ソフトバンク(☆4対3★)ロッテ =クライマックスシリーズ1回戦(2020.11.14)・福岡PayPayドーム=
このエントリーをはてなブックマークに追加

 123456789
ロッテ
0200100003811
ソフトバンク
00010201X41101
勝利投手:モイネロ(1勝0敗0S)
(セーブ:森 唯斗(0勝0敗1S))
敗戦投手:澤村 拓一(0勝1敗0S)

本塁打
【ロッテ】安田 尚憲(1号・2回表2ラン)
【ソフトバンク】柳田 悠岐(1号・4回裏ソロ)

  DAZN
チケットぴあ ソフトバンク戦チケット予約 ロッテ戦チケット予約
◆ソフトバンクが日本シリーズ進出に王手をかけた。ソフトバンクは2点を追う6回裏、デスパイネの適時打などで同点とする。そのまま迎えた8回には、2死満塁から甲斐の適時打が飛び出し、勝ち越しに成功した。敗れたロッテは守備の乱れが響き、痛い逆転負けを喫した。

◆ロッテが、安田尚憲内野手(21)のCS1号右越え2ランで先制した。 「7番三塁」で先発出場。2回2死から中村奨が中前打で出塁。初球の155キロを空振りした後の2球目、ソフトバンク千賀のフォークを拾った。「うまくバットに引っかかってくれました。CS最初の打席で緊張もありましたが、打つことができて良かったです。次の打席も頑張ります」とコメント。 レギュラーシーズン中は長く4番として起用されてきたが、調子が上がらず、終盤は7番や9番で牙を研いでいた。10月3日の西武戦(ZOZOマリン)で放った6号以来の1発。第1打席での本塁打は今季初となった。

◆ソフトバンク柳田悠岐外野手(32)が1点差に迫るソロ本塁打を放った。 2点を追う4回先頭、2ボールからロッテ美馬の低めのカットボールをバックスクリーン左に運んだ。

◆2点を追いかけるソフトバンクが4回に柳田悠岐外野手のソロで1点差に詰め寄った。4回の先頭で打席に立ち、美馬の2ボールからの143キロ低めのカットボールをバックスクリーン左へ推定145メートルの特大アーチをかけた。 ベンチに戻る時には久しぶりに「最高ポーズ」のパフォーマンスも飛び出した。「自分のいいスイングで打てました。まだリードされてますし、逆転出来るように頑張ります」とコメントした。 今季柳田は美馬に対してレギュラーシーズンで22打数8安打の打率3割6分4厘と得意にしており、1回の第1打席でも左安打を放っていた。

◆ロッテ荻野貴司外野手(35)が3点目を追加した。 1点差に詰め寄られた直後の5回、先頭の田村が右翼線への二塁打でチャンスメーク。藤岡が犠打を決めて1死三塁としたところで、ソフトバンク千賀の高めストレートを捉えた。 左前適時打で再び2点差に広げ「チャンスだったので思い切って打ちにいきました。早く追加点がほしかったので打てて良かったです」。力強くガッツポーズした。

◆2点を追うソフトバンクが6回に同点に追いついた。6回1死二、三塁からアルフレド・デスパイネ外野手が遊撃への適時打を放ち1点差に詰め寄った。 なおも1死一、三塁から牧原大成内野手が、ロッテ3番手唐川から二塁へのゴロを放ち、二塁手中村奨は目の前にいた一塁走者デスパイネにタッチしてアウトに。さらに一塁へ送球したが、一塁手井上が落球。その間に三塁走者グラシアルがヘッドスライディングで本塁へ突入し同点のホームを触った。

◆ロッテが失策で同点に追いつかれた。 6回1死一、三塁、ソフトバンク牧原が前進守備の二塁手中村奨へボテボテのゴロを放つ。中村は一塁走者にタッチし、素早く一塁に送球。しかし、一塁手の井上が捕球ミス。併殺とはならず、さらに井上が球を見失っている隙に三塁走者のグラシアルが本塁に生還し、同点となった。 この回にマウンドを降りた先発美馬はベンチから天を仰いで悔しがった。

◆ソフトバンク千賀滉大投手は7回3失点と我慢の投球だった。 初回、初球にこの日最速の159キロをマークするなど直球に力があった。2回にはフォークを安田に捉えられ先制2ランを許すなど8安打を浴び「先制点を取られてしまったので、いい投球だったとは言えない」。昨年のCSファーストステージ第1戦楽天戦では4被弾、4失点で負け投手になったが、今年は負けなかった。

◆ロッテの先発、美馬学投手(34)は、5回3分の1を7安打3失点(自責2)で勝敗はつかなかった。 レギュラーシーズンでソフトバンク戦5勝の成績と経験を買われ、初戦に抜てきされた。1回1死満塁のピンチを遊ゴロ併殺に切り抜け、序盤は無失点でこらえた。4回に柳田に中越えソロを許すと、6回は先頭から2連打。犠打で二、三塁に走者を残して降板した。 味方の守備のミスもあり、残した走者がかえって同点に追いつかれるとベンチで空を仰いだ。「僕個人のことは何もありません。チームがとにかく勝ってくれること。それだけです」と勝ち越しを願って応援した。

◆ロッテは14日、本拠地ZOZOマリンで開催した「パーソル クライマックスシリーズ パ」対ソフトバンク第1戦のパブリック・ビューイングに、1879人が集まったと発表した。

◆ロッテ沢村拓一投手(32)が大舞台で自己最速の159キロをマークした。 3-3と同点の8回、5番手でマウンドに上がると、先頭のグラシアルへの5球目、四球にはなったものの真ん中低めへの直球で記録した。 その後、四球と安打で走者をため、2死満塁から甲斐に遊撃内野安打で勝ち越し点を許した。 そのままロッテが敗れ、沢村は敗戦投手となった。

◆ソフトバンクが8回に甲斐拓也捕手の遊撃内野安打で勝ち越した。2死満塁からボテボテのゴロを打ったが、甲斐が一塁へ気迫のヘッドスライディングでセーフ。1点を勝ち越した。

◆ソフトバンクが逆転でロッテに競り勝ち、1勝のアドバンテージを含め2勝となりクライマックスシリーズ(CS)突破へ王手をかけた。 ロッテに2回に先制され追いかける展開だったが、6回に同点に追いつき、8回に甲斐の遊撃への適時内野安打で1点を勝ち越した。9回は守護神の森唯斗投手が中村奨、安田を連続空振り三振、代打角中を遊ゴロに仕留めた。 ソフトバンクは昨年のCSファーストステージ楽天戦第2戦からポストシーズン11連勝となった。

◆ソフトバンクが逆転勝ちした。0-2の4回に柳田がソロを放ち、1-3の6回にデスパイネの適時内野安打と失策で同点。8回に甲斐の適時内野安打で1点を勝ち越した。千賀が7回3失点と試合をつくり、8回をモイネロ、9回を森が無失点でしのいだ。 ロッテは安田の2ランなどで先行したが、守備のミスも響いてリードを守れなかった。

◆ロッテは2回2死一塁から安田の1号2ランで先制した。ソフトバンクは初回1死満塁の好機に栗原が遊ゴロ併殺打に倒れた。 ソフトバンクは4回に柳田の1号ソロで1点を返すと、再び2点差の6回にデスパイネの適時内野安打など2点を挙げ同点とした。 ソフトバンクが8回に甲斐の適時内野安打で1点を挙げ勝負を決めた。アドバンテージの1勝を含め2勝とし王手をかけた。 ソフトバンク・モイネロが1勝目、森が1セーブ目、ロッテ沢村が1敗目。

◆ロッテが逆転負けし、アドバンテージを含めて0勝2敗でソフトバンクに王手をかけられた。 復調傾向の安田に1号2ランが出るなど、5回までに苦手の千賀から3点を奪った。 だが2点リードの6回、守りにミスが出た。1死二、三塁で投手が美馬から東條に交代。遊撃への当たりは藤岡の送球がやや高めにそれて適時内野安打となり、1点差。なおも1死一、三塁でマウンドは3番手の唐川に。牧原を二ゴロ併殺に打ち取ったかに見えたが、中村奨からの送球を一塁井上が捕球できず、同点に追いつかれた。 そして8回、5番手で登板した沢村拓一投手(32)が2四球で2死満塁のピンチを招き、遊撃内野安打で勝ち越しを許した。 井口監督は「代わったピッチャーもね、しっかり打ち取ってはくれたんですけど。そこでね、野手でミスが出てしまった。ああいうミスが出たらこういう短期決戦は流れが向こうにいってしまう。もう1回引き締めて明日頑張ります」と話した。

◆CS突破に王手をかけたソフトバンク森唯斗投手、甲斐拓也捕手がお立ち台で「明日決めます」と第2戦での日本シリーズ行きをファンに誓った。 1点リードの9回を3人で完璧に抑えた森は「ひとりひとりを抑えることだけ考えてマウンドに上がった。(スタンドのファンの拍手は)ものすごく聞こえていた。絶対に抑えてやろうと1球1球に集中しました」とファンの後押しに感謝し、「明日で決めたいと思います」と連勝への思いを力強く口にした。 8回に遊撃への適時内野安打で決勝点を挙げた甲斐は、ボテボテのゴロでも全力疾走で一塁へヘッドスライディングしセーフとなった激走に「全力で走りました。何とかこの距離を全力で走って...です」と照れ笑いした。最後は「明日決めて日本シリーズに行けるように全力で戦います」とこちらも力強かった。

◆ソフトバンク柳田悠岐外野手(32)が「無敗弾」でチームに日本新となるポストシーズン11連勝を呼び込んだ。2点を追う4回無死、中越えに推定飛距離145メートルのソロを放ち反撃ののろしを上げると、6回無死では中前打で同点劇を演出した。ポストシーズンでは自身8本目の本塁打となり、打った試合はチーム8連勝。主砲の1発から逆転勝ちし、日本シリーズ進出に王手をかけた。信じられない軌道だが、もはや見慣れた放物線だ。2点を追う4回無死。柳田はロッテ美馬の低めいっぱいの変化球をすくい上げた。外野フライに見えるような高い弾道で、打球の勢いはどこまでも落ちない。そのままテラス席どころかフェンスも軽々と越えて、バックスクリーン左のスタンド中ほどまで飛んだ。推定145メートル弾に「打ったのはカットだと思います。自分のいいスイングで打てました」とうなずいた。 工藤監督も「彼にしか打てないホームラン」と評した豪快な1発から、劣勢のチームが息を吹き返す。同点劇も柳田からだった。再び2点差となった6回先頭で、美馬から3安打目となる中前打でチャンスメーク。相手ミスなども絡んでこの回2点を奪い、一気に追いついた。 チームは接戦を勝ちきり、ポストシーズンでは昨年のCSファーストステージ第2戦から11連勝。75、76年の阪急を上回る日本新記録になった。指揮官は「あまりそこを気にしているわけではないのでね。1戦必勝で、どんな結果になっても引きずることなくやっていきたい」と冷静に、気を引き締めるように話した。 柳田は、ポストシーズンでは14年日本ハムとのCSファイナルステージで初アーチをかけて以来、これが8本目。18年には西武とのCSファイナルステージで2本塁打を打ちMVP。同年広島との日本シリーズではサヨナラ弾もマークした。打った試合はすべて勝っており、無傷の8連勝になった。 左膝裏のケガで不完全燃焼だった昨年から巻き返す思いの通りに、今季の欠場は1試合だけ。故障離脱なく日本一まで走りきれば14年以来のことだ。「ミスター・ポストシーズン」が4年連続日本一までチームを先導する。【山本大地】

◆ソフトバンク柳田悠岐外野手(32)が「無敗弾」でチームに日本新となるポストシーズン11連勝を呼び込んだ。工藤公康監督の一問一答は以下の通り。   -甲斐はバントを失敗しても取り返して勝ち越し打をマークした 工藤監督 意地でもというか、なんとしてでもというかね。ああいうところが大事。失敗は誰でもある。悔しい思いをしたことが次につながる。割り切りと切り替え、一喜一憂しないよう、しっかり切り替えるのが大事です。 -牧原がいいつなぎ役を果たした 工藤監督 つながりのなかで自分の役割を果たしてくれるのは大きい。(8回は)四球で出たのは大きい。出塁すると次につながる。四球を選ぶことで、相手投手にもボール球は振らないなと思わせるし、そういう相手に注意される打者が増えるといい。明日(15日)も、そういう試合ができればと思う。 -周東は出塁できなかった 工藤監督 うまくいくときもあれば、うまくいかないときもある。CSだと違う緊張感もあっただろうし、彼はなにくそと思うタイプなんで明日頑張ってくれればと思います。 -岩崎がベンチから外れていました 工藤監督 首に張りがあった。昨日ブルペンには入って本人はいけると言っていたが、今日は1日様子を見ようということになった。問題なければ明日は(ベンチに)入れる。

◆ソフトバンク甲斐拓也捕手が「全集中」で決勝点をもぎとった。同点の8回2死満塁。「2死だが何とか(バットに)当てて事を起こそうと」と沢村の152キロに食らいついた。ボテボテの遊ゴロとなったが「打球は見ていない。一塁まで全力で」とヘッドスライディングで適時内野安打にした。 13日に工藤監督が「全集中」と人気アニメ「鬼滅の刃」に登場する呼吸法を引用したが「僕、1回も見たことなくて」。言葉通りに全集中しヒーローとなった。

◆始球式は福岡出身で19年世界卓球女子ダブルス銀メダルの早田ひな(20)が務めた。 今年1月には全日本選手権で女子ダブルス3連覇、同シングルスで初優勝している。卓球では左利きだが、右で投げワンバウンドで捕手のミットへ投げ込んだ。初の始球式に「卓球では感じたことないくらいの緊張で、今でも手足が震えてます。次また機会があればノーバンで投げたいです!」と笑顔だった。

◆ソフトバンクが誇る強力リリーフ「MM」コンビが、ロッテを完全に封じた。同点で迎えた8回を、今季の最優秀中継ぎ賞のリバン・モイネロ投手(24)が3人で仕留めると、1点を勝ち越して迎えた9回は、守護神森唯斗投手(28)が2者連続三振を含めて3人でピシャリと締めた。新人から7年連続50試合以上登板の鉄腕森は「緊張はあったが、いい緊張感だった。いい調整ができていたと思っていた。準備はバッチリでした」と最高の笑みを浮かべた。守護神となった18年からのCSでは1度も失敗なしの6セーブ目をマークした。 8回裏の味方の勝ち越し劇に気合も入った。「もう1つ、スイッチを入れてマウンドに上がった」。1発同点のマウンドにも、ロッテ中村奨を直球で空振り三振、この日本塁打を放っている安田からは変化球で空振りの三振を奪った。最速152キロもマーク。日本シリーズ進出に王手となり「早く決めたいが、そんなに甘くないと思う。できることをしっかりやって準備したい」と気合を入れ直した。 今季最終戦前に、エクステで奇抜なヘアスタイルに"変身"し気合十分のモイネロは「先頭打者に3ボールにしてしまったのは良くなかったけど、その後はしっかり制球できたし結果0点で抑えられて良かった」と振り返った。鉄壁のリリーフコンビがいる限り、チームの連勝は止まらない。【浦田由紀夫】

◆柳田のバットが、下克上を狙うロッテの出ばなを強烈に粉砕した。単純に結果を出したから取り上げるわけではない。打席内容を見る限り、実力は明らかに突出している。柳田を抑えない限り、ロッテには勝ち目がないという試合だった。 今CS前、ロッテが勝つためには、何が何でも初戦の勝利が必要と思っていた。先発は今季ソフトバンクに対して5勝1敗、防御率2・70の美馬。シュートを武器にする右腕は、左打者に3割1分3厘と分が悪いが、右打者は2割1分3厘と抑えていた。 左の強打者では柳田、中村晃が思い浮かぶ。中村晃は2割3分5厘と封じていた。10打席以上の対戦があって3割以上をマークしているのは、柳田の3割6分4厘と、周東の3割5分3厘だけ。左の強打者が少ないソフトバンクにとって、2人のうちどちらかでも抑えれば、勝てる可能性がグッと上がるはずだった。 周東は完璧に抑えたが、柳田は違った。2打席目、内角カットボールを続けて2ボール。3球目も内角カットボールだったが、見逃せばボールかもしれない低め。これをバックスクリーン左へ運んだ。"交通事故"に遭ったような、衝撃的な1発だった。 さらに圧巻は第3打席。初球は内角スライダーを豪快に空振り。2球目は外角直球を見逃しストライク。バッテリーは「内角を狙っている」と感じたのだろう。強打者に内角を意識させるのは配球の定石で、ここまではうまく運んだ。 だが、外角の変化球を2球続けて見逃されてボール。5球目に再び内角スライダーをファウルすると、6球目の外角直球を中前打。十分に内角球と変化球を意識させたにもかかわらず、少しだけ浮いた高めの直球をヒットされては、抑えるすべが見つからない。 単打を打たれても、得点に絡ませなければいい。そんなマークをかいくぐって2得点に絡んだ。攻め方を見ても「これで打たれたら仕方ない」というもの。痛いのはミスで失った3点目だが「ミスすれば勝てない」と思わせるのも柳田の存在があるから。走力もあり、長打力もある柳田ほど嫌な3番打者はいない。【小島信行】

◆「7番三塁」でスタメン出場したロッテ安田尚憲内野手(21)が、自身ポストシーズン初本塁打となる2ランを放った。2回、難攻不落のソフトバンク千賀のフォークボールを完璧に捉え、試合の主導権を握った。シーズンで主に4番を張った経験を大一番で披露。チームに勢いを与えたが、自慢の守備にほころびが出て接戦を落とした。マリーンズのキラーワードは「下克上」。まだまだ終われない。遅いなんてことはない。1年間苦しみ抜いた安田が花開いた。千賀の「お化けフォーク」を先制2ランし「CS最初の打席で、緊張もありました」。敵地の左翼席一角に陣取る黒い応援団を、一気に沸かせた。 初球の155キロを空振りした。力の限り振った。井口監督はシーズン中「プレッシャーでバットが振れなくなっている」「悪い時は当てにいっている」と何度もこぼした。大舞台では違った。空振り直後にまた直球を振りにいったら、予想外のフォークがきた。「たまたま引っかかっただけです」。下半身で粘り先制点をもぎ取った。 山あり谷あり。谷は割と深かった。シーズン打率は2割2分1厘。過密日程での修正は大変だった。9月末に「2、3試合ヘッドを上げていたのを、戻しました」と話したことがある。試行錯誤で4番に座り続けた。高卒3年以内の4番は球団史上4人目。高い期待と厳しい攻めに「震える場面もあります」ともらした。 背中が大きく見える。レギュラーシーズン後の数日間で見つめ直した。脇の位置のグリップは鼻の位置へ。右肩を少し内側に入れた、右足もやや高めに上げ「シーズン終盤に窮屈になっていたので、飛距離の出るスイングを」と自分にしかないスケールを取り戻した。11月上旬、背中の「5」は投手側からほぼ見えなかった。今は背ネームの「Y」までが見え隠れする。 短期決戦は、1球で引き寄せるうねりの大きさが違う。「1球の重みはあると思います」と独特の空気を振り返った。もう1つ負ければ終わり...誰もが知っている。「まだまだシーズンが終わったわけじゃないので、また3つ勝って、千葉に戻れるように頑張りたいです」。眉を上げて、ひたむきにぶつかる。【金子真仁】

◆ソフトバンクが勝ち、アドバンテージの1勝を含め2勝0敗。今日15日に勝つか引き分ければ4年連続の日本シリーズ進出が決まる。シリーズ出場をかけたプレーオフ、CSで、先に王手をかけたチームは昨年まで37チーム中34チームがシリーズに進出。出場を逃したのは77年ロッテ、10年ソフトバンク、12年中日だけで突破率92%。今回のように無傷の王手は過去17チームが全て進出しており、突破率100%。 ▼ソフトバンクは昨年のCS第1ステージ<2>戦からポストシーズン通算11連勝。阪急が75年プレーオフ<2>戦から76年シリーズ<3>戦までマークしたポストシーズン10連勝を上回る最長記録となった。

◆「7番三塁」でスタメン出場したロッテ安田尚憲内野手(21)が、自身ポストシーズン初本塁打となる2ランを放った。 ▼ロッテ安田がCS初本塁打。21歳6カ月での1発は08年2S<2>戦の平田良介(中日=20歳7カ月)に次ぎCSの年少2位。パでは14年1S<3>戦の駿太(オリックス=21歳7カ月)を上回り最年少になる。 ロッテのポストシーズンでは05年日本シリーズ<1>戦の今江敏晃(22歳1カ月)を更新する球団最年少の1発だ。

◆日本シリーズをかけたロッテとの短期決戦。ソフトバンク孫オーナーもかなり気合が入っていたのだろうか。試合開始1時間前にハイヤーでペイペイドームに乗り込んできた。球団幹部の出迎えを受け、足早に上層階のスーパーボックスに姿を消した。 悲願であったリーグVを3年ぶりに成し遂げた。西武に王者を譲り渡したこの2年、孫オーナーは悔しさをにじませてきた。オフのスポンサーパーティーに送ったビデオメッセージでは工藤監督、コーチ陣、主力選手の出席も意識してか「何としても来年はリーグ優勝してほしい」と言い続けた。「何でも一番がいい」と呪文のように唱える孫オーナーだけに、王者奪還は何よりうれしかったろう。 豪快野球の白星ではなかったが、強い者が勝つのではなく、勝った者が強いのだ。敵失に乗じて同点に追いつくと、8回2死満塁から甲斐の遊撃内野安打で決勝点。先勝で即座に王手をかけた。 2位で勝ち上がってきたロッテとはペナントで「接戦」を演じた。カード24戦で11勝12敗1分け。前半12試合を終えた時点では3勝8敗1分け。大きく負け越したが、10月からの対戦カード7連勝もあり、一気に借金「1」まで挽回した。苦手意識も払拭(ふっしょく)されたか。工藤監督となってロッテとのCS対決は15年のファイナル、16年のファーストステージの2度あるが、15年は4連勝(アドバンテージ1勝含む)、16年は2連勝。こちらの相性は抜群だった。 短期決戦では「鬼采配」も辞さない工藤監督だが、動くこともなかろう。鷹ナインは「必勝の形」を熟知している。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

◆日本一4連覇を目指すソフトバンク・工藤公康監督(57)が、CS初戦を前に取材に応じ意気込みを語った。午後1時のプレーボールに備え早朝から球場入り。自身の「勘、感覚」を信じ、頂点まで駆け上がる。  「きょうは6時半に家を出ました。(シーズン開幕時にはお餅を食べたそうだが? と質問され)出てくるのが早すぎて何も食べていません(笑)。コーヒーを1杯飲んだだけです」  頭をスッキリさせ、準備もシミュレーションもすべて整え、決戦に臨む。昨年は楽天とのCSファーストステージ第1戦で敗れて以降、怒涛(どとう)のポストシーズン10連勝で日本一3連覇を成し遂げた。短期決戦のすべてを知り尽くした男が、今年も鋭くタクトを振る。  「(短期決戦で)大事にすることですか? 迷わないこと。自分の勘というか感覚とか。僕自身の目で見たものをうまく使えるように。いろいろ聞いてしまうとどうしてもそこに迷いが生じてしまうので、そういうときはあまり聞かないです」  初戦のマウンドを託したのは千賀。最多勝(11勝)、最優秀防御率(2・16)、最多奪三振(149)の3冠を獲得した右腕を自信を持って送り出し、一気に勝ち進む。

◆ソフトバンク・東浜巨投手(30)がキャッチボールなどで調整。15日のクライマックス・シリーズ第2戦での先発登板に向けて「しっかりここに合わせてきたので。1試合1試合が大事になってくるので」と意気込んだ。  レギュラーシーズンでは19試合に登板して9勝2敗。最後の登板となった5日のロッテ戦(ZOZOマリン)では7回2/3を6失点で2敗目を喫したものの、9月&10月は8戦7勝という抜群の安定感で終盤の躍進を支えた。結果が全てとなる短期決戦でも、シーズン通りの投球でチームに勢いをつけたい。  中9日でのマウンドになる。調整については「リカバリーが第一でした。特別なことはしていないですけど」と強調した。開幕投手を託された2020年、短期決戦でも存在感を見せる。

◆プロ3年目のロッテ・安田尚憲内野手(21)が「7番・三塁」でCS初出場。初打席で先制2ランを放った。二回2死一塁からソフトバンク・千賀のフォークボールを右翼席に運んだ。「うまくバットに引っかかってくれました。CS最初の打席で緊張もありましたが、打つことができて良かった。次の打席も頑張ります」と充実の笑顔を浮かべた。前日(13日)には「あのフォークは打ちようがない。カウントを取りに来るストレートを一発で仕留めたい」と話していたが、初球の155キロの直球を空振りした後の2球目のフォークボールを捉えた。

◆ロッテ・荻野貴司外野手(35)が貴重な追加点を挙げた。ソフトバンク・柳田のソロ本塁打で1点差に迫られた直後の五回1死三塁で、千賀の156キロを捉えて左前適時打。荻野は今季レギュラーシーズンで千賀から5打数3安打で、CSに舞台が変わってもキラーぶりは健在だった。前日の練習後、井口監督は「シーズン後半は苦戦した打線が、投手陣をカバーできればいい。調子が悪かった人は特打をして、かなり状態は上がってきている」と話していたが、その言葉通りに打線が中盤までに得点を重ねた。

◆ロッテ・井上晴哉内野手(31)が痛恨の失策を犯した。3-2の六回1死一、三塁で牧原の当たりは二塁ゴロ。中村奨が一塁走者のデスパイネにタッチし、併殺を狙って一塁に送球したが、一塁手・井上が落球。この間に三塁走者のグラシアルが同点のホームを踏んだ。  井上はプロ3年目だった2016年のCSで、ソフトバンクとのファーストステージ初戦に先発出場し、千賀の前に3打数無安打、2三振。「前回は緊張で自分のやりたいようにできなかった。その経験があるから今年は楽しくやれそう。何とか日本一になって『あの時はこうだった』と言えるようにしたい」と意気込んでいたが、大事な局面で"高価"なエラーを犯した。

◆4戦3勝先取制で行われるパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)第1戦は、ソフトバンクが接戦を制した。勝ったソフトバンクにはリーグ優勝のアドバンテージとして1勝が与えられており、これで日本シリーズへ王手。一方のロッテは後がなくなった。  先制したのはロッテ。二回、2死一塁から安田がソフトバンク先発・千賀のフォークをとらえ、右翼テラス席へ先制2ランを放つ。対するソフトバンクは四回、先頭の柳田がロッテ先発・美馬の初球をバックスクリーン左へ叩き込む本塁打で1点を返した。  ロッテは五回、1死三塁の好機を作ると、荻野の左前適時打で3-1。再び2点差としたが、ソフトバンクは六回、1死二、三塁のチャンスを作ると、デスパイネが遊撃適時内野安打を放ち、3-2。なおも1死一、三塁で牧原の当たりは二ゴロ。中村奨が一走・デスパイネにタッチし、併殺を狙って一塁に送球したが、一塁手・井上が落球。この間に三走・グラシアルが同点のホームを踏んだ。  さらにソフトバンクは八回、2死満塁で甲斐が勝ち越しの遊撃適時内野安打で貴重な得点を奪った。九回にはマウンドに上がった守護神・森が打者三人で打ち取り、試合を締めた。

◆ソフトバンクはロッテを逆転で破り、リーグ優勝による1勝のアドバンテージを加えて対戦成績を2勝0敗とし、日本シリーズ進出に王手をかけた。  粘投するエースの千賀をもり立て、八回には決勝の遊撃内野安打でヘッドスライディングを見せた甲斐は、ヒーローインタビューで「全力で走りました。気持ち一本というか、打席に入ってもベンチから先輩たちの声がたくさん聞こえて、何とかしてやろうと思いました」と声を上ずらせた。  千賀が二回、安田に先制2ランを浴びるなど、中盤まではロッテのペース。しかし、1-3の六回にデスパイネの遊撃適時内野安打で1点を返すと、さらに敵失も絡んで同点に追いついた。千賀-甲斐のバッテリーも7回8安打3失点と粘りに粘った。  そして同点の八回。四球と連打で5番手の沢村を追い詰めると、2死満塁で甲斐が遊撃へ適時内野安打。頭から一塁へ飛び込みユニホームを土色に変えたヒーローに、ペイペイドームは総立ちとなった。  しぶとい当たりで1点ずつもぎ取っての、逆転勝利。昨年から続くポストシーズンでの連勝を「11」にのばし、日本シリーズ進出へも王手。日本一4連覇へ向け、鷹が力強く一歩を踏み出した。

◆14日、ペイペイドーム)ロッテが逆転負けを喫し、CS突破には残り3試合で全勝しかなくなった。  「ポロリの原因?急いだんでしょうね。やっぱり、ああいうミスが出たら、こういう特に短期決戦では流れが向こうにいってしまう。きちんと明日(15日)やるだけです」  井口資仁監督(45)は渋面を作った。  二回に安田尚憲内野手(21)がCS史上最年少弾となる先制2ランを放ち、主導権を握った。しかし、3-2の六回1死一、三塁で井上晴哉内野手(31)が痛恨の失策を犯した。牧原の当たりは二塁ゴロ。中村奨が一塁走者のデスパイネにタッチし、併殺を狙って一塁に送球したが、一塁手・井上が落球。捕球寸前に三塁走者のグラシアルの動きを見て、目を切ったようにも映り、"高価"なエラーとなった。落球の間にグラシアルが同点のホームを踏んだ。井上はプロ3年目だった2016年のCSで、ソフトバンクとのファーストステージ初戦に先発出場し、千賀の前に3打数無安打、2三振。「前回は緊張で自分のやりたいようにできなかった。その経験があるから今年は楽しくやれそう。何とか日本一になって『あの時はこうだった』と言えるようにしたい」と話していたが、打撃でも4打数無安打とその意気込みも空回りした。  これでロッテは15年ファイナルステージ、16年ファーストステージと合わせ、CSのソフトバンク戦は6連敗。後がなくなった。(東山貴実)

◆CS突破に後がなくなったロッテは、第2戦の先発にチェン・ウェイン投手(35)を立てる。チェンは「シーズンと一緒で自分のやることは変わらないので、1球1球集中して、1つずつアウトを積み重ねていければと思う」と話した。  同投手は今季、マリナーズとマイナー契約を結んだが、6月に自由契約。10月にロッテに入団し、9年ぶりの日本球界復帰を果たした。4試合に登板し、0勝3敗、防御率2・42。打線の援護に恵まれず、勝ち星を挙げることはできなかったが、全4試合でクオリティスタート(QS=6回以上を投げて自責点3以下)と安定した投球を続けた。

◆ソフトバンクはロッテを逆転で破り、リーグ優勝による1勝のアドバンテージを加えて対戦成績を2勝0敗とし、日本シリーズ進出に王手をかけた。試合後、工藤公康監督(57)が取材に応じた。主な一問一答は以下の通り。  --CS大事な初戦を取りました  「そうですね、はい。やはりクライマックスは特別だなと改めて感じました」  --六回は柳田からつながって同点に  「ちょっと相手のミスがあったというところもありましたけど、同点に追いついた(場面の)グラシアル選手なんかはナイス走塁だったなと思います」  --同点の八回2死満塁では甲斐がボールに食らいついていった  「いい当たりでした、はい(笑)。あれはね、なかなかね、執念のヒットというかね、彼の中で『なんとか』という気持ちがバットに乗り移って、何とかボールに当ててね。ああいう形で。ヒットはヒットですから。よく打ったと思います」  --7回3失点の千賀はどう見たか  「最初から飛ばしているというのは分かったので。代えどきというのはあったんですけど。まあ七回までね、ちょっと体もしんどいところもあったと思いますけど、よく投げましたし。この第1戦というのは非常にプレッシャーのかかる試合だと思いますけど、その中でもしっかり3点に抑えたなと思います」  --あす(15日)勝てば日本シリーズ進出が決定する  「そうですね、とにかく1戦必勝という気持ちであしたも臨みたいというふうに思います。みんなで1つになってボールに集中して、あしたも勝てるように頑張っていきたいと思います」

◆プロ3年目のロッテ・安田尚憲内野手(21)が「7番・三塁」でCS初出場。初打席で先制2ランを放った。二回2死一塁からソフトバンク・千賀のフォークボールを右翼席に運んだ。「真っすぐを打ちにいって、本当にたまたまうまくバットに引っかかってくれた。運が良かった」。21歳6カ月での本塁打は、2014年のオリックス・駿太の21歳7カ月を抜いてパ・リーグCS史上最年少アーチとなった。  「意外とリラックスして試合に臨めた。いつも通り集中しようと打席に入った」と振り返った安田。レギュラーシーズン86試合で4番に起用された若武者が大舞台で躍動し、「まだまだシーズンが終わったわけじゃない。明日(15日)からしっかり3つ勝って、千葉に戻れるよう元気を出してやるだけ」と悲壮感はみじんも感じさせなかった。

◆ロッテの美馬の粘りは実らなかった。五回まで1失点と好投し、3-1の六回1死二、三塁で救援に託した。拙守もあってこの回に追い付かれるとベンチで天を仰ぎ「僕個人のことは何もない」と言葉少なだった。  六回に先頭打者の柳田、グラシアルに連打を浴びた際には何度もジャンプして悔しがった。今季のソフトバンク戦は7試合で5勝1敗と相性が良かったが、王者の勢いを止められなかった。(ペイペイドーム)

◆ソフトバンクの岩崎が首の張りのためベンチ外となった。勝ち試合の救援役を担っていただけに、その不在について工藤監督は「本人はいける状態だったけど、もう一日様子を見ようと。問題なければ(15日は)入れる」と説明した。

◆ロッテ・美馬学投手(34)はこれまでのCSの借りを返すことができなかった。一回1死満塁、五回無死一、二塁をしのぎ、柳田のソロ本塁打による1点だけと粘りの投球を続けた。しかし、3-1の六回に再び1死二、三塁のピンチを招いて降板となった。  「僕個人のことは何もありません。(第2戦以降)チームがとにかく勝ってくれること。それだけです」  試合後は言葉少なに祈るような表情を浮かべるのが精いっぱいだった。楽天からFA移籍1年目、34歳にして初めてポストシーズンの初戦を任された。前日(13日)には「初戦が大事なのはすごくわかっている」と話していたが、チームを勝利に導くことはできなかった。  昨季のソフトバンク戦は3勝1敗、防御率1・97。今季も5勝1敗、防御率2・70とレギュラーシーズンでは抜群の相性を誇ってきた。しかし、CSでは一転...。2017年のCSファイナルステージ第5戦で4回途中5失点、昨年のファーストステージ第2戦でも4回5失点とソフトバンク打線の餌食となっていた。そして"三度目の正直"を懸けたマウンドも苦い記憶となった。  昨年は自身が黒星を喫した試合から、ソフトバンクはポストシーズン10連勝で3年連続の日本一となった。「今年で終わるように流れを止めたい」と強い決意をにじませていたが、11連勝を許すことになった。 (東山貴実)

◆反撃の号砲を鳴らしたのは今年も柳田のバットだった。0-2の四回先頭。美馬が投じた内角低めの変化球をバックスクリーン左へ運んだ。  「打ったのはカット(ボール)だと思います。自分のいいスイングで打てました」。美馬からは楽天時代の昨年から"2年連続CS弾"。10月6日のファーストステージ2戦目(ヤフオク)で0-1の一回に同点ソロを放っており、ポストシーズン11連勝もそこから始まっていた。チームを奮い立たせた豪快弾に、工藤監督も「難しい球だったと思うんですが、彼にしか打てないホームラン」とたたえた。

◆ロッテは逆転負けで大事な第1戦を落とし、CS突破には残り3試合で全勝しかなくなった。  六回の痛恨の失策が響いた。1点差に詰め寄られ、なお1死一、三塁の場面。前進守備の二塁手・中村奨が牧原のゴロを捕球し、一走にタッチ。そして併殺を狙って一塁に送球したが、井上がまさかの落球。それを見た三走・グラシアルに同点の生還を許した。  井口監督は「急いだんでしょうね。やっぱり、ああいうミスが出たら短期決戦は流れが向こうにいってしまう」と唇をかんだ。  同点の八回に登板した沢村が甲斐に勝ち越し適時打を喫し、そのまま逃げ切られた。崖っぷちの状況に追い込まれた指揮官は「きちんと明日やるだけです」と足早に球場を後にした。(石井孝尚)

◆パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)が開幕し、レギュラーシーズン優勝のソフトバンクが2位・ロッテに4-3で逆転勝ちした。1-3の劣勢を六回に追いつき、八回2死満塁から甲斐拓也捕手(28)が遊撃へのボテボテのゴロで激走。一塁へのヘッドスライディングで適時内野安打とし、勝ち越した。ソフトバンクは15日の第2戦に勝つか引き分けると4年連続の日本シリーズ進出が決まる。  1球に泣き、笑う。1戦目を拾ったのは甲斐のド根性。魂のまま一塁に頭から突っ込んだ。鷹が先勝し、日本シリーズへ王手だ。  「打った感触ですか? あのままです。必死に走りました」  1-3の劣勢を六回に追いつき、迎えた八回2死満塁。沢村の152キロの速球に食らいついた。ボテボテの打球は遊撃手の前へ。「打球は見ず、もう必死で」。全力疾走し一塁にヘッドスライディング。その体勢のまま判定を見上げると、塁審の両手は広がっていた。 その他の写真(2/2枚)  これが決勝点。甲斐はペナントレースでは得点圏打率・121。この日、五回無死一、二塁ではスリーバントを失敗。犠打を決め切れなかったが「自分の中で切り替えて」勝利に導いた。  今季から背番号が「62」から南海ホークス時代の野村克也さんの代名詞でもある「19」に変わった。強い覚悟を込め、家族は不変の愛で見守ってくれた。大分市内で個人タクシーを営む母・小百合さんの車のナンバーは「・・62」。息子の背番号は変わっても「『私はこのまま』だと言っていました。『62』は僕も好きな番号」。シーズン中に思い通りの結果が出ないと「あんた、大丈夫?」と電話をくれた。故郷にも届きそうな執念が、大一番で結果となった。  昨年はCS第1ステージ2戦目から10連勝で日本一に輝いた。年またぎの11連勝に工藤監督も「興奮しています。執念、意地というか」と目尻を下げた。日本シリーズ進出をかけたプレーオフ、CSで無敗で王手をかけたケースは突破率100%。4年連続日本一へ、あと1勝だ。  「先輩たちの声も聞こえた。決められるように全力で戦います」  15日、引き分けでもCS突破が決まる。勝利への執念が詰まった土まみれのユニホームは、ホークスの象徴だ。 (竹村岳)

◆ロッテは3点を取った時点で、勝ち切らなければいけなかった。ソフトバンク絶対有利の予想の中、いけるところまでやってやる、との開き直りを前面に出し、安田が先制2ラン。荻野が中押し。ソフトバンクからすれば、前評判が逆にプレッシャーにもなり、かなり苦しく感じたはずだ。  それだけに悔やまれるのが、六回の守り。  先発・美馬が2安打と犠打で1死二、三塁とされ、降板。東條がデスパイネに遊撃内野安打され、1点差とされた。ここまでは、仕方がないと思う。東條は右のサイドハンド気味。得意のスライダーで注文通りにゴロを打たせた。内野手も後ろに守っていたため、1点まではやむなし、という場面だった。  問題は3番手・唐川が打ち取ったはずの牧原の二ゴロ。一塁・井上の落球により、併殺を逃したばかりか三走の生還を許した。野球にエラーは付き物...とはいえ、短期決戦の初戦で、それも勝ちパターンの継投に入ってからのミスは痛恨としか言いようがない。  ロッテの開き直りから始まり、ソフトバンクの逆プレッシャーと続き、最後はロッテに白星への重圧がのしかかる。こうした心理面の揺れ方が、短期決戦の怖さと難しさなのだろう。 (本紙専属評論家)

DAZN