阪神(☆3対0★)広島 =リーグ戦13回戦(2021.08.15)・京セラドーム大阪=
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広島
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阪神
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勝利投手:秋山 拓巳(8勝4敗0S)
(セーブ:岩崎 優(1勝3敗1S))
敗戦投手:大道 温貴(4勝3敗0S)

本塁打
【阪神】近本 光司(7号・1回裏ソロ)

  DAZN
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◆阪神は初回、近本の先頭打者本塁打で幸先良く先制に成功する。そのまま迎えた3回裏には、サンズの適時打で1点を加点して、リードを広げた。投げては、先発・秋山が5回無失点7奪三振で今季8勝目。敗れた広島は、先発・大道が試合をつくれず、打線も中盤までの好機を生かせなかった。

◆今季の阪神は86試合を消化して佐藤輝明内野手(22)が20本塁打、ジェリー・サンズ内野手が(33)が19本塁打。20発以上が2人となれば10年ブラゼル、城島以来だが、チーム90試合以内に記録すれば04年金本、アリアス以来、球団17年ぶりとなる。

◆阪神近本光司外野手(26)が負ければ首位陥落の一戦で先頭打者弾を決めた。 両チーム無得点の1回裏、3ボール1ストライクから右腕大道の甘く入った147キロを右翼席に運んだ。 「打者有利なカウントでしっかりと自分のスイングをすることができました。先制することができて良かったですし、まだまだ打てるように頑張ります」 4月21日巨人戦以来、今季3度目の先頭打者弾。1ゲーム差の2位巨人がデーゲーム中日戦に勝利した状況で、今季7号ソロからナインを盛り上げた。

◆阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)が、広島戦の試合前に"表彰"された。 試合前の声出し役を務めた坂本が「それでは表彰式を行います、テル!」と言うと「賞状 三振数優勝 佐藤輝明殿 あなたはプロ野球の歴史上 新人最多三振数121の記録を更新したことをここに表彰します」と読み上げた。さらに「どんどん記録をのばして、断トツ1位になってください。ですが、フルスイングはやめないでください。三振を気にするより、チームの勝利に貢献するホームラン、たくさん打ってください!」と伝えると、ナインが拍手を送る中、佐藤輝は賞状を受け取った。 坂本によると賞状のストックは3枚残っており、「欲しい人は活躍してください!」。最後は佐藤輝が「みんな、どんどん振っていきましょう!」と締め、和やかなムードに包まれた。 佐藤輝は後半戦開幕ゲームの13日広島戦で、プロ野球新人単独最多の122個目の三振を喫していた。 表彰式の模様は球団公式インスタグラムで公開されている。

◆阪神秋山拓巳投手(30)に、一瞬ひやりとするアクシデントが起きた。 1-0の3回2死二塁、4番鈴木誠の打球が秋山を強襲。右上腕部付近に当たった。 福原投手コーチとトレーナーが急いで駆けつけ状態を確認。秋山はマウンドから試投すると問題ない様子で、投球を再開した。 直後2死一、三塁のピンチで、坂倉を1ボールから直球で遊ゴロ。アクシデントをものともせず、無失点で切り抜けた。

◆阪神メル・ロハス・ジュニア外野手(31)は約3カ月ぶりの打点を記録した。2点リードの8回裏1死一、二塁、島内から一、二塁間を破るタイムリーを放った。 来日初アーチ、初適時打を記録した5月18日ヤクルト戦以来の打点。後半戦初戦から3戦連続スタメン起用され、前日14日広島戦は2安打。いよいよ本領発揮の気配が漂う。

◆阪神は初回近本の右越え7号ソロで先制した。3回にはサンズの中前適時打で1点を追加した。広島は3回まで毎回安打も無得点。 広島は4回1死一、二塁の好機をつくるも得点には至らなかった。阪神は4回から6回まで無得点。秋山は5回無失点で降板した。 阪神は継投でリードを守り抜きカード勝ち越しを決めた。秋山が8勝目。岩崎が今季初セーブを挙げた。広島大道は3敗目。

◆阪神岩崎優投手(30)が、今季初めて9回のマウンドに上がり、1安打無失点で今季初セーブを挙げた。 侍ジャパンとして東京五輪で金メダルを獲得してから初登板。3点リードの9回にマウンドに上がった。先頭の林はスライダーで泳がせ二ゴロ。続く西川には初球を中前に運ばれ暴投で二塁進塁を許したが、代打上本を直球で遊ゴロ。最後は「あと1人」の拍手が起こる中、代打松山を139キロ直球で見逃し三振に仕留めた。 守護神スアレスが、一時帰国した影響で現在調整中。後半戦開幕は「8回の男」だった岩崎が、代役守護神を務めることになった。いつもと違う持ち場でもしっかり仕事を果たし、梅野らナインとグラブタッチで勝利を喜んだ。

◆セ・リーグ首位の阪神と5位の広島が対戦。 阪神は初回に近本の右越え本塁打で先制。3回にはサンズの中前適時打で、8回にもロハスの右前適時打で追加点をあげ、5投手の継投でリードを守り抜きカード勝ち越しを決めた。5回無失点で降板した秋山が8勝目。 広島は3回まで毎回安打も無得点。4回には1死一、二塁の好機をつくるも得点には至らず。阪神の投手陣を最後まで崩せず敗れた。

◆阪神岩崎優投手(30)が、無言のヒーローインタビューでファンの爆笑を誘った。 今季初セーブを挙げ、先頭打者本塁打を放った近本とともにお立ち台へ。侍ジャパンとして金メダルを獲得した東京オリンピック(五輪)で学んだことを1つ教えてほしいと、インタビュアーから聞かれた時だった。長らくうつむきながら考えると、最後はインタビュアーの方を見て無言でうなずいた。そんな岩崎の姿にファンは爆笑しながら大きな拍手を送った。 ? -第1打席。どんな思いで 近本 今日も勝たないといけない試合だったんで、とりあえず初回から先頭から出るというのを意識して。なんか今日は打てそうな気がするなあと思っていたんで、振り切ってよかったなと思います。 -振り切った打球。感触は 近本 けっこう先の方で、角度がついたんで大丈夫かなと思ったんですけど、けっこうギリギリで、まあ入ったので良かったです。 -1番打者として初回は強い意識 近本 試合の流れとか勝敗を決めるものだと思っているので。また今日も1試合の中で一番大事な仕事だと思っているので、他の打席も大事ですけど、一番集中して入っています。 -1番としての貢献をどう感じている 近本 チームが勝ってそれが僕の中で一番うれしいと思いますし、また、今日はけっこうしんどい試合でしたけど、もっともっと野手陣が打って、点を取って勝てる試合を1日でも多くやっていきたいと思います。 -投手陣の踏ん張りも 近本 そうですね秋山さんが踏ん張って踏ん張ってくださったし、中継ぎ抑えはすごく良い仕事をしてくださって、本当に今日は勝ててうれしいなと思います。 -岩崎投手、東京五輪からおかえりなさい。米国との決勝戦以来の接戦で登板 岩崎 しっかり自分の仕事ができてほっとしてます。 -久しぶりに阪神ファンの前で投球 岩崎 いつも通り、はい、マウンドに上がりました。 -東京五輪の緊迫した場面で学んだことは 岩崎 すごくたくさんのことを学ばせていただきました。ここでは語りきれないので、はい、ちょっと、またどこかで(笑い)。 -言える範囲で1つ 岩崎 ...。(数秒うつむきながら考え、無言でうなずく。ファンからは笑いと大きな拍手) -去年はプロ初セーブ。緊張感で記憶がないと言っていたが、今日はプロ3セーブ目 岩崎 みんながいい形でつないでくれて、8回の裏に1点追加してくれたんで、すごく自分も落ち着いてマウンドに上がることができました。 -最後におふたり、ファンへメッセージを 近本 本当に後半戦始まって1試合でも多く勝って、優勝目指して頑張っていきます。応援よろしくお願いします! 岩崎 目の前の試合をベストを尽くして、1球1球勝てるように、みんなで100%の力で1試合1試合戦っていきますので、ご声援のほどよろしくお願いします。

◆阪神メル・ロハス・ジュニア外野手が約3カ月ぶりの打点でダメ押しした。2点リードの8回裏1死一、二塁、2ボール1ストライク。島内の148キロ直球をとらえ、一、二塁間を破るタイムリーを決めた。 「2ボールでちょっと大きいのを打とうと狙いすぎた。大きいのは打てなかったけど、どうにか追加点を取れて良かった」。チームの快勝に貢献し、冗談交じりに笑みを浮かべた。 来日初アーチ、初適時打を記録した5月18日ヤクルト戦以来、約3カ月ぶりの打点をマーク。後半戦初戦から3戦連続でスタメン起用され、前日14日広島戦に2安打を放つなど計11打数3安打。凡打も痛烈な当たりが多く、いよいよ昨季韓国リーグ2冠に本領発揮の気配が漂う。左翼守備でも3回、先頭野間の左翼線飛球をダイビングキャッチ。「全力プレーが自分の持ち味。チームの勝利に貢献することが一番なので良かった」と納得した。

◆阪神が後半戦最初のカードを勝ち越した。先発秋山拓巳投手(30)が5回無失点と踏ん張り、中継ぎ陣がゼロのバトンをつないだ。矢野燿大監督(52)の一問一答は以下の通り -6回から継投だったが、タイミングは 秋山も右腕に当たっているのもありましたし、ピンチも何回も作りながらね。両方を考えて、あそこで変えました。 -及川、馬場、アルカンタラは素晴らしい内容だった 及川はね、昨日はイニングまたぎでしたし、きょうもしっかり抑えてくれましたし。中身もね、及川、馬場はしっかりした内容で抑えてくれるのでね。いいリズムでいけました。 -9回はスアレス不在のなか、五輪決勝以来の登板の岩崎がセーブをあげた スグルはどの場面でも経験がありますし、こちらも自信を持って送り込んでいるんでね。スグルらしく、いつもいい意味で淡々とね。投げてくれました。 -先発の秋山も粘りながらの投球だった 秋山もね、いつも自分のなかで粘るっていうことはすごく意識してくれていますし、ベンチでもそういう声を出しながら、粘るぞ、粘るぞっていうのはよくいっている姿を見るんでね。本当にその言葉通りのピッチングをしてくれています。 -近本の先頭打者本塁打はいいリズムを作ってくれた 近本もいい形でね、後半スタートできましたし、近本が出てっていうのがうちの攻撃の大きなポイントなんでね。そういうところでは、きょうはホームランでしたけど。いいバッティングが続いていると思います。 -8回にロハスが久々の適時打 打撃の内容もだいぶ上がって来ている感じがしますし、こういう1本1本でアイツの気持ちもまた上がってくると思う。そういうところでは、マルテも帰ってきているんでね、いい競争がまたできてくるんじゃないかと思います。 -初戦落としながら3連戦勝ち越し そうですね。頭を負けてね、2戦目いい形で勝てて、今日でまた流れが止まると嫌なところですけど、流れを続けられましたし。欲を言えば、チャンスをつくったで、もう1本、2本、打てるチャンスはあったと思いますけど、いい形でまた火曜日からやれると思います。 -敵地で6連戦が待つ 数字や相手がどうなっているかはもちろん、気になりますけど、僕たちにできることは今、全力でやることなんで。目の前の試合を全力でやります。 -マルテが2軍オリックスで本塁打 聞いてなかったんやけど。いい悩み。

◆広島がまたしても天敵を攻略できず、阪神の先発秋山に屈辱の8連敗を喫した。5回までに得点圏に3度走者を進めたものの、点につなげることができなかった。阪神の継投リレーにもひねられ、今季9度目のゼロ封負け。チームは5カードぶりのカード負け越しとなった。7月13日に1度復活していた自力Vの可能性が、再び消滅した。佐々岡真司監督(53)の一問一答は以下の通り。 -3回2失点で降板した先発大道について 佐々岡監督 3回で代えざるをえなかった。これ以上、点を与えたらチャンスがないと思って3回で代えましたけど。四球絡みで、リズムも悪かった。 -中継ぎのケムナ、森浦が力投した 佐々岡監督 ケムナ、森浦はしっかりと自分の仕事をしてくれた。チャンスの展開にしてくれたが、今日は打線に1本が出なかったということですね。 -秋山投手にまたしても苦しめられた 佐々岡監督 前回対策を練った中である程度崩した中でも、今日もヒットが出ているけど、あと1本というところで、秋山くんにうまくかわされた。 -自力優勝の可能性が再び消滅した 佐々岡監督 関係ないです。1戦1戦やるだけです。

◆阪神が両リーグ最速で50勝に到達した。近本光司外野手(26)が初回に通算7本目となる先頭打者アーチを放ち、これが決勝打となった。デーゲームで2位巨人が勝ち、首位陥落の可能性もあったが、先行逃げ切りで後半戦開幕カードを勝ち越した。     ▼阪神が12球団50勝一番乗り。03、08年に次ぎ、2リーグ分立後3度目。03年はそのまま優勝したが、08年は巨人に最大13ゲーム差を覆されて2位に終わった。今年はどうか。 ▼セ・リーグ最速50勝は、08年以来13年ぶり8度目。過去7度のうち過半数の4シーズンで優勝を遂げており、85年は初の日本一。期待がかかる。 ▼過去10年のセ・リーグ50勝一番乗りのうち、優勝したのは8球団。16年広島から20年巨人まで5年連続で該当球団が逃げ切りVを果たしている。

◆阪神馬場皐輔投手が2点リードの7回に3番手で登板し、わずか12球で3者凡退に打ち取った。 4試合連続無失点で8ホールド目。さらにホールド数と勝利数を合わせたホールドポイントは「11」と20年の自己最多に並んだ。「秋山さんや及川がいい形でつないでくれましたし、勝っている展開で自分もゼロで抑え、次につなぐことができて良かったです」。頼れる右腕が後半戦も虎のブルペンを支える。

◆阪神秋山拓巳投手(30)が5回を粘って投げ抜き、チームトップタイの8勝目を挙げた。これで20年からの広島戦連勝を「8」に伸ばした。この広島戦8連勝は過去に村山実(12連勝)や江夏豊(10連勝)ら虎のレジェンドも達成してきた記録だ。 「広島も対応の変化もあったけど、しっかり粘りながら。5回だがしっかり投げられたのでよかった」 秋山が「対応の変化」と表現したのは変化球に対してだ。「フォークを振ってこない。引っ張りにきていたのもあった」。相手打線の変化を感じ、ストレートを効果的に使った。5回までに直球で6つの三振を奪った(変化球では1つ)。セットで長く球を持ったり、クイック投法でタイミングを外したり、140キロ前半の直球を持ち前の投球術で速く見せ、広島打線を封じた。 3回2死二塁では鈴木誠の打球が右腕に当たったが動じなかった。何球か確認の投球をして痛みを感じさせない笑顔でマウンドに戻った。「投げると判断したので、言い訳にならないようにしっかり投げ切れた」。2死一、三塁のピンチを遊ゴロで脱し、グラブをポーンとたたいた。 無失点に抑えたが、5回降板は悔しい結果のようだ。「5回しか投げていない。迷惑かけている。しっかり調整して次はしっかり投げられるように頑張ります」。先発陣の柱として、勝っても満足しなかった。【前山慎治】 ▼秋山は20年7月21日から広島戦8連勝となった。今季は5試合に投げ4勝、防御率1・84はともに対セ球団別では最良と、安定感あふれる投球を続けている。

◆「急造方程式」を締めたのは、阪神岩崎優投手(30)だった。3点リードの9回、今季初めて「守護神」としてボールを握った。「いつも通り、マウンドに上がりました」。先頭の林はスライダーで泳がせ二ゴロ。続く西川には中前打と暴投で二進を許したが、表情は変わらない。最後は2死二塁から、「あと1人」の拍手の中、代打松山を直球で見逃し三振に仕留めた。 「スアレスがいないからというので、ごちゃごちゃするのは嫌だったんで、ホッとしています」。侍ジャパンとして東京五輪で金メダルを獲得してから初登板で今季初セーブ。勝利の瞬間はマウンドで、梅野らナインとグラブタッチで静かに喜びをかみしめた。 守護神スアレスが不在でも、リリーフ陣は揺らがなかった。先発秋山の後を受けて6回に登板したのは、高卒2年目左腕の及川だった。すいすい2アウトを奪うと、2死一塁から代打長野をツーシームで右飛。「秋山さんがいい投球をしてくれたので、それに続くことができてよかったです」。前夜の1回2/3に続き無失点に抑えると、グラブをたたいてぴょんと跳ねた。岩崎に代わり8回のマウンドを任されたのはアルカンタラ。この日最速154キロの直球を主体に、3番小園から主軸を3者凡退に抑えた。 代役守護神を任命した矢野監督は、岩崎の投球を安心して見守った。「優はどの場面でもね、経験がありますし。こちらも自信を持って送り込んでいる。優らしく、いつもいい意味で淡々とね。投げてくれました」。堂々の投球を続ける及川は、今後も勝ちパターンで起用する方向。「今までも行ってるからこれからももちろん行く。それだけの中身もしっかりしたものを見せてくれている」と信頼を寄せた。 一時帰国の影響で出遅れていた守護神スアレスも合流に向けて順調だが、リリーフ陣の安定感は好材料。後半戦も鉄壁のブルペンは健在だ。【磯綾乃】

◆首位は譲らん! 阪神が両リーグ最速で50勝に到達した。近本光司外野手(26)が初回に通算7本目となる先頭打者アーチを放ち、これが決勝打となった。デーゲームで2位巨人が勝ち、首位陥落の可能性もあったが、先行逃げ切りで後半戦開幕カードを勝ち越した。宿敵の追い上げも望むところだ!近本の予感が的中した。初回。大道の147キロ直球をバットの先で捉えた。打球を追った虎党が一瞬、静まり返る。右翼席への着弾を確認すると大きな拍手が、背番号5に降り注がれた。 「なんか今日は『打てそうな気がするなあ』と思っていたんで、振り切ってよかったなと思います」 7号ソロは今季3本目、通算7本目の先頭弾。「試合の流れとか勝敗を決める一番大事な仕事」とこだわる第1打席で最高の仕事を果たした。3回先頭では中前打で出塁。サンズの適時打で2点目のホームを踏み、リーグトップタイの58得点。リードオフマンの仕事を詰め込んだ2打席だった。 7月20日。午前9時30分。球宴を終えチーム練習に合流した初日。近本はまだ誰もいない甲子園の外野芝生でダッシュを繰り返した。プロ3年目。先頭に立ってチームを引っ張る気概がにじみ出る。エキシビションマッチは打率1割台にとどまったが「試したことの成果が得られなかったので、それは来年、2年後くらいに変えていけたら」。後半戦へ向け、心技体を整えた。 そんな選手会長近本が率いるチームは、シーズンが進むにつれて一体感を増している。この日の試合前には、13日に新人最多122個目の三振を喫したルーキー佐藤輝が"表彰"を受けた。坂本が「賞状 三振数優勝 佐藤輝明殿」と書かれた手作りの賞状を授与。ベンチ内は笑いに包まれ、ルーキーは「みんな、どんどん振っていきましょう!」と力強く言い放った。レギュラーも控えもルーキーも関係ない。勝利のためにそれぞれが動く。 後半戦開幕カードは2勝1敗の勝ち越し発進で、両リーグ50勝一番乗り。2日続けて巨人がデーゲーム中日戦に勝利。負けていれば首位陥落の危機をまたも回避した。「頭を負けて、2戦目いい形で勝てて。今日で流れが止まると嫌なところですけど、続けられた。いい形で火曜日からやれる」。矢野監督は早くも敵地での6連戦をにらんだ。近本も続ける。「後ろのチームを見るなというのは多分難しい。そういうところにベクトルを向けずに1日、1試合を勝ちきるだけ」。その積み重ねが、16年ぶりのリーグ制覇へつながっていく。【中野椋】 ▼近本が今季3度目の初回先頭打者本塁打を放ち、通算では7本とした。阪神では単独6位に浮上。和田、マートン、鳥谷といった名打者たちを追い抜いた。近本はまだプロ3年目。今季はこれまでチーム全87試合で先発1番での出場を続けており、さらなる上位進出が十分に期待できる。

◆広島はまたしても天敵を攻略できず、阪神秋山に屈辱の8連敗を喫した。5回までに得点圏に3度走者を進めたものの、得点につなげられなかった。佐々岡監督は「対策を練っている中で、ヒットは出たけど、あと1本というところ。秋山くんにうまくかわされた」と嘆いた。今季9度目のゼロ封負けで、チームは5カードぶりの負け越し。7月13日に復活していた自力Vの可能性が、再び消滅した。 ▽広島大道(先発転向後では最短の3回2失点で3敗目)「3イニングで4四球はやってはいけないこと。とにかく自分の持ち味を見つめ直して、必死に取り組んでいきたい」

◆阪神の5番佐藤輝明内野手は後半戦3戦目で初めてノーヒットに終わった。 8回の4打席目は無死一、二塁のチャンスで打席に立ったが、2ストライクから広島島内のフォークにバットが空を切って三振。この試合で2三振を喫し、今季125三振と新人歴代最多三振を更新した。

◆阪神の前夜のヒーロー、3番ジェリー・サンズ外野手はこの日も貴重な適時打を放った。 1点リードの3回1死二塁、大道の直球を強振し、痛烈な当たりで遊撃右を抜いた。「近本がきっちり出塁してくれて、糸原が走者を進めてくれたから、あとは自分が走者をかえすだけだと思っていたよ」。前日14日広島戦は2打席連発で4打点。一夜明けの一戦でも、8回にも左前打で3点目をお膳立てするなど2安打を決めた。

◆阪神は8回に登板したラウル・アルカンタラ投手が、初の連投で来日初ホールドを挙げた。 先頭小園をスプリットで二ゴロに仕留めると、鈴木誠、坂倉はともに154キロ直球で外野フライ。主軸を難なく打ち取った。「初めての連投も全然問題なかった。貢献できたという意味では気持ちがいいよ」。先発から転向後、前日14日も8回に登板し無失点。「先発とは違う仕事だけど、しっかりと準備して貢献するという意味では同じ。言われた時には僕の仕事ができるように」と頼もしく話した。

◆阪神が両リーグ最速で50勝に到達した。近本光司外野手(26)が初回に通算7本目となる先頭打者アーチを放ち、これが決勝打となった。7月18日。近本は球宴の感想を記した自身のインスタグラムの末尾に「#レジギガス #脱却」と記した。レジギガスは人気アニメ「ポケットモンスター」に登場するキャラクター。その特性は「スロースタート」で、ゲーム内では登場から一定期間、自身の能力が下がってしまう。 今季は開幕から5試合で22打数1安打。昨季も開幕した6月の月間打率は1割2分8厘と苦しんだ。開幕直後に弱く「近本レジギガスやん」とSNSで例えられていることを、知人を介して知った。そこでSNSであえての"スロースターター自虐"を投稿。それは同じ轍(てつ)は踏まないという覚悟の表れでもあった。後半戦開幕カードは11打数5安打、打率4割5分5厘。近本が「レジギガス」を脱却した。【阪神担当=中野椋】

◆阪神秋山拓巳投手(30)が5回を粘って投げ抜き、チームトップタイの8勝目を挙げた。これで20年からの広島戦連勝を「8」に伸ばした。この広島戦8連勝は過去に村山実(12連勝)や江夏豊(10連勝)ら虎のレジェンドも達成してきた記録だ。 「広島も対応の変化もあったけど、しっかり粘りながら。5回だがしっかり投げられたのでよかった」 秋山が「対応の変化」と表現したのは変化球に対してだ。「フォークを振ってこない。引っ張りにきていたのもあった」。相手打線の変化を感じ、ストレートを効果的に使った。5回までに直球で6つの三振を奪った(変化球では1つ)。セットで長く球を持ったり、クイック投法でタイミングを外したり、140キロ前半の直球を持ち前の投球術で速く見せ、広島打線を封じた。 3回2死二塁では鈴木誠の打球が右腕に当たったが動じなかった。何球か確認の投球をして痛みを感じさせない笑顔でマウンドに戻った。「投げると判断したので、言い訳にならないようにしっかり投げ切れた」。2死一、三塁のピンチを遊ゴロで脱し、グラブをポーンとたたいた。 無失点に抑えたが、5回降板は悔しい結果のようだ。「5回しか投げていない。迷惑かけている。しっかり調整して次はしっかり投げられるように頑張ります」。先発陣の柱として、勝っても満足しなかった。【前山慎治】 ▼秋山は20年7月21日から広島戦8連勝となった。今季は5試合に投げ4勝、防御率1・84はともに対セ球団別では最良と、安定感あふれる投球を続けている。

◆阪神・近本光司外野手(26)が、今季3度目となる先頭打者ホームランを放った。 「打者有利のカウントでしたし、しっかりと自分のスイングをすることができた。先制することができてよかった」 カウント3-1から、広島の先発・大道の147キロ直球を捉えた。快音を残し、打球は右翼スタンドへ飛び込む7号ソロ。4月4日の中日戦(京セラ)、同21日の巨人戦(東京ドーム)に続く今季3度目、プロ通算7本目の先頭打者アーチをかけた。

◆新助っ人のハッスルプレーに京セラが沸いた。阪神のメル・ロハス・ジュニア外野手(31)が守備で魅せた。 三回、先頭の野間はファウルで粘る。9球目、左翼ライン際に切れていく打球に対して、ロハスは大きな身体を投げ出してダイビングキャッチ。ファインプレーでアウトをもぎとると、大きな拍手が送られた。 14日の試合後、助っ人は「常に全力プレーが自分のスタイル。小さなときから全力でということを学んできたし、守り、攻撃、走塁、全部全力でチームに貢献したい」と話していた。有言実行のプレーでチームを鼓舞。この後、秋山が2死一、三塁とピンチを背負ったが、坂倉を遊ゴロに仕留め流れを渡さなかった。

◆阪神のジェリー・サンズ外野手(33)が中前適時打で貴重な追加点を挙げた。 「近本がきっちり出塁して、糸原がランナーを進めてくれたから、あとは自分がかえすだけだと思っていたよ。いい仕事ができたね」 1-0の三回。先頭の近本が中前打で出塁すると、糸原の投ゴロで二進。1死二塁の得点圏で中前に運んだ。 この試合前の時点で得点圏打率・333と勝負強さが光る助っ人。昨季から何度も虎を救ってきたチャンスの〝神〟が、大きな追加点をもたらした。

◆阪神の先発、秋山拓巳投手(30)は5回6安打無失点、7奪三振と粘りの投球で広島打線を抑えた。 「広島打線の対応の変化も感じ、うまく投げ込んでいくことができずに苦しかったですが、ランナーを出しても粘ることだけを考えて投げた」 一回は2死一、二塁で坂倉を一ゴロ。三回は2死二塁で鈴木の打球を受けたが、一、三塁のピンチで再び坂倉を遊ゴロに仕留めた。毎回走者を背負う苦しい投球だったが決定打を許さなかった。チームトップに並ぶ8勝目の権利を持ってマウンドを譲った。

◆阪神は一回、近本が今季3本目となる先頭打者アーチを放って幸先よく先制すると、三回にはサンズの中前適時打で追加点。八回1死一、二塁ではロハスが右前適時打を放ってとどめを刺し、両リーグ一番乗りで50勝に到達した。 先発の秋山は毎回走者を背負う苦しい投球も、粘って5回6安打無失点。7奪三振と要所を締めた。その後は、及川、馬場、アルカンタラと無失点リレーでつなぎ、最後は岩崎が締めて今季初セーブ。秋山はチームトップに並ぶ8勝目をマークした。 1ゲーム差に迫る2位・巨人がデーゲームで中日に勝利していたため、負ければ4月4日から守り続けてきた首位から陥落する一戦。投打がしっかりとかみ合い、首位の座を守った。

◆阪神は近本光司外野手(26)の自身7度目、今季3本目の初回先頭打者本塁打で先制し、先発の秋山拓巳投手(30)は5回6安打無失点で、8勝目(4敗)を挙げた。首位を堅持し、両リーグ最速の50勝に到達した矢野耀大監督(52)の一問一答は以下の通り。 (テレビインタビュー) ーー六回から継投だった 「秋山もね、右腕に(打球が)当たっているのもありましたし、ピンチも何回も作りながらね。両方を考えて、あそこで代えました」 ーー九回は岩崎がセーブをあげた 「優はどの場面でもね、経験がありますし。自信を持って送り込んでいるんでね。いい意味で淡々とね。投げてくれました」 ーー秋山も粘った 「いつも自分のなかで粘ることはすごく意識してくれていますし。ベンチでも声を出しながら、粘るぞっていうのは、よく言っている姿を見るんでね」 ーー近本の先頭打者本塁打は 「近本もいい形でね、後半スタートできましたし。近本が出てっていうのがうちの攻撃の大きなポイントなんでね。きょうはホームランでしたけど。いいバッティングが続いていると思います」 ーー八回にロハスが久々の適時打 「打撃の内容もだいぶ上がって来ている感じがしますし、こういう1本1本でアイツの気持ちもまた上がってくると思う。マルテも帰ってきているんでね、いい競争がまたできてくるんじゃないかと思います」 ーー初戦落としながら勝ち越した 「そうですね。頭を負けてね、2戦目いい形で勝てて、今日でまた流れが止まると嫌なところですけど、流れを続けられましたし。欲を言えば、もう1本、2本、打てるチャンスはあったと思いますけど、いい形でまた火曜日からやれると思います」 -―敵地で6連戦 「数字や相手がどうなっているかはもちろん、気になりますけど、僕たちにできることは今、全力でやることなんで。目の前の試合を全力でやります」 (記者囲み) ーー秋山は 「結果、0で行くのは簡単なことじゃないんで。これで8勝目? 貯金もしてくれているわけだから。結果、抑えるっていうところは本当に出ていると思う」 ーー及川について 「あいつが先発やりたい気持ちは持ってると思うけど、いい意味でそういうのを持ちながらやってくれたらいいと思います」 ーー及川は勝ちパターンで使っていく 「今までも別にいってるから、これからもいくし。それだけの中身も見せてくれているのでね」 ーー近本は開幕スタートが良くない。後半戦スタートも気にしていたが問題なさそう 「みんなね、そんなん不安なんよ。自信満々でいける人なんかそんなにいないから」 ーーロハスが連日結果を出した。打撃の内容が良くなっている 「まあ、そやね。一時のというよりは、コンタクトをしっかり出来ているし、アウトになっているのも、いい当たりがあったのが捕られた部分があったし、昨日も2本捕られたし。全体的に良くなっているのかなと思っています」 ーーマルテが2軍で本塁打 「ああ、そうなんや。俺、それ聞いてなかったんやけど。いい悩みで」

◆広島はまたしても秋山に屈した。五回まで毎回走者を出しながら、好機で本塁が遠かった。秋山との対戦は昨季から8連敗と苦手意識は深刻で、河田ヘッドコーチは「走者が出て、何とかしないといけないところで策が打てなかった」と頭を抱えた。 六回以降は阪神救援陣に1安打に封じられ、九回2死三塁では代打松山が見逃し三振に倒れた。今季9度目の零敗を喫し、佐々岡監督は「きょうは打線に(あと)一本が出なかったということ」と淡々と話した。

◆阪神は広島に勝ち越したが、打線がつながりにくいのが気になった。追加点が欲しかった八回無死一、二塁、佐藤輝が空振り三振に倒れ、走者を進められなかった。 走者がいないケースならば、フリーに打たせていい打者だが、ここは1点が欲しいケース。踏み込んで思い切り引っ張り込んで、右翼席にホームランを打つぐらいの気持ちで臨んでほしかった。そうすれば悪くてもセカンドゴロで走者を進めるというような結果になる。当てに行く必要はないが、ホームランか三振という打撃をする場面ではないことを首脳陣は教えてほしい。 優勝を争っていくならば、1点を争うゲームが続いていく。巨人は丸が復調し、打線がつながり、細かい勝つための野球ができている。ロハスのタイムリーで3点目を奪えたが、2-0のままであれば、安全圏とはいえなかった。 佐藤輝は前半戦と違い、グリップを下げている。上段で構えていたときは、高めの球にやられていたので、本人が考えたのだろう。これはその形で構わない。大切なのはレベル(水平)に振ることだ。(本紙専属評論家)

◆ロハスが貴重な追加点をあげた。2-0の八回1死一、二塁から島内の148キロをとらえて、右前適時打。「どうにか追加点がとれてよかった」と胸を張った。14日の2安打に続き、5月18日のヤクルト戦(甲子園)以来となる出場14試合ぶりの打点。守備でも三回に左翼ファールゾーンへの飛球をダイビングキャッチするなど、攻守で執念を見せた。 この日、ウエスタン・オリックス戦(ほっと神戸)では2軍で調整中のマルテが本塁打。外国人枠を争う競争はさらに激化しているが、矢野監督は「(ロハスは)打撃の内容もだいぶ上がって来ている感じがしますし、いい競争がまたできてくる。いい悩み」と、〝うれしい悲鳴〟をあげた。

◆八回に登板したアルカンタラは危なげなく三者凡退に抑えて、来日初ホールドをマークした。初の連投にも「問題はなかった。初ホールドはうれしいし、気持ちがいいね」と笑顔。最速154キロの直球で押し込み、わずか10球で任務を完了させた。後半戦から中継ぎに配置転換された右腕は「先発とは違う仕事だけど、しっかりと準備してチームに貢献するという意味では同じだよ」と頼もしかった。

◆サンズが持ち前の勝負強さを発揮した。1-0の三回1死二塁から中前適時打を放って追加点をあげ「近本が出塁してくれて、糸原がランナーを進めてくれたから、あとは自分が走者をかえすだけだと思っていたよ」と声を弾ませた。八回先頭でも左前打を放ち、その後のロハスの適時打につなげた。2発を放った14日に続き、2夜連続のマルチ安打&打点を記録。55打点は佐藤輝を抜いてチームトップに立った。

◆及川は六回から2番手で登板し、1四球を与えたものの1回を無安打無失点と力投。「秋山さんが良い投球をしてくれたので、それに続くことができてよかった」とうなずいた。14日の回またぎ(1回?を無安打無失点)の疲れも感じさせず、連投で3ホールド目を記録した。8試合連続無失点と安定。矢野監督は今後の勝ちパターンでの起用について「これからももちろんいくし。それだけの中身もしっかりしたものを見せてくれている」と信頼を寄せた。

◆幾多のピンチも、アクシデントも、ド根性で乗り越えた。先発した秋山は毎回走者を背負いながらも粘りに粘って、青柳に並ぶチームトップ、セ・リーグ2位タイの8勝目をつかんだ。 「広島も(自分の投球に対する)対応の変化があって難しいところもあったけど、しっかり粘りながら5イニングを放れたので良かった」 最大のピンチは1―0の三回。2死から小園に右翼線二塁打を許すと、続く4番・鈴木誠の強烈な打球が秋山を襲った。右腕に直撃し、内野安打で一、三塁に。直後に福原投手コーチがマウンドへ駆け付けたが、投球練習で状態を確認し、そのままプレーを続行。坂倉を直球で遊ゴロに仕留めて、危機を脱した。 「投げると判断したので言い訳にならないように、しっかり投げ切れて良かった」 耐えて、耐えて5回6安打無失点。矢野監督も「結果的に0(点)で行くというのは簡単なことじゃない。要所で気持ちと一致したボールが投げられるというところがある。そういうところが結果にもつながっているんじゃないかな」と目を細めた。 広島に対しては、昨年7月21日(甲子園)から負けなしの8連勝と鯉キラーぶりは健在だ。前回対戦した7月4日(マツダ)では3回2失点で無念の降板となったが、その悔しさを力に変え、この試合でやり返した。 それでも秋山は「5回(イニング)しか投げてない。(チームに)迷惑かけてるんで、次はしっかり投げられるように頑張ります」と満足する様子はない。次こそ自画自賛できる会心の投球をして、虎党に最高の勝利を届ける。(織原祥平)

◆圧巻の〝凱旋〟ピッチ。完封リレーの最後を締めたのは、侍ジャパンの金メダルに大きく貢献した岩崎だ。最後の打者、代打・松山を見逃し三振に斬り、昨年11月5日のヤクルト戦(甲子園)以来となる今季初セーブを挙げた。 「みんながいい形でつないでくれて、八回の裏に1点を追加してくれたので、すごく自分も落ち着いてマウンドに上がることができました」 1死から西川に中前打を許し、暴投と遊ゴロで2死三塁とされたが、失点は許さなかった。 「自分の仕事ができてほっとしています」 大きくうなずいた。7日に行われた東京五輪の決勝・米国戦(横浜)。1―0の八回無死一塁で登板し、後続を断った。相手に流れを渡さない岩崎の投球が、日本の歓喜を引き寄せた。横浜の快投から8日。試合後に打のヒーロー、近本と上がった京セラドームでの勝利のお立ち台では寡黙な金メダリストらしく? 〝沈黙は金〟を貫いた。 アナウンサーから「東京五輪で学んだことは?」と質問されたときだ。「すごくたくさんのことを学ばせていただきました。多くは語り切れないので、ちょっと、またどこかで(話します)」。クールに受け応えると「具体的には?」と突っ込まれた。すると数秒間、考え込んだまま、だんまり...。これにはスタンドから〝もう、わかったから〟と言わんばかりの笑い声が起き、岩崎はファンに向かって黙って笑顔でうなずいた。五輪ブレークで一時帰国したスアレスが体調万全で復帰するまで、代役守護神としてマウンドに立つ。矢野監督は「優(岩崎)はどの場面でもね、経験がありますし。こちらも自信を持って送り込んでいるんでね。優らしく、いつもいい意味で淡々と投げてくれました」と、東京五輪で修羅場を経験して、またひと回り成長した左腕を見て、ほほ笑んだ。「目の前の試合でベストを尽くしていい結果が出るように、みんな100%の力で1試合1試合、戦っていきますので声援のほどよろしくお願いします」と、虎党に叫んだ岩崎。侍ジャパンを世界一にした。秋には、虎を日本一にして、この日、沈黙した東京五輪での〝秘話〟を披露してくれるはずだ。(三木建次)◆岩崎、東京五輪VTR8月2日の米国との準々決勝、2-3の四回2死二、三塁で登板し、1球で遊ゴロに仕留めた。4日の韓国との準決勝では2-1の六回1死一、三塁で先発の山本(オリックス)からバトンを受け、同点打こそ許したが、後続を2者連続三振で切り抜けた。そして7日の米国との決勝戦。1-0の八回無死一塁から登板し、3番・カサスを空振り三振、4番・フレージャーを遊飛、5番・フィリアを三ゴロとクリーンアップをピシャリ。3試合に登板し、計2回無失点で金メダル獲得に貢献した。

◆今年の虎は、土俵際から強い! 阪神は、選手会長の近本光司外野手(26)が先頭打者本塁打を放つなど2得点と活躍し、広島に3-0で勝利。デーゲームで2位の巨人が勝ち、2日続けて、負ければ首位陥落という危機だったが、2連勝で後半戦カード勝ち越しスタートを決めた。これで両リーグ最速で50勝にも到達。どれだけ宿敵が追いすがろうと、前だけ見据えて、突っ走る!! 迫りくる宿敵の重圧を選手会長がなぎ払う。白球はきれいな弧を描き、右翼席へと吸い込まれた。ナインを鼓舞し、乗せるにはこれ以上ないほど完璧な先制パンチ。さっそうとダイヤモンドを周った近本が、笑顔でベンチに駆け戻った。 「(入るか)確信はなかったんですけど、しっかり角度がついたので、越えてくれ、越えるかなぐらいの気持ちで。打ててよかったです」 虎の攻撃開始から、あっという間の出来事だった。大道が投じた5球目、147キロを一閃。「『きょうはいけそうな気がするな』と思ったので、振り切ってよかった」。打席に入る前から感じていた自信が、最後の一押しとなった。 7号ソロは今季3本目、プロ通算7本目の先頭打者弾。三回も先頭で中前打を放ち、貴重な2点目のホームを踏んだ。 「後ろのチームを見るなというのは難しいし、意識は絶対してしまう」 2位の巨人とは1ゲーム差。この日も、今季8度目となる首位陥落の危機だった。Gがデーゲームで中日に勝利したため、負ければ陥落という状況でナイターを戦うのは2夜連続。日々、背後から迫りくるプレッシャーを感じている。だからこそ、前だけを向く。 「そういうところにベクトルを向けずにしっかり、きょうの1日、きょうの1試合を勝ちきることだけ意識しています」 目の前の1球だけに集中することで、苦手とする〝スタートダッシュ〟も、決めた。ルーキーイヤーから、開幕直後は常に苦戦してきた。3年目の今季も「内容はいいのに結果が出ない」と頭を悩ませるほどだ。しかも今年は五輪ブレークで1カ月の中断があっただけに、後半戦は事実上、今年2度目の〝開幕〟。13日の初戦は4打数1安打で、チームも敗れた。それでも「その日のうちに課題も修正できて、打席の意識というのもだいぶ分かってきた」と次の一戦を勝つために切り替えた。14日は決勝犠飛を含む2安打。そして2夜連続の決勝打&マルチ安打と、これ以上ない再発進だ。重圧も不安も吹き飛ばすリードオフマンの躍動に、矢野監督も「近本もいい形で後半スタートできたし、近本が出てっていうのがうちの攻撃の大きなポイント。いいバッティングが続いている」とうなずいた。チームは首位の座を死守し、2008年以来、13年ぶりとなる12球団50勝一番乗り。お立ち台に上がった近本は、後半戦に向けてファンに誓った。「チームが勝って、それが僕の中で一番、うれしい。もっともっと野手陣が打って、得点取って勝てる試合を1日でも多くやっていきたいと思います」虎の頼れる先頭打者が、16年ぶりの悲願に向かってかじを取る。(原田遼太郎)

◆よっしゃー!! 今夜もデーゲームで巨人が勝ったので、敗ければ首位の座を奪われる...。ハラハラドキドキの状況でまさに『矢野タイトロープ(綱渡り)野球』での勝利!! これぞまさにスポーツの原点なのだ!! 秋山を5回無失点なのに継投策に出たのもビックリだけど、2年目左腕・及川、アルカンタラを2試合連続でマウンドに送り、最後はスアレス不在のストッパーを岩崎に任せて、終わってみれば5投手の完封リレー!! この状況に合わせた野球こそ『打倒原巨人』の大きな要素だと思うのだ!! 阪神ファンになって50余年、いつもいつもわが阪神は巨人と同じ野球で、それを越えようと無理していたのだ(悔しいけどお金も選手も違うんだもの)!! 阪神が巨人に勝つために必要なのは固定観念を捨てること!! そして、その気配が見えてきた矢野阪神は面白れー!!

◆巨人は完璧? ビヤ樽編集委員三木建次が、嫌なことを口にしました。 「抜かれるんちゃいますか」 阪神-広島のナイターの前に、デーゲームで巨人がまた中日に勝っていました。「負けへんなあ、巨人」とボヤいたら冷たい反応が帰ってきたんです。 「しょうがないわ。去年とおととし、連覇しているチームやもん。もともと強いんやから。エラーは少ないし(リーグ最少の31、阪神はリーグ最多の58)、丸も坂本も調子が戻ったし、これで菅野が復調したら、巨人はもう完璧や」 おいおい。ビヤ樽の冷静すぎる言葉に落ち込んでいたら、若手の虎番がなぐさめて(?)くれました。 「後がない状況になったら、尻に火がついて、きのう(14日、4本塁打を含む16安打で9得点)みたいに打つかもしれません。踏ん張ってくれるんじゃないかと期待しています」 投手担当の織原祥平です。一夜明けの雰囲気も良かったらしい。 「先発陣の練習開始時のミーティングで、移籍後初勝利を挙げた二保さんを囲んで拍手が起きていました。きょう先発する秋山さんも、エキシビションマッチで2試合無失点と好調です。広島とは前回の対戦(7月4日)で3回(2失点)で降板しているので、やり返してほしいです」 打者担当の原田遼太郎も、明るい数字を持ち出してきました。 「きのうサンズと大山選手が2本ずつ打って、サンズは19本塁打、大山選手は13本になりました。大山選手は前半、逆方向、逆方向に窮屈そうに打っているように見えるときがありましたが、今は豪快に引っ張っています。マルテが16本で佐藤輝は20本です。20発カルテットが誕生すれば、阪神では1985年以来36年ぶりになります」 ちなみに85年はバース54本、掛布40本、岡田35本、真弓34本。20発どころか30発以上が4人ですから凄すぎて単純に比較はできませんが、2005年、08年の優勝時にもなかった重量打線になってきているのです。 そうそう、こういう景気のいいことを言ってくれなくちゃ。とニヤついていたら、サブキャップ新里公章までが、ビヤ樽みたいなことを言い出しました。 「抜かれてもいいんじゃないですか」 お~い。ただ、新里の場合は、言いっぱなしのビヤ樽と違って、ちゃんと〝フォロー〟がありました。 「今の主力選手は、クライマックスシリーズ(CS)には出ているけど優勝争いはしてきていません。前に自分が担当していた2019年は、シーズンの最後に6連勝してCS進出を決めて、ファーストステージは2位のDeNAに勝ちましたけど、巨人には大敗しました」 19年のCSファイナルステージはたしかに完敗でした。●2-5、●0-6、第3戦を〇7-6で勝ったものの、第4戦は●1-4。力の差を見せつけられたCSになっています。 「抜かれたら抜き返して、こういう優勝争いを経験していったら、若い選手が多い阪神は強くなっていくと思います」 あ、ビヤ樽が割り込んできた。 「そうそう、俺もそれを言いたかったんや」 うそつけ~? 打ち勝った14日の試合に続いて、課題の守りのミスもなく、5投手の継投で3-0で広島に快勝です。ファンの皆様も、厳しい優勝争いの中で強くなっていく阪神を楽しみましょう。

◆タイトロープを渡り切り、週末の落城だけは免れた。14、15日と1差で追う巨人がデーゲームで勝ち、ナイトゲームで負ければ首位陥落の危機に直面していた阪神が4月4日から守り続けるトップの座をキープした。 今季の阪神を振り返った時、「6・18」にたどり着く。甲子園での巨人戦に完勝し、ゲーム差が最大の「8」となった。最多貯金の「21」となったのも、この日。西勇が4勝目を挙げたのも...。チームは7連勝で、両リーグ最速の40勝に到達した。この時点でT=40勝19敗2分、G=30勝25敗10分の3位。無人の荒野を突っ走る、はずだった。 「もうエエやろ...」と思う。〝西勇重視ローテ〟だ。とにかく勝てない。なのに、矢野監督はカード頭での登板にこだわり続ける。ここまで西勇は16試合に登板し、15回が初戦。「6・18」から勝てず、成績は4勝7敗で4連敗中だ。結果、3連戦の黒星スタートが多くなり、厳しい戦いを余儀なくされている。 開幕投手の藤浪は、それでなくても少なかった信頼を早々と失い、矢野監督もまた早々と見切りをつけた。個人的には早すぎる決断だと思った。指揮官にしてみれば想定内だろうが、西勇に関しては誤算だった。交流戦開幕、リーグ戦再開と節目の試合を託したが、なかなかチームは前に進まない。東京五輪の中断期間を経て、後半戦開幕の13日の広島戦(京セラドーム)もしかり。一回にいきなり4失点。「1点を怖がって失点する」という勝てない投手の典型的な投球内容だった。 中日、西武、阪神で活躍し、楽天の初代監督を務めた本紙専属評論家の田尾安志氏は、大阪サンスポ14日付紙面で、こう記した。 「内容以上に気になるのは、西勇の起用法だ。矢野監督はエースは西勇という位置づけで、ここまでカードの初戦を託してきた。私もオリックス時代から西勇という投手を見てきている。抜群の制球力を誇る素晴らしい投手だ」 「ただし、1番手タイプではない。金子(現日本ハム)という大エースがいて、その次の存在。ローテの2番手、3番手で力を発揮するタイプだった。エース同士の投げ合いではなく、ちょっと落ちる投手との投げ合いで、見下ろして投球して勝ちを稼ぐ。そういう性格を把握しているなら、カードの頭を託すのは、実は正解ではない」 調子の出ない西勇にすべてを任せる必要はない。主力投手との対戦を避け、比較的楽な相手に白星を稼いだ方がいい。秋山がいて、青柳がいる。「ない袖は振れない」という状態ではない。以前にも書いたが2リーグ分立後、「1位阪神ー2位巨人」でシーズンを終えたのは一度もない。ちなみに、このパターンで前半戦を折り返したのは過去3度で、いずれもV逸だ。 「6・18」以降、阪神は10勝15敗、巨人は16勝7敗で追撃の歩みは止まらない。崖っぷちでの2日間を耐えたのは評価できる。しかし、1差は変わらない。直接対決は9月3日からの甲子園での3連戦までない。ここが指揮官として腕の見せ所。矢野監督が奏でる采配の妙味を肌で感じたい。

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
阪神
50343 0.595
(↑0.005)
-
(-)
56358
(+3)
316
(-)
88
(+1)
73
(+1)
0.252
(↓0.001)
3.330
(↑0.04)
2
(-)
巨人
463210 0.590
(↑0.006)
1
(-)
55371
(+4)
310
(+2)
115
(+2)
52
(-)
0.253
(↓0.001)
3.380
(↑0.02)
3
(-)
ヤクルト
43329 0.573
(↑0.005)
2.5
(-)
59370
(+4)
336
(+1)
87
(-)
53
(+2)
0.254
(↓0.001)
3.770
(↑0.04)
4
(-)
中日
324512 0.416
(↓0.005)
14.5
(↓1)
54254
(+2)
307
(+4)
50
(-)
42
(-)
0.236
(↓0.001)
3.350
(↓0.01)
5
(-)
広島
314410 0.413
(↓0.006)
14.5
(↓1)
58310
(-)
364
(+3)
62
(-)
42
(-)
0.259
(↓0.001)
3.890
(↑0.01)
6
(-)
DeNA
314511 0.408
(↓0.005)
15
(↓1)
56345
(+1)
407
(+4)
86
(+1)
19
(+1)
0.260
(↓0.001)
4.460
(↑0.02)