1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | 安 | 失 | 本 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全パ | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 6 | 9 | 1 | 3 |
全セ | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 9 | 0 | 1 |
勝利投手:千賀 滉大(1勝0敗0S) (セーブ:山本 由伸(0勝0敗1S)) 敗戦投手:大瀬良 大地(0勝1敗0S) 本塁打 |
◆全パは2回表、森の2ランで先制する。6回には、浅村と山川の2者連続本塁打が飛び出し、リードを広げた。投げては、先発・千賀が2回無失点3奪三振の好投。その後は、4投手の継投でリードを守りきった。敗れた全セは、9回に代打・原口の2ランで追い上げるも及ばなかった。
◆全パのソフトバンク松田宣浩内野手(36)の球宴初本塁打はならなかった。 ロッテ・レアードの代走で6回から出場。9回の初打席でDeNA山崎の146キロ低め直球を中堅へはじき返したが、あと数メートルで本塁打というフェンス直撃の二塁打。球宴では43打席ノーアーチだが、元気な36歳は円陣での声出し、本塁打を打った西武山川の背後でどすこいパフォーマンスを行うなど盛り上げた。「惜しかった。山崎は一番対戦したかった。(一緒にどすこいは)球宴ならでは」と満足そうだった。
◆全セ広島の守護神フランスアは全球直球で、8回の1イニングを3者凡退に抑えた。 デスパイネを156キロで空振り三振、浅村を156キロで遊直、山川を156キロで一邪飛。全26球のうち、山川への初球でこの日最速の157キロをマークした。「すごく楽しい雰囲気だった。初球からすべて真っすぐと決めていた。デスパイネから三振を取って自信になった」と話した。
◆全パは2回に西武森の2ランで先制した。先発のソフトバンク千賀は2回無失点。全セは広島大瀬良が2回2失点で降板した。 全セは4回にDeNA筒香の適時内野安打で1点を返した。全パは6回に楽天浅村、西武山川の連続本塁打で2点を追加した。 全パは9回、ロッテ荻野の左前適時打などで2点追加。全セは阪神原口の2ランで追い上げたが、全パが逃げ切った。
◆全セの開幕投手を務めた広島大瀬良大地投手(28)は全37球中34球がストレートという、球宴ならではの真っ向勝負で盛り上げた。 2回先頭の4番西武山川は、150キロのボール球で空振り三振に仕留めた。「(山川は)三振かホームランかわからないですけど、真っすぐで勝負します」と予告していた。2回2死一塁から西武森に右越え2ランを浴び、2回2安打2失点だった。
◆西武森友哉捕手が「球宴令和1号」を放った。 全パの「7番捕手」で先発マスクをかぶった。2回の第1打席で、1球目から観客の度肝を抜く。大瀬良の149キロの直球をフルスイング。豪快な空振りに歓声があがる。2球目は大ファウルを3階席に運んだ。1球見送りカウント1-2から、4球目を右翼スタンド2階席に運んだ。「真っすぐ1本! 1、2、3でいきました! 完璧な当たり」と先制2ランを振り返った。 プロ2年目の15年、19歳にして1号をマーク。2本目の昨季は、第1戦でMVPを獲得したお祭り男でもある。捕手としては初めてファン投票で選出されると「MVPとれるように頑張ります」と宣言。同時に「パ・リーグを代表する投手と組むことが楽しみ。『アイツ、下手くそだな』と思われないように頑張ります」と扇の要を担う責任感も口にしていた。序盤は千賀、有原を好リード。攻守で活躍を見せた。
◆ジャニーズJr.内のユニット「HiHi Jets」がファーストピッチセレモニーを行った。 メンバーの高橋優斗(19)が登板。「皆さん初めまして! ジャニーズJr.、HiHi Jetsの高橋優斗と申します! 僕は小学校のころから野球をやっていて、今、この夢の舞台に立って、めちゃくちゃ緊張しています! 是非、今永選手、そして有原選手のようなストレートを投げたいと思いますので、皆さんよろしくお願いします」とマウンド上で絶叫しながらあいさつ。他のメンバーに見守られながら、阪神梅野にワインドアップで投げ込んだ。 ボールは外角高めにズバッと決まり、打席のジャビットが思わず見逃すほど。見事なストライク投球で球場からの喝采を浴びた。
◆全セのDeNA筒香嘉智外野手が剛速球をはじき返した。先頭打者で迎えた2回、ソフトバンク千賀の155キロ直球を強振。鋭い打球で一、二塁間を破り、チーム2本目の安打を放った。 試合前は「見に来ていただいたファンの皆さんも楽しんでもらえるようなプレーをしたいです」と話したとおり、力と力のぶつかり合いでファンを喜ばせた。
◆衝撃の"燕のゴジラ"パワーだ! ヤクルト野手で球宴最年少選出となった村上宗隆内野手(19)が、あいさつ代わりの看板直撃弾を放った。ホームラン競争準々決勝でオリックス吉田正と対戦。敗れたが、4本塁打をマークした。 白木のバットがしなって、打球は一直線に飛んだ。ヤクルトの星野ブルペン捕手が投手役を務めた9スイング目。右翼席後方の「旭化成 ヘーベルハウス」の看板に直撃する1発を放ち、スタンドを沸かせた。過去の公式戦ではDeNA筒香、巨人小笠原、高橋らが直撃弾を放っており、偉大な左打ちの大砲に肩を並べた。 練習のフリー打撃では最初の9球をミスショット。それでも3度目のゲージ入りで全5球をスタンドに運んで、いつもの調子を取り戻していたが「緊張して、バッティングフォームが分からない。侍ジャパンの時と同じくらい緊張しています」と19歳らしく顔を引きつらせた。 その侍ジャパンは、吉田正と出会った場。3月に初招集され、ヤクルト宮本ヘッドコーチの計らいで言葉を交わした。守備面で悩んでいたが、プロ2年目へ「自分の持ち味をしっかり出して、思いきりやればいい。チームのために効果的な打点を挙げる。得点圏で打てる打者になる」とアドバイスをもらった。経験談を元にした心構えは、しっかり生きている。 チームで唯一全試合に出場し、63打点は堂々のセ・リーグトップタイ。熊本から駆けつけた両親の前で、成長した姿を見せた。
◆準々決勝第1試合は巨人坂本勇人内野手(30)とロッテのブランドン・レアード内野手(31)が対戦した。 ホームラン競争初出場の坂本勇は、打撃投手に同僚の岡本和真内野手を指名。岡本は智弁学園時代に元甲子園出場投手だが、不慣れなマウンドで全体的にややボールが高めに浮き、ラスト1球は痛恨のボール球でスイングができず。そこは坂本勇が打撃技術でカバーして4本塁打。 レアードは東京ドームについて「大すし」と大好きとかけるほど得意とする球場だが、本領を発揮できずに2本塁打とどまり敗退した。 第2試合はヤクルト村上宗隆内野手(19)とオリックス吉田正尚外野手(25)が対戦。選出メンバー最年少の村上は看板直撃弾、右翼席後方のバルコニー席弾を含む4本塁打。だが、5本塁打の吉田正に力の差を見せつけられた。 準決勝は坂本勇が看板直撃弾を含む3本塁打で盛り上げるも、吉田正が初球から脅威の4連発で13日第2戦(甲子園)での決勝進出を決めた。吉田正は「バッティング投手の方がとても打ちやすくて、思い切りスイングできた。このあとの試合でもホームランを打てるように頑張ります」と意気込んだ。
◆ヤクルト山田哲人内野手が、令和球宴初の安打を放った。ソフトバンク千賀の内角高めの156キロ直球を、中堅手西武秋山の頭上を越えるフェンス直撃の三塁打。 千賀の速球との対決に注目が集まり「いい投手だから」と話していたが、見事に打ち返した。本塁打には1歩及ばなかったものの「打席に入ったら、シーズンと同様の集中力を持って打ちたい」と意気込んでいた通り、最初の見せ場をつくった。
◆プラスワン投票で選出された阪神原口文仁捕手(27)が、感謝のアーチを描いた。 大腸がんを乗り越え、たどりついた夢舞台。9回2死一塁で代打出場し、バックスクリーン左に2ランを運んだ。 出場が決まった際には、矢野監督からは「普段、しぶといバッティングを見せてると思うけど、甲子園でホームラン、狙えばいいんじゃないかな」と、本塁打指令も出ていた。それを伝え聞いた原口は、感謝しつつも「狙っても打てない。偶然を期待したいです」と応じていたが、打席でジャストミート。大病からの復帰初アーチを大舞台で飾ってみせた。 昨年末、人間ドックを受診し、大腸がんと診断された。まさか、原口が...。だれもが言葉を失う衝撃の告知にも、本人はくじけなかった。家族、チームメートら待っていてくれる人のため、必ずまたバットを握る。グラブを手にする。その一念で1月末に手術を終え、リハビリを経て3月上旬に2軍に合流。1歩ずつ、復帰への道を歩んできた。1軍復帰初戦となった6月4日ロッテ戦で適時二塁打を放ち、同9日日本ハム戦でサヨナラ打。本拠地で「みんな、ただいまー!」と叫んだヒーローを、甲子園は大歓声で出迎えた。その1カ月後に届いた知らせが、球宴出場。その舞台で、不屈の男が輝いた。
◆全セのDeNA今永昇太投手が2イニングを完璧に抑えた。3回から2番手で登板。打者6人に対して、直球勝負。 150キロ超の球でグイグイと押しこみ、4回は浅村、山川、吉田正と全パのクリーンアップを封じた。「会沢さんのミットを目掛けて、しっかりと腕を振ることができた。打たれてもストレートで押したいと思っていました」と真っ向勝負を楽しんだ。
◆全パの西武山川穂高内野手が「どすこい対決」を制した。 6回2死、巨人山口の144キロ直球を左翼席へ放り込んだ。リーグトップの29本塁打、72打点の"横綱"が球宴初本塁打をマークした。勝利、勝率、防御率でセ・リーグトップに君臨する、どすこい右腕を立ち合いの初球で突き飛ばした。「狙っていました。打った瞬間、いくと思いました」と納得の一打。ベンチ前では熱男ことソフトバンク松田宣、ナインを引き連れて念願の「どすこいパフォーマンス」を披露した。
◆巨人菅野智之投手が初のMVPを狙う。先発予定の13日第2戦(甲子園)へ向け、キャッチボールなどで最終調整。 試合前にはソフトバンク千賀らと言葉を交わした。阪神ジョンソンには「教えたくない半面、断れないので...」としつつも、質問されたスライダーの握りを伝えた。7年連続7度目の出場も表彰された経験はゼロ。「1回も賞に絡んでいない。MVPを狙います」と宣言した。
◆全パの楽天浅村栄斗内野手が西武山川穂高内野手とアベック弾を放った。 6回2死から巨人山口俊の147キロ直球をバックスクリーン右へとぶち込んだ。直後に4番山川も1発を放ち、約1年ぶりに「AY砲」の競演を見せた。西武時代の18年には山川と14度のアベック弾を放ち、外国人選手が絡まないコンビでは68年の王と長嶋(巨人)と並んで歴代最多の記録を持つ。「あいつとアベック弾を打ちたいと個人的に思っていた。僕が打てばアイツが必ず打つと思っていたので、うれしい」と喜べば、山川も「(アベック弾が)1番うれしかったかもしれません。いてくれたら頼もしい」と笑みがこぼれた。
◆日本ハム宮西尚生投手(34)が、本気の勝負で次代のスターを封じた。 2年連続3度目の出場となった球宴は5回に出番が訪れた。打席には前半戦で20発をマークした19歳のヤクルト村上。「オールスターなら真っすぐ勝負かもしれないけど...しっかり抑えたいと思ってスライダーを投げちゃった」。直球3球で追い込み、最後は伝家の宝刀127キロのスライダーで空振り三振。貫禄を見せた。 勝負の後半戦へ向けて景気づけとなる内容だった。自身は球宴で初めての3者凡退。普段より2、3キロ増しの最速145キロもマークした。「(スピードガンも)オールスター用でしょ? 勘違いしたよね」と苦笑いも、いつもと変わらぬ仕事ぶりに「しっかり抑えたいと思っていました」と手応えをにじませた。 試合前には関学大で同期のロッテ荻野、後輩の阪神近本と記念撮影。「オールスターで関学出身の3人がそろうのはすごい」と互いに健闘を誓い合った。さらには、同僚の西川と西武秋山がスライダーへの対応法を議論する場面に遭遇して「盗み聞きしていました」とニヤリ。「それを聞いても(秋山の)怖さは変わらない」と言いながらも、覇権を争う強力なライバルの思考にも、思わぬ形で触れた。 15日から首位ソフトバンクとの3連戦(ヤフオクドーム)で後半戦がスタートする。「かなり大事。5、6月は連投ができなかったので、しっかり働きたい」とフル回転を宣言した。【木下大輔】
◆「マイナビオールスターゲーム2019」の第1戦が12日、東京ドームで開催され、プラスワン投票で選出された阪神原口文仁捕手(27)が、感謝のアーチを描いた。 大腸がんを乗り越え、たどりついた夢舞台。9回2死一塁で代打出場し、左中間席に2ランを運び、敢闘選手賞に選出された。令和初の夢の祭典で、不屈の男が劇的ドラマを生み出した。9回2死一塁。代打コールされると、力の限りバットを振り抜く。日本中の注目を集めた白球が、左中間スタンドに突き刺さる。大腸がんを乗り越え、たどりついた夢舞台で、まさにミラクル弾...。プラスワン投票で選出してくれた全国のファンに、感謝のアーチを描いた。 「本当にたくさんの方にサポートしてもらった。ファンの方にも励ましの手紙などをたくさん頂いて...。僕自身、本当に勇気づけられた。(恩返しに)最高の結果だったと思います」 本塁を踏み、ヘルメットを脱いだ。無数の拍手を、歓声を一身に浴びた。「みなさんに『ありがとうございます』の意味を込めて。(本塁打を)狙って打てるバッターじゃない。自分のスイングを心がけた中で本当にいい打球が飛んでくれた」。矢野監督から「狙えばいい」と本塁打指令も出ていた。原口は感謝しつつ「狙っても打てない。偶然を期待したい」と応じていたが、大病からの復帰初アーチを夢舞台で飾ってみせた。 まさか...から劇的な歩みはとどまるところを知らない。昨年末、人間ドックを受け、大腸がんと診断された。決してくじけなかった。家族やチームメート、自分を待ってくれる人のために-。必ずバットを握り、ミットを手にする。その一念で、1月末に手術を終えると、地道なリハビリを経て3月上旬に2軍に合流。1歩ずつ、復帰ロードを進み、6月4日に1軍昇格。その当日に復帰安打を放つと、同9日にサヨナラ打。さらに1カ月後に届いた知らせが球宴出場。感謝の思いをまたもプレーで体現した。 原口 ほんとに幸せだな...と感じてます。また夢のような場所で野球ができて感謝の気持ちでいっぱい。半年前を考えたら、ここにいることが夢のようなこと。この現実を思い切り楽しんで元気にやりたい。 前打者の中日高橋が凡退なら巡ってこなかった打席。野球の神様も原口のバットを待ち望んでいたに違いない。奇跡のようなストーリーだが、あきらめなかった男が現実に刻んだ物語だ。【真柴健】
◆全パ・リーグの日本ハム有原航平が楽しみにしていた同学年対決を制した。 3回から2番手で登板。同い年のヤクルト山田哲人を、152キロ直球で詰まらせて遊ゴロに打ち取り、「とりあえず、抑えられて良かった」と笑顔で振り返った。4回は失策絡みで失点も、早大の後輩・楽天茂木の攻守にも助けられ「懐かしかったです」。後半戦は先発陣の柱としてフル回転が期待される。「1戦1戦、全力でいきたい」と意気込んだ。
◆ファン投票と選手間投票でダブル選出された全セ・リーグの阪神梅野隆太郎捕手が、フルスイングに全力疾走で内野安打をもぎ取った。 7回1死から代打で出場し、全パ5番手のオリックス山本の2球目。外角148キロをフルスイングした打球は二塁前に高く弾むゴロ。二塁の楽天浅村の送球と勝負になったが、先に一塁を駆け抜けた。「大きな歓声をもらえて、気持ちよく打席に入れた」と17年に続く安打とした。 7日広島戦で左手首を痛め、後半戦のラストカードの巨人3連戦は大事を取って欠場。球宴の舞台で実戦復帰し、フルスイングで元気な姿をファンに届けた。「いろんなことにトライして、楽しめた1日だった」と笑顔。本拠地開催となる甲子園での第2戦に向けて「とにかく自分ができるパフォーマンスを出して、楽しんでケガなく終えられるように。本拠地甲子園でいい結果が出たら、いいなと思います」と意気込んだ。【奥田隼人】
◆フルスイングで臨んだ全パの日本ハム西川遥輝外野手だが、バットの芯を外され右飛に倒れた。8回の守備から途中出場。9回に唯一の打席がまわったが、出塁はならなかった。 「自分の状態が良くない中でも、思い切っていきました」。故郷・関西で行われる13日の第2戦(甲子園)はスタメン出場の見込み。「明日1本出せるように頑張ります」と、主役を狙う。
◆第1戦は全パが6-3で全セに快勝し、2017年から5連勝として通算成績を85勝78敗11分けとした。全パは2回に森友哉捕手(西武)の2点本塁打で先制。6回には浅村栄斗内野手(楽天)、山川穂高内野手(西武)の2者連続本塁打で2点を奪ってリードを広げた。全セは9回に大腸がんの手術から復帰した原口文仁捕手(阪神)が2ランを放った。 第1戦の表彰選手は次の通り。▽最優秀選手賞 森(西武)▽敢闘選手賞 山本(オリックス)、山川(西武)、原口(阪神)
◆全パの日本ハム近藤健介外野手がフルスイングで球宴初本塁打を狙ったが、わずかに届かなかった。 初回に広島大瀬良の154キロ直球をとらえたが、左翼フェンスギリギリでDeNA筒香に好捕された。 「明日は甲子園なので、打てるとしたら(狭い東京ドームの)今日かなと。でも、力勝負は楽しかった」。13日の第2戦(甲子園)へ向けて「(試合に)出たら1発、狙っていきたい」と聖地でのリベンジを期した。
◆球宴にルーキーで唯一選出された阪神近本光司外野手(24)も晴れの舞台で輝いた。6回1死から安打を放った巨人丸の代走で途中出場すると、宣言通りの「初球スチール」を決めた。4番手の楽天松井の初球にスタートを切り、西武森の送球をかいくぐって二盗成功。出場が決定した際に初球から盗塁を仕掛けることを宣言した公約を実現してみせた。13日に本拠甲子園で開催される第2戦では初安打も刻んでみせる。憧れの夢舞台で、持ち味を存分に発揮した。6回に代走で途中出場した全セの阪神近本が有言実行の初球スチール成功だ。 「自分のアピールポイントである足を見せることができて100点です。初球からの盗塁を求められていると思っていたので、初球から絶対走ってやろうという気持ちでした。(歓声は)走っているときも聞こえましたね」 巨人丸の代走で出場した6回1死一塁。近本は「絶対に走るぞ」と警戒された中で、初球から果敢にスタートを切った。「捕手にも投手にもプレッシャーかかるので(初球に)できる限りスタートを。それが一番球場も沸くし、チームも勢いづく」。セールスポイントである盗塁への思い入れは人一倍に強い。「自分が(プロで)生きていく上で必要なものです」。プロとして、自分の足に生活をかける自負がある。 淡路島で生まれ育ち、中学3年で進路に悩んだ。自身のレベルアップのため「島を出たい...」と決意の家出。冷蔵庫に張り紙をして、父親からの"許し"が出るまで帰らなかった少年は、ファン投票で球宴出場するまでに大きくなった。 意志を固めれば、絶対に曲げない。いちずな男だ。昨年3月、中学時代のクラスメートだった未夢(みゆ)さんと結婚。寄り添う妻と見てきた未来は無数にあった。「子どもの頃はケーキ屋さんに、パン屋さん。警察官に消防士...。大きくなってからは県庁に務めたいとか商社に入って働いてみたいなとか...」。本当の「夢」は、あまり語らなかった。ずっと胸中に秘めていた「プロ野球選手になりたい」という思いをかなえ、喜びを分かちあった。 試合前には巨人原監督から「これからどんどん(球界を)引っ張っていかないといけない選手にならないと」と声を掛けられた。敵将にも寄せられる期待を、近本は裏切らない。 強く思えば、夢はかなえられる。「野球人口も減少してきていると聞きます。自分の仕事や、子どもたちに夢を伝えられたらいい」。初心を忘れず、心から野球を楽しんだ。スピード感あふれる近本の盗塁は、きっと子どもたちの胸にも刻まれた。【真柴健】
◆全パ・リーグのコーチとして参加した日本ハム栗山英樹監督が、大腸がんの手術から復帰した阪神原口文仁の本塁打に心を打たれた。 「やっぱりさ、感動したよ。工藤監督や辻監督とも話したけど、野球の神様はやっぱりいるんだなと。勇気を与えてくれたなと思う。それを含めて、パ・リーグも勝ったので良かった」。野球の素晴らしさに触れ、笑顔で球場を後にした。
◆東京ドームに「ムーンショット」が打ち上がった。「マイナビオールスターゲーム2019」第1戦で、全パの西武森友哉捕手(23)が、球宴令和1号を放った。「7番捕手」で先発マスクをかぶり、2回の第1打席に広島大瀬良の直球を超アッパースイング。打球に42度の角度をつけ、2階席へ先制2ランを運んだ。球宴通算3本目のアーチが決勝弾となり全パが勝利。2年連続MVPを獲得し、令和のお祭り男に名乗りを上げた。見上げた先に月はない。それでも西武森の視線の先で、東京ドームの屋根に届かんばかりの打球が、2階席へ着弾した。「まっすぐ1本! 1、2、3でいきました! 完璧な当たりでした」。その言葉通り、大瀬良の直球をとらえた1発だった。 初球からフルスイングで観客の度肝を抜く。2球目は3階席への大ファウル。1球ボールを見送り、アッパースイングから繰り出されたアーチの打球角度は42度だった。天に向かうかのごとく高々と舞い上がる角度。今季、メジャーでエンゼルス大谷が39度のアーチを描き、その急角度から名付けられた「ムーンショット」のさらに上をいく角度。令和新時代1号アーチを描き、決勝弾となった。 4年前に初出場した球宴でも、ここ東京ドームで怪打を打っていた。大阪桐蔭の先輩でもある阪神藤浪から打った球が、天井にぶち当たり一飛となった。漫画ドカベンの坂田三吉の「通天閣打法」を再現したような怪打で、どよめきを起こした当時、まだ19歳だった。「坂田ですよね? 似てましたか?」とあどけなく笑った森は、今季首位打者を争う。球界を代表する捕手としてパ・リーグの扇の要を担った。 捕手として初めてファン投票で選出されると公約したことがあった。「MVPをとれるように頑張ります」。昨季第1戦で初受賞すると、賞金300万円で源田ら同僚たちにごちそう。宣言通り2年連続のMVP受賞。平成と令和をまたにかけ、お祭り男が盛り上げた。【栗田成芳】
◆全パ・リーグ初出場のソフトバンク・グラシアルがまさかの初球死球を食らった。 6回の守りから出場し、9回の初打席でDeNA山崎の初球ナックルが左足に当たり苦笑い。「直球を待っていたのに、なぜナックル...。痛くないよ。(球宴を)すごく楽しめた」。同僚のデスパイネは8回に代打で登場し、初球にまさかのセーフティーバントの構えをするなど、キューバコンビが祭典を盛り上げた。
◆全パの西武森友哉捕手(23)が、球宴令和1号を放った。「7番捕手」で先発マスクをかぶり、2回の第1打席に広島大瀬良の直球を2階席へ先制2ラン。球宴通算3本目のアーチが決勝弾となり全パが勝利、MVPを獲得した。試合とは打って変わって、森はホームランダービーには弱気になった。甲子園での第2戦前に出場するが「本当に嫌だ。本当にやりたくない。甲子園は風がライト方向からなので」と左打者に不利な浜風にため息。高校時代は主役になった聖地でもあり「1本、2本打てたらいいなと思います」と低めに目標を設定した。
◆阪神原口文仁捕手が代打で出場した9回に2ランを放った。 阪神の打者の球宴での本塁打は、10年第2戦ブラゼル以来9年ぶり。 日本人では、08年第1戦金本知憲以来11年ぶり。生え抜き選手に限ると、00年第3戦の坪井智哉、新庄剛志以来19年ぶりだ。代打本塁打となると、80年第3戦掛布雅之以来、39年ぶり6度目となった。 ちなみに、原口は今季公式戦で19試合に出場。38打席立って本塁打なし。公式戦で最後のアーチは18年9月6日の広島戦。
◆ロッテ荻野貴司外野手は初の球宴の舞台で持てる力を発揮した。全パの「8番右翼」で先発出場し、5回の第2打席。フルカウントからの6球目、巨人山口の低めの141キロを左中間スタンドへ向けてすくい上げた。「惜しかったですね。行ったかなという感じではなかったですが」と打球はフェンス最上段に当たる二塁打となった。さらに9回1死三塁の第4打席では左前に適時打。苦労人の一打一打に三塁側ベンチの選手たちも総立ちで喜んだ。 普段通りを貫いた。打撃練習ではスタンドインが飛び交い歓声があがる中、初球をバント、次はバスター。「すごい選手がいっぱいいるので刺激になりました」という中でも荻野らしさを見せた。 第2戦の開催地は地元関西。「(今日は)無事に試合が終われたことがよかった。(明日は)親とかも見に来てくれるので頑張りたい」。10年間の涙を2日間に詰め込む。
◆全パ・リーグ2度目の出場となったオリックス山本由伸が球宴初セーブをマークし、敢闘選手賞を受賞した。 7回から5番手で登場。9回に代打原口に2ランを許したが、3イニングを2失点に抑えた。「今年は長いイニングを投げる可能性があるので、いいパフォーマンスを見せられるように頑張りたい」と話していた。初出場の昨年は第1戦で筒香に2ランを浴びたが、今回は9回1死から左飛に打ち取り雪辱した。
◆全セの巨人坂本勇人内野手が初出場のホームランダービーで"甲子園右腕"とコンビを組んだ。打撃投手に智弁学園時代に甲子園で登板経験のある同僚の岡本を指名。 1回戦は4本塁打で突破も、準決勝でオリックス吉田正に敗れ「(岡本)和真がいい球を投げてくれたんですけどね。いい経験ができました」と汗をぬぐった。初体験を終えた岡本は「楽しかったです!」と笑顔で振り返った。
◆プラスワン投票で選出された阪神原口文仁捕手(27)が感謝のアーチを描いた。大腸がんを乗り越え、たどりついた夢舞台。9回2死一塁で代打出場し、左中間席に劇的2ランを運び、敢闘選手賞に選出された。試合後の主なコメントは以下の通り。 -最高の舞台での打席を振り返って あまりいい成績ではない中で、ファンの人に最高の舞台をつくっていただいて。感謝の気持ちと、自分の打席は思いっきり楽しいんでいこうというつもりで、1球目からスイングできた。たくさんのサポートをしてくれた方だったり支えてくれた方々に少しでも今日の結果が恩返しにつながるとしたら、最高の結果だったと思います。 -打席に入る時に、沸き上がるような歓声 僕もしっかり聞いて打席に入っていけたので、こういう雰囲気をつくってくれたファンの方に感謝の気持ちでいっぱいです。 -ホームランを狙ったところは? 狙って打てるバッターじゃないんで(笑い)。しっかり自分のスイングをしようと心がけた中で、本当にいい打球が飛んでくれたのでうれしかったです。 -今後につながる活躍になる つなげられるように。明日もオールスターがあるんですけど、その後の後半戦にも生かせるように。準備と練習をしていきたいなと思います。 -13日は甲子園での開催。意気込みを 本拠地でオールスターに出られるということもなかなかない機会で、こうやって選んでいただいた。今日のようないい結果が出れば最高ですけど、元気でハツラツとプレーしているところを見てもらえたらうれしいと思います。 -ホームベースを過ぎて帽子をあげた 打席に入る前もそうでしたけど、ほんとに大きな歓声を頂いたので、みなさんに「ありがとうございます」の意味を込めてやりました。 -ベンチではどんな出迎えを受けた みんな笑顔で迎えてくれて、とても幸せな気分でした。 -打席に向かうまでの準備はシーズン中と変わらないものだったか 今日はなかなか難しい、いつもより出番が分からない場面だったので。準備もやりながらベンチにいながらで楽しんでいました。 -最後の(中日高橋の)ヒットがなかったら回ってこなかった 前の高橋選手が素晴らしいヒットを打ってくれたおかげで、こうやって何かの巡り合わせでいい結果が出たの。高橋選手にも感謝の気持ちでいっぱいです。 -普段は敵地だが、今日は雰囲気が違った なかなか一塁側ベンチから見る、出てくることはないことなので、すごい新鮮な気持ちでまた野球に取り組めた。小さい頃、ジャイアンツはすごくファンで見ていた。自分からしたら一塁側ベンチから出てくるのはすごく何か、うれしい気持ちと昔を思い出すような、そういうものがこみ上げました。
◆全セの4番右翼でフル出場した広島鈴木誠也外野手が、昨年までの同僚、巨人丸佳浩外野手とのコンビ復活を楽しんだ。 アップ中も談笑するなど和やかムード。3番丸との並びも久々なら、中堅丸と右中間を組むのも久しぶりだった。ソフトバンク千賀に中飛に打ち取られるなど、本塁打狙いの打撃は4打数0安打に終わったが「すごく楽しむことができました。(フルスイングで)振れたのでよかったです」と話した。
◆阪神原口文仁の帝京高校の先輩、お笑いコンビ「とんねるず」の石橋貴明(57)も東京ドームに応援に駆けつけていた。 試合前には会話をしたといい「あいさつとか高校時代の話をしました。『頑張れよ』と言ってもらいました」。9回に劇的な本塁打を放って「(同じ帝京のDeNA)山崎が9回に投げると言っていたので、最後まで見ていてくれたと思う」とうれしそうに話した。
◆全パは6回に3番浅村栄斗内野手、4番山川穂高内野手が連続本塁打。球宴で2者連続本塁打は11年第1戦の5回に5番バレンティン(ヤクルト)→6番長野(巨人)が記録して以来、8年ぶり。 全パでは01年第2戦の4回に記録した3番松井(西武)→4番中村(近鉄)以来、18年ぶり。浅村は西武時代の16年第2戦で本塁打を打っており、2球団以上で本塁打は近鉄で4本、DeNAで12年第1戦に打った中村以来12人目。
◆球宴にルーキーで唯一選出された阪神近本光司外野手(24)も晴れの舞台で輝いた。6回1死から安打を放った巨人丸の代走で途中出場すると、宣言通りの「初球スチール」を決めた。4番手の楽天松井の初球にスタートを切り、西武森の送球をかいくぐって二盗成功。出場が決定した際に初球から盗塁を仕掛けることを宣言した公約を実現してみせた。13日に本拠甲子園で開催される第2戦では初安打も刻んでみせる。自分に求められた役割を、近本は理解している。「内野ゴロでもしっかり走って内野安打にすること。盗塁もそう。いろんなプレーで足の速さは生かせると思うんです」。理想のプレーへ、学びは欠かせない。夢の祭典でも、ライバルを徹底解剖だ。盗塁王を争うヤクルト山田哲のスチールについて「早いカウントからしっかりスタートが切れる。徹底した準備ができている」と分析。トリプルスリー男とベンチで会話を交わし「(盗塁の)心構えですね。ランナーに出てリードしているときの考え方とか。常に行く意識で、けん制がきたら戻れる反応ができるように」と好感触だ。 同じ素質は近本にも備わっている。隣にいたチームメートの梅野は今季一番のプレーを「近本の盗塁」と話す。「自分も今シーズンから盗塁をトライし始めた(9盗塁)。けん制が来るとスタート切りづらい。でも、近本は早いカウントから走れる。捕手なのですごいと余計に感じる。やられると嫌だなということをするタイプ」。歴戦の強者が集うオールスターでも存在感は薄れない。【阪神担当=真柴健】
◆阪神ピアース・ジョンソン投手は人生初の球宴登板を待ち切れない様子だ。 共通の友達がいるというヤクルトのマクガフらと交流し「楽しい時間を過ごしています。これだけのいい選手と一緒にできる。緊張より楽しみの方が強い」とニッコリ。日米で自身初の球宴登板となる第2戦に向けて「早く投げたい。(力を)出し切ってファンの方に喜んでもらえるように」と意気込んだ。試合前は「教えたくない半面、断れないので...」と話していた巨人菅野からスライダーの握りと投げ方を聞き出し、DeNA山崎からはツーシームを伝授された。ベンチでは中日柳、DeNA今永らとカーブ談議。今永は「ジョンソンはカーブを投げる際に右手を左膝につくようなイメージで投げているようだ」と独特の表現に興味津々だった。
◆全パは17年第1戦から5連勝。同一リーグの5連勝以上は、全セが05年第1戦~07年第2戦に6連勝して以来で、全パの5連勝は60年第3戦~62年第2戦、64年第3戦~66年第2戦(1分け挟む)73年第2戦~74年第3戦、83年第1戦~84年第2戦に次いで5度目のタイ記録。
◆球宴のベンチで秘密を聞きまくるぞ! プラスワン投票で選出された阪神原口文仁捕手が、一流エキスを"吸収"することを明かした。打席では、感謝を胸に、魂のフルスイングを披露する。【取材・構成=真柴健】全国のファンに選んでもらった夢舞台で、原口が貪欲にスキルアップを図る。 原口 年齢に関係なく、すごくレベルの高い選手が多い。キャッチャーをやっていると、腹を割って話してくれないと思うんですけど。「僕はバッターだよ」って(笑い)。そのときだけは「キャッチャーでなかなか出られていないから関係ないよ」と。それで話すことができたら、何かアドバイスをもらいたい。少しでも一流の人に近づきたいし、そうやって結果も残したい。貪欲に、アドバイスもらいたいですね。 考えた秘策を使って、技術吸収を狙う。球宴には16年にも出場経験があるが「最初は緊張感の方が多くて...。1軍上がったばっかりだったので遠慮もあった。今回はガツガツと『ウザいな』と思われるくらいに聞きたい。みんなに『何しに来たんだこの人は』って思われるくらい(笑い)。それぐらいコミュニケーション取りたいなと思います」と、にこやかに笑った。 大腸がんという大病を乗り越えて臨む、夢の祭典に「阪神ファンも、他球団のファンにもいいプレーを見せられるように、プレーで恩返しできるようにやっていきたい」と誓った。 魂のフルスイングで、日本中の野球ファンを魅了する。「(打席では)3つ振りたいなと。結果1球で終わってもしょうがないかなと思います」。日本中の視線、声援を一気に受ける。注目が集まる中、強振で勇気と感動を与える。 原口 その日の日本で1試合だけのプロ野球。すごく注目が集まる試合の中で、僕が出る意味は他の選手とはまた違った意味があると思う。 打者の原点、思い切ったフルスイングで、全ての人へ、感謝のメッセージを届ける。どんな境遇に置かれても、決して諦めない原口だから、きっとファンの心にも届く。
◆オリックス吉田正が令和初の"ミスター弾"を放った。本塁打競争初戦のヤクルト村上との対戦で、右中間にある長嶋茂雄氏がグラブを構える「セコム」の看板に打球を直撃。トラックマンのデータで時速173キロ、飛距離136メートル、角度30度を記録する特大弾だった。 「100万円ですか? 自宅にセコム? 入ってないです」と笑った。圧巻は準決勝。3本塁打の巨人坂本勇の後に、初球から30秒での4連発で勝ち抜いた。「明日は(試合と)両方ともホームランを打ってMVP取りたい」。決勝は、甲子園でDeNA筒香-西武山川、広島鈴木-西武森の初戦と準決勝を行い、勝ち抜いた勝者と対戦する。
◆全セの開幕投手を務めた広島大瀬良大地投手(28)が日刊スポーツに手記を寄せた。大学時代からの友人で全パの4番西武山川穂高内野手(27)に、予告通りオール直球勝負を挑み、空振り三振に仕留めた。球宴ならではの勝負を楽しみ、2回2安打2失点。ライバルへの思い、そして真っ向勝負について語った。 <大瀬良の手記> 山川とは、球宴で対戦したら真っすぐ勝負と決めていました。約束していたんで、打席でニヤニヤニヤニヤしていましたね。最初に会ったのは九州共立大2年のとき。大学選手権で山川の富士大と、準々決勝で当たったんです。抑えたと思うんですけど、そこで知り合って大学ジャパンの合宿で仲良くなりました。いつからか、対戦するときは真っすぐ、と話すようになりました。メットライフドームでの交流戦で会ったときも「真っすぐ投げてね。ここに真っすぐ」って真ん中を指して。投げれるわけねえじゃん、て(笑い)。 中継ぎならこういう(直球勝負の)ピッチングもできるのかと思いました。(1回近藤との対戦で)自己最速タイの154キロが出ましたが、もう一生出ることないと思っていました。150もあんまりなかったと思います。コントロールもできていたし、新しい引き出しになりますね。 山川は「沖縄っ子」。おおらかで優しい。知り合ったときから変わらない。そして、大学のときから、飛ばす力は誰よりもたけていました。練習を見て衝撃を受けました。軽く振っているのに滞空時間の長い「ホームランアーチスト」といわれるような打球。こういう選手がプロでホームランバッターになるんだろうと思っていました。最初はつまずきもありましたが、こうしてたくさんホームランを打つ選手になった。そらそうだろなと思います。 初めてファン投票で選んでいただきましたし、ファンの方に何を求められているかはすごく考えました。ふだんと違って笑いながらマウンドにいる、みたいなのもいいかな、と。シーズン中はそういう表情は出さないようにしてますから。06年に阪神の藤川球児さんが、球宴で真っすぐを予告してカブレラを三振に取ったシーンがありましたね。あそこまで堂々とはできないですけど、山川との対戦であれば、そういうのも面白いかもと考えたり。派手なパフォーマンスはしませんでしたが、喜んでいただけたらうれしいですね。 球宴は、日本シリーズとか日本一とは違った形での最高の舞台なんじゃないかなと思います。ファンの人からも選手からも認められてという...。第2戦はベンチで楽しみたいと思います。(広島カープ投手)
◆東京ドームに「ムーンショット」が打ち上がった。「マイナビオールスターゲーム2019」第1戦で、全パの西武森友哉捕手(23)が、球宴令和1号を放った。「7番捕手」で先発マスクをかぶり、2回の第1打席に広島大瀬良の直球を超アッパースイング。打球に42度の角度をつけ、2階席へ先制2ランを運んだ。球宴通算3本目のアーチが決勝弾となり全パが勝利。2年連続MVPを獲得し、令和のお祭り男に名乗りを上げた。 森の球宴出場は3度目だが、本塁打は初出場の15年第2戦、2度目の18年第1戦に次いで3本目。初出場から出場3度続けて本塁打は77年第2戦、79年第3戦、80年第1戦で打ったリー(ロッテ)に次いで2人目となり、日本人選手では初めてだ。森のMVPは18年第1戦に次いで2度目(2年連続MVPは00、01年ペタジーニ以来)。18年第2戦は源田がMVPを獲得しており、これでMVPは森→源田→森と3試合連続で西武選手。同一球団の選手が3試合連続MVPは70年第2戦江夏、同第3戦遠井、71年第1戦江夏の阪神に次いで48年ぶり2度目。
◆全パ先発ソフトバンク千賀滉大投手(26)の球宴最速162キロへの挑戦は最速156キロに終わった。注目の初球は130キロのスライダー。千賀は「スピードガンと対決してくる」と予告していたが、全パのコーチを務めた工藤監督から初球はゆっくり投げるよう指示されていた。力んで故障しないための親心。千賀本人も「準備していたが、ブルペンの時点で無理だと悟った」と路線変更した。 楽しみにしていた山田哲との同学年対決では、156キロを捉えられ中越え三塁打を浴びた。続く坂本勇に対し、内野陣は前進守備。「そういう感じなんだ。全力で0に抑えようと」とギアを上げた。 今季走者を三塁に置いた場面では28打数1安打とめっぽう強い右腕は、坂本勇を「お化けフォーク」で空振り三振。丸、鈴木も変化球で無失点。2回も先頭筒香に安打を許したが、後続3人を打ち取り無失点。最後の打者19歳の村上には内角146キロカットボールで空振り三振を奪った。結局、投じた直球は「大したことなくて申し訳ない」と言いつつオール150キロオーバー。試合を壊さないのが千賀滉大の真骨頂だ。 キャンプイン直前の1月末、千賀は後藤球団社長と食事を交えながら、将来のメジャー挑戦の希望を伝えた。球団はポスティングによる移籍を認めていないが、熱意を受け止めた。その後の千賀はチームが勝つこと、若手投手の手本になることを心がけ、たくましくなった。開幕戦では自己最速161キロを計測し、ケガなくリーグトップタイの9勝。前半戦の活躍を受け、後藤球団社長も「あの食事会は彼にとってもよかった」と述懐する。ソフトバンクでも侍ジャパンでも日本でNO・1の投手であり続ける。【石橋隆雄】
◆苦節10年、初めてオールスターの舞台を踏んだ苦労人がいる。昨年は直前で死球骨折し、出場を辞退したロッテ荻野貴司外野手(33)。12球団トップの打率3割3分で文句なしの選出を果たし、2安打1打点と躍動した。走攻守の総合力と穏やかな人柄は球界屈指。飾らぬ言葉のはしばしに職人の思いが詰まっている。まず、お世話になった人みんなに感謝の気持ちを伝えたい。10年間すごく多くの人にサポートしていただいた。お礼を言わせてください。ありがとうございます。最初は緊張もありながらでしたが、途中からは楽しめました。 去年は直前に右手の人さし指に死球を受け、オールスターを辞退しました。これまでを振り返っても、やっぱりケガが多くて。大きいのは膝を3回手術して、左肩を手術して、両足のハムストリングを肉離れして、脇腹を肉離れして、去年は人さし指を骨折。「1年間やり通したい」と思っていたので、悔しくて。 すると嫁が、ある動画を見せてくれました。去年の京セラドームでのオールスター後、僕の応援歌をファンの皆さんが歌ってくれていたのです。いろんな球団のファンの方がいる中で、あんなことを...「来年こそ」という気持ちになれました。去年選んでもらった時よりも、さらにうれしさがありました。 今季は、チームが若手に切り替わっていこうとしてる中だったので「出番は少ないかな」と正直、思っていました。開幕前は調子が上がらず、不安も焦りもあったんです。2軍の試合に出させてもらって、そこでもう1度、しっかり自分を見つめ直せた。短いバットなどいろいろ試して、最終的に今の形にたどり着いています。バットが悪かったのか、自分の調子が悪かったのか。正直、分からないんですけど。短いバットはロッカーにあります。 テレビで見ていた憧れの舞台。同じ関西学院大の同期の宮西と、後輩の近本が選ばれました。近本も試合に出て盗塁も決めて、宮西もしっかり投げて、元気な姿を見られました。大学時代は内野手だったので、宮西の投球を外野から見るのは初めてで、改めて「頼もしいな」と。 何よりこのオールスターは僕以上に、この10年間不安な思いもある中で、落ち込むことなく支えてくれてた家族はじめ、周りの人が楽しみにしてくれていた。明日も出られるかは分からないですが、出られたらいいプレーをできるように頑張りたいです。(千葉ロッテマリーンズ外野手)
◆「マイナビオールスター2019」が12日、東京ドームで開催された。試合に先立って行われた本塁打競争には、11度目の球宴出場となった巨人・坂本勇人内野手(30)が初登場した。 同僚の岡本和真内野手(23)を投手に指名。1回戦では2分間で4本をスタンドにほうり込み、2本だったロッテ・レアードに勝利した。 準決勝では、ヤクルト・村上を下したオリックス・吉田正との対戦となり、再び岡本から3本のアーチを放った。しかし、吉田正が初球から4球連続で右翼席へほうり込んで完敗。それでもリーグトップタイ25本塁打の実力を披露し、本拠地のファンを沸かせた。
◆「マイナビオールスター2019」は12日、東京ドームで第1戦が行われた。 初出場となる全セ・村上宗隆内野手(19)=ヤクルト=は本塁打競争で吉田正尚外野手(25)=オリックス=と対戦。2分間の制限時間中、看板直撃弾を含む4本をスタンドに運んだ高卒2年目をニッポン放送で解説を務めた本紙専属野球評論家の江本孟紀氏(71)は「手首の角度がいいですよね。私が見てても、やっぱり手首ですよね」とたたえた。 対戦は吉田正が5本塁打を放ち、ブランドン・レアード内野手(31)=ロッテ=との戦いを制した坂本勇人内野手(30)=巨人=との準決勝へ。準決勝は坂本勇3発に対して吉田正が4球連続4本塁打を放ち、13日(甲子園)に行われる決勝へと駒を進めた。
◆「マイナビオールスター2019」は12日、東京ドームで第1戦が行われた。 ニッポン放送で解説を務めた本紙専属野球評論家の江本孟紀氏(71)は「"同級生対決"がおもしろい」と球宴ならではの見どころに言及。 球宴には4度出場し、計12イニング投げて1失点の江本氏。自身も法大野球部時代の1年先輩で"ミスター赤ヘル"こと元広島監督の山本浩二氏(72)らと対戦したことを振り返り「フォークボールばかり投げて、絶対打たせなかった」と冗談めかし、盛り上げた。
◆中日で巧打の内野手として活躍した立浪和義氏(49)と横浜(現DeNA)の監督として日本一に輝いた権藤博氏(80)の野球殿堂入り表彰式が12日、東京ドームでのオールスター第1戦の試合前に行われた。立浪氏は昨年1月に死去した恩師の星野仙一さんに触れ「大変厳しい監督の下でスタートを切れたのが何よりも大きかった。大した成績じゃない中で使ってもらって感謝している」と語った。 通算2480安打をマークした立浪氏は、自身の現役時代と同じ背番号3をつける中日の高橋周平内野手から花束を受け取った。 横浜の監督に就任した1998年にチームを38年ぶりの日本一に導いた権藤氏は「今日は80歳にして一世一代の晴れ姿。ファンの皆様のバックアップがあってこそ」と感慨深げに話した。
◆試合前に行われた本塁打競争でオリックスの吉田正が決勝に進んだ。8選手がトーナメント方式で2日間にわたって優勝を争い、球数無制限の2分間で本数を競う。1回戦で19歳の村上(ヤクルト)を5-4で下し、準決勝では3本の坂本勇(巨人)に対し、初球から4球を全て柵越えさせて勝負を決めた。 看板直撃の特大アーチも放ち「思い切りスイングできた」と胸を張った。筒香(DeNA)と山川(西武)、鈴木(広島)と森(西武)による1回戦と準決勝、決勝戦は第2戦で行われる。
◆広島の大瀬良は2度目の出場で初めて先発して2回2失点だった。二回、森(西武)に2ランを浴びたが、直球主体に攻め「楽しかった。お客さんで喜んでくれる人がいたなら、ああいう投球をして良かった」と笑顔だった。 対戦を熱望していた同じ1991年生まれの山川(西武)とは二回に顔を合わせ、予告通りに直球を5球続けて最後は高めのボール球を振らせて三振に仕留めた。「三振か、ホームランの勝負でいいと思っていた」と力勝負を満喫した様子だった。
◆全パの先発を務めたソフトバンクの千賀は2回2安打無失点だった。「速球だけでなくいろいろな球を見せたい」と剛速球の中に140キロ台中盤で鋭く曲がるカットボールや落ちる球を織り交ぜて打ち取った。 一回、1番打者に中越え三塁打を浴びるとベンチから前進守備の指示が出た。真剣勝負に徹する姿勢に「そんな感じなんだ、全力で抑えようと思った」とギアを上げ、坂本勇(巨人)をフォークボールで空振り三振に仕留めるなど後続を3人で退けた。 162キロの球宴最速記録挑戦への期待もあったが届かず「直球が大したことなくて申し訳ない」と少し悔しそうだった。
◆巨人の丸が移籍1年目の球宴で持ち味のシャープな打撃を披露した。四回に有原(日本ハム)から中前打を放つと、六回には松井(楽天)から右前へ鋭くはじき返した。「すごく楽しんでやれている。安打も打てて良かった」と満足した表情だった。 中堅手として先発し、昨季までのチームメートの鈴木(広島)と右中間を守った。フライを捕球する際に鈴木からちゃかされた場面もあり「(鈴木)誠也とのコンビも久々なので、お互いよく声を掛け合いながら守っている」と充実そうだった。
◆阪神のドラフト1位・近本光司外野手(24)=大阪ガス=が12日、「マイナビオールスターゲーム2019」の第1戦(東京ドーム)に代走で出場。果敢に初球からスタートを切り、二盗を成功させた。 「(見てほしいのは)自分の武器である足。足を生かして、魅せることができたら。機会があれば走りたいですね」 試合前から意欲にあふれていたが、出番は六回。1死から巨人・丸が右前打を放ち、代走として一塁へ。楽天・松井-西武・森のバッテリーが警戒する中、初球からスタートを切った。送球が少し浮く間に、左足を二塁ベースに突き刺し、審判が両手を広げた。後続こそ倒れたが、自慢の快足で12球団のファンを沸かせた。 阪神の球団新人がオールスターで盗塁を決めたのは2016年の高山以来、3人目。きょう13日の第2戦は本拠地・甲子園で行われる。
◆今季楽天に移籍した浅村は球宴で3年ぶりに本塁打を放った。2-1の六回に山口(巨人)から豪快なソロ。真ん中に来た直球を振り抜いてバックスクリーン右に突き刺し「オールスターなので一本打ちたいと思っていた。しっかり打てて良かった」と破顔した。 昨年パ・リーグを制した西武で3、4番コンビを組んだ山川との連続アーチとなった。「2人で打てたことが自分が打ったことよりもうれしかった。久しぶりだなと思った」と懐かしんでいた。
◆DeNAの今永は2番手で初出場を果たし、2回を完璧に抑えた。「打たれてもストレートで押したいと思っていた」と、全22球のうち直球が21球の真っ向勝負に出た。三回、近藤(日本ハム)との対戦では自己最速を更新する152キロで右飛に打ち取った。 それでも吉田正(オリックス)らにフェンス際まで飛ばされ、全パの一流打者から刺激を受けた様子。「プロのスイングの速さやレベルの高さを改めて実感できた。貴重な時間になった」と振り返った。
◆全パが全セを下し、一昨年から5連勝。通算成績を85勝78敗11分けとした。MVPは西武・森が獲得した。 全セは広島・大瀬良、全パはソフトバンク・千賀が先発。全パは二回2死、6番の日本ハム・レアー遊撃内野安打で出塁すると、続く7番の西武・森が大瀬良のストレートを力強く振り抜き、ボールは右翼上段へ。豪快な先制アーチで2点をリードした。全セは四回無死一、三塁の場面、5番のDeNA・筒香が三塁適時内野安打で1点を返した。 六回、全パのパワーが爆発。2死ランナーなしで打席に立った3番の楽天・浅村が、巨人・山口の5球目を叩き、バックスクリーンへ。続く4番の西武・山川は初球をレフトスタンドに運んで、連続アーチで突き放した。全パは九回にも2点の追加点をあげた。 全セが沸いたのは九回。大腸がんの手術を受けて復帰した阪神・原口が2死一塁の場面で代打で登場すると、オリックス・山本の3球目を左中間スタンドにホームラン。劇的なアーチでファンを熱狂させた。
◆新人でただ一人、選出された阪神の近本が自慢の俊足を披露した。六回1死で右前打を放って出塁した丸(巨人)の代走として出場。続く鈴木(広島)の初球で鮮やかに盗塁を決め「自分のアピールポイントである足を見せることができて100点」と笑顔で自画自賛した。 前半戦はリーグ3位の19盗塁をマーク。「初球から絶対に走ってやろうという気持ちでした」と球宴でも積極性を貫き、本拠地の甲子園球場で行われる第2戦へ弾みをつけた。
◆初出場した注目の19歳、ヤクルトの村上は4打数無安打で3三振に終わった。二回2死二塁の初打席は千賀(ソフトバンク)のカットボールに空を切り「初めて対戦する投手で、どんな球か分からなかった」と悔しがった。九回は山本(オリックス)のフォークボールを振り、最後の打者となった。 試合前の本塁打競争にも参戦。1回戦で吉田正(オリックス)に敗れたが、看板直撃の特大アーチを含む4本の柵越えを放ってスタンドを沸かせた。進境著しい長距離砲は「すごくいい経験になった」と記念の一日を振り返った。
◆大腸がんを乗り越えて復帰した阪神の原口が、九回に代打で2ランを放った。2死一塁で登場し、オリックスの山本の3球目を左中間へ運んだ。選出された際には「狙っても打てない。偶然に期待したい」と話していた本塁打を放ち、敢闘選手に輝いた。 1月に手術を受けて6月に復帰し、出場メンバーの最後の一人を選ぶプラスワン投票でつかんだ3年ぶりの晴れ舞台だった。「日本中の人たちが注目する試合。全力で野球をやる姿を見てもらいたい」という思いが最高の結果を生んだ。逆境を克服しての劇的な一発に、球場は大歓声に包まれた。
◆楽天の浅村は球宴で3年ぶりに本塁打を放った。2-1の六回に山口(巨人)から豪快なソロ。真ん中に来た直球を振り抜いてバックスクリーン右に突き刺し「オールスターなので一本打ちたいと思っていた。しっかり打てて良かった」と破顔した。 四回の守備では鈴木(広島)のゴロを取れず、その後の失点につながった。チームは勝利し「失策はおまけ」と頭をかいた。
◆日本ハムの有原は三回から登板し2回を2安打1失点だった。四回に味方の失策から1失点したが「内容は気にしない。けがなく楽しんで投げられたし、バックに(早大でチームメートだった)茂木(楽天)がいて懐かしかった」と穏やかな笑みを浮かべた。 三回1死では同じ26歳の山田哲(ヤクルト)を152キロの速球で押し込んで遊ゴロに仕留めた。「山田哲は抑えられて良かったが、みんなスイングが速くて怖い。でも改めて力勝負は面白いなと思った」と堪能した様子だった。
◆ロッテの荻野が33歳で初出場すると2安打1打点と活躍した。5-1の九回1死三塁で山崎(DeNA)の変化球を左前に引っ張ってダメ押しの適時打。五回には左中間のフェンス上部に当たる大きな二塁打も放ち「うれしかった。(球宴は)結果にこだわるものではないけれど」と照れながら喜んだ。 昨年は9年目で初選出されていたが、直前の試合で右手人さし指を骨折して出場できなかった。普段は大きなことを言わない男が「やっぱり出てみたい目標」と語っていた舞台で躍動した。
◆オールスターの開幕セレモニー。各選手が順番に紹介されている中で、NO・1の声援を集めたのは、我らがヒーロー原口でしたよ...と伝えてきたのはサブキャップ長友孝輔でした。 「本人は、自分がここに選ばれて本当にいいのかな、と話していましたが、あの声援がすべてを物語っていますよね」 ウルッときたそうだ。大腸がんから復活した"奇跡の男"のストーリーを、12球団のファンも優しく、温かく、迎えてくれた。甲子園の大声援は感動的だったが、オールスターの大声援はまた格別だったはず。 日本球界のパイオニア、メジャーリーガー野茂英雄というスーパースターがオールスター初出場したのは1990年。シーズン同様に報道陣にもぶっきらぼうだった男が、球宴第1戦でサプライズ救援登板した。パ・リーグ監督仰木彬の強引? なさい配。舞台は横浜スタジアムだった。 野茂がリリーフカーで登場した時の歓声は、長い記者生活でも最高級のすさまじさだった。 「映画みたいでした。すごかったです」 野茂が指した映画とは、当時の大ヒット作品「メジャーリーグ」。クライマックスで守護神を演じるチャーリー・シーンがマウンドに向かう。その時のスタジアム全体の大歓声...。映画を見ていた野茂は、そのシーンに自分が入り込んでいる不思議を感じたという。 「リリーフカーに乗ったのも初めて。自分が映画に出ているような...」 あの無口な男が、しゃべるしゃべる。オールスターの大歓声は、普段とは違う魔力を持ち合わせているんだろうなぁ...と感じたものだった。 原口もおそらく一生忘れられない感動を得ているはず。そして、九回に待っていた、衝撃的な一撃。オールスター史に間違いなく残るアーチでしょう。 「試合前、原口は(帝京高野球部の先輩でもあるタレントの)とんねるずの石橋貴明さんとも楽しそうに話してました」 これも長友の報告。石橋さんといえば、野茂が感動した映画の続編「メジャーリーグ2」で、日本人メジャーリーガーを演じている。これも何かの縁なのか(と勝手に感じてます)。 一方、甲子園ではオールスターの舞台裏で、出場できない男たちが、後半に向けてひたむきに練習再開-。夢球宴で脚光を浴びているスターを、シーズン再開後に見返してやる! ドラマでしょ。 いきなり挟殺プレーなど守備練習。想像していたが、矢野監督の思いがこもる。ただ、ほんの一瞬、そんな表情が和むシーンが。 「あのグラウンドで青春を過ごしたので。お互いの励みになるやん。母校が頑張ってくれることで俺も励みになるし、俺を見て後輩たちがそうやって思ってくれたらそれはそれでうれしいし」 練習後。母校・桜宮高は1回戦突破しましたね? と報道陣に問われた矢野監督の言葉が一気にはずんだそうだ。取材した阪神キャップ大石豊佳も「まあ、1回戦負けるはずがないやろ、という感じの受け答えでしたけれど、その瞬間はホント楽しそうでした」。 プロ野球選手全員にある、高校野球の思い出。みんな、あの頃は同じように甲子園を、プロ野球を目指していた-。 一緒だったはず。でも、この夜のオールスター。他球団の出てくる選手、出てくる選手のフルスイングの凄まじいこと。阪神にはいない...と思っていたら、原口がいました。
◆3番に入った楽天・浅村が六回2死からバックスクリーン右にソロを放った。昨季まで西武で中軸を組んだ4番の山川(西武)との連続アーチで球場を盛り上げ「僕が打てばあいつも必ず打つ。久しぶりにうれしかったです」と喜んだ。取り入れようとした後輩の本塁打パフォーマンスは自粛。「やろうと思ったけれど、やめました。そういうキャラではないので」と控えめだった。
◆九回に登板した全セの山崎(DeNA)は、先頭のグラシアル(ソフトバンク)への初球でナックルボールを投げて盛り上げたが、腰付近に当たる死球となり、ここから2安打で2失点を喫した。1死一塁ではプロ5年目で公式戦で一度も投げていない牽制(けんせい)球を投げ「普段と違うことを見せようと思いました。楽しみすぎました。(グラシアルに)謝りにいかないといけないですね。猛反省です」と苦笑いだった。
◆全セの1番・山田哲(ヤクルト)が一回に千賀(ソフトバンク)の156キロの直球を捉え、中堅フェンス直撃の三塁打を放った。球宴での初回先頭打者の三塁打は1992年第2戦の古田敦也(ヤクルト)、95年第1戦の野村謙二郎(広島)に次いで24年ぶり3人目。「ホームランを打ちたかったけど、打ててよかった」とホッとした表情を浮かべた。守備では春季キャンプ中に自らデザインした青と金を配したドナイヤ製のグラブを使用した。
◆本塁打競争に2年連続2度目の出場となった吉田正(オリックス)が初の決勝進出。「しっかりと振り切って、いいスイングが出来ました」。村上(ヤクルト)との1回戦では5発を放ち、坂本勇(巨人)との準決勝では初球から4連発という圧勝劇だった。試合では六回2死で右前打。第2戦での本塁打競争優勝&球宴初アーチを問われると「両方できればMVPも狙えるので。頑張ります」と力を込めた。 ★本塁打競争のルール 1選手につき球数無制限で本塁打数を競う。8選手が参加するトーナメント方式で、第1戦前に3試合、第2戦前に決勝を含む4試合を行う。同点の場合は1分間の延長戦を行い、延長戦でも同点の場合は(1)本塁打競争ファン投票の投票数が上位の選手(2)本年公式戦で本塁打数が多い選手(3)昨年公式戦で本塁打数が多い選手が勝者になる。ただし、決勝が本塁打0で並んだ場合は引き分けとなる。
◆全パ先発の千賀(ソフトバンク)は2回2安打無失点で勝利投手になったが、大谷(現エンゼルス)が日本ハム時代の2014年に記録した球宴最速162キロには及ばなかった。この日の最速は156キロ。「きょうのブルペンで無理だなと思いました。見せ場を作ることができずに申し訳ない」。二回には村上(ヤクルト)を150キロ超の直球を続けて追い込むと、最後はカットボールで空振り三振を奪って「良いところに投げることができた」と汗をぬぐった。
◆左手首の負傷で前半戦のラスト3試合を欠場した全セ・梅野(阪神)は、七回1死から代打で登場。山本(オリックス)の低めの変化球にくらいつき、全力疾走で二塁内野安打をもぎとった。「大きな歓声ももらえたし、内容や安打よりも、気持ちよく打席に立つことができてよかった」。13日の第2戦は甲子園が舞台。「自分のパフォーマンスができるように。楽しんでけがなく終えたい」と力を込めた。
◆--狙っていた? 原口「いや(笑)、もう狙って打てるバッターじゃないのでね。しっかり自分のスイングをしようと心がけた中で、良い打球が飛んでくれたと思います」 --ホームへ戻ってきた後、ヘルメットを外してあいさつした 「ホントね、打席に入るときもそうでしたけど、大きな歓声をいただいたので。みなさんに、『ありがとうございます』というのを込めてね、やりました」 --ベンチの雰囲気は 「いやもう、みんな笑顔で迎えてくれて、とても幸せな気分でした」 --打席までの準備はシーズン中と変わらずか 「きょうはちょっとね、なかなか難しい、出番が分からない場面だったので、準備もやりながら、ベンチにもいながらで楽しんでいました」 --九回2死から出番が巡ってきた 「そうですね。本当に、前の高橋選手(中日)がね、素晴らしいヒットを打ってくれたおかげで、こうやって、何かの巡り合わせでね、良い結果が出たので。本当に高橋選手に感謝の気持ちでいっぱいです」 --普段は敵地だが 「そうですね。なかなか(東京ドームの)一塁側ベンチから野球を見る、ベンチから出て行くということもなかなかないので。すごく新鮮な気持ちでまた野球に取り組めたな、と。小さいころ、ジャイアンツがすごく、ファンで。自分からしたらすごく、一塁側ベンチから出て行くのはうれしい気持ちと、昔を思い出すような、そういうものがこみ上げましたね」
◆初の大舞台で、持ち味を発揮した。三回から2番手で登板した全セの今永昇太投手(25)=DeNA=は、2回を完全投球。堂々の球宴デビューを果たした。 「緊張することなく、楽しむことができました。会沢さんのミットを目掛けて、しっかりと腕を振ることができたと思います」 先頭の9番・茂木(楽天)から四回の5番・吉田正(オリックス)まで切れのある直球で押し続けた。「直球待ちの打者に直球で勝負したい」との言葉通り、全22球のうち21球が直球。自己最速の152キロをマークするなど、17球が150キロを超えた。 「打ち取りはしたものの、ホームランになってもおかしくない打球が多く、プロのスイングの速さやレベルの高さを改めて実感することができた、貴重な時間となりました。152キロ? 自分でもびっくりしました」 ベンチでは大瀬良(広島)、柳(中日)、ジョンソン(阪神)らとカーブなど投球について語り合うシーンも見られ、DeNAの左腕エースにとって経験と発見を得た球宴となった。 (湯浅大)
◆大腸がんの手術から復活し、「マイナビオールスターゲーム2019」にプラスワン投票で選ばれた阪神・原口文仁捕手(27)が第1戦で劇的な代打本塁打。球宴前にはインタビューに応じ、3年ぶり2度目の夢舞台へ立たせてくれたファンへ、感謝のメッセージをおくっていた。 --プラスワン投票での出場。阪神ファン以外にも喜んでもらえる 原口「成績を残している選手もいる中で(自分の)この数字で出させてもらうということにすごく感謝というか、申し訳なさも多少あるんですが。出るからには阪神ファンにも他球団のファンにもいいプレーを見せられるように、プレーで恩返しできるようにやっていきたいと思います」 (続けて) 「その日に日本で1試合だけのプロ野球。すごく注目が集まる試合に僕が出る意味は、他の選手とはまた違った意味があると感じているので。プレーでいろんなことが伝わったらうれしい。見ている方たちが何かを感じてくだされば、選んでいただいた意味があるのかなと思いますね」 --小さいころのオールスターのイメージは 「"ヒデキ・マツイ"(松井秀喜)さんだったり、球児(藤川)さんのアレ(2006年の"直球予告")も強烈ですよね。それに応えるカブレラ、小笠原(道大)さんはすごい...。野球の醍醐味だったり、なかなかシーズンではできないことをして、すごく夢があるなと。憧れです。(今回)東京ドームと甲子園が重なったときに出られるというのは、すごく運がいい。持っているなと。みなさんが選んでくれたおかげです」 --2016年の球宴で持って帰れたものは 「キャッチャーの人に、すごく話を聞けたりした。(当時は)先輩方が多かったですが、今回は年下の子も結構入ってきて。年齢関係なく、すごくレベルの高い選手が多い。そういう子たちにも積極的に(話を)聞きに行きたい」 (続けて) 「キャッチャーをやっていると、なかなか腹を割って話してくれないと思うんですが『僕はバッターだよ』『キャッチャーではなかなか出られていないから』と(笑)。少しでも一流の人に近づきたい。(前回は)遠慮もあったんで今回はガツガツ『ウザいな』『何しに来たんだこの人は』と思われるくらい(笑)、コミュニケーションを取りたい」 --前回の球宴との違いは家族がいる点。感謝を伝えられる場にも 「あぁ! そうですね、娘も(まだ)分からないと思うんですが、そうやって家族がまた1人増えての特別な舞台なので。すごく楽しみというか、うれしいですね」 --ファンへの感謝を何度も口にしてきた 「毎回打席に立つたびに大歓声をもらえているというのはすごく、自分でも分かっている。本当に感謝していますし、そこで何とか結果で応えたいという思いでやっています。やりがいを感じながらシーズンを送れているので、本当に自分は恵まれているなと」 --現状の成績は 「もちろん満足していないです。出だしはよかったですが、今は我慢の時期かなと。1軍の戦力になれなかったらファームに行くというのは当たり前。そうならないようにしっかり準備して、できることを全てやっていくだけです」 --勝利が一番 「もちろんです。スタメンで出ようが、途中からいこうが、代打でいこうが、チームの力にならないと1軍にはいられない。何とか踏ん張って今を乗り越えたい」 --野球を楽しむ姿勢にブレはない 「変わらないです。楽しんでやる中で、必死さとか必要になってくるので。楽しさプラスアルファ、勝負の世界。戦わないといけないのはわかっている。両方、追い求めてやっていきたいと思います」 ★原口、2016年球宴VTR 4月27日に育成から支配下へ再登録され、5月に月間MVPを受賞する活躍。球宴には監督推薦で出場した。7月15日の第1戦(ヤフオクドーム)は守備のみ。翌16日の第2戦(横浜)、3-4の七回に代打で出場し、有原(日本ハム)から左翼フェンス直撃の適時二塁打を放った。阪神選手の球宴初打席での初安打初打点は1980年の岡田彰布以来。同点の九回2死の打席では大きな中飛だった。
◆虎の代表として、ファンのために、初球から駆けた。夢舞台に浮足立つことはない。ファン投票で選出された阪神のD1位・近本光司外野手(大阪ガス)が代走で球宴初盗塁。磨いてきた快足を全国の舞台で披露し、心から野球を楽しんだ。 「ファンの方に選んでいただいたので、ファンの方が求めるようなことをしたかった。初球から絶対に走ってやろうという気持ちでした。結果的に初球から走れたのは一番よかったと思います」 前半戦リーグ3位の19盗塁をマークした快足ルーキー。六回1死。丸(巨人)が右前打を放つと颯爽とベンチから飛び出した。松井(楽天)-森(西武)のバッテリーと対峙し、初球からスタート。左足を二塁に突き刺し、審判の両手が広がった。2016年の高山以来、球団新人では3人目の球宴での盗塁だ。 八回1死一塁の打席では投ゴロで併殺崩れ。再び一走となると、ここでも果敢にチャレンジした。今度は森に刺されたものの、ファンのためにも「走る姿勢」を示したかった。初の球宴で十分すぎる爪痕を残し、少年のような笑顔が弾けた。 「超積極的」を掲げる矢野虎のルーキーは、夢舞台でも同じ姿勢だ。ずっとテレビで見てきた球界のスターたちに臆することはない。試合中のベンチでは3度の盗塁王に輝く山田哲(ヤクルト)の言葉に耳を傾けた。 「(山田さんは)常にいく意識で、けん制がきたら戻れる体の反応ができている、と。『勝手に反応している』と言っていたので、そんな体の使い方があるんだというふうに思いました」 また試合前の守備練習では、通りかかった秋山(西武)にあいさつ。面識はなかったが勇気を振り絞り「教えてください!」と頭を下げた。5分間、身ぶり手ぶりでフェンス際のプレーについて助言をもらった。「フェンス際のフライを正面から見てしまうとタイミングがとりづらい。少しラインを外して斜めに飛ぶといい、と」。ゴールデングラブ5度の名中堅手の意識に目を丸くした。身に起こること全てが、新鮮だった。 「(ファンの歓声は)走っているときも聞こえましたね」 13日は本拠地・甲子園。聖地の虎党だけでなく、全国の野球ファンに夢と希望を与える。 (竹村岳) ★関学大OBの日本ハム・宮西らと写真撮影も! 近本は試合前の打撃練習中、巨人の原監督から「これからどんどん引っ張っていく選手にならないといけないよ」と声をかけられたという。同じ関学大OBの宮西(日本ハム)、荻野(ロッテ)とは3人で写真撮影するシーンも。「緊張しますね...」と話していたルーキーだったが、球宴ならではの雰囲気を楽しんでいた。 ★今季の近本 春季キャンプから1軍に帯同し、3月29日の開幕ヤクルト戦(京セラ)には「2番・中堅」で出場。六回に小川から同点三塁打を放って、プロ初安打&初打点をマークした。その後、スタメン落ちなど経験も、4月11日の横浜戦(甲子園)で代打でプロ初本塁打。以降は「1番・中堅」に定着し、4月18日のヤクルト戦(神宮)から5月2日の広島戦(甲子園)まで、球団新人記録の13試合連続安打をマークした。6月に入って調子を落としたが、ここまで83試合出場、打率・261、6本塁打、24打点。盗塁はリーグ3位の19。
◆球宴初出場の全セ・村上宗隆内野手(19)=ヤクルト=は「8番・一塁」でフル出場し、4打数無安打3三振。全パの投手陣に封じられたが、試合前の本塁打競争では、推定飛距離140メートルの特大アーチを放った。持ち前の長打力を披露した若武者が、サンケイスポーツに手記を寄せた。 2年目で初のオールスター出場。選ばれると思っていなかったので、ファンの皆さまには感謝したいです。同時に、すごく光栄に思います。友人や身近な人も投票してくれたと聞きました。本当にありがたいです。 ウオーミングアップでは、緊張でなかなか選手の輪に入っていくことが難しかったです。打撃練習でフォームが分からなくなるほどで、3月の「侍ジャパン」に選出されて以来の感覚でした。そんな中でも筒香選手からは『バットはどんなものを使っているの』と聞かれたり、野球談義もすることができました。 第1打席で当たった千賀投手は、対戦してみたい選手の一人でした。パの強打者もなかなか打てていないですし、直球、変化球、制球...。全てがすごい投手。実際に対峙して改めてそう感じることができました。今後に生かしていきたいです。 オールスターの思い出といえば10歳だった2010年。福岡・ヤフージャパンドームで開催された第1戦を家族と観戦しました。ダルビッシュ投手が投げていたのは覚えています。新庄選手がホームスチールしたシーン(04年、第2戦)や、大谷選手が本塁打競争で優勝(16年)したのは映像で見たことがあります。 10年は青木さんが出場していました。今ではチームメートとなり、お世話になっていて本当に感謝しています。1月の自主トレも一緒にやらせて頂き、シーズン中もいつも気にかけてくれて、声をかけてくれます。 打撃技術のことはもちろん、守備のことや、プロとしての心構えなど、多くの助言をもらいました。そういう部分を教えてもらうことは自分の財産になっています。食事にも行かせてもらいましたし、全てが自分のプラスになっています。青木さんがいなければ、ここまで1軍でプレーできていないと思います。 青木さんだけではなくヤクルトには素晴らしい打者がたくさんいて、学ばせてもらっています。例えばバレンティン選手には『どのような考えで打席に入っているのか』と聞きました。長く4番を打っていますし、オランダ代表でも4番を経験していて、チャンスの場面で回ってきたときや、重圧のかかる打席への入り方を学びました。 今季はレギュラーの座を取りたくてキャンプインからやってきました。自分ではまだレギュラーを取れたとは思っていません。成績も納得していないですし、まだまだ変わっていけると自分を信じて、やっていきたいです。 (東京ヤクルトスワローズ内野手) ★この日の村上 村上は「8番・一塁」で先発出場したが、4打数無安打に終わった。一回は千賀(ソフトバンク)の146キロのカットボール、五回は宮西(日本ハム)のスライダー、九回は山本(オリックス)のフォークボールと全パの一線級の投手が武器とするボールに空振り三振を喫した。試合前に行われた本塁打競争では右中間席上部「ヘーベルハウス」の看板を直撃する打球速度173キロ、推定飛距離140メートルの一発など4本塁打を放ち、見せ場をつくった。
◆奇跡のアーチ-。第1戦が行われ、大腸がんの手術から復帰した全セの原口文仁捕手(27)=阪神=が九回、代打で左翼に2ランを放った。「プラスワン投票」での3年ぶり2度目の舞台。感謝の思いを胸に感動の放物線を描き、敢闘選手賞に輝いた。試合は全パが6-3で全セに勝ち、5連勝。通算成績を85勝78敗11分けとした。第2戦は13日、阪神の本拠地・甲子園で開催される。 原口のすべてが、塊になって飛んでいった。左中間席に突き刺さる。一塁を回ったところで思わず声が出た。笑みが抑えきれない。両足をホームベースにソッとそろえて生還。ヘルメットを外し、総立ちの場内を見やった。こんな日が来ると信じ、耐えて耐えて、たたき込んだ。奇跡の、カムバック球宴弾だ。 「こういう機会を作っていただいて、本当に感謝の気持ちと、思いっきり楽しんでいこうと、1球目からスイングできたので。本当にたくさんの、サポートしてくれた方や支えてくれた方にね、少しでもきょうの結果が恩返しにつながるとしたら、本当に最高の結果だと思います」 少しだけ目元を潤ませて、また笑った。その笑顔で何度、泣かせるのか-。1-6の九回2死。巡って来なかったはずの打席が高橋(中日)の中前打で巡ってきた。普段は敵地の東京ドームが、この半年で原口を知った日本中の人が、野球の神様が「打て」と言っていた。前半戦をパ・リーグNo.1の防御率1・92で折り返した山本(オリックス)と向き合う。カウント1-1から3球目を捉えた。大腸がんからの復帰後1号(2軍戦を除く)が球宴初アーチに。堂々、敢闘賞だ。 「こうやって何かの巡り合わせで、良い結果が出たので。高橋選手に感謝の気持ちでいっぱいです。(ベンチで)みんな笑顔で迎えてくれて、とても幸せな気分でした」 ベンチには、1軍復帰する前夜に電話をくれた大瀬良(広島)もいた。甲子園で再会した際に抱きしめてくれた鈴木(同)も、元気づけてくれた坂本勇(巨人)もいた。最高の"野球仲間"と最高のファンに囲まれ、原口もこの人生の楽しさ、美しさを噛みしめるように、また笑った。 球宴前まで打率・206。だが絶対に下は向かなかった。自分にしか生きられない今を全身で楽しみ、もがいた。今月1日に急逝した米大リーグ、エンゼルスのタイラー・スカッグス投手のことを耳にし、ショックを受けた日も-。 「同学年ですよね...。あすも自分が生きていられるかなんて、僕だけじゃない、誰にも分からないでしょう? だから僕は、楽しみますよ! 明るく、楽しく!!」 支えてくれた夫人についても「きれいだなぁって、思いますよね...。ずーっと見ていたいですもん」と改めて美しさに気がついたという。こんな人たちに囲まれ、こんなホームランを打てる。やはり人生は最高だ。 「本拠地でオールスターがあるという、なかなかない機会に選んでいただいた。元気で、ハツラツとプレーしているところを、見てもらえたらうれしい」。13日、舞台は甲子園。家族も観戦に訪れる。前祝いとばかり、原口が日本中のファンを震わせる一発を放った。 (長友孝輔) 原口に一発を浴びた全パ・山本(オリックス) 「しっかり打たれました。野球選手として素晴らしい。みんなに応援されていますし、人間も素晴らしい方なんじゃないかなと思いました」 全セ・緒方監督(広島) 「(原口の起用は)走者がいるところでと考えていた。最後は打順が回るかどうかというところで回ってくれて良かった」 ★今季の原口 1月24日に、昨年末に受けた人間ドックで大腸がんが判明し、近日中に手術を受けることを自身のツイッターで公表。3月7日に2軍練習に合流し「必ず今年中に1軍に戻って活躍したい」と約束した。5月8日のウエスタン・中日戦(鳴尾浜)の八回に代打で復帰(右飛)。6月4日、交流戦開幕のロッテ戦(ZOZOマリン)で今季初昇格した。九回1死三塁で代打登場し、左翼フェンス直撃の適時二塁打。同9日の日本ハム戦(甲子園)では3-3の九回2死二、三塁で中前に代打サヨナラ打を放った。
◆全パが6-3で全セに勝ち、5連勝。通算成績を85勝78敗11分けとした。4番・山川穂高内野手(27)=西武=が六回に球宴通算10打席目で待望の初アーチを放ち、敢闘選手賞(賞金100万円)を獲得。同期入団の森友哉捕手(23)=西武=は二回に右翼席上段へ先制2ランを放ち、2年連続で最優秀選手賞(MVP=賞金300万円)に選出された。森は3度目の出場となった球宴で"3年連続"の本塁打。西武の強力打線が、今年も球宴を席巻だ。 「どすこーい!!」。松田宣(ソフトバンク)らパのスター選手たちも一緒になっての叫びが、東京ドームに響いた。山川の球宴通算10打席目。待望の一発が飛び出した。 「狙っていた。うれしかったです。いつもより声援が響いていたし」 六回2死。昨年まで西武で3、4番を組んだ浅村(楽天)がバックスクリーン右へソロを放ったのに続いた。父親が元幕内谷嵐の大型右腕・山口(巨人)との"どすこい対決"。144キロの直球を、「レアード(ロッテ)みたいに手を離して打ってみよう。球宴でしかできないこと」と投手寄りのポイントで捉え、左手1本で左翼席まで飛ばした。ベンチは大盛り上がり。最高のムードを演出し、2017年からの全パの連勝を「5」に伸ばした。 思い出の地での球宴初アーチだ。那覇市出身の山川は「野球中継=巨人戦」という環境で育った。小学校高学年の時に東京ドームでプロ野球を初観戦。「松井さん、清原さん、由伸さん、ローズ。ホームランがたくさん出ていた頃。プロ野球選手のように、とにかく体をでかくしたいと思いました」。大柄な男が競うように打球を飛ばす姿を目に焼き付けた。小6の夏休みには「僕もホームランを打ちたい!」という思いから「家にあるものを何でも食べた」。35キロだった体重は1カ月で20キロ増。今につながる頑丈な体の下地を作り、ホームラン打者としての第一歩を踏み出した。 獅子の誇る最強の同期コンビが球宴を席巻した。二回2死一塁では、公私で仲のいい森が、大瀬良(広島)から右翼席上段へ先制2ラン。「真っすぐで来てくれた方がしっかりスイングできる」と胸を張った。 森は15年第2戦、18年第1戦に続く"出場3年連続アーチ"。昨年は松坂(中日)から3ランを放ち、MVP選出は2年連続だ。その賞金300万円の一部で、西武から選出された秋山、浅村、菊池、山川ら先輩6人に焼き肉を振る舞っており、「(今年も)ごちそうします」と約束した。 山川は最近不振で「シーズンで打ちたい...」と漏らしていた。それでもファン投票で両リーグ最多の票を集めた大砲は「ファンが待っている。全打席ホームランを狙います」と予告し、実現。レオの2人が、プロ野球ファンを酔わせた。 (花里雄太)
◆全体的に全パの打者のスイングスピード、強さが際立っていた。 二回に本塁打を放った森は、もともと相手が直球中心と分かれば確実に捉えられる打者。直球勝負の空気になる球宴で毎度、本塁打を記録できるのは必然といえる。六回に球宴初アーチを放った山川もスイングがとにかくアグレッシブ。大瀬良に対し、全球振ってきた1打席目の三振を見れば、初球からど真ん中の直球が来たら逃すはずがない。 私は2009年から13年まで2軍の打撃コーチ、監督を務めたが、その間、イースタン・リーグで対戦したパ・リーグ、特に西武の打者は印象的だった。体が大きくてスイングに力がある選手を獲得し、若いうちは細かい変化球への対応などを気にせず、ひたすらストライクゾーンに来た球を振ることを徹底させる。 この日、バックスクリーンに運んだ浅村もその一人で、最初は粗さがあったが経験を積むうちに変化球にも対応し、隙のない打者になった。 交流戦の対戦成績そのままに、球宴も全パが5連勝。全セが13日の試合で強烈なスイングの全パの打者を封じるには、先発・菅野の投球がカギとなる。また、第1戦で3三振を喫した村上には、この"洗礼"を糧に活躍を期待している。 (サンケイスポーツ専属評論家)
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