巨人(★1対5☆)ソフトバンク =日本シリーズ1回戦(2020.11.21)・京セラドーム大阪=
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ソフトバンク
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巨人
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勝利投手:千賀 滉大(1勝0敗0S)
敗戦投手:菅野 智之(0勝1敗0S)

本塁打
【ソフトバンク】栗原 陵矢(1号・2回表2ラン)

  DAZN
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◆ソフトバンクが日本シリーズの初戦を制した。ソフトバンクは2回表、栗原の2ランで先制に成功する。その後は、6回に栗原が2点適時打を放つと、8回には中村晃の適時打が飛び出し、リードを広げた。投げては、先発・千賀が7回無失点の好投。敗れた巨人は、打線が4安打1得点と沈黙した。

◆巨人菅野とソフトバンク千賀。初めてのマッチアップを意外に感じた。同時に、菅野-千賀の継投で挑んだビッグゲームを思い出してもいた。 2017年、日本時間3月22日。2人はWBC準決勝の米国戦に登板した。先発菅野は6回を投げ被安打3。2番手の千賀は2回5奪三振。ともに1失点して試合に敗れた。 ドジャースタジアムは、冷たい雨が降りしきっていた。統計上、降水確率が10%ほどしかない3月下旬のロサンゼルス。その1割に当たった。不慣れなボールにマウンド。悪条件がそろった。しかし当時の2人はすでに、条件なんかを言い訳にしない心技体を備えていた。 ただ、勝負には負けた。自責0の菅野は、失点の道筋を精査した。 4回2死二塁。5番ホスマー(ロイヤルズ)を2球で追い込んだのに、4球ボールを続けて歩かせた。続くマカチェン(パイレーツ)。アウトローいっぱい、ベストのスライダーに長い長いリーチを合わされ、左前に運ばれた。「ボールからボールの4球。勝負を焦ったというか制御できなかった、あの4球。せっかくツーアウトまできたのに、切るべきところで切らなかったから、ああいう...無駄な走者を出しては絶対に勝てない」。 千賀は、同点の7回を3者三振で滑り出した。1次ラウンドから要所をことごとく三振で切り抜けてきた。代名詞の「お化けフォーク」とともに、破竹の勢いでのし上がっている最中、痛恨の1本を食らった。8回1死一塁。キンズラー(タイガース)を2球で追い込んだ3球目のフォークボールが落ちきらなかった。 クイックで投じた初めての勝負球が、半速球になった。「1発目でしっかり決める準備っていうのを、しっかりしておかなくちゃいけない。ミスをしちゃいけないところでのミス」と悔いた。 投手絶対有利からの暗転。わずかなスキが風穴となって広がり、勝敗に直結する。大一番の好投に意味はない。2人は学んだ。菅野は「野球人生で最高の経験になった」と言い、千賀は「集中力がここまで出せるっていうのを、初めて分かった。もう少し成長できるかなと思います」と言った。 あれから3年。2人は成熟した。菅野は、絶対に無駄な四球を出さないだろう。局面の千賀は極限まで集中し、絶対にフォークの投げミスを犯さないだろう。現在の日本球界で最高峰の投げ合い、軍配は。(文中の所属は当時)【宮下敬至】

◆ソフトバンク先発の千賀滉大投手(27)が豪快発進だ。 1回1死一塁で坂本を内角低めフォークで空振り三振。直後の岡本には内角への154キロ速球でバットをへし折る捕邪飛。今季11勝の絶対的エースが敵の不動の4番に、まずは力勝負で圧倒した。日本シリーズは4年連続の初戦先発。貫禄を示した格好だ。 3回までは無失点だったが巨人打線も球を見極め、粘ってくる。3回無死一塁では大城に12球、球数を費やした。森山投手コーチは「ブルペンから非常に調子がよく、いい球を投げていた。でも試合に入ってからは、少し力が入りすぎているように見える。日本シリーズの初戦で仕方ない部分だと思うけど、中盤以降リラックスして投げてくれたらいい。千賀らしい投球を期待したい」とコメントした。4回はフォークを見極められる場面が目立った。2連続四球で無死一、二塁と走者を背負ったが、丸を遊撃併殺打に封じるなど、ピンチを脱した。

◆ソフトバンク栗原陵矢捕手(24)が4打点の大暴れで巨人のエース菅野をKOした。 「5番右翼」で先発し、まずは幸先のいい先制アーチを放った。2回無死一塁。菅野の浮いたスライダーをとらえ、右翼に2ランを運んだ。「めちゃくちゃ緊張していました。ファーストストライクから思い切って打ちにいこうと思っていましたし、チームも先制できて良かったです」。今季、シーズン17本塁打と急成長を遂げた男が、日本シリーズ初スタメンで日本シリーズ初安打が初本塁打になった。 試合の流れを大きく引き寄せたのも栗原だ。2点リードの6回2死一、三塁。菅野の外角フォークをとらえ、左中間を破る2点適時二塁打。低めのフォークをきっちり見切り、際どい速球にもバットは動かない。ボール先行から仕留めた打席だった。「しっかり集中して打ちにいけました。追加点になってくれましたし、チャンスで打てて良かったです」。この日は3安打。クライマックスシリーズは無安打だったが大舞台で勝負強さを証明した。今年の充実ぶりを象徴する猛打ぶりだ。

◆巨人菅野智之投手(31)が6回6安打4失点で降板した。2回無死一塁、栗原に135キロのスライダーを右翼席に運ばれ先制を許した。 3回以降は崩れることなく、6回2死まで追加点を与えなかったが、2死から死球と安打で一、三塁のピンチを背負うと、再び栗原に左中間への2点二塁打を浴びた。前日に警戒する打者に挙げた周東、CSのMVP男の中村晃、柳田の上位打線は無安打に抑えたが、5番栗原に4打点を献上した。

◆巨人戸郷翔征投手(20)がリリーフ登板し1回無失点に抑えた。4点を追う7回から菅野の後を受け2番手で登板。牧原を135キロフォークで空振り三振、松田宣を149キロ直球で左飛に打ち取ると、続く甲斐には四球を与えたが、大城が盗塁を刺した。 12日にジャイアンツ球場で練習を行った際に、宮本投手チーフコーチは「中というのもある。1戦目2戦目を何とか取る」と戸郷のリリーフ登板を示唆していた。

◆ソフトバンク周東佑京内野手(24)が足攻めで1点をもぎ取った。8回、四球で出塁すると中村晃への6球目でスタートし、二塁を陥れた。 大城は送球すらできず、軽々とセーフ。日本シリーズ初盗塁だ。今季は50盗塁で規定打席未満ながら初の盗塁王に輝いていた。中村晃の左前適時打で追加点のホームを踏んだ。「まず(盗塁)1つできてホッとしてます。明日からもっと塁に出て揺さぶっていけるようにしたい」と先を見据えた。

◆ソフトバンク先発の千賀滉大投手(27)がエースの意地を示した。中盤まで再三、走者を背負う投球だったが、要所を締めて7回無失点。最終イニングも球威は衰えず、150キロ超を連発。中島、ウィーラーを連続三振で締めくくった。 「初回は少し力が入りすぎてしまい、自分のバランスで投げることができなかった。栗原の先制ホームラン、タイムリーのおかげで中盤以降はとても楽な気持ちで投げることができた。少しボールにバラつきはありましたが、結果0点に抑えることができたので良かった。大事な初戦をチームのみんなで良い流れにもっていくことができた」 豪快に発進した。1回1死一塁で坂本を内角低めフォークで空振り三振。直後の岡本には内角への154キロ速球でバットをへし折る捕邪飛。今季11勝の大黒柱が、敵の不動の4番を力勝負で圧倒した。日本シリーズは4年連続の初戦先発。貫禄を示した格好だ。 3回までは無失点だったが巨人打線も球を見極め、粘ってくる。3回無死一塁では大城に12球、球数を費やした。4回はフォークを見極められる場面が目立った。2連続四球で無死一、二塁と走者を背負ったが、丸を遊撃併殺打に封じるなど、ピンチを脱した。 7回にマウンドを降りると、工藤監督とベンチで話し込む場面もあった。千賀の力投で最高のスタートを切った。

◆ソフトバンクは2回、栗原の2ランで先制。先発千賀は3回まで1安打無失点。巨人菅野は3回まで2安打2失点。 ソフトバンクは6回に栗原の適時二塁打で2点を追加した。先発千賀は6回3安打無失点。巨人菅野は6回4失点で降板した。 ソフトバンクは8回、中村晃の適時打で加点。継投で逃げ切り、ポストシーズン13連勝。千賀が1勝目。巨人は4安打に終わった。

◆ソフトバンク栗原陵矢捕手が先制2ランを含む3安打4打点。3安打はすべて長打で、日本シリーズで1試合3長打は15年<3>戦で3本塁打の山田(ヤクルト)以来。 シリーズ記録には98年<5>戦佐伯(横浜)の4長打(二3、三1)があるが、球団では59年<1>戦岡本(本2、二1)64年<5>戦広瀬(二3)以来56年ぶりの最多タイ。なお1試合4打点は、チームでは00年<2>戦城島、15年<4>戦李大浩、18年<3>戦デスパイネ以来で、こちらも球団最多に並んだ。

◆20年の日本シリーズ開幕戦はソフトバンクは2回に栗原の2ランで先制。さらに6回には栗原の2点適時二塁打で試合を決定付けた。先発の千賀は7回無失点と好投し、リリーフも踏ん張って第1戦を勝利した。敗れた巨人はエース菅野が痛い4失点を喫し、打線は9回に1点を返したが反撃が遅かった。 第2戦は22日午後6時10分に京セラドーム大阪で開始予定。

◆ソフトバンク工藤公康監督(57)が、巨人に圧勝し、短期決戦の連勝記録を更新した。日本シリーズでは9連勝を達成。 18年第3戦から広島に4連勝、昨年、今年と巨人に5連勝。過去、西武、巨人、ロッテがマークしていた8連勝を抜いての日本記録となった。 またポストシーズンも13連勝を達成した。昨年クライマックスシリーズ(CS)のファーストステージ初戦で楽天に敗れたが、第2戦で勝利すると無敵の13連勝。プロ野球記録をさらに更新した。「千賀もいい投球をしてくれたし、栗原もよく打ってくれた」。3回には吉川尚の死球の判定にリクエストを要求。判定が覆ってファウルになるなど、勝利への執念を燃やした。 選手を信頼しきっている。「はっきりいってやってみないと分かりません。今年は交流戦もないし、対戦してないので」。それでもデータ、映像で研究したことは頭に入れ「指示はしてますし、あとはコーチに任せています」。シーズンでは100通りを超える打順を組んだが、CSからはほぼ固定して5得点。先発千賀が7回まで投げ、モイネロ、森と5点差でも必勝リレーにこだわり「横綱相撲」を極めた。 シーズン中同様、三塁側ベンチには今年9月に急逝した川村隆史3軍コンディショニング担当(55)のホームユニホームが掲げられていた。「我々の目標はあくまで4年連続日本一。1試合が終われば次の試合、一致団結して次に向かう。一喜一憂しないよう、明日も勝ちたい」。パ・リーグでは初。過去プロ野球でも巨人しか経験のない「日本一4連覇」へ、ひとつも落とす気はない。【浦田由紀夫】

◆巨人高橋優貴投手が打者2人で1点を失った。8回から3番手で登板。先頭の周東に四球を与えると、3度のけん制で警戒したが二盗を決められた。 続く中村晃に左前適時打を浴び追加点を許した。原監督は「優貴はあまり褒められたもんじゃないけど」と奮起を求めた。

◆低めのボールゾーンに沈む「お化けフォーク」を見極める千賀対策を遂行した巨人打線だったが、あと1本が出なかった。原監督は「まあ、いいところもあったし、スタートはこういう状態でスタートを切ったというところですよ。なかなか作戦的な部分を言う必要もない」と説明。次回対戦がある相手に対して、多くを語ることはなかった。 やるべきことは徹底した。7回までのフォーク16球中、10球を見逃し、誘いには乗らなかった。4回は坂本が四球で出塁すると、4番岡本は2ボール2ストライクから2球連続でフォークを見極め、連続四球で無死一、二塁とチャンスを広げた。だが続く丸は2ボールからボール気味の154キロに手を出し、併殺打でチャンスを逸した。昨季の日本シリーズでは13打数1安打と苦しんだ頼みの5番が倒れ、試合の潮目で追い上げることはできなかった。 フォークは見極めても、常時150キロを超える直球に押し込まれる。3回は大城がフルカウントから6球ファウルで粘り12球を投げさせたが、2死三塁から松原が左飛に倒れた。 1点が遠い展開の中、6回までに4点を失うと、8回は四球から周東に二盗を許し、5点目を失った。交流戦がないシーズンで、今季初めての対戦。原監督は「まだ何とも言えません。大したことないとか強いとか、そんなことは言えません。結果的にこういうスコアで我々は負けたということです」と受け止めた。【前田祐輔】 ▽巨人坂本(千賀から6回に中前打) 今日の負けは負けで、きりかえて明日やるしかないです。明日勝って五分に持ち込みたい。 ▽巨人松原(日本シリーズ初出場も2打数無安打に終わり) 最初はすごく緊張していました。明日に向けてまた切り替えたい。 ▽巨人大城(千賀から中前打) いつもと違った雰囲気で良い緊張感の中でできました。負けはしましたが、切り替えて明日を迎えたい。

◆ソフトバンク栗原陵矢捕手(24)が「シリーズ男」に名乗りを上げた。京セラドーム大阪で開幕した「SMBC日本シリーズ」に初めてスタメン出場し、初本塁打を含む3安打4打点と打ちまくった。 初打席の2回無死一塁で、巨人菅野から先制2ラン。6回にも中押しの2点適時二塁打を放った。クライマックスシリーズ(CS)では無安打に終わった若鷹が「栗」の季節にぴったりの「マロン砲」で息を吹き返し、シリーズ男に名乗りを上げた。瞬間、菅野はのけぞった。栗原が巨人のエースからたたきこんだ2ランは、単なる先制以上の重みがあった。2回無死一塁、2ボールから甘く入ったスライダー。「クライマックスであれだけボロボロにやられていた。何も背負うものはないと思って、むちゃくちゃやってやろうと思っていました」。シリーズ初スタメン、ド緊張の中でがむしゃらに打った。喜びを爆発させる若きムードメーカーの姿に、ベンチのボルテージもグッと上がった。 クライマックスシリーズ(CS)では先発メンバーで唯一、無安打に終わっていた。王球団会長から「三振してもいい。思い切っていけ」と背中を押された。故障でメンバー外の今宮からは「全国に栗原という名前をアピールしてこい」とLINEももらった。気持ちを切り替え「練習でやれることは全部やってきました」と、胸を張ってこの舞台に立った。 20日、前日練習のウオーミングアップ前、野手全員の前に栗原が立った。澄んだ声で「いざゆけ若鷹軍団」を歌唱。みんなが笑って喜んだ。シーズンで主砲柳田に次ぐ17本塁打、73打点。打力を買われて我慢の起用を続けた工藤監督に応え、盛り上げ役としてもチームに欠かせない存在になった。 4回2死の第2打席にも右翼線へ二塁打。6回2死一、三塁では左中間へ中押しの2点二塁打を放った。シリーズ初先発でいきなり3安打4打点。悔しかったCSから一転、シリーズ男のにおいも漂ってきた。「明日(22日)自分はどうなるか分からないけど、ベストを尽くすだけです。チームが勝てばいいです」。未来へのロマンあふれるスラッガー候補の「マロン(栗)砲」。収穫の秋にする。【山本大地】

◆パ・リーグ最優秀中継ぎに輝いたソフトバンク・モイネロ投手が貫禄だ。 5点リードの8回、緩急で揺さぶって敵を惑わせた。2死一塁で坂本と対戦。追い込んでからチェンジアップでタイミングを外してファウルになり、最後は鋭いカーブで空を切らせた。「四球を出してしまったが、ストライクゾーンでしっかりと勝負できた。ストレート、カーブを中心にしっかり(甲斐)拓也のリード通りに投げられて良かった」と納得顔。シーズン同様に安定感抜群の無失点だった。

◆ソフトバンク周東佑京内野手が足攻めで1点をもぎ取った。 8回、四球で出塁すると中村晃への6球目でスタートし、二塁を陥れた。大城は送球すらできず、軽々とセーフ。日本シリーズ初盗塁だ。今季は50盗塁で規定打席未満ながら初の盗塁王に輝いていた。中村晃の左前適時打で追加点のホームを踏んだ。

◆ソフトバンク中村晃外野手がトドメの一撃だ。4点リードの8回、盗塁を決めた周東を二塁に置いて、高橋のスライダーを的確にとらえて左前に落とした。 加点適時打を「周東がチャンスを作ってくれたのでかえせてよかった。追加点になってくれたし、いいつなぎができてよかった」と話した。周東の機動力は攻撃パターンの1つ。公式戦でも見られた周東との1、2番コンビで理想の攻撃をみせた。

◆クローザーのソフトバンク森唯斗投手は制球を乱して失点した。5点リードの9回に登板。ボールが先行する滑り出しで岡本に四球を与えるなど1死一、二塁になった。 中島に死球をぶつけて満塁のピンチを招くとウィーラーに左犠飛を許した。初戦から完封リレーはならず。「少し大事に行き過ぎたかなと思います。でもチームが勝てたので良かった。もう一度気を引き締めて、自分のできる事をしていきたい」と言い聞かせた。

◆今季9勝を挙げた巨人戸郷翔征投手がリリーフ登板し、1回無失点に抑えた。 4点を追う7回から菅野の後を受け2番手で登板。2死から甲斐に四球を与えたが、続く周東の打席で一時はセーフと判定された甲斐の二盗がリクエストの結果アウトとなり、無失点で切り抜けた。原監督は「良い緊張感の中でね」と評価。昨季の日本シリーズで2/3回4失点の悔しさを晴らした。

◆ソフトバンクのジュリスベル・グラシアル内野手が日本シリーズ初の4番で存在感を示した。 自身3度目の大舞台。2回、菅野の速球に詰まりながら右前へチーム初安打を放ち、栗原の先制2ランを呼んだ。 6回も2死一塁で再び詰まった右前打で好機拡大。いずれも得点に絡むマルチ安打になった。昨季は日本シリーズMVP。勝負強さは健在だ。

◆巨人ゼラス・ウィーラー内野手が、チーム唯一の得点を挙げた。5点を追う9回1死満塁で左翼へ犠飛を放った。 3回にはチーム初安打をマーク。左翼の守備でも4回、本塁へ正確な送球で失点を防いだ。「負けはしたが、最後に1点取ったので、最後の勢いのまま明日につなげたい」と、攻守で好調をキープする。

◆巨人菅野智之投手(31)が、日本最高峰の「エース対決」に敗れた。6回を投げ、6安打4失点。150キロ台後半の速球を軸に7回3安打無失点と好投した千賀に対し、コーナーに投げ分けながら、ゲームは作ったが、日本一をかけた短期決戦では勝敗が全てで、エースは敗戦の責任を背負った。 全失点を栗原のバットから奪われた。2回無死一塁、2ボールからのスライダーを右翼席に2ラン。2点ビハインドの6回2死一、三塁では2-1からのフォークを左中間へ2点適時二塁打を浴びた。宮本投手チーフコーチは「カウントを悪くしていかれた。しいていえばボールが高かった」と痛打の原因を挙げた。 待ち望んだリベンジの舞台だった。昨年は腰痛の影響で第4戦に先発。大事な初戦に投げられず、4連敗で屈した。勝利のみを求めた一戦で敗れたが、2戦目以降への布石も打った。軸となる3番柳田の1打席目は4球連続の内角攻めで空振り三振。2打席目も初球に150キロの速球で懐を攻め、残像を残した。 試合後、菅野は広報を通じ「次のチャンスがあると思うので、それに向けてしっかりと調整します」と短い言葉に思いを込めた。球数は87球。原監督は「トータルでというところを考えての最善策」と説明したように、今季初となる中4日で第5戦に先発する可能性が膨らんだ。 自身初の日本一に向け、フル回転の覚悟を決め、今シリーズに臨む。13年の日本シリーズでは楽天田中将大が第2戦、第6戦の先発し、第7戦にもリリーフし、日本一に輝いた。宮本コーチは「1(戦目)5(戦目)7(戦目)、そういったところも考えられる。臨機応変にね。彼も準備はしていると思います」と代弁した。巨人の巻き返しには、絶対的エースの力が不可欠となる。【久保賢吾】 ▽巨人宮本投手チーフコーチ(菅野について) 強いて言うなら、ボールが高かった。でも調子は悪くなかった。責任を感じていたと思う。智之でも球は高くなるし、力むということ。

◆ソフトバンク千賀滉大投手(27)が、巨人菅野とのエース対決を制した。7回3安打無失点と巨人打線を抑え込んだ。シーズン3冠(最多勝、防御率、最多奪三振)の力を見せつけた。14日のロッテとのクライマックスシリーズ第1戦では7回3失点も、チームを乗せられず反省していたが、今年最後の大一番で、圧巻の投球だった。初回、巨人岡本のバットをへし折った。初球154キロで内角をえぐり捕邪飛。「初回は少し力が入りすぎてしまい、自分のバランスで投げることができなかった。菅野さんを見て力んだ部分はありました」と話すが、全力で腕を振った。4回無死一、二塁では、5番丸に外角低め154キロ直球を投げ遊ゴロ併殺に仕留めた。巨人打線にフォークを見切られても、力で押した。 「少しボールにバラつきはありましたが、何とか。チームが勝てば。栗原さんがいい打撃をしてくれました」と、後輩に「さん」付けし白星発進を喜んだ。工藤監督も「初戦がいかに大事か本人もすごく分かっていて、最初から全力で飛ばして、よく投げてくれた」と絶賛した。 三塁側のスタンドには両親が愛知・蒲郡から駆けつけていた。コロナ禍で遠出することもできず、今年初観戦だった。父直伸さん(60)は「ホッとしました。球数が(118球と)多かった」と笑った。今季はキャンプ中から右ふくらはぎ痛、右前腕部の張りなど故障に泣かされた。「キャンプから取り組んでいたフォーム改良がうまくいかないということだった。ダルビッシュさんのおかげ。昔は『まあ、いいや』だった。自分の体への意識が変わりましたね」。18年12月、今年1月と石川とともに米国のダルビッシュのもとを訪問し多くのことを吸収した。「愚痴とかは昔から言わないヤツでした。(今季も)不調な時もイライラは見せなかった。大人になりましたね」。 シーズンフル回転の千賀は疲労困憊(こんぱい)でも、日本シリーズという最後の舞台では疲れを見せなかった。「ボウズはもともと丈夫な子じゃないんですよ」。6回くらいから両足がつった中でも、何とか投げきった、頼もしく成長した息子の姿を喜んだ。【石橋隆雄】 ▼シリーズ史上6度目となった<1>戦の両リーグ最多勝投手対決は千賀に軍配。千賀は69~72年堀内(巨人)に並ぶ4年連続シリーズ開幕投手だったが、結果は○-○○。シリーズ<1>戦に3勝は70~72年堀内、88、90、94年渡辺久(西武)に次いで3人目のタイ記録。2年以上続けて<1>戦に白星は70~72年堀内、77、78年山田(阪急)12、13年内海(巨人)に次いで4人目。

◆今季18試合に先発し、9勝を挙げた巨人戸郷翔征投手がリリーフで好投した。 7回から2番手で登板。1四球こそ与えたが、最速150キロの直球を軸に無安打無失点に抑えた。宮本投手チーフコーチは「リリーフでも先発でも行くぞと。将来ジャイアンツを背負って立つエースになるということは今日、確信できた」。チームは敗れたが、戸郷自身は高卒1年目の昨季、日本シリーズで2/3回4失点を喫した悔しさを晴らした。

◆巨人が日本シリーズで楽天との13年<7>戦、ソフトバンクとの19年<1>~<4>戦に次いで6連敗。巨人のシリーズ6連敗は西鉄との58年<4>~<7>戦、南海との59年<1>~<4>戦、61年<1>戦でシリーズワーストの9連敗を喫して以来、チーム2度目。 ▼原監督もシリーズ6連敗となり、巨人の監督で6連敗以上は58、59年水原監督の8連敗(62年東映でも2連敗し、通算10連敗)に次ぎ2人目。原監督のシリーズ初戦は02年西武に○、08年西武に●、09年日本ハムに○、12年日本ハムに○、13年楽天に○、19年ソフトバンクに●と過去4勝2敗。黒星スタートの2度は日本一を逃しているが、今回はどうか。 ▼セのチームは13年<7>戦以降、DH制で行われた試合で18連敗となった。

◆巨人宮本和知投手チーフコーチ(56)がエース菅野のフル回転を示唆した。 6回87球6安打4失点で降板した菅野について「1(戦目)5(戦目)7(戦目)とかって。そういったところも考えられるでしょうね。臨機応変に対応していかないといけない。短期決戦の中でエースという存在が次どこでというのは、彼も準備はしていると思います」と説明した。 今季9勝を挙げた戸郷が2番手でリリーフ登板した。7回から2番手でマウンドに上がり、1回無安打無失点だった高卒2年目右腕について、同コーチは「このシリーズ、リリーフでも先発でも行くぞと。彼のいいところは変わりっぱな『ドーン』と行ける。今日もそういったピッチングをしてくれた。度胸のいい彼のよさ。将来ジャイアンツを背負って立つエースになるということは今日、見ていて確信できた」と評価した。 ソフトバンク打線について「積極的に来ますよね。どんどん強い打撃が。ちょっと甘く入ったところ、高く入ったところをやられた。これは反省として明日に生かしてもらいたい。まだまだ、へこたれませんよ。下向きませんよ。対策は練っていますから。明日からまた、やり返しにかかります」と期待した。第2戦の先発は今村が務める。

◆関西で日本シリーズが行われたのは、14年に阪神がCSを勝ち抜いてソフトバンクと対戦して以来。<1><2>戦を甲子園で行った。京セラドーム大阪での日本シリーズは、近鉄が01年にヤクルトと戦った際、本拠地の大阪ドーム(当時)を使って以来19年ぶり。近鉄のリーグ優勝はこれが最後で、04年限りでオリックスと合併した。 ▼ソフトバンクが大阪で日本シリーズに臨むのは、前身の南海が最後の優勝を遂げた73年に巨人とのシリーズ<1><2>戦を本拠地の大阪球場で行って以来、47年ぶり。この年は前期後期の2シーズン制で、野村克也兼任監督のもと南海は前期V。後期優勝の阪急とのプレーオフを制しパ・リーグ優勝を飾った。<1>戦を江本孟紀の完投で4-3と飾ったが、<2>戦から4連敗。ホークスは15年後の88年オフにダイエーに買収され、福岡へと移転した。

◆ソフトバンク栗原陵矢捕手(24)が「シリーズ男」に名乗りを上げた。京セラドーム大阪で開幕した「SMBC日本シリーズ」に初めてスタメン出場し、初本塁打を含む3安打4打点と打ちまくった。栗原は貪欲で謙虚な男だ。昨年の春季キャンプでのできごと。中学時代の恩師、福井ボーイズ・南博介監督が見学に訪れていた。打撃練習が一段落した頃、栗原が南監督に歩み寄り「アドバイスをください」と聞いた。周りにはプロの関係者もおり、南監督が遠慮していると「そうじゃないんです。監督はずっと見ててくれたから。気になることとかあったら、言ってください」と言い切った。「プロだから」というおごりはない。真剣に、心から、助言がほしかった。 初めてレギュラーに定着した今季は、打撃の調子を落として苦しい時期もあった。そのたびに先輩らに助言を求めて乗り越えた。自主トレで師事している中村晃だけでなく、職人肌の長谷川にも聞いた。物おじせずに飛び込んでいく貪欲さも栗原の武器だ。CS後の練習中には、独特の感性を持つ柳田とも、グラウンドの脇で真面目に打撃の話をした。CS無安打でも、栗原は這い上がった。【ソフトバンク担当=山本大地】

◆ソフトバンク栗原陵矢捕手(24)が「シリーズ男」に名乗りを上げた。京セラドーム大阪で開幕した「SMBC日本シリーズ」に初めてスタメン出場し、初本塁打を含む3安打4打点と打ちまくった。   初打席の2回無死一塁で、巨人菅野から先制2ラン。6回にも中押しの2点適時二塁打を放った。クライマックスシリーズ(CS)では無安打に終わった若鷹が「栗」の季節にぴったりの「マロン砲」で息を吹き返し、シリーズ男に名乗りを上げた。栗原陵矢(くりはら・りょうや) ◆生まれ 1996年(平8)7月4日、福井県生まれ。 ◆サイズ 179センチ、75キロ。右投げ左打ち。 ◆球歴 春江工では2年春にセンバツ出場。3年時は高校日本代表で主将を務めた。14年ドラフト2位でソフトバンク入りし、3年目の17年6月13日巨人戦で1軍デビュー。 ◆今季ブレーク 打撃を生かして捕手ながら、内外野をこなすユーティリティーで、今季からレギュラーを獲得。開幕からスタメン出場をチームで一番長い84試合目まで果たし、今季118試合に出場。打率2割4分3厘。プロ初の4番も務めた。 ◆盛り上げ役 18年ファンフェスティバルでは開会あいさつで、サンシャイン池崎のギャグを披露。最近では試合前の円陣で、松田宣のむちゃぶりに応えてアンパンマンなどのモノマネをこなしている。器用さと度胸を持ち合わせる。 ◆ケバブ ペイペイドームでは「栗原選手のビーフ&チキンケバブサンド」を発売。安打や本塁打時に見せる、ケバブを切るようなポーズにちなんだもの。ポーズの元ネタは大リーグ・パドレスのタティスから。 ◆アイブラック ドーム球場やナイターでも使用。「ドームでは効果はわかりません(笑い)。ワクワクするような、試合を楽しむ感じを出すためです」。松田宣からはしばしば、試合前に変な形にいたずら描きされるようだ。

◆ソフトバンク栗原陵矢捕手(24)が「シリーズ男」に名乗りを上げた。京セラドーム大阪で開幕した「SMBC日本シリーズ」に初めてスタメン出場し、初本塁打を含む3安打4打点と打ちまくった。初打席の2回無死一塁で、巨人菅野から値千金の先制2ラン。6回にも中押しの2点適時二塁打を放った。チームの日本シリーズ9連勝はプロ野球記録。ラッキーボーイが勢いを与え、4年連続日本一へ死角なく歩を進める。瞬間、菅野をのけぞらせた。栗原が巨人のエースからたたきこんだ2ランは、単なる先制以上の重さがあった。 2回無死一塁。2ボールから甘く入ったスライダー。「クライマックスであれだけボロボロにやられていた。何も背負うものはないと思って、むちゃくちゃやってやろうと思っていました」。シリーズ初スタメン、ど緊張の中でがむしゃらに打った。菅野とは、プロ初打席だった17年6月13日の交流戦(東京ドーム)で、代打で二ゴロに打ち取られて以来2度目の対戦。会心のリベンジで喜びを爆発させる姿に、ベンチのボルテージもグッと上がった。 クライマックスシリーズ(CS)では先発メンバーで唯一、無安打に終わった。王球団会長から「三振してもいい。思い切っていけ」と背中を押された。故障でメンバー外の今宮からは「全国に栗原という名前をアピールしてこい」とLINEをもらった。「練習でやれることは全部やってきました」と気持ちを切り替え、初戦に臨んだ。 円陣ではたびたび、リーダー役の松田宣からムチャぶりを食らう。栗原は芸人のギャグやモノマネを交え、巧みに仲間を笑わせる。シーズンで主砲柳田に次ぐ17本塁打、73打点を挙げた捕手登録の万能型。打力を見込み、開幕から84試合スタメン起用を続けた工藤監督に応え、ムードメーカーとしても欠かせない存在になった。 4回2死の第2打席でも右翼線へ二塁打。6回2死一、三塁では、左中間へ中押しの2点二塁打を放った。シリーズ初先発でいきなり3安打4打点。無安打だったCSから一転、打率10割でシリーズ男のムードも漂ってきた。「明日の自分はどうなるか分からないけど、ベストを尽くすだけです。チームが勝てばいいです」。未来へのロマンあふれるスラッガー候補の「マロン(栗)砲」。大収穫の秋にする。【山本大地】 ▼栗原が先制2ランを含む3安打4打点。3安打はすべて長打で、日本シリーズで1試合3長打は15年第3戦で3本塁打の山田(ヤクルト)以来。シリーズ記録には98年第5戦佐伯(横浜)の4長打(二3、三1)があるが、球団では59年第1戦岡本(本2、二1)64年第5戦広瀬(二3)以来56年ぶりの最多タイ。なお1試合4打点は、チームでは00年第2戦城島、15年第4戦李大浩、18年第3戦デスパイネ以来で、こちらも球団最多に並んだ。 <栗原陵矢(くりはら・りょうや)アラカルト> ◆生まれ 1996年(平8)7月4日、福井県生まれ。 ◆サイズ 179センチ、75キロ。右投げ左打ち。 ◆球歴 春江工で2年春にセンバツ出場。3年時は高校日本代表で主将を務めた。14年ドラフト2位でソフトバンク入りし、3年目の17年6月13日巨人戦で1軍デビュー。今季推定年俸1000万円。 ◆盛り上げ役 18年ファンフェスティバルでは開会あいさつで、サンシャイン池崎のギャグを披露。最近では試合前の円陣で、松田宣のむちゃぶりに応えてアンパンマンなどのモノマネをこなしている。器用さと度胸を持ち合わせる。 ◆ケバブ ペイペイドームでは「栗原選手のビーフ&チキンケバブサンド」を発売。安打や本塁打時に見せる、ケバブを切るようなポーズにちなんだもの。ポーズの元ネタは大リーグ・パドレスのタティスから。 ◆アイブラック ドーム球場やナイターでも使用。「ドームでは効果はわかりません(笑い)。ワクワクするような、試合を楽しむ感じを出すためです」。松田宣からはしばしば、試合前に変な形にいたずら描きされるようだ。

◆日本シリーズ・ニッカンMVP査定。 両エースが投げ合う展開で、栗原の先制2ランは効いた。栗原は2点二塁打も放ち、7回無失点の千賀とともに4ポイントでリード

◆巨人がソフトバンクに敗北。日本シリーズでDH制を採用した試合は、セ・リーグの18連敗となった。 連敗が始まったのは13年(巨人-楽天)の第7戦。これまではパの本拠地試合で採用されていたDH制だが、今シリーズは全試合で行われる。

◆ソフトバンクが第1戦に勝利。19年CSの1S第2戦からのポストシーズン連勝記録を13に伸ばし、日本シリーズは広島と対戦した18年第3戦から9連勝。 シリーズ9連勝は88年第3戦~91年第1戦西武、00年第3戦~02年第4戦巨人、74年第4戦~10年第1戦ロッテの8連勝を抜く新記録となり、工藤監督の9連勝も三原監督が西鉄時代の58年第4戦~大洋時代の60年第4戦、森監督(西武)が88年第3戦~91年第1戦にマークした8連勝を抜く新記録。チーム、監督両方でシリーズ連勝の新記録をつくった。なお、過去70度のシリーズで先勝チーム(△○を含む)は44度優勝し、V確率63%。

◆ソフトバンク・工藤公康監督(57)が試合前に取材に対応した。千賀、菅野(巨人)の投げ合いに「投手戦になる。逆にならないと、という話」と戦局を予想した。  いよいよ直前に迫った頂上決戦。「高ぶりは試合が始まったくらい(に湧いてくる)ですね。まだ練習なので」。前日20日はよく寝られましたか? という問いには「そんなに(寝られなかった)」と話していたが、終始リラックスした表情だった。  今季は交流戦がなかっただけに、巨人との対戦は3月のオープン戦以来。工藤監督もタブレット端末を使って映像を分析してきたといい「新しい人もいますし。最初から対戦していない選手の軌道を読んで打つのは難しい。その辺はコーチの方にお任せしています」と期待した。過去の日本シリーズで1戦目を勝利したチームが日本一になる確率は62・9%。4年連続日本一への道は、菅野を打たないと始まらない。

◆ソフトバンク・石川柊太投手(28)がキャッチボールなどで調整。22日の第2戦での先発登板に向けて「(投球内容が)よかろうが悪いかろうが、腹をくくって投げるだけ。どんな舞台だろうが、自分のボールを投げる。結局はそこに尽きる」と闘志を燃やした。  シーズン最終戦となった9日の西武戦(ペイペイドーム)では3回無失点。11勝目を挙げて最多勝、勝率・786で最高勝率の2冠に輝いた。タイトルホルダーとして迎える頂上決戦。巨人打線の印象を問われると「自分との戦いですから。相手は関係ない」と力強く言い切った。  日本シリーズのマウンドは何度も経験してきたが、先発としての登板はこれが初めて。「先発は初めてですけど、それを言い訳しないように。中継ぎのつもりというのは変わらないので」と強調していた。

◆日本シリーズ初先発のソフトバンク栗原が、「めちゃくちゃ緊張していた」という二回の第1打席で先制2ランを放った。「ファーストストライクから思い切って打ちにいこうと思っていた」との言葉通り、2ボールからの3球目をフルスイング。菅野が投じたスライダーを捉え、高々と上がった打球を見届けると、右拳を握った。  ロッテとのクライマックスシリーズは5打数無安打と苦しんだが「前のことを引きずっても仕方がない。日本の最高峰の投手と戦えるのは楽しみ」と燃えていた。大舞台で鋭い振りを取り戻し、ポストシーズン初安打となるアーチを描いた。

◆ソフトバンク・栗原陵矢捕手(24)が「5番・右翼」で出場。先制打&中押し打の4打点で一気に流れを手繰り寄せた。  二回無死一塁では135スライダーをとらえ、右翼席に先制2ラン。六回2死一、三塁では143キロを左中間へ弾き返した。2点二塁打で追加点を挙げ、先発・千賀を力強く援護した。  プロ初出場は2017年6月13日の巨人戦(東京ドーム)。代打で立った初打席、マウンドにいたのが菅野だった。結果は二ゴロ。3年以上の時を経て、成長した姿を見せつけた。今季シーズンでは118試合に出場して打率・243、17本塁打、73打点とブレーク。14日からのロッテとのCS(ペイペイドーム)では2試合で5打数無安打だったが、頂上決戦のひと振り目でたくましくチームを勢いづかせた。

◆巨人・菅野智之投手(31)が先発も、6回6安打4失点で降板。勝利を呼び込む快投を披露することはできなかった。  二回無死一塁で栗原に右越え2ランを献上し先制を許すと、六回にも2死から柳田に死球、グラシアルに右前打を浴びて一、三塁のピンチ。またも栗原に右中間へ2点二塁打を許し、0-4と引き離されてしまった。  頂上決戦の初陣となったこの日は、相手エース・千賀との投げ合いに。今年1月には自主トレもともにした盟友に「特別な存在。この上ない対戦になると思う。僕たちは挑戦者なので、千賀くんに挑戦したいです」と話していたが、投げ勝つことはできなかった。  2番手には高卒2年目の戸郷翔征投手(20)が登板した。

◆ソフトバンクの4番、グラシアルが菅野から2安打し、攻略の突破口を開いた。二回、六回と速球を右前に運ぶと、いずれも続く栗原が快音を響かせ、ホームを踏んだ。対菅野は昨年の日本シリーズ第4戦でも3ランを放って最高殊勲選手(MVP)に輝いており、今年も好相性を発揮した。  左翼の守りでは五回、中島のフェンス際の飛球にタイミング良くジャンプして好捕した。「一戦一戦全力で頑張る」と意気込んでいたキューバ出身の強打者が攻守に奮闘した。

◆巨人・菅野、ソフトバンク・千賀のエース対決は、7回3安打無失点に抑えた千賀に軍配があがった。ソフトバンク・栗原は二回に2点本塁打、六回に2点適時二塁打を放ち、4打点と大活躍。ソフトバンクが日本シリーズ4連覇へ向けて、大事な初戦を制した。

◆政府のイベント開催制限で観客数は収容人数の50%が上限となっており、第1戦の観衆は1万6489人だった。  日本シリーズで観衆が2万人以下となったのは、1万6828人だった1986年の広島-西武第8戦以来で34年ぶり。この年は3勝3敗1分けで当初はチケットが販売されない第8戦までもつれ、西武が日本一に輝いた。

◆巨人・菅野、ソフトバンク・千賀のエース対決は、7回3安打無失点に抑えた千賀に軍配があがった。ソフトバンク・栗原は二回に2点本塁打、六回に2点適時二塁打を放ち、4打点と大活躍。ソフトバンクが日本シリーズ4連覇へ向けて、大事な初戦を制した。 パ・クライマックスシリーズでは5打数無安打と苦しんだ栗原が、大舞台で鋭い振りを取り戻した。二回無死一塁、菅野が投じた3球目のスライダーを強振すると、ボールは勢いよく右翼席へ。ソフトバンクが貴重な先制点を奪い、試合の主導権を握った。 栗原の見せ場は六回にも訪れた。2死一、三塁となった場面、菅野の4球目の143キロを今度は流し打ち。ボールは左中間を転々とすると、2人が生還して4-0と突き放した。菅野はこの回を投げ切ったが、七回初めに交代を告げられてノックアウト。一方、千賀は巨人打線を7回3安打に抑える完璧なピッチングを披露した。 ソフトバンクは八回にも中村晃の左前適時打で1点を追加して5-0。巨人は九回、1点を返すのが精いっぱいだった。 ★日本シリーズの傾向 開幕戦に勝利した球団の優勝確率は64・2%(過去67度中43度、引き分けの3試合を除く)。本拠地制が敷かれた1952年以降、敵地での開幕戦に勝利した球団の優勝確率は71・4%(28度中20度)と高い。

◆巨人・菅野智之投手(31)は6回87球、6安打4失点で降板し、「次のチャンスがあると思うので、それに向けてしっかり調整します」と広報を通じてコメントした。  千賀とのエース対決に臨んだ右腕だったが、二回無死一塁で5番・栗原へ2ボールから投じたスライダーが甘く入り、右越え先制2ランとされた。0-2の六回二死一、三塁でも栗原に左中間への2点二塁打を浴びた。24歳の左打者、栗原には四回にも右翼線二塁打を許すなど3安打4打点を献上した。

◆ソフトバンクの中村晃がダメ押しの適時打を放った。4-0の八回無死一塁で高橋に対し、一塁走者の周東が二盗を決めた後、変化球を巧みに左前へ運び「周東がチャンスをつくってくれたので、かえせて良かった」と笑った。  ロッテとのクライマックスシリーズ(CS)では第2戦で2本の2ランを放ち、最優秀選手(MVP)に輝いた。ポストシーズンでの勝負強さをまたも発揮し、大事な初戦の勝利に貢献した。

◆プロ野球の日本一を決めるSMBC日本シリーズ2020は21日、大阪市の京セラドーム大阪で開幕し、3年ぶりにパ・リーグを制したソフトバンクがセ・リーグ2連覇の巨人を5-1で下し、2018年の第3戦から9連勝を飾ってシリーズ記録を更新した。  新型コロナウイルス感染拡大で約3カ月遅れて6月19日に無観客で開幕した異例のシーズン。観客の入場制限50%が継続されながらも今季の頂点を決める戦いにたどり着き、観衆1万6489人を集めた。  巨人は8年ぶり23度目、ソフトバンクは前身の南海、ダイエー時代を含めて4年連続11度目の日本一を狙う。  ソフトバンク・工藤監督 菅野君という素晴らしい投手から栗原君が本塁打を打ってくれて、ベンチが一気に盛り上がった。(千賀は)大きな舞台で7回無失点は本当に素晴らしい。一喜一憂しないようにみんなで力を合わせて頑張っていきたい。

◆巨人・原辰徳監督(62)が第1戦を振り返った。一問一答は以下の通り。  --4安打1得点  「ランナーはよくでるけどね(8残塁)。1点を取ったというところでスタートを切ったというところでしょう」  --戸郷を中継ぎで起用   「いい緊張感の中でね。(途中からマスクを被った)岸田にしても、戸郷にしてもね。(3番手の高橋)優貴はあまり褒められたもんじゃないけど、スタートを切れたのは、うちにとってはいいと思いますね」  --菅野の出来は  「まあ、どうぞ決めてください」  --6回87球で交代  「トータルでということを考えて最善策。まだスタート。結果的にこういうスコアでわれわれは負けたというところです」  --次戦へ  「いい材料もあるし。それをつなげていくということですね」

◆ソフトバンクの周東がシリーズ初盗塁で追加点を呼び込んだ。4-0の八回に先頭打者で四球を選んで出塁。警戒される中で二盗を決めると、中村晃の左前打で悠々と生還した。  今季は50盗塁をマークし、育成出身初の盗塁王に輝いた。1番打者に定着した10月には13試合連続盗塁のプロ野球新記録を樹立。大舞台でも俊足を披露し「まず一つできて、ほっとしている。もっと塁に出て、揺さぶっていけるようにしたい」と威勢が良かった。

◆巨人の坂本が六回に千賀から強烈な当たりの中前打を放った。昨季の交流戦と日本シリーズで7打数無安打と完璧に封じられた相手から安打をマークした。  四回には四球を選んで出塁し好機をつくった。ただチームは初戦を落とし「負けは負けで切り替えてやるしかない。明日(22日)、勝って五分に持ち込みたい」と気持ちを切り替えた。

◆巨人の大城が大事な初戦で先発マスクを任された。エース菅野を勝利に導くことはできなかったが「いつもと違う雰囲気の中でいい緊張感で試合ができた。負けはしたが切り替えたい」と前向きに話した。  持ち味の打撃では五回2死で千賀から安打を放った。154キロの直球を中前へはじき返し、場内を沸かせた。

◆圧倒的な投球の前に打線が沈黙した。この日、最速159キロをマークした千賀を攻略できず、巨人が痛恨の黒星スタート。わずか4安打で得点は九回の犠飛の1点のみに終わり、原監督は「こういう状態でスタートを切ったというところ。つなげるところはつなげる」と首を振った。  屈辱的なシリーズ開幕となった。2013年の楽天との第7戦、昨秋のソフトバンクとの4戦全敗を合わせ、日本シリーズで6連敗。球団では1958年の西鉄(第4戦)から61年の南海(第1戦)に喫した9連敗以来、59年ぶりだ。  東京ドームが社会人の都市対抗野球の開催で使用できず、日本シリーズでは40年ぶりに本拠地以外の球場で開催。さらに35年ぶりに全試合でDH制を採用と、コロナ禍で異例ずくめのスタートだった。この日、左足内転筋の張りから復帰した亀井が「6番・DH」に入ったが、4打数無安打。ホームアドバンテージはない状態で今後も戦いは続く。  完敗を喫したソフトバンクの印象について、原監督は「まだ何とも言えません。大したことないなとか、強いなとか、そんなことは言えません」。厳しい表情で雪辱を誓った。(伊藤昇)

◆巨人・菅野は6回6安打4失点。頂上決戦の初陣を白星で飾ることはできなかった。  「次のチャンスがあると思うので、それに向けてしっかり調整します」  打球の行方を見つめ、険しい表情で目を伏せた。二回無死一塁で栗原に右越えの先制2ランを被弾。さらに六回も2死一、三塁から栗原に左中間へ2点二塁打を献上...。24歳の若武者に3安打4打点を許し、主導権を握られてしまった。  1月には福岡・久留米市で合同自主トレを行った千賀との投げ合い。「特別な存在。この上ない対戦になると思う。僕たちは挑戦者なので、千賀君に挑戦したい」と意気込んでいたが、7回をゼロ封の相手エースとは明暗が分かれた。  ただ、これで終わったわけではない。この日の球数は87。短期決戦を勝ち抜くため、エースのフル回転が選択肢に加わった。宮本投手チーフコーチは「1、5、7(戦目)といったところも考えられるでしょうね。臨機応変に対応していかないと」と示唆した。中4日で26日の第5戦、さらに中2日で29日の第7戦に回るプラン。勝利で菅野につなぐ必要はあるが「彼も準備はしていると思います」と変わらぬ信頼を口にした。  前日20日の練習後には「人生で1回も日本一になったことないので、そういうのを強く持ってやりたい」と力を込めていた菅野。次は必ず、やり返す。(箭内桃子)

◆SMBC日本シリーズ2020が21日、開幕。パ・リーグ覇者のソフトバンクがセ・リーグ覇者の巨人に5-1で先勝し、シリーズ9連勝の新記録を樹立した。「5番・右翼」で先発出場した栗原陵矢捕手(24)が二回の先制2ランを含む3安打4安打。今季年俸1000万円の男が球界最高年俸6億5000万円の菅野智之投手(31)を粉砕した。  勝者だけが、笑える。日本一を決める秋が今年もやってきた。先勝したのはソフトバンク。栗原が4打点の活躍で成長を見せた。2020年の「若鷹」を象徴する新星が頼もしく菅野撃ちだ。  「めちゃくちゃ緊張しました。(スタメンに)自分の名前があったときは楽しむというよりも『何とかしないと』という方が大きかったです」  大事な1戦目の先制点を刻んだ。二回無死一塁、135キロスライダーを強振すると右翼席まで運び去った。米大リーグで今季17発のフェルナンド・タティスJr.=パドレス=をまねたポーズをベンチ前で決め、破顔一笑だ。六回2死一、三塁でも左中間へ2点二塁打。3安打4打点と最高の発進となった。  推定年俸1000万円の高卒6年目。今シリーズのファーストスイングで球界最高年俸6億5000万円の菅野を攻略した。プロ初出場は2017年6月13日(東京ドーム)。代打で立った初打席、相手が菅野だった。「そのときの方が緊張しました」。結果は二ゴロだったが、頂上決戦で成長した姿を見せつけた。 その他の写真(2/3枚)  2連勝したロッテとのCSでは5打数無安打。全試合で指名打者制を採用することが決まる前、千賀から「DHなしやったらお前が外れるんちゃう?」と猛ハッパをかけられていた。着弾を見守ったエースは「栗原"さん"がいいバッティングをしてくれた。『ヒーローになれ』とずっと言っていたので」とニヤリ。結果で応えてくれたことが心からうれしかった。  チームはポストシーズン13連勝。日本シリーズに限れば18年の第3戦(相手は広島)から9連勝とシリーズ記録を樹立した。短期決戦で無類の強さを見せ続ける工藤監督は「勝ちたいという気持ちが強いから、こういうゲームができる」と誇らしい。過去でも第1戦に勝利したチームが日本一になる確率は64・2%。4年連続日本一へ最高すぎる船出だ。進撃の中心に、栗原が立つ。  「初戦を取れたのはすごく大きい。あしたはあした、また気持ちを入れてやっていきたいです」  栗原陵矢、24歳。その名前が、日本中に広がった。(竹村岳)

◆本紙専属評論家の江本孟紀氏(73)が、エース対決を読み解いた。1973年の日本シリーズ第1戦で、南海(ソフトバンクの前身球団)のエースとして、V9の巨人相手に完投勝利を収めたエモやん。シビアな目でズバリ、だ。  日本シリーズの第1戦で、待ちに待ったエースの真っ向対決。その2人に、これだけ差がついたら、結果もこうなる。  菅野は勢いのある球を投げていた...、ようにみえて、エモトの目には、違って映った。  踏み出す左脚が突っ張り気味で、立ち投げのようになっていた。あれでは、球が高めに浮いてしまう。栗原に2ランされたスライダー系も、2点二塁打されたシュート系も、押さえが効かずに浮いた球だった。  実は、勝ち星が伸び悩んだレギュラーシーズン終盤の傾向でもあった。不安が的中したかな。  もっと言えば、菅野が痛打されるのは、判で押したようにスライダー系。抑えるのも打たれるのも、スライダー系。頼りにしている球種だけに、そこに気づかないのかもしれない。  栗原は成長株とはいえ、決して大物打ちではない。菅野クラスなら、スライダーに頼らずとも抑えられる。上から目線でいてほしかったね。  千賀は逆に、打者を見て投げていた。スピードに対応できないと見るや、ストレートで押して、打ち取る。  誤算だったのは、決め球のフォークボール。立ち上がりから、落差の大きいフォークをことごとく、見極められていた。ストライクからボールになるフォークに、ほとんど手を出してくれない。  これは巨人側の、研究・分析の成果だろう。  それでも、四回から、そのフォークをストライクゾーンに配してカウントを稼ぎ、速球で仕留める。相手の反応に即した投球だった。  エースで落とした巨人とすれば、あとは"億万長者"、坂本、岡本、丸の主軸に奮起してもらうしかないよ。 (本紙専属評論家)

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