◆ソフトバンクは先発・石川が5回途中2失点。開幕投手に指名されている右腕が順調な仕上がりを見せた。一方の阪神は、先発・西勇が2回無失点、2番手・藤浪が4回無失点。開幕ローテーション候補の2人が好投を見せた。

◆両チームのスタメンが発表された。 先発は阪神が西勇輝投手（30）、ソフトバンクが石川柊太投手（29）。ドラフト1位の佐藤輝明内野手（21＝近大）は「3番左翼」でスタメン。昨季最多勝＆最高勝率の2冠で、開幕投手に内定している石川に挑む。4年連続日本一軍団に、虎の怪物ルーキーが豪打を披露できるか注目だ。

◆阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手（21＝近大）が、ソフトバンク石川柊太投手（29）とのモノノフ（ももいろクローバーZファンの通称）対決でオープン戦1号ソロ本塁打をたたき込んだ。 3番左翼でスタメン出場し、1回2死走者なしで打席に立った。1球目146キロ直球をファウルし、2球目の145キロ外角直球を高々と打ち上げ、滞空時間の長い弾道で左翼テラス席へ運んだ。「投球テンポの速い投手なので、構え遅れのないように意識しました。速い真っすぐをしっかりと仕留めることができてよかったです」とコメントした。阪神の新人がオープン戦初打席で本塁打を放ったのは87年3月1日阪急戦での八木裕以来の快挙だ。 ファンの前で初めて立つ初打席は近大時代に「モノノフ対決ができれば。あのパワーカーブを」と夢見た初対決となった。19年12月、大阪のももクロのライブ会場で偶然会った。佐藤輝が石川の姿を見つけて「近大で野球をしています、佐藤です」とあいさつ。大学生憧れのプロ野球選手として、2ショットに収まった。ライブに通うひとりのファンから、野球で成績を残し、メンバーに認知される。同じモノノフとして、石川はプロ入り前から憧れの存在だった。 ペイペイドームは小6だった10年冬に「NPB12球団ジュニアトーナメント」にタイガースジュニアとして出場して以来。当時は右肘を痛め、打席に立てずランナーコーチを務めた悔しい思い出の場でもある。 ▼ルーキー佐藤輝が1回にオープン戦初打席で本塁打。阪神の新人がオープン戦で本塁打を打ったのは、15年3月3日ソフトバンク戦の江越以来。新人のオープン戦初打席本塁打は18年2月24日巨人戦の楠本（DeNA）以来で、阪神では87年3月1日阪急戦の八木以来34年ぶり。

◆ソフトバンクの開幕投手、石川柊太投手（29）が阪神戦で今季のオープン戦に初登板した。 5回途中2失点で6奪三振の内容に「入りの1人目からしっかりと違和感なく入れた。やりたいこともそれなりにできましたし、課題も見つかった。全体的には良かったと思います」と、前向きに話した。 注目された阪神ドラフト1位、佐藤輝明外野手（21＝近大）との「モノノフ対決」は1勝1敗に終わった。初回2死の初対戦では左翼テラス席へのソロ本塁打を浴び「あの打球が入るのはすごいな。マジかという感じもありつつ...」と苦笑い。それでも3回1死三塁で迎えた2打席目はスライダーでバットを折り、二飛に打ち取った。「2打席連続でやられるわけにはいかないというところで、ピンチの場面でしたし。そこは自分の持てる球種を使って」と振り返った。 「結果的にはバットを折ったので、メンツを保ったかどうかわからないですけど。見ている人が楽しんでもらえれば、やっている方としてはうれしい」と、同じももいろクローバーZファン同士の対決で昨季最多勝＆最高勝率タイトルの貫禄を見せた。【山本大地】

◆ソフトバンク工藤公康監督が阪神佐藤輝明の打撃に「びっくりしました」と舌を巻いた。 初回に開幕投手の石川から左翼テラス席へ本塁打。9回にはセットアッパーの岩崎から左前打を打った。「先々楽しみじゃないですか。体もいい体してるし、長打を打てる打力は魅力だと思いますね」。昨年のドラフト会議では1位入札したが、抽せんで引き当てられず。「ぼくが引けなかったばっかりに...」と苦笑いだった。

◆ソフトバンク工藤公康監督（57）の一問一答は以下の通り。 －開幕投手の石川がオープン戦初登板 工藤監督　一番は本人が手応えがあったというところ。それが一番だと思いますよ。 －持ち前のテンポも良かった 工藤監督　ポンポンといって、ポンと打たれましたけどね。打たれる球は結果的には高かったり甘かったりするので。それをゼロにすることは無理なのでね。相手をほめることが大事かな。逃さず打ったということで。4回2／3で72球ですか。上々じゃないですかね。長いイニングを投げることを考えてこれからもやっていってくれたら。 －2番手の大竹が好投 工藤監督　良かったですね。カーブが思い通りに行かないところがあったみたいなので、それについてはアドバイスしました。大竹君も良かったですけど、海野のリードも良かったと思います。ファウルをわざと打たせたり、しっかり打ち取ることもできましたし。そんなに数出ているわけではないですけど、そういう中でしっかりリードすることが大事なので。 －先発候補が次々と好投している 工藤監督　次くらいの先発でというところもありますので。投手コーチに聞くと4番目、5番目くらいまでは頭の中で決まっていると。そうすると6番目が誰になるかというところもあると思いますけど、これは実戦でしっかり結果を残した人になっていく。まだ決まっていないと言うことで、よろしくお願いします。 －阪神佐藤輝が本塁打含む2安打 工藤監督　（本塁打は）びっくりしました。先々楽しみじゃないですか。ぼくが（ドラフトで）引けなかったばっかりに（笑い）。引く前になかったんですけど。体もいい体してるし、長打を打てる打力は魅力だと思いますね。最後のヒットも良かった。相手をほめてもあれなんですけど、また交流戦で当たるときもあるでしょうから、そのときはしっかり抑えられるように。いいバッターであるのは間違いないですね。 －一塁と三塁の走塁コーチを入れ替えた 工藤監督　ヘッドの方から話があって、何かあったときに、万が一ということを考えて、今日と明日は（いつもは一塁の）本多コーチを三塁にと。何かあってからでは遅い、備えということで。かなり緊張してましたけどね。ちょっとでもやっておくだけで全然変わると思うので。今日の試合の中で一番緊張したのは本多コーチだと思います。 －牧原大はけん制球が当たり途中交代 工藤監督　1回背中に当たってるんですけど、後頭部にも当たっている。本人は大丈夫と言ってましたけど、大事を取ってやめさせました。後頭部なので怖いのでね。また明日、問題なければというところで考えています。

◆阪神は開幕投手候補の西勇輝が初の対外試合で2回無失点。藤浪は4回を無失点で先発枠入りに前進した。新人の佐藤輝明は1回のソロを含め2安打を放った。ソフトバンクは開幕投手の石川が2本塁打を浴び4回2／3を4安打2失点だった。 佐藤輝明は4打席4打数2安打1打点1本塁打。西勇輝は2回1安打無失点。藤浪は4回3安打無失点。

◆開幕ローテーション入りを目指すソフトバンク大竹耕太郎投手が、オープン戦初登板で3イニングをパーフェクトに抑えた。 6回から3番手で登板。持ち味の緩急をつけた投球で打者9人を打ち取った。「他の投手も結果を出しているし、意識するなと言われても意識する。緊張感がある中で、試合ができるのはうれしいので、気合入れて頑張りたい」と次回登板でも結果を残すことを誓った。

◆ソフトバンクの開幕投手、石川柊太投手（29）が5日、阪神戦に先発し今季のオープン戦に初登板。5回途中2失点で6奪三振の内容に「入りの1人目からしっかりと違和感なく入れた。やりたいこともそれなりにできましたし、課題も見つかった。全体的には良かったと思います」と、前向きに話した。 注目された阪神ドラフト1位、佐藤輝明内野手（21＝近大）との「モノノフ対決」は1勝1敗に終わった。初回2死の初対戦では左翼テラス席へのソロ本塁打を浴び「あの打球が入るのはすごいな。マジかという感じもありつつ...」と苦笑い。 それでも3回1死三塁で迎えた2打席目では「2打席連続でやられるわけにはいかないというところで、ピンチの場面でしたし。そこは自分の持てる球種を使って」と、スライダーでバットを折って二飛に打ち取った。「結果的にはバットを折ったので、メンツを保ったかどうかわからないですけど。見ている人が楽しんでもらえれば、やっている方としてはうれしい」。同じももいろクローバーZファン同士の対決で昨季最多勝＆最高勝率タイトルの貫禄を見せた。 キャンプ中には右手中指にマメができ、紅白戦を回避するアクシデントもあったが、実戦2戦目のこの日は72球を投げ、順調ぶりを示した。26日のロッテ戦（ペイペイドーム）まで、残された調整登板は2試合。「今日みたいな投球だと負けてしまう。勝てるピッチングを自分の中で妥協せずに、勝ちにこだわって調整していきたい」。投手陣の柱を任された男らしくキッパリ言った。【山本大地】

◆ソフトバンク・大竹耕太郎投手（２５）がリリーフ登板し、３回パーフェクト投球で結果を残した。 　０－２の六回から登板。注目の阪神のルーキー・佐藤輝を、１３２キロ直球でバットをへし折り投ゴロに仕留めた。続く大山も直球で空振り三振など、クリーンアップを完璧に斬った。七回、八回も走者を許さず。直球は１４０キロ前後ながらも充実の３９球で開幕ローテ入りへ猛アピールだ。 　すでに石川、高橋礼、和田の３人が開幕ローテ入りを勝ち取っている。笠谷や杉山、武田らと残り３枠を争う。２日の中日とのオープン戦（ペイペイドーム）では左腕・笠谷が４回無失点と好投したが、負けじと大竹もゼロを並べた。

◆ソフトバンク・石川柊太投手（２９）が先発して４回２／３を投げ４安打２失点だった。 　「やりたいことはそれなりにできたし、課題も出てきたので。全体的にはよかったんじゃないですか。シーズン中にやるようなことをやりたかったので」 　一回２死、打席に向かえたのは阪神のルーキー・佐藤輝。ももいろクローバーＺのファン同士の対決に注目が集まったが、結果は左翼テラスに飛び込むソロアーチ。「『あの打球が入るんだ、まじか』という感じ」と苦笑いだった。二回無死にはサンズに左越えソロを浴びるなど４安打２失点。７２球を消化して、６三振を奪った。 　３月２６日の開幕戦まで残り３週間。今後について「勝てる投球を今一度、妥協せずに。勝ちにこだわった投球ができるように」と見据えていた。

◆逃した魚は大きすぎた。ソフトバンク・工藤監督は阪神のＤ１位・佐藤輝が秘める可能性に、感嘆するしかなかった。 　「びっくりした。いい体をしているし、長打を打てる打力は魅力だと思う。最後のヒットもよかったと思います」 　一回２死、開幕投手を託した石川が被弾。これが決勝点となり、０－４でオープン戦初黒星を喫した。石川の内容には「本人が手応えがあったなら、それが一番」とうなずいた一方で、ホークスにとっても昨年１０月２６日のドラフト会議で１位入札した逸材のプレーは、気になった。 　「僕が（当たりくじを）引けなかったばっかりに...。引く前に取られていたんですけど」 　１位指名は４球団で重複。オリックス、阪神、ソフトバンク、巨人の順番でくじを引き、２番目だった虎の矢野監督が引き当てた。 　阪神とは６月４日から甲子園で交流戦が控えている。４年連続日本一の指揮官は「また交流戦で当たることもあるでしょうから、そのときはしっかり抑えられるように。いい打者なのは間違いないので」と表情を引き締めた。（竹村岳）

◆スタメンが発表され、阪神は開幕投手最有力の西勇輝投手（３０）が先発。今季初実戦のマウンドに立つ。ぜんそくの検査のため、２月２３日にキャンプを切り上げていたが、関西で治療や練習を行い、３日に１軍練習に合流していた。 　注目のドラフト１位・佐藤輝明内野手（２１）＝近大＝は「３番・左翼」で出場。試合前の打撃練習では、２９スイング中、スタンドに４発、テラスに６発の計１０発の"本塁打"を放った。先発の石川ら強力なソフトバンク投手陣に挑む。

◆阪神のドラフト１位・佐藤輝明内野手（２１）＝近大＝がオープン戦初打席で本塁打を放った。 　０－０の一回２死。カウント０－１から石川の直球をとらえると、左翼テラス席に飛び込むアーチとなった。開幕投手に決定している右腕から逆方向へ一発を放った。 　佐藤輝と石川はお互いにアイドル「ももいろクローバーＺ」のファン。モノノフ（ももクロファンの呼称）対決の第１打席は佐藤輝に軍配が上がった。

◆阪神・西勇輝投手（３０）がソフトバンク戦に先発し、２回１安打無失点に抑えた。 　「初実戦の中で程よい緊張感を持って投げることができました。全ての球種を確認することができたので、ここから細かい修正をしていきたいと思います」 　一回は２四球と内野安打で満塁のピンチを招いたが、松田を遊飛に仕留めて無失点で切り抜けた。二回も先頭打者に四球を与えながらも得点を与えなかった。 　開幕投手最有力の右腕は、沖縄・宜野座での１軍キャンプの２月２３日にぜんそくの症状を訴えて帰阪。大事を取って関西で調整を続けてきたが、今年初実戦でしっかり２回を投げ切り、開幕のマウンドへ順調な仕上がりを見せた。

◆阪神・藤浪晋太郎投手（２６）がソフトバンク戦に２番手で登板し、４回３安打無失点と好投した。 　四回に三森と柳町に連打を許して無死一、三塁とされたが、甲斐を三ゴロ、川瀬を一直に仕留めて危機を脱した。４イニング目の六回には連続四球で１死一、二塁とピンチを招いたが、二ゴロ併殺で無失点で切り抜けた。 　キャンプ中の実戦では３試合に登板し、計８回で１失点、防御率１・１３とアピール。この日も最速１５８キロを計測するなど、持ち味を発揮した。

◆阪神はソフトバンクに４－０で勝利。今季のオープン戦を白星でスタートした。一回にドラフト１位・佐藤輝明内野手（２１）＝近大＝が、石川から左越えのソロ。阪神の新人がオープン戦の初打席で本塁打を放つのは１９８７年の八木裕以来、３４年ぶりとなる快挙となった。 　阪神は二回にサンズがソロ。九回にも高山の中犠飛、中谷の左前適時打で２点を追加した。 　今季初実戦となった西勇は２回１安打無失点。開幕投手最有力右腕がマウンドで順調な仕上がりを見せた。２番手の藤浪は４回３安打無失点。その後も馬場、小野とつないで、ソフトバンク打線を封じた。

◆阪神はドラフト１位・佐藤輝（近大）のオープン戦初打席本塁打で先制し、昨年日本一へのソフトバンクに４－０で勝利した。以下、矢野燿大監督の一問一答。 　－－佐藤輝がいきなりすごい当たりを 　「ねえ。まあ完璧ではないけどね、逆方向に打てるっていうのはあいつの持ち味なので。まあいい投手から打てたのに価値があったと思うし。（一回）先頭から２人ね、ポンポンとアウトになったあとに」 　－－甲子園が本拠地だけに、逆方向に打てるのは楽しみ 　「まあまあ攻めにくくなる部分もあるし、逆にいうと２打席目はバットを折られて打ち取られたっていうところもまあまあ、また俺的にはちょうどいいってというか、最後もう一本打ったっていうのも価値あるし。いいところと、どんどんこう、相手はああ佐藤輝というバッターは、こうなんだというのがわかっていった中で開幕を迎えるんでね。そういうところでは佐藤輝にとってもいい打席やったと思うしね。やっぱり魅力はあるよね」 　－－西勇は順調 　「西勇もちょうどええなと。球数少なすぎても、こっちとしてはもうちょっと投げくれたらええのになと思うし。初めての実戦というところでいうと、結果的にしっかり抑えているということと、球数をある程度投げたというところと、順調な登板やったんじゃないかな、と思います」 　－－開幕投手は本人には 　「いやいやまだ」 　－－藤浪も縦変化を使って 　「不利なカウントでも変化球でいっていたり、相手は藤浪晋太郎で変化球を待つということは基本的には少ないと思うんでね。そういうところでは、カウントが不利となったところでもカウントが取れたり、ピンチでライナーゲッツーというのもあったけど結果的にゼロでいけたのは収穫だし。何があっても堂々としているというのは、あいつの自信の表れの部分が出ていると思うので、そういうところでも頼もしくなってきたなと思っています」

◆阪神の藤浪は最速１５８キロの直球に、１５０キロに迫るスプリットやカットボールなどを織り交ぜ、４回を投げ３安打無失点だった。課題の制球がまとまり「意図して取ったアウトも多かった。相手に絞られることなく投球できた」と納得した。 　開幕ローテーション入りはほぼ手中に収めている。「今は力いっぱい投げている感じ。もうちょっとペース配分というか、落ち着いた投球ができれば」とシーズンに向けた改善点を口にした。（ペイペイドーム）

◆阪神の西勇が今季初の実戦マウンドに立ち、２回を投げ１安打無失点。持病のぜんそくの影響でキャンプを途中で離脱し、調整が遅れていたが「全ての球種を確認できたので、ここから細かい修正をしていきたい」と不安を払拭した。 　細かな制球に苦しみ、３四球を与えても、走者を背負ってから粘った。矢野監督は「順調な登板だった」とほっとした様子。ただ、２年連続の開幕投手を本人に通達したかという問いには「いやいや、まだ」とだけ話した。

◆２年連続の開幕投手へ、不安材料を一掃した。ぜんそくの治療のため２月２３日に沖縄・宜野座キャンプを離脱した阪神・西勇輝投手（３０）が５日、ソフトバンク戦（ペイペイドーム）で今年初の実戦登板。２回を投げて１安打無失点に抑えた。 　「初実戦の中で、ほどよい緊張感を持って投げることができました」 　一回、２四球と一塁内野安打で２死満塁のピンチを招いたが、内角シュートで松田のバットをへし折り、力のない遊飛に。二回は先頭の柳町に四球を与え、１死二塁とされたが、失点は許さなかった。 　矢野監督は「初めての実戦で、結果的にしっかり（ゼロで）抑えた。順調な登板だったんじゃないかなと思う」と評価した。１月のテレビ出演時に「任せたい」と開幕投手を示唆。まだ本人には正式に伝えておらず「いやいや、まだ」と明言は避けたが、昨季チームトップの１１勝を挙げたエースだ。体調に問題がなければ異論はない。 　西勇は「きょうは、すべての球種を試すことができました。ここから細かい修正をしていきたい」と力を込めた。あとは３月２６日のヤクルトとの開幕戦（神宮）へ、心技体すべてをベストの状態に上げていく。（三木建次）

◆ライトでもセンターでも、フェンスオーバーすればうれしい。だがレフトスタンドへ運んだ佐藤輝の"快幕弾"は、やはり唯一無二の魅力だ。甲子園を本拠地とする虎の絶対的な武器になる－。矢野監督は放物線の行方に大きくうなずいた。 　「まあ（当たりは）完璧ではないけどね、逆方向に打てるっていうのはあいつ（佐藤輝）の持ち味なので。いいピッチャー（石川）から打てたっていうのも価値があったと思うし。先頭から２人ね、ポンポンとアウトになった後に」 　高く舞い上がり、そのまま左翼のホームランテラス席へ着弾。プロ３発目で初の左方向だ。左打者にとって、右翼から左翼へ強く吹く甲子園特有の浜風は永遠の課題だが、この軌道を本拠地で描ければ、浜風を味方につけることが出来る。 　実際、４日に甲子園で行った全体練習でも、佐藤輝はフリー打撃で狙いすましたかのように左翼ポール際へ２連発を放った。かつて、２年連続三冠王のバースや、ミスタータイガースの掛布雅之（現ハンシンレジェンドテラー）も、逆方向への本塁打を積み重ねてタイトルをものにした。 その他の写真（2/3枚） 　虎のレジェンドたちを彷彿とさせる"浜風打法"を博多で見せつけ、指揮官も「（逆方向への長打力は）攻めにくくなる部分もあるし」と相手バッテリーを悩ませる強みになると期待した。オープン戦初戦で、４年連続日本一の鷹に４－０で快勝。その流れを作ったのがルーキーの一発だが、矢野監督は凡打を含めて反省のすべてが糧となり、成功へのステップになると説いた。 　「（２、３打席目に）バットを折られて打ち取られたところも俺的には"ちょうどいい"というか。最後もう一本（左前打）打ったっていうのも価値あるし。相手は『佐藤というバッターは、こうなんだな』というのがわかっていった中で、開幕を迎えるんでね。そういうところで、佐藤にとってもいい打席やったと思うしね。やっぱり魅力はあるよね」 　当たり前のように口にした「開幕」の２文字にも、大きな期待を感じさせる。実戦では８試合連続で３番。もし阪神の新人がクリーンアップで開幕スタメンに名を連ねれば、１９７２年の望月充以来４９年ぶり３人目となるが、そんな歴史もあっさり作ってしまうのではと思わせる凄みが、佐藤輝にはある。（新里公章）

◆スーパールーキーの衝撃弾で"快幕"！　阪神は５日、オープン戦初戦となるソフトバンク戦（ペイペイドーム）に４－０で勝利。「３番・左翼」で出場したドラフト１位・佐藤輝明内野手（２１）＝近大＝が一回に、今季の鷹の開幕投手を務める石川から、左翼へ先制本塁打を放った。球団では１９８７年の八木裕（現本紙専属評論家）以来３４年ぶりとなる新人のオープン戦初打席ホームランで、日本一軍団に快勝した。 　この場面で打つからこそ、規格外のルーキーと称される。大きな注目を集めた佐藤輝のオープン戦デビュー、その初打席－。白球は大きな弧を描き、左翼ホームランテラス席に吸い込まれた。にじみ出る迫力とスターのオーラ。虎のドラ１が自慢のフルスイングで、号砲を鳴らした。 　「石川投手はテンポが早いので、振り遅れないようにしっかり構えた。最初は『レフトフライかな』と思ったんですが、ホームランテラスに入ってよかったです」 　衝撃の瞬間は、一回２死。マウンドには昨季パ・リーグ最多勝（１１勝）＆最高勝率（・７８６）の石川が立つ。初球１４６キロにフルスイングで応える（ファウル）と、２球目だ。外角に投じられた１４５キロ直球を逆方向へ一閃！　逆方向に打球はぐんぐんと伸びた。 その他の写真（2/2枚） 　球団の新人選手がオープン戦初打席でホームランを放つのは、１９８７年３月１日（阪急戦）の八木裕以来３４年ぶりの快挙。しかも阪神の今年初の有観客試合となった舞台で魅せた。虎党からも鷹党からもどよめきと歓声がわき上がり、大きな拍手に笑顔で応えた。 　王者すらうならせた驚きのパワー。４年連続日本一のソフトバンクで、今季の開幕投手に内定している石川は「『あの打球が入るんだ、マジか』という感じでした」と脱帽した。互いにアイドル「ももいろクローバーＺ」の大ファン。アイドル界も注目！？　のモノノフ（ももクロファンの呼称）対決で一発ダウンの"ゴリラパンチ"だ。 　１０年越しのリベンジも果たした。小学６年時、「阪神タイガースジュニア」に選出された佐藤輝はＮＰＢ１２球団ジュニアトーナメントに出場するため、ペイペイドーム（当時ヤフードーム）を訪れたことがある。しかし、この時は右肘のけがの影響で試合に出ることができなかった。 　「また、同じこの舞台でプレーすることができてうれしいです」 　虎のユニホームを着て再び踏みしめた、鷹の本拠地。代打出場を打診されながら、けがの回復優先で三塁コーチャーに徹し、グッと唇をかみしめた少年は、プロ野球選手になって最高のアーチを描いた。西宮市の自宅から、その姿を見守った父・博信さん（５３）も「１０年越しの思いがこもったホームランだったと思います」と感慨深げに語った。 その他の写真（1/2枚） 　「一打席一打席、しっかりとアピールできるように。守備でも走塁でもいいプレーができるようにやっていきたい」と佐藤輝。九回には岩崎から左前打を放ち、２安打。日本一の鷹軍団を前にしても、全く色あせないスターの資質を改めて証明した。沖縄で幕を開けた"佐藤輝祭り"は、まだまだ続く。無限大の夢と希望－。"持っテル"ドラ１が、また一つ、伝説を残した。（原田遼太郎） １９８７年にオープン戦初打席本塁打を放った八木裕氏（５５）＝本紙専属評論家 「よく覚えているよ。途中から試合に出て。相手は山沖さん。カウントは１－１くらいじゃないかな。とにかく天気が悪くて雪もちらついていて、えらい寒いなあ...と。初打席だし来た球を思い切り振った。うれしかったし、結果を出せてよかったなと。そしてキャンプの最後の日だったんだけど、終わってホッとしたというか。メチャクチャしんどかったからね。試合後に飛行機に乗って帰ったが、うれしさと、キャンプを無事終えた安堵感があったよね。佐藤輝にはこのままいって欲しいし、いくと思う」 ★その時 　佐藤輝の父で、１９８８年にチェコ国際、９１年に講道館杯で優勝した元柔道家の父・博信さん（５３）＝関学大准教授＝は、西宮市の自宅でテレビ観戦。オープン戦初アーチに「家内（晶子さん）と『入れ、入れ』と絶叫していました」と大興奮だった。 　自身初の有観客試合に佐藤輝は「いい意味で特に意識することなくプレーできました」と振り返ったが、父は「本人は『意識しませんでした』っていうと思いますが、やっぱり声援とかはうれしくて、盛り上がるタイプ。声援で調子に乗るくらいの方がいい結果がでていたと思います」。ファンの力が、ルーキーの背中を押したようだ。

◆佐藤輝が１打席目に本塁打した球は、低めを狙った球がやや高く入ったものだが、しっかり芯で捉えていた。キャンプから続いている「１球目から積極的に振っていく姿勢」が失われていなかったことを評価したい。初めての投手に対しても自分のスタイルが変わらないところがいい。 　ただし、２打席目は「さすが甲斐」といったところか。一流のプロの捕手の目は、内角が窮屈になるところを見極めて、体に近いところにスライダーで攻めてきた。バットを折られての二飛だったが、これも佐藤輝にとっては経験。あのコースから、さらに低いコースへのスライダーは前に飛ばせても詰まるか、もしくはファウルになってしまう。 　どんな打者も、最初はプロの内角攻めには苦労する。おそらく佐藤輝も今後、同じような攻めが来るだろうし、必ず苦しむ。克服する時間が短ければ短いほど、早い時期の大活躍につながる。 　パ・リーグの一流投手を打ったことを自信にして欲しいし、プロの攻めを体感したことも収穫にして、実戦を重ねてもらいたい。（本紙専属評論家）

◆阪神・佐藤輝明内野手（２１）は試合前の打撃練習で２５スイング中、さく越えは２本にとどまった。４日は２５スイングで１０本の"本塁打"を記録したが、この日は遠くへ飛ばすことよりもミート中心を心がけたようだ。 　オープン戦開幕だった４日のオープン戦では一回、ソフトバンクの開幕投手に内定している石川から左翼へ一発。球団の新人では１９８７年の八木裕（現サンスポ専属評論家）以来、３４年ぶりとなるオープン初打席初本塁打を記録した。 　この日の相手先発は下手投げ右腕の高橋礼。「一打席、一打席、しっかりとアピールしていきたい」と話していた。２試合連続アーチに期待が集まる。試合は午後２時からスタート。