阪神(☆6対4★)広島 =オープン戦1回戦(2021.03.09)・阪神甲子園球場=
このエントリーをはてなブックマークに追加

 123456789
広島
0040000004801
阪神
20031000X61000
勝利投手:西 純矢(1勝0敗0S)
(セーブ:加治屋 蓮(0勝0敗2S))
敗戦投手:矢崎 拓也(0勝1敗0S)

本塁打
【広島】クロン(2号・3回表満塁)

  DAZN
チケットぴあ 阪神戦チケット予約 広島戦チケット予約
◆阪神は、先発・西純が5回6安打4失点。開幕ローテーション入りに向け、課題を残した。対する広島は、新外国人・クロンが2試合連続本塁打となるグランドスラムを記録。持ち前のパワーを首脳陣にアピールした。

◆広島の新外国人ケビン・クロン内野手(28=ダイヤモンドバックス)が、2試合連発となるグランドスラムを放った。 5番一塁で先発出場。2点を追う3回2死満塁でカウント1-2からの5球目、西純の真ん中高め直球を豪快に振り抜き、左翼スタンドまでかっ飛ばした。 実戦序盤こそ苦しんだが、7日のヤクルト戦(マツダスタジアム)で実戦12試合目、36打席目にして初めての1発が飛び出していた。開幕に向けて、頼りの主軸候補が波に乗り始めた。

◆広島矢崎拓也投手(26)が、4回8安打5失点と炎上した。 阪神戦の先発マウンドに上がった右腕は、初回に3連打を浴びるなどして2点の先取点を献上。2点リードの4回には1死一、二塁から木浪に中前適時打を許し、2死二、三塁からは代打板山に左前への2点適時打を浴び、あっさりと逆転を許した。自身初の開幕ローテーション入りを目指していた中で、課題を残す投球となった。

◆自身初の開幕ローテーション入りを狙う広島矢崎拓也投手が、4回8安打5失点とアピールに失敗した。 阪神戦に先発。初回に2点を失うと、3回にクロンの満塁弾で逆転した後の4回にも2本の適時打を浴びて逆転を許し、この回でマウンドを降りた。矢崎は「変化球でカウントが取れない訳ではなかったので、やろうと思ったことはなんとなくできたと思う」と前向き。 佐々岡監督は次回のチャンスについては「内容的にはよくない。これから考えます」と話すにとどめた。

◆広島の新助っ人ケビン・クロン内野手(28=ダイヤモンドバックス)が、2戦連発となるグランドスラムを放った。阪神戦に「5番一塁」で先発。3回2死満塁から西純の真ん中高め直球を強振。甲子園に強烈な破壊音を響かせ、打球は左翼席に着弾した。195センチ、115キロの大砲は「ホームランになったのはボーナス。中軸を担う打者として打点を挙げることができたので、合格点だと思います」と大きな胸を張った。 7日ヤクルト戦で実戦12試合目の36打席目で初めて1発を放ち、調子が上向いてきた。本拠地で試合前に欠かさないトス打撃をこの日は敵地ブルペンでこなし、「いつものルーティンをこなすことができた」とニヤリ。実戦を重ねてきて「しっかりとボールは見極められ始めてきたかな。いいスイング出来始めている」と手応えを口にした。 他球団の多くの新外国人が入国できていない中、チームメートと親睦を深め、キャンプインに間に合わせようと、球団が提示した来日プランで最速の1月3日の入国を選択。キャンプでも早出練習を行い、鈴木誠と打撃論を交わすなど真面目に取り組む姿にチーム内で株価は上がっている。佐々岡監督は「日曜日の1本が精神的にも良かったのかもしれない。しっかりと練習している成果が徐々に出てきた」とうなずいた。 キャンプ中、クロンはテレビで甲子園のドキュメンタリー番組を視聴したという。「甲子園の歴史、どういう風な球場かをまず学んでから今日来た。歴史のある球場でプレーできたということは感慨深い」。父が元メジャー選手で兄は現役メジャー。野球一家で育った男は愚直な取り組みを続ける。開幕に向けて、主軸候補が波に乗り始めた。【古財稜明】

◆広島3年目の島内颯太郎投手(24)が1回1安打3三振と好投し、勝ちパターン入りをアピールした。阪神とのオープン戦(甲子園)で、2点ビハインドの7回に3番手で登板。最速154キロの直球を武器に、ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)から空振り三振を奪うなど、際立つ存在感を見せた。目標の勝利の方程式入りへ、残りのオープン戦も結果を残し続ける意気込みだ。島内の剛球が、甲子園でうなりを上げた。先頭の小野寺を直球のみで空振り三振に斬り、打席に注目のドラフト1位佐藤輝を迎えた。初球は高めに外れたが、151キロと154キロの直球を振らせ、追い込んでからの4球目、外角低めのフォークで空振り三振に仕留めた。「良い打者なのは分かっていたので、今出せる自分の全力を出そうと思って投げた」と充実の表情で振り返った。 持ち味の直球がさえ渡った。2死から中野に四球を許し、長坂に中前打を浴びてピンチを招いたが、最後は山本をカウント2-2から148キロ直球で押し込み、このの回全3アウトを空振り三振で仕留めた。「久しぶりに自分の持ち味である真っすぐが投げられた。今日に関しては良い投球ができたかなと思う」と好感触だ。 佐々岡監督も島内の気持ちのこもった投球を評価した。「制球というよりも、『打てるもんなら』というくらいの腕を振ってね」。空振り三振に仕留めた佐藤輝との対決については「あのくらいの気持ちで投げてくれたら。それが彼本来の投球だと思うし、それを求めてるわけですから。小さくなっても何の魅力もないので」と持ち味継続に期待した。 7日ヤクルト戦でも1回を3人斬り。中1日で登板したこの日も無失点に切り抜けた。キャンプからの実戦は5試合で計5回3安打1失点の安定感。「中継ぎでやるからには後ろを任せてもらえるような投手になりたい。開幕まで残り少ないけど、アピールするしかない」と貪欲だ。勝ちパターンを争う塹江、ケムナやドラフト1位栗林ら新人3投手もアピールを続けている。「中継ぎはみんな今調子がいいので、何とかみんなに負けないように頑張りたい」。激しい身内バトルを制し、一躍大ブレークを期す。【古財稜明】

◆広島育成のコルニエル投手が、2回1安打1失点(自責0)と力投した。約2週間ぶりの実戦となる阪神戦の5回に2番手で登板。2死から二塁打と2四球で満塁のピンチを招き、捕逸で1点を失ったが、中谷を直球で空振り三振。6回もマウンドに上がり、最速154キロの直球に変化球も織り交ぜ、板山、陽川を連続三振。最後は大山を追い込んでから低めの変化球で捕邪飛に打ちとった。 沖縄春季キャンプでは2月16日のロッテ戦で2回3失点を喫したものの、その後の2試合では自責点ゼロを継続。この日も力を示した右腕に佐々岡監督は「ボール自体は2イニングを見ても力強さはありましたし、変化球でも(勝負できる)というところもある。もっともっと見てみたいという、それくらいの球は投げていた」と評価した。支配下選手登録へ、また1歩前進した。

◆阪神のドラフト1位、佐藤輝明内野手(21=近大)が、甲子園デビューをタイムリーで飾った。「6番・左翼」でスタメン出場。1-0の1回2死一、二塁で回った初打席で、広島先発の矢崎の変化球を捉え、右前へ。二塁から大山が2点目のホームを踏んだ。 佐藤輝にとって甲子園での実戦は、近大時代の19年4月27日京大戦以来。「いい意味で特に甲子園だからといって力むことなく、いつも通りプレーしたいと思います」と平常心で臨む心境を明かしていた。初打席で、甲子園のファンの心をつかんだ。「追い込まれていましたが、最後に浮いてきたボールを逃さずに捉えることができました。追加点を取ることができてよかったです」とチームの2点目を喜んだ。 4回、先頭で第2打席が回ったが、空振り三振。5回の第3打席は左飛に倒れた。7回1死の第4打席は、広島島内の前に空振り三振に終わった。

◆残り1枠の開幕ローテーション奪取を目指す阪神西純矢投手(19)は、先発で5回6安打4失点だった。 立ち上がり、先頭の田中広に二塁打を打たれ、菊池涼への四球で無死一、二塁のピンチを迎えるも、1死から松山を二塁ゴロ併殺に打ち取った。その裏、味方打線に2点の援護をもらったが、3回2死から安打と2者連続四球で満塁。広島の新外国人クロンに左中間スタンドへ満塁弾を浴びた。 5回にも先頭から連打を許したが、無死二、三塁で広島の主砲・鈴木誠を空振り三振。松山は遊飛に抑え、最後は前の打席で1発を浴びたクロンを外角への変化球で空振り三振に打ち取った。 降板後、西純はクロンに浴びた満塁弾を振り返り、課題を口にした。「自分の中で一番やっちゃいけないと思っていた形での本塁打だった。四球でランナーためてから、外で力勝負に行って、高くベルトラインに行って、ストライクゾーンに甘く入った。試合前からああいう形の本塁打はやっちゃいけないと思っていたんですけど、そこが出たのはもう少し自分が意識を持ってやっていかないといけなかったなという反省点です」。開幕ローテ入りへの手応えについては「どうなるか分かりませんけど、最後の最後まであきらめずにそこに食らいついていきたいなと思います」と力を込めた。

◆佐藤輝明内野手(21)が初めて入った「6番」で結果を出した。1回2死一、二塁から、広島矢崎のスライダーをライト前に運んだ。ここまでの佐藤輝を見ていると、ストレートを待って変化球に対応するタイプのようだ。 実戦では「1番」「2番」「3番」「6番」の4パターンの打順で起用されてきた。個人的にはさらに下位の「7番」で伸び伸びと打たせたい。できるだけ制約のかからない打順に据えるのがチームにとっても得策だとみる。 開幕が近づいてくるにつれて、インコースを突くなど"探り"を入れられるだろう。その攻めを意識すると右肩が開いて調子を落としてしまう。佐藤輝は詰まることを怖がらなくていい。今のまま開幕に向かってほしいものだ。 チームはメンバーの絞り込みをする時期に入ってきた。野手に関しては順調そのもので、どのポジションも骨格が見えてきた。ここからチームを仕上げていく上でのポイントは先発ピッチャーだろう。 特に、先発ローテーションを組むのに、左ピッチャーは2枚そろえたい。期待した高橋は離脱し、新加入のチェンは内容が伴っていない。ルーキー左腕の伊藤将には過剰な期待は掛けたくない。ここは悩ましい。 開幕ダッシュを成功させるには、ここからいかに先発陣を整備するかがカギを握っている。(日刊スポーツ評論家)

◆阪神木浪聖也内野手が反撃の口火を切る適時打を放った。 2点を追う4回1死一、二塁で矢崎の直球を中前にはじき返し、亜大の先輩、板山の逆転打につなげた。「1打席目が少し泳いだ形の打撃になってしまったので、そこを反省して打席に入りました。チャンスの場面でしたし、打席に入る前から、絶対に打つという気持ちでした」。オープン戦4試合目で初タイムリーとなった。

◆阪神板山祐太郎外野手が1軍でも好調維持をアピールした。2軍戦で打率5割を残し、この日から合流。 4回に木浪の適時打で1点差に迫りなお2死二、三塁で代打で出場し、左前に逆転の2点適時打を放った。若手の台頭で結果を求められる立場を痛感し、オフと春季キャンプを過ごした。レッズ秋山との2年連続の自主トレを通して「トップの作り方やバットの軌道、球の待ち方や打席での考え方を聞けた」と収穫。学んだことを生かし「広角に打てるようになったし、捉える確率は上がった」と結果につなげている。同じく1軍に合流した長坂は7回の守備から出場し、その裏2死一塁の初打席で中前打をマークした。

◆生き残った! 高卒2年目の阪神西純矢投手(19)が事実上、残り1枠となった開幕ローテ入りの可能性を残した。今季初の甲子園ゲームとなった広島とのオープン戦に先発し、5回6安打4失点と踏ん張って「1軍初勝利」を挙げた。5番クロンに満塁本塁打を浴びたが、矢野燿大監督(52)は「もうちょっと見てみたい」と追試を明言。虎の将来を担う右腕が、最後の枠に滑り込む。創志学園(岡山)時代に甲子園をガッツポーズで沸かせた右腕が、マウンドで雄たけびを上げた。5回2死二、三塁。3回に満塁弾を食らった5番クロンを空振り三振。フルカウントからの狙い通りに7球目スライダーを外角低めに決めると白木のバットはクルリと回った。粘り腰の5回6安打4失点。課題と収穫がない交ぜとなり、西純は「収穫点は、何回かピンチがあったんですけど、粘って投げられたというところは良かった。ああいう内容でしたけど、5回の最後まで投げられたのは良かった」と遠慮気味に振り返った。 今季初めてとなる本拠地ゲームは5131人の観客が集まった。西純にとっては昨年6月24日のウエスタン・リーグ、オリックス戦で中継ぎ登板して「プロ初勝利」を挙げて以来、1軍では初の甲子園マウンド。3回は2死から菊池涼に左前打を許すと2者連続四球で塁を埋めてしまい、最後はクロンに左翼席へ運ばれた。それでも4回には長野、堂林、中村奨を3者凡退と負けん気を発揮。「やっぱり球界を代表するような強打者」と意識した鈴木誠からは2三振を奪った。 マウンドを降りた西純を矢野監督が呼び寄せた。細かく投球を振り返る「青空教室」は数分間。指揮官は「5個言ったうちの1個でも残れば次の課題としてやっていけると思うので。俺の中でこうじゃないかという課題とかっていうのは伝えていってる」と講義内容を説明した。今季初対外試合となった2月9日の日本ハム戦(宜野座)では"開幕投手"に指名。急成長を遂げる19歳に期待度も高まる。 開幕ローテの可能性も残された。開幕まで3週間を切ったが矢野監督は「今のこのプロの年数からして成長はかなりしていると思う。もうちょっと見てみたい」とうなずいた。開幕投手藤浪が正式に決定。そのヤクルト戦は青柳、秋山と続き、2カード目の広島戦は西勇、チェンの順番でマウンドに上がる見込み。残されたあと1枠を西純や伊藤将、ガンケルらで争う構図だ。西純は「最後の最後まであきらめずそこに食らいついていきたいなと思います」と爽やかに決意を示した。プロ0勝の19歳が開幕ローテへ。虎党がロマンを抱くストーリーはまだ続く。【桝井聡】 ▽阪神桑原(1軍に合流して8回に登板、2四球ながら1回無失点)「四球で自分でピンチを作ってしまいましたが、野手に助けてもらってゼロで抑えることができました。次回の登板ではこういう展開にならないように、しっかり準備していきます」 ▽阪神加治屋(最終回に完全投球でオープン戦2セーブ目)「タイガースに来て初めての甲子園での登板だったので、少し緊張感のある中で試合に入りましたが、自分の思っている以上に投げやすい球場でした。タイガースファンのみなさんの前で良いパフォーマンスができて、良かったです」

◆阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)が、鮮烈な本拠地デビューを飾った。広島戦に「6番左翼」で先発し、初回2死一、二塁の初打席で矢崎から右前へ適時打。今季の甲子園初戦に駆け付けた5131人のファンの心を一振りでつかんだ。初の6番起用について、矢野監督は「一番ハマるところ」と説明。開幕まで3週間を切る中、大型ルーキーのアピールは続く。佐藤輝があいさつ代わりの一打を放った。初回。1点を先制してなお2死一、二塁で迎えた初打席。フルカウントから矢崎の外寄りスライダーを引っ張った。「強くコンタクトすることは大事にしている」の言葉通り痛烈なライナーで一塁手クロンのミットをはじき、右前に運ぶ適時打。「良いところで1本打てたので良かったです」。自身のフルネームが入ったタオルが客席で揺れる中、一塁ベース上で白い歯を浮かべた。 近大時代に7試合プレーし、プロでは初の甲子園。「楽しみだった。本拠地で声援も多いですし、そういうのは力になる。自分のタオルを掲げてくれてたのでうれしかったです」。球団新人野手でオープン戦の甲子園初打席で適時打は、02年浅井良以来、19年ぶり。一挙手一投足が注目される中、期待に応えた姿に矢野監督もひと安心だった。「注目される選手なんでね。ファンの人にもっともっと楽しみにしてもらえる選手。そのスタートということではそれなりのスタートだったんじゃないかな」。 初の6番起用について、指揮官は「チームとしては一番アイツのハマるところ」と説明した。実戦では3番の8試合が最多だが、1番近本、2番糸原と左打者が続く。左右のバランスや流れを踏まえると現実味を感じさせる打順とも言えるが「いろいろな意図でやっている。機能したかまだ1試合では。また動かすかもしれない」と含みを持たせた。首脳陣がオーダーを思案する中、佐藤輝は結果で応え続け、着実に開幕スタメンに近づいてはいる。 それでも、適時打の後の3打席は無安打で「毎打席、打てるように練習したい」と貪欲だった。筒井外野守備走塁コーチから風向きなどのレクチャーを受けた左翼守備も無難にこなし、4試合ながらオープン戦首位に貢献。「もっとチームに貢献できるように良いプレーをしたいと思います」。頼もしいルーキーが甲子園でベールを脱いだ。【林亮佑】

◆阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)が、鮮烈な本拠地デビューを飾った。広島戦に「6番左翼」で先発し、初回2死一、二塁の初打席で矢崎から右前へ適時打。今季の甲子園初戦に駆け付けた5131人のファンの心を一振りでつかんだ。佐藤輝の両親が応援に駆けつけた。スタンドで見守った父博信さん(53)は「何より勝てたことがよかった。その中で彼が打点を挙げて勝ったっていうのは、もう最高の出だしじゃないですか」と喜んだ。 母晶子さん(48)は「甲子園で大学の時は何回か見ていますけど、やっぱり違いますね。疲れもたまってきているだろうし、けがしないように」と体を気遣った。

◆勝負の3年目に向かう指揮官・矢野燿大が決断した「開幕投手・藤浪晋太郎」は今後の阪神にとって大きな意味があると思う。 プロ野球は興行だ。そして、このタイプの興行に欠かせない要素が「スターシステム」だ。1人、あるいは一部の存在を中心的に位置づけ、その魅力で興味を持たせるものだ。 スターになるには要素がいる。芸能人ならやはり見た目は重要だし、スポーツ選手なら実績、実力が求められるのは当然だ。しかしそれだけではない。説明のできないそれ以外の要素、いわゆる"華"のようなものが必要だ。高校時代から多くの人に知られ、150キロ近い変化球を投げる藤浪にはそれがある。 スターには逃れられない宿命もある。いいときはもちろん、悪いときも注目されることだ。ここ数年、制球難が課題とされていた藤浪だが、これが彼でなければ、それほど注目を集めなかったのでは。 さらに言えばNPBの選手で初めて新型コロナウイルスに感染したり、あるいは練習遅刻で2軍行きを通告されたり。こんな要素も藤浪でなければ、大きな話題にはならなかったかもしれない。その部分だけを見れば気の毒なのだが、それがスターということだ。 同時にいいときはこれ以上ないぐらい称賛され、期待される。昨年1勝の藤浪が開幕投手を務めることを疑問視する声はほとんど起こっていないと思う。別にメディアが阪神球団や矢野に忖度(そんたく)しているからではない。報道する側も含め「スターシステム」が重要視されるこの世界に関わる人間の多くが「そうあるべき」と感じているからだろう。 「大山がキャプテンをやったり、近本が選手会長をやったり、お前たちの世代で強いタイガースを」。矢野が開幕投手通達でそう伝えたと、藤浪本人が明かしていた。練習もするし、人柄もいいし、再び、プラス面で脚光を浴びる時期だろう。そして、そんな藤浪をしっかり見ていてほしいと思う男がいる。 佐藤輝明だ。この日の初甲子園でいきなり適時打を放った。簡単なことではない。間違いなく彼も大いなるスター候補だ。だからこそ藤浪の姿に刺激を受けてほしい。この2人が投打のスターとして阪神に君臨すれば、これほど頼もしいことはない。その意味においても「開幕・藤浪」は重要なのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

◆広島・中村奨成捕手(21)が1軍の甲子園では初となる「9番・捕手」でスタメンを飾った。  矢崎とバッテリーを組み、二回まで2失点を喫した。三回先頭の1打席目では西純と対戦し、フルカウントからスイングしたが、バットは空を切り、空振り三振に倒れた。  高卒4年目の若鯉は広陵高(広島)時代の2017年の夏の甲子園で清原和博(1985年、PL学園高)の1大会5本塁打を抜く、6本塁打で新記録を樹立。聖地のヒーローが、思い出の地でチームを勝利へ導く。

◆広島の新助っ人、ケビン・クロン内野手(28)=前ダイヤモンドバックス=が2戦連発となる来日初のグラウンドスラムを放った。  2点を追う三回2死満塁で高卒2年目の19歳、西純と対峙(たいじ)した。3球で追い込まれたが、1球ファウルで粘り、5球目の直球を振り抜き、打球は左翼席中段に飛び込んだ。  7日のヤクルト戦(マツダ)では対外試合29打席目で来日初本塁打をマーク。勢いに乗ったマイナー通算151発の大砲が、2試合連発&甲子園初弾で怪力ぶりを見せつけた。

◆開幕ローテ入りを狙う矢崎拓也投手(26)が阪神戦に先発し、打者22人に対し69球を投げ4回を8安打5失点1三振2四球と乱れた。  一回1死三塁でマルテの内野ゴロで先制点を献上した。大山とサンズの連打でなお2死一、二塁とされ、阪神のドラフト1位・佐藤輝(近大)に右前適時打を浴び、いきなり2点を失った。  二、三回は持ち直したが、2-4の四回には1死一、二塁で木浪に中前適時打、なお2死二、三塁では代打・板山に左前2点打を許し、この回一挙3失点。結婚を機に登録名を加藤から矢崎に変更した17年のドラ1右腕は、開幕ローテ争いから抜け出すどころか、後退した。

◆コロナ禍の人数制限で普段より静かな甲子園に激しい打球音が、数秒後には白球が観客席に衝突する音が響き渡った。広島の新助っ人・クロンが2戦連発となる満塁弾。弾丸ライナーで左翼席中段に突き刺した。  「打点をあげられることができたので、合格点だね。本塁打はボーナスだよ」  0-2の三回2死満塁で打席へ。西純に3球で追い込まれたが、1球ファウルの後、5球目の高めの直球をジャストーミート。「良いスイングができ始めている」と胸を張った。  昨季3A全試合中止の影響で実戦感覚を戻す必要があったが、7日のヤクルト戦(マツダ)で対外試合29打席目での来日初アーチ。この日は満塁本塁打でオープン戦3試合で8打数2安打、2本塁打6打点と調子を上げてきた助っ人を、佐々岡監督は「日曜日の1本が精神的にも良かったのかもしれない。練習でもだいぶん良くなってきている」とうなずいた。  「沖縄では甲子園のドキュメンタリーを見ていたんだ。歴史のある球場でプレーできたのは感慨深いね」と笑顔をみせたクロン。コロナ禍で各球団の新外国人の来日メドがいまだに立たない中、12球団最速の1月3日に来日したマイナー通算151発の大砲が、開幕ロケットスタートを決める。(柏村翔)

◆七回に登板した広島の島内は150キロを超える球が走り、三つのアウトを全て三振で奪った。大型ルーキー佐藤輝(近大)には速球で押し込み、決め球のフォークボールで空を切らせて、圧倒。「久しぶりに持ち味である真っすぐも、自分の球が投げられたと思うので、きょうに関してはいい投球ができたかなと思う」とはにかんだ。  プロ3年目。勝ちパターンの継投入りへ猛アピールしており「みんな調子がいいので、何とか負けないように頑張りたい」と意気込んだ。

◆虎の黄金ルーキーがさっそく魅せた。ドラフト1位・佐藤輝明内野手(21)=近大=が、甲子園初打席でタイムリーを放った。1-0で迎えた一回2死一、二塁。広島の2017年ドラ1右腕・矢崎と対戦した。フルカウントから6球目、128キロ変化球を捉えると、打球はジャンプした一塁手・クロンのミットを弾き、右前へ。  今季の甲子園初戦。球場に足を運んだ虎党の見守る前で"持っテル"虎のドラ1が期待に応える快音を響かせた。

◆先発した阪神・西純矢投手(19)は、5回を投げ、6安打4失点。3四球を与え、課題が残る内容も、手応えをつかんだ部分もあった。  「収穫点は何回かピンチがあったんですけど、粘って投げられたというところはよかったと思います。ああいう内容でしたけど、そこでしっかり5回の最後まで投げられたのはよかった」  一回、先頭の田中に二塁打、続く菊池に四球でいきなり無死一、二塁のピンチを背負う。それでも3番・鈴木を見逃し三振、4番・松山を二ゴロ併殺で仕留め、無失点で切り抜けた。  2-4で迎えた三回。2者連続三振で2死とするも、菊池に左前打を許し、連続四球で2死満塁。ここで、クロンに左中間へ満塁弾を浴びた。五回にも無死二、三塁のピンチを背負った西純だが、鈴木からこの日2つ目の三振を奪うなど、0点で抑え、5回、105球を投げ切った。

◆阪神は今年初めて甲子園での試合に臨み、6-4で逆転勝ちを収めた。  さっそく本拠地初見参の注目ルーキーが輝いた。1-0の一回2死一、二塁から「6番・左翼」でスタメン出場した佐藤輝明内野手(21)=近大=が広島先発・矢崎の128キロ変化球を捉えて名刺代わりの右前適時打を放ち、虎党から祝福の拍手を浴びた。  この日1軍に合流した板山祐太郎外野手(26)も3-4の四回2死二、三塁に代打で出場し、左前へ逆転の2点打を打って合流即アピールに成功した。  開幕ローテーション入りを目指して先発した西純矢投手(19)は三回に一時逆転の満塁弾を浴びて"満点快投"とはならなかったが、5回を投げ切って6安打4失点、106球で勝ち投手となった。

◆阪神は今年初めて甲子園での試合に臨み、6-4で逆転勝ちを収めた。矢野燿大監督との一問一答は以下の通り。  --佐藤輝が甲子園初戦でいきなり結果  「注目される選手なんでね。お客さんが入って、いつもとは違う気持ちもあったと思うし。マイペースなんで、そういうことを気にしていなかったかもしれないし。どっちにしろ、そうやって"見たい"と思われるというのは、プロとしてすごく大事なこと。そういうふうにずっと思ってもらえるようなスケールの選手だと思う。結果は良いも悪いも特にないけど、ファンの人にもっともっと楽しみにしてもらえる選手に、そのスタートということでは、それなりのスタートだったんじゃないかな」  --西純はやっちゃいけないところで本塁打  「やっちゃいけないっていうことは...。もちろん最高のピッチングをやってくれたらうれしいけど。あいつにとって、すべてが勉強だから。その前のフォアボールであったり、逆にいうと攻め方とかそういうところに課題があったかなと思うけど。打たれたのを、やっちゃいけないというのは、ちょっと俺的にはそんなに(思わない)。まあ、いいボールも多かったし、もっと見たいなっていう投球もあったんでね。きょうは結果的に勝ち投手になったけど、自分で勝てるピッチャーに近づいていけるんじゃないかな。去年から、だいぶレベルアップしているんでね」

◆佐藤輝の調子が下降線に向かっているのは確かだが、その状況で"新たなすごさ"を発見させられて、正直驚いている。当てにいくことなく、本当のフルスイングができているのだ。  単にブンブン思い切り振るだけなら誰にでもできる。本当のフルスイングは、どの球種、コースに対しても自分のポイントに呼び込めていなければできない。佐藤輝は本当のフルスイングになっているし、よほど徹底した意識付けができているのだろう。  このスイングができている限り、使い続けなければいけない選手だ。少々の不振を気にする必要はない。使い続ける上での条件もある。そろそろ打順を固定してはどうだろうか。いろんな可能性を試すのも大事だが、前後の打者によって、打席の感覚は違ってくる。6番ぐらいが理想だが、今の想像を超える力を見ていると、3番でもこなせそうな気がする。  下降線と感じた1つの要因に、追い込まれてからボール球を振ってしまう点。他球団のスコアラーの研究も進んできており、この日の広島もそうだったが、情報収集を元にした配球になってきているのは感じる。そんな本番想定の攻めの中でもキッチリ1安打しているところも立派。こういう攻めがある、と慣れていってもらいたい。(本紙専属評論家)

◆猛省のち、猛勉強だ。開幕ローテ入りへ、どうしても結果がほしかったマウンドで、西純はグランドスラムに沈んだ。悔やみ、自らを責めたが、降板後の動きに、この男の伸びしろが表れた。  「一番やっちゃいけないと思っていた形での本塁打だった。四球で走者をためて、外で力勝負に行って、高くベルトラインに行って、ストライクゾーンに甘く入った。もう少し意識を持ってやっていかないといけなかったなという反省点です」  なぜこうなったのかの分析が口をついてあふれた。走者を出しながら粘るも、2-0の三回2死満塁で新助っ人・クロンに特大の一発を浴びた。5回6安打4失点。勝利投手にこそなったが、猛アピールが必要な身には痛恨に違いなかった。  だが、降板直後に取材対応を終え、ベンチに戻るとすぐさま"超前向き"な行動をとった。矢野監督の隣にピタッと座ったのだ。将が明かす。「横におるからそのまま話しててんけど(笑)。『お前、あっちいけ』って福原(投手コーチ)が横に来させて」。きっかけは福原コーチだったが、それでも西純は必死で耳を傾けた。指揮官はかつての自分も思い返し、考えを伝えた。  「俺がキャッチャーのとき(ベンチで)監督の近くにいたのは、何か思ったときにしゃべることができるから。野村(克也)さんの時も星野(仙一)さんの時も、近くにいた。気付いて、いろいろ言って、あいつの中にどんな言葉が残るか。5個言ったうち、1個でも残れば、次の課題としてやっていける」  結果は厳しいものだった。それでも矢野監督は「もうちょっと見てみたい」と引き続きそばに置き、開幕ローテを目指させることも明言した。  西純も「どうなるか分かりませんけど、最後の最後まであきらめず、そこに食らいついていきたいなと思います」と闘志を燃やし続ける。あの被弾があったから将のあの言葉を聞けたと、必ずあとで感謝できる日にする。(長友孝輔)

DAZN