阪神(☆1対0★)DeNA =リーグ戦24回戦(2020.11.11)・阪神甲子園球場=
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DeNA
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阪神
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勝利投手:岩貞 祐太(7勝3敗0S)
(セーブ:能見 篤史(1勝0敗1S))
敗戦投手:石田 健大(1勝4敗0S)
  DAZN
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◆阪神は両軍無得点で迎えた8回裏、近本の適時打で試合の均衡を破る。投げては、先発・藤浪が5回無失点。その後は4投手の継投で完封リレーを飾り、5番手・能見が今季初セーブを挙げた。敗れたDeNAは、先発・大貫が7回無失点と好投するも、打線がつながりを欠いた。

◆DeNA山崎康晃投手(28)が11日、約1カ月ぶりに出場選手登録された。 6年目の今季は開幕時から不調に苦しみ、7月29日巨人戦(東京ドーム)で3年ぶりに中継ぎとして登板。守護神の座を三嶋に譲っていた。その後も調子が上がらず、ここまで39試合に登板して防御率5・84。0勝3敗6セーブ、8ホールド。10月8日に、初めて2軍に降格していた。

◆両チームのスタメンが発表された。先発は阪神が藤浪晋太郎投手(26)、DeNAが大貫晋一投手(26)。 阪神は今季最終戦。藤浪は開幕から先発スタートもチーム事情で9月下旬に中継ぎ転向。救援で好投を見せ、10月28日中日戦(甲子園)ではブルペンデーのオープナーとして先発復帰した。4回1失点(自責0)でチャンスをものにし、先発再転向をつかみ取った。 前回登板の4日ヤクルト戦(甲子園)も勝ち星こそ付かなかったが6回4安打無失点。ここまで10月6日広島戦(マツダスタジアム)から19イニング連続自責点ゼロを続けている。 15年以来、自身2度目の「閉幕投手」。チームは16年からシーズン最終戦4連勝中と好データも後押しする。17年4月27日DeNA戦以来となる1294日ぶりの甲子園白星へ、注目のマウンドに上がる。 打線では本塁打ランキング2位タイ(28本)につける大山が、2戦連続の1番スタメン。1位の巨人岡本とは3本差と厳しい状況だが、可能性がある限りチャレンジを続ける。

◆阪神大山悠輔内野手(25)が今季限りでの退団が決まっている能見篤史投手(41)のテーマソングで登場した。 この日も打順は2戦連続の1番。打席に向かう際、GReeeeNの「刹那」が甲子園に流れた。この日がチームの今季最終戦。能見にとってタテジマラストゲームになる一戦で、主砲自ら粋な演出だ。大山は今年、ここまで28本塁打を放って、セ・リーグの本塁打王争いを展開する。1打席目は空振り三振だった。 また、梅野隆太郎捕手(29)も2回の第1打席に入る際、能見の登場曲を用いた。正捕手定着前からバッテリーを組み、ベテラン左腕から多くを学んだ。感謝を込めて盛り上げた。

◆阪神ジェリー・サンズ外野手(33)が来日1年目のシーズンを終えた。 この日は2打席で2度の空振り三振。5回守備から途中交代した。今季は110試合に出場。打率2割5分7厘、19本塁打、64打点だった。7月に月間打率3割2分1厘でアーチ5発を放って本領を発揮。8月6本、9月6本と安定して本塁打を量産した。夏場は活躍したが、秋に入ると調子を落とした。

◆阪神先発の藤浪晋太郎投手(26)が5回無失点9奪三振の好投で、今季最終登板を終えた。球児魂を胸に、来季へ光が差すマウンドとなった。 チーム最終戦を任された右腕は初回から全開。先頭宮本を142キロフォークで空振り三振。安打と四球で1死一、二塁としたが4番細川、5番ソトを連続三振。アウトを全て三振で奪い、無失点で立ち上がった。 4回は先頭の神里に二塁打を浴びて無死二塁のピンチを招いた。それでも続く細川の打席で巧みな二塁けん制で刺し、ピンチの芽をつんだ。 最大のピンチは5回。無死から連打を浴びて無死一、三塁。ここでも藤浪は落ち着いていた。送りバントを試みた8番投手の大貫は、直球で押してスリーバント失敗の三振。続く戸柱、宮本も連続三振で封じた。マウンド上で小さくほえた。 DeNA先発大貫も好投を続け、5回まで0-0。藤浪の球数は87球だったが、5回の攻撃で代打を送られ交代となった。17年4月27日DeNA戦以来となる1294日ぶりの甲子園白星はならなかったが、ベンチでは笑顔もみせた。試合終盤には今季限りで退団する能見も登板する見込み。締まった展開で、舞台も整えた。 「気温など難しいコンディションもありましたが、粘ることができたと思います。何とか能見さんまでいい形でつなぎたいと思っていたので。そういう意味では0点で抑えることができて良かったですし、この後の投手も精いっぱい応援したいと思います」 前日10日には、尊敬する先輩藤川の引退試合が行われた。藤川にはキャンプ中からシーズン中、2軍鳴尾浜で調整をする時に至るまで日頃からさまざまなアドバイスをもらっていた。先発登板を翌日に控えた中でも、試合後のセレモニーを球場で目に焼き付け、この日のマウンドに上がっていた。 今季は先発スタートもチーム事情で9月下旬に中継ぎ転向。救援で好投を見せ、10月28日中日戦(甲子園)ではブルペンデーのオープナーとして先発復帰した。4回1失点(自責0)でチャンスをものにし、先発再転向をつかみ取った。 前回登板の4日ヤクルト戦(甲子園)も勝ち星こそ付かなかったが、6回4安打無失点と力投していた。 救援登板の10月6日広島戦(マツダスタジアム)から続く連続自責点ゼロを24イニングに伸ばし、納得の表情で今季を終えた。来季へ楽しみが広がる、魂のこもった投球だった。

◆「ハマの豆苗」ことDeNA大貫晋一投手が、今季最後の先発マウンドに上がった。 7月10日以来、今季2度目の阪神戦。「今シーズンはじめに甲子園でふがいない投球をしてしまっているので(1回3失点)結果を出して、いい形で来シーズンにつなげたいと思います」と意気込んだ通り、変化球を低めに集める持ち味の投球を披露。1回1死一、二塁で、サンズ、陽川を連続の空振り三振でピンチをしのぐと、5回2死一、三塁では、木浪を低め変化球で二ゴロに仕留めた。7回まで99球、4安打無失点とゲームを作った。 2年目右腕は今季、開幕ローテーション入りこそ逃したが、7月からローテに定着。昨季の6勝を大きく上回る10勝をマークし、エース今永が離脱した先発陣を支えた。181センチ、73キロのスリム体形から付けられた愛称「ハマの豆苗」も徐々に定着。しっかり根を張り大きく成長をとげた。

◆阪神近本光司外野手が2年目のジンクスを破る快打フィニッシュを決めた。 両チーム無得点の8回無死二塁。石田の初球スライダーをとらえ、右翼線に強烈なライナーではじき返した。均衡を破る決勝の適時三塁打になり、チーム20イニングぶりの得点を刻んだ。今季は全120試合に出場して打率2割9分3厘は昨季を2分以上、上回る。「あんまり成績は。調子の波をいかに高いところで維持できるかが大事。今年、学んだことをやっていきたい」。目標の打率3割は逃したが、31盗塁で2年連続盗塁王は決定的。シーズン最終戦で充実ぶりを示した。

◆阪神が無失点リレー。8回に失策による無死二塁から近本の三塁打で均衡を破った。藤浪が5回で9三振を奪い、岩貞が7勝目。能見が2年ぶりのセーブを挙げた。DeNAは大貫の好投を生かせず、2年ぶりのシーズン負け越し決定。

◆今季限りで退団する阪神能見篤史投手(41)が最終戦の9回に登板し、ラストピッチングを飾った。先発の藤浪晋太郎投手(26)ら4投手が無失点リレーでつなぎ、最後の舞台を整えた。 先頭の4番細川には148キロ直球を中前へはじき返され、無死一塁。だが5番ソトを初球の直球で遊撃併殺。6番柴田への4球目までは9球連続で直球勝負。2球変化球を続けたが、最後は148キロ直球を投げ込み、空振り三振。18年8月16日の広島戦以来となる通算2セーブ目を挙げ、阪神でのラストゲームを白星で締めくくった。 試合後は同じ兵庫県出身の坂本から花束を受け取り、笑みをこぼすと、場内の虎党から歓声で包まれた。 16年間虎一筋を貫いたベテラン左腕。今後はタテジマに別れを告げ、現役続行の道を探る。 試合前にはサプライズを受ける場面も。自身の登場曲「GReeeeN」の「刹那」が流れるなか、グラウンドに現れると「NOHMI 14」と書かれたTシャツ姿のチームメートやスタッフからねぎらわれた。あいさつを促され「また僕、ちょっと離れる形になりますけど、またみんなといい勝負が出来たらいいなと思いますので、その時はよろしくお願いします」と、次は対戦相手として再会することを誓っていた。最後は「能見さん 16年間ありがとうございました」と映し出されたバックスクリーンの前で記念撮影を行っていた。

◆両軍先発が安定感ある立ち上がり。阪神藤浪、DeNA大貫ともに3回まで1安打無失点に抑え、中盤に入った。 DeNAは5回に無死一、三塁としたが、阪神藤浪の前に三者連続三振。両軍投手陣が好投し、6回までそれぞれ無得点。 阪神が8回に敵失と近本の適時三塁打で決勝点を挙げた。岩貞が7勝目、能見が今季初セーブを挙げた。DeNAは得点圏での走塁ミスや凡退が絡むなど、打線が精彩を欠いた。石田が4敗目。

◆阪神梅野隆太郎捕手が能見のタテジマラストゲームに涙を流した。 9回の登板でリード。全12球中、10球がストレートで攻めの配球だった。無死一塁でソトを内角速球で詰まらせ、遊撃併殺に料理。無失点に導くと目は潤んでいた。 2回の第1打席に入る際は能見のテーマソングを用いた。正捕手定着前からバッテリーを組み、ベテラン左腕から多くを学んだ。成長ぶりを示す一戦。完封で今季を締めた。

◆DeNAが好投の大貫を援護できず、4連敗で今季の負け越しが決まった。 試合後に阪神矢野監督から花束を受け取り笑顔を見せたラミレス監督も、5安打で完封負けの内容には「(5回無死)一、三塁から点が取れなかったり(4回無死)神里が二塁打で出たのに取れなかったのが要因だと思う」と険しい表情。今季阪神戦は9勝12敗3引き分けで全日程を終えた。

◆阪神矢野燿大監督(51)が今シーズンの全日程を終え、試合終了後に観客に向けてあいさつした。 マイクの前に立った指揮官は「シーズン始まる前に今年は優勝するぞと言いきってスタートしたシーズンにもかかわらず、優勝を逃し、また巨人にも大きく負け越すという悔しいシーズンになったことに対し、責任を感じております」と率直な思いを語った。 一方で「選手たちはこのコンディション的にもメンタル的にもすごく難しいシーズンの中でバッター陣は一塁までしっかり走りきる姿を見せてくれました。そして投手陣はどれだけ疲れていても苦しい状況でもバッターに向かい腕を振り投げきってくれました。そして試合展開が苦しい状況になればなるほど、ベンチ内で、さあ行くぞ! 逆転するぞ! まだまだこれからや! そういう声を選手たちが出してくれていました。僕はその1つ1つの積み重ねが、この苦しいシーズンでありましたけど、何とか2位で粘れたことだと思っています」と選手たちをたたえた。 今季は2年連続で12球団ワーストとなる85失策を記録。昨季の課題は解消されなかった。 矢野監督は「僕は常々エラーしたあとが大事だ。エラーしたら怖くなる。でも1歩前に出ようぜ! エラーになったら下を向いてしまう。でも顔を上げようぜ! とそういうことを選手たちに伝えてきました。その挑戦をチーム全体として取り組むべき。その姿をみなさんに見てもらったとき、コロナ禍でみなさん自身が苦しまれている中、僕たちの挑戦する姿から、私達も頑張ろう、俺たちも1歩前に出てみよう、私達も踏み出してみようと思ってもらえるようなそういうチームにしていきます」と誓った。

◆86年バース以来の快挙は来季にお預けとなった。阪神大山悠輔内野手は最終戦まで本塁打タイトルに挑戦したが、届かなかった。 1位の巨人岡本を3本差で追い、前日10日から2戦連続の1番で臨んだが2戦連続無安打に終わった。大胆起用でサポートした矢野監督は「来季は(タイトルを)狙って取るところになってくると思う。最後ここまでこられたという自信は、あいつの中で芽生えていると思う」と成長を認めた。 プロ4年目は飛躍の1年となった。開幕は悔しいベンチスタート。三塁マルテの離脱で7月上旬から先発に定着した。116試合に出場して打率2割8分8厘、28本塁打、85打点。4番はチーム最多の66試合で務め、打撃3部門全てでキャリアハイを更新した。指揮官は来季を見据え「近本、大山が引っ張ってくれるチームになっていってくれたら」と、さらなる期待を寄せた。

◆紆余(うよ)曲折だった阪神のシーズンに終止符が打たれた。 吉田 藤浪は自信を取り戻したようですな。際どい球を見極められるとわからないが、DeNAの拙攻に助けられた。抑えは難しいから先発だろう。阪神は開幕の出足でつまずいたのが響いた。普段巨人をほめないが、今年に限っては原監督が1軍から3軍までをつぶさに掌握し、その用兵を生かした戦いぶりにみえました。 対巨人は8勝16敗で9年連続負け越し。数字以上に攻守にチーム力の差を見せつけられた。 吉田 開幕からの戦いをみていると、総合力で勝った巨人に対し、チームを把握する点で、矢野監督はそれが出来なかった。シーズン通して相変わらずミスが積み重なった守備力は徹底して技を磨いてほしい。ボール球を振らない技術も身につけることです。 昨オフは鳥谷、今季限りで福留、能見、藤川らが退団。一方で大山、近本らが成長をみせた。 吉田 阪神は世代交代した。今季の巨人がそうだったが、来季の阪神は芽生えてきた人材をうまく伸ばしながら戦ってほしい。二塁の守備をみていると小幡はショートだろう。選手を育てながら勝つために、トレードも、新外国人も必要だと思います。 将来性豊かなドラフト1位の近大・佐藤輝明(4年=仁川学院)加入をチームの刺激にしたい。 吉田 佐藤は足が速くて長打が魅力とうかがっている。内外野を守れるらしいが、内野なら一塁しかない。大山は苦労して実力で三塁の座をつかんだから競い合うことはないからです。佐藤の守備は見ていないので、正直、今は言及しない。このような年でもファンが球場に足を運んでくれたのは阪神に歴史と伝統があるからです。全員がこの有り難みを胸に刻むことです。チームは決して停滞していない。来年は矢野監督にとって真価が問われるシーズンになる。 【取材・構成=寺尾博和編集委員】

◆阪神が今シーズンの全日程を終えた。 以下、矢野燿大監督(51)の一問一答。 -悔しいシーズンだったと。その中でも選手の頑張りを感じていた もちろんね。両方あるし。頑張れた部分と頑張れなかった、頑張れなかったというか、頑張らせてもらえなかった、相手のあることなので、そういうこともあるし。 -きょうも投手陣が踏ん張った まぁウチの持ち味というかね。こういう試合をどう取るかっていうところで、1-0という一番緊張の場面で能見にバトン渡せたっていうのは。もちろん点取って渡せるのもよかったと思うんだけど。結果的にね。余裕を持って投げるというよりはあの場面で投げたっていう状況の方が、ある意味能見自身、思い切ってさらにいけるっていうものになったんじゃないかな。 -先発の藤浪は来年にどうつなげてほしい 今のまま、もちろんさらに成長していかないといけないとダメな部分はある。状態的には良かったり、悪かったりという感じでもなくなってきたんでね。ある程度、一定したところでやってくれているし。今日のけん制でアウトにしたところもそうだし。今までは自分と勝負してしまうところから、抜け出せないところからしっかり相手と勝負できているしね。シンタロウ自身もしっかり手応えをつかめたシーズンだったと思う。途中ね。中継ぎというところを経験したからこそ、違う野球感が見えた年だったと思うので、また新たなシンタロウが出てくるシーズンで締めくくれたかなと思います。 -5回も粘った いい形で終われたし、もちろんその先を言えば、ピンチを作らないのが最高なわけだけど。でも、あのピンチの場面で三振を狙って取りにいくというところもできたし。素晴らしいピッチングでした。 -近本も良かった まあまあちょっとなかなかみんな自分のポイントで振れてなかったけど。チカが初球やけど見事なバッティングで1点もぎ取ってくれたんでね。まあもちろん3割打てれば良かったっていうのもあるけど、逆にこの悔しさっていうのを来季に向けてもらって。3割や盗塁数、守備でも攻走守で中心になってもらわないと困るんでね。そういう2年目と言われる年をしっかり乗り切ってやれたんでね。油断することなく、さらに上を目指してほしいと思うシーズンになりました。 -大山も本塁打王、打点王争いを経験 来季は狙って取るっていうところになってくると思うし。開幕からいうとちょっと出られない時期もあいつ自身あったし。それを全部プラスに変えたのもユウスケやし。最後ここまでこれたっていうのは自信っていうのはあいつの中で芽生えていると思うし。バッティングの中の内容、レベルも上がったんで。現状、近本、大山っていうのが引っ張っていってくれるチームになっていってくれたらと思っています。 -福留、上本選手も来た まあねえ。簡単に言えるような感じではないけど。でも気持ちを次に向けていると思うんで。そういうところではタイガースで残してくれた多くのこともあるし。お互い、それぞれ頑張る、環境、場所が変わってね。頑張るってこともあるし、そういう話をしました。 -残ったメンバーに引き継いでもらいたい これある意味、毎年、この状況は訪れるんでね。みんなもいつか当事者に。当事者というか、タイガースから離れたり、ユニホームを脱ぐというのはみんなが絶対に通らないと駄目な道なんでね。それをみんなでどう感じるか。また能見なんかは背中で引っ張っていってくれた。そういうもので投手陣に対して、残していってくれたというのもしっかりあるんで。いいものはタイガースの伝統として残していってほしいし。自分もある意味、一生プロ野球選手ではいられないんだという自覚というか、しっかり持ってやっていってもらえると思うんで。たくさんの選手がいろんな部分を残してくれたんで。1つ1つ、個人、個人、またチームとして成長していきます。

◆長年、虎投を支えたポーカーフェースがタテジマ最後のマウンドで力投した。今季限りで退団する阪神能見篤史投手(41)が今季最終戦のDeNA戦(甲子園)に登板。キレのある直球で空振り三振を奪うなど9回を締め、通算2セーブ目。ベテラン左腕が球威のある投球で現役続行をアピールした。代名詞のポーカーフェースは崩さなかった。9回、能見がタテジマ最後のマウンドに上がった。中継ぎでは封印していたワインドアップを披露。「もともと先発でやらしてもらってた。封印してたから、そこは何とかお見せしたいなと」。先頭の細川に中前打を浴びても動揺するそぶりは見せない。続くソトを初球、内角への直球で遊ゴロ併殺。最後は、柴田から渾身(こんしん)の148キロ直球で空振り三振を奪った。 「16年お世話になった球団で、本当に感謝しかないところでの最後のマウンド。楽しめたというか半分ドキドキしながら、1-0で来ると思ってなかったので、両方兼ねそろえて投げてました」 年下の仲間たちがマウンドに集まり、グータッチを求めると、やっと表情を緩めた。勝利を決める通算2セーブ目で最後の仕事を終えた。 グラウンドを1周し、サヨナラのあいさつ。梅野、岩貞、大山...。細身の背中を見てきた後輩たちが目を潤ませた。「なぜか大阪ガスの後輩のチカ(近本)がしっかり打って先輩に回して、とんでもないプレッシャーをかけてくれました。いい巡りあわせもありましたし、本当に球場のファンの方々がそういうのを引き出してくれたのかなと思います」。熱い思いを受け取りながら、能見の目には涙はなかった。 練習の直前にはチームメートから感謝のサプライズ。登場曲GReeeeNの「刹那」が流れ、「NOHMI 14」と書かれたTシャツ姿のチームメートやスタッフが出迎えた。「球児の次やったから、もうバレバレで。逆に先に行ったろと思って。先に行ってみんなを待ち構えようかなと。そんな感じだった」。クールな姿はいつもと変わらない。グラウンドであいさつを促された能見は「またみんなといい勝負が出来たらいいなと思いますので、その時はよろしくお願いします」と、対戦相手として再会することを誓った。 この日、ブルペンのホワイトボードには、手作りの"感謝状"があった。「口数こそ少ないものの、あなたの背中を見て成長している選手もたくさんいます。チームを去ってしまうのは残念ですが、あなたの体は41歳ではなく31歳です。まだまだ出来る」。この日の最速は149キロ。衰えることのないキレのある直球は、現役続行への強い意思表示。「引退じゃないんだから」。ひょうひょうと、そして力強く、新たな道へ歩き出した。【磯綾乃】

◆阪神藤浪晋太郎投手(26)は気迫むき出しの雄たけびで20年を締めくくった。 両チーム無得点の5回無死一、三塁から3者連続三振。「いい形で能見さんまでつなぎたかった」。口元が「シャーッ」と動いた。 長年チームを支えた能見の退団試合。練習では「14番Tシャツ」を着用し、名残惜しそうに先輩と言葉を交わした。「練習に対する姿勢、取り組み方、投手としての考え方で影響を受けた方」。熱い感情が気温10度前後の寒さに勝った。 低重心から最速157キロの直球を低くコースに安定させる。140キロ台のスプリットを振らせる。5回を9奪三振4安打2四球で無失点。中継ぎ13試合を経て先発復帰後、計15回を自責点0でシーズンを終えた。1294日ぶりの甲子園白星を逃しても、価値ある手応えを確信に近づけた。 G党だった小学5年秋、甲子園内野席で阪神リーグ制覇の瞬間に立ち会った。05年9月29日巨人戦の出場メンバーのうち、今季も現役で縦じまを着た選手は藤川だけ。そんなレジェンドも前夜、引退試合を終えた。「技術だったり、すごく引き出しの多い方。すごく影響を受けた」。ナイター後のセレモニーまで見届けた藤浪はこの日、先輩たちへの感謝を白球に乗せた。 昨季限りで鳥谷(現ロッテ)が退団。今季限りで藤川が引退。福留、能見、上本も退団する。一時代が終焉(しゅうえん)を迎え、新時代に突入する。バトンは若い世代に託される。 新型コロナウイルス感染から何度もつまずいた1年。「いいシーズンではなかったですけど、良くなるためのきっかけのシーズンにしたい」。先人たちへの思いも胸に、藤浪は再び未来へ走りだす。【佐井陽介】

◆阪神矢野燿大監督が能見篤史投手ら阪神のユニホームを脱ぐメンバーからのイズム継承を期待した。 「能見は背中で引っ張っていってくれた。そういうもので投手陣に対して、残していってくれたというのもしっかりある。いいものはタイガースの伝統として残していってほしい」。この日は接戦となったことで能見もセーブ機会を得た。「結果的に、余裕を持って投げるよりはあの場面で投げた方が、ある意味、能見自身、思い切ってさらにいけるっていうものになったんじゃないかな」と話していた。

◆今季限りで退団する阪神能見篤史投手(41)が最終戦の9回に登板し、ラストピッチングを飾った。先発の藤浪晋太郎投手(26)ら4投手が無失点リレーでつなぎ、最後の舞台を整えた。   以下、阪神能見の一問一答。   -どんな1日だった そうですね。16年本当にお世話になった球団で、本当に感謝しかないところでの最後のマウンドということで。なんか、楽しめたというか、半分ドキドキしながら、まさか1-0で回ってくると思ってなかったので、その両方を兼ね備えて投げてましたね。   -先発藤浪から始まりいい流れで回ってきた。後輩たちのピッチングはどう感じたか 頼もしくて見てるだけだったんで、その後行ってくれた馬場もそうですし、(伊藤)和雄もそうですし、もちろんサダ(岩貞)もそうですけど、なんとかつないでくれて。8回にまさか点を取ってくれるという最高のところで、緊張感はすごい増しました。   -今日の投球を振り返って 感謝の思いっていうところで、ファンの方もそうですし、もちろん球団もそうですし、そういう思いを心にしまいながら、なんとかいい姿で最後お見せしようと思って、そんな感じで上がりました。   -ワイドアップで投げた それはもう決めてたんで。恩返しというか、もともとね、テレビとか、映る姿もそこをアップにして撮ってくれたりとかっていうのもね、すごくあって、なんとかそれを実現しようと思って。9回って決まってたので、そういう意味ではランナーいないところで投げられる。   -最速149キロだった ちょっと先頭出てヒヤヒヤしたんですけど、なんとか運良くゲッツーになったので、もう1度ワインドアップできるなということで最後は楽しませてもらいました。   -試合も勝って終わった。その瞬間は うーん。そうですね、終わったなっていう感じもあんまりしてなくて。ちょっと休んで練習出るんかなみたいなそんな感じやったんですけど、これからちょっとね、そういったのも徐々に感じてくるんだと思います。本当にファンの方もそうですし、やっぱり感謝しかないなと思います。   -梅野や岩貞の目が潤んでいるようにも見えた いや、まさか大山まで泣いてるとは思わなかった(笑い)。梅野もマウンド来た時からもう泣いてたので、うれしいなと思いながら。   -その後にグラウンド1周 退団という形なのに、そうやっていい雰囲気で場所を作ってくれたのでありがたかった。   -阪神での16年間を振り返って 苦しい時の方が多いんですけど、それでも16年間出来たというのはなかなか想像してなかったですし、その中でもファンの方の力であったりとかは、非常に力になったというのはあった。16年間でいろんなキャッチャーに受けてもらったんで、それはなかなか出来ないことだなと思って。長くしないといろんなキャッチャーに受けてもらえない。一番の財産かなと。   -最後直球で三振。未来につながる直球ととらえていいか 僕はそのつもりで投げたんですけど。フォークで空振りをとろうと思っていたんですけど、バットにしっかり当てられてたんで。結果的に良かったです。   -まだ投げ続けたいと思ったか。 はい。見ての通り元気なので。まだまだもう少し納得いくところまでやりたい。   -チーム最年長として若い投手に伝えたいことは 悔いなくやってもらうのが一番ですし、16年間お世話になりましたけど、短いもので、しっかりと戦力になってる間ってすぐ終わってしまうので、1日1日を悔いなくやってほしいなと思います。   -チームメートが試合前に能見Tシャツを着たり、記念撮影があったり 球児の次やったから、もうバレバレで。逆に先に行ったろと思って。先に行ってみんなを待ち構えようかなと。そんな感じだったので。   -嫌がっていた抑えのマウンド 抑えちゃう。たまたま。まあ、まさかのそういうところで回してもらえるとは。   -舞台が用意されたのも運命では  どうなんですかね。まあでも、こういう巡り合わせで。なぜか大阪ガスの後輩のチカ(近本)がしっかり打って先輩に回して、とんでもないプレッシャーをかけてくれました。いい巡り合わせもありましたし、本当に球場のファンの方々がそういうのを引き出してくれたのかなと思います。   -岩貞にウイニングボールを渡した 「サダが7勝目なので、ちゃんと渡そうと思ったら、1回拒否られたので。僕のために取っておいてください、という感じだったので。   -結局渡せたのか はい。僕の意志とともに。   (最後に) 引退じゃないんだから。

◆宿敵巨人に離され、優勝できなかった現実を、マイクの前に立った阪神矢野燿大監督(51)が謝罪した。 「シーズン始まる前に今年は優勝するぞと言いきってスタートしたにもかかわらず、優勝を逃し、また巨人にも大きく負け越すという悔しいシーズンになったことに対し、責任を感じております」 1試合を残す巨人とは8ゲーム差。直接対決では8勝16敗と負け越した。日本一をうたったが、15年ぶりのリーグVはならなかった。悔しさが募らないはずがない。今季最終戦後のセレモニーの冒頭、その悔しさを言葉にした。 一方で光も差し込んだシーズンだった。今季ラストゲームは自慢の投手陣がゼロをつないで完封勝利。タイトな試合を制し、今季60勝目。順位は昨年の3位から2位に上がり、貯金も19年の「1」から「7」に増えた。指揮官は続けた。 「選手はコンディション的にもメンタル的にも難しいシーズンで、打者陣は一塁まで走りきる姿を見せてくれました。投手陣はどれだけ疲れていても苦しい状況でも打者に向かい腕を振り、投げきってくれました。試合展開が苦しい状況になればなるほど、ベンチ内で声を選手たちが出してくれていました。その積み重ねがこの苦しいシーズン、何とか2位で粘れたことだと思っています」 もちろん課題はある。チーム85失策は両リーグ最多。課題をクリアし、就任3年目の来季、悲願Vへと向かってみせる。 「目指しているところは2位ではありません。その先に行くために必要なことは僕は「挑戦」だと思っています。今シーズンもチームの課題として残ったエラー。それに対しても僕は常々エラーした後が大事だ。エラーしたら怖くなる。でも1歩前に出ようぜ! 顔を上げようぜ! と選手たちに伝えてきました。その挑戦をチーム全体として取り組む。その姿をみなさんに見てもらったとき、コロナ禍でみなさんが苦しまれている中、僕たちの挑戦する姿から、私たちも頑張ろう、俺たちも1歩前に出てみよう、私たちも踏み出してみようと思ってもらえるような、そういうチームにしていきます」 21年シーズンへの「挑戦」はすでに始まっている。【松井周治】

◆復活を期すエースが鮮やかなけん制でピンチを脱出した。  阪神の先発・藤浪晋太郎投手(26)は四回、先頭の神里に左翼へ二塁打を浴びた。続く4番・細川の打席で、フルカウントから一瞬の隙をつき、二塁へけん制。飛び出していた二走・神里は戻り切れず、タッチアウトとなりピンチを脱出した。  藤浪は細川を空振り三振、ソトを三ゴロに仕留め、四回まで2安打無失点。2017年4月27日のDeNA戦以来となる甲子園での勝ち星へ好投を続けている。

◆先発した阪神・藤浪晋太郎投手(26)が、5回4安打無失点と好投した。  「(低い)気温など難しいコンディションもありましたが、粘ることができた。なんとか能見さんまでいい形でつなぎたいと思っていたので、そういう意味では0点で抑えることができてよかった」  四回は先頭の神里に二塁打を浴びるも、あざやかなけん制でタッチアウトに仕留めピンチを脱出。続く五回も先頭の柴田に二塁打を許したが、大貫は3バント失敗に追い込み、宮本、大和と3者連続三振で切り抜けた。2017年4月27日のDeNA戦以来、1294日ぶりの甲子園での勝ち星は持ち越しとなったが、来季へつながる内容をみせた。  この日は退団が決まっている能見篤史投手(41)の阪神での最後の試合。復活を期す男が虎を去る左腕へつないだ。

◆今季限りでの退団が決まっている阪神・能見篤史投手(41)が1-0の九回から登板。タテジマ最後のマウンドに立った。  登場曲の「刹那」(GReeeen)が場内に流れると、歓声と大きな拍手が送られた。先頭の細川には148キロを中前にはじき返されたが、続くソトを148キロで注文通りの遊ゴロ併殺。最後は柴田を148キロで空振り三振に仕留めた。阪神最後のマウンドでプロ通算2セーブ目。タテジマ最後の雄姿をファンへ届けた。

◆阪神が今季最終戦を勝利で終えた。この日は、今季限りでの退団が決まっている能見の阪神で最後の一戦。虎一筋16年のベテランに、チーム一丸となって、花道をつくった。  先発の藤浪は5回4安打無失点と好投。中継ぎ陣も0封リレーでつなぐと、打線は八回無死二塁から、近本が右翼線へ三塁打を放ち、先制点を挙げた。  1-0で迎えた九回。能見がマウンドへ。先頭の細川に中前打を浴びるも、続くソトを遊ゴロ併殺。最後は柴田を148キロ直球で空振り三振に仕留め、プロ通算2セーブ目を挙げた。タテジマ最後のマウンドを有終の美で飾った。  阪神は今季120試合を60勝53敗7分けのリーグ2位でシーズンを終えた

◆DeNAは0-0の八回、先頭の木浪の中飛を神里が痛恨の落球。続く近本に決勝の適時三塁打を許した。チーム最多10勝の先発、大貫が7回無失点の好投も援護できず。チームは広島が敗れたため4位が確定したが、目標としていた勝率5割到達の可能性が消滅した。以下、ラミレス監督の一問一答。  --先発の大貫が好投  「素晴らしかった。今年はずっと自信を持って投げることができている。非常に素晴らしい仕事をしてくれた」  --今年1年間の成長  「最初に比べて、メンタル的にすごく安定した。それは自信をつけていったからこそ。彼の球種の使い方は素晴らしいので、来年も今年以上に安定した投球を見せてくれると思う」  --五回に大山を申告敬遠  「うちに対して(打率)4割以上打っているので、もちろん、そこは勝つために避けて、次の打者で勝負した」  --スタメン抜てきの宮本、細川が3三振  「きょうは若い選手が出て、結果は出なかった。もちろん機会を与えたときに必ず打つわけではないので、それは仕方ない。四回に神里が先頭で出て点が取れなかったり、五回に無死一、三塁で得点できなかったところがポイントだった」  --目標の勝率5割逃したが  「最後の5試合を見るとロード4試合ホーム1試合、簡単にはいかないと思っていたが、その通りになってしまった。ただ、成績的にもホームの方がいい。終わってしまったことは切り替えて、(14日の)ホームで最後の試合はベストを尽くして勝って、素晴らしい勝利をファンの方にささげたい」

◆阪神が今季最終戦を勝利で終えた。120試合を60勝53敗7分けのリーグ2位でシーズンを終えた。試合後、球場でファンに対しての矢野燿大監督のあいさつを全文掲載する。みなさん、今シーズンも1年間応援どうもありがとうございました。  シーズンが始まる前にことしは優勝すると言い切ってスタートとしたシーズンにもかかわらず優勝を逃し、また巨人にも大きく負け越すという悔しいシーズンになったことに対し、責任を感じております。  ただ一方で、選手たちはコンディション的にも、メンタル的にもすごく難しいシーズンの中で、バッター陣は一塁までしっかり走りきる姿を見せてくれました。そして投手陣はどんなに疲れて苦しい状況でも、バッターに向かい腕を振り、投げ切ってくれました。  そして試合展開が苦しい状況になればなるほど、ベンチ内で『さあいくぞ』『逆転するぞ』『まだまだここからや』。そういう声を選手たちが出してくれました。その1つ1つの積み重ねがこの苦しいシーズンではありましたけど、何とか2位で粘れたと思っています。  ただ僕たちが目指しているところは2位ではありません。その先に行くために必要なことは、僕は挑戦だと思っています。  今シーズンもチームの課題として残ったエラー。それに対しても僕は常々、エラーをした後が大事だと。エラーしたら怖くなる、でも一歩前に出る。エラーしたら下を向いてしまう。でも顔上げようぜ。そういうことを選手たちにも伝えてきました。この秋からその挑戦をチーム全体として取り組んでいき、その姿をみてもらったときに、コロナ禍で皆さんが苦しまれてる中、僕たちの挑戦してる姿から『僕たちもがんばろう』『俺たちも一歩前に出てみよう』『私たちも踏み出してみよう』。そう思ってもらえるような、そういうチームにしていきます。まだまだタイガースは発展途上の未熟なチームです。さらにここから成長していくためにも、みなさんの力が必要です。ともに挑戦し、ともに強いチームを作っていく力を、これからもどうぞよろしくお願いします。今シーズン1年間、ありがとうございました。

◆DeNAは最後まで本塁が遠く、1試合を残して2年ぶりのシーズン負け越しと4位が確定。就任5年目の今季で退任するラミレス監督の通算成績も335勝337敗19分けとなり、勝率5割以下が決まった。  主力打者の大半を欠く布陣ながら、ピンチで大山を申告敬遠するなど勝利への執念を示し続けた。今季最後の5試合のうち「ロードが4試合。簡単にいかないと思っていた」と苦笑い。試合後は矢野監督から花束を受け取り、阪神ファンからの拍手に笑顔で応えた。

◆気温10度。晩秋の甲子園で毎回の奪三振ショーを披露した。今季最終戦に先発した阪神・藤浪が、DeNA打線を零封。気迫あふれる投球で、虎党からの大拍手に応えた。  「気温など難しいコンディションもありましたが、粘ることができたと思います。なんとか能見さんまでいい形でつなぎたいと思っていたので、そういう意味では0点で抑えることができてよかったです」  最大のピンチは五回だ。先頭の柴田に直球を右中間へはじき返されると、続く中井には投手強襲の内野安打で一、三塁。ここから粘った。投手・大貫はバント失敗の三振、戸柱もフォークで空振り三振。最後は宮本を内角への152キロで見逃し三振に仕留めて、ホームを踏ませなかった。  今季先発では10試合に登板し、1勝5敗、防御率4・82。甲子園で勝利を挙げれば、2017年4月27日のDeNA戦以来1294日ぶりで、白星も8月21日のヤクルト戦(神宮)以来、3カ月ぶりだった。五回1死二塁で代打を送られて、交代。得点は入らず、勝ち投手の権利を得ることはできなかった。5回4安打無失点、9奪三振で2020年を締めくくった。  1月には「勝負の年ですし、あとがないつもりで(やる)。毎年そうですけど結果、数字を出すしかない」と誓って始まった1年。3月に新型コロナウイルスに感染、5月には遅刻による2軍降格、6月は右胸のけが...。9月のチームのコロナ禍では中継ぎに配置転換されるなど、何度も苦難や試練にぶつかりながら、上がった今年最後のマウンド。来季につながる投球をみせたが、白星には恵まれなかった。

◆今季限りで阪神を退団する能見が1-0の九回に登板した。最後は空振り三振で締め、プロ2セーブ目。2018年途中からは中継ぎを主戦場とし、封印していたダイナミックなワインドアップから最速149キロの直球でどんどん押した。「最後は楽しませてもらった。いい姿を最後にお見せしようと上がった」と晴れやかに笑った。  チーム投手陣最年長の41歳。優しい人柄で誰からも慕われていただけに、梅野や大山が別れに涙を流した。16年間で104勝を挙げた阪神では来季戦力構想から外れたが、まだ力は健在で「見ての通り、元気。納得できるまでやりたい」と意欲も衰えていない。

◆阪神はシーズン最終戦を勝利し、貯金7の2位で2020年シーズンを終了。以下、矢野燿大監督(51)の一問一答。  --悔しいシーズンだった。その中でも選手の頑張りを感じていた  「もちろんね。両方あるし。頑張れた部分と頑張れなかったというか、頑張らせてもらえなかった。相手のあることなので、そういうこともあるし」  --きょうも投手陣が踏ん張った  「うちの持ち味というかね。こういう試合をどうとるかっていうところで、1-0という一番緊張の場面で(退団する)能見にバトン渡せたっていうのは。もちろん点とって渡せるのもよかったと思うんだけど。結果的にね。余裕を持って投げるというよりはあの場面で投げたっていう状況の方が、ある意味能見自身、思い切ってさらにいけるっていうものになったんじゃないかな」  --先発の藤浪は来年にどうつなげて欲しい  「今のままもちろんさらに成長していかないといけない部分はあるけども。状態的には良かったり、悪かったりという感じでもなくなってきたんでね。ある程度、一定したところでやれてるし。今日のけん制でアウトにしたところもそうだし。今までは自分と勝負してしまうところから、抜け出せないところからしっかり相手と勝負できているし。晋太郎自身もしっかり手応えをつかめたシーズンだったと思うし、途中ね。中継ぎというところを経験したからこそ、また違う野球観が見えた年だったと思うので、また新たな晋太郎が出てきてくれるんじゃないかなっていうシーズンで締めくくれたかなと思います」

◆2試合連続で「1番・三塁」で出場した大山は3打数無安打に終わり、球団では1986年のバース以来、日本人では84年の掛布雅之以来の本塁打王を逃した。  試合前の時点でリーグトップに立つ巨人・岡本とは3本差だったため、1試合3発がタイトル獲得の最低条件だったが、一、三回は三振に倒れるなど、アーチをかけることはできなかった。  矢野監督は「来季は狙って(タイトルを)獲るというところになってくると思う。最後、ここまで来れて、自信があいつの中で芽生えていると思うし。バッティングの内容、レベルも上がった」と評価し「現状、近本、大山が引っ張っていくチームになっていってくれたらと思っています」と来季も近本とともにリーダーとしての役割を期待した。

◆飛躍のシーズンを快投で締めくくった。DeNA・大貫晋一投手(26)が今季最終登板で7回4安打無失点、9奪三振。チームトップの10勝(6敗)、規定投球回未到達だがリーグ5位に相当する防御率2・53をマークした。  7月10日に2被弾で1回3失点KOされて以来の阪神戦登板。「やり返したい気持ちが強かった」と、同じ甲子園で、今度は持ち味の打たせて取る投球を展開した。7回を99球でまとめ「自分の持ち球をコントロールでき、うまくコーナーを突く投球ができた」とうなずいた。  広島が敗れたため、チームは4位が確定。今季、成長を遂げた2年目右腕に、ラミレス監督は「メンタルが安定した。来年も今年以上に安定した投球を見せてくれる」と期待を込めた。(浜浦日向)

◆去り行く先輩の花道をバットで彩った。白球が右翼線を転々とする間に虎の韋駄天は一気に三塁まで駆ける。激動の2020年シーズン。最後は近本が勝利を決めた。  「順位とかは決まっていたんですけど、しっかり来年に向けて課題とかも考えながら。試合も勝ててよかった」  0-0の八回無死二塁。「前の対戦はスライダーでやられていた。捕手も一緒だったし、スライダーで入ってくるかなと思った」と石田の初球を狙いすました。この日は大阪ガスの先輩でもある能見の虎ラストゲーム。勝った試合で送り出してあげたい-。惜別の思いを込めた一打に、ベンチに向かって右手を挙げた。  「調整するのが本当に難しかった」  新型コロナウイルスの影響で異例の日程となった今季、序盤は不振に苦しんだ。「いろんな挑戦はしてみたんですけど、試合でしか結果は分からない。そういうところの難しさはいい勉強になった」。持ち前の探求心で試行錯誤を繰り返し、復調の兆しをつかむと、成績はV字回復。3割に惜しくも届かなかったが、打率は昨年(・271)を上回る・293。31盗塁をマークし、2年連続の盗塁王は決定的となった。  「調子の波というのをいかに高いところで維持できるかが大事だと思う。来年もしっかり、今年学んだことをやっていきたい」  2年目のジンクスを見事にはね返した2020年。不動のリードオフマンは来季も打って、走って、猛虎打線の先頭に立つ。(原田遼太郎)

◆藤浪は5回4安打無失点と好投。援護がなく、最終戦で1294日ぶりの甲子園での白星をつかむことはできなかったが「能見さんにいい形でつなげられてよかった」と笑顔で語った。入団1年目からプロとしてのイロハを教わった能見について「練習に対する姿勢や投手としての考え方、そういうところで影響を受けた方。本当に感謝しています」と語った。自身も開幕前に新型コロナウイルスに感染した今季を振り返り「いいシーズンだったわけではないけど、来年以降、よくなるためのきっかけにしたい」と力を込めた。

◆阪神はDeNAとの今季最終戦(甲子園)を1-0で制し、白星で新型コロナウイルスで揺れた激動の2020年シーズンを締めくくった。  大歓声の中で登場した能見は、職場に到着して勝負師の面を崩した。矢野監督に肩をたたかれ、梅野と楽しむように会話を交わした後はいつもの顔。エースとして躍動した頃のように大きく、ゆっくり振りかぶった。  「ワインドアップは、もともと先発でやらせてもらっていたので。(中継ぎで)封印していたから。何とかお見せしたいなと。恩返しというか。そういう代名詞も浸透していたので、なんとか実現しようと思って」  16年間を表現した。無死一塁でソトを遊ゴロ併殺。2死から柴田に外角の148キロを続けて追い込んだ。3球目は今季最速タイの149キロ。伝家の宝刀・フォークも投じて、最後は高めの148キロで通算1496個目の三振を奪った。タテジマ最後の12球。プロ2個目のセーブがついた。  「お世話になった球団で、本当に感謝しかないところでの最後のマウンド。楽しめたというか、半分ドキドキしながら」  セレモニーの後は「能見コール」で、場内を一周した。何度も立ち止まり、深々と頭を下げた。「ありがとうございましたという感情だけ」。5度の2桁勝利で104勝を挙げ、巨人戦も球団タイ記録の8連勝を含む22勝。紛れもなく、一時代を築いたエースだった。 その他の写真(2/3枚)  春季キャンプはチームで唯一人、初日から5日連続でブルペンに入った。若手時代と同じ。オール直球で100球、150球...。全盛期に語った最大の持ち味は「腕が振れること」。徹底的に体にたたき込んできたしなやかなフォームで、ファンを魅了した。  ただ、代名詞のポーカーフェースは天性ではない。「相手に感情を悟られないように。プロに入ってから意識していたらできるようになった」。開花前は2軍で無敵、1軍では力み過ぎの別人。当時2軍コーチを務めた星野伸之氏(本紙専属評論家)は「技術よりもメンタル。能見が2人いるような、よそ行きの投球だった」と振り返る。  いつもクールに-。最初からできたことではない。構想外を告げられたが、試練を乗り越えてきた男がすぐに出した結論に迷いはなかった。  「見ての通り元気なので。まだまだもう少し、納得いくところまでやりたい」  443試合目の登板。決して「別人」とは呼ばせない姿を披露した背番号14の野球人生は続く。(安藤理) ★後輩涙に「予想外」  能見はウイニングボールを岩貞に差し出した。「7勝目なので渡そうと思ったら、拒否られた。『とっておいてください』という感じで」と苦笑いも、最後は渡した。梅野や大山の涙に「予想外。梅野もマウンドに来たときからもう泣いていた。うれしいな」と感激。後輩らに「戦力になっている間って、すぐ終わってしまう。1日1日を悔いなくやってほしい」とエールを送った。 ★試合前セレモニー  試合前にはセレモニーが行われ、登場曲であるGReeeenの「刹那」が流れる中、グラウンドに登場。チームメートへ別れのあいさつをした。「みんなで(プレーが)できたことは誇りに思います。またみんなといい勝負ができたらいいなと思います」。また、後輩たちに対しては「時代は流れていくと思いますので、悔いなく、自分のできることを全うして、がんばってほしい」とメッセージを送った。その後、選手、スタッフとともにおそろいのTシャツを着用し、記念撮影を行った。 ★オリックスが調査  能見について、オリックスが調査を進めていることが判明した。球界でも貴重な中継ぎの左腕。来季は42歳シーズンを迎えるが、体調に不安はなく、この日の登板で披露したように直球のキレにも衰えはない。他にも複数の球団が獲得に乗り出す可能性がある。

◆阪神はDeNAとの今季最終戦(甲子園)を1-0で制し、白星で新型コロナウイルスで揺れた激動の2020年シーズンを締めくくった。2位とはいえ、優勝した巨人にはこの日の時点で8ゲーム差をつけられる完敗に、矢野燿大監督(51)は改めてVへ向けて「挑戦」を掲げた。12日に藤原崇起オーナー(68)にシーズン終了の報告を行い、正式に続投が決まる運びだ。  気温11度と冷えた甲子園に、矢野監督が熱い言葉を響かせた。新型コロナウイルスに揺れた異例のシーズンは、DeNAに勝って白星締め。悔しさと手応えを胸に、3年目へと向かう。  「まだまだタイガースは発展途上の未熟なチーム。さらにここから成長していくためにも、みなさんの力が必要です。ともに挑戦し、ともに強いチームを作っていく力を、これからもどうぞよろしくお願いします」  内野に並んだ選手たちを背に、2万1048人へ力強くスピーチした。きょう12日にシーズン終了の報告を藤原オーナーに行い、そこで正式に続投要請&受諾となる運び。だが、ひと足先に、虎党に来季への思いをどうしても伝えたかった。  「シーズンが始まる前に『今年は優勝する』と言い切ってスタートしたにもかかわらず優勝を逃し、巨人にも大きく負け越すという悔しいシーズンになったことに対し、責任を感じております」  昨年の「貯金1の3位」から「貯金7の2位」と成績を伸ばしたものの、悔しさがあふれるシーズンとなった。  「僕たちが目指しているところは、2位ではありません。その先に行くために必要なことは、挑戦だと思っています」  1月にはテレビ番組で「日本一になりました!!」と"予祝"し、コロナ禍で3カ月遅れとなった開幕前には「俺らが頑張ることで勇気づけられる人がたくさんいる」と気合を込めて臨んだ。しかし、巨人に8勝16敗と大きく負け越し、独走での優勝を許した。チーム失策数は昨年の102より減ったが、相変わらず12球団ワーストの85。3月と9月には、藤浪らチームからコロナ感染者を出し、世間を騒がせた。  一方で収穫もあった。高卒2年目の小幡を抜てき。不振の糸井よりも陽川を積極的に起用し、高卒ルーキーの井上にも1軍を経験させた。近本は2年目のジンクスを打破する活躍で、大山は本塁打王を争うまでに成長。投手陣では馬場を勝ちパターンで投入するなど世代交代は着実に進んだ。  藤川が引退し、福留、能見、上本と虎を支えたベテランが去る。「たくさんの選手がいろんな部分を残してくれた。チームとして成長していけるものにしていきます」。コーチ陣の組閣にもすでに着手。準備は着々と進みつつある。  「コロナ禍でみなさんが苦しまれている中、僕たちの挑戦している姿から『僕たちもがんばろう』『俺たちも一歩前に出てみよう』『私たちも踏み出してみよう』、そう思ってもらえるような、そういうチームにしていきます」  激動のシーズンを走り切った。来季は正念場となる3年契約3年目。15日から秋季練習をスタートさせる。わずかな休息を経て、また走り出す。(大石豊佳)

◆貯金7、2位。「頑張った」と評価する方がいるだろう。でも、巨人に一方的に負け越した。優勝候補に挙げていただけに、全く納得できないシーズンだ。  巨人との差は、監督の差だった。原監督が、高いレベルの選手でさえスタメンを外して、高いレベルの競争をあおったのに対して、阪神は調子が落ちたから次の選手が登場するという、仕方のない競争だった。  成績が低迷したときの矢野監督の暗さも気になった。監督というのは、エネルギーを選手に与えるのも仕事。原監督とは対照的だった。  調子が落ちた選手の状態を戻すのに時間がかかりすぎたコーチ陣にも苦言を呈したい。  この日好投した藤浪。早い段階からリリーフ調整を提言していたが、対応が遅れた。もっと早めに動いていれば、シーズン中にもっと勝てた。  ボーア、サンズが調子を落としたときも、誰も直してあげられなかった。普通、1カ月もあれば復調するのに、それができなかった。  いろんな反省点を肝に銘じて、来季の巻き返しを期待したい。(本紙専属評論家)

◆虎の2020年のシーズンが終わった。60勝53敗7分け。今季の2位はオレ的には内容の濃いモノだったのだー。  (1)大山はホームラン王を逃したが、虎の4番打者に成長した!  (2)最終的に3割打者には届かなかったけど、近本が2年目のジンクスをはねのけ、新人だった昨年から2年連続の盗塁王。すげー、すげー!!  (3)大エース候補の藤浪がリリーフの1イニングで何かをつかみ、来シーズンは夢の最多勝...。ムフフ...待ちきれんわー!!  一方、前日は藤川球児の大々的な引退試合があったけど...、阪神一筋の41歳、能見篤史投手の虎ラストマウンドに涙ポロポロやー!!  ほとんどの投手がコントロールを考えたりでノーワインドアップで投げる時代に両手を高々とあげるワインドアップでの真っ向勝負! ノーミさん、貴方はステキやったでー!!

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
巨人
67448 0.604
(-)
優勝
(-)
1528
(-)
416
(-)
135
(-)
80
(-)
0.255
(-)
3.330
(-)
2
(-)
阪神
60537 0.531
(↑0.004)
8
(↑0.5)
0494
(+1)
460
(-)
110
(-)
80
(-)
0.246
(↓0.001)
3.350
(↑0.03)
3
(-)
中日
60555 0.522
(↑0.004)
9
(↑0.5)
0429
(+3)
489
(+2)
70
(-)
33
(-)
0.252
(-)
3.840
(↑0.01)
4
(-)
DeNA
55586 0.487
(↓0.004)
13
(↓0.5)
1511
(-)
470
(+1)
135
(-)
30
(-)
0.266
(-)
3.780
(↑0.03)
5
(-)
広島
525612 0.481
(↓0.005)
13.5
(↓0.5)
0523
(+2)
529
(+3)
110
(-)
64
(-)
0.262
(↓0.001)
4.060
(↑0.01)
6
(-)
ヤクルト
416910 0.373
(-)
25.5
(-)
0468
(-)
589
(-)
114
(-)
74
(-)
0.242
(-)
4.610
(-)