阪神(2対2)ヤクルト =リーグ戦11回戦(2021.06.30)・阪神甲子園球場=
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ヤクルト
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阪神
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勝利投手:-
敗戦投手:-

本塁打
【ヤクルト】村上 宗隆(24号・4回表ソロ)
【阪神】マルティネス(13号・8回裏ソロ)

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◆ヤクルトは1-1で迎えた8回表、2死二塁の好機からサンタナが適時二塁打を放ち、勝ち越しに成功する。対する阪神はその裏、マルテのソロが飛び出し、試合を振り出しに戻した。続く9回は阪神・スアレス、ヤクルト・マクガフがそれぞれ無失点に抑え、試合は規定により引き分けに終わった。

◆阪神近本光司外野手(26)が好調だ。6月はここまで33安打を放ち月間打率は3割6分3厘。特にリーグ戦再開後は10試合で41打数17安打、打率4割1分5厘の猛打を見せており、無安打だったのは26日DeNA戦の1試合しかない。

◆ヤクルト元監督の古田敦也氏(55)とABCテレビ(朝日放送)のヒロド歩美アナウンサー(29)が、ファーストピッチセレモニーを行った。 ヒロドアナは、高校野球のユニホームのように胸に「HIRODO」、背中に「1」と書かれた白いTシャツと白のショートパンツ姿で登場。豪快なワインドアップで左足を振り上げ、キャッチャー役の古田氏へ投げ込んだ。ボールは手前でワンバウンドし、ヒロドアナは思わず悲鳴を上げるも、球場の観客は温かい拍手を送った。 2人がキャスターを務める、テレビ朝日系の全国高校野球選手権大会のダイジェスト番組「熱闘甲子園」は2年ぶりに、8月9日から放送される。

◆阪神佐藤輝明内野手(22)が、初回の第1打席で空振り三振に倒れ、今季100個目の三振を喫した。 ヤクルト先発高梨に3球フォークを続けられ、最後も低めのボール球をスイングしバットは空を切った。 71試合目での到達で、143試合換算なら201三振。93年に127試合で204三振を喫したブライアント(近鉄)のプロ野球記録に匹敵するペースとなっている。球団最多は14年ゴメスの166。球団新人最多は19年近本の110。

◆ヤクルト村上宗隆内野手(21)が、0-1で迎えた4回に同点ソロを放った。 先頭で打席に入ると、アルカンタラの浮いた135キロスプリットを右中間席へ運んだ。「追い込まれていたけど、甘く入ってきた球をミスショットすることなく捉えることができた」と納得の一打となった。2戦連発で今季24本目。リーグトップで並んでいた巨人岡本和に1本差をつけた。

◆テレビ朝日系「熱闘甲子園」でキャスターを務める、ヤクルト元監督の古田敦也氏(55)とABCテレビ(朝日放送)のヒロド歩美アナウンサー(29)が、ファーストピッチセレモニーを行った。 ヒロドアナは、高校野球のユニホームのように胸に「HIRODO」、背中に「1」と書かれた白いTシャツと白のショートパンツ姿で登場。豪快なワインドアップで左足を振り上げ、キャッチャー役の古田氏へ投げ込んだ。ボールは手前でワンバウンドし、ヒロドアナは思わず悲鳴を上げるも、球場の観客は温かい拍手を送っていた。 大胆に左足を上げるフォームは、古田氏が伝授したもので「ちょっと足上げたくらいが目立つんじゃないかって。せっかくの、甲子園のマウンドなんて1度しかないからね」と明かした。ヒロドアナは「率直に改めて高校球児がすごい、プロの方もそうですけど、というのを感じました」と、球児たちのすごさを実感していた。 古田氏は、東京オリンピック(五輪)の侍ジャパンメンバーに内定した阪神梅野について「チームの快進撃を支えているのが彼なんで。打つ、投げるという技術的なことだけじゃなくて、精神的な役割、支柱になれるという判断で稲葉監督も選んだと思うので。頑張ってほしいですね。いい結果を望みます」とエール。怪物ルーキーの佐藤輝明については「なかなかね、プロに来て、150キロの球とか、変化球とか簡単に打てないはずなんですよ。簡単に打つよね。どうしたのって聞きたいくらいです。アジャストできるというのは、遠くに飛ばせる能力だけよりも、合わせる能力がすごく高いのかな。すごくいい選手だと思います」と絶賛した。

◆阪神近本光司外野手(26)がリーグトップに並ぶ16盗塁を決め、先制点に導いた。 1回裏、先頭で中前に運ぶ。1死一塁から二盗を成功させ、3番ジェフリー・マルテ内野手(30)の左中間適時二塁打で先制のホームを踏んだ。 マルテからは「近本が出塁して二塁まで進んでくれたから、あとは自分の仕事をすることに集中したね。初回に先制することができて良かったよ」と感謝された。

◆阪神が、劣勢の試合を引き分けに持ち込んだ。 1-2と1点を追う8回。ジェフリー・マルテ内野手(30)が初球を捉え、一塁側ファウルゾーンに放った飛球をヤクルト一塁手が落球。カウント1-2からの4球目を右翼へ運んだ。マルテは三塁まで激走。三塁打とみられたが阪神矢野燿大監督(52)がリクエストを要求。右翼ポール直撃と認定され、同点13号ソロへと判定は覆った。マルテは2度、救われた。 阪神が先手を取ったのは阪神。先頭の近本光司外野手(26)の中前打と二盗で1死二塁の好機をつくり、マルテが左中間を破る適時二塁打。1点を奪った。 だが4回、先発のラウル・アルカンタラ投手(28)が先頭の村上宗隆内野手(21)に同点の24号ソロを浴びた。 両チームともに追加点の取れないまま迎えた終盤8回。ヤクルトが1死二塁からドミンゴ・サンタナ外野手(28)が、前進守備の右翼・佐藤輝明外野手(22)の頭上を越える適時二塁打。2-1と勝ち越した。だがその裏に阪神に追いつかれ、痛恨の引き分けとなった。

◆阪神ジェフリー・マルテ内野手(30)が値千金の同点弾を放った。 1点を勝ち越された直後の8回裏1死、右翼ポール際に大飛球を打ち上げる。いったんはフェンス直撃の三塁打と判定されたが、リクエストによるリプレー検証の結果、ポール直撃の13号ソロに判定が覆った。 1回には左中間適時二塁打で先制点をたたき出し、3回にも左前打。勢いのまま、終盤に1発を決めた。

◆阪神が初回に1点を先制した。先頭の近本が中前打のあと、二盗も決めて1死二塁。マルテの適時二塁打でホームを踏んだ。 ヤクルトが4回、同点に追いついた。先頭の村上が24号ソロ。なおも1死満塁としたが、高梨の併殺打で勝ち越しはならず。 ヤクルトが8回1死二塁からサンタナの適時打で勝ち越し。だが阪神はその裏、マルテの13号ソロで引き分けに持ち込んだ。

◆阪神ラウル・アルカンタラ投手は甲子園3度目の登板でも本拠地勝利はならなかった。 直球で押す投球を続けたが、4回に村上に変化球を右翼席に運ばれ、同点に。7回1死二塁で及川にマウンドを譲った。「全体的には悪くなかったと思うね。梅野とも息が合っていたと思うし、配球面でも本当によく引っ張ってくれたよ」。奮投したアルカンタラに対し、矢野監督は「1個1個のボールはすごくいい。まずはアルカンタラがよく粘ってくれた」とねぎらった。

◆阪神守護神ロベルト・スアレス投手は同点の9回1イニングを完全投球した。 先頭の8番元山から156キロで空振り三振を奪うと、山崎は遊ゴロ、塩見は一直に仕留めた。球団記録の登板連続セーブは14試合でストップしたが、「勝つことはできなかったけど、みんながいい仕事をしたから負けることなく終わることができた。いいゲームだったと思うし、明日からまた頑張るよ」と充実感を漂わせた。

◆東京オリンピック(五輪)侍ジャパンメンバーの阪神岩崎優投手は2夜連続失点となった。 同点の8回に登板し、1安打1犠打で2死二塁。7番サンタナに前進守備を敷いていた右翼佐藤輝の頭上を越され、一時勝ち越しを許した。それでも矢野監督は「今までも助けてもらっている。スグル(岩崎)もみんなに見えないかもしれないけど、内面の強い男なんで。やられたらやり返すというのはやってくれる」と揺るぎない信頼を言葉にした。

◆6番に降格して2戦目の阪神大山悠輔内野手(26)は痛烈なライナーで「Hランプ」をともした。 4回1死、2ボール2ストライクから高梨の内角144キロ直球を強振し、左前に運んだ。これが14打席ぶりの安打となった。同点の9回には先頭で空振り三振に倒れ、サヨナラ機をつくり出せず。悔しさは残ったが、快音を復調のきっかけにしたい。

◆ヤクルト村上宗隆内野手が、2戦連発で再び単独本塁打キングに躍り出た。0-1で迎えた4回に、先頭で打席に入ると、アルカンタラの浮いた135キロスプリットを右中間席へ運ぶ24号ソロ。「追い込まれていたけど、甘く入ってきた球をミスショットすることなく捉えることができた」と振り返った。これでリーグトップで並んでいた巨人岡本和に1本差をつけた。 先制された苦しい序盤を乗り切り、一時同点に追いつく1発。流れを引き渡さなかったが、8回に勝ち越した直後に追いつかれ、引き分け。連敗を4で止めることができなかった。高津監督は「得点圏に走者がいるときにどうやって1本出すかというところは課題かなと思う」。主砲村上を含めた打撃陣に、さらなる奮起を促した。 ▽ヤクルト高津監督(2-2での引き分けに)「全体的に今日みたいな試合展開にしていきたいなと思っていて。ロースコアで。その中でこういう展開に持っていけたのは収穫があった」 ▽ヤクルト高梨(先発して6回5安打1失点)「調子自体は良かった。先制されてしまったが、何とか粘りながら6回を投げることができた」 ▽ヤクルト・サンタナ(29日に新型コロナウイルスワクチン接種の副反応で出場登録を抹消。特例2021で復帰直後の8回2死二塁でに適時二塁打)「外野が前進していたので、強い打球で外野を越してやろうという気持ちでした」

◆阪神がドローに持ち込んだ。同点の1-1の8回に1点を勝ち越されたが、その裏にジェフリー・マルテ内野手(30)の13号ソロで追いついた。試合後の矢野燿大監督(52)との一問一答は以下の通り ? -負けなかったのは大きかった 矢野監督 8回でしたし、残り少ない中でね、取られた後ですぐ追いついてくれたのは明日につながると思いますし、負けなかったのは大きいと思います。 -苦しいところでマルテの1発 矢野監督 向こうも勝ちパターンのピッチャーをどんどん投げてくる中で、ヒット、ヒットは難しいところででいい本塁打でした。 -矢野監督もすぐにベンチを飛び出してリクエスト 矢野監督 僕もすぐポールに当たったんじゃないかというふうに見えたんで。あそこはすぐいきました。 -アルカンタラが走者を出しても粘りの投球 矢野監督 だいぶこういう中で粘るというのはアルカンタラの中に出きてきていますし、1個、1個のボールはすごくいいんで。まずはアルカンタラが粘ってくれたのも大きかったですし、あの後いった及川がああいう場面でチームの力になってきてくれているのは楽しみもありますし、ああいう場面でもこれからどんどんいって欲しいなと思いますけど。 -及川はピンチでいい投球 矢野監督 いろいろ、状態を見てね。及川でいってみたいなというのと、これからのどういう結果が出ても、及川の経験になっていくんでね。そういうところではこっちも思いきっていったところを、それ以上に思いきった気持ちで投げてくれました。 -青木、山田に最高の結果 矢野監督 堂々と向かっていく、若者らしいというか、生き生きとした投球をしてくれました。 -及川は前回悔しい思いもした 矢野監督 若い投手なんでね、もちろん安定したというのはまだまだ難しいかもしれないけど、使ってみたいなとか、楽しみがあるなという投手なんでね。打たれることも経験しながら、そこをプラスにしてやっていってくれたらなと思います。 -カード勝ち越しに向け 矢野監督 打線がもっと点取れれば、もっともっといい形でやっていけると思うんで、何とか明日、みんなで点取って、頑張っていきます。 -ヤクルト高梨に6回1得点。走者は出したが 矢野監督 うーん、まあ崩せないというほどの状態ではなかったと思う。みんなの状態がもう少し上がってくればというところだけど、今我慢だと思うんで、我慢の中でマルちゃんがこうやってやってくれたり、なんとかみんなで粘って引き分けにできたというのは大きいと思う。ずっと1年間調子いいというのはなかなか難しいので、そういうところでは早くどう脱出できるかというのもコーチや、その選手たちも1人1人必死にやってくれてるんでね、それが早く結果として結びついてくれたらいいなと、ちょっと我慢のところだと思います。 -佐藤輝は3打席目に同じボールを我慢して四球を選べた 矢野監督 四球の内容としては良かった。まあ、これはああいうバッターはみんなそうだけど、振る怖さもあるんだけど、ああやって見逃されるってことは次ストライクを投げていくってようにバッテリーはいくんでね。振る怖さと振らない怖さっていうのが出てくると本物のバッターに変わっていくのかなって。まあ、そういう部分も出たかなと思う。

◆首位阪神がラッキーも味方に引き分けた。勝ち越された直後の8回にジェフリー・マルテ内野手(30)がヤクルト清水から右翼ポール直撃の13号同点ソロ。初球を打ち上げたが、相手の落球に救われて"打ち直し"となり、さらに当初の三塁打がリプレー検証で本塁打と判定された。1回は先制二塁打、3回も安打を放ち、6安打だった打線で猛打賞と奮闘した。2位巨人が広島に敗れて、阪神はゲーム差を3に広げた。喜びのラパンパラは、約1分45秒の時間差でやってきた。嶋田球審が本塁打のジェスチャーを見せると、マルテは三塁からゆっくりとホームイン。大喜びのナインとともに、夜空に向かって腕を伸ばした。 「しっかり強く打つことができたし、いいスイングができた結果がホームランになってよかったよ」 紆余(うよ)曲折の同点弾だった。8回1死、マルテはいきなり清水の初球を打ち上げた。右翼ファウルゾーンへの飛球で打ち取られたと思われたが、一塁手の荒木が落球。仕切り直してカウント1-2から、再び直球を振り抜いた。右翼ポールに向かって伸びた打球がフェンス際ではね返って転々とする間にマルテは三塁まで激走した。「三塁打」に聖地が大歓声で包まれる中、矢野監督はすぐさまリクエストを要求した。 「確信まではいかないけどね。上の方に当たったなというふうに見えたんで。ホームランかなと思ったんでね。すぐに」 場内で流れたリプレー映像には打球がポールをたたく様子が映っていた。スタンドインを確信したファンは手をたたき、ベンチの仲間はマルテよりも先に喜びをはじけさせた。 守備でも体を張った。同点の4回1死一、二塁、元山のイレギュラーした打球が、一塁後方を守るマルテの右側頭部を直撃した。体をのけぞらせてしまうほどの衝撃にも、痛がるそぶりを全く見せず。平然とプレーを続け、勝ち越しを阻止した。「いつも言っていることだけど、攻撃だけでなく守備でも貢献できると思ってやっている」。9回の守備では、遊撃手中野からの送球に両足をいっぱいに伸ばして捕球。最後は塩見の強烈な打球を一直に仕留めるなど、再三の好守が光った。 初回に先制適時二塁打を放ってから、ゲームセットの瞬間までハッスルした。4打数3安打2打点。この日の全得点はマルテのバットから生まれた。「個人的にはすごくいい1日だったよ。残念ながら勝つことはできなかったけど、毎試合チームの勝ちに貢献することを意識しているから、これからもチームの勝ちに貢献できる一打を打てるように頑張るよ」。打ってもマルテ、守ってもマルテ。次こそ勝利のラパンパラを披露する。【磯綾乃】 ? 【球界の主な打ち直し本塁打】 ◆森川康弘(箕島)79年8月16日、夏の甲子園大会3回戦星稜戦。1点を追う延長16回2死から初球を一塁ファウルグラウンドに打ち上げたが、加藤直樹一塁手が転倒して捕球できず。森川は1-2から左中間へ同点ソロ。延長18回サヨナラ勝ちを導いた。 ◆落合博満(中日)91年4月29日阪神戦4回、左翼ファウルグラウンドへの飛球を山脇光治が追いつきながらバンザイ。直後に左翼席最上段へ特大の満塁本塁打を放った。 ◆高橋智(オリックス)98年3月20日オープン戦西武戦の4回1死二塁に、ブロスに遊飛に打ち取られたかに見えた。ところがこの投球がボークの判定。仕切り直しとなり、次の球を中堅右に運んだ。

◆阪神佐藤輝明内野手(22)が、初回の第1打席で空振り三振に倒れ、今季100個目の三振を喫した。 ヤクルト先発高梨に3球フォークを続けられ、最後も低めのボール球をスイングしバットは空を切った。 その後も2三振を喫し、通算三振は102となった。143試合換算なら205三振となり、プロ野球年間最多の93年ブライアント(近鉄)204三振を上回るペースだ。なお新人の最多三振は、99年福留孝介(中日)121三振。

◆阪神及川雅貴投手(20)が名誉挽回の火消しでプロ初ホールドを挙げた。 同点の7回1死二塁でアルカンタラの後を受けて救援。ヤクルト青木を147キロの直球で見逃し三振、山田は初球148キロ直球で力のない右飛に打ち取ると、左手を小さく握った。「0点で帰ってくることができて良かったです」。左右の好打者を抑え切り、あふれる笑顔でベンチに戻った。 喜びの裏に「役割を果たせなかった」と悔いた前回6月26日DeNA戦(甲子園)がある。1点リードの7回途中に3番手で登板し、桑原に初球を逆転2ランとされてプロ初黒星を喫した。翌27日に矢野監督から「ストライクを取りにいったのか、ボールから入ろうとしたのか」とその1球の真意を問われたという。及川は「監督とお話しさせていただき、改めて1球の大切さを確認でき、それを今日の投球にも生かせた」と振り返り、しびれる場面でその教えを体現した。 黒星から4日後。矢野監督は「使ってみたい、楽しみがある投手」と期待を込めて送り出し、それに及川が応え「堂々と向かっていく、若者らしい、生き生きとした投球だった」と投げっぷりに思わずうなった。「7回の男」が定まらない中、たくましい2年目左腕が名乗りを上げた。【前山慎治】

◆3球、しっかり振った。初回2死二塁。阪神佐藤輝明内野手(22)が、フルスイングで甲子園を沸かせた。ヤクルト高梨の初球内角直球を一塁アルプススタンドへ強烈なファウル。3球目のフォークに空振りすると、1ボール2ストライクからホームベース手前で弾む133キロフォークに手を出した。これで両リーグ最速で100三振に達した。 4回の第2打席、8回の第4打席でも空振り三振。71試合で「102」まで積み上がった。143試合換算では205三振で、93年ブライアント(近鉄)のプロ野球記録、204三振を上回るペースだ。矢野監督は「小さく振ってもホームランを打てるんで。『フルスイングイコール全力で振った、むちゃ振り』というのも違うから、減らしていかないといけないし、三振が多いのが良いとは言えない」と注文をつけた。 そんな指揮官が「内容として良かった」と評価したのは6回の第3打席。追い込まれてから低めのフォークを見逃して四球をもぎ取った。「ああやって見逃されると、次にストライクを投げていくようにバッテリーはいく。振る怖さと振らない怖さが出てくると本物のバッターに変わっていくのかな」と捕手目線で語った。「送り出す立場としては『小さいことを気にせずにどんどんいけよ』という形で送り出したい。そこから今日みたいに四球を選ぶとか、コンタクトできるようになっていかないと」。怪物と呼ばれるルーキーだからこそ、身につけてほしい技術を指摘した。 佐藤輝も「三振してしまうのは技術が足りないだけ。そこで当てていくような打撃はしたくない」とかつて自身の弱さと信条を口にしていた。ここまで19本塁打のうち9本が追い込まれてからで、102三振のうち、空振り三振は94。今は長打と三振は表裏一体。これからも振り続け、体で学ぶ。【中野椋】

◆阪神は一回1死二塁からジェフリー・マルテ内野手(30)が左中間を破る先制二塁打で放った。先頭の近本が中前打。1死後、今季16個目となる二盗成功。リーグトップの塩見(ヤクルト)に並んだ。直後に先発・高梨の146キロの直球を左中間に運んだマルテは広報を通じて「打ったのはストレート。近本が出塁して二塁まで進んでくれたから、あとは自分の仕事をすることに集中したね。初回に先制することができて良かったよ」とコメントした。

◆試合前にファーストピッチセレモニーが行われ、「熱闘甲子園」(ABC系)でキャスターを務める、元ヤクルトの古田敦也氏(55)とABCテレビ・ヒロド歩美アナウンサー(29)が登場した。 投手を務めたヒロドアナは振りかぶり、足を高く上げるフォームで、捕手の古田氏へ投じたが、ゴロでミットに収まった。 ヒロドアナは「率直に高校球児がすごい、というのを感じました。これを経験して、高校野球を取材できるというのは大きいなと思いました」と振り返った。 古田氏は東京五輪日本代表に内定した梅野へ「技術的なことだけじゃなくて、精神的な役割、支柱になれるという判断で稲葉監督も選んだと思う。自分の役割というのも本人もわかっていると思うので、全力で。僕らは『結果を気にせずに頑張ってくれ』とか言いますけど、やっぱり結果なので。頑張ってほしいですね」とエールを送った。

◆ヤクルトの若き主砲が、試合を振り出しに戻した。1点を追う四回先頭。村上宗隆内野手(21)が右翼席へ2試合連発となる24号ソロをたたき込んだ。先発右腕・アルカンタラが投じたスプリットを捉え「追い込まれていたけど、甘く入ってきた球をミスショットすることなく捉えることができました」。試合序盤から降り出した雨を切り裂く強烈な一撃となった。

◆阪神のルーキー佐藤輝が一回の第1打席で高梨の変化球に空振り三振に倒れ、100個目の三振を記録した。シーズン約半分の71試合目で、その後にも2三振を喫した。最多三振の新人記録は1999年の福留(中日)の121、プロ野球記録は93年のブライアント(近鉄)の204。 規格外の本塁打で阪神を活気づけるスラッガーは、三振を恐れず、フルスイングを貫く姿勢が大きな魅力だ。「当てにいくような打撃をしたくない。強く振るのは変えずにやっていきたい」と話す。矢野監督も「小さいことは気にせず、どんどん行けよと送り出したい」と、引き続き背中を押す構えだ。

◆先発した阪神のラウル・アルカンタラ投手(28)は6回1/3を投げて7安打1失点で降板。甲子園初勝利はならなかった。 1-0の四回、村上に被弾したが、直後の1死満塁のピンチを併殺打で切り抜けた。二回以外は毎回走者を背負う苦しい投球だったが、最速155キロの直球とスライダー、スプリットを駆使して7三振を奪い、最少失点に抑えた。 だが、打線の援護に恵まれず、3勝目&甲子園初勝利は、次回登板に持ち越し。降板後に広報を通じて「全体的には悪くなかったと思うね。梅野とも息が合っていたと思うし、配球面でも本当に良く引っ張ってくれたよ。しっかりとゲームを作ることができたから良かったよ」とコメントした。 試合は八回2死二塁で3番手・岩崎がサンタナに右越え適時打を浴びて、勝ち越しを許した。

◆阪神のジェフリー・マルテ内野手(30)が1-2の八回、右翼ポールを直撃する13号同点アーチを放った。3番手・清水の148キロ直球をとらえると打球は右翼ポール際へ。マルテは三塁に激走してスライディングした。このあと矢野監督がリクエストを要求。リプレー検証の結果、判定は「ホームラン」に覆った。八回に勝ち越された直後だっただけに、甲子園のスタンドは大歓声に包まれた。

◆4連敗中のヤクルトは阪神と引き分けた。1点を追う四回、村上の2試合連発となる右越え24号ソロで同点。八回は2死二塁からサンタナの右越え適時二塁打で勝ち越したが、その裏に清水がマルテに右翼ポール直撃の13号ソロを浴び、同点に追いつかれた。

◆阪神は、1点を勝ち越された直後の八回、ジェフリー・マルテ内野手(30)が右翼ポールを直撃する13号同点アーチで、今季3度目の引き分け。この日、2位・巨人が敗れたため、ゲーム差は「3」に広がった。 一回、マルテが先制二塁打を放ったが、二回以降は再三チャンスを作るも、あと1本が出なかった。先発したアルカンタラが四回、村上に同点弾を浴び、1-1の八回には、岩崎がサンタナに勝ち越しの打を許したが、直後にマルテが、この日3本目の安打となる値千金の一発を放った。 20本塁打に王手をかけているD1位・佐藤輝(近大)は3打数無安打(1四球)と快音は聞かれず。3三振で、両リーグトップの三振数は3桁の102個となった。 阪神は6月を12勝10敗1分で終えた。

◆阪神は八回にジェフリー・マルテ内野手(30)の13号本塁打で同点に追いついて、ドロー。D1位・佐藤輝明内野手(22)=近大=は3個を加え、今季の三振数は「102」となった。試合後の矢野耀大監督(52)の一問一答は以下の通り。 (テレビインタビュー) ーーアルカンタラが粘りの投球 「まずはアルカンタラが粘ってくれたのも大きかったですし、あの後の及川がチームの力になってきてくれているのは楽しみもありますし、ああいう場面でもこれからどんどんいって欲しいなと思いますけど」 ーー及川はピンチでいい投球(同点の七回1死二塁で登板し、無失点) 「及川でいってみたいなというのと、どういう結果が出ても、及川の経験になっていくんでね」 ーー青木(三振)、山田(右飛)に最高の結果 「堂々と向かっていく、若者らしいというか、生き生きとした投球をしてくれました」ーー八回のマルテの打球に対するリクエストは「確信まではいかないけどね。上の方に当たったなと見えたんでね。ホームランかなと思ったんでね。すぐに」ーーすぐに取り返したのは「2打点ともマルちゃんやしね、チャンスでマルちゃんというのは近本が状態いいんでね、初回も点取ったし、その後の点はね、今取れてないんで、なんとか調子のいいマルちゃんの前に、置いていきたいなというのと、その後のバッターの奮起というのもね、誰でもいいんでね、ちょっと状態を上げてきてくれるような形になったらいいなと思います」ーー佐藤輝は3打席目に四球を選べた「四球の内容としては良かったね。ああいうバッターは振る怖さもあるんだけど、ああやって見逃されると次ストライクを投げていくってようにバッテリーはいくんでね。振る怖さと振らない怖さが出てくると本物のバッターに変わっていくのかなって。まあ、そういう部分も出たかなと思う」。ーー100三振を超えたが、フルスイングは良さ「ぶんぶん振ることがフルスイングだとは思わないし、小さく振ってもホームラン打てるんでね。フルスイングイコール全力で振ったむちゃ振りっていうのも、違うから。減らしていかないといけないし、三振数が多いのがいいよとは言えない。ただ小さいことを気にせずに、どんどんいけよという形で送り出したいし。そこから今日みたいに四球を選ぶとか、コンタクトできていけるようになっていかないと」ーー八回の岩崎が不安「スグルもまた、みんなに見えないかもしれないけど、内面の強い男なんで。やられたらやり返すというのはやってくれる」

◆阪神2年目の及川が好救援でプロ初ホールドを挙げた。1―1の七回、1死二塁で先発アルカンタラと交代。青木に対し、糸を引くような快速球で見逃し三振。続く山田を初球で右飛に打ち取り「0点で帰ってくることができて良かった」と胸をなで下ろした。 前回26日のDeNA戦では七回途中から登板し、逆転2ランを浴びてプロ初黒星を喫した。矢野監督は「こっちも思い切っていったところを、それ以上に思い切った気持ちで投げてくれた」とたたえた。 アルカンタラ(6回1/3を1失点)「全体的には悪くなかった。しっかりと試合をつくることができたから良かった」 スアレス(九回を三者凡退)「みんながいい仕事をしたから、負けることなく終わることができた」

◆マルテに救われた。この引き分けは大きい。ただ、打線を何とか早く活気づけなければいけない中で、打開策を挙げるならば、まずは基本的なことを言いたい。投手のカウント球は何か、マークする球は何か、狙い球は何か。ミーティングで、徹底することだ。 今季初対戦の高梨とはもともと相性は悪いが、手も足も出ないような投手ではない。ところが、例えば佐藤輝の1、2打席目の空振り三振。四球を選んだ3打席目とは違い、準備不足と言われても仕方がないほど簡単にやられていた。チームとしての狙い、各自の頭の整理。そんな基本的なことの徹底が大事になる。 もうひとつは新たな刺激を与えることだ。替えづらいメンバーになったことは確かで、我慢するのも手だが、積極的休養を取らせるのも考え方のひとつ。どうも元気のないサンズから1試合1人ずつ、休ませていく。そこに糸井や若手、ロハスを昇格させて使ってみてもいい。勝負は9、10月だが、前半戦残り13試合も大事。今からゴールまでのプランを見据えてリフレッシュさせながら、新しい力で刺激を与えていってもいい。(本紙専属評論家)

◆ヤクルトの村上が2試合連続アーチとなるリーグ単独トップの24号を放った。 0―1の四回先頭でアルカンタラの変化球をジャストミート。右翼席にたたき込み「甘く入ってきたスプリットをミスショットすることなく捉えられた」と胸を張った。一回は150キロ超の速球に空振り三振を喫したが、見事にやり返した。 高津監督「高梨がロースコアの展開に持っていったことは収穫。勝てはしなかったが、このような試合展開でないと阪神には勝ち切れない」 高梨(6回1失点)「調子は良かった。先制されてしまったが、何とか粘れた」 サンタナ(戦列復帰し、八回に適時二塁打)「外野が前進していたので、強い打球で頭を越してやろうという気持ちだった」

◆高梨は約2カ月半ぶりの白星とはならなかったが、6回1失点と好投した。一回に先制を許しても「何とか粘りながら6回を投げることができました」。チームの4連敗中は先発の3投手が5回を持たずに降板していただけに、高津監督は「全体的に今日みたいな試合展開にしていきたい。高梨は初回に点を取られたけど、こういう展開に持っていけたのは収穫」と評価した。

◆頭をよぎった悪夢の1球を、渾身の直球で振り払った。ピンチを切り抜けた及川は、グラブをバンッとたたいて喜びを爆発させた。 「前回は同じような展開で点を取られてしまい、役割を果たすことができなかったので、0点で帰ってくることができてよかったです」 1-1の七回1死二塁。ヤクルトの上位打線に回るところで、マウンドを託された。まずは青木を147キロ直球でズバッと見逃し三振。続く山田にもキレ味鋭い148キロ直球を投げ、右飛に仕留めた。 1球の大切さを経験して臨んだマウンドだった。前回登板した6月26日のDeNA戦(甲子園)。1-0、この日とほぼ同じ七回無死一塁でマウンドへ向かった。バントを決められ1死二塁とされ、桑原に投じた初球のスライダーをバックスクリーンまで運ばれた。逆転2ランで、プロ初の敗戦投手となった。 試合のあと、すぐに矢野監督との反省会が開かれた。「ストライクを取りに行く気持ちで投げたのか、チャンスで積極的に打ってくる打者にボールから入ろうと思ったのか、どういう気持ちだった?」と問われた。まだ高卒2年目、20歳。失敗から学び、成長につなげてほしいという親心をひしひしと感じた。 そして巡ってきたリベンジの機会。起用してくれた将の期待に応えて、初ホールドも記録した。矢野監督は「若者らしいというか、イキイキとした投球。打たれることも経験しながら、プラスにしてやっていってくれたら」と目を細め「ああいう場面でも、これからどんどんいってほしい」と引き続き競った場面での起用を示唆した。 「監督とお話しさせていただいたなかで、1球の大切さを確認することができたし、それをきょうの投球にも生かすことができた」と及川。日に日に頼もしくなるその背中で、これからも虎のピンチを摘み取る。(原田遼太郎)

◆ヤクルトは30日、阪神11回戦(甲子園)に2―2で引き分けた。四回に4番・村上宗隆内野手(21)が右翼席へ2戦連発となる24号ソロ。勝利には結び付かなかったが、本塁打キングを争う巨人・岡本和真内野手(25)を抜き去り、セ・リーグ単独トップに再浮上した。6月は計10本塁打をマーク。九州学院高(熊本)時代に「肥後のベーブ・ルース」と呼ばれた大砲が、球児の聖地で輝きを放った。 鋭い打球が雨を切り裂き、甲子園の右翼席に飛び込んだ。1点を追う四回先頭で、村上が2戦連発となる24号ソロ。燕の4番として意地を見せた。 「追い込まれていたけど、甘く入ってきた球をミスショットすることなく捉えることができました」 カウント1―2から、阪神先発、アルカンタラが投じたスプリット・フィンガード・ファストボールを捉えた。高校球児の聖地、甲子園では今季3本目。29日に今季初の4連敗を喫し、この日も一回に先制を許す中、流れを引き戻した。 九州学院高時代は通算52本塁打。左の大砲で「肥後のベーブ・ルース」とも呼ばれた。入団4年目の今季は開幕前に「(打撃主要)タイトル3つのうち、どれか1つでも取りに行く強い気持ちを持って挑みたい」と宣言。月間10本目のアーチで、リーグ単独トップに立った。シーズンでは47発ペース。2004年の岩村明憲(44本)を抜く球団の日本選手最多も視野に入る。 海の向こうでは、〝OHTANI旋風〟が巻き起こっている。エンゼルスの大谷がこの日は両リーグトップの27、28号を放った。5歳上の大谷には「次元が違う。パワーも、バットに当てる技術も全てにおいてすごい」と驚嘆し、映像で下半身の使い方や体の連動などを学んでいる。 高津監督は「走者がいないのであれば、ムネ(村上)にはああいうの(本塁打)を期待しますし、得点圏にいるときにどうやって一本を出すか」と更なる奮起に期待した。タイトルを争う和製大砲が、量産態勢に入る。(赤尾裕希) ◆「感染防止特例2021」で再登録され、八回に右越え適時二塁打を放ったヤクルト・サンタナ 「外野手が前進していたので、強い打球で越してやろうという気持ちでした」

◆課題が詰まった、未来が見えた3三振&1四球だった。雨の中、D1位・佐藤輝は振って、振って、我慢もしたが、また振らされた。プロ野球記録ペースの102三振となっても、矢野監督の気持ちは不変だった。 「減らしていかないといけないし、三振数が多いのがいいよというふうには言えない。ただ、俺ら送り出す立場としては、小さいことを気にせずにどんどんいけよという形で送り出したい」 5番打者のバットが空を切り続ければ、おのずとチームが走者を動かせない場面も増える。だからといって〝小さな佐藤輝〟は見たくない。それがチームと将、そして虎党の総意だ。ひとスイングごとに歓声とどよめきが上がる。だが、同時に三振の数も増えていく。まずは一回2死二塁で空振り三振。先制の直後にたたみかけられず、これが100三振目になった。1-1と追いつかれた直後の四回先頭は3球三振。高梨を相手に2打席、何もさせてもらえなかった。六回1死では、またも高梨に2球で追い込まれたが、誘い球にバットを止めて、フルカウントから8試合&30打席ぶりの四球を選んだ。紙一重だったが、矢野監督は捕手として、この打席の7球に「四球の内容としては良かった」と光を見た。「ああやって見逃されるってことは次、ストライクを投げるようにバッテリーは行く。『振る怖さ』と『振らない怖さ』が出てくると、本物のバッターに変わっていくのかなって。そういう部分も出たかな」2-2の八回2死でも清水に空振り三振を喫して、今季11度目の1試合3三振。この日はシーズンの半分となる71試合目だったが、143試合に換算すると205・4三振ペースだ。近鉄で3度の本塁打王に輝いたブライアントが持つプロ野球記録の204三振(1993年)がリアルな数字として迫る。一方、B砲は同年に本塁打王(42本)に輝いた。佐藤輝も振る力、飛ばす力は証明しているだけに、振りながらも、振らない力を備えていくしかない。将が「年々、研究されていくようになるんでね」と語るように、これは終わらない戦い。「振れる男」の挑戦は続く。(長友孝輔)

◆さすがマルテ様! 阪神はヤクルトと2―2で引き分けた。八回に勝ち越されたが、その裏、ジェフリー・マルテ内野手(30)が右翼ポール直撃の同点13号ソロ。三塁打の判定だったが、リプレー検証でホームランに覆った。助っ人の執念の一発で、2位巨人とは3ゲーム差に拡大。勝てはしなかったけど、そう簡単に差を縮めささへんで!! グラウンドに戻ってきた球審が頭上で右手を回すと、甲子園に詰めかけた1万2646人がドッと沸いた。勝ち越され、敗戦の雰囲気も漂う中、マルテがチームを救う13号ソロ。ベンチ前では歓喜のラパンパラだ。 「個人的にはすごくいい一日だったよ。(ソロは)来た球を強く打つという気持ちだった。しっかり強く打つことができたし、いいスイングができた結果が、ホームランになってよかった」 七回、アルカンタラが招いた1死二塁のピンチを及川が切り抜けたが、八回に岩崎が踏ん張れず、1―2と勝ち越された。その裏。マウンドには昨季の最優秀中継ぎで、今季もリーグ最多25ホールドを記録する清水。先頭の糸原は空振り三振で、敗色濃厚―。そんなタイミングだった。 初球を右翼ファウルゾーンへ打ち上げたが、風に流され、一塁・荒木が捕れない。命拾いするとカウント1―2から148キロ直球を今度はしっかり捉えた。風に乗った打球は右翼ポール付近に当たり、グラウンドへ。当初は三塁打の判定も、矢野監督が「ポールに当たったんじゃないか」とベンチを飛び出した。リプレー検証の結果、ポール直撃の同点弾に覆った。 一回1死二塁では高梨から先制の二塁打。三回2死では左前打で、今季3度目の猛打賞となる3安打2打点。守備でも九回2死で塩見の強烈なライナーに飛びついて捕球するなど、奮闘した。「攻撃だけでなく守備でも貢献できると思ってやっている。これからも守備でも攻撃でも貢献できるように、頑張るよ」チームを支えているのは試合中だけではない。この日の試合前練習。打撃練習を終えると、前日29日から6番に打順が下がった大山のもとに向かった。肩をポンポンとたたき、身ぶり手ぶりも交えて言葉を交わすと、大山はほほを緩めた。来日3年目の30歳。若い選手が多いチームにあって、中堅に位置する年齢だ。国籍は違えど、思いはひとつ。精神的支柱としても、欠かせない一員となっている。勝ちこそ逃したが、引き分けに持ち込む一発に、矢野監督も「取られた後ですぐ追いついてくれたのは、明日につながる。負けなかったのは大きい。勝ちパターンのピッチャーがどんどん投げてくる中で、ヒット、ヒットは難しいところでいい本塁打でした」と賛辞を惜しまなかった。「毎試合、チームの勝ちに貢献することを意識している。これからも勝ちに貢献できる一打を打てるように、頑張るよ」マルテは太い腕をさすって力こぶ。2位巨人が敗れ、ゲーム差は2・5から3に広がった。そう思えば、貴重なドロー。いま、打線は少し元気がないが、そんなときこそ勝負強いM砲が、救ってくれる。(菊地峻太朗)

◆アルカンタラ、雨中の熱投! でも、甲子園初勝利はお預け。威力抜群の速球を持ちながらも昨季韓国・斗山で20勝を挙げたようにはいかない。試合前、編集委員の三木建次は「六回ぐらいから崩れるから要注意や」と心配していた。トラ番で投手担当の織原祥平は「緩い球があれば変わるんじゃないかと思うんです」という。何かきっかけがあれば壁を乗り越えられるはずなのだが...。 2019年まで阪神に在籍していたメッセンジャーがそうだった。剛速球に頼りっぱなしで、来日当初は結果を残せず、2軍落ち。当時の久保康生2軍投手コーチの提言でカーブを習得した。緩急を使う投球に変わり、エースとしてNPB通算98勝。どんな人生も大きく変わる転機がある。 柔よく剛を制す。それを絵に描いたような日本投手も虎にいた。松坂世代の一人、久保康友。関大一高から松下電器を経て05年に自由枠でロッテ入団。トレードで09年から5年間、阪神で主に先発として活躍した。8月で41歳を迎えるが「野球は趣味」と話し、現役生活に終止符は打たない。メキシカンリーグでもどこでも興味がわけばプレーする。剛速球はない。スーパークイックと巧みな投球術で打者を手玉にとる。特に「1試合に1球、3試合に1球投げるか投げないか」という90キロ台のパームは楽しませてくれた。 「そのパームですが...実はマンガを読みながら学んだものなんですよ」 久保が教えてくれたことがあった。原作・むつ利之の「名門! 第三野球部」。主人公・檜あすなろをはじめ個性あふれる3軍メンバーが1軍を倒し、甲子園を目指す青春ストーリー。「典型的な根性野球の世界ですけどね」と久保は笑うが、野球人生で最も影響を受けたマンガの一つだったという。直球しか投げられないあすなろが2度目の1軍戦で投手強襲安打を許す。顔面直撃を避けるため右手でカバーし、出血。力が入らず、奇跡的にパームを覚え、抑える。それを読み、久保はパームを特訓したのだ。 久保の話を織原に聞かせると「僕も昔、バスケットボールをしていて」と回想し始めた。「『スラムダンク』に登場する三井寿の3点シュートにあこがれていたんです」。バスケ少年だった織原は高校1年時に足首を故障。整骨院の先生に「どうやったら三井のようになれるか」を相談し「手首を強くすることが一番」とアドバイスされた。「負荷をかけるために浴槽の中で手を鍛えたりしました」。織原は残念ながら三井寿にはなれなかったが...。 この日の午後、運動部長の大澤謙一郎は虎番キャップの長友孝輔と一緒に西宮市内の球団事務所にいた。4月に就任した城島和弘常務取締役事業本部長総務本部広報部長を表敬訪問。コロナ禍で延期されていたが、緊急事態宣言も解け、感染対策を施しながら、あいさつした。 「シーズンで143試合あれば、143勝してほしいと思います」と大澤は真顔で嘆願! 「コロナ禍で全体的に売り上げは苦しいですが、タイガースさんが好調なおかげで助かっています」と感謝の意を伝えた。城島さんは「そうおっしゃってもらえると、うれしいですね」とニッコリ。優勝に向け、盛り上げていくことを約束した。 喜怒哀楽を前面に出し、全力疾走をモットーとする矢野虎はまるで青春マンガの主人公。巨人に詰め寄られ、ハラハラドキドキさせられるが、最後は必ず勝つ。栄光に突き進む2021年の下半期がスタートします。

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<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
阪神
43253 0.632
(-)
-
(-)
72304
(+2)
250
(+2)
70
(+1)
65
(+1)
0.254
(↓0.001)
3.190
(↑0.01)
2
(-)
巨人
382610 0.594
(↓0.009)
3
(↓0.5)
69314
(-)
262
(+1)
95
(-)
44
(+1)
0.253
(↓0.001)
3.390
(↑0.03)
3
(-)
ヤクルト
35298 0.547
(-)
6
(-)
71302
(+2)
291
(+2)
74
(+1)
43
(-)
0.250
(-)
3.830
(↑0.03)
4
(-)
中日
283610 0.438
(↓0.006)
13
(↓0.5)
69218
(+4)
247
(+9)
40
(+1)
37
(-)
0.239
(↓0.001)
3.220
(↓0.07)
5
(-)
DeNA
27399 0.409
(↑0.009)
15
(↑0.5)
68307
(+9)
365
(+4)
75
(+1)
15
(+1)
0.261
(↑0.002)
4.710
(↑0.01)
6
(-)
広島
23389 0.377
(↑0.01)
16.5
(↑0.5)
73249
(+1)
311
(-)
47
(+1)
35
(+1)
0.260
(↓0.002)
3.980
(↑0.06)