広島(4対4)阪神 =リーグ戦18回戦(2020.10.06)・MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島=
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阪神
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広島
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勝利投手:-
敗戦投手:-

本塁打
【広島】大盛 穂(2号・7回裏ソロ)

  DAZN
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◆広島は1-1で迎えた7回裏、代打・大盛のソロと松山の適時打で勝ち越す。一方の阪神は、直後の8回に2死満塁の好機から代打・原口が2点適時打を放ち、試合を振り出しに戻した。その後試合は延長に突入するも両軍ともに得点を取り合って決着は付かず、規定により引き分けに終わった。

◆両チームのスタメンが発表された。先発は阪神が青柳晃洋投手(26)、広島が九里亜蓮投手(29)。阪神近本は19年9月19日のヤクルト戦以来、約1年ぶり2度目となる3番でスタメン。現在5試合連続安打中で、打率は今季最高の2割9分6厘だ。得点圏打率もリーグ8位タイの3割3分3厘と勝負強い。また、高卒2年目の小幡をプロ初の1番に起用した。矢野阪神が打線改造で2連勝なるか。

◆阪神青柳晃洋投手(26)に一瞬ひやりとするアクシデントが起こった。 3回2死一塁、鈴木誠のライナー性の打球が青柳の左膝上部付近を直撃。打球はそのまま右翼へ飛び、一塁走者の田中広が生還した。 青柳は1度治療のためベンチに下がるも、再びマウンドに戻り続投。その後は松山を二ゴロに抑えた。青柳は笑顔も見せており、大事には至らなかった様子だ。

◆広島田中広輔内野手(31)が激走で先制点をもぎ取った。 3回裏2死から四球を選んで出塁。2死一塁となり、3番鈴木誠也外野手(26)の強烈なセンター返しがまさかの形で二塁打となった。 ライナーは投手青柳の左膝付近を直撃した後、一、二塁間を抜いて右翼線方面へ転がる。一塁走者の田中広は迷わず三塁ベースも蹴り、俊足を効かせてホームインした。 鈴木誠は「広輔さんがよく走ってくれて、先制点になって良かったです」と先輩に感謝した。

◆阪神ジャスティン・ボーア内野手(32)が、来日最長となる19打席無安打。期待の助っ人が苦しんでいる。 「7番一塁」で2試合ぶりにスタメン出場。広島九里に対し、第1打席はツーシームに空振り三振、第2打席は内角直球に見逃し三振に終わった。 ボーアは開幕から18打席安打が出なかった。19打席目で来日初安打を放ったが、そのブランクをついに超えた。また、「5番左翼」で2試合ぶりにスタメンのジェリー・サンズ外野手(33)も、来日最長となる26打席無安打中。チーム浮沈のカギを握るBS砲の復調が待たれる。

◆広島ドラフト2位の宇草孔基外野手(23)がプロ初出場初スタメンで初安打を放った。 この日初めて出場選手登録され、1番左翼で即先発。青柳の前に1、2打席は凡退したが、5回2死からの3打席目に左中間二塁打を決めた。 フルカウントから真ん中に入った141キロツーシームをミートし、プロ初長打まで記録した。 1点リードの7回1死からは四球を選び、二盗でプロ初盗塁を記録。4番松山の適時打でプロ初得点もマークした。 プロ1年目の今季はウエスタン・リーグ54試合出場で打率2割8分1厘、2本塁打、11盗塁。2軍でアピールを続けていた。

◆阪神が相手の失策も絡んで同点に追いついた。 1点ビハインドの6回先頭、プロ初の1番に起用された小幡が遊撃への内野安打で出塁。1死二塁となり、3番近本はフルカウントから広島九里の直球を引っ張った。打球は一塁手松山の正面だったが、イレギュラーもあって後逸。打球は右翼へ抜けていき、二塁走者の小幡が生還した。 その後は4番大山が左前打。1死一、二塁とチャンスを拡大したが、5番サンズが空振り三振、6番糸井は二ゴロで勝ち越しとはならなかった。

◆阪神青柳晃洋投手(26)が6回6安打1失点でマウンドを降りた。「ここ数試合立ち上がりに課題がありましたが、今日は丁寧に投げることができましたし、何とかゲームを作ることができました」。同点のまま降板し7勝目はならなかったが、初回から丁寧な投球で広島九里と投手戦を繰り広げた。 0-0の3回2死一塁、鈴木誠のライナー性の打球が青柳の左膝上部付近を直撃。打球が右翼へ飛んだ間に一塁走者の田中広が生還し、先制を許した。不運なアクシデントとなったが、青柳は動じずに続投。5回2死一、三塁の場面では、2安打を放っていた鈴木誠を外いっぱいの直球で見逃し三振。1度もバットを振らせずにピンチを脱した。敵失で追いついた直後の6回は、先頭の松山に中前打を浴びるも、後続3人を打ち取り無失点。直後の7回表の攻撃で代打を送られ降板した。 前回9月30日中日戦(甲子園)では5回9安打5四球と乱れ、自己ワースト8失点(自責7)で7敗目。中5日で迎えたマウンドで汚名を返上した。

◆来日最長となる19打席無安打中だった阪神ジャスティン・ボーア内野手(32)が、20打席目で久々の安打を放った。 「7番一塁」で2試合ぶりにスタメン出場。7回先頭の打席で、広島九里の外角ツーシームを右前に運んだ。第1打席はツーシームに空振り三振、第2打席は内角直球に見逃し三振に終わっていた。 ボーアは開幕から18打席安打が出なかった。19打席目で来日初安打を放ったが、そのブランクを超えていた。 しかし「5番左翼」で2試合ぶりにスタメンのジェリー・サンズ外野手(33)は、来日最長となる27打席無安打中。8月下旬から40試合で4番を務めていた助っ人の状態が気になる。

◆阪神が原口文仁捕手(28)の執念適時打で、試合を振り出しに戻した。 1-3の8回。3四球でつないできた2死満塁で、広島ケムナの内角高め直球を引っ張った。打球は三塁手三好の正面を突いたが、三好はグラブに収めることができず左前へ転がり、2人の走者が生還した。球場の電光掲示板には「H」ランプがともった。原口は「青柳も頑張っていましたし、何とかしたい場面で運も味方をしてくれました。追いつくことができて良かったです」とコメントした。

◆阪神ジャスティン・ボーア内野手が20打席ぶり、10月になって初安打をマークした。 7回に先頭で九里の外角ツーシームをとらえ、ライナーで右前へ。9月30日中日戦を最後に安打がなく、不振が長引いて前日5日巨人戦を欠場。「7番一塁」で先発して空振り三振、見逃し三振と苦戦したが、第3打席でようやく快音を発した。前夜は矢野監督が「ボーアがあまり調子がよくない」と心配しただけに、調子を上げていきたいところだ。

◆阪神のベテラン桑原謙太朗投手が痛恨被弾した。 同点の7回に登板。1死後、代打大盛にカットボール系をすくわれて右翼に勝ち越しソロ。さらに2四球を与えてピンチに陥ると、松山に外角速球をとらえられて左前適時打を許して2失点した。9月26日ヤクルト戦(神宮)以来の登板で結果を残せず。今季6戦で防御率は6・75に悪化した。

◆阪神のポイントゲッターのジェリー・サンズ外野手が低調から抜け出せない。 前日5日巨人戦の休養をへて、5番左翼で先発。2四球で出塁したが、空振り三振が2度あった。6回は1死一、二塁の勝ち越し機で九里の低めツーシームに空を切った。 28打席連続無安打に延びたが、井上打撃コーチは「疲れもあると思う。相手もいろいろ考える。内面、体力的に落ちているけど、アイツの力はそんなものじゃない」と話した。交代後、4日巨人戦の死球を受けた左手をアイシング治療した。

◆阪神熊谷敬宥内野手(24)が、延長10回に勝ち越し打を放った。 3-3のまま今季7度目の延長戦へ。先頭大山が四球で出塁し、その後1死三塁とチャンスを作った。8回に代走から出場した熊谷は、自身の第1打席で広島塹江の直球を強振。打球は前進守備の二遊間を抜けて中前に転がった。この試合初めて阪神がリードした。 9回にリリーフ登板した藤浪は1回を無失点。このまま逃げ切れば、藤浪が中継ぎとして初勝利を挙げることになる。

◆広島先発の九里は3回を終えて2安打無失点。打線は3回、3番鈴木誠が投手強襲の適時二塁打を放ち、先制点を奪った。 阪神は1点を追う6回1死二塁、適時失策で同点とした。先発青柳は6回を終えて6安打1失点と試合をつくった。 広島は同点の7回に代打大盛の2号ソロなどで2点勝ち越し。阪神は8回に代打原口の2点打で追いつき、そのまま延長戦に突入。 阪神は10回、途中出場の熊谷が勝ち越し打。藤浪に勝利投手の権利が舞い込んだが、広島はその裏、1死満塁から堂林の遊ゴロで追いついた。試合は引き分けに終わった。

◆阪神2年目の小幡竜平内野手がプロ初の1番でマルチ安打をマークした。1点を追う6回は先頭で九里の低め変化球に当て、緩いゴロで快足を飛ばして遊撃内野安打。同点のホームを踏んだ。同点の9回にはフランスアの速球をシュアな打撃で左前に運んだ。 「入った時から1番ショートをずっと目標にやってきた。すごくワクワクした。とにかく必死でした」。正遊撃手の木浪がコロナ禍で離脱しており、本気で定位置奪取を狙う。

◆広島九里亜蓮投手は7回9奪三振1失点と好投した。 1点リードの6回1死二塁から適時失策で同点とされた後、なおも1死一、二塁から2点目を許さなかった。「1人1人と勝負することを変えずにいっている。最少失点で作れるようにと思っています」。 前回9月28日DeNA戦は完封勝利。6勝目は逃したが、2戦連続で結果を出した。

◆阪神青柳晃洋投手が6回6安打1失点と粘ったが、7勝目は遠かった。「ここ数試合立ち上がりに課題がありましたが、今日は丁寧に投げることが出来ましたし、何とかゲームを作ることが出来ました」。味方の援護なく、同点のままマウンドを降りた。 3回2死一塁、鈴木誠のライナーが青柳の左膝上部付近を直撃。角度の変わった打球はそのまま右翼へ飛び、一塁走者の田中広が生還し先制を許した。不運なアクシデントにも動じず、続投。5回2死一、三塁のピンチでは、2安打の鈴木誠に1度もバットを振らせず、外いっぱいの直球で見逃し三振を奪った。 5回8失点だった9月30日中日戦から中5日。初回から落ち着いた投球を見せ、汚名を返上した。8月まで6勝とチームの勝ち頭だったが、9月以降は6試合で0勝4敗。長らく勝ち星に見放されている。

◆広島4番松山竜平が痛恨の適時失策をバットで取り返した。 1点リードの6回1死二塁、3番近本の正面への一ゴロを後逸して同点とされた。悔しさを胸に、1点リードの7回2死一、二塁から左前適時打。「意地で打ちました。追加点になって良かったです」と振り返った。

◆今季6度目のリリーフ登板となった阪神藤浪晋太郎投手が、1回をわずか9球で3者凡退に抑えた。 同点の9回に5番手で登板し、大盛を3球三振。代打ピレラは3球目のカットボールで二飛に仕留めると、田中広を変化球2球で追い込み、最後は159キロ直球で空振り三振。「青柳さんがゲームを作ってくれましたし、その後チームも踏ん張っていたので0点で抑えることができて良かったです」。前回4日巨人戦で1回1/3、6安打3失点だった悔しさを今季3ホールド目で晴らした。

◆スタメン落ちした広島大盛穂外野手が、代打で本拠地初本塁打となる2号ソロを放った。代打出場した同点の7回。阪神2番手桑原のスライダーを捉えて右中間席に運んだ。二塁ベース手前では力強く握った右手拳を突き上げた。 試合前まで今季50試合に出場した意地があった。サブマリンの阪神青柳に対し、投手九里、主砲鈴木誠を除く野手7人は左打者を並べた。新人宇草や2年目林というプロ初先発の若手が名を連ねる中、大盛は8試合ぶりのベンチスタートとなった。巡ってきた打席で「積極的に打ちにいきました」と悔しさをぶつけた。 公称体重71キロもパンチ力はある。2軍で1本塁打に終わった昨年オフ、広島選手が多く通う広島市内のジムで筋力強化。今季は試合の合間にも食事を取るなど体重維持につとめる。今月2本目の本塁打と、定評のあった確実性に長打の魅力も加わりつつある。 プロ初先発の宇草もプロ初安打を記録した。若手も加わる外野手争いに、この日コンディション不良から実戦復帰した西川も「危機感はありますよ。戻って頑張らないといけない」と危機感を口にした。若手の台頭でチーム内競争が激しくなれば、チーム力も上がっていくに違いない。

◆阪神熊谷敬宥内野手が一時勝ち越しの適時打を放った。 延長10回に大山の四球から敵失も絡んで1死三塁。塹江の149キロ直球を中前にはじき返した。 「前の回に藤浪さんがいい投球をして、その流れでチャンスもきて。そのチャンスで打てて、すごくうれしかったです。ああいうところでしっかりアピールできて良かったのかなと思います」。10回裏に同点に追いつかれ、なお2死二、三塁の守備では菊池涼の飛球を三塁カメラ席に身を乗り出して好捕。攻守で存在感を見せた。

◆阪神が延長10回に一時勝ち越すも、直後に追いつかれ、4時間超の戦いは引き分けに終わった。矢野監督は「トータル的には勝ちたかったけど、負けなかったのは大きいと思っている」ととらえた。 3-3の延長10回、大山が四球で出塁すると、敵失と島田の犠打で1死三塁。絶好機で熊谷が中前適時打を放ち、勝ち越しに成功した。しかし直後に守護神スアレスが1死から長野、坂倉に連打を浴び、1死満塁から堂林の遊ゴロの間に同点に追いつかれた。 今季6度目のリリーフ登板となった藤浪は、9回にマウンドに上がるとわずか9球で3者凡退に抑えた。先頭の大盛を3球三振。ピレラは3球目のカットボールで二飛に仕留め、田中広を変化球2球で追い込み、最後は159キロ直球で空振り三振。救援初勝利こそ逃したが、今季3ホールド目を挙げた藤浪は「青柳さんがゲームを作ってくれましたし、その後チームも踏ん張っていたので0点で抑えることができて良かったです」と話した。 阪神は勝ち越した後の10回2死一塁で、藤浪の代打に長坂を送り、ベンチ入りした野手全員を使う形となった。

◆広島ドラフト2位宇草孔基外野手がプロ初出場初スタメンで初安打を放った。この日初めて出場選手登録され、1番左翼で即先発。5回2死、3打席目に青柳から左中間二塁打を決めた。7回には四球を選び、プロ初盗塁となる二盗に成功。4番松山の適時打でプロ初得点も記録した。 「ファームでやってきたことを出し切ろうと思っていた。ファームは無観客だけど、歓声がすごくてプロ野球だなと思いました」。俊足巧打の持ち味を存分に発揮した。

◆阪神が延長10回に一時勝ち越すも、直後に追いつかれ、4時間超の戦いは引き分けに終わった。矢野燿大監督の一問一答は以下の通り。   -もったいない引き分け 矢野監督 トータル的には勝ちたかったけど、負けなかったのは大きいと思っている。 -守護神スアレスは粘りきった 矢野監督 そりゃね、負けるのと同点ではえらい違うんで。よく粘ってくれた。 -熊谷もいいところで打ったのは明るい材料 矢野監督 まあ材料というか、みんながよくつないで、全員で何とかこういう試合ができた。後からいくメンバーも頑張ってくれたし、ピッチャーもつないでくれたから。 -能見、藤浪らが流れを引き寄せた 矢野監督 もちろんクワ(桑原)が打たれたとか、ゲームの中ではあるけど。全体的には向こうにある流れを、フミ(原口)のヒットもある意味、ラッキーな部分があったと思うし。でもこういう試合ができたというのは、みんなのつなぐ気持ちというか、要所、要所ではやってくれたし、控えのメンバーも頑張ってくれた。そういうことじゃないかな。 -9回に登板の藤浪は難しい面もあった 矢野監督 難しいというか、毎回難しいからさ。1個1個自分で経験して成長していくものやと思うから。中継ぎって、先発と違う1球1球の難しさとか緊張感はある意味高いんでね。その中で精度の高い、今日みたいなボールがいけば、しっかり抑えられるし。また変化球が決まれば、より真っすぐも生きるんでね。そういう、抑えたっていう(より)中身がしっかりあるボールが多かったので、それはよかったと思う。 -小幡を1番 矢野監督 メンバーもあれやし、ちょっとなかなか点とれてないんで。その中で何かこう、俺の中では挑戦してみて、その中でまたいろいろ判断していこうかなというところで、小幡自身はよくやったと思うし。食らいついていったし、フランスアとか、ああいう左投手からしっかりヒット打ったっていうのも大きいと思う。 -円陣で声をかけた 矢野監督 それは、言えるようなことでは(ない)

◆広島は守備の乱れから今季初の4連勝を逃し、9度目の引き分けだ。若手野手を多く先発起用した試合で、経験ある選手にミスが出て、佐々岡監督は「ミスがあれば勝てる試合も勝てない」と首をひねった。 1点リードの6回1死二塁から一塁へのゴロに、松山は1歩下がって半身となったことで後逸。同点とされた。再び1点リードの8回は2死満塁から守備固めで三塁に入った三好が代打原口の不規則な動きをしたライナーを止められなかった(記録は左前適時打)。9回も一塁林の失策からピンチを広げ、10回は捕逸が失点につながった。失策数はリーグワースト2位の56。山田内野守備走塁コーチは「何とか引き分けて負けなかった。練習して直さないといけない」と締まらない守備の立て直しを掲げた。 おまけに終盤の失点がいずれも四球絡みで、佐々岡監督は「口酸っぱく言っている中で、四球からこういう展開になった」と苦言を呈した。指揮官が目指す「守り勝つ野球」への道のりは遠い。

◆えっ、空中イレギュラー!? 阪神は野手全員を使い切る総力戦で今季9度目の引き分け。打線改造もあった一戦でハイライトの1つが、代打原口文仁捕手(28)の秘打だ。8回2死満塁から強打でボールをたたきつぶし、三塁正面へのライナーが空中で軌道を変えて左前へ抜けた。広島ベンチも驚いたこの同点の2点適時打がなければ敗色濃厚だった。矢野阪神が前代未聞の秘打から引き分けに持ち込んだ。1-3と2点を追う8回だ。 広島の3番手ケムナの3四球で2死満塁の場面。代打原口が放った打球は奇妙な軌道を描いた。ハーフライナーに気味の打球は、三塁手・三好のグラブ横をシュート回転でスルリ。土壇場の2点タイムリーで同点に追いついた。原口が「運も味方してくれた」と言えば、広島の山田内野守備走塁コーチは「空中イレギュラーしたのか、少し中に入った」と驚きの声を上げた。 試合前から矢野監督は激しく動いた。売り出し中の2年目小幡をプロ初の1番、好調の近本をプロ2度目の3番で起用。1番小幡、2番北條、3番近本、4番大山と将来の猛虎打線をイメージさせるラインアップで臨んだ。試合直前には珍しくベンチ前にナインを集め、幾重にもなった輪の中心で身ぶり手ぶりでゲキを飛ばした。序盤からスッキリしない展開が続いたが、原口の秘打で試合が動きだした。 野手全員を使い切る総力戦で最後まで食らいついた。同点の延長10回には途中出場の3年目熊谷が中前適時打を放ち、一時は勝ち越しに成功した。結局、守護神スアレスが同点に追いつかれて今季5度目のドローに終わったが、1番抜てきの小幡が2安打と光もあった。サンズ&ボーアの不振が続く中、攻撃でも見せ場を作った。 矢野監督も前を向く。「トータル的には勝ちたかったけど、負けなかったことは大きいと思っている。みんながよくつないで、全員で何とかこういう試合ができた。後からいくメンバーも頑張ってくれたし、ピッチャーもつないでくれたから」。コロナ禍に苦しみ、逆風が吹き荒れるシーズン終盤戦。最後までファイティングポースを貫いた。【桝井聡】

◆阪神・ボーアが20打席ぶりに安打を放った。1-1の七回、先頭で九里から9月30日の中日戦(甲子園)以来の安打となる右前打。不振で5日の巨人戦(甲子園)では先発を外れ、この日は「7番」で復帰。2打席連続三振に倒れていたが、3打席目に意地をみせた。

◆阪神・青柳は苦手の広島を相手に6回6安打1失点と粘った。三回に先制を許したが、0-1の五回2死一、三塁で主砲の鈴木から見逃し三振を奪ってピンチをしのぐと、直後に味方が同点に追いついた。  過去の対戦は通算3試合に先発して0勝2敗、防御率11・57で、いずれも四回未満で降板。今季も8月7日(マツダ)に6失点で自己最短の3回でKOされていた。

◆0-0の三回、2死一塁。阪神・青柳が不運な形で先取点を奪われた。広島・鈴木誠の打球が左膝を直撃。ボールが右翼に転がる間に一塁走者の田中広の生還を許した。  一旦、ベンチへ戻って治療。大事には至らず、再びマウンドへ。左打者を7人並べた広島打線に対し、緩急をつけた投球で的を絞らせなかった。  「自分自身ずっと勝てていないですし、内容もよくない。1試合1試合が全て最後の試合だと思って、全力で投げたいと思います」  決意を新たにマウンドに立っていた。8月27日の中日戦(甲子園)で6勝目を挙げて以降、5試合連続で勝ち星がなく、自身4連敗中。前回9月30日の中日戦(甲子園)は5回を投げて自己ワースト8失点。負け数(7つ)が勝ち数を上回ってしまった。  相手は過去3試合で0勝2敗、防御率11・57と、プロ5年で一度も勝ったことのない広島。今季も8月7日(マツダ)に対戦し、3回6失点。しかしこの日は、久々に自分らしさを出せた。  一、二回と走者を許しながらも無失点。三回に先制されたが、崩れない。四回は1死から野間に左前に運ばれたが、続く林を外角低めのツーシームで遊ゴロ併殺打に。五回は2死一、三塁のピンチで、鈴木誠を外角直球で見逃し三振に仕留め、雄たけびをあげた。  6回6安打1失点。勝ち星はつかめなかったが、青柳がしっかり試合を作った。(三木建次)

◆広島が延長十回に追い付き、引き分けた。3-4の十回に堂林の遊ゴロで同点。続く好機は、代打菊池涼が三邪飛に倒れた。阪神は八回に代打原口が同点打、十回は熊谷の中前打で勝ち越したが、スアレスが誤算だった。

◆阪神は延長十回、熊谷のタイムリーで勝ち越したが、その裏、追いつかれて、引き分けた。以下、矢野監督の一問一答。  --最後は追いついただけにもったいなかった  「まあまあ。トータル的には勝ちたかったけど、負けなかったと思ったのは大きいと思っている」  --熊谷も要所で打ったのは明るい材料  「まあ材料というか、みんながよくつないで、全員で何とかこういう試合ができた。後からいくメンバーも頑張ってくれたし、ピッチャーもつないでくれたから」  --能見、藤浪らが流れを引き寄せた  「もちろんクワ(桑原)が打たれたとか、ゲームの中ではあるけど。全体的には向こうにある流れを、フミ(原口)のヒットもある意味、ラッキーな部分があったと思うし。でもこういう試合ができたというのは、みんなのつなぐ気持ちというか、要所要所でやってくれたし、控えのメンバーも頑張ってくれた。そういうことじゃないかな」  --前回救援失敗の藤浪は難しい面もあったと思うが、結果を出した  「難しいというか、毎回難しいからさ。一個一個、自分で経験して成長していくものやと思うから。中継ぎって、先発と違う一球一球の難しさとか緊張感はある意味高いんでね。その中で精度の高い、きょうみたいなボールがいけば、しっかり抑えられるし。また変化球が決まれば、よりまっすぐも生きるんでね。そういう、抑えたっていう(より)中身がしっかりあるボールが多かったので、それはよかったと思う」  --小幡を1番で起用  「メンバーもあれやし、ちょっとなかなか点とれてないんで。その中で何かこう、俺の中では挑戦してみて、その中でまたいろいろ判断していこうかなというところで、小幡自身はよくやったと思うし。食らいついていったし、フランスワとか、ああいう左投手からしっかりヒット打ったっていうのも大きいと思う」

◆前日5日の巨人戦(甲子園)で先発を外れた不振の両助っ人が、スタメン復帰した。ボーアは20打席ぶりの安打。七回先頭の右前打で出場5試合ぶりのHランプを灯した。8月22日のヤクルト戦(神宮)以来3度目の7番だったが、2打席連続三振の後で自身ワーストの19打席ノーヒットとなった後、3打席目に意地をみせた。  一方のサンズは2四球も2打数無安打。六回は同点とし、なお2死一、二塁で空振り三振に倒れて29打席無安打が続く。八回に四球を選んで代走を送られた後は、4日の巨人戦(甲子園)で死球を受けた左手にアイシングを施していた。

◆執念が白球に乗り移った。ハーフライナーは空中で揺れるように不規則に変化をすると、三塁・三好の出したグラブの横を通過し、左翼の緑の芝で弾んだ。代打・原口がナックル!? のような"秘打"で、試合を振り出しに戻した。  「青柳も頑張っていましたし、何とかしたい場面で運も味方をしてくれました。追いつくことができてよかったです」  1-3と2点を勝ち越された直後の八回だ。2死満塁の絶好機に代打で登場。ケムナの内角直球を引っ張ると、三塁手の正面へのライナー性の打球に。これで万事休すかと思われたが...。  バットの根本で詰まっても、強く振り抜くからこそ、原口の打球には強烈なスピンがかかるのか-。ラッキーな左前への2点打で、相手に傾きかけた流れを、一気に引き寄せた。  2017年に代打で球団トップタイの23安打を記録。代打の切り札として活躍した。勝負強さは虎屈指。今季の代打成績こそ、この一打を加えても打率・176(17打数3安打)だが、満塁の場面ではめっぽう強い。これで打率・667(6打数4安打)、8打点だ。  悔しい思いを、すぐに晴らした。4日の巨人戦(甲子園)。「7番・捕手」で先発出場すると、満塁の場面で2度、打席が回ってきた。だが、結果はどちらも一邪飛。五回に2度目の凡退となると、六回の守備からベンチに退いた。  得意なシチュエーションでの、今季2度の凡退を一日で味わった。チームも13残塁で1得点のみに終わり、完敗。貧打の責任を背負い込んだ。そんな中で、巡ってきた名誉挽回の機会。魂のスイングで運も味方につけ、結果を残した。  「フミ(原口)のヒットもある意味、ラッキーな部分があったと思う。(ただ)みんなのつなぐ気持ちというか。要所要所でやってくれた」と矢野監督。「全体的には向こうにある流れ」という試合で飛び出した一打を称賛した。勝てはしなかったが、原口がこれからもその勝負強い打撃で、虎を救っていく。(菊地峻太朗) ★原口の"秘打"  2018年5月15日のDeNA戦(甲子園)。0-0で迎えた六回2死満塁から代打で登場すると、左腕エスコバーの内角148キロにバットを真っ二つに折られたが...。ハーフライナーとなった打球は、三塁側ファウルゾーンから"スライス回転"でフェアゾーンに戻り、左翼線にぽとり。2点二塁打となり、2-1で勝利した。

◆仕切り直しの3人斬りや! 藤浪が3-3の九回に登板し、打者3人を3球ずつ、わずか9球で料理した。プロ8年目で救援での初星はならなかったが、3個目のホールドをマーク。納得の表情で振り返った。  「(先発の)青柳さんがゲームを作ってくれましたし、その後、チームも踏ん張っていたので、ゼロで抑えることができてよかった」  まずは前の打席で本塁打の大盛を2球で追い込むと、フォークで空振り三振。7月23日の甲子園で逆転満塁弾を浴びた代打・ピレラは3球すべてスライダーで二飛。そして田中広も変化球で追い込み、最後は渾身の159キロでズバッと空振り! 1イニング2度目の3球三振に、敵地マツダスタジアムのスタンドからどよめきが起こった。  ゼロに抑えることしか頭になかった。前回4日の巨人戦(甲子園)は1点ビハインドの六回に登板し、イニングをまたいだ七回、4連打を浴びて3失点。試合をぶち壊してしまった。ストレート一辺倒になったことも打たれた原因だ。それから2日、9球のうち直球は2球。あとは多彩な変化球で相手を翻弄した。  矢野監督は「中継ぎって先発と違って、1球1球の難しさとか緊張感は、ある意味高い。その中で精度の高い、きょうみたいなボールがいけばしっかり抑えられるし、変化球が決まれば、より真っすぐも生きる」と"解説"。新型コロナウイルスに感染した岩貞、馬場や、濃厚接触者と判断された岩崎と入れ替わって9月25日に1軍昇格し、この日で中継ぎ登板は6試合。先発の柱として活躍する日を夢見ながら、まずは中継ぎで配球や投球術を磨く。(三木建次)

◆もったいない...。阪神は広島と延長十回、4-4の引き分け。終盤に追いつき、十回に勝ち越す執念を見せながら、四球やミス連発のカープに勝ちきれなかった。矢野燿大監督(51)が1番に小幡を起用するなど新打線を組み、野手全員を使い切る総力戦だっただけに、悔やまれるドロー。首位巨人とのゲーム差は「13」と開いた。  若虎だらけで総力戦を終えた。チームの今季最長となる4時間16分の死闘。若い力が奮闘したからこそ、勝ち切りたかった。矢野監督はつかみかけた白星を逃した無念をこらえ、懸命にナインをねぎらった。  「トータル的には勝ちたかったけど。負けなかったのは大きいと思っている」  2度追いつき、延長十回についに勝ち越した。ただ、1点リードで満を持して送ったスアレスが誤算。内野安打から1死満塁を招き、代打・堂林の遊ゴロで追いつかれた。セーブ失敗は7月22日の広島戦(甲子園)以来の珍事だが、ドローに至る過程も、悔しい。  1死から代打・長野の二塁内野安打はアウトのタイミングも、一塁・中谷がワンバウンド送球を捕り損ねた。1死一塁で坂倉の右前打を処理した島田もファンブル。失策で打者走者が二進して、ピンチが広がった。  勝たなければいけない試合だった。六回は敵失で追いつき、八回の同点は3四球が起点。十回の勝ち越しも捕逸で好機をもらった。"隙だらけ"の5位広島を相手に、虎も隙を見せて勝ち切れなかった。痛み分けでも、首位巨人に少しでも食らいつきたい虎には、もったいないドローだ。  光る瞬間は、何度もあったからこそだ。「みんながよくつないで、全員で何とかこういう試合ができた」。コロナ禍でベストメンバーが組めない中、不振のボーアとサンズを先発復帰させると同時に、思い切った戦法を選んだ。2年目の小幡をプロ初の1番に抜てき。52試合連続で1番を任せていた近本を今季初の3番に動かした。  「メンバーもあれや(そろわない)し、なかなか点が取れていない。俺の中では挑戦してみて、その中でまたいろいろ判断していこうかと」  リードオフマンに指名した20歳は、六回に同点ホームを踏むなど2安打と奮闘。さらに終盤は控えメンバーが躍動した。七、八回は両助っ人とベテランの糸井に代走。延長も考えられる中、若手で勝負した。九回以降のメンバーは全員20代。ベンチ入り野手も使い切った。延長十回は、コロナによる大量抹消で9月25日に緊急昇格した熊谷が勝ち越し打。拳を握る背番号4に、将も右手を高々と挙げて応えた。勝利の雰囲気は漂っていた。  だからこそ-。首位巨人とは13ゲーム差。優勝への道は厳しいが、毎試合が勝負。試合前は将自ら、円陣で声をかけた。「(中身を)言えるようなことでは」と多くを語らなかったが、消化試合のつもりはない。  「後からいくメンバーも頑張ってくれたし、ピッチャーもつないでくれた」  もったいないフィナーレにはなったが、経験をあすへの力に変えてこそ、意味のあるドローになる。(安藤理)

◆そういうこっちゃ~矢野監督!! ある意味消化試合とはいえ、戦う以上勝敗にこだわるのは当然! しかしそんな中でプロ野球チームはたとえ優勝を逃そうが、(といいつつ、まだまだ逆転ミラクルVに期待している俺がいるんだけど...)ワクワクさせてくれそうな『明日』を見せてくれなきゃいけないのだ!!  その明日を見せてくれたんじゃないですか~!! もちろん本塁打王を狙う大山の一打席一打席もそうですが、弱冠20歳の小幡の1番起用(2安打で応えてくれておおきに~!)。そして福留、糸井に代わる『虎の新3番打者』近本! ヒットは出なかったけど、残り28試合、例えばどんな成績だろうが、明日のために外したらアカンでエ!!  伏兵・熊谷の一度は勝ち越しとなるタイムリーや、1イニングならおまかせ!の藤浪のリリーフを再確認できたことを思えば、決して悪くない引き分けだったのだ!!  第2戦はそんな明日の虎たちの活躍で『池の水ぜんぶ抜く大作戦』。鯉を弱らせ、大山のホームランで決めてくれ!!

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
巨人
58294 0.667
(↑0.004)
M16
(↑1)
29429
(+6)
307
(+4)
111
(+2)
56
(-)
0.260
(↑0.001)
3.240
(-)
2
(-)
阪神
45425 0.517
(-)
13
(↓0.5)
28388
(+4)
368
(+4)
92
(-)
62
(+1)
0.246
(-)
3.550
(-)
3
(1↑)
中日
43455 0.489
(↑0.006)
15.5
(-)
27334
(+4)
384
(-)
55
(-)
22
(-)
0.247
(-)
3.880
(↑0.05)
4
(1↓)
DeNA
43465 0.483
(↓0.006)
16
(↓1)
26402
(+4)
374
(+6)
101
(+2)
22
(-)
0.267
(↓0.001)
3.800
(↓0.03)
5
(-)
広島
36469 0.439
(-)
19.5
(↓0.5)
29399
(+4)
434
(+4)
92
(+1)
44
(+1)
0.264
(-)
4.390
(↑0.03)
6
(-)
ヤクルト
34516 0.400
(↓0.005)
23
(↓1)
29378
(-)
463
(+4)
90
(-)
53
(-)
0.249
(-)
4.710
(↑0.01)