巨人(★1対2☆)阪神 =リーグ戦7回戦(2021.05.14)・東京ドーム=
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阪神
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巨人
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勝利投手:青柳 晃洋(3勝2敗0S)
(セーブ:スアレス(1勝0敗11S))
敗戦投手:畠 世周(2勝2敗0S)

本塁打
【阪神】マルティネス(8号・4回表ソロ)

  DAZN
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◆阪神は1点を先制された直後の4回表、マルテの8号ソロで同点とする。さらに2死一三塁から梅野が適時打を放ち、勝ち越しに成功した。投げては、先発・青柳が7回1失点の好投で今季3勝目。敗れた巨人は、先発・畠が力投を見せるも、打線が援護できなかった。

◆阪神青柳晃洋投手が14日巨人戦(東京ドーム)に先発する。 12日中日戦(甲子園)で先発予定だったが、雨天中止が決まり、矢野監督は「青柳は巨人戦にまわそうかなと思う」と明かしていた。今季は6試合に先発し、2勝2敗で防御率2・13。5戦連続でクオリティースタート(6回以上、自責3以内)と抜群の安定感を誇る右腕をG戦初戦にぶつける。2戦目の15日はルーキー伊藤将、3戦目の16日は1戦目で初登板初先発するとみられていた新外国人アルカンタラがまわることが濃厚だ。また、右肩張りの影響で10日に出場選手登録を抹消されたガンケルがこの日から1軍練習に合流。20日ヤクルト戦(甲子園)からの1軍登録が可能。

◆阪神青柳晃洋投手(27)は4番打者を抑えられるか。今季6試合で被打率2割4分3厘だが、対4番成績は16打数8安打、3本塁打で被打率5割。巨人4番の岡本和にも2本塁打含む3打数3安打と打たれている。

◆阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(22)は、5球団全制覇アーチを目指す。試合前のフリー打撃では28スイング中3本の柵越え。外野後方に飛ぶ打球も多くあった。 ここまで佐藤輝は、ヤクルト山田と村上に並ぶリーグトップの10本塁打をマーク。4球団から本塁打を記録しているが、巨人戦6試合ではまだ0本だ。内訳は広島戦が最多の4本、DeNA戦が3本、ヤクルト戦が2本、中日戦が1本。 巨人戦&東京ドームで初本塁打となれば、セ5球団&セ全本拠地制覇を早くも達成することになる。5月の月間打率3割6分4厘と絶好調の勢いに乗って、巨人相手に初のアーチをかける。

◆東京ドームに19日ぶりにプロ野球ファンが戻ってきた。ともに緊急事態宣言対象地域の東京都、兵庫県に本拠地を置くチーム同士の対戦。1999回目の「伝統の一戦」はスタンドにファンを迎え入れて開催された。 公式発表では1万3873人の観衆が集まった。 3度目の同宣言が発令後の25日の広島戦(東京ドーム)を最後に同球場では無観客試合が続いていた。試合前には「今日からまた、この東京ドームで皆さまとともに戦えることになりました。」と場内アナウンスがあった。マスクを着用し、大声での応援、隣のファンとのハイタッチは禁止される一方で「大きな拍手で選手にエースを届けてください。新しい応援スタイルで楽しんでいきましょう」と呼びかけられた。

◆阪神小幡竜平内野手(20)が今季初めて1軍に昇格した。この日合流し、練習前には野手の輪の中であいさつ。「いつ呼ばれてもいいようにずっと準備してきたので、使っていただいたところでしっかり貢献できるように、思い切りよくプレーしていきます」と意気込んだ。小幡は2軍で33試合に出場し、打率2割8分8厘と好調を維持していた。 代わって木浪聖也内野手(26)が、出場選手登録を抹消され2軍に合流した。木浪は今季「8番遊撃」で開幕スタメン入りしたものの、先発出場は4月28日の中日戦(バンテリンドーム)を最後になく、代打と守備固めでの出場が続いていた。1軍ではここまで26試合に出場し、39打数7安打で打率1割7分9厘だった。

◆巨人ウィーラー内野手が"お忍び走塁"で三塁を陥れた。 3回1死二、三塁、岡本和の左犠飛で三塁走者梶谷がタッチアップで本塁に生還。際どいタイミングに阪神の捕手梅野が、ベンチにリクエストを要求するようなしぐさを見せる中、二塁走者のウィーラーは、タッチアップでヘッドスライディングで三塁に進塁。手に鍋つかみのような「走塁ガード手袋」をばっちり着用していた。ハクション大魔王がハッスルプレーで首位阪神に立ち向かった。

◆阪神梅野隆太郎捕手(29)が驚異的な勝負強さをまた披露した。 同点に追いついた直後の4回2死一、三塁。フルカウントから畠の内角直球に詰まりながらも中前に落とし、勝ち越し点をもぎ取った。 得点圏に走者を置いた場面は今季、26打数14安打、打率5割3分8厘となった。

◆阪神新外国人のメル・ロハス・ジュニア外野手(30)は4打数無安打に終わり、来日初打席から16打席連続ノーヒットとなった。 4回1死一、三塁では右腕畠を相手に左打席で空振り三振。8回2死一、二塁では左腕高梨を相手に右打席で捕邪飛に倒れた。これで83年バースの15打席無安打を超えて球団外国人野手ワースト2位。ワースト記録となる20年ボーアの18打席無安打が近づいている。

◆巨人は3回1死満塁、岡本和の左犠飛で1点を先制。先発畠は3回まで1安打無失点と、上々の立ち上がりを見せた。 阪神は4回、マルテの8号ソロと梅野の適時打で逆転に成功。先発の青柳は尻上がりに調子を上げて6回まで1失点。 阪神は逆転勝ちで今季最多の貯金16。先発の青柳は7回1失点で3勝目を挙げた。スアレスは11セーブ目。巨人は打線が1得点に封じられた。畠は2敗目。

◆阪神佐藤輝明内野手が巨人戦では初めて4番で出場。 阪神の新人が巨人戦で4番を打ったのは39年富松信彦(3試合)41年松下繁二(2試合)17年大山悠輔(2試合)に次いで4人目。このうち安打を記録したのは、39年富松以来82年ぶり。

◆阪神3番ジェフリー・マルテ内野手にとって東京ドームはもはや「敵地」ではない。 1点を追う4回1死、畠の外角150キロを振り抜き、8号同点ソロを右中間席に運んだ。豪快弾でこの回の逆転劇を呼び込み「しっかり集中してボールをたたくことだけ意識していた。それがポジティブな結果につながった」。8回には中越え二塁打も放ち、これで今季東京ドーム4試合では16打数で4本塁打を含む8安打、打率5割だ。一塁守備でも4回に先頭若林の一塁線ゴロを好捕してアウトをゲット。「シュビノヒト(守備の人)」と上機嫌だった。

◆阪神岩崎優投手&スアレス投手の「鉄壁コンビ」が1点リードを守り切った。8回は岩崎が1番梶谷からの上位打線と対決し、1四球を出しながらも冷静に無安打無失点。 9回は守護神スアレスが先頭スモークに安打を許しながら無失点で耐えた。リーグ単独トップの14ホールド目を記録した岩崎は「0点で抑えることができて良かったです」。スアレスも11セーブでリーグトップを走る。

◆阪神は逆転勝ちで今季最多の貯金16。先発の青柳は7回1失点で3勝目を挙げた。巨人は打線が1得点に封じられた。

◆阪神は逆転勝ちで今季最多の貯金16。 ◆阪神矢野監督語録 -青柳がナイスピッチングだった 調子はすごくいいという感じではなかったかもしれないけですけど、攻める気持ちとランナー出しても丁寧に、梅野と合わせてよくやってくれたと思います。 -7回の打席でも一塁に全力疾走 青柳自身もチームとしても、そういうことはしっかりやっていこうというチームなんでね。投手でもしっかりやってくれるというのはチーム全体が盛り上がります。 -梅野が攻守に頼もしい 追加点もそうですし、守りの方でもしっかり投手を引っ張って、今日はバッテリーで勝ったかなと思います。 -守備でもいいプレー そうですね、東京ドームは何点あってもセーフティーリードがなかなかないような球場ですけど。こういう競った試合で僕たちがまた成長していけるところがあると思うんで、そういうところではみんなでやれたかなと思います。 -1点差ゲーム 1点差というのはね、しびれるし、まあもう(岩崎)優とスアちゃん(スアレス)出した時点で任せてるから。まあまあ、すべてのね、結果を受け止めるという気持ちはもちろんできていた。今日はバッテリー、リュウ(梅野)のタイムリーもあったけど、バッテリーが頑張ってくれたね。 -初戦取れたことは大きい まあ、現状、うちが上にいるんでそういうところでは、やっぱり頭取るっていうのは意味があると思うし、逆に頭取れたんでね。全員で取れたんでね。あしたもあさっても「よしいってやるぞ」と、こっちとしてはいい形を作ってくれたんで。いい初戦になったと思います。 -巨人と明日15日が節目の2000試合目 2000試合というのは先輩方、皆さんが作ってくれた伝統がある。僕らが引き続き、さらにいい試合、ファンの人に魅力ある試合、そういう伝統ある試合にしていきます。

◆巨人畠世周投手が7回6安打2失点の粘投も実らず、2敗目を喫した。先制した直後の4回1死、マルテに右中間へ同点ソロを浴び、さらに2死一、三塁で梅野に中前適時打を許し、逆転された。 「抑えたいという気持ちが強く出すぎてしまった」と反省した。原監督は「あの回(4回)だけちょっとね。まあ、でも2点で抑えたんだもんね」と一定の評価を口にした。

◆阪神青柳晃洋投手(27)が、7回5安打1失点の好投で今季3勝目をつかんだ。「一つ勝てたというのはすごく自信になるというか、うれしいです」。巨人相手には19年5月14日以来、2年ぶりのの白星だった。 「試合前から、岡本にはしっかりやり返したいという気持ちで臨んでいた」。前回4月21日の巨人戦(東京ドーム)では、4番岡本和に2本塁打を浴びて今季初黒星。この日は第2打席で犠飛を浴びたが、3打席の対戦で安打は許さず。リベンジを意気込んだ一戦で、見事に抑え込んだ。 当初は12日中日戦(甲子園)で先発予定だったが、今季自身2度目の雨天中止。「もう、正直慣れてるんで(笑い)。行けと言われたところに行くだけだと思う」。本来ならこの日は新外国人アルカンタラの予定だったが初登板で巨人戦は過酷な状況。雨で流れた分、首脳陣は安定感抜群の青柳に初戦を託すことができた。「雨で流れたのは残念でしたけど、前回もやられた巨人にまたリベンジする機会ができたんで、それは良かった」。登板日変更のツキも味方に、"雨柳さん"が大きな白星をつかんだ。 プロ1年目の16年、初めてセ・リーグ相手に登板したのも巨人戦。7回無失点で勝利した当時の記憶は今でも鮮明だ。「ファンの熱気、盛り上がりは、やっぱり巨人戦だと上がるなと思う。そういうところで投げられてるのは、プラスに捉えてます」。青柳の粘投が光り、今季チームの1点差勝ちは6試合目。伝統の一戦1999試合目でつかんだ白星は、新たな糧になる。【磯綾乃】

◆首位阪神が通算1999試合目の巨人戦で逆転勝ちを決め、2位に今季最大の4・5ゲーム差をつけた。1点を追う4回、マルテのソロで追いつくと、前日13日に国内FA権を取得した梅野隆太郎捕手(29)が御礼の決勝タイムリー。得点圏打率1位の本領発揮&好リードで、首位固めの白星を呼び込んだ。チームは1分けを挟む4連勝で、貯金は今季最多の16。15日に節目の2000試合迎える伝統の一戦に弾みをつけた。「得点圏の鬼」にとって、おいしすぎる場面だった。同点の4回2死一、三塁。梅野はフルカウントから畠の内角149キロに体をクルッと回転させた。うまくさばくと、打球はフラフラとセンター前へ。決勝の適時打にも、一塁ベース上では冷静な表情だった。 「みんながつないで作ってくれたチャンスでしたし、何とかヤギ(青柳)の援護をしたかったので、打つことができてよかった」 矢野監督が「セーフティーリードはない」と表現する東京ドーム。1発逆転と隣り合わせだからこそ、隙は見せない。「取った後が大事」と3投手を好リードし、1点差勝利を導いた。 得点圏打率5割3分8厘は12球団断トツ。その数字は偶然では生まれない。昨オフには「若い時は2割5分は最低でも打ちたいって言っていたけど、やっぱり勝負強いバッターを目指したい」と本音を語った。「こいつやったらやってくれるっていう期待値が、ファンの見る楽しさでもあるし、プロとしてはすごいうれしいこと」。勝利のため、ファンのため。理想とする姿をものにしつつある。マルテ、佐藤輝、サンズ...。重厚な中軸の後に、こんな「恐怖の7番」が控えているから、リーグトップの得点力が生まれる。 前日13日に出場選手登録が7年に達し、国内フリーエージェント(FA権)の資格取得条件を満たした。「さまざまなサポートをしてくれた周りの支えがあったからこそ」と感謝。「今はチームの先頭に立って、勝つために目の前の1試合を頑張っていきたい」と決意を新たにし、1999回目の巨人戦で、ふさわしい活躍を見せた。 指揮官は「追加点もそうですし、今日はバッテリーで勝ったかなと思います」とたたえた。「守る方でも打つ方でも、大きな仕事をしてくれて助かっている」。不動の正捕手には全幅の信頼が寄せられている。 梅野の決勝打で、チームは引き分けを挟んで4連勝。貯金も今季最多の16に増やし、最高の状態で15日の「伝統の一戦」通算2000試合のメモリアルデーを迎える。「明日も明後日も『よし、いってやるぞ』と、いい形を作れた」と指揮官。2位巨人とは今季最大となる4・5差。独走態勢に入るべく、残り2戦も取りにいく。【中野椋】 ▼梅野が4回2死一、三塁から決勝タイムリー。得点圏打率5割3分8厘と12球団トップの勝負強さを発揮している。2リーグ分立後の規定打席到達者の最高は、85年落合博満(ロッテ)の4割9分2厘で、梅野には更新の期待もかかる。特に走者が三塁にいる場面にめっぽう強く、13打数10安打、打率7割6分9厘と打ちまくっている。

◆節目の一戦を前に、2位巨人が逆転負けを喫した。3回、4番岡本和真内野手(24)の左犠飛で先制。だが直後の4回、先発畠世周投手(26)が阪神打線につかまった。マルテに同点ソロ、梅野に勝ち越しタイムリーを許し、この2失点が大きく響いた。打線も5回以降は1安打に封じられ、首位阪神とは4・5ゲーム差に広がった。「伝統の一戦」は15日、節目の2000試合目を迎える。声を出せない巨人ファンから、声にならないため息が漏れた。1点を追う9回2死二塁、代打亀井の遊ゴロで連勝が2でストップ。緊急事態宣言の発令により無観客だった東京ドームに、4月25日の広島戦以来19日ぶりに戻ってきた観客は1万3873人。勝利のかしわ手を打ったのは、黄色をまとう阪神ファン。3回の岡本和の先制犠飛による1得点のみと打線が封じられて競り負けた原監督は「2対1というのはそういう部分だね」と、冷静に振り返った。 失点の仕方には悔いが残る。先制した直後の4回1死、マルテに8号同点ソロを献上。その後2死一、三塁では梅野に決勝適時打を食らった。マルテには今季7試合目で打率3割6分の4本塁打、5打点。梅野には打率3割6分8厘で5打点。11日ぶりの先発で7回2失点の畠は攻められないが、巨人が喫した30失点の1/3を稼ぐポイントゲッターに、先制直後にしっかり仕事を許してしまった。 今季5度目の逆転負けで、首位阪神とのゲーム差は今季最大の4・5。15日の「伝統の一戦」の節目となる2000試合を前に、永遠のライバルでもある虎の背中が、さらに遠くなった。指揮官は「まあ、明日いきます」と締めた。エース菅野と主将坂本の復帰のメドがまだたたない今、これ以上離される訳にはいかない。【浜本卓也】

◆伝統の一戦で初めて4番を務めた阪神佐藤輝明内野手(22)が、逆転を呼び込むHランプをともした。1点を追う4回に3番マルテのソロで同点。スタンドの興奮が冷めやらない中、近大の先輩で巨人先発畠の初球低め137キロカットボールを捉えた。体を沈め、払うようにとらえた低いライナーは、失速することなく中堅フェンスを直撃する二塁打。三進後、梅野の勝ち越し適時打で決勝のホームを踏んだ。 この二塁打は記録的な1打となった。「1本出て、それが点につながったんで、それが一番よかった」。阪神の新人が巨人戦で4番を務め、安打を記録したのは、1939年(昭14)の富松信彦以来、実に82年ぶり。1999試合目のGT戦で歴史の扉をこじ開けた。三塁の守りでも見せた。1点リードの8回2死一塁。巨人はエンドランを仕掛けてきたが、岡本和の強い打球を難なく捕球し、落ち着いて一塁送球し、投手陣をもり立てた。 東京ドームには1万3873人のファンが入った。三塁側には黄色い虎党の姿も多く、佐藤輝が打席に入った時の拍手は一際大きかった。4月22日、「6番右翼」だった前回の東京ドームから自己最長の17試合連続出塁。持ち味の1発だけでなく、チャンスメークの役割も果たし続けている。 15日は伝統の一戦が通算2000試合を数える。4番で迎える規格外ルーキーは「巨人は倒さないといけない相手だと思う。集中して連勝できるようにやっていきたい」と勝利を誓った。5月7日のDeNA戦以来、6戦ぶりの11号が飛び出せば早くもセ・リーグ全5球団制覇。セ本拠地6球場制覇も達成する。新人の左打者では、11発は93年巨人松井秀喜にも並ぶ。伝統の一戦で数々のアーチ、ドラマを演出してきたゴジラに負けじと、新怪物伝説をつくる。【石橋隆雄】

◆ルーキーの一打から首位阪神が巨人に競り勝ち、今季最大の4・5ゲーム差をつけた。1点を追う4回にマルテの8号ソロで追いついた直後、巨人戦初4番の佐藤輝明内野手(22)が右中間フェンス直撃の二塁打を放ちチャンスメーク。梅野隆太郎捕手(29)の決勝適時打で生還した。阪神の新人が巨人戦で4番を務めるのは史上4人目で、安打を放ったのは39年以来82年ぶり。今日15日に迎える「伝統の一戦」通算2000試合に弾みをつけた。佐藤輝が、伝統の一戦に「4番」として乗り込んだ。4回、3番マルテの同点ソロでスタンドがざわめく中、近大の先輩、巨人畠の初球、低め137キロカットボールに体を沈める。払うようにとらえると、低いライナーは失速することなく中堅フェンスを直撃。三進後、梅野の中前適時打で勝ち越しのホームを踏んだ。 「1本出て、それが点につながったんで、それが一番良かった」。阪神の新人が巨人戦で4番を務め、安打を記録したのは82年ぶり。歴史に名前を刻んだ。 この日は1万3873人のファンが入った。三塁側には黄色い虎党の姿も多く、佐藤輝が打席に入る時の拍手は誰よりも大きかった。3試合連続安打で「6番右翼」だった前回、4月22日の東京ドームでの巨人戦から17試合連続出塁と、チャンスメークの役割も果たし続けている。 4番が出塁すれば「得点圏の鬼」がかえす。2死一、三塁から7番梅野が中前に決勝適時打を放った。「みんながつないで作ってくれたチャンスでしたし、何とかヤギ(青柳)の援護をしたかったので、打つことができてよかった」。得点圏打率5割3分8厘は12球団断トツ。マルテ、佐藤輝、サンズ...。重厚な中軸の後に、こんな「恐怖の7番」が控えているから、リーグトップの得点力が生まれる。 15日は「伝統の一戦」通算2000試合目のメモリアルゲーム。4番で迎える佐藤輝は「やっぱり巨人は倒さないといけない相手だと思うんで、まあ、集中して連勝できるようにやっていきたい」と誓う。6戦ぶりの11号が飛び出せば、巨人戦初、東京ドーム初となり、セ本拠地6球場制覇となる。新人の左打者では、93年巨人松井秀喜氏にも並ぶ。伝統の一戦で数々のアーチを放ち、ドラマを演じてきた「ゴジラ松井」のように、虎の新怪物テルが、新しい伝説をつくる。

◆首位阪神が通算1999試合目の巨人戦で逆転勝ちを決め、2位に今季最大の4・5ゲーム差をつけた。1点を追う4回、マルテのソロで追いつくと、前日13日に国内FA権を取得した梅野隆太郎捕手(29)が御礼の決勝タイムリー。得点圏打率1位の本領発揮&好リードで、首位固めの白星を呼び込んだ。チームは1分けを挟む4連勝で、貯金は今季最多の16。15日に節目の2000試合迎える伝統の一戦に弾みをつけた。 「得点圏の鬼」にとって、おいしすぎる場面だった。同点の4回2死一、三塁。梅野はフルカウントから畠の内角149キロに体をクルッと回転させた。うまくさばくと、打球はフラフラとセンター前へ落ちた。 「みんながつないで作ってくれたチャンスでしたし、何とかヤギ(青柳)の援護をしたかったので、打つことができてよかった」 決勝の適時打にも、一塁ベース上では表情は変わらない。矢野監督が「セーフティーリードはない」と表現する東京ドーム。1発逆転と隣り合わせだと自覚するから、隙は見せない。「取った後が大事」と3投手を好リードし、1点差勝利を導いた。 得点圏打率5割3分8厘は12球団断トツ。その数字は偶然では生まれない。昨オフには「若い時は2割5分は最低でも打ちたいって言っていたけど、やっぱり勝負強いバッターを目指したい」と本音を語った。「こいつやったらやってくれるっていう期待値が、ファンの見る楽しさでもあるし、プロとしてはすごいうれしいこと」。勝利のため、ファンのため。理想の姿をものにしつつある。マルテ、佐藤輝、サンズ...。重厚な中軸の後に、「恐怖の7番」がいるから、リーグトップの得点力が生まれる。 前日13日には国内フリーエージェント(FA権)の資格取得条件を満たした。「さまざまなサポートをしてくれた周りの支えがあったからこそ」と感謝。「今はチームの先頭に立って、勝つために目の前の1試合を頑張っていきたい」と決意を新たにし、1999回目の巨人戦で、ふさわしい活躍を見せた。 指揮官は「追加点もそうですし、今日はバッテリーで勝ったかなと思います」とたたえた。「守る方でも打つ方でも、大きな仕事をしてくれて助かっている」。不動の正捕手には全幅の信頼が寄せられている。 梅野の決勝打で、チームは引き分けを挟んで4連勝。貯金も今季最多の16に増やし、最高の状態で15日の「伝統の一戦」通算2000試合のメモリアルデーを迎える。「頭を取るっていうのは意味がある。全員で取れたんで。明日も明後日も『よし、いってやるぞ』と、いい形を作ってくれた」と指揮官。2位巨人とは今季最大となる4・5差。独走態勢に入るべく、残り2戦も取りにいく。【中野椋】 ▼梅野が4回2死一、三塁から決勝タイムリー。得点圏打率5割3分8厘と12球団トップの勝負強さを発揮している。2リーグ分立後の規定打席到達者の最高は、85年落合博満(ロッテ)の4割9分2厘で、梅野には更新の期待もかかる。特に走者が三塁にいる場面にめっぽう強く、13打数10安打、打率7割6分9厘と打ちまくっている。

◆阪神・小幡竜平内野手(20)が出場選手登録され、今季初昇格となった。  「いつ呼ばれてもいいようにずっと準備してきたので、使っていただいたところで、しっかり貢献できるように、思い切りよくプレーしていきます」  1軍デビューを果たした昨季は、54試合に出場して、打率・220。今季はウエスタンで33試合に出場して、リーグ4位の打率・288、同2位の7盗塁と結果を残していた。  代わって、木浪聖也内野手(26)が出場選手登録抹消となった。

◆伝統の一戦、1999試合目は阪神が先制点を許した。  先発の青柳は三回1死から梶谷に四球、ウィーラーに右前打を浴び一、三塁のピンチを背負う。打席には巨人の4番・岡本。その初球だった。ライナー性の打球は左翼へ。三走がタッチアップ。サンズが好返球も、球審・笠原の判定はセーフとなった。  矢野監督はたまらずリプレー検証を要求。場内にはさまざまな角度からの映像が流され、巨人ファン、阪神ファンから歓声が上がったが、判定は覆ることなく、巨人に先制点を奪われた。

◆阪神のジェフリー・マルテ内野手(29)が0-1の四回に同点の8号ソロを放った。  「点を取られた後だったから、すぐに取り返すことができてよかったね。この大事な一戦でラパンパラをすることができてうれしいよ」  1死から打席に向かうと、カウント1-1から畠の150キロを一閃。打球は右中間スタンド最深部で弾んだ。4日のヤクルト戦(神宮)以来の一発に、恒例の「ラパンパラ」ポーズでナインを鼓舞した。  続くD1位・佐藤輝(近大)が中堅フェンス直撃の二塁打で17試合連続出塁とすると、サンズが中前打で1死一、三塁。ロハスは空振り三振に倒れたが、試合前の時点でリーグトップの得点圏打率・520を誇る梅野が中前打を放ち、2-1と一気に逆転した。

◆伝統の一戦、通算1999試合目は阪神が逆転勝ち。2位・巨人とのゲーム差を今季最大の4・5に広げた。  先発の青柳は三回。1死から満塁とされると、岡本の左犠飛で先制を許す。それでも回を増すごとにギアを挙げ、五回から七回はいずれも三者凡退。青柳は7回5安打1失点と粘投。4月10日のDeNA戦(横浜)以来、約1カ月ぶりの今季3勝目に「野手の方々にも助けてもらい最少失点で投げることができてよかったです」と気を吐いた。  打線は0-1の四回。マルテの8号ソロで同点に追いつくと、2死一、三塁の好機で得点圏打率リーグトップの梅野が中前打を放ち逆転に成功。阪神は引き分けを挟んで4連勝とし、貯金は16となった。

◆2位・巨人は首位・阪神に競り負け、カード初戦で黒星を喫した。原辰徳監督(62)は、1点を追う八回1死一塁で3番・丸に代打・中島を起用する決死のタクトを振るったが、逆転はならなかった。--投手戦。畠は7回2失点  「そうですね。辛抱強くね。あの回(四回)だけちょっと、ねえ。まあ、でも2点で抑えたんだもんね、うん」  --打線が1得点  「そうですね。その部分でしょうね。2-1というのはそういう部分だね」  --八回1死一塁で3番・丸に代打・中島(右飛)  「まあ、最善の策というところですね」  --二回に一塁走者の若林がランエンドヒットで三塁を狙うもアウトに  「重箱の隅をつつけばね。あそこ(二塁を回る手前)で止まってもね。(中堅手にノーバウンドで打球を)捕られたら(一塁へ)かえれないという状況ですからね。そういう部分からいくと、ちょっと躊躇しちゃったかなという部分だね。僅差のゲームというのはそういうものですよね」  --三回の先制点は足を絡めた  「そうですね。よく梶谷が走ったよね、あそこでね」

◆ロハスの打席を見ていると、タイミングが合わず、配球を読みきれず、スイングも鈍い。1本出れば流れが変わると言われるが、六回の三振や八回2死一、二塁での捕邪飛を見ていると、気配が感じられない。  阪神には糸井や陽川という好調な打者がいる。大山が離脱し、佐藤輝が三塁に回った今、「6番・右翼」のピースを埋めることができれば、戦いが楽になる。だからこそ、矢野監督もロハスを起用しているのだろう。しかし、プロ野球は結果社会である以上、数字を残さなければ試合には出られない。  矢野監督がすぐに決断するとは思えず、我慢するだろうが、「見切り」をつけることも大事だと思う。結果をあげている選手を腐らせてしまうと、チームの雰囲気は悪くなる。この巨人戦がひとつの判断材料になるのではないか。  先発の青柳は狭い東京ドームという状況でよく投げたと思う。私たちの時代の後楽園球場から、敵地での巨人戦は打者有利の中で、投げ続けていた。ボールの切れがよく、しかも適当に散らばっていた。青柳らしく、粘りの勝利だと思う。(本紙専属評論家)

◆東京ドームにファンの熱気が戻ってきた。有観客で行われた首位・阪神との伝統の一戦。通算1999試合目のマウンドに巨人の5年目、畠が上がった。  13日に「ストライク先行で、先頭打者をしっかり抑え、主導権を与えないようにしたい」と闘志を燃やしていた右腕。立ち上がりから気迫のこもった投球を見せた。  一回から最速153キロの直球と縦に大きく落ちるカットボールを効果的に使い、近本、糸原、マルテを9球で三者凡退。二回もドラフト1位・佐藤輝(近大)、サンズ、マルテの強力クリーンアップをわずか8球で片づけるなど、上々のスタートを切った。  だが、そこはリーグトップのチーム打率・262(13日現在)を誇る猛虎打線。2巡目は簡単にいかなかった。  三回に岡本和の犠飛で1点の援護をもらった直後の四回。1死から3番・マルテに150キロの直球を捉えられ、右中間席への8号ソロを被弾。続くD1位ルーキー・佐藤輝(近大)に右中間フェンス直撃の二塁打、サンズに中前打と3連打を浴び、2死一、三塁で梅野に勝ち越しの中前適時打を許した。  五回以降は粘りの投球で追加点を与えなかった。終わってみれば7回6安打2失点、5奪三振。十分に胸を張れる内容だった。打線の援護がほしかった。これで阪神とのゲーム差は今季最大の4・5に広がった。(樋口航)

◆阪神が接戦を制して、1分けを挟んで4連勝。巨人と4・5差とした矢野耀大監督(52)の一問一答は以下の通り。  ■バッテリーの勝利  (テレビインタビュー)  --青柳がナイスピッチングだった(7回1失点で3勝目)  「調子は、すごくいい感じでは、なかったかもしれないですけど、攻める気持ちとランナー出しても丁寧にというのを、梅野と合わせて、よくやってくれたと思います」  ーー打席でも一塁に全力疾走  「青柳自身もチームとしても、しっかりやっていこうというチームなんでね。投手でもやってくれるのはチーム全体が盛り上がります」  ーー15日は節目の試合  「2000試合というのは先輩方、皆さんが作ってくれた伝統がある。僕らが引き続き、いい試合、魅力ある試合、そういう伝統ある試合にしていきます」  ■信頼感を強調  (記者の取材に)  ーーこれぞ東京ドームの巨人戦という試合だった  「1点差というのはね、シビれるし、もう(岩崎)優とスアちゃん(スアレス)出した時点で任せてるから。結果を受け止める気持ちはできていたし。信頼感もあってのことやけど。リュウ(梅野)のタイムリー(四回の勝ち越し打)もあったけど、バッテリーが頑張ってくれたね、特に」  ■東京ドームでシビれる試合  ーー「山はまだまだ先でまずは自分たちの試合」と話していたが、選手たちが自分の役割を果たせた  「そういうところでいうとね、もっと点を取りたかったし、取れるチャンスもあったんで。課題もあるけど。みんな集中力を持ってくれた部分が大きかったからこそ、接戦を取れたと思うしね。俺も、この球場で何試合も出てきたけど。バッテリーも、ずっとシビれながらやっていたんで。結果として1点差で勝てたことは、チーム全体で、やれたことはあるんじゃないかなと思います」  ■マルちゃん打てば...  ーーマルテの一撃(四回の同点8号ソロ)   「(畠は)立ち上がりから飛ばしていたからね。全力で来ていたし。ヒット、ヒットっていう感じではなかったけど。マルちゃんが出て、あっこで1点で終わらず、もう1点いけたのは価値があると思うし、マルちゃんはフォアボールでつなぐ意識もあるけど、こういうのも魅力なんでね。ムードも盛り上がるんでね。いいきっかけになったかな」  ーー青柳が巨人にリベンジした(4月21日の試合で敗戦投手)  「調子自体はすごくいいとは見えなかったけど、攻める部分と、低く投げる意識は高く。前回岡本和に2本ぐらい打たれたかな。2本打たれたところで、反省があったと思うから」  ーー梅野は打撃でも勝負強い  「逆に1点やったら流れも向こうにあった状態だったけど、打ってくれたから流れが来たんでね。守る方でも打つ方でも大きな役割の仕事をしてくれて助かってます」  ーー初戦取れたことは大きい  「現状ウチが上にいるんで、頭取るのは意味があると思うし、全員で取れたんでね。あしたもあさっても『よし、いってやるぞ』と、こっちとしてはいい形を作ってくれたんで。まあいい初戦になったと思います」

◆阪神のマルテが0-1の四回1死で浮いた150キロの速球を豪快に打ち返し、右中間に同点の8号ソロを運んだ。序盤から飛ばしていた畠を崩し「集中してボールを強くたたくことだけを意識した。勝ちに貢献できたことが一番うれしい」と誇らしげに話した。  4月20日に1試合2本塁打を放つなど、東京ドームは今季4試合で4発目。相性のいい敵地で、守備でも軽快な動きを披露した。四回に先頭打者だった若林の一塁線へのゴロをスライディングしながら好捕してピンチの芽を摘み「守備の人」と日本語で冗談めかして話し、笑いを誘った。  昨年は故障も響いて29試合の出場に終わったが、今季はここまで全試合に「3番・一塁」で出場。「貢献することだけを考えている」との言葉通り、好調なチームを支えている。

◆阪神の梅野が四回、同点としてさらに2死一、三塁の好機で勝ち越し打を放った。149キロの内角速球に詰まりながらも中前に落とし「みんながつないでくれた。ヤギ(青柳)の援護をしたかったので打てて良かった」と喜んだ。  直前にまだ来日初安打が出ていない新外国人のロハスが空振り三振に倒れて流れを失いかけていた。得点圏打率が5割3分8厘と勝負強さを発揮している7番打者を、矢野監督は「もう1点取れたのが価値がある」とたたえた。

◆巨人は1-2の八回1死一塁で左腕の岩崎に対し、不振の左打者の丸に右の代打中島を送ったが、右飛に倒れた。丸は2三振を喫し、打率は2割2分7厘だっただけに、原監督は「まあ、最善の策というところですね」と述べるにとどめた。  打線は単打6安打に抑えられ、五回以降は九回のスモークの1本だけに終わった。15日には阪神との「伝統の一戦」が通算2000試合の節目を迎える。原監督は「まあ、いきます」と気持ちを切り替えた。 巨人・元木ヘッドコーチ(1点止まりの打線に) 「青柳に粘り強く投げられてしまった。丸は状態が非常に悪いが、どうにか良くなってほしい」

◆阪神が接戦を制して4連勝を飾った。巨人は畠が7回2失点と好投したが、打線の援護がなかった。元巨人監督の堀内恒夫氏(73)はこの日、自身のブログで「1-2で負けたか...勢いの差かね。でも先発の畠 2点でよく抑えたじゃないの」と及第点を与えていた。

◆虎を救う弾道が、右中間スタンドに向かって伸びた。阪神・マルテが起死回生の同点ソロ。傾きかけた流れをひと振りで取り戻した。  「勝ちに貢献できたのが一番。集中してボールを強くたたくことだけを意識していたよ」  先制された直後の四回1死。畠の150キロ直球に快音を響かせた。4日のヤクルト戦(神宮)以来、7試合ぶりの8号同点アーチ。ナインの士気を上げるラパンパラポーズで、痛快な逆転劇の口火を切った。  打者有利と呼ばれる東京ドームだが、昨季、チームは打率・210と手を焼いた。しかし、今季、M砲はこの舞台で早くも4本塁打。八回には高梨から二塁打を放ち、打率・500(16打数8安打)と暴れている。四回は痛烈な打球を好捕するなど一塁守備でも魅せ、日本語で「シュビノヒト」と笑った。  「これを続けていく必要があると思う。どんな状況でもチームに貢献できるような仕事をしたいね」  負けられない伝統の一戦。来日3年目の助っ人が最強の矛となる。(原田遼太郎)

◆打てば天井スレスレ飛球に、フェンス直撃打。走っては「野人」らしくガシガシと駆けた。有観客となり久々に東京ドームへ詰めかけたG党も、進化し続ける虎の至宝を目の当たりにし、たまげたに違いない。阪神のD1位・佐藤輝(近大)が、1999試合目の伝統の一戦でも大暴れだ。  「やっぱり巨人は倒さないといけない相手だと思うんで、集中して連勝できるようにやっていきたいと思います」  振り返れば、ドラフトで4球団(阪神、巨人、ソフトバンク、オリックス)が競合した"Gの恋人"でもあった男だ。だが、ユニホームを脱いでも、タテジマが刻まれている。15日に迎えるTGメモリアルゲームへ「巨人は倒さないといけない相手」と虎党が泣いて喜びそうな言葉を残した。  阪神の新人が巨人戦で「4番・三塁」を任されたのは2017年の大山以来4人目。クリーンアップが繰り広げた四回の逆転劇でも、見事に中心を担った。0-1からマルテが同点弾を放ち、一塁ベンチ前でおなじみの「ラパンパラ」ポーズを繰り広げるのを横目に、佐藤輝も豪快に続いた。  近大の先輩、畠が投じた低めへ鋭く曲がる137キロをブンッ! と振り抜き、あっという間にドカンと中堅奥のフェンスにブチ当てた。悠々と二塁へ到達。これが巨人戦自身7戦目、27打席目での初の長打だった。  続くサンズが中前打を放つと、猛然と三塁を蹴りかけて、藤本ベースコーチに制された。超人・糸井が「野人」と命名したほどの野性味があふれ出ていた。ここで勝ち越す、Gをたたくという気概が全身からにじみ出ていた。2死から梅野が中前適時打を絞り出すと、佐藤輝が決勝のホームを踏んだ。  二回の三飛も、六回の中飛もあと少しで天井に直撃する当たりだった。規格外の男はどんな伝統の一戦の歴史をつむいでいくのか。この日の4打数1安打だけでも十二分に魅力を見せつけた。  「一本出て点につながったんで、それが一番よかったかなと思います」  これまでの歴史がひっくり返るほどに、佐藤輝は巨人を討てる。(長友孝輔)

◆セ・リーグ2位の巨人は14日、阪神7回戦(東京ドーム)に1ー2で競り負けた。原辰徳監督(62)は八回1死一塁で3番・丸佳浩外野手(32)に代打を起用する執念の采配を振ったが、追いつけなかった。15日は阪神との「伝統の一戦」が通算2000試合を迎える。永遠のライバルとの節目の一戦で意地を見せる。  最後の最後まで手に汗握る攻防が続いた。これが伝統の一戦-。原監督は1点を追う八回1死一塁で左腕の岩崎に対し、丸に代えて中島を起用した。  「最善の策というところですね」  3番に代打を送る執念の策は実らず。中島は右飛に倒れ、追加点は奪えなかった。4月に新型コロナウイルスの陽性判定を受けて離脱した丸はここまで打率・227(得点圏は同・158)。1日の中日戦(東京ドーム)は三回で退くなど、今季は途中交代やスタメンから外れる試合もあった。この日は1四球を選んでいたが、2三振。元木ヘッドコーチは「タイミングが合ってなかった。今までの丸とは大違い。本来の姿ではない」と苦渋の決断に至った。  逆転負けで今季最大の4・5ゲーム差に広げられた指揮官は「まあ、明日いきます」と言い残し、次戦に目を向けた。15日の第2戦は巨人-阪神の通算2000試合目。80年以上も前から東西で人気を二分してきた宿敵との戦いが、節目を迎える。  伝統の一戦で見せ場を作ってきたのが、ほかでもない原監督だ。プロ2年目の1982年4月18日に行われた1000試合目(後楽園)で本塁打を放ち、自身の150号、200号、300号も阪神戦で記録した。  「阪神ファンは独特なものがある。競っているときはかなりジャイアンツサイドに厳しいヤジ。ひとたび引き離すと、矛先が向こう(阪神側)に向いちゃう。それが一番われわれの中で楽しみにしている」  この日から有観客試合が再開された。長嶋茂雄終身名誉監督、王貞治・ソフトバンク球団会長らレジェンドが歴史を彩ってきた黄金カードは、巨人が1093勝835敗71分けと大きく勝ち越している。先人達も注目するメモリアルゲームで、原巨人が伝統の「強さ」を発揮する。(谷川直之)

◆なんて強いんや! 阪神は巨人に逆転勝ち。四回に梅野隆太郎捕手(29)が勝ち越しの中前打を放ち、4連勝(1分け挟む)を決めた。15日は伝統の一戦の通算2000試合。貯金は今季最多の16で宿敵とは4・5ゲーム差。ここで一気に突き放し、16年ぶりのリーグ優勝を近づける!  歯を食いしばり、必死に食らいついた。この男なら何とかしてくれる。誰もがそう信じていたはずだ。白球が中前に弾む。東京ドームの左翼席に陣取った虎党が沸く。通算2000試合となる伝統の一戦の"前夜祭"。決めたのは巨人にめっぽう強い梅野だった。  「みんながつないで作ってくれたチャンスでしたし、何とかヤギ(青柳)の援護をしたかったので、打つことができてよかったです」  三塁ベンチのナインに向かって右手を挙げた。マルテのソロで追いついた四回2死一、三塁。D1位・佐藤輝(近大)の二塁打、サンズの中前打とクリーンアップが作ってくれた好機に奮起した。フルカウントから右腕・畠が内角に投じた149キロ直球を振り抜いた。詰まりながらも気持ちが勝った。中前へ、ポトリ。決勝点となる1点をもぎ取った。 その他の写真(2/2枚)  三回先頭ではチーム初安打となる右前打を放ち、今季7度目の複数安打を記録した。これで、対巨人は打率・368で打点は5。セ・リーグ5球団の中でいずれもトップの成績を残している。昨季まで13年連続で勝ち越しなしと苦しめられた相手に頼もしい限りだ。  13日には国内フリーエージェント(FA)権を初取得。球団からねぎらいの言葉をもらったが「目の前の1試合を一生懸命頑張っていきたい」と敵地に乗り込んだ。  今季は開幕からマスクをほぼ任され、7番に座るバットでも勝負強さを発揮。得点圏打率は両リーグでトップの・538(26打数14安打)で猛虎打線に欠かせない存在となっている。オフに「得点圏でランナーをかえして、チームの勝利が一番。自分で打って勝ちを取る。得点圏で回ってきて、期待されるような打者になりたい」と約束した。今季の行方を左右する大一番で有言実行。矢野監督は「リュウ(梅野)が打ってくれたから流れがこっちにきた。守る方でも打つ方でも大きな役割の仕事をしてくれて助かっている」と賛辞を惜しまなかった。  チームは引き分けを挟んで4連勝で、貯金は今季最多の16。2位巨人とは今季最大となる4・5ゲーム差をつけた。  いよいよ、15日はTG戦のメモリアルデー。指揮官は「先輩方、皆さんが作ってくれた伝統がある。僕らが引き続き、さらにいい試合、ファンの人に魅力ある試合、そういう伝統ある試合にしていきます」と意気込む。3試合連続で逆転勝ちと勢いは完全に虎。扇の要として頼れる梅野がいる。節目の一戦も勝利で飾り、首位街道を進む。(菊地峻太朗)

◆昨季までの巨人と阪神のチーム状況が、入れ替わった印象を受ける。  阪神は4番・佐藤輝が存在感を示し、どっしりと落ち着いているから、前後の打者も落ち着いて打てるし、また実際に結果を出している。チーム全体にも落ち着きがあるから、パカパカと打たなくても、2-1であっさり勝てるわけだ。  巨人は、まだ岡本和の調子が定まっていないため、前後の打者もどこかソワソワしたムード。昨季、4番・大山の打順を下げてみたり、コロコロとオーダーを入れ替えたり、フラフラしていた阪神打線と、似ている。  したがって、巨人が15日から着手すべきことは、佐藤輝の徹底マーク。四回に畠が二塁打を許したのも、外角から入ったため。八回に高梨が空振り三振を取ったときのように、初球に内角を攻めれば外角の変化球も効く、ということだ。  まず佐藤輝。そして、マルテ、サンズ...。打線の落ち着きを奪うよう、一人一人つぶしていくしかないよ。 (本紙専属評論家)

◆やっぱり"ナマ"が一番です。東京ドームでの伝統の一戦が始まる前に、甲子園球場で広島との2軍戦を取材していたトラ番・原田遼太郎に電話をかけました。けっこう、ざわざわした音が聞こえてきます。  「818人、入っています。ユニホームを着ている男性ファン、カメラを構えている若い女性もいます。みんな生で見たいんですね」  1軍の試合は販売済みの年間予約席だけになっていますが、甲子園で行われるときの2軍戦は一般販売(ローソンチケット)されます。バックネット裏で値段も安い(大人1500円と2500円)ため、平日の昼間でも人気があるようです。  「先発はドラフト5位の村上(頌樹)クン(東洋大)です。選抜大会(2016年)の優勝投手(智弁学園高)です。思い出のマウンドでいい投球をしてほしい」  甲子園には3年目の右腕・斎藤の姿もありました。1軍に昇格して16日の巨人戦に先発する見通しでしたが、12日の中日戦が降雨中止で青柳の先発がこの日の巨人戦にずれ、斎藤の先発予定は先送りになっています。  「青柳さんがずれたことで来週の水曜日19日のヤクルト戦(甲子園)の先発が空いています。斎藤投手はこのままそこに入ると中11日になる。きょう調整登板すると思います。これも注目です」  2人とも好投しました。試合も2-0で快勝。今回の広島との2軍戦は16日まで続きます。29、30日は巨人の2軍との交流試合も予定されています。一般発売がある甲子園での2軍有観客試合、おススメですよ。というわけで、当番デスク阿部祐亮にも「2軍もいい試合してるぞ」と電話したのですが、「そうですか...」。つれない反応でした。心配事があるらしい。先日、和歌山の白浜アドベンチャーワールドから「ペア入園券」が届いたのだそうです。  「パンダの赤ちゃんの命名で『楓浜(ふうひん)』と書いて応募したんです。それが採用されて。1338人の命名者のうちの一人なんです」  2歳の次男の名前が「楓真(ふうま)」クン。そこから書いたらしい。すごい。パンダのゴッドファーザー(名付け親)だなんて。  「運を使い果たしたんじゃないかと思っているんです。最近、僕が当番の日に阪神が負けるし、ロハスもまだ打っていない。あだ名がパンダだったロジャース(2017年に途中加入したものの打てずに退団)を思い出しています」  阿部は最近「ロハスがロジャースに見えてきた」そうです。が、東京ドームで打撃練習を見ていたトラ番・菊地峻太朗は「いい感じで振れていますよ。ライナーで弾き返しています」と報告してきました。  甲子園にいた原田も「まだ1軍4試合目。2軍(9試合出場)を入れても他の選手で例えたらオープン戦中盤くらいです。これからですよ」。虎ソナ班の私やデスクの阿部と違って、現場で"ナマ"で見ているトラ番は強気です。原田はこうも付け加えてきました。  「この3連戦、仮に3つ負けても首位です。首位攻防戦じゃないわけですから」  勝ちました。4・5ゲーム差です。ロハスは打てず、4試合無安打となりましたが、考えたらまだ16打席です。  コロナ禍で1軍の試合取材は手伝いにいけないけれど、強い阪神をナマで感じるために甲子園での2軍戦、のぞきにいこうかな。心配性のゴッドファーザーも一緒にいくか?

◆阪神-巨人(巨人-阪神じゃなーい! 虎党としては譲れーん!!)の「伝統の一戦」。"2000試合イブ"の1999試合目に猛虎が勝利!! そして、15日はいよいよ記念すべき通算2000試合...。50余年の虎党が見てきた約1400試合の7シーンを、2回に分けてお送りするのだ!!  まず、本日は『虎の巨人戦涙編』(時代順)。  (1)バッキー、王への投球で乱闘。バッキーは荒川コーチを殴ったときに右手親指を骨折。  (2)1973年、最終戦に勝てば優勝だったところで0-9、しかも甲子園で敗れてVを逃す。  (3)センター池田、歴史的落球。  (4)上田二朗(登録名は当時)、九回2死までノーヒットノーランだったが長嶋に安打される。  (5)末次にサヨナラ満塁弾を浴びる。  (6)九回2死から長嶋監督がルーキー・松本に盗塁させ、山本功の同点打。延長で負ける。  (7)巨人・ガルベスが球審にボールを...(野球ファンとして悲しかった)。  明日は『虎の巨人戦歓喜編』! だから阪神、勝ってよー!!

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
阪神
26102 0.722
(↑0.008)
-
(-)
105176
(+2)
114
(+1)
41
(+1)
32
(-)
0.260
(↓0.002)
2.840
(↑0.05)
2
(-)
巨人
20136 0.606
(↓0.019)
4.5
(↓1)
104164
(+1)
133
(+2)
48
(-)
27
(+1)
0.259
(↓0.002)
3.210
(↑0.03)
3
(-)
ヤクルト
16146 0.533
(↑0.016)
7
(-)
107147
(+4)
155
(+1)
35
(-)
23
(-)
0.246
(↑0.003)
4.000
(↑0.09)
4
(-)
広島
15194 0.441
(↑0.017)
10
(-)
105116
(+9)
135
(+2)
25
(-)
17
(+1)
0.254
(↑0.002)
3.260
(↑0.04)
5
(1↓)
中日
14205 0.412
(↓0.012)
11
(↓1)
104109
(+1)
120
(+4)
17
(-)
20
(-)
0.229
(↑0.001)
2.890
(↓0.03)
6
(-)
DeNA
11265 0.297
(↓0.009)
15.5
(↓1)
101148
(+2)
203
(+9)
34
(-)
8
(-)
0.232
(↓0.002)
4.670
(↓0.04)