阪神(☆2対0★)中日 =リーグ戦18回戦(2020.10.01)・阪神甲子園球場=
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中日
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阪神
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勝利投手:岩田 稔(1勝0敗0S)
(セーブ:スアレス(2勝0敗18S))
敗戦投手:ロドリゲス(2勝3敗0S)

本塁打
【阪神】梅野 隆太郎(5号・7回裏ソロ)

  DAZN
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◆阪神は両軍無得点で迎えた6回裏、相手の暴投の間に1点を先制する。続く7回には、梅野のソロが飛び出し、貴重な追加点を挙げた。投げては、先発・岩田が7回途中無失点の好投で今季初勝利。敗れた中日は、先発・ロドリゲスが試合をつくるも、打線が沈黙した。

◆両チームのスタメンが発表された。先発は阪神が岩田稔投手(36)、中日がヤリエル・ロドリゲス投手(23)。阪神は梅野隆太郎捕手(29)が「7番・捕手」で、右腹斜筋の筋挫傷から復帰後初のスタメンとなった。扇の要が、チームを2カードぶりの勝ち越しへと導く。先発のベテラン岩田は今季2試合目の登板。19年7月5日の広島戦(甲子園)以来、454日ぶりの白星を狙う。

◆中日の主砲ダヤン・ビシエド内野手(31)はベンチ入りメンバーから外れ、今季2度目の欠場となった。。先発のロドリゲスが出場選手登録され、外国人が5人となっていた。規定ではベンチ入りは4人までで、シエラが代役で4番に入った。与田監督は「ビシエドのコンディション。疲労困憊している中、正義感でやってきてくれた。本人は出るつもりでいたと思う。(シエラと)調子で比べたのではない。今日1日で何とかコンディションが良くなるように(休養に)充てて、明日からはね」と説明し、2日DeNA戦(横浜)でのスタメン復帰を示唆した。 ビシエドの欠場は前日に死球を受けた7月22日巨人戦(ナゴヤドーム)以来。チーム89試合のうち欠場以外の87試合で全てスタメン出場している。今季はここまで14本塁打、63打点を挙げているが、最近5試合では2安打と不調で打率を2割6分2厘に下げていた。 なおシエラは3打数無安打に終わった。

◆阪神先発の岩田は3回まで完全投球。中日先発のロドリゲスは2四球を出すも無安打投球で、両軍無得点のまま中盤に入った。 阪神は6回2死二、三塁から中日ロドリゲスの暴投で1点先制。中日は4、5回に得点圏に走者を進めるも後続が凡退して無得点。 阪神は7回に梅野の5号ソロで追加点を挙げ、4投手の継投で逃げ切った。岩田は今季初勝利。ロドリゲスは3敗目。阪神スアレスは18セーブ目。

◆阪神藤浪晋太郎投手(26)が2点リードの8回表に登板し、自己最速タイの160キロを5球も計測した。 先頭7番堂上の初球から158キロ。最後はカットボールで空振り三振に仕留めると、勢いが加速した。 8番木下拓に対して1ボールから2球目に外角高め160キロで空振りを奪い、観客をどよめかせる。これが16年9月14日広島戦以来、4年ぶりの大台到達となった。 「別に狙っていたわけでもないです。勝負する中、全力を出す中でたまたま出たかなと思います」 木下には3球目も160キロで二ゴロに抑える。代打井領への初球にも160キロを計測し、3球連続160キロをマーク。最後は井領から内角低めスプリットで空振り三振を奪った。 160キロを計5球も投じ、1イニングを完全投球。全14球のうち12球に直球を選択し、その12球の内訳は160キロが5球、158キロが4球、156キロが3球だった。 自身2ホールド目を記録。大阪桐蔭の先輩でもある岩田の454日ぶり白星をアシストし、「この前ほどまではないですけど、それでも緊張しました。特に岩田さんでしたし。なんとか抑えたい気持ちが強かった。緊張はしました」と安堵(あんど)した。

◆阪神梅野隆太郎捕手(29)が右腹斜筋の筋挫傷から復帰後初スタメンで5号ソロを放った。 1-0の7回1死走者なしで、中日の2番手左腕・福の141キロ直球を左中間席にたたき込んだ。9月11日の広島戦(甲子園)以来のアーチで追加点を呼んだ。 梅野は9月17日の巨人戦(甲子園)で右脇腹の張りを訴えて途中交代し、翌18日に出場選手登録を抹消された。リハビリを重ねて同29日にウエスタン・リーグのオリックス戦(鳴尾浜)で実戦復帰し、3打数3安打1打点。前日30日に1軍に昇格していた。

◆故障から約1カ月ぶり復帰した中日ロドリゲスは6回2安打1失点で降板した。初の甲子園で「どんな場所でも自分の力を出してチームが勝利できるように投げる」と話した通り、5回まで1安打無失点。ただ、6回2死二、三塁で大山の打席で暴投から先制点を許したのが悔やまれた。 8月3日に育成選手から支配下登録され、6試合目。ともに来日最多の110球を投げ、10三振を奪った。

◆阪神がラッキーな形で先制点を手にした。 6回に先頭の1番近本が右前打で出塁し、続く北條の打席ですかさず二盗。北條は野選で出塁し無死一、三塁とチャンスを広げた。 その後2死二、三塁となり、5番大山の打席で中日ロドリゲスが暴投。三走の近本が生還し、試合の均衡を破った。

◆阪神打線が5回までわずか1安打に抑えられた。 中日先発のロドリゲスの前に手も足も出ない状況だ。最速155キロの直球とキレのあるスライダーに翻弄(ほんろう)され、ここまで4回に糸井が放った左前打のみ。2回は2四球などで2死一、三塁のチャンスを作ったが、あと1本が出なかった。 阪神は前日9月30日の中日戦も、今季最少タイの2安打で完封負け。先発の岩田稔投手(36)は6回まで2安打無失点。好投を続けているベテラン左腕に援護点が欲しい。

◆阪神が14日ぶりにスタメン復帰した梅野隆太郎捕手(29)が値千金の1発を放ち、接戦を制した。 立ち上がりから中日先発ロドリゲスに抑え込まれ、5回終了時点で1安打無得点。6回に先頭1番近本光司外野手(25)の中前打、二盗から2死一、三塁とし、暴投の間に先制点をもぎ取った。7回には右腹斜筋の筋挫傷から前日9月30日に1軍復帰した7番梅野が、5号ソロを放った。 今季2試合目の先発となった岩田稔投手(36)は、6回2/3を無失点で19年7月5日広島戦以来、454日ぶりの白星をゲット。2点リードの8回に登板した藤浪晋太郎投手(26)は自己最速タイの160キロを5球も投じ、1回を完全投球で今季2ホールド目を記録した。 前日9月30日の中日戦は大野雄から得点を奪えず、12球団ワーストとなる今季10度目の完封負けを食らっていた。一夜明け、この日も打線が苦しんだが、なんとか薄氷の勝利を手にした。

◆阪神岩田稔投手(36)が6回2/3を4安打無四球無失点の快投を披露し、454日ぶり白星を挙げた。 立ち上がりから制球がさえにさえた。丁寧に低め、コースを突き、3回まで完全投球。7回に2安打を許して降板したが、打者23人から内野ゴロ12個を奪った。梅野のリードに応え、ミット目がけて腕を振った。「テンポ良くいけたので、自分の投球ができたかなと思います。僕はバッタバッタと三振を取るピッチャーじゃないので。こうやってバックの方に守ってもらって、アウトをしっかり取っていく選手。それができて良かったです」。三塁ベースを踏ませない安定感だった。 試合後は甲子園の大歓声を浴び、梅野とバッテリーでお立ち台に上がった。昨年7月以来の白星に「ホッとしてます。ちょっと恥ずかしいんですけども、消えそうで消えない(油性)マジックみたいなのが岩田稔だと思っているので。そういう風に、頑張っていけたらなと思います」。持ち味を出しきった36歳左腕が、ニコッと笑った。 1軍で初登板初先発した9月21日DeNA戦は5回3失点。翌22日に出場選手登録を抹消されていた。通常であれば、最短でも登録抹消期間10日間を経て10月2日以降から再登録が可能となる。今回はチームの新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、「特例2020」の代替指名選手として再登録されていた。 当初は9月30日のウエスタン・リーグ、オリックス戦に先発予定だった。コロナショックで調整に変更が出たが、ベテランらしく落ち着いて対応。19年7月5日広島戦以来となる勝ち星を手にした。

◆プレーボール直前、阪神岩田稔投手は胸の前で両拳を合わせた。満月の夜空を見上げ、目を閉じる。心の中で「ばあちゃん」が優しく笑っていた。 今季2戦目の先発は6回2/3を4安打無四球無失点。19年7月5日広島戦以来、454日ぶりの白星。チームのコロナ禍による「特例2020」を巡って登板日が二転三転しても快投で応え、「ホッとしてます」と胸をなで下ろした。 2カ月前の7月23日。岩田は2軍戦登板前日だったにも関わらず、1人飛行機に飛び乗った。日帰りで熊本・益城町に向かった。祖母・岩下ミツヱさんが老衰のため101歳で永眠。「いつも優しくて叱られた記憶がない。大好きなおばあちゃんだった」。もう1度、顔を見ておきたかった。 最後に会ったのは17年12月。ミツヱさんは16年4月の熊本地震で自宅が倒壊し、同町の施設で生活していた。「俺の顔を分かってくれてうれしかった」。背番号21のユニホームを渡すと、喜んでくれた。あれから3年。「101歳なのに、いい顔をしていました」。 8月上旬、プロ15年目で初めて右脇腹を痛めた。「終わったか...」。弱音を吐きかけた時も、祖母の笑顔を思い出して救われた。天国に白星を届け、「消えそうで消えない油性ペンみたいなのが岩田稔だと思っています」。ベテラン健在を証明した。【佐井陽介】

◆阪神岩田稔投手(36)が6回2/3を4安打無四球無失点の快投を披露し、454日ぶり白星を挙げた。感極まって泣きじゃくる姿に、岩田は「まだまだ俺も頑張らなあかんな」と決意を新たにしていた。 昨年12月下旬、1型糖尿病患者支援プロジェクトの表彰式に出席。当時順大3年生だった野島理紗子さんと初対面した。野島さんはジュニアオリンピックカップ自転車競技スプリント1位の実績を持ちながら、高校2年時の3月に同病発症が発覚。「自転車は辞めなさい」。医者から宣告されて入院生活に入った直後、岩田の著書「やらな、しゃーない!」に出会って競技続行を決めたという。 「自転車もできない、大学にも行けないと落ち込んでいた時、岩田さんが就職内定を取り消されても頑張った話とかを読んで、真っ暗だった道が明るくなりました」。恩人との対面で流す大粒の涙を見て、心が奮い立たないわけがなかった。 「スポーツをする1型糖尿病患者の中で1番になりたい。いろんな競技の選手が出てきてくれたら、また楽しみが増える」。36歳。誰かに力を与えられる限り、岩田の心は折れない。【遊軍=佐井陽介】

◆阪神が14日ぶりにスタメン復帰した梅野隆太郎捕手(29)が値千金の1発を放ち、接戦を制した。 立ち上がりから中日先発ロドリゲスに抑え込まれ、5回終了時点で1安打無得点。6回に先頭1番近本光司外野手(25)の中前打、二盗から2死一、三塁とし、暴投の間に先制点をもぎ取った。矢野監督の一問一答は以下の通り。 (テレビインタビュー) -先発岩田が好投 矢野監督 一番貢献してくれたのは岩田のピッチングですかね。 -ゴロアウトも多かった 矢野監督 テンポもよくね。相手ピッチャーも良いとわかっていたので、先制点を与えずに最後までゼロで行ってくれたというのは、本当に素晴らしいピッチングでした。 -交代のタイミング 矢野監督 状況はあるんですけど、阿部のところから代えようと思ってましたしね。あそこの1つアウトというのは、すごく大事なのでね。そういうところでは迷いなく交代しました。 -藤浪は160キロ連発  矢野監督 晋太郎が投げると球場のムードも上がりますし、そういうところで晋太郎も、こういうピッチングをして自信を付けてくれたら、チームにとってもすごく大きいですしね。その第1歩を踏んでくれたのかなと思います。 -ベンチで笑顔  矢野監督 その陰には中継ぎならではのプレッシャーとか、逆に悪いことも考えながらマウンドに上がってしまうものもあると思うんですよね。その中でホッとした部分もあると思うんですけど、でもこの短いイニングでプレッシャーがかかる中で、仕事ができたという満足感があっての、そういう表情になるかなと思います。 -梅野が復帰弾 矢野監督 そうですね。少し低い弾道でね、どうかなと思いましたけど、あの1点っていうのは大きかったですし、チカの足で取った1点っていうのも本当にチカらしく素晴らしい足でしたね。 -明日から巨人戦 矢野監督 そうですね。大きなことは言えないですけど、僕たちの今日みたいな精いっぱいの野球を明日からも見せていきます。 (囲み取材) -岩田は安心して見ていられた 矢野監督 安心っていうかね、岩田自身も必死やし、まあ安心はできないんだけど、やっぱり0だし。相手ピッチャーもいいからそんなに点が取りにくいだろうなと思いながら見てたからさ。そんな安心はできないんだけど。でもさっき言ったように、この試合勝てたっていうのはもう岩田が本当にここまで頑張ってくれたっていうところなんでね。まあはじめの予定とは違う登板になって、調整というかそういうのも簡単じゃなかったと思うけど、本当に大きな1勝にチームにとっても、岩田にとってもなったのかなと思いますね。 -次に向けてもいい内容 矢野監督 前回も投球自体は良かったんでね。まあ次も予定はしてたんだけど、今ちょっとね、ピッチャーもなかなか多くないんでね。そういうところで岩田がベテランらしくこうやって引っ張っていってくれるというのはうれしい。 -6回は近本が初球で盗塁 矢野監督 いや~ほんとにね。あれを細かくみんなが書いてくれたらほんとにいい記事になると思うんだけど。ほんとにレベルの高いところだし。あれをサードにチャレンジしたというところもオレは買いたいし。もちろんサードに行けなかったらワイルドピッチもないんで。あそこはチカの持ち味が存分に出た場面かなと思います。 -今日の継投は逃げ切ろうというときの1つの形 矢野監督 まあね。形というのは何回も重ねていかないと形というのは出来ないと思うし。まあ、エドワーズ、晋太郎の場面は状況見たり。スアちゃんは後ろって決まっているけど、そこは臨機応変に。まあ考えながら。そのなかで固定というのが出来ればそれは理想だと思うし。自分がここに必要だというピッチャーを選択してやっていこうかなと思っています。 -藤浪は変わってきた 矢野監督 いやいや、それはね。さっきも言ったように1回、2回で変わるもんじゃないし、それできっかけをつかむことはあると思うんだけど、本当にさっきも言ったようにしんどいのよ。中継ぎって。めちゃくちゃしんどいのよ。先発でいって自分で負ける分にはそんなハッキリしたもんでやれるっていうのはある意味、まあまあ、簡単なことじゃないんだけど先発もね、もちろん。短いイニング、この1回をみんなのもんを背負うっていうのは本当にプレッシャーがかかる。だからこそもしかしたら学べるものっていうのは、技術もメンタル的にも両方あると思うんでね。それを何回もこういう結果っていうかこういうところで登板していく中で晋太郎が成長していくっていうことになると思うんで。もっともっとこういうことを積み重ねていけば、新たな藤浪っていうのが出てきてくれるんじゃないかなって思ってます。 -2軍で球児が登板。このまま調整を続けてもらえれば 矢野監督 もちろん、もちろん。球児もそういうつもりでこっちでも話してくれてたし、球児自身も諦めてないと思うんでね。またその姿を見せてくれるっていうのは2軍とはいえね、俺らにも力を与えてくれるものになるんで。球児が今できるベストを尽くしてもらって、それがプラスになるんでね。ベストを今日みたいな形で、体大変やと思うけどやってくれたらなと思ってます。

◆阪神ジョン・エドワーズ投手が好救援で先発岩田の白星を死守した。 1点リードの7回2死一塁で登板。阿部を外角スライダーで空振り三振に仕留めた。2ホールド目で4戦連続無失点だ。岩貞、岩崎がコロナ禍で登録抹消。矢野監督は勝ちパターンを模索し「何回も重ねていかないと形はできない。エドワーズ、晋太郎の場面は状況を見て。考えながら」と説明した。

◆中日が今季8度目の零敗を喫した。 故障から約1カ月ぶりに復帰した先発ロドリゲスは6回に野選と暴投で失点したが、6回1失点の好投。ただ、外国人枠の関係と疲労を考慮して主砲ビシエドをベンチから外した打線は、代役4番のシエラが沈黙するなど散発4安打で援護できず。与田監督は「ロドリゲスは素晴らしかった。細かいミスをしていたら勝てない」と指摘した。

◆阪神近本光司外野手の足攻めが大きな勝因になった。 6回、先頭で右前打を放つと、次打者北條の初球で二盗に成功した。北條のゴロは遊撃京田の前に飛んだが果敢にスタート。野選を誘って三塁を陥れた。ロドリゲスの暴投で先制の生還だ。 リーグ最多の21盗塁目に「無死一塁より二塁がいい。1つでも先の塁を意識しながら思い切ってスタートを切れたことがよかった」と話せば、矢野監督も「サードにチャレンジしたところも俺は買いたい。サードに行けなかったら暴投もない」と絶賛した。

◆遊撃守備でミス連発の阪神小幡竜平内野手が最後は気を吐いた。9回2死。アルモンテの痛烈なゴロは三遊間寄りを襲ったがダイビングで好捕し、試合を締めた。 この日は5回2死後、阿部のイージーなゴロを捕球ミス。前日9月30日も1回にトンネル失策を犯し、矢野監督は「竜平自身も守りで信頼を勝ち取っていく選手」と評していた。この日は試合前練習で特守を行った。高卒2年目の20歳は失敗も糧にして成長を目指す。

◆阪神ロベルト・スアレス投手が藤浪と160キロ競演だ。 2点リードの9回に登板。150キロ台後半の球威で難なく2死を奪い、アルモンテと勝負した。小幡が好捕した遊ゴロは藤浪に負けじと160キロで押し込んだ。「ストライク先行をすることができたし、13連戦のなかで7球という少ない球数で終えることができて良かった」。リーグトップを快走する今季18セーブ目を挙げた。

◆阪神梅野隆太郎捕手が右腹斜筋の筋挫傷から復帰後初スタメンで、貴重な追加点となる5号ソロを放った。 1点リードの7回1死。中日福の141キロ直球を左中間スタンドへ運んだ。「まずはファンのみなさんに『ただいま』と言いたいです」とお立ち台であいさつした。 打線は6回まで中日ロドリゲスの暴投による1点のみ。「何とか出塁するためには強く低くっていう意識もあった。簡単に(ベンチに)帰りたくなかった」。とっさにバットを短く持った。「ヒットを狙いにいったら、ポンって上に上がった」。9月18日に戦線離脱した選手会長が、完全復活で勝利をたぐり寄せた。 マスクでは4人の投手を好リードし、完封リレーに導いた。試合前練習では、他の野手陣よりも早くグラウンドに姿を見せ、先発陣と入念に打ち合わせを行っていた。「ゲームで(投球を)受けて、意図を感じながらリードした。いい感じでリードできたのでよかったです」。お立ち台では恒例の「明日も勝つばい!」を披露。頼れる男が帰ってきた。【只松憲】

◆阪神藤浪晋太郎投手(26)が自己最速タイの剛球を連発した。中日戦の8回に登板。直球は160キロを5度も計測。甲子園をどよめかせる投球で圧倒した。2三振を奪い、1回無安打無失点で完璧に抑えた。コロナ禍により、中継ぎに配置転換して4度目の登板で、完全復活の予感を漂わせた。2日から甲子園で宿敵と4連戦。強力リリーバーが巨人のマジック減らしに立ちはだかる。藤浪は最後、代打井領から空振り三振を奪うと「シャーッ」とほえた。不安が消えた、自信に満ちあふれた勝負師の顔つきだ。 「バトンを受け継いで、人の勝ちだったり勝利だったりを背負う、雰囲気の違いは感じています」 公式戦7年ぶりの救援登板から4戦目。人一倍責任感の強い26歳は仲間の感情を背負うことで、本来の躍動感を取り戻しつつある。 2点リードの8回表。大阪桐蔭の先輩でもある岩田の454日ぶり白星が懸かっていた。「緊張しました。なんとか抑えたい気持ちが強かった」。7番堂上の初球から158キロ。カットボールで空振り三振に仕留めて勢いが加速した。 8番木下拓への2球目、外角高めで空振りを奪うと球場がザワついた。自己最速タイの160キロ。16年9月14日広島戦以来の大台到達だ。続けて外角低め160キロで二ゴロ。代打井領への初球にも3球連続となる160キロを投げ込んだ。 「毎回どよめきとか歓声を楽しんでいる余裕はまだちょっとないので...」 冷静な本人をよそに甲子園は1球1球、もうお祭り騒ぎ。「狙ったわけでもない。勝負する中、全力を出す中でたまたま出た」。計5球も160キロを投じ、1回を完全投球。「(イニングが)短い方がリミッターが外れる。勝手に自分の中で切り替わっている」。先輩の白星をつなぎ、ホッと胸をなで下ろした。 孫は、祖父が残した言葉を今も忘れていない。 父方の祖父、功さんが3年前の17年6月、天国へ旅立った。亡くなる間際、制球難に苦しむ孫の表情が気になったのか、久々にメールをくれていた。 「さえない顔してるぞ」-。 返信の言葉を見つけられないまま、祖父は息を引き取った。「せっかく連絡をくれたのに...」。後悔してもしきれない記憶。もうこれ以上、周りに心配をかけたくはない。 この日も登板後、試合後には笑みがこぼれた。誰の目にも充実して見える表情に、期待が膨らむ。 「いい所で投げさせてもらってる。チームの勝ちを背負って、厳しい場所で投げさせてもらっている。いい経験にしたいし、もちろんチームの勝ちにつながる投球をしていきたい」 藤浪が、息を吹き返した。【佐井陽介】 ◆藤浪と160キロ 初めてマークしたのは16年9月14日広島戦(甲子園)。1回1死満塁、5番鈴木誠への3球目。外角低めに外れた直球が、160キロを計測した。10年ヤクルト由規161キロ、そして藤浪の前日9月13日の日本ハム大谷翔平164キロ(後に165キロへ更新)に続き、日本人3人目の快挙だ。試合後には「球速より球質です。ただ、打者を押し込めている感覚はありました」と手ごたえを口にした。

◆阪神岩田稔投手(36)がコロナ禍のチームを救った。新型コロナウイルス感染者が続出し「特例2020」の代替指名選手として、通常より1日早く1軍の出場選手登録。本来の登板予定ではなかった1日の中日戦に先発し、6回2/3を4安打無失点に抑え、今季初勝利を挙げた。1型糖尿病の持病を抱え困難なシーズンだが、ベテラン左腕がチームの窮地で輝いた。 プレーボール直前、岩田は胸の前で両拳を合わせた。満月の夜空を見上げ、目を閉じる。心の中で「ばあちゃん」が優しく笑っていた。 今季2戦目の先発マウンドは6回2/3を4安打無四球無失点。打者23人から内野ゴロ13個を奪った。19年7月5日広島戦以来、454日ぶりの白星。9月22日に出場選手登録を抹消され、従来なら再登録は10月2日以降に可能だった。新型コロナウイルスの「特例2020」を巡って登板日が二転三転しても快投で応えた。「ホッとしてます」と胸をなで下ろした。 2カ月前の7月23日。岩田は2軍戦登板前日だったにもかかわらず、1人飛行機に飛び乗った。日帰りで向かった先は熊本・益城町だった。祖母・岩下ミツヱさんが老衰のため101歳で永眠。「いつも優しくて叱られた記憶がない。大好きなおばあちゃんだった」。どうしても、もう1度、顔を見ておきたかった。 最後に会ったのは17年12月。ミツヱさんは16年4月の熊本地震で自宅が倒壊し、同町の施設で生活していた。「俺の顔を分かってくれてうれしかった」。背番号21のユニホームを渡すと、喜んでくれた。あれから3年。「101歳なのに、いい顔をしていました」。 8月上旬、プロ15年目で初めて右脇腹を痛めた。「終わったか...」。弱音を吐きかけた時も、祖母の笑顔を思い出して救われた。天国に白星を届け、「消えそうで消えない油性ペンみたいなのが岩田稔だと思っています」。ベテラン健在を証明した。【佐井陽介】 ◆感染拡大防止特例2020 新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えてシーズンを円滑に進行させるため、感染者や濃厚接触者などが出た場合に柔軟に選手を入れ替えられるようにする今季限りの特例。感染やその疑い(選手及び家族)、発熱があったり、濃厚接触者となった場合、特例2020対象の出場登録抹消選手として公示し、代替選手を指名できる。

◆中日のダヤン・ビシエド内野手(31)がベンチメンバーを外れた。スタメンから外れるのは7月22日の巨人戦(ナゴヤドーム)以来。  今季はコロナ禍の特例事項として、外国人選手の出場選手登録が例年より1人増の5人以内で、ベンチ入りは4人以内と定められている。ロドリゲスが昇格して先発を務めるため、ビシエド、アルモンテ、シエラ、R・マルティネスのうち、1人がベンチを外れなければならなかった。  ビシエドは最近5試合で打率・111(18打数2安打)と低迷していた。代わって、デビュー2戦目となった前日9月30日に来日1号を放つなど3安打2打点と活躍した新助っ人のシエラが初の4番を任された。

◆3番手で八回に登板した阪神・藤浪が160キロを連発した。1死から木下拓の2球目に、2016年以来となる自身最速タイ。2球連続の160キロで二ゴロに打ち取ると、続く代打・井領の初球まで3球連続で計測した。  井領の3球目、4球目にも続けて、全14球のうち6球が160キロ。観客席は何度もどよめきに包まれた。井領も空振り三振に仕留めて三者凡退で役目を終えると、この日一番の拍手を浴びた。

◆阪神は中日に2-0で勝利した。六回に先頭の近本が右前打で出塁。その後、2死二、三塁から、中日先発、ロドリゲスの暴投で1点を先制した。七回にはスタメンに復帰した梅野が福から左中間へソロを放ち、追加点を奪った。  先発の岩田は6回2/3を4安打無失点に抑えて、今季2度目の先発で初白星。また、藤浪は2-0の八回に3番手で登板すると自己最速タイの160キロを連発。三者凡退の好リリーフで、最後はスアレスが締めて今季18セーブ目を挙げた。

◆中日は阪神に0-2で敗れ、今季8度目の零封負けを喫した。与田剛監督(54)の主な一問一答は下記の通り。  --打線の援護がなかった。低めに集められた  「まずは初球の見逃しストライクが多すぎた。もちろんタイミングを外されるようないいボールは投げてきていたと思うけど、やっぱり振っていかないとバッテリーは警戒しない。それは去年からの課題だし、ファーストストライクを振っていくというところが、きょうは全体的に消極的に見えた」  --ビシエドがベンチメンバーを外れ、シエラが4番だった  「とにかくビシエドのコンディション(ががよくなかった)。ずっと疲労困憊の中で彼もやってきて、本人も出るつもりでやってきたと思うけど。今日一日、何とかコンディションがよくなるように(休養に)充てて、あすから。一日だけでどうなるかは難しいけど」  --ロドリゲスの投球は  「投げているボールはそんなに体力が落ちたとは思わないし、ワイルドピッチはもったいなかったけど、無死から2奪三振は見事だった。素晴らしい投球だったと思う」

◆中日は打線が阪神4投手の前にわずか4安打。三塁を踏めず、今季8度目の零封負けを喫した。  体幹のコンディショニング不良からの復帰登板となったヤリエル・ロドリゲス投手(23)が6回2安打10奪三振、1失点。「すごく状態はよかった。最低限の仕事はできたと思う」と粘投を見せた。  だからこそ援護がほしかった。四回に先頭・大島が左前へ、両チーム通じて初となる安打を放ち、二盗にも成功。しかし、京田の中飛で飛び出し、二塁に戻り切れずに併殺となった。試合後、与田監督は「こういう展開というのは小さなミスが(響く)。きのうはウチが勝てたのは相手のミスというところもあったし、そういう細かいミスをしていたら勝てないよね」と話した。

◆前日の一戦で、開幕から続いていた甲子園での7連敗をようやく止めた中日。弾みとなる1勝を手にしても、与田監督は目先の勝負を見つめていた。  「タイガースに今年は非常に分が悪いので、そういった意味で一つずつ勝っていかないといけない」  しかし、打線が苦しんだ。阪神・岩田の変化球中心の組み立てに翻弄され、三回まで完全投球を許した。四回は先頭・大島が左翼へチーム初安打を放ったが京田の中飛で飛び出すボーンヘッドで併殺に...。五回も相手の失策がきっかけとなった2死一、二塁の先制機を逸した。  今季は特例事項として、外国人選手の出場選手登録が例年より1人増の5人以内で、ベンチ入りは4人以内と定められている。ロドリゲスが先発を務める上で、ビシエド、アルモンテ、シエラ、R・マルティネスのうち1人がベンチを外れなければならず、ここ5試合で打率・111(18打数2安打)と不調のビシエドが外れた。  代わって4番を任されたのは前日に来日第1号を放つなど3安打2打点と活躍した新助っ人のシエラ。だが、七回までに2三振&1併殺打。絶対的主砲の存在感の大きさを感じさせられる試合となった。(須藤佳裕)

◆走って、走って、走って虎の韋駄天がグラウンドを駆け回った。阪神・近本が、遠かった先制のホームをついに踏んだ。  「塁に出てホームにかえってくることが自分の仕事。得点はシーズン前からこだわっています」。リードオフマンとして自らの役目を「得点」と掲げる男が試合の均衡を破った。  0-0の六回先頭で右前打。続く北條の打席、初球でスタートを切った。リーグ単独トップを走る21盗塁目で無死二塁。北條は遊ゴロも"神スライディング"で相手のタッチをかわし一、三塁と好機を広げた(記録は野選)。2死となったが暴投で先制点をもぎ取った。  初対戦の先発・ロドリゲスの前に打線は五回までわずか1安打と苦戦。だが、近本が足でかき回して、マウンドから引きずり下ろした。  この日から甲子園の観客動員数は1万人から、約2万人程度にまで引き上げられた。しかし、三塁側内野席やアルプススタンドに虎党の姿はまばら。空席が目立ち、観衆は1万人にも満たない8091人だった。  近本の足攻に続き、七回にはスタメン復帰した梅野がソロで追加点。勝って、球場に熱気を取り戻す。(原田遼太郎)

◆阪神は完封リレーで中日に2-0で勝利。ベテランの岩田が七回途中まで無失点の好投で今季初勝利。9月30日に右脇腹痛から復帰した梅野は先発出場して本塁打を放った。以下、矢野燿大監督の主な一問一答。  --岩田が気迫のこもった素晴らしい投球  「そうですね。MVPというか。一番貢献してくれたのは岩田のピッチングですかね」  --リリーフの藤浪は160キロを連発  「やっぱり晋太郎(藤浪)が投げると球場のムードも上がりますし、そういうところで晋太郎も、こういうピッチングをして自信を付けてくれたら、チームにとってもすごく大きいですし。またその第一歩を踏んでくれたのかなと思います」 --打つ方では梅野がスタメン復帰で見事なホームラン  「そうですね。少し低い弾道で、どうかなと思いましたけど、あの1点っていうのは大きかったですし、(六回に)チカ(近本)の足で取った1点っていうのも本当にチカらしく素晴らしい足でしたね」  --明日から巨人戦  「そうですね。大きなことは言えないですけど、僕たちの今日みたいな精いっぱいの野球を明日からも見せていきます」

◆阪神の藤浪が2-0の八回に登板し、2三振を奪うなど1回を完璧に抑えた。過去にもマークした160キロの剛速球を連発する圧巻の内容に「感覚も良かった。自信を持って投げ込めた」と充実感を口にした。  投じた14球のうち、3球連続を含め5球が160キロだった。そのたびにファンもどよめいた。「(先発の時と)力の差の加減はないけど、短いイニングでリミッターが外れているのかな」と本人はひょうひょうと語った。今後もスアレス、エドワーズとともに勝ちパターンの一角を担う。

◆近本が足攻で値千金の先制点を呼び込んだ。六回先頭で右前打で出塁すると、続く北條への初球で二盗。さらに北條の遊ゴロで三塁を陥れた(記録は遊撃野選)。2死ののち、大山の打席で暴投を見逃さずに生還した。「チームのために一つでも先の塁にという走塁は常に心掛けていること。チームが勝利に近づく盗塁、走塁というのはこれからもやっていきたいと思います」と振り返った。矢野監督も「本当にレベルの高いところ。サードにチャレンジしたところもすごく買いたい」と絶賛。21盗塁で2年連続盗塁王に向けて、猛進中だ。

◆大きな拍手を受けながらマウンドを後にした。岩田が低めに集める投球でアウトを積み重ね、今季初白星。お立ち台では胸をなでおろし、岩田節? をさく裂させた。  「消えそうで消えないマジック(ペン)みたいなのが、岩田稔だと思うので。そういうふうに頑張っていきたい」  昨年7月5日の広島戦(甲子園)以来、今季2度目の登板で454日ぶりの勝利。36歳のベテラン左腕は27試合に先発した2015年以来、先発ローテを1年間、務めきることは少ない。それでも"消えそうで消えない"。新型コロナウイルスの感染に苦しむチームを、きっちり救った。  スライダー、ツーシーム、フォークと多彩な変化球を駆使して三回まで連続三者凡退。四、五回に安打を浴びても守備にももり立てられ、後続を断った。6回2/3を4安打無四球無失点で2番手・エドワーズにつないだ。  9月21日のDeNA戦(甲子園)で先発し、翌22日に登録抹消。通常なら10日後の2日以降に再登録が可能となる。だが、9月25日にチーム内に多数のコロナ陽性者が出て「特例2020」により、中9日で出番が回ってきた。「二転三転、四転五転していた」と大きく影響を受けたが、15年目のベテランはピタリと登板日に状態を合わせてきた。  チームは13連戦の真っ最中で、投手のやりくりが大変な時期。そんな危機も助ける投球に矢野監督も「MVPというか。一番、貢献してくれたのは岩田。調整も簡単でなかったと思うけど、大きな1勝」と称賛した。  「ホッとしています。テンポよくいけたので自分の投球ができたかな」  お立ち台で胸をなで下ろした岩田。まだまだベテラン左腕の力が、虎には必要だ。(菊地峻太朗) ★糖尿病患者から刺激受けた  岩田は昨年12月に糖尿病患者支援プロジェクトの表彰式に参加し、当時順大3年だった野島理紗子さんと初対面。自転車競技のスプリントで活躍も、高2で1型糖尿病を発症。医者から競技をやめるように宣告されたが、岩田の著書「やらな、しゃーない!」を読んで続けることを決断した。彼女が「岩田さんに会えたことが本当にうれしい」と話すと、岩田も「糖尿病患者の中で一番になりたい。いろいろな競技から出てきてくれたら僕も楽しみが増える」と刺激を受けていた。

◆歓声に運ばれ、白球が左中間スタンドに吸い込まれた。梅野がスタメン復帰即弾。今季2度目のお立ち台。中秋の名月も見守る中での第一声は、復活を待ち望んだ虎党へ感謝の言葉だった。  「まずファンの皆さんに『ただいま』といいたいです。打った瞬間は入ると思っていなかったけど、ファンの皆さんの後押しが(あって)、ホームランになったんじゃないかと思います。ありがとうございます!」  1-0の七回。福に2球で追い込まれてから、バットを極端に短く持った。「簡単に帰りたくなかった」。ファウルで粘った8球目、141キロ直球を振り切る5号ソロで貴重な追加点をあげた。  9月18日に右腹斜筋の筋挫傷で4年ぶりの登録抹消。9月30日に1軍復帰し、代打で即出場した(結果は右飛)。そしてこの日は9月17日の巨人戦(東京ドーム)以来の先発マスクをかぶると、復活をアピールした。  「梅野の復帰試合って印象に残るような。プレーだけじゃなくて、一生の思い出に残るようなものにしてほしかった」  復帰への活力をくれた虎党へ、感謝の気持ちを込め、お立ち台が決まった瞬間に「ただいま」というひと言目を決めた。けがで戦線を離れたことで、一層身に染みたファンの存在。だからこそ、こんなお願いもした。  「みなさんの声援の力はすごい。どんどん応援してもらって、そうしたら晋太郎(藤浪)も、自信に変わっていくんじゃないかと思う」  女房役として、マウンドで苦しみもがく姿をずっと見てきた。その藤浪が中継ぎで殻を破ろうとしている。「きっかけがないと、人って自信に変わっていかない。その自信を少しでも確信に変えてあげられるように」。そのために虎党にも力を貸してほしい。正妻ならではのエールだった。  「この流れに乗って、しっかり連勝を伸ばしていけるように頑張りたい。明日も勝つばい!」  頼もしく帰ってきた虎の正捕手。もう怖いものはない。(原田遼太郎)

◆リリーフ晋太郎、スゴすぎる! 阪神は中日に2-0で競り勝った。八回に登板した藤浪晋太郎投手(26)が自己最速タイの160キロを連発し、1回をピシャリ。先発した大阪桐蔭高の先輩、岩田稔投手(36)の今季初勝利もアシストした。チームは2カードぶりに勝ち越し、貯金は「3」に。2日からの首位巨人との直接対決も、頼むで~!!  緊迫した試合が最高のショーに変わった。1球ごとに、グラウンドとスピードガンに交互に目をやるファンのどよめき。場内の興奮が右腕のアドレナリンと同化した。こんな藤浪を待っていた。  「感覚もよかったし、ブルペンからずっとよかった。いい感じで、わりと自信を持って投げられたかなと思います」  先頭の堂上の初球の158キロから、何かを期待するざわめきが甲子園を包んだ。予感は1死から木下拓の2球目に実現した。「160」の表示で、観衆8091人と物足りない聖地に、地鳴りのような音が復活した。  2球連続の160キロで二ゴロに打ち取ると、代打・井領の初球まで3球続いた。さらに3、4球目も大台。14球のうち5球が、2016年9月14日の広島戦(甲子園)で計測した4年ぶりの自己最速タイ。フォークで空振り三振を奪って三者凡退が完成すると、この日一番の歓声が注がれた。  「(球速は)勝負の中で全力を出す中で、たまたま。(先発でも)全力で腕は振っているけど(イニングが)短い方がリミッターが外れる。意識していないけど、勝手に自分の中で切り替わって」  新たな職場に進化の予感だ。チームは新型コロナウイルス感染拡大でメンバーを大改造。持ち場がリリーフに変わった。2日前に3点差でプロ初ホールド。「死ぬほど緊張した」と振り返った以上にしびれる展開。直前の梅野のソロまで、1点差で出番を待った。ベテランの岩田の今季初勝利もかかっていた。  「点差も点差。この前ほどではないけど緊張しました。特に岩田さんだったので。岩田さん(勝利は)いつぶりですか」  大阪桐蔭高の先輩の奮闘と思いを背負い、責任と集中力も増す。「先発で八回に突入するのと話が違う。人の勝ちや勝利を背負ってという雰囲気の違い」。もともと自然と視野を広げる性格だ。弱冠21歳の15年に「あのファンサービスも、こうしたらもっと盛り上がるかも。ネーミングひとつでも、こんなのどうですか」。専門外の運営まで気にかけた。周囲が必死につないだバトンを手にして、力が解放された。  吹っ切れた姿に、矢野監督も「学べるものは技術もメンタルも両方ある。新たな藤浪が出てきてくれるのでは」と注目した。2日から12・5ゲーム差の巨人戦。「精いっぱいの野球を見せていきます」と誓った。新セットアッパーも頼もしい武器。背番号19は胸をたたいた。  「チームの勝利を背負って、厳しい部分を投げて。なかなか経験できるものではない。いい経験にしたいし、もちろんチームの勝ちにつながる投球をしていきたいです」  誰よりも甲子園のムードを変えられる主役。最後の意地をみせる戦いに弾みをつけた。(安藤理)

◆藤浪の八回のマウンドは圧巻だった。160キロを連投する姿に「ようやく居場所を見つけたな」という思いが強い。終盤にあの球威で押されたら、打者は打てない。  先頭の堂上を空振り三振に仕留めたカットボールが、やや抜け気味にインハイへ。直後、マウンドでシャドーピッチングのように確認する姿があった。自分の思った軌道でないことを気にしたのだろう。だが、あの1球も含めて、藤浪のスタイル。あの程度の球を気にする必要はない。  本人の中には、まだ何10%かの確率で、先発への思いがあるはず。でも今は、諸条件が重なって1軍に戻り、中継ぎを任され、いい流れに乗っている。今いる場所を大事にしてほしい。あの藤川球児が最初は「七回」で大成功したように。  最大の勝因は岩田の好投だ。制球重視で無駄な力を入れない、ベテランらしい投球。途中からフォーシームを使い始める変化も見せ、西勇をほうふつさせた。十分ローテを任せられる。梅野の打者を観察した好リードがさえていたことを付け加えておきたい。(本紙専属評論家)

◆これが虎のドラマやー! 61歳虎ジイさんの俺は、もち涙ポロポロこぼれて止まらんわー!!  本日の阪神の先発は今季未勝利の岩田稔。36歳という年齢を考えたら崖っ縁のマウンドだったのだ。そんな状況で中日先発・ロドリゲスは五回まで虎打線を1安打という完璧なピッチングを繰り広げる...。負けるな岩田ー!!  俺、サインをのぞき込むしぐさをはじめ、投球フォームにスライダー(面構え含め)全部大好きなんやー! それにインスリンを打ちながら、糖尿病と闘いながらの野球人生...。その岩田が白星をつかんで、もう涙が止まらんわー!!  しかし、人生とは摩訶(まか)不思議なり? あの憎きコロナの特例2020(抹消期間短縮)が初勝利をもたらすなんて...。藤浪の「心配かけたけどもう大丈夫やでエ!!」と言わんばかりの160キロ連発にもジイさんは涙ポロポロ...。  とどめは元阪神の歳内がNPBにヤクルトで復帰しての1勝!! ポロポロ...これが泣かずにいられよか~。

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
巨人
55274 0.671
(↑0.004)
M21
(↑1)
34407
(+5)
288
(+3)
104
(-)
52
(+1)
0.259
(↓0.001)
3.230
(↑0.01)
2
(-)
阪神
43404 0.518
(↑0.006)
12.5
(-)
33369
(+2)
348
(-)
89
(+1)
56
(+2)
0.245
(↓0.001)
3.530
(↑0.04)
3
(-)
DeNA
42435 0.494
(↓0.006)
14.5
(↓1)
30377
(-)
348
(+2)
90
(-)
22
(-)
0.266
(↓0.001)
3.680
(↑0.03)
4
(-)
中日
40445 0.476
(↓0.006)
16
(↓1)
31310
(-)
363
(+2)
52
(-)
22
(+1)
0.245
(↓0.001)
3.830
(↑0.01)
5
(1↑)
ヤクルト
34476 0.420
(↑0.007)
20.5
(-)
33367
(+2)
433
(-)
85
(-)
51
(+2)
0.251
(↓0.001)
4.600
(↑0.06)
6
(1↓)
広島
33468 0.418
(↓0.005)
20.5
(↓1)
33369
(+3)
419
(+5)
86
(+1)
38
(-)
0.261
(↓0.002)
4.460
(↓0.01)