阪神(★0対1☆)巨人 =リーグ戦15回戦(2021.07.11)・阪神甲子園球場=
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巨人
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阪神
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勝利投手:髙橋 優貴(9勝3敗0S)
(セーブ:ビエイラ(0勝0敗9S))
敗戦投手:西 勇輝(4勝6敗0S)
  DAZN
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◆巨人が投手戦を制した。巨人は0-0で迎えた8回表、1死三塁の好機から大城が適時打を放ち、試合の均衡を破った。投げては、先発・高橋が7回無失点の好投。その後は大江、ビエイラが完封リレーを展開し、高橋は今季9勝目を挙げた。敗れた阪神は、先発・西勇が9回1失点で完投するも、打線がわずか1安打と沈黙した。

◆阪神陽川尚将内野手(29)が11日、1軍に昇格した。甲子園で行われる巨人戦の試合前練習から合流した。 陽川は6月7日に再調整のため1軍登録を抹消された。4日オリックス戦(オセアンBS)で5号2ランを放ち、直近3試合連続安打と状態を上げていた。前日1得点で大敗した1軍の起爆剤になれるか。 陽川に代わり、伊藤将司投手(25)が出場選手登録を抹消された。前日10日に先発しプロ最短の4回6失点で降板。球宴までの残り4試合で登板機会がないためとみられる。この日は1軍の投手練習に参加し、キャッチボールなどで汗を流した。

◆「ウル虎の夏2021」の3日目は虎党のココリコ遠藤章造(49)が登場した。スタメン選手呼び出しなどで「伝統の一戦」を盛り上げた。 「気持ちが高ぶってきましたね。V選手の名前を言えたと言うのがうれしいですね、って言わない方がいいと思うんですけど。まあでも、本当に今年はいいところにいるので、何とか秋にね。16年ぶりの美酒をと思ってます」とコメント。持ちネタの「ホホホイ」も披露し「やっぱりホホホイを25年前にやってるんですけど、元々甲子園でやりたくて始めたことやったりするので。いや、冗談ですよ(笑い)。でも自分のホホホイが甲子園できたという喜び、これは本当にうれしい限りですね」と笑顔で振り返った。 注目選手にはルーキー佐藤輝を挙げ「助っ人外国人が来てくれたというようなノリで僕は捉えてる」と熱弁。「糸井選手を初めて見た時もデカっと思ったんですけど、(佐藤輝は)それ以上のデカさ。(沖縄の)美ら海水族館に行って、初めてジンベエザメを見た時のような、そんな感覚でした」と笑わせた。 9日が初日だった「ウル虎の夏2021」は9~11日巨人戦、12~14日DeNA戦(ともに甲子園)の計6試合で開催。虎の顔があしらわれた「ウル虎の夏2021限定オリジナルジャージー」が来場者にプレゼントされる。 また、12日以降もタイガースファン芸人がスタメン選手呼び出しやヒーローインタビューのお出迎えなど、スペシャルな演出に登場する。

◆首位阪神と2位巨人が対戦。 阪神は3回、巨人は4回に走者を三塁まで進めるが、得点には至らず。 阪神西勇、巨人高橋の両先発が無失点で好投を続けるが、8回に大城の適時打で巨人が先制に成功。

◆両先発がまずまずの立ち上がり。阪神西勇は3回を無安打無失点。巨人高橋は3回を1安打無失点に抑えた。 巨人は4回2死三塁の好機も岡本和が遊ゴロに倒れ無得点。阪神は巨人高橋に4回から6回は1人も走者を出せず。 巨人は8回1死三塁から大城の左前適時打で先制。その1点を8回から継投策で逃げ切った。高橋が9勝目、ビエイラは9セーブ目を挙げた。阪神は好投の先発西勇を援護できず。

◆阪神西勇輝投手(30)は9回1失点、115球の熱投を見せるも、通算100勝は後半戦に持ち越された。今季初完投も、味方がわずか1安打と援護できず3連敗となった。 立ち上がりからテンポ良く、次々に巨人打線を打ち取った。3回まで全て3者凡退の完璧な投球。2回1死では、ウィーラーの高いバウンドを背走しながらつかむなど持ち前のフィールディングも随所で見せた。4回は先頭の松原に中前打を浴びるも、坂本、丸、岡本和の中軸をきっちり打ち取った。 均衡が破られたのは8回。先頭の亀井に右翼フェンス直撃の二塁打を浴びると、1死三塁から大城に外のスライダーを捉えられ、左前適時打を許した。そのまま9回も続投し、9球で3者凡退。最後は遊撃の中野が好守備を見せると、グラブを何度もたたいて感情をあらわにした。 6月18日巨人戦(甲子園)で100勝に王手をかけるも、これで3戦連続持ち越しとなった。それでも、この日の好投は後半戦へとつながるはず。次こそ節目の白星をつかむ。

◆阪神が今季5度目の0封負けで2位巨人に連敗した。先発の西勇輝投手(30)が9回1失点完投したが、打線が援護できなかった。矢野燿大監督(52)の試合後の一問一答は以下の通り。 -西勇はこれ以上ない内容だった 前半からね。今年一番よかったんじゃないかな。そういうボールを投げて、結果もそれに伴って、リズムを作ってくれたり。いかんせんね、ゼロじゃ勝てないんで。 -気持ちの面も出ていた もちろんいつもね、気持ち込めて投げてくれているし。さらにっていうところは、あったのは俺にもすごい感じたけど。 -8回1死三塁での大城の打席は2ストライクからいろいろな選択肢がある中、勝負にいった結果 いやいやそれはもう、あとからどうこう言うのは簡単やけど。ね。勇輝とリュウ(梅野)が選択していったボールなんで。それは仕方がないし。あの1点がだめだっていう風にいえるような内容じゃないんでね。それよりもバッターがやっぱりあのピッチングで、何とかしないとダメだし。今日は結果的にできなかったけど。残り3試合なんでね、打者陣の奮起というか、残り3試合に向けて気持ちをぶつけてほしいなと思います。 -巨人先発高橋に苦戦 もちろん、ミーティングでもいろいろやってくれたりしているけど、プロである以上、結果で示していかないとダメだし、それだけやられているということは、まだやれることがあると思う。今日も向こうがすごく良かったというふうには見えないんで。そういうところではプロとして何度もやられるという悔しさをしっかり持ってやっていきます。 -試合を追うごとに佐藤輝への厳しい攻めがこの3試合で感じられた まあそれはずっと続くことやし、この3試合で急にっていうことじゃないし、それはこっちの状態が悪ければそういうふうに見えることもあるし、それは1年間ずっと、そういうことはずっとあるんでね、この3試合だけではない。 -シーズンは長いが、巨人に7勝8敗と負け越している だからそれはいつも言うけど途中で勝ったり負けたりは数字やからあるから、そんなんオレらいつも一喜一憂して戦うことはないし、もちろん最後優勝というところ目指して、全部勝ち越して全部勝てるっていうこと目指してやっていくけど、その過程のことなんでね、それに関してどうこう言うことはないし、今負け越したって最後勝てばいいんだから、それは何とも言えない。いいですか?

◆虎の子1点で虎を沈めた。巨人が1-0の完封勝ちで阪神に競り勝った。8回に大城卓三捕手(28)が値千金の左前適時打で1点をもぎとった。先発高橋優貴投手(24)は7回1安打無失点の快投でハーラー単独トップの9勝目をマーク。女房役の大城が構えるミットに丁寧かつ、テンポ良く81球を投げ込み、猛虎打線を沈黙させた。敵地から価値ある2勝を持ち帰り、首位阪神と1・5ゲーム差に肉薄した。大江、ビエイラが、パーフェクトリリーフで虎の子の1点を守った。8回に登板した大江は「ストライクをしっかり入れることと、自分のカウントに持っていけるように」と意識。佐藤輝、中野の左打者を三振で20試合連続無失点を記録した。9回に登板したビエイラはロハスをカットボール、糸原をこの日最速の162キロの直球で空を切らせ、23試合連続無失点で9セーブ目を挙げた。

◆阪神は終わってみれば、ルーキー中野拓夢内野手のヒットがチーム唯一だった。 3回先頭で、高橋の外角低めスライダーに崩されながらも、遊撃坂本の頭を越して中前へ落とした。その後、犠打と内野ゴロで三塁まで進んだが、得点には結びつかなかった。遊撃の守りでも7回に岡本和の三塁寄りのゴロを、素早いワンバウンドスローで刺すなど4個のゴロをさばき、締まった試合を演出した。

◆虎の子1点で虎を沈めた。巨人が1-0の完封勝ちで阪神に競り勝った。8回に大城卓三捕手(28)が値千金の左前適時打で1点をもぎとった。先発高橋優貴投手(24)は7回1安打無失点の快投でハーラー単独トップの9勝目をマーク。女房役の大城が構えるミットに丁寧かつ、テンポ良く81球を投げ込み、猛虎打線を沈黙させた。敵地から価値ある2勝を持ち帰り、首位阪神と1・5ゲーム差に肉薄した。追い込まれたオオシロサンが殊勲打を決めた。8回1死三塁。阪神西勇にあっさりと2ストライクに追い込まれた。顔の前で飛び回るハエを手で払い、一打に集中力を高めた。「なんとかしようと。その気持ちだけ」。バットは指1本、いや、指2本、短く持った。「2ストライクまでよりは短く持ちました。なかなかチャンスが作れない中で、いいチャンスが回ってきたので食らいつきました」と133キロスライダーをしぶとくはじき返し、前進守備の三遊間を抜いた。 通常は右足を大きく上げる1本足打法だが、決勝打の1スイングだけは違和感たっぷりのノーステップ打法に切り替えた。原監督は「え~、大谷君のまねをしたそうです(笑い)。みんながベンチでそう言ってたと。そうなんだなと(笑い)」と大きな目を見開いて明かした。日米球界の話題を独占するエンゼルス大谷の打法を勝負どころで拝借した。 マスクをかぶった東海大相模出身のオオシロサンは、東海大菅生出身の高橋を息ぴったりの好リードを披露。「両コーナーに制球されて、高さも低くきていたので内野ゴロが多かった。ナイスピッチングでした」と相棒をたたえた。大城が大きな一打で大きな1勝をもたらした。【為田聡史】

◆虎の子1点で虎を沈めた。巨人が1-0の完封勝ちで阪神に競り勝った。8回に大城卓三捕手(28)が値千金の左前適時打で1点をもぎとった。先発高橋優貴投手(24)は7回1安打無失点の快投でハーラー単独トップの9勝目をマーク。女房役の大城が構えるミットに丁寧かつ、テンポ良く81球を投げ込み、猛虎打線を沈黙させた。敵地から価値ある2勝を持ち帰り、首位阪神と1・5ゲーム差に肉薄した。あの日、胸に刻んだ経験が巨人高橋の投球に幅を持たせた。この日、普段は140キロ中盤はマークする直球が140キロ前半止まり。「ひどかったです」と辛口採点する中、頭を切り替えた。「真っすぐがもちろん大事。でも、そういう時もある」と緩急を有効に使いながら、丁寧な投球を心掛け、7回1安打無失点でリーグ単独トップの9勝目を挙げた。 虎キラーの本領を発揮し、今季4戦4勝。甲子園に限れば、3戦3勝で19イニング連続無失点と無類の強さを誇る。振り返れば、甲子園で行われた3月14日の阪神とのオープン戦が飛躍への糧だった。5回1失点ながら、不安定な内容で2軍に降格した。期待の裏返しだったが、課題を直視し、ファームで調整。開幕ローテに滑り込み、4月5勝で月間MVPに輝いた。 父の影響を受け、子どものころから阪神ファンで藤川、金本に憧れた。かつて、応援に訪れたこともある甲子園。新型コロナウイルス感染拡大の影響で「ジェット風船は今はないですけど」と少し寂しそうだったが、毎試合の登板前に「7回まではマウンドには立ちたいなと思って」と掲げる7回を投げ、G党から拍手を浴びた。【久保賢吾】 ▼巨人原監督(先発高橋の好投に)「粘りっこいピッチングをしてくれた。スピードガン的にはあまり出てないけれども、ボールの質は非常に良かった。今の位置にジャイアンツがいるのは、優貴の先発ピッチャーとしての貢献が高い」

◆115球の熱投は報われなかった。阪神先発の西勇輝投手(30)が、無念の1失点完投負けで6敗目を喫した。今季の伝統の一戦で、3戦3勝同士で迎えた巨人高橋との"ホコタテ対決"で投げ負け。プロ通算100勝も後半戦へ持ち越された。 8回に1点を先制されたが9回も続投。2死後、丸の打球に遊撃の中野が飛びついた。仲間の好守備に、グラブを何度もたたいた。わずか4安打に抑えても、味方の援護もなくビハインドの展開。だが最後まで気持ちは切れていなかった。矢野監督は「もちろんいつも、気持ち込めて投げてくれている。さらに、というところはあったのは俺もすごく感じた」と右腕の気迫に9回完投を託した。 中8日で迎えたマウンド。テンポ良く次々に巨人打線を打ち取った。3回まで無安打の完璧な投球。変化球を丁寧に投げ分け、的を絞らせなかった。2回1死では、ウィーラーの高いバウンドを背走しながらつかむなど、持ち前のフィールディングも随所で光った。 均衡が破られたのは8回。先頭の亀井に右翼フェンス直撃の二塁打を浴び、1死三塁から大城に外のスライダーを捉えられ、左前適時打を許した。それでも中島を外のスライダーで三ゴロ併殺に仕留め、最少失点。矢野監督も「今年一番良かったんじゃないかな。そういうボールを投げて、結果もそれに伴って、リズムを作ってくれたり」とたたえた。1失点完投は今季初のベストピッチ。足りなかったのは白星だけだった。 6月18日巨人戦(甲子園)で100勝に王手をかけてから3試合足踏み。2日広島戦(マツダスタジアム)では1イニング7失点と苦しんだが、この日は光が見える黒星になった。本来の制球力がさえ、マウンドに堂々と立ち続ける姿。福原投手コーチも「しっかり最後まで、最後の9回3人で抑えてくれて、次につながる登板。いいピッチングだったのかなと思います」とたたえた。約1カ月の五輪ブレークを経て、後半戦最初の登板で節目の勝利をつかみたい。【磯綾乃】 ▼阪神の1安打以下の敗戦は20年11月10日の巨人戦(甲子園)以来。巨人戦では通算18度目。甲子園で初めて巨人戦が開催された1936年(昭11)9月25日の対戦では、沢村栄治にプロ野球初のノーヒットノーランを許している。

◆巨人が1得点完封勝ちで首位阪神に競り勝った。先発高橋優貴投手(24)が、7回1安打無失点の好投で阪神のエース西勇に投げ勝ち、ハーラートップの9勝目を挙げた。8回先頭のベテラン亀井善行外野手(38)が右越え二塁打でチャンスメーク。続く、北村拓己内野手(25)が初球を着実に犠打で送り、大城卓三捕手(28)が話題独占中の日本人メジャーリーガーをほうふつとさせるノーステップ打法で決勝打を放った。6回には右翼手松原聖弥外野手(26)がネット際の右邪飛をくも男ばりのスーパーキャッチ。2連勝で首位阪神との3連戦に勝ち越し、1・5ゲーム差に詰め寄った。 試合後の原辰徳監督(62)の主な一問一答は以下の通り。 -試合時間わずか2時間20分のゲーム。率直な感想は 今日のゲームを取ることができたというのが、一番大きなことだと思います。両投手ともね、素晴らしいピッチングで、なかなか隙がない状態で、1点を何とか取ることができた。それを守ったということですね。 -8回の1点。二塁打から犠打を1球で決めて、追い込まれたあとの大城の適時打。あの1点の取り方は ツーベースっていうのは、もちろん打ったカメちゃんがすごい。ですけれども、1球でバントを決めたという。流れという部分というのは、どこかで勝負にはあるのかな、というふうには感じております。1球で送りバントを決めたというところに、大城が追い込まれても打つことができた(要因がある)と言ってもいいのかなというふうに思っております -大城は適時打の場面、2ストライクと追い込まれてからノーステップで、とにかく転がそうというのを感じた 大谷君のまねをしたそうです(笑い) -本人が言っていたのか いや、みんながベンチでそう言ってたと、そうなんだなと(笑い)。 -先発高橋が1安打の好投 まあ、粘っこいピッチングをしてくれた。それと球持ちが非常に良かったんではないでしょうか。スピードというのは決してスピードガン的にはあまり出てないけれども、ボールの質という点では、非常に良かったんではないかなと思いますね。前半、今の位置にジャイアンツがいるというのは、やっぱり、優貴の非常に投手として、先発ピッチャーとして貢献が高い。 -6回に松原がフェンス際の左邪飛を捕ったのも大きいプレーだった スパイダーマン(笑い)。今日、オオタニサンとスパイダーマンが出たな(笑い)

◆阪神は前半戦最後の巨人戦で完敗した。リーグ戦再開後の対巨人は2カードとも負け越し。原野球にしてやられる形になった。 山田 阪神バッテリーが8回に大城の三遊間を抜ける当たりで1点を取られたのは、紙一重だから責められない。ただ巨人は、なおも1死一塁で、本来はそのまま高橋にバントのはずが、代打中島を送った。あれが"機"を逃さない原野球なんだろう。 その8回は、西勇が1死三塁から大城に左前適時打を浴びて均衡が破れた。代打中島を併殺に取って、続く9回も続投し、その裏の勝機を待った。だが、巨人抑えのビエイラに3人で締められた。 山田 原監督が今最も好調な選手を、その瞬間で起用する戦いは徹底している。8回の代打中島は決めていたとはいえ、9回は抑えのビエイラに自信がないと起用できない。一方、阪神の9回は西勇に代打ロハスだったが、巨人が嫌がる糸井、原口らの代打起用が得策だったのではないだろうか。ただ両チームとも野手に疲れを感じるし、全体的にスイングが鈍い。 阪神が巨人高橋から放ったヒットは、中野の詰まった中前打だけだった。 山田 投手戦というより貧打戦だった。高橋の緩急のついた投球に的を絞れず振らされた。それでも強いスイングができれば、投手は失投しがちだけど、各打者の振りが鈍いからことごとく凡打になる。いわゆる、術中にハマったということだ。 阪神は再び、2位巨人に1・5ゲーム差に迫られた。 山田 前にもいったが、トップを走り続けた経験がないから、疲れもあるのは仕方がない。打者は気持ち的に余裕がないから早く打ちにいって、自身が優位に立てるカウントに整えられない。佐藤輝も完全にバテがきていて、自分のバッティングができない状態だ。新人だから無理もない。前半残り3試合のDeNA戦は、投手が踏ん張らないと勝てない。その後の球宴、五輪のブレーク期間は、特に野手がよほどうまく調整しないといけないだろうね。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

◆巨人松原聖弥外野手(26)が、フェンスを恐れぬ勇敢なプレーで先発の高橋をもり立てた。6回無死、西勇の右翼ファウルゾーンへの飛球をダッシュで追いかけ、タイミング良くジャンプ。フェンスに激突しながら、アウトをもぎ取った。原監督は「スパイダーマン(笑い)。今日、オオタニサンとスパイダーマンが出たな(笑い)」とジョークを交えながら、好守を絶賛した。

◆阪神13年ぶりの前半首位ターン決定は、またお預けになった。 先発西勇が9回1失点と大奮闘したが、打線が高橋らに今季最少の1安打で0-1敗戦。高橋は今季4戦4敗、甲子園19イニング無得点の天敵で、矢野燿大監督(52)は「悔しさを持って」とナインの奮起を促した。2位巨人にはセ・リーグで唯一7勝8敗と負け越し、ゲーム差は再び1・5。12日からの前半ラスト3連戦は、前回甲子園で3連敗したDeNA戦。猛虎の意地が試される。ド迫力ユニのウル虎が、力なく負けた。1点を追う9回は、巨人ビエイラの前に、先頭のロハスが3球三振。続く近本も三邪直に倒れ、最後は糸原が162キロに空振り三振。9イニングでは今季最短の2時間19分で、今季5度目の完封負けを喫した。エース西勇が9回1失点と大奮闘しただけに、矢野監督は「いかんせんね、ゼロじゃ勝てない」と打線に矛先を向けた。 巨人の先発左腕、天敵高橋の前にまた0を並べた。140キロ台前半の直球にカーブ、チェンジアップ、スライダーなど多彩な変化球に翻弄(ほんろう)された。最大の好機は3回。先頭中野が唯一のヒットを放って1死二塁の好機をつくったが、近本と糸原が凡退した。7回1安打無得点。高橋には今季4戦4敗、防御率1・08と抑え込まれる。しかも甲子園の対戦では3試合で1点も奪えず、無得点は19イニングに伸びた。指揮官もイラ立ちを隠せず、攻撃陣の奮起を求めた。 矢野監督 もちろん、ミーティングでもいろいろやってくれたりしているけど、プロである以上、結果で示していかないとダメ。プロとして、何度もやられるという悔しさを、しっかり持ってやっていきます。 もどかしい空気が漂う。この日も前日からの継続で4番大山、6番佐藤輝の並びで臨んだが連日の不発。無安打の6番佐藤輝は8回に左腕大江に三振に斬られ、三振数が117個となった。あと4三振で中日福留が99年に記録した新人最多の121三振に並ぶ。 追われる立場特有、胃がキリキリするような苦しさがある。2位巨人との対戦成績は7勝8敗となり、今季初めてセ・リーグ球団相手に黒星が先行。08年以来13年ぶりの前半首位ターン決定はまたもお預けで、再び1・5ゲーム差まで迫られた。指揮官は「最後に勝てばいい。何とも思っていない」と自らを奮い立たせるように語気を強めた。 前半は残り3試合。最後のカードは、前回同じ甲子園で同一カード3連敗を喫したDeNA戦だ。矢野監督は「残り3試合なんでね、打者陣の奮起というか、残り3試合に向けて、気持ちをぶつけてほしいなと思います」と闘志あふれる戦いを求めた。笑って五輪ブレークを迎えられるか。まさに前半戦の正念場、踏ん張りどころだ。【桝井聡】 ▼阪神の前半戦首位確定は最短13日となった。12日からDeNAに○○または○△なら、13日の巨人-ヤクルト戦の結果と無関係に決定。13日に巨人△または●なら、前記以外にも決まる場合がある。 ▼阪神のヒットはルーキー中野の1本だけ。新人の1安打だけは、20年9月3日日本ハム戦の小深田(楽天)以来で、阪神では56年7月7日中日戦の大津以来65年ぶり2度目。この試合は相手先発の杉下に延長10回まで1安打0点に抑えられ、最後は杉下のサヨナラ安打で0-1で敗れた。 ▼阪神の1安打以下の敗戦は20年11月10日の巨人戦(甲子園)以来。巨人戦では通算18度目。甲子園で初めて巨人戦が開催された1936年(昭11)9月25日の対戦では、沢村栄治にプロ野球初のノーヒットノーランを許している。 ▼スコア0-1の1安打以下敗戦は、82年6月9日のヤクルト戦以来39年ぶり。巨人戦では、81年4月11日以来、40年ぶり。安打者はいずれも北村照文。

◆115球の熱投も報われなかった。阪神西勇が今季初の1失点完投も、プロ通算100勝は後半戦へ持ち越された。 中8日のマウンドで、テンポ良く巨人打線を打ち取った。3回まで無安打の完璧な投球。2回1死ではウィーラーの高いバウンドを背走しながらつかむなど、持ち前のフィールディングも随所で光った。 痛恨だったのが8回だ。先頭亀井に右翼フェンス直撃の二塁打を浴び1死三塁で大城に外のスライダーを捉えられた。それでも中島を三ゴロ併殺に仕留め、最少失点。矢野監督も「今年一番良かったんじゃないかな。そういうボールを投げて、結果もそれに伴って、リズムを作ってくれたり。いかんせんね、ゼロじゃ勝てないんで」とたたえた。足りなかったのは白星だけだった。 6月18日の巨人戦(甲子園)で100勝に王手をかけてから、3試合足踏み。それでも2日広島戦(マツダスタジアム)では1イニング7失点と苦しんだが、この日は光が見える黒星になった。節目の勝利をつかむのは、後半戦最初の登板だ。

◆「ウル虎の夏2021」として開催され、お笑いコンビ「ココリコ」の遠藤章造(49)が甲子園に登場した。試合開始直前にはスタメン選手の呼び出しを行うと「気持ちが高ぶってきましたね。今年はいいところにいるので、秋に16年ぶりの美酒をと思っています」と声を弾ませた。 D1位・佐藤輝(近大)を初めて近くで見たという遠藤は「糸井選手を初めて見たときもデカっと思ったんですけど。それ以上のデカさ。(沖縄の)美ら海水族館に行って、初めてジンベイザメを見た時のような感覚でした」とジョークで笑わせた。 7月9日から甲子園で開催されている巨人、DeNA6連戦には、虎党の芸人が日替わりで訪れてパフォーマンスなどで楽しませている。

◆巨人が接戦を制した。両軍無得点で迎えた八回に亀井が右中間二塁打で出塁。北村の犠打の後、大城が左前適時打を放ち、これが決勝点となった。先発の高橋が7回1安打無失点と好投し、ハーラー単独トップの9勝目(3敗)。八回は大江、九回はビエイラが無失点でつないだ。 敵地で阪神打線を封じ込めた。前半戦最後の「伝統の一戦」。2・5ゲーム差で阪神を追う巨人にとって、この勝敗の意味は大きい。巨人の先発、高橋も自身に重圧をかけてマウンドへ向かった。 「前半戦のヤマ場になる試合だと思うので、登板する責任を感じて、チームに貢献できるように頑張ります」 試合前の時点でリーグトップの8勝3敗、防御率2・71とチームを引っ張る存在に成長した左腕は自覚十分。阪神のエース、西勇との投げ合いは一歩も譲らず、七回まで両軍無得点。高橋は7回1安打無失点と文句なしの内容で、八回に巨人が大城の適時打で1点をもぎ取った。左腕は100キロ台のカーブと140キロ台前半の直球で緩急をつけ、決め球のスクリューでテンポよく打ち取った。 高橋優貴を労う原辰徳監督=甲子園球場(撮影・安部光翁) 「自分が憧れていた場所でもある。マウンドに立てることに感謝したい」 甲子園について、高橋はかつて、こう語った。東京・東海大菅生高3年時の夏には西東京大会決勝で敗れ、甲子園出場はならず。父の影響で幼少時は虎党だったという高橋にとって特別な場所。この日を含め、甲子園での連続無失点は19イニングに伸びた。

◆阪神は巨人投手陣の前に打線が今季最少の1安打に封じられ、今季5度目の完封負けを喫した。 先発した阪神・西勇輝投手(30)が9回を4安打1失点と好投するが、援護がなく、今季6敗目(4勝)。通算100勝目はまたもお預けとなった。 この日は逆球が目立つなど、普段より制球を乱しながらも粘りの投球で、七回までは無失点。だが、八回の先頭、亀井に右翼フェンス直撃の二塁打を許し、続く北村の投前犠打で1死三塁のピンチ。大城には2ストライクと追い込みながらも3球目をとらえられ、三遊間を破る適時打を浴びた。 西勇は6月18日の巨人戦(甲子園)で今季4勝目を挙げて以降、3戦連続白星なしとなった。

◆阪神は先発の西勇輝投手(30)が9回1失点と好投したものの、打線は1安打に抑え込まれ、完封負けを喫した。矢野耀大監督(52)の一問一答は以下の通り。 ーー西勇はこれ以上ない内容だった 「前半からね。今年一番よかったんじゃないかな。そういうボールを投げて、結果も伴って、リズムを作ってくれたり。いかんせんね、ゼロじゃ勝てないんで」 ーー気持ちの面も出ていた 「もちろんいつもね、気持ち込めて投げてくれているし。さらにっていうところは、あったのは俺にもすごい感じたけど」 ーー八回1死三塁での大城の打席は2ストライクからいろいろな選択肢があるなか、勝負にいった結果 「いやいやそれはもう、あとからどうこういうのは簡単やけど。勇輝とリュウ(梅野)が選択したボールなんで。それは仕方がないし。あの1点がダメだっていう風にいえるような内容じゃないんでね。それよりもバッターがやっぱり、あのピッチングで、何とかしないとダメだし。今日は結果的にできなかったけど。残り3試合なんでね、打者陣の奮起というか、残り3試合に向けて気持ちをぶつけてほしいなと思います」――巨人の先発・高橋に苦戦「もちろん、ミーティングでも、いろいろやってくれたりしているけど、プロである以上、結果で示していかないとダメだし、それだけやられているということは、まだやれることがあると思う。今日も向こうがすごく良かったというふうには見えないんで。プロして何度もやられるという悔しさをしっかり持ってやっていきます」ーー佐藤輝への厳しい攻めがこの3試合で感じられた「まあそれはずっと続くことやし、この3試合で急にっていうことじゃないし、それはこっちの状態が悪ければそういうふうに見えることもあるし、1年間ずっとあるんでね、この3試合だけではない」――シーズンは長いが巨人に7勝8敗「だからそれはいつも言うけど途中で勝ったり負けたりは数字やからあるから、そんなん俺らいつも一喜一憂して戦うことはないし、もちろん最後優勝というところ目指して、全部勝ち越して全部勝てることを目指してやっていくけど、その過程のことなんでね、それに関してどうこう言うことはないし、今負け越したって最後勝てばいいんだから、それは何とも言えない。いいですか?」

◆巨人は先発の高橋が7回81球を投げ1安打の好投でリーグ単独トップの9勝目。大江、ビエイラも3人でピシャリと抑え、阪神打線を1安打完封した。打っては大城が八回に値千金の決勝左前適時打。首位・阪神との敵地での直接対決を2勝1敗と勝ち越し、ゲーム差は1・5に縮めた。原監督が試合を振り返った。 --試合時間わずか2時間20分のゲーム 「今日のゲームを取ることができたというのが、一番大きなことだと思います。両投手とも素晴らしいピッチングで、なかなか隙がない状態で、1点を何とか取ることができた。それを守ったということですね」 --八回の1点。亀井の二塁打から、北村が犠打を1球で決めて、追い込まれた後に大城が適時打 「二塁打というのはもちろん、打ったカメちゃんがすごいんで。ですけれども、1球でバントを決めたという。流れという部分というのは、どこか勝負にはあるのかなと感じております。1球で送りバントを決めたというところにね、大城が追い込まれても打つことができた(要因がある)と言ってもいいのかなと」 8回、値千金の決勝打を放った大城卓三=甲子園球場(撮影・中井誠) --先発の高橋を中心にディフェンスも堅かった 「もちろんそういうことがないと、こういうゲームにはならないと思いますね」 --タイガースに勝ち越したことは大きい 「まだまだ、これから熱い戦いが続きます。しかし今日のゲームを取って、初戦敗れながらも(残りの2戦を)取れたというのは非常に大きいというふうに思います」

◆巨人・大城卓三捕手(28)が八回に左前適時打を放ち、決勝点を刻んだ。 「なんとかしようと。その気持ちだけです。食らいつきました」 試合後は健康上の問題が理由で今夏限りで退任する母校・東海大相模高の門馬敬治監督(51)への思いも明かした。 「本当に、びっくりしました。東海大相模高校に行って、門馬監督に出会えていなかったら、今の世界にはいないと思う。本当に一番の恩師です」 沖縄から〝野球留学〟した同校で、大城は2010年夏に4番として甲子園準優勝。門馬監督からは野球の指導だけでなく、人として多くを学んだといい、「『一日一生』という言葉は今も、常に忘れずにいます」と同監督が使っていた「一日を一生涯だと思って生きる」という意味の金言を胸に刻んでいる。 恩師との思い出の地・甲子園で、首位・阪神との直接対決カードの勝ち越しを決める一打を放った大城は、守っても先発の高橋を7回1安打無失点の好投に導いた。

◆巨人・原辰徳監督(62)が、決勝打を放った大城とフェンス際で好守を見せた松原を「オオタニサンとスパイダーマンが出た」とたたえた。 0-0で迎えた八回1死三塁で大城が値千金の左前適時打。2球で追い込まれてカウント0-2となったところで、長打が持ち味の大城がバットを短く持ち、ノーステップに変えて三遊間を抜くタイムリーを放った。 これを見た原監督が試合後、米大リーグに移籍後にノーステップ打法に変えたエンゼルス・大谷に例えて絶賛。「大谷君のまねをしたそうです(笑)みんながベンチでそう言っていて、そうなんだなと」と説明した。 六回には死球で戦線離脱した梶谷に代わって右翼にまわった松原が、西勇の邪飛を好捕。ジャンプして打球をキャッチした直後にファウルゾーンのフェンスに腰かけるような形で着地し、松原は思わず拍手を送った阪神ファンにペコリ。これを指揮官は「スパイダーマン」と例えた。

◆また巨人に負けちゃうの? そんなの嫌や! 阪神は2位巨人に0―1で敗れ、ゲーム差は再び1・5に。対戦成績も今季初めて7勝8敗と黒星が先行した。1勝2敗で6月18―20日に続く2カード連続負け越し。阪神OBで〝代打の神様〟とうたわれた八木裕氏(56)=本紙専属評論家=は本当の勝負となる9、10月に向けて、打倒巨人への3カ条を提案した。巨人に対戦成績で7勝8敗と今季初めて負け越した。開幕から戦力的にもチーム状態的にも阪神が上だったが、巨人も立て直してきた。現状は五分五分の状態。巨人戦のタイミングで阪神のチーム状態が落ちたので、この2カードは阪神の負け越しになった。 ■あと3試合を終えればひと区切り それでも巨人には故障者が出たり、外国人が帰国したりしているので手に負えないとか、歯が立たないというほど差があるわけではない。あと3試合を終えれば前半戦も終了し、ひと区切りできる。今年は立て直す時間が十分ある。巨人は9、10月が勝負と考えているだろう。阪神もその時にどう戦力を整えて迎えることができるか、だ。 【①原監督を恐れるな】 優勝経験豊富な原監督の存在は、意識しているだろう。阪神は今、首位にいるから巨人の足音に恐怖を感じるだけで、別に抜かれても構わない。勝負は9月の中盤から10月。そこに向けて、どうやって戦力の充実を図っていくか。これが最大のポイントになる。今、恐れてもしようがない。■問題は得点を取れない打線【②佐藤輝、大山は直球を待って直球を打てる状態にすべし】好投した西勇は責められない。問題は得点を取れない打線にある。調子が上がってこない打者をどう軌道修正して、いいときの状態に戻すことができるか。元気がなくなってきた佐藤輝、4番に戻った大山が安定しないのは、メカニック的な理由がある。2人に共通していえるのは、直球を狙っているのに、その直球に振り遅れているというところだ。佐藤輝の場合、かなり上段で構え、左足体重で待っている。あの位置からでは自分のスイングができるところにバットが到達するまでの時間が長すぎて、振り遅れる。大山は少しよくなってきたが、まだタイミングが合っていないので、振り遅れる。バックスイングは後ろに大きく取ればいいというものでもない。4回、内野ゴロに倒れた阪神の大山悠輔=甲子園球場(撮影・松永渉平)【③小刻み継投に惑わされるな】巨人の投手陣は豊富なので、目先を変える意味でどんどん継投に出てくる。攻撃を食い止めるための継投に惑われることなく、阪神のやり方をやっていけばいい。一方、阪神はスアレス以外の信頼できるリリーフが必要だ。これはやりくりしながら、探してほしい。巨人も試行錯誤しているうちに今の形をつくった。人材はいるので、悲観することはない。■五輪ブレーク利用し状態高めるべき東京五輪開催によるブレーク(休養期間)がある分、例年よりもシーズンは長い。勝負は先。秋口にはピリピリする大勝負になるだろう。そのためにもペナントレースの空白をうまく使って、プロ野球選手冥利に尽きるような緊張感とやりがいを持って臨めるチーム状態に、今一度もっていってほしい。(本紙専属評論家)

◆首位に立っているとはいえ、宿敵に完封負けを喫してその差は再び1・5ゲーム。対戦成績は7勝8敗となり、今季初めて巨人の後塵を拝することになった。また勝ち越せないのか? いや、今年こそ厚い壁をぶち破る。矢野監督はファイティングポーズをとった。 「もちろん最後、優勝というところ目指して、全部勝ち越して、全部勝てるということを目指してやっていくけど、その過程のことなんでね。それに関してどうこう言うことはない。今、負け越したって、最後勝てばいいんだから」 9回1失点の西勇は責められない。前日もわずか1得点の打線が低調だった。三回にD6位・中野(三菱自動車岡崎)が中前打で出塁し、2死三塁とチャンスを作るも、糸原は二ゴロ。その後は18人連続アウト。昨年11月10日の巨人戦(甲子園)以来となる1安打完封負けで、高橋には今季4戦4敗とカモにされている。「ミーティングでもいろいろやってくれたりしているけど、プロである以上、結果で示していかないとダメ」とナインの奮起を促した。 首位を独走してきたが、ここに来て明らかに打線はお疲れ気味。10日から4番に復帰した大山は直近5試合で打率・235と復調途上、シーズン序盤にチームを引っ張ったサンズは同・167と明らかに調子が落ちている。近本も7月は打率・209。復調が待たれるところだ。 巨人には2007年以来勝ち越しがなく、9年連続負け越し中。2リーグ分立後、虎の4度の優勝のうち、3度は永遠のライバルに勝ち越して頂点に立った。いわばG倒は優勝への必須課題。勝利を積み重ねてこそセ界制覇への道は開ける。 「(前半戦は)残り3試合。打者陣の奮起というか、残り3試合に向けて、気持ちをぶつけてほしい」 矢野監督はナインにハッパをかけた。巨人と次に対戦するのは9月3-5日の3連戦(甲子園)。12日からの前半戦ラストとなるDeNA戦で首位ターンを決め、後半戦へと弾みをつける。(新里公章)

◆0-0の八回1死三塁。大城の打球が三遊間を抜けると、西勇は上半身を反らして天を見上げ、悔しさをにじませた。4安打1失点完投も今季6敗目(4勝)。王手をかけているプロ通算100勝は、3戦連続でお預けとなった。 「今年、一番よかったんじゃないかな。そういうボールを投げて、結果も(攻撃の)リズムを作ってくれたり。いかんせん、ゼロじゃ勝てない」 矢野監督は、打撃陣に怒りの矛先を向けた。 心技体。すべて完璧だった。四回、先頭の松原に中前打を許し、初出塁されて2死三塁の危機。だが、岡本和をチェンジアップで遊ゴロに打ち取ると、右拳を突き上げてガッツポーズした。八回、大城に決勝打を浴びてからも気持ちは切れなかった。九回もマウンドに上がると松原、坂本、丸と3人で料理し、反撃ムードを醸し出したが...。好投は報われず、6月18日の巨人戦(甲子園)で通算99勝目を挙げて以来、3連敗だ。 だが、前半戦最後の伝統の一戦でエースの存在感を示した。「僕が3、4番手ぐらいにいるのがチームを強くすると思っていますので。若手の突き上げが一番ほしい」。シーズン前に何度も口にしていた。今、勝ち星だけみれば青柳(8勝)、秋山(7勝)、ガンケル(6勝)、さらに5勝を挙げているD1位・伊藤将(JR東日本)よりも少ない。先発5番手だ。 6敗はしたが、そのうち4度はクオリティー・スタート(先発投手が6イニング以上を投げ、3自責点以内)。これを言い訳材料にしないのがエースの意地とプライドだ。指揮官は「いつも気持ちを込めて投げてくれている。さらに、というところがあったのは、俺にもすごい感じた」とたたえた。節目の通算100勝は東京五輪後、シーズンが再開される8月13日以降にとっておけばいい。(三木建次)

◆巨人は11日、阪神15回戦(甲子園)に1―0で勝ち、首位チームとの3連戦に2勝1敗で勝ち越してゲーム差を1.5に縮めた。先発した高橋優貴投手(24)が、7回1安打無失点でリーグトップの9勝目(3敗)。元阪神ファンの左腕が、今季阪神戦で4戦全勝、甲子園で3戦3勝と無類の強さを発揮し、チームに前半戦首位ターンの可能性を残す貴重な白星をもたらした。 甲子園が、3年目左腕の独り舞台となった。前半戦最後の〝伝統の一戦〟で主役を張ったのは高橋。7回を投げ、出した走者は安打の中野と四球のマルテだけ。リーグトップの9勝目をつかみ、高揚感を漂わせた。 「今日は真っすぐに力がなかったけど、(捕手の大城)卓三さんも緩急を使ったリードをしてくれて、応えることができた。一つ引き出しが増えたかなと思います」 直球の今季最速は148キロだが、この日は143キロ。全82球のうち35球にとどめるなど武器の直球に固執せず、120キロに満たないカーブ、スライダー、スクリューを駆使して緩急で翻弄した。 21アウトのうち10個が内野ゴロ。中でも新境地を感じさせたのは七回だ。4番・大山ら中軸に投げた直球は1球だけ。三者凡退に封じ、20本塁打を放つ怪物ルーキー・佐藤輝も内角攻めで無安打に抑えるなど、打たせて取るスタイルへと華麗に変貌を遂げた。 これで阪神戦は今季4戦4勝。甲子園では3勝、防御率0・00と圧倒的な数字を残す。この日の相手はエース・西勇。今季チームが3戦3敗と苦手にしていた相手に投げ勝ち、初めて土をつけた。これで、甲子園での連続無失点を19イニングまで伸ばした。 いまや虎党を歯ぎしりさせる立派な〝虎キラー〟だが、実は茨城県で育った少年時代は阪神ファン。金本知憲、藤川球児に憧れ、甲子園まで足を運んだ試合で、七回にジェット風船を飛ばしたのはいい思い出だ。コロナ禍で、その光景は見られなくなったが、プロ野球選手として、1児の父として「小学生の頃には考えもつかないこと。小さい子たちに夢を与えられる選手になりたい」と強い思いを抱く。 「今の位置にジャイアンツがいるのは、やっぱり、優貴の先発投手としての貢献度が高い」と原監督は左腕をたたえた。チームは2試合を残して阪神と1・5ゲーム差。前半戦首位ターンの可能性を残した。最大8ゲーム差からの逆転Vへ、この1勝が大きな意味を持つ。(谷川直之)

◆言い過ぎかもしれませんが、西勇はエースだからあえて言います。不思議な好投です。西勇の1失点完投は、勝利には結びつきませんでした。 「痛いな、この負けは。勝っていたら首位ターンが確定して、球宴休みと五輪休みの1カ月を余裕をもって過ごせていたのに。残り3試合、巨人の勝ち負けを気にしながらやらんといかんようになってしまった」 ベテラン編集委員三木建次です。シーズン中断期間まで、残り試合は阪神が12日からDeNAと3連戦。1・5ゲーム差に迫った巨人は13日からヤクルトと2連戦。巨人が連勝しても阪神があと2つ勝てば首位ターンは確定ですが、先に伸びてしまいました。 「相手の高橋には今季勝ててなかった。10日の伊藤将は明らかに疲れているのがわかった。打者もみんな疲れてきている。こういう苦しいときこそ、経験も実績もある西勇にエースの本領を発揮してもらわんと、と思っていたんやけど」 虎番サブキャップ新里公章も、ビヤ樽の隣で声が沈んでいます。 「(100勝に王手をかけてから)2試合勝てていなかったので、逆にそろそろ(勝つ)って思っていました。いい投球だったんですけどね」 三木が経験、実績、エースの本領という言葉を壊れたテープのように何度も繰り返していたので思い出した話があります。西勇と同様、内外角にシュート、スライダーを投げ分け、制球力を武器に通算213勝を挙げた元広島の北別府学が、落合博満(セ・リーグでは中日、巨人でプレー)との対戦を振り返って、こんな話をしたことがあります。 「落合さんてヘンな人よ。文句なしのいいコース、いい球で攻めていったときほど簡単に打たれた。逆に『あ~いかん』と思う投げ損ねの甘い球がいったときに『うそ? なんであんな球を打てんの?』と思うようなスイングで凡退した。ようわからん人じゃった」 外角低めから入って内角球で体を起こして、膝元のシュートでファウルを打たせて、最後は外角低めにスライダー。そんな投球ができたときに限って、途中のいい球を痛打されたり、最後の決め球を見事に弾き返されたと言います。 実はこの日の西勇が同じような抑え方でした。コーナーにビシビシ決まるわけではなく、テレビ中継で解説していた阪神レジェンドテラーの掛布雅之さんが、逆ダマが多い、コースも高いと心配するほどでしたが、巨人の中軸打者はそれを打ち損ねていったのです。七回までに西勇が許していた安打は、若手の松原と北村に浴びた単打2本のみ。八回の決勝打も4年目の大城でした。 昔の北別府vs落合のように「コントロールのいい西勇がそんなところに投げてくるはずがない」という感覚が、読みを外したり、スイングのタイミングをズラす結果になったのかもしれません。ビヤ樽が言った西勇の「実績」と「経験」で抑えられた面もあったのでしょう。 今季4勝6敗となった西勇は、1失点完投はしたものの、まだ本調子ではないということになります。エースはもう球宴前は登板がありません。通算100勝を後半戦に持ち越しました。1カ月の休みの間に調子を取り戻して、再開される8月13日からの広島3連戦(京セラ)で、本領を発揮してもらいましょう。

◆やはり、阪神は巨人には勝てないのか...。阪神・西勇、巨人・高橋の投げ合いは七回を終わってお互いに得点を許さず、がっぷり四つ。試合が動いたのは八回、先頭打者のベテラン、亀井の二塁打であった。 続く北村にあっさりと初球にバントを許したのも問題なんだけど、それ以上に次打者・大城をカウント0-2と追い込みながら、レフトへのタイムリーを浴びた。いや、浴びる可能性を生んだ梅野のリードがもったいない。 『巨人に勝たねば、優勝はなし!!』。それを心底、感じてしのぎを削るリードをしてくれ!! 確かに、3球目は外のボールゾーンにミットを構えていたけれど...。 打者をポンポンと追い込んだらアウトを急ぎたいのが投手だろうし、ましてや通算100勝目前で足踏みしている西勇だから、なおのことかも...。女房は石橋をたたいて壊しても渡らないくらいのリードをしてほしかったのだ。 と、言う前に1安打で勝てというのも無理なんだけどさぁ。前半戦を首位ターンしなかったら、五輪期間中も休みなしで連日の特打ちや!!

◆案の定だ。11日の巨人戦。両軍無得点で迎えた八回1死三塁、阪神の先発・西勇はカウント0ー2と追い込みながら、3球目のスライダーが甘くなり、大城に左前へ適時打を浴びた。試合は0ー1の完封負け。甲子園での首位攻防戦は1勝2敗と負け越し、再び1・5ゲーム差となった。 ボールを自由自在に操り、コントロールは抜群。球種も豊富で、どれでもストライクが取れる。でも、なぜか勝てない。バックが点を取ってくれないー。ここまでの西勇の私の印象だ。いわゆる「勝ち味がない」というヤツだ。 開幕投手を藤浪に譲ったものの、交流戦スターもリーグ戦再開も、節目の試合は青柳でもガンケルでもなく、西勇がマウンドに立った。しかし「貯金」ができない。例えばきわどいコースをボールと言われれば、制球に自信があるだけに、またコーナーをつく。それが甘くなって、痛打を浴びる。そんなシーンが記憶に残る。何より、相手よりも見方打線との〝相性〟が悪すぎる。投球のリズムが合わないのか。これはツライ。 西勇はこれで自身3連敗となり、4勝6敗。登板試合のチーム勝敗は6勝8敗1分となかなか「西勇」で波に乗れない。チームは12日からのDeNA3連戦(甲子園)で前半戦が終了。東京五輪期間中の中断を経て、8月13日の広島戦(京セラ)から、後半戦が始まる。おそらく、この試合も西勇の先発だろう。その日まで、あと1カ月。「過去は変えられないが未来は変えられる」矢野監督の口癖を信じるしかない。

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
阪神
47313 0.603
(↓0.007)
-
(-)
62334
(-)
289
(+1)
80
(-)
70
(-)
0.251
(↓0.003)
3.280
(↑0.03)
2
(-)
巨人
433010 0.589
(↑0.006)
1.5
(↑1)
60344
(+1)
280
(-)
108
(-)
50
(+1)
0.251
(↓0.001)
3.230
(↑0.04)
3
(-)
ヤクルト
40329 0.556
(-)
4
(↑0.5)
62341
(-)
322
(-)
79
(-)
50
(-)
0.252
(-)
3.740
(-)
4
(-)
中日
323912 0.451
(-)
11.5
(↑0.5)
60244
(+5)
277
(+5)
47
(+1)
41
(-)
0.239
(-)
3.230
(↓0.02)
5
(-)
DeNA
294311 0.403
(-)
15
(↑0.5)
60329
(+5)
394
(+5)
83
(+1)
18
(+1)
0.260
(↑0.001)
4.530
(↑0.06)
6
(-)
広島
274210 0.391
(-)
15.5
(↑0.5)
64282
(-)
344
(-)
57
(-)
39
(-)
0.258
(-)
3.950
(-)