランを浴びて詰め寄られていた。指揮官が「6点もよく取った。7点目が両軍取れなかったというところ」とした通り、復調気味の打線は責められない。九回1死満塁のサヨナラのチャンスでは丸、中田が相手の遊撃手・中野の美技に連続で阻まれるなどツキもなかった。これで今季の阪神との対戦成績は9勝9敗2分けと全くの五分。伝統の一戦らしい白熱した戦いが続く。「仕切り直しか」と問われた指揮官は「もちろん!」と即答。残り5試合となった直接対決の行方が、そのまま順位に直結しそうだ。(伊藤昇)

◆高々と舞い上がった打球が東京ドームの左中間席に飛び込んだ。17試合ぶりに3番に座ったマルテが自身にとっても、チームにとっても、7試合ぶりの一発となる19号2ラン。2安打3打点の大暴れで、敗色濃厚だったゲームを引き分けに持ち込む原動力となった。 「勝ってもないですし、負けてもないですし、難しいですけど。(自分の)仕事はできたかなと思います」 まずは一回無死一、二塁。メルセデスの直球を中前にはじき返した。3試合連続の適時打となる先制打を放つと、次は西勇が逆転を許し、3-6で迎えた五回だ。 2死一塁、カウント1-1からの3球目。「打席の中でしっかりと集中できたよ」。2番手・桜井が投じた、ど真ん中の直球を見逃さなかった。久しぶりのラパンパラで三塁側の虎ベンチは大盛り上がり。この一発が、沈みかけていたチームを再び奮い立たせた。 この日、大山の4番復帰とともに、代役で4番を務めてきたマルテも1日の中日戦(甲子園)以来となる3番へ戻った。3番・マルテ→4番・大山の並びは34試合ぶり。開幕から首位を突っ走っていたときの打順だ。本人は「どこでも、3番でも4番でも(自分は)チームがしっかりと活躍してくれるっていうところで活躍できるかなと思っています」と無関係を強調したが、いきなり一発を含む3打点。6試合連続3得点以下だった虎打線を、実に14試合ぶりの6得点と活気づかせたのは「3番・マルテ」だ。 矢野監督は「(打線は)状態上げてもらわないと複数得点というか、そういうふうになっていかない」とさらなる奮起を期待。マルテも「残りの試合、しっかりと勝っていきたい。20何試合(25試合)と少ないですけど、そのなかで自分のやれることをしっかりやって、できる限りの試合をしっかりと勝てるように貢献したい」と叫んだ。後ろを打つ大山やサンズ、佐藤輝が本来の調子を取り戻すまで、〝居心地のいい〟3番で打線を引っ張るつもりだ。(三木建次) ◆21試合ぶり4番復帰の阪神・大山は最低限の仕事 8月27日の広島戦(マツダ)以来、21試合ぶりに4番に復帰した大山は3打数無安打も、三回に中犠飛で1打点を記録した。ただ、1-0の一回無死一、三塁では遊ゴロ併殺の間に2点目(打点はなし)と、犠飛を合わせて〝最低限の仕事〟。得点圏打率はいまだ・198だ。主砲の復調は優勝を争うチームの結果に直結する。矢野監督は佐藤輝、サンズだけでなく「悠輔(大山)も含めて」調子を上げていって欲しいと話した。

◆追いついた! 耐えた! 2位の阪神は東京ドームで3位の巨人と6-6で引き分けた。九回に追いつき、その裏、1死満塁の危機で遊撃の中野拓夢内野手(25)が三遊間の打球に飛びつく超ファインプレーを見せ、執念ドロー。試合前にミーティングを開き、「チャレンジ」を訴えた矢野燿大監督(52)の思いにナインが応えた。最短26日に自力優勝の可能性が消滅する危機も、チーム一丸、勝って乗り越える!! 体を投げ出し、グラブを伸ばしてつかむ。起き上がった中野の精いっぱいの送球は少し逸れ、難しいバウンドに。ゲームの終わりを誰もが予感したが-。見えない糸でつながっているかのように、目いっぱいに足と腕を伸ばした坂本のミットに白球は吸い込まれた。「自分たちの野球」を再確認した夜、奇跡のようなスーパープレーでドローをつかんで、矢野監督は胸を張った。 「もちろん勝ちたかったけどね。でも、みんなの必死の姿というのは最後までやり切ってくれたんで。それが引き分けにつながったというのは、勝ちたかったけどよくやってくれたな、という」 2夜連続ドローでも、追いつかれた前日とは違う。全員で引き分けてみせた九回の攻防だ。誰の力が欠けても黒く染まっていた星だったが、何と言っても中野に尽きる。 6-6の九回1死二、三塁で満塁策をとり、打者は丸。三遊間ど真ん中を襲った痛烈なゴロを、やや前進守備だった遊撃・中野が驚異的な反応でダイビングキャッチし、捕手の坂本が送球をミットにおさめた。巨人が、足が本塁を離れたとリクエストしたが実らない。ナイン、全員の執念が実って、最後は中田の遊直も中野がつかんだ。 中野は「(坂本)誠志郎さんが、非常にいいカバーをしてくれた。引いて守っても意味がないと思ったので、とにかく攻める守備を心がけていこうという気持ちはありました」と胸を張った。矢野監督も「バウンドを合わすのもなかなか難しいと思うしね。(坂本)誠志郎も粘って捕ったんで。本当にこう、みんなで必死に取りにいったアウト」と激賞だ。最大3点、九回1点のビハインドも全員で向かっていった。九回先頭の糸原が四球で歩くと、代走・植田が二盗を決め、不振にあえぐサンズの10打席ぶり安打&40打席ぶりの長打となる中越え二塁打で、同点とした。試合前、矢野監督はナインを集め、思いを伝えていた。「今まさに苦しい試合だけど、そのなかで楽しむ努力をするのが(スローガンの)『イッツ・ショー・タイム』。俺らはチャレンジしてこそのチームだって。もう1度、みんな思い出してもらいたいなって」。追われる立場から、追う側に。開幕時のように4番に大山を据え、再出発の日とした。首位ヤクルトの連勝は止まらず、0・5ゲーム差。25、26日と巨人に連敗し、ヤクルトの連勝が続けば、最短であす26日に自力Vが消滅する危機。全員で思いをつなげ、戦っていく。「俺がきょう(ミーティングで)話すことも1%かもしれないけど、それぞれが1%上げてくれたら、すごいパーセンテージに変わる可能性がある」。指揮官が動き、全員の心が動いたドロー。苦境から、矢野虎の反発力を見せる。(長友孝輔)◆九回、出場9試合ぶりの打点となる中越え適時二塁打を放った阪神・サンズ 「仕事ができてよかった。負けられない戦いが続く。どの試合も全力を尽くして勝てるように頑張っていきたい」

◆巨人の苦しさが伝わってきた。追いつかれても仕方がない? そんな展開に陥っていたからだ。 九回に登板したビエイラは、実に19日ぶりの復帰マウンド。優勝を争うチーム相手で、しかも1点リードの状況ではさすがに無理がある。 それもこれも、先発のメルセデスの三回降板が発端だ。1カ月も白星から遠ざかり、勝ちたい焦りからか、ボールが中へと集まっていた。原監督の投手交代の決断も早く、これが今季のスタイルなのだろう。 ただ、残る6イニングを考えたら逃げ切るには長すぎた。現状のリリーフ陣で頼りになる畠を早めに出さざるをえなくなり、八回も中川に託さざるをえなかった。そうなるとビエイラを型通りにコールせざるをえない。えない、えない...の連鎖で、追い込まれていった感じがする。 勝利への比重の多くは先発投手が占める。先発がゲームをつくりさえすれば、打線はなんとか得点を取れる状態に戻っただけに、巨人ベンチはその思いを強くしたはずだ。巨人と阪神がつぶし合うと、追い風に乗るのはヤクルト。貯金を稼いでいる下位3チームとの対戦を計17試合も残していることを、付け加えておきたい。(本紙専属評論家)

◆これぞ、伝統の一戦だ。九回の中野の超超超超ファインプレー、見ました。捕って、すぐにバックホーム。捕手・坂本もアキレス腱が切れるんじゃないかと、心配になるぐらいに足を伸ばして逆シングルでナイスキャッチ。永遠に語り継がれそうな、すごいシーンだった。「令和の牛若丸」。ここに降臨、です。吉田義男さんの再来です。 実は、この中野に対して、開幕前からずっと「令和の牛若丸」と言い続けていた方がいる。MBSの赤木誠アナウンサー。自身が出演するCSのタイガース番組でも連呼して、「彼はすごい。何とか『令和の牛若丸』を世の中に定着させたい」と熱く語っていた。 だから、22日付のサンスポの3面を見た赤木アナは大喜び。そう、見出しが「令和の牛若丸」になってましたもんね。この夜の守備で証明されたわけです。 と、ツラツラ書いている筆者も、実際に守っている「昭和の牛若丸」は見たことがない。「捕るが早いか、投げるが早いか」と評された、目にもとまらぬ異次元の守備。「一度でいいからナマで見たかったです」と監督時代の吉田さんに言ったら、「別に普通に守ってただけでっせ」と軽くかわされたっけ。 でも、これぐらい緊迫感のあるGT決戦をしてくれたら、取材する我々だって満足だ。東京ドームが至福の空間に感じられた。 実は東京ドームでの伝統の一戦は約4カ月ぶり。その間にセ・パ交流戦があって、オールスターがあって、東京五輪で稲葉ジャパンが金メダルを獲得して...。 春爛漫だった季節が、夏を飛び越え、今は秋。まだまだ先は長いぞと思っていたあの頃。まさか、次の対戦が4カ月も先とは、気付いていなかった。秋の対戦が、優勝の行方を左右することぐらいは予測できたが。 歴代のトラ番は口をそろえる。シーズンが押し詰まっての東京ドームでいい思い出はほとんどないなぁ、と。 当番デスクは堀啓介。星野阪神の優勝も、岡田阪神の優勝も、最前線で担当していた。そんな強運の持ち主も、この話題では景気のいい記憶が見つからない。 「毎年、春先の東京ドームは打ち合っても負けないのに、秋口になるとやられるんですよね。一番印象に残っているのは、やっぱり2008年。独走状態だったのに、巨人に猛烈な勢いでの追い上げられ、9月の東京ドームで3連敗。痛恨のV逸でした」 運動部長・大澤謙一郎も、ベテラン・三木建次も、聞かれれば真っ先に思い出す、悪夢の2008年。みんな、そろそろ忘れろよ、と言いたくなるが、それだけ衝撃度は大きいのだろう。 キャップ長友孝輔は、08年は入社していない。それでも、若きトラ番時代の秋の東京ドームは悪しき舞台だという。 「2013年だったと思います。好投の能見さん(現オリックス)が九回に勝ち越し点を奪われて、ベンチでグラブを叩きつけたんです。あの冷静な方が...」 居心地の良くない東京ドーム記者席からの電話の声も、どこか沈みがちになっていた。 でも、この試合を見せられたら、次の日がまた楽しみになってくる。 いざ、東京ドーム決戦第2ラウンド。デーゲームだ。知ってますか、今季、ビジターのデーゲームの勝率を。17勝2敗2分。驚異の・895。ほぼ勝ちます。データ通りなら。

◆中野! 中野! 中野拓夢さん、あなたは本物中の本物のプロ野球選手やー!! 九回1死満塁の阪神サヨナラ負けの大ピンチ! 丸の打球は三遊間を抜けてジ・エンドと思った次の瞬間、ショートの中野がダイビングでゴロを捕球するや、超高速でバックホームしてアウト!! 超、超、超ミラクルファインプレー!! プロ野球の世界でルーキーでレギュラーを死守してるってもちろんスゲーけど、精神的にも肉体的にも間違いなくズタボロだかんね~。それをはね返す『強さ』。本日、貴方をプロ中のプロ野球選手に認定させていただきます...なのだ!! 23日の中日戦の引き分けは守護神スアレスが打ち込まれてモヤモヤがあとを引いたけど、本日の引き分けにはこの先の光が見えたのだ!! 3回でKOされた西勇はこの悔しさをCS、日本シリーズで晴らしてくれー!!

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
ヤクルト
584215 0.580
(↑0.004)
-
(-)
28507
(+3)
427
(-)
116
(+1)
66
(-)
0.259
(-)
3.490
(↑0.04)
2
(-)
阪神
63487 0.568
(-)
0.5
(↑0.5)
25466
(+6)
455
(+6)
106
(+1)
100
(+1)
0.250
(-)
3.570
(↓0.02)
3
(-)
巨人
574617 0.553
(-)
2.5
(↓0.5)
23491
(+6)
455
(+6)
152
(+2)
62
(-)
0.248
(↑0.001
3.590
(↓0.02)
4
(-)
中日
475915 0.443
(↓0.005)
14
(↓1)
22358
(-)
399
(+3)
63
(-)
54
(-)
0.240
(-)
3.190
(-)
5
(-)
DeNA
465914 0.438
(↓0.004)
14.5
(↓1)
24476
(+2)
528
(+9)
120
(+1)
25
(-)
0.257
(↓0.001)
4.220
(↓0.03)
6
(-)
広島
456111 0.425
(↑0.006)
16
(-)
26430
(+9)
496
(+2)
97
(+1)
52
(-)
0.259
(↑0.001)
3.920
(↑0.02)