全セ・リーグ(☆11対3★)全パ・リーグ =マイナビオールスターゲーム2019・2回戦(2019.07.13)・阪神甲子園球場=
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全パ
0030000003901
全セ
26110010X112025
勝利投手:菅野 智之(1勝0敗0S)
敗戦投手:山岡 泰輔(0勝1敗0S)

本塁打
【DeNA】筒香 嘉智(1号・2回裏3ラン)
【ORIX】吉田 正尚(1号・3回表2ラン)
【広島】鈴木 誠也(1号・4回裏ソロ)
【阪神】近本 光司(1号・1回裏ソロ),原口 文仁(2号・2回裏ソロ),梅野 隆太郎(1号・2回裏ソロ)

  DAZN
チケットぴあ
◆全セが一発攻勢で快勝。全セは初回、近本の先頭打者本塁打などで2点を先制する。続く2回裏には原口、梅野の2者連続本塁打が飛び出すなど、打者一巡の猛攻で一挙6点を奪い、試合を優位に進めた。投げては、先発・菅野が2回無失点。敗れた全パは、投手陣が振るわなかった。

◆「クオータースロー」を目指す子どもたちのお手本に! 監督推薦で球宴に初選出された阪神青柳晃洋投手(25)が日刊スポーツの特別インタビューに応じ、意気込みを語った。2回掲載で第1回は、球界でも珍しい投法を始めたきっかけや、子どもたちに伝えたい思いを語った。【取材・構成=磯綾乃】青柳は夢舞台で伝えたいことがある。 「子どもに影響を与えられたらすごくいいなと思う。やっぱりこういう投げ方(の人)がいないので。こういう投げ方でもプロとしてやっていけるというか、こういうピッチャー、こういうスタイルもありなんだよって」 甲子園のクラブハウスにファンレターが届く。異色の投げ方を貫く右腕は子どもが憧れる立場になった。 「(手紙で)小学生ぐらいの子から『僕もサイドスローで投げたいんですけど、どうやったらコントロール良くなりますか?』とか『どうやったらそういうふうに投げられますか?』と。すごく純粋にうれしかったですね。書いて答えて返しました」 「クオータースロー」のきっかけは野球を始めて間もない小学6年生の時だった。 「上投げが苦手でした。上から投げてもスリークオーターみたいな形になってしまう。それで『サイドスローどうだ?』ってコーチに言われて。やってみて、はまりました」 速球派を目指していた当時は戸惑いもあった。 「僕、小学生の時に西武の松坂(大輔)さんに憧れていて、上から速いボールを投げたい気持ちがすごくあったので抵抗はありました。でも自分に向いているのがそっち(クオータースロー)だった。中学1年生の時に1回、オーバー(スロー)にしようとしたんですけど、ちょっと肘を痛めて、結局向いてないんだと思いました(笑い)」 どのステージでも、最初は物珍しそうに見られる。 「どこにいっても1年目はばかにされる。中学校もそうですし、高校1年でいきなりサイドスローで投げてたら、みんなに面白がって物まねされたり」 だが、結果で周りを認めさせてきた。自信がつき、コンプレックスも消えた。 「高校に入った時にバッターから『打ちづらい、嫌だ、怖い』と聞いてからは、ああこれで良かったんだなって思いましたね。上投げで僕より速い人がいたとしても、その人が打たれるけど、僕は抑えられることが結構ありました。結果で勝ってきました。しかもこの投げ方だからプロに入れたというのもある。この投げ方で良かったなと思います」 それでも時に横投げへの偏った見方があると悲しく思う。 「テレビでやってたんですけど、コーチや監督がサイドスローは駄目だ、体を壊すと。頭ごなしにやめろと言っていたのを見て、そんなことないのになあ、と思った。現に僕もずっと小学校からやってきていますが、大きなケガも特にない。やりたい、向いてると思ったら、本当にどんどんやってほしいなと思いますね」 13日、甲子園で出番を迎える。 「阪神ファンじゃない人でも野球ファンがみんな見る試合だと思う。そういう中でも少しでも見てもらって、目に留まることができたらいいなと思います」 「クオータースロー」で打ち取る姿を見せたい。(つづく) ○...「クオータースロー」の名付け親は、青柳の大学時代の友人だ。「スリークオーターって4分の3って意味じゃないですか。4分の1だからクオーターでいいんじゃない?って言い出して」。サイドとアンダースローの間ということから、名付けられたようだ。青柳は「僕は呼んでないんですけどね」と笑った。

◆ホームラン競争の準々決勝・第1試合はDeNA筒香嘉智外野手と西武山川穂高内野手が対戦。同僚の神里が打撃投手を務めた先行筒香は6本塁打をマーク。後攻山川も6本塁打で譲らず。1分間の延長戦を行い、筒香が5本塁打で2本塁打の山川を退け、準決勝進出を決めた。 第2試合は広島鈴木誠也外野手と西武森友哉捕手が対戦。先行鈴木は4本塁打。後攻森は3本塁打にとどまり敗退した。 準決勝は先行筒香は4本塁打。後攻鈴木が5本塁打で決勝に進出。 決勝は先行オリックス吉田正は3本塁打。後攻鈴木は4本塁打の最後をバックスクリーン弾で締めくくり、優勝を決めた。 鈴木は賞金100万円を獲得し「まさか、優勝できるとは思っていなかったので、すごくうれしいです」と話した。

◆両リーグトップの29本塁打をマークしている西武山川穂高内野手が、延長戦の末に初戦敗退した。 16年のセ本塁打王のDeNA筒香との2分間の対決は、ともに6本を記録。後攻の山川は残り30秒で2本差を追いつくも、1分間の延長戦では2本にとどまり、どすこいパフォーマンスはお預け。5本を放った筒香に寄り切られた。

◆全セの「1番中堅」でスタメン出場した阪神近本光司外野手(24)が、先頭打者本塁打を放った。 全パの先発オリックス山岡の2球目を強振すると、打球は左中間スタンドに向かって伸びた。そのまま着弾。甲子園は歓声の渦に包まれた。 試合前には2戦連続の盗塁に向けて「まずは塁に出たいですね」と話していたが、小力のあるスイングで雨を切り裂く先頭打者アーチを放った。 球宴の先頭打者弾は昨年の西武秋山以来で史上11度目で、新人では史上初の快挙となった。

◆阪神原口文仁捕手(27)が試合をまたいで2打席連続本塁打を放った。 7番DHで先発出場し、2回の第1打席。全パ2番手の西武高橋光の146キロ直球をフルスイング。打球は雨中を舞い上がり、左翼スタンドに着弾した。12日の第1戦では9回2死から劇的な2ランを放っていた。球宴での2打席連発は11年西武中村以来8年ぶり、阪神では03年金本以来16年ぶり。 試合前に原口は「本拠地の甲子園でも1本出るようにフルスイングしていきたい」と話しており、有言実行となった。

◆全セ先発マスクの阪神梅野隆太郎捕手が球宴1号を放った。3点リードの2回走者なし。 西武高橋の初球138キロをフルスイングし、左翼席に突き刺した。1回近本、2回先頭の原口に続き、猛虎戦士3本目のソロアーチ。第2戦に向けて「とにかく自分ができるパフォーマンスを出して、楽しんでケガなく終えられるように」と話していた人気者が、地元甲子園のファンを沸かせた。

◆全セのDeNA筒香嘉智外野手が4年連続の球宴アーチとなる3ランを放った。 西武高橋光の甘く入った143キロをハードコンタクト。最も深い左中間スタンドまで届かせた。「阪神の皆さんがすごいので、うまく勢いに乗せてもらった。初めての甲子園でのオールスターは、また違った雰囲気。1本は打ちたいと思ったので、何とか打てて良かった」。連覇を狙った本塁打競争は優勝した広島鈴木に準決勝で敗れたが、セ・リーグの4番として存在感を示した。

◆全セは阪神近本、原口、梅野、DeNA筒香の4本塁打などで9点。全パは3回にオリックス吉田正の2ランなどで3点を返した。 全セは4回、広島鈴木のソロで1点を追加した。巨人菅野から中日柳、阪神青柳と継投。全パは4回以降無得点で終盤戦に入った。 全セは7回2死一塁、阪神近本のサイクル安打を達成する適時三塁打で1点を追加。20安打11得点。6人継投で連敗を5で止めた。

◆オールスター第2戦が行われる甲子園のグラウンド状況を随時、お届けします。 午後3時過ぎ現在の甲子園は霧雨が降っています。シートはマウンド周辺のみ。試合前練習は室内練習場で行う見込み。開門は午後3時30分との場内アナウンスが流れる。 同3時25分、開門に合わせてマウンド周辺のシートを阪神園芸が撤去した。 同3時40分、再びマウンド周辺にシートがかぶせられた。 同4時30分、小雨が降り続いています。試合開始予定時刻まであと2時間。時折、阪神園芸のスタッフがグラウンド状況を確認するも、目立った動きはなし。 同5時過ぎ、阪神園芸のスタッフによる内野のグラウンド整備が終わり、ラインもきれいに整っています。雨は上がり、外野フィールドでは選手と子どもたちによるイベントが開催中。ホームラン競争に向けてL字ネットも設置されました。 7回裏、阪神園芸のスタッフが一斉にグラウンドに飛び出し、水が浮き始めた内野フィールドに砂をまいた。甲子園名物となっている阪神園芸の"神整備"で試合は当たり前のように続行。

◆全パの日本ハム西川遥輝外野手が、SNS上などでも話題となった「傘パフォーマンス」を繰り出した。 雨が降っていた5回裏の守備に向かう時だった。三塁側ベンチから紺色の傘を差して、守備位置の中堅へ。ネット上では「アンブレラハルキ」とも称される、唯一無二のパフォーマンス。ちょうど右翼スタンドからはヤクルトの応援歌「東京音頭」が流れており、スタンドのファンと一緒に傘を揺らした。 東京音頭が終わると、傘を置いて、右翼の日本ハム近藤とキャッチボールを開始。守備が始まる前には、きれいに折りたたんで、後ろのポケットに傘を入れてプレーを続行。球宴史上、ユニホームのポケットに傘を忍ばせてのプレーは、初の珍事にもなった。 5回を守りきると、再び傘を差して三塁側ベンチへ走りだした。途中から左翼のオリックス吉田正尚も合流。相合い傘をしながら2人が引き揚げる姿に、甲子園の超満員のファンから大きなどよめきと拍手が起きた。 8回裏の守備に就く際も2度目の「アンブレラハルキ」が登場。その姿は、大型ビジョンにも映し出され、傘には球宴の冠スポンサー「マイナビ」と手書きで記されていることが判明した。 試合前には「折りたたみ傘、持ってきたら良かったかな。今から間に合うかな」と雨天の状況下でファンを盛り上げる案を模索。予告通りに試合に間に合わせ、満を持して折りたたみ傘を差して盛り上げた。 西川は5月18日のソフトバンク戦(リブワーク藤崎台)でも、傘を差した。この日と同じように雨天の中で迎えた4回2死一、二塁の守備中だった。相手打者が自打球の治療中に強まった雨を回避しようと中堅付近のファンの傘を借りて差して"雨宿り"。「ファンサービスじゃなくて、オレがサービスしてもらった」。雨宿り中も傘を借りたファンと談笑する姿が、テレビで中継され、見たことのないファンサービスが話題となっていた。

◆巨人菅野智之投手がプロ入り7年連続登板で球宴初勝利。プロ1年目から7年以上続けて登板は67~76年江夏(阪神→南海)10年、56~64年秋山(大洋)9年、66~73年鈴木啓(近鉄)8年に次いで4人目。 先発は5年連続6度目。5年連続先発は65~69年池永(西鉄)に並ぶタイ記録となり、先発を通算6度以上は10人目。まだプロ7年目の菅野が、村山(阪神)米田(阪急)が持つ最多先発記録へあと1試合に迫った。

◆全セの「1番中堅」でスタメン出場した阪神近本光司外野手(24)が、1992年、オールスター第2戦の古田敦也(ヤクルト)以来2人目となるサイクル安打を達成し、MVPに輝いた。 初回、全パの先発オリックス山岡の2球目を強振すると、打球は左中間スタンドに突き刺さる先頭打者本塁打。球宴の先頭打者弾は昨年の西武秋山以来で史上11度目で、新人では史上初の快挙となった。 続く2回には右二塁打、3回に右前安打を放ち、サイクル安打に王手を掛けた。5回には左中間二塁打を放ち4打数4安打で迎えた7回の第5打席は左中間へ。二塁を回ったところで少し躊躇したが、中継プレーの隙を突くように三塁を陥れ快挙を達成。1試合5安打は01年ヤクルト・ペタジーニに並ぶオールスター史上最多タイ記録となった。 この日は両親も観戦に訪れており、記念球を手にした近本は「今日、親がきているので渡します。しっかり親孝行できた」と笑顔をみせた。試合前には矢野監督から「頑張ってこいよ」と激励されており、指揮官の檄に満点回答で応えた。

◆全セが5本塁打を放つ猛攻で全パに11-3で大勝した。3年ぶりの白星で連敗を5で止め、通算成績を79勝85敗11分けとした。 全セは1回、新人の近本光司外野手(阪神)の先頭打者本塁打などで2点を先制。2回には原口、梅野の阪神勢による2者連続ソロと筒香(DeNA)の3ランなどで一挙6点を奪った。近本は球宴で1試合最多安打記録に並ぶ5安打を放ち、1992年第2戦の古田(ヤクルト)以来2人目で新人では初となるサイクル安打を達成した。 オールスターゲーム第2戦の表彰選手は次の通り。▽最優秀選手賞 近本(阪神)▽敢闘選手賞 筒香(DeNA)、高橋(中日)、吉田正(オリックス)

◆球宴仕様の白いスパイクシューズに黒土がへばりつく。巨人菅野智之投手が全セに立ちこめる暗雲を振り払うように、先発マウンドに上がった。「5連敗中なので。自分も携わっている。悔しいです。勝ちたい」と純粋に白星を求めた。 前半戦は8勝(4敗)も本来の調子には遠い。交流戦は腰の違和感で戦列から離脱。苦しみながら、粘り強く、歩みを進めてきた。だから「いい成績じゃないのに選んでいただいてうれしいです」と申し訳なさそうに頭を下げた。 先頭の日本ハム西川から直球勝負に徹した。球速は140キロ中盤までに制御したが、コーナーに投げ分け、2回を2安打無失点。球宴では65~69年の西鉄池永正明以来史上2人目の5年連続先発を務め、4年連続の無失点。「楽しむというと語弊がありますけど、肩の力を抜いてバッターと勝負できたのは、今年自分に足りなかった部分、忘れていた部分」と感じ取った。 パ・リーグの猛者に投げ込んだ18球。「後半戦に向けて、いいきっかけになればいいなと思います」とプラスにとらえた。次回登板は19日からの広島3連戦(マツダスタジアム)になる見込み。首位を独走する巨人のエースが、大いにエネルギーをチャージした。

◆ルーキー阪神近本光司外野手が本塁打→二塁打→単打→二塁打→三塁打の5打数5安打でサイクル安打を達成。 球宴のサイクル安打は92年第2戦古田(ヤクルト)に次いで2人目。1試合5安打は01年第2戦ペタジーニ(ヤクルト)に並ぶタイ記録で、1試合4長打は63年第2戦王(巨人)ら過去9人の3長打を上回る新記録だ。 ペタジーニは第3打席の四球を挟んだ5打数5安打。過去に2試合にまたがる5打席連続安打は00年イチロー(オリックス)ら3人が記録していたが、1試合で5打席連続安打は初めてだ。 本塁打を打った新人は86年第2戦清原(西武)以来4人目で、新人の先頭打者本塁打、新人のVアーチは初。新人の猛打賞も史上初と、記録ずくめの活躍で98年第1戦川上(中日)以来となる新人4人目のMVPを受賞した。

◆全セの阪神梅野隆太郎捕手が猛虎3本塁打を締めくくるアーチを放った。3点リードの2回走者なし。西武高橋の初球138キロをフルスイングし、左翼席に突き刺した。 1回近本、2回先頭の原口に続き、阪神ナイン3本目のソロアーチ。球宴1号の梅野は「目の前でグッチ(原口)がすごいホームランを打って、近本も打っていた。自分も打つ姿を思い描いてはいましたが、まさかホームランになるとは思いませんでした」と興奮気味に話した。

◆全セの「1番中堅」でスタメン出場した阪神近本光司外野手(24)が、1992年、オールスター第2戦の古田敦也(ヤクルト)以来2人目となるサイクル安打を達成し、MVPに輝いた。甲子園で観戦した近本の父・恵照(よしてる)さんは「全部がウソみたい。夢のようです...」と驚きを隠せなかった。母・美晴さんも「夢のような感じ。一流選手ばかりで、みんなテレビで見る選手ばかり。自分の子が、同じ球場に立っていると考えただけでも信じられない。みなさんの応援のおかげでここまで、やってこれている。一流選手から得たものを生かして、これからも長く活躍してほしい」とエールを送った。

◆最年少19歳の全セ・ヤクルト村上宗隆内野手が球宴初安打をマークした。 途中出場から最初の打席となった6回、ソフトバンク高橋礼の初球を捉えて左越え二塁打。「来た球を打とうと集中していた。1本打ちたかったので良かったです」と笑顔で振り返った。 8回にも左前にポトリと落ちるマルチ安打。前半戦は巨人坂本勇と並ぶリーグトップ63打点を挙げるなどバットで強烈な存在感を示し、球団の野手としては最年少で夢舞台に選出された。「光栄なこと。すごく楽しかったですし、また選ばれるように結果を残したい」と誓いを新たにした。

◆全セは「8回の男」阪神ピアース・ジョンソン投手が自身のポジションでしっかりと仕事をした。8回から登板して1イニングを1安打無失点。ホームの大声援を浴びて「いい経験をさせてもらった。めっちゃ楽しめた」とハイテンション。 DeNAの守護神山崎と話が盛り上がったようで「山崎さんはとてもすばらしい人」と笑顔だった。

◆近本の、近本による、近本のための球宴だった! 阪神のドラフト1位近本光司外野手(24)が、甲子園で開催された「マイナビオールスター2019」第2戦で、新人ではともに史上初となる初回先頭打者本塁打とサイクル安打を達成した。 令和初の球宴で1試合5安打など記録ずくめのプレーでMVPに選ばれ、賞金300万円を獲得。20安打、11得点で大勝した全セは3年ぶりの白星で連敗を5で止めた。土砂降りでも、ずぶぬれでも構わない。「選んでくれたファンに感謝を。子どもたちには、夢を伝えられたら」。夢舞台で、無数のフラッシュライトを浴びる主役は阪神近本だった。先頭打者アーチに、サイクル安打...。ビックリの連続で、甲子園を本当のお祭り騒ぎとした。 「自分が出たいと思って出られる場所じゃない。ファンの期待に応えられてよかった」 スタートから衝撃が走った。全セの先頭打者として打席へ。オリックス山岡の2球目、147キロ直球を捉えた。ぐんぐん伸びる白球は雨を切り裂き、左中間席へ着弾。子どもたちにも、大人にだって夢を届けるアーチを描いた。 「打った瞬間、打球を見失って、自分でも入るとは思わなかった。生まれ育った地元の甲子園で打つことができて最高にうれしい。家族にも恩返しができた」 小柄ながらもフルスイングの信念を持つ。170センチ、72キロと決して恵まれた体格ではない。だが「野球の基本は強く振ることなので...。当てるだけの打撃は、僕には似合わない。しっかり振り切ることが大事なんです」と、俊足を生かした"当て逃げ"は全くしない。一本足スタイルから繰り出す、思い切りのいいスイングで見る人を魅了する。 2回は右翼線へ二塁打、3回は右前打。サイクルに王手をかけた5回は二塁打だったが、快挙は7回にやってきた。「何としても打球を上げようと思っていた」とレフトへ大きな飛球を放った。二塁を回った後に1度はちゅうちょして減速したが、中継が乱れたこともあって、遠慮がち? にスライディングして三塁打に。「歓声は聞こえていた。ファンの声が力になった」。泥だらけの背番号5は少年のように塁上で手を挙げて喜んだ。 先制弾を含む5打数5安打で、文句なしのMVPに選出された。 「全然、想像してなかった。ほんとに皆さんのおかげです!」 球史に名を刻んだ夜。雨は降っても心は晴れやか。濡れた甲子園の水たまりには、野球ファンの笑顔が映った。【真柴健】

◆全パのソフトバンク松田宣浩内野手(36)が、近本のサイクル安打となった三塁打のクロスプレーを悔しがった。7回、左翼超えの打球で、左翼-遊撃と中継され三塁へ。三塁を狙った近本ときわどいタイミングになったが、捕球できなかった。「あれは捕れなかった。下もぬかるんでいたし」と、振り返った。 この日は6番三塁でフル出場も4打数無安打。シーズン中には追い込まれるとバットを短く持つが、この日は長いまま狙ったが、最後の打席も一邪飛に終わり8度目の出場、通算47打席で本塁打なし。球宴初「熱男」はならず「熱男は持ち越し。必ず1本打つまで球宴に選ばれ続けたい」と前を向いた。 「今日はフル出場できてよかった。打撃の内容もよかった」と2試合のお祭りを楽しみながらも、しっかり打撃の調子はキープし後半戦へ挑む。

◆全セの阪神藤川球児投手(38)が7年ぶりの球宴で風格たっぷりの3人斬りを決めた。 8点リードの9回に登板。全パの楽天銀次、ソフトバンク甲斐、西武森を全12球直球勝負で3者凡退に仕留めた。悪天候で9回までの試合続行が危ぶまれる中、「自分の中ではどちらでもいいかな」と泰然自若。「自分がどうこうというより、ファンの人がいいプレーを見られた」と笑顔で振り返った。 巨人坂本勇からは「懐かしいですね」と声をかけられた。聖地甲子園での球宴復帰マウンド。リンドバーグの登場曲が途中で終わってしまうハプニングさえも楽しんだ。強い雨が降り続き、マウンドはぐちゃぐちゃ。それでも入念な整備を試みようとした審判団に「これぐらいでいいですよ」と余裕で立ち振る舞えるあたりが、さすがだった。「空振りを取りたい」と目標を立てていたが、「下が悪かったんで」と直球勝負は丁寧に敢行。この日の最速は146キロながら、浮き上がる元祖「火の玉」でフライを3個奪ってみせた。 久々のお祭り舞台で熟練の真っ向勝負を演じた後、すぐさまシーズンモードに切り替えられる心も頼もしい。取材対応中、巨人原監督に「また後半頑張ろう」と声をかけられ、目の色が変わった。「去年最下位で(名前を)呼ばれるのも最後だった。その辺はやっぱり頑張らないとね。阪神タイガースという看板を背負ってやる以上、プレーヤーが頑張らないと」。最後、「また後半戦頑張ります」という言葉に自然と力がこもった。【佐井陽介】

◆「セ界の大砲」がレジェンドに王手をかけた。4番に入ったDeNA筒香嘉智外野手(27)が、オールスター4年連続弾をマークした。2回に西武高橋光から左中間最深部へ運び、自身球宴通算5号。81~85年の山本浩二、97~01年の松井秀喜の5年連続弾の最多記録を射程に捉えた。球宴出場5年連続5度目の常連が、時代をまたいで豪快な1発を披露した。4番打者の血がうずいた。筒香が甲子園の雨を切り裂いた。2回1死一、三塁。西武高橋光のど真ん中直球を一振りで捉えた。右足を少しだけ上げてタイミングをとると、バットの軌道にボールを乗せた。バックスピンを利かせた一撃に「感触はすごく良かった。ホームランを打ちたいと思っていたので、1本打てて良かったです」。お手本通りの1発を4年連続でスタンドに放り込んだ。 聖地・甲子園から野球の魅力を日本中にアピールした。「初めての甲子園でのオールスターは、また違った雰囲気で、楽しみながらいい経験をさせてもらった」と地元関西での夢舞台を満喫。双子の姉もスタンドから観戦した。「珍しいですよ。あんまり試合を見に来たいとか言わないので。野球に興味がないんですかね?」と苦笑いを浮かべるも、野球人気&野球人口拡大の指標にもなる。ルールを完全に理解しているかも微妙な姉の目の前で、一番分かりやすい本塁打で醍醐味(だいごみ)を示した。 球界を代表する選手が集結する舞台での存在感は、年々増している。当たり前のように4番に座り、当たり前のように本塁打を打つ。試合前のホームラン競争は準決勝で敗退し"2連覇"は逃したが、打球の迫力はスラッガーそのもの。「どんな試合でも意味がある。やるからにはいいプレーをしたいし、昨日よりも野球が上手になりたい。それはどんな時でも同じだと思います」と思考の軸にブレはない。 試合後、雨脚は強まる中での表彰式に登壇。敢闘選手賞(賞金100万円)に選ばれた。少し高いところからスタンドへと目をやった。「こんな雨の中、最後まで試合を見てくれている。当たり前だと思ってはいけない。感謝しないといけないし、ファンの方が喜ぶようないいプレーがしたい」。甲子園の空高く、会心の一打をかっ飛ばした。【為田聡史】

◆阪神原口文仁捕手(27)が、第1戦から第2戦へと2打席連続本塁打をかけた。全セの「7番DH」で先発出場し、先頭打者で迎えた2回の第1打席。 全パ2番手の西武高橋光に対してカウント1-0からフルスイングで3球連続ファウルした後の5球目、真ん中146キロ直球を全力で振り切った。打球は勢いよく舞い上がり、左翼スタンドに吸い込まれた。 第1戦での9回代打2ランに続く1発。「まさか打てるとは思ってなかった。打球が飛んだ瞬間、いったと思いました」。本拠地甲子園でまたもや劇的な球宴弾。「たくさんの歓声をいただきながら甲子園のダイヤモンドを1周することができて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」。ベンチ前では豪華な味方ナインに出迎えられ、笑みがこぼれた。最後に帽子を取り、球場全体に一礼で感謝を伝えた。 最後の出場選手をファンが決めるプラスワンでたどり着いた舞台。原口もファンと同じく、他球団の一流選手のプレーを楽しみにしていた。注目選手にパ・リーグのホームランキングを独走する同学年の西武山川を挙げ「やっぱりあれだけ素晴らしいホームランバッターなので楽しみです」と目を輝かせていた。自身は第1戦で本塁打を放った山川を上回る2戦2本でファンに勇気を与えた。 夢のような2日間を振り返り「1番は野球を楽しむ。自然と笑顔が出て、野球を始めた頃に戻れた2日間だった」。第1戦の敢闘選手賞100万円に続き、マイナビ賞とツイッター賞各100万円も受賞して計300万円。試合前には「娘のおむつ代とミルク代になるのかな」と話していた賞金は3倍になったが、それでも「(賞金は)余らないんです。(娘が)大きくなるので」。最後は優しいパパを見せていた。【奥田隼人】

◆全パのオリックス吉田正尚外野手が敢闘選手賞を獲得した。全セが5本の本塁打を放つ中、負けじと3回に右翼席へ弾丸ライナーで放り込む2ランを放った。これが待望の球宴初アーチ。 「打球が上がらなかったが、しっかり捉えて入ってよかった。(敢闘選手賞は)運もありました」と笑顔を見せた。試合前に行われた本塁打競争では惜しくも決勝で敗れたが「だめでしてたね。また来年です」と早くもリベンジの意欲をのぞかせた。

◆全パはソフトバンク甲斐拓也捕手が球宴初「甲斐キャノン」を発動させた。4回1死一塁、打者原口の3球目に代走神里が二盗を試みたが、二塁ベース上へストライク送球で刺した。 「あれはよかったですね」と納得の表情だった。昨年は1盗塁を許しただけだったが、今年は刺した。「楽しかった。いろんな投手も受けることができたし」と全体金色の球宴用プロテクターを装着しフル出場した。

◆阪神近本の偉業を全パの日本ハム西川遥輝外野手がアシストしていた。 7回の守備に向かう前は「三塁打は絶対に阻止するぞと言って出たけど...」。2死一塁の場面で近本が打席に入るとスタンドから「前出ろー、と。ファンに負けました」と甲子園の大声援に思わず、左翼の秋山にも前進守備を指示。見事に秋山の頭上を抜かれた。 「それもオールスターならでは。良かったんじゃないですか」と笑顔だった。

◆全パのソフトバンク高橋礼投手(23)が、阪神近本のサイクル安打達成となる三塁打を許した。降りしきる雨の中6回から登板。7回2死一塁から近本に三塁打を打たれた。「地鳴りのような声援だった。球宴ならではの盛り上がり。それ(サイクル安打)に貢献できたので、うれしい」と、悔しさを隠し、大記録をたたえた。 同じ千葉出身の巨人丸とは6回無死一塁で対戦。交流戦では2安打を許していたが「その時使えなかったシンカーを使えた」と、シンカーで二ゴロ併殺に打ち取った。ぬかるんだマウンドにてこずり、普段140キロ台の直球は最速135キロ。「そこは0点。ある程度の投球はできた」と、2回4安打1失点、24球の球宴デビューを振り返った。 同学年の楽天松井とはスライダー、チェンジアップの使い方や、使うタイミングなどを聞いた。この日は雨のため室内練習場での試合前練習となったため、同じ右の変則投法の阪神青柳を訪ねることもできた。「直球とツーシームを投げ分けるところが僕とは違う」と、しばらく話し込みしっかり学んできた。 前半戦8勝を挙げたアンダースロー右腕は、多くの収穫を得て後半戦へ向かう。

◆全セのDeNA筒香嘉智外野手が4年連続の球宴アーチとなる3ランを放った。 ▼筒香が16年<1>、<2>戦、17年<1>戦、18年<1>戦に次いで4年連続5本目の本塁打。球宴で4年以上続けて本塁打は81~85年山本浩(広島=5年)97~01年松井(巨人=5年)に次いで3人目。16年<1>戦は5番で打ったが、残り4本は4番でマーク。4年続けて4番で本塁打は、81~85年山本浩以来2人目。 ▼全セは5本塁打を含む毎回の20安打。チーム20安打は01年<2>戦全セの23安打に次いで2度目。毎回安打は球宴史上初めてだ。チーム5発は87年<3>戦全パ(清原、村上2、デービス、石嶺)90年<2>戦全パ(清原2、石嶺、大石、鈴木)に次いで29年ぶり3度目のタイ記録。チームの5人が本塁打を打ったのは球宴史上初めて。

◆阪神勢は1回に近本、2回には原口、梅野が連続本塁打。同一球団の3選手が本塁打は79年<3>戦ロッテ、04年<1>戦ダイエーに次いで3度目となり、セ・リーグの球団では初めて。過去2度は外国人選手が含まれており、オール日本人選手で記録したのは初めてだ。また、同一球団の選手が連続本塁打は60年<3>戦国鉄の巽→佐藤、70年<1>戦ロッテの山崎→有藤、90年<2>戦近鉄の大石→鈴木に次いで4度目。

◆全セの広島鈴木が2年連続の球宴弾を放った。大量リードの4回、全パ4番手二木から139メートルの特大ソロを左翼スタンドにたたき込んだ。本塁打狙いを公言し、徹底的に楽しもうと決めていた。「何とか打てて良かった。ファンの皆さんもホームランを望んでいたと思う」。普段はチームプレーに徹し、求道者のように1打席1打席に向かうが、この日ばかりは豪快に振り回した。 昨年の第1戦でも予告通りに西武菊池(現マリナーズ)から球宴1号を放ち、敢闘選手賞に選ばれている。直球を京セラドーム大阪のバックスクリーン右へたたき込んだが、対戦したい投手に菊池を挙げ「速い真っすぐを狙っていきたい」と話していた。 前哨戦も鈴木が主役だった。本塁打競争で初優勝。西武森、DeNA筒香を下し決勝進出。最後はオリックス吉田正を5本対3本で破った。4本目で勝ちが決まったが「おまけの5本目」を放ってようやく気づき、賞金100万円をゲット。打球速度の平均を競う「日産ノート e-POWER賞」も165キロで1位になり「カープには(測定装置が)ついてないからどれだけすごいか分かりません」と話した。 後半戦の巻き返しへ弾みをつけた。チームは11連敗中で4位と苦しんでいる。つかの間のエンジョイベースボールを経てまた、厳しい戦いに臨む。【村野森】

◆プロ10年目で初の舞台を踏んだロッテ荻野貴司外野手(33)。第2戦は出番がなかったが、関西学院大の後輩、阪神近本がMVPと大活躍した。近本すごいよ。おめでとう。本当にすごいの一言。新人であれだけ活躍できるなんて、何て言っていいか...もう頭があがりません。いきなり先頭打者ホームランを打ってサイクルヒットまで達成するとは。1打席目は初球のチェンジアップを空振りして、よくあの2球目の真っすぐを打ちにいったなと。感心しながら見ていました。 同じ大学出身の宮西と3人で、第1戦の後に焼き肉に行ったんです。アドバイスできることなんてないんですけど、私生活のこととかざっくばらんに話して、いい時間が過ごせました。翌日にこの活躍なので、焼き肉の効果があったかは分からないですが、うれしいですよね。近本はここまで順調に来ている。僕は1年目にケガをしてしまったので、健康にだけ気をつけてほしい。 振り返ると「やっぱり楽しかった」が一番です。オールスターを目指して野球するわけではないですけど、近本にも負けないように、来年も選んでいただけるような成績を残したいです。2日間のいい経験を、今後の人生に生かしていきたいです。(千葉ロッテマリーンズ外野手)

◆夢舞台を見届けた全セの広島大瀬良大地投手(28)が日刊スポーツに手記を寄せた。第1戦で先発し、この日は登板がなかった右腕は、今回の祭典で感じたことを記した。試合は阪神のドラフト1位近本光司外野手(24)が、新人では史上初となるサイクル安打を達成。MVPを獲得した。後半戦はセ、パ両リーグともに15日に開幕する。うれしいことがありました。第1戦で阪神原口がホームランを打ったことです。感動しました。先発した後、グラウンドに戻って一塁ベースコーチとして見ていましたが、ホームまで走って戻ってハイタッチしました。第2戦の本拠地甲子園でも打つなんて、本当にすごいですね。 もともと阪神岩貞と梅野とは同じ九州出身の同学年ということで、仲がよかったんです。2人との話の中でよく出てくるのが、こちらも同学年の原口のことでした。「人間的に律義でいいやつだよ」と。面識もないのに、勝手に親近感を持っていました。今年のオフ、がんの手術を受けるというニュースを見てびっくりしました。どうしても気持ちを伝えたくて、岩貞に連絡先を聞いて、こちらから連絡しました。「がんばって戻ってこられるように。次は真剣勝負しよう」とメッセージを送ったんです。 その後、甲子園で練習しているところに「ありがとう」と言いに来てくれました。やっぱり律義なやつだなと思いましたね。これまでの対戦では打たれていないはず(2打席で1打数0安打)。今年の対戦はまだないですが、次に当たることがあれば、グラウンドの中でしっかりと戦いたいと思います。 後半戦が始まります。前半戦の終盤で、2戦連続で打ち込まれました(6月19日ロッテ戦はプロ最多4被弾、同28日DeNA戦はプロ最多の被安打12)。実はここまで、ああ、いいなと思って投げたことはあまりないんです。去年のほうがまだ、自信を持ちながら投げられた。だから、打たれたらこうしよう、ああしようと考えながらやってきたんです。終わったことは取り返せない。この経験をどう生かすか。最後、よかったと思えるようにするには、大事な1つの分岐点なのかなと思います。 シーズンは大事なところに差し掛かってきます。1戦1戦やっていくのは変わらずですけど、その中で、なんとか僕が投げるゲームは、僕に勝ちがつかなくても勝てる可能性が高いゲームにしてきたい。そういうゲームをたくさん、つくっていきたい。そうすれば、うちのチームだったら勝ってくれると思います。(広島カープ投手)

◆7年ぶり9度目のオールスター出場の阪神藤川球児投手(38)を出場メンバーたちが語った。リーグ3位の23ホールドを挙げ、昨年よりパワーアップした球児のすごみとは? 丸、坂本勇、筒香、梅野らの証言に、昨季と比較したデータも交えて右腕のすごさに迫った。【取材・構成=桝井聡、セ・リーグ取材班】藤川と言えば「浮き上がる」と言われる火の玉ストレート。セ・リーグの猛者たちからも直球に関する証言が相次いだ。 DeNA筒香 何というか、特殊なストレートを持っている。噴き上がるストレートというイメージ。タイミングが他の投手とは違う。バットを出しても、あれ? という感じになる。すごい投手だと思います。 巨人丸 やっぱりボールのキレが素晴らしいと思います。 ヤクルト中村 少しでもボールを見ようと思うと、捕手のミットに到達している。他の投手とは違うものがある。リリースしてからのスピードも力もある。 巨人岡本 ものすごいボールですよ。(真っすぐと)分かっていても打てませんから。今の藤川さんしか知りませんが、ほんまにすごいです。 中日高橋 真っすぐが速い! 独特の剛速球を生むと言われるボールの回転数について、球団内には今季も「球界トップクラスをキープしている」という証言がある。昨季11・10だった奪三振率は、今季はここまで13・64。セ・リーグでは突出している。得点圏での被打率は昨季2割6厘から今季0割8分7厘。球種の9割以上を占める直球とフォークボールで打者を翻弄(ほんろう)している。 ボール自体のすごさだけではない。女房役の阪神梅野と巨人坂本勇が証言したのは、卓越した観察眼、そして打者との駆け引きのうまさだ。 阪神梅野 自分の状態もいい時はもちろんですけど、悪いときにも抑えている。相手のタイミングを狂わせることができる。タイミングを狂わせてファウルを取る。そうやって相手を追い込む形を作れる。ただ単に力勝負ということではない。真っすぐも(コースが)偏らない。 巨人坂本勇 去年も今年もずっと球は強いです。やっぱり、すごいのはキレですよね。それとマウンドでバッターを感じながら投げられているように感じます。 今季がNPB復帰4年目。対戦経験のなかった打者の特徴も、ここ数年で蓄積されている。登板前のブルペンでは具体的な打者をイメージして「予行練習」を行う。前半戦で投げたわずか数球のカーブは、後半戦への布石ではという証言もあった。独特のストレートを生むコンディション作りと、打者を攻略するための準備。圧倒的なパフォーマンスには理由がある。

◆球宴初出場で初登板した阪神青柳晃洋投手(25)が、日刊スポーツのインタビュー第2回で前半戦を振り返る。開幕から先発ローテーションを守り、ここまでキャリアハイの5勝。矢野監督や先輩の西の助言を胸に刻み、後半戦もローテーションを守る。【取材・構成=磯綾乃】14試合に登板し5勝5敗。収穫も課題もあった。 「数字としては5勝出来て、僕の中では良く出来てるかなとは思っているんですけど。やっぱり後半ちょっと落ちてきたなという部分がある。初めてのローテーションで難しいところがあるなと思います」 直近3試合は5回持たず降板と悔しい投球が続く。 「コンディションだったり、対策されたりというのはいろいろある。ずっと同じようにやっていても勝てるわけじゃないんだなというのは、痛感させられました」 交流戦前までゴロアウト率は両リーグトップ。「ゴロ」への意識を強くするきっかけがあった。 「去年ファームで、矢野監督に『ちゃんと自分のピッチングスタイルというのを考えてやりなさい』というのを言われた。ゴロアウトを目指していったら、抜けてヒットになっても、今度はゴロでゲッツーになったりも出来た。そんなにいっぱい三振を取れるピッチャーでもない。自分のスタイルという形で、教えてもらいましたね」 初めて開幕からローテを守る今季、オリックスからFA移籍した西も頼れる存在になっている。 「3つ上なので、ある程度年が近いので聞きやすいですし、西さんからしゃべってくれることも多い。練習メニューはほとんど決まってるんですけど、体が元気な前半は決められた本数より多く走ればいいし、体が疲れてきたら少なくてもいいんじゃないか、とか。自分の体は自分しか分からないんだから、疲れている時に追い込んでいてもいい結果は出ないぞ、と」 練習では一緒にキャッチボールを行うことも多い。 「キャッチボールも、投げた次の日にそんなに強いキャッチボールいらないんじゃない? と。調整の中で今日は休む日って決めたら、それこそキャッチボールをしなくてもいい日を作ってもいいんだから、と。年が近くて実績がある人。素直に話も入ってきますし、いろいろ本当に教えてくれる。ロッカーも隣ですし、軽い感じでそういう話になったりとかもします」 オールスター開幕前には、こう意気込んでいた。 「楽しくやりたいというのは一番ですけど、何かつかめればいいかな、と。最近結果が出ていない、ここ3試合良くないので。これを機に何かつかめればいいかなというのもありますし、投げるその中で、いろいろ試したいことも試せればいいなと思いますし、その結果三振だったり取れたらいいなと思いますね」 大舞台で奪三振とはならなかったが、この経験をリーグ戦で上昇のきっかけにする。(おわり)

◆阪神のドラフト1位・近本光司外野手(24)=大阪ガス=が13日、「マイナビオールスターゲーム2019」の試合前練習に参加。球団OBの赤星憲広氏(43)、甲斐拓也捕手(26)=ソフトバンク=とのインタビューが実現。昨年の日本シリーズを沸かせた"甲斐キャノン"から、果敢にスタートを切ることを宣言した。  「まずは塁に出ないと話にならないですけど、一番楽しみですね。肩も本当に強いんですけど、捕ってからの早さと送球の正確性。タッチするところに絶対くるので。どれだけいいスタートを切れるかですよね。勝負したいです」  3月2日のオープン戦(ヤフオクドーム)では千賀から右前打を放つと、果敢にスタート。甲斐から盗塁を決め、博多の虎党を沸かせていた。リーグ3位の19盗塁を決めているルーキーに、甲斐も「足がめちゃくちゃ速いですよね。オープン戦とときから知っていたんですけど、実際に見てこんなに速いのかと」と目を丸くしていた。  甲斐が「こんな足の速い選手、刺してみたいですね」と力を込めれば近本も「塁に出させてください」と笑顔。俊足VS強肩の対決が、実現するか。  赤星氏は球宴では通算で1盗塁。本拠地・甲子園で盗塁を決めれば、憧れの先輩を超えることになる。

◆マイナビオールスターゲーム第2戦(13日、全セ-全パ、甲子園)オリックス・吉田正尚外野手が13日、「マイナビオールスターゲーム2019」の第2戦(甲子園)に全パの「3番・左翼」で出場。第2打席で右中間へ球宴初アーチを放った。  1-8の三回1死一塁から全セ・柳(中日)の変化球をとらえ、右中間スタンドへ追撃2ラン。試合前に行われた本塁打競争の決勝戦では、3本を放つも5本の鈴木(広島)に敗れたが、試合で豪快なアーチを描いた。

◆広島の鈴木が本塁打競争を制し、賞金100万円を手にした。「まさか優勝できると思っていなかったので、すごくうれしい」と喜んだ。  森(西武)との1回戦はチームメートの菊池涼に投げてもらい競り勝ったが「練習してなかったので少し打ちづらかった」と準決勝から広島の上野打撃投手に変更。昨年覇者の筒香(DeNA)を破って決勝に進むと、3本の柵越えにとどまった吉田正(オリックス)を尻目に、4本で勝負を決めた後に5発目を放ってスタンドを沸かせた。

◆今季大腸がんの手術から復帰した阪神の原口が第1戦での代打2ランに続き、2試合連発となるソロ本塁打を放った。「まさか打てるとは思っていなかった」と感無量の表情で話した。  2-0の二回、先頭打者で打席に入ると、本拠地の甲子園球場は大歓声に包まれた。西武の高橋光に追い込まれながらも146キロの速球を振り抜くと、打球は雨の中、左翼席へ飛び込んだ。ベンチでナインとハイタッチし、ファンにヘルメットを取ってあいさつした。  1月にがんを公表して手術を受け、リハビリの末に6月に復帰。「こうやって野球をやれるのは当たり前ではないと思っている」と感じている。苦難を乗り越え、晴れ舞台で復活を印象づけた。

◆阪神D1位・近本光司外野手(24)=大阪ガス=が13日、「マイナビオールスターゲーム2019」の第2戦(甲子園)に全セの「1番・中堅」で先発出場。一回先頭でいきなり左中間へ先制ソロを放った。  全パの先発・山岡の2球目、147キロ直球を力強く振り抜いた。打球は左中間へぐんぐん伸びていき、フェンス際前列付近に着弾。満面の笑顔でダイヤモンドを一周し、大歓声を浴びた。

◆DeNAの筒香が4年連続で本塁打を放った。阪神勢の一発攻勢もあり、5-0で迎えた二回1死一、三塁で高橋光(西武)から左中間席へ3ラン。「阪神の選手がすごいので勢いに乗せてもらった。感触はすごく良かった」と笑顔だった。  第1戦は5番打者として2安打1打点をマークしたがアーチは出ていなかった。「1本は打ちたいと思っていたので良かった」と話した。

◆「マイナビオールスターゲーム2019」が13日、甲子園球場で行われ全セ・原口文仁捕手(26)=阪神=が二回無死、左翼ポール際へソロアーチ。前日12日からまたがる"2打席連続"で、本拠地・甲子園を大観戦へ導いた。  「まさか打てるとは思っていませんでした。つくづく運がいいなと。タテジマが甲子園でハツラツとプレーしていると、ファンも喜ぶと思うので」  全セの「7番・指名打者」で出場。高橋光(西武)の146キロ直球を振り抜くと、ぴょんと飛びはね、行方を見つめた。「打った瞬間、入ると思いました」。手応え十分の一発で、ベンチに帰ってくるとヘルメットを脱ぎ右翼席へと掲げた。  「野球をやれることは当たり前じゃない。子どもたちにも一生懸命頑張ってほしいです」  原口の一発につられ、続く「8番・捕手」で先発の梅野も左翼席へソロアーチを突き刺した。聖地でのお祭りが、虎一色に染まった。

◆阪神の梅野が二回にチームメートの原口の一発に続き、本塁打を放った。高橋光(西武)の初球の真っすぐを本拠地の左翼スタンドに運び「ファン投票で選んでもらって、1本出てほっとしている」と話した。  一回には近本(阪神)が先頭打者弾をマークしており、同一球団の3人が本塁打を記録した。「目の前でグッチ(原口)がすごいホームランを打って、近本も打っていたし、自分も打つ姿を思い描いてはいたが、まさかホームランになるとは思わなかった」と目を丸くした。

◆西武の高橋光が球宴に初登板し、1回を投げて3本塁打を含む7安打で6失点と打ち込まれた。0-2の二回に登板し、先頭打者の原口と梅野(ともに阪神)に連続本塁打を浴び、1死後に筒香(DeNA)の3ランなど5連続長短打を許した。「セ・リーグを代表する打者と対戦して、自分の球がまだまだなんだと感じた。実力不足」と悔しがった。  5年目の今季は前半戦で自己最多の7勝を挙げ、監督推薦で球宴に初出場。群馬・前橋育英高時代に全国制覇を果たした甲子園で予定の2イニングを投げられなかった。ほろ苦い結果となり「もうオールスターは避けて通りたい」と苦笑いだった。

◆全セの青柳晃洋投手(25)=阪神=が2回無失点に抑えた。  「みなさん、ストレートが150キロを超えていた。そんなの投げられないので、いつも通りいきたいです」  試合前、そう意気込んでいた。3番手として五回からマウンドへ。先頭を失策で出塁させ、続く西川(日本ハム)にも右前打を浴び無死一、二塁。しかし代打・近藤(日本ハム)を三ゴロ併殺に仕留めると、吉田正(オリックス)も一ゴロで切り抜けた。  六回も左翼・近本の失策で無死二塁とされるも、ここから3者連続内野ゴロ。監督推薦で出場した初の球宴で、思う存分、持ち味を発揮した。

◆8年目で初選出された中日の高橋が2本の適時二塁打を放ち、敢闘選手賞を獲得した。4-0の二回1死二塁で中堅フェンス直撃の一打を放つと、8-3の三回2死一塁では右中間へ運び「ホームランを打ちたかったんですけど、結果的にこうなって良かった」と喜んだ。  一回にも左前打を放って第1戦から4打席連続安打をマークし、全国のファンに存在をアピール。「初球からとにかく振ろうと決めていた。緊張はなかった。楽しかった」と充実感を漂わせた。

◆日本ハムの西川が3安打を放った。0-8の三回無死二塁では適時打。「球宴なので思い切って振った。打球は上がったと思ったが、目線と違う方に飛んでいった」と一、二塁間を破った当たりに苦笑いした。  五回の守備に就く際には折りたたみ傘を差して登場。全セの応援団が演奏していたヤクルトの応援歌の東京音頭に合わせて傘を揺らした。5月に熊本のリブワーク藤崎台球場での試合で雨による中断中、外野席の女性の傘を借りて談笑する姿が話題になった。傘は事前に準備していたそうで「喜んでくれたのなら良かった」と笑った。

◆全セが全パを20安打の猛攻、大量11得点で下し、通算成績を78勝86敗11分けとした。一昨年から続いていた全パの連勝を5で止めた。MVPはオールスター史上2人目のサイクル安打を達成した阪神・光司外野手(24)が獲得した。  今年デビューの阪神ドラフト1位・近本が聖地で躍動した。見せ場はいきなり訪れた。一回、先頭打者で打席に入ると、2球目の直球をとらえ、左翼スタンドへ本塁打。阪神の同僚も近本の活躍に奮起し、第1戦で反撃の一発を放った阪神・原口が二回、この日も左翼スタンドへ本塁打。続く阪神・梅野も初球を左翼スタンドへ運び、2者連続弾に甲子園の虎党が大いに沸いた。  二回には全セの4番、DeNA・筒香も1死一、三塁の場面で3点本塁打。四回には広島・鈴木が左翼へソロ本塁打を放つなど、全セは計5本のホームランで、全パを圧倒した。  七回は、二回と五回に二塁打、三回に右安打を放った阪神・近本に注目が集まった。サイクル安打まで三塁打のみと迫った打席で、ソフトバンク・高橋礼の3球目を振り抜くと、打球は左中間へ。全パの野手がもたつく間に、持ち味の足を生かして3塁に到達。左翼適時三塁打で、オールスター史上2人目のサイクル安打を達成した。

◆広島の鈴木が昨年に続き2本目となる豪快なソロ本塁打を放った。9-3の四回1死で、二木(ロッテ)に対してファウルで粘り、フルカウントから甘く入った9球目を左中間スタンドへ運んだ。  本塁打競争も制し、自慢の長打力を存分に発揮。球宴の1試合最多本塁打記録に29年ぶりに並ぶ全セ5本目のアーチとなった。「楽しかった。ファンの皆さんは本塁打を望んでいたと思う。数多く出た方が盛り上がると思うので、その中に加われて良かった」と目尻を下げた。

◆プロ野球マイナビオールスターゲーム2019は13日、甲子園球場で第2戦が行われ、全セが5本塁打を放つ猛攻で全パに11-3で大勝した。3年ぶりの白星で連敗を5で止め、通算成績を79勝85敗11分けとした。  全セは一回、新人の近本(阪神)の先頭打者本塁打などで2点を先制。二回には原口、梅野の阪神勢による2者連続ソロと筒香(DeNA)の3ランなどで一挙6点を奪った。  近本は球宴で1試合最多安打記録に並ぶ5安打を放ち、1992年第2戦の古田(ヤクルト)以来2人目で新人では初となるサイクル安打を達成した。  後半戦はセ、パ両リーグともに15日にスタートする。 全セ・緒方監督 「すごい打撃力でいい試合ができた。セ・リーグだけでなく、パ・リーグの選手も本当に頑張ってくれた。選手に感謝している」

◆「マイナビオールスターゲーム2019」が13日、第2戦が行われた。全セ・近本光司外野手(24)=阪神D1位、大阪ガス=が球宴史上初となる新人での初回先頭打者弾を放つと、5打数5安打の大暴れで史上2人目のサイクル安打を達成。MVPを獲得した。猛虎勢は15日の中日戦(ナゴヤドーム)から始まる後半戦に向けて、弾みをつけた。  雨が降り注ぐ甲子園に、いきなり衝撃の"虹"を架けた。信じられないという思いが笑みへと変わり、ダイヤモンドを回る。近本が聖地を大歓声に包み込み、一瞬にして、耳をつんざく六甲おろしへと導いた。  「みなさんフルスイングしていたので、自分も初球からいってやろうと思っていました。打った瞬間打球を見失って、ホームランになったことにも最初は気づきませんでしたが、生まれ育った地元の甲子園で、みなさんの前でホームランを打つことができて最高にうれしいです。」  全セの「1番・中堅」で初先発。山岡(オリックス)初球の117キロスライダーを空振りし、2球目だった。外角147キロにしっかり踏み込むと、雨空を舞った白球はどよめきにも押され、そのまま左中間スタンドに着弾。新人では球宴史上初となる初回先頭打者アーチを放ち、満面の笑みでホームインした。  ファン投票で38万9868票を集め、外野手部門2位で選出された。父・恵照さんの58歳の誕生日でもあった前日12日の第1戦(東京ドーム)では代走から二盗を決めるなど躍動してみせた。衝撃の一発に「全部ウソみたい。夢のようです」と恵照さん。この日は東京ドームから帰阪し、夫人から「地元の人とかもくるので、そういう人たちにいいプレーを見せて」と背中を押され、自宅を出たという。  両親も夫人も観戦に訪れる中で、歴史に名を刻む一発を放った。  この一発で全セ...猛虎戦士に火がついた。二回には原口、梅野が連続ソロ。その後、3ランを放った筒香(DeNA)が「阪神の選手がすごいので、勢いに乗らせてもらいました」とうなるほど、聖地は猛虎一色だ。  近本は二回1死には一塁線を破る二塁打。三回2死には右前打を放ち、七回には左中間に三塁打。打球の跳ね返り方を見て、一瞬二塁で止まりかけたが、三塁を目指すと、中継が乱れて、三塁打となった。  「(サイクル安打のボールは)両親が来ているので渡します。しっかり親孝行できたと思います。(七回の三塁打は)なんとか打球を上げようと思っていました。いいところにいってくれた。いい形で三塁打になってくれてよかった。みなさんのおかげです」  球宴では1992年の古田敦也(ヤクルト)以来、史上2人目のサイクル安打を達成した。記録ずくめの初球宴。MVP級の活躍で「近本光司」の名を、全国へととどろかせてみせた。  「めちゃめちゃ楽しかったです」  祭りを楽しむ笑顔は、少年のように輝いていた。虎の新風は球界をも巻き込み、本物のスター道を駆け上がっていく。

◆初選出されたヤクルトの19歳、村上が球宴初安打となる2安打を放った。第1戦では4打数無安打で3三振だっただけに「一本欲しかったので打てて良かった」とほっと息をついた。  五回の守備から出場。六回にソフトバンクの高橋礼から左越え二塁打を放つと、八回は西武の増田から左前打をマークした。「すごく楽しかった。来年も結果を残してファンのみなさんに選んでもらいたい」と笑顔で話した。

◆7年連続で選出された巨人の菅野は先発して2回を投げ、18球で無得点に抑えた。貫禄十分の投球を披露し「肩の力を抜いて打者と勝負するというのは忘れていた部分。いいきっかけにしたい」と笑顔で振り返った。  一回2死一塁で注目の対戦となった山川(西武)を遊ゴロに仕留めるなど、強打者相手にストレート主体の勝負で盛り上げた。「楽しんで投げられました」と満足そうに振り返った。

◆阪神の藤川が大勝の試合を締めくくった。米大リーグや国内の独立リーグを経験して7年ぶりの出場。マウンドがぬかるむ中で全12球を直球で三者凡退に抑え「違和感はなかった。ストライク中心に投げようと思った」と余裕たっぷりに汗をぬぐった。  2006年の球宴で予告して全球直球勝負し、カブレラ(西武)を空振り三振に仕留める名勝負を演じたベテランは21日に39歳の誕生日を迎える。本拠地の甲子園球場での球宴を「他の選手がいいプレーを見せてくれたね」と楽しんだ様子だった。

◆球宴ならではの"お膳立て"が近本(阪神)のサイクル安打達成を呼んだ。全パは七回2死一塁の近本の打席で外野手が前進守備に。中堅手の西川(日本ハム)は「ベンチでは絶対阻止と話していたが、外野席のファンに『前行け』ってめっちゃ言われた。圧力に負けて前進した」と快挙を期待するファンの声に押された。  さらに外野からの返球を中継した遊撃手の源田(西武)も「三塁打でサイクルとみんな分かっていたし、外野も前進していたので」と、二塁を回って一度は進塁を諦めた近本が三塁へ再び走りだすのを待って緩やかに送球。全パの辻監督は「ちょっと演出が下手だったかな」と冗談めかした。 全パ・辻監督 「無事に終わったことが何より。楽しかった。最年長の松田宣がベンチの雰囲気を良くしてくれた。(近本の)サイクル安打は大したもの」 高橋礼(球宴初登板で、丸を二ゴロ併殺打に仕留め) 「シンカーを使って内野ゴロを打たせたくて、その通りできた」 山岡(先発して1回2失点) 「なかなか先発する機会は少ないと思うのでいい経験はできた。楽しめた」 平井(球宴初登板で1回無失点) 「思ったより緊張はしなかった。結果的に点を取られず終われて良かった」

◆「マイナビオールスターゲーム2019」が13日、甲子園で第2戦が行われ、大腸がんの手術から復帰した全セ・原口文仁捕手(27)=阪神=が「7番・DH」で先発し、二回に2試合連発となるソロを放った。  列島を鳥肌で包んだ、劇的アーチから一夜-。原口が紡ぐ物語には、まだまだ続きがあった。甲子園に場所を移した真夏の祭典に「7番・DH」で先発出場。それだけでも超満員のスタンドを沸かせていたが、そこへ向かって、2夜連続の左越え本塁打を放り込んだ。雨の本拠地を、涙にもぬらしてしまった。  「きのうに続いてホームランを打つことができて、正直自分でも驚いています。たくさんの歓声をいただきながら甲子園のダイヤモンドを一周することができて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」  喜んでくれる人がいるのなら、何度でも。奇跡を起こしてみせる。万雷の拍手で迎えられた二回先頭の第1打席から、やってのけた。  全パの2番手・高橋光(西武)との対戦。前夜と同じようにブンブンと振っていき、カウント1-2からの5球目を捕まえた。左翼ポール右へと糸を引き、白球が伸びていく。それに見とれるようにゆっくりと、バットを置いて走り出した。白い歯を何度もこぼしながら、ゆったりと4つのベースを踏んでいく。ベンチでのハイタッチを終えると、黄色く染まる一塁側スタンドへ、またヘルメットを外した。直後に梅野にも2者連続弾が飛び出し、初回先頭打者弾の近本とともに最高の競演だ。  前日12日の第1戦で放ったカムバック球宴弾から、まさかの2打席連続弾になった。前夜は、少年時代に父・秀一さんに連れられて通い詰めた東京ドームでの一発だった。試合後も「小さいころ、すごくジャイアンツのファンで。昔を思い出すような、そういうものがこみ上げました」と語っていた。それに加え、実は全セのコーチ、巨人・原監督と"あの仕草"で競演できた。「グータッチ、してもらったんですよ! うれしかったなぁ...」。すべてが格別だった。思いきり楽しむと決めた2日間。立て続けに最高の結果を出した。  1戦目は敢闘賞で賞金100万円をゲットしたが、一夜明けて使い道を聞かれると「娘のおむつとミルク代になるかなと思います」と照れ笑いした。この日は、その最愛の家族も観戦に訪れていた。1歳になったまな娘には、初めて目の前で見せるアーチになった。  マイナビ賞を獲得し、2日連続で100万円をゲット。病を乗り越え、見る者すべての想像を、いとも簡単に超えて-。神々しいまでの連発だった。

◆「3番・二塁」で先発出場した山田哲は、一回に2戦連続安打となる左翼線二塁打を放つと、二回にも左前打で複数安打を記録。兵庫出身の26歳は「ホームランを打ちたかった。全打席、狙っていたけど...」と地元で主役になり損ね、苦笑いを浮かべた。ベンチでは1歳上の原口(阪神)と談笑。「(本塁打は)めちゃめちゃ感動した。鳥肌が立った」と2戦連発に驚いていた。

◆舞台は甲子園へ。オールスターが虎の本拠地にやってきた。第1戦で原口が感動弾を放って、ガ然注目を集めることになったことしの球宴。第1回が甲子園で行われたのは有名な話だ。2リーグ分立翌年の1951年のことだった。それから68年目の夏。  「東京ドームの360度から声援を受ける原口の人気はホンマに凄かったです。これが甲子園に行くとどうなるのか」  後輩たちから、そんなメールをもらって、ならば久々に球宴をのぞきたくなった。ただ、オールスターは各社取材人数が制限があって、取材証にも「グラウンド取材可」「グラウンド取材不可」が記されている。オジャマ虫だから遠慮気味に「グラウンド不可」の取材証でウロウロしていたら...。  「先輩、私の『グラウンド取材可』と交換しましょう」  声を掛けてきたのはトラ番の姫・箭内桃子。なんて優しいんだ...。ただ、オマケのセリフがあって。  「次、甲子園で開催される時は先輩が生きてるかどうか、分からないでしょ。グラウンドに入った方がいいですよ」  グサッ! おしとやかな道産子娘が、関西にやってきて3年。いつの間にか"毒ガス"を吐きまくるナニワ女になってしまったのか。かわいいから許すけど。  「甲子園のオールスターといえば、2014年ですよ。僕は見に来て、大谷(日本ハム-エンゼルス)の162キロを目撃しました。大谷と藤浪がキャッチボールもして」  トラ番・竹村岳は"目撃談"を熱く訴えかけてきた。竹村はまだ学生だったという、大谷の剛球伝説。当時のトラ番として取材したのは現オリックス担当・西垣戸理大。  「一番驚いたのは、大谷の162キロを鳥谷さんがバットに当ててファウル。当てた! が原稿でした」  みんなにそれぞれ「甲子園のオールスター」の思い出がある。  「僕もその年、取材してました。ただ、ペーニャ(オリックス)が特大アーチを放って、デスク指令でそのホームランボールを探している間に試合が終わりました」  これは広島担当・柏村翔の記憶です。  「僕もサンスポに載せてくださいよ」と乱入してきたのはロッテ・梶原紀章広報メディア室長。元サンスポ記者で、このコーナーにやたら出演したがる。この日も筆者がネタ集めしているのを聞きつけて、向こうからやってきた。  「2005年の甲子園です。もうロッテ広報だったんですが、李承●(=火へんに華)が韓国人として初の球宴アーチ。ホームランボールを受け取りにスタンドに行ったら『金本のサインボールなら交換する』と言われて苦労しました」  なんじゃ、そりゃ?! でも、協力アリガトウ。  さて、筆者の記憶。これは1987年、清原(当時西武)が桑田(巨人)から打った本塁打です。最強PL学園の盟友が、別のチームにドラフトで指名され2年目。交流戦のない時代だから、初の真剣勝負。しかも舞台は高校時代に暴れ回った甲子園。入社2年目の若造は「これ以上のドラマはない」と鳥肌が立ったもんです。  でも、野球の神様はドラマを作り続けるらしい。原口の2夜連続アーチ。梅チャンもドカン。そして、近本のサイクル安打。この夜の出来事は、間違いなく"神が作った歴史に残るドラマ"です。

◆二回に登板した高橋光が3本塁打を浴びるなど、1回7安打6失点と大炎上。「シーズンじゃなくて本当によかった。(マウンドで)みなさん優しくて、泣きそうになりました」とタイムを取って慰めた内野陣に感謝した。群馬・前橋育英高の2年時に夏の甲子園で優勝した22歳右腕は「自分のボールが『まだまだなんだ』と感じました。しっかり練習します」と無念の球宴デビューを糧に飛躍を誓った。

◆山岡(オリックス)は、近本(阪神)に先頭打者本塁打を被弾。その後、近本は新人史上初の球宴サイクル安打を達成し、「いいお膳立てができました」と笑った。球宴での初先発は1回2失点だったが「楽しんで投げられた。なかなか機会がないことなので、いい経験ができた」。リーグ後半戦は16日の楽天戦(京セラ)に先発予定で「いいスタートが切れるように。イチからがんばりたい」と切り替えていた。

◆「1番・中堅」で先発した西川が4打数3安打と奮闘した。五回には、関係者が球場周辺のスーパーで購入した折りたたみ傘をさして守備へ。5月のソフトバンク戦でも客席から借りた傘をさすなど"持ちネタ"化しており、「タイミングがよかった」と、ヤクルトの応援歌「東京音頭」に合わせて楽しそうに傘を振った。

◆青柳(阪神)は10-3の五回から球宴初登板。西川(日本ハム)に対しての初球、普段より腕の位置を高くしたスリークオーター気味のフォームで投球するも「上からいったつもりだったんですけど、わかりづらかったですかね」と苦笑い。2回を投げて、すべてのアウトをゴロで奪い、持ち味も発揮するも「本当は三者連続三振取りたかったのですけど...」と悔しそうな表情だった。

◆ジョンソン(阪神)は11-3の八回に登板。2死から浅村(楽天)に右翼線への二塁打を打たれるも松田宣(ソフトバンク)を一邪飛に打ち取り、無失点で初の球宴を終えた。「楽しかった。言葉で表現できない雰囲気で、ファンの盛り上がりも経験したことがない」と興奮気味に振り返った。山崎(DeNA)と会話し、親交を深めたといい「いっぱい話をさせてもらいました。楽しい時間でした」と笑顔を見せた。

◆原口は前日の敢闘賞(100万円)に続いて、2試合を通してファンに夢と感動を届けた選手に贈られる「マイナビ賞」(100万円)をゲット。さらに期間中にツイッター上で最も注目を集めた「ツイッター賞」(100万円)までもつかんだ。ホームラン賞でも賞金が出ており、2日で計300万円以上の荒稼ぎだ。試合前には前日の賞金を「子供のミルクやおむつ代に」と話していたが、いくらなんでも余る。試合後に再度、使い道を尋ねられたが「いや、余んないですよ! これから大きくなるので、たくさん買ってあげたい」と語った。

◆第2戦が行われ、全セが全パに11-3で快勝。連敗を「5」で止めた。全セ・近本光司外野手(24)=阪神D1位、大阪ガス=が「1番・中堅」で先発し、史上初となる新人初回先頭打者弾&サイクル安打&1試合5安打。MVPに輝いた。  近本の父・恵照さん(58)と美晴さん(52)はスタンドで観戦。恵照さんが「全部嘘みたい。夢のようです」と話せば、美晴さんも「自分の子が同じ球場に立っていると考えただけでも信じられない」と驚いた。前日12日は恵照さんの誕生日。近本は「『おめでとう』といいました。サイクルのボールは親に渡します」と頭を下げた。

◆初球宴をメモリアルで飾った阪神のドラフト1位・近本光司外野手(24)。"神トーク"をたっぷりと、どうぞ!  --先頭打者弾から始まった  近本 「自分でも入ると思わなかったんですけど、結果的に入ってよかったです」  --最後は三塁打  「いやぁ、何としても打球をあげようと思っていたので。いいところに飛んでくれて、いい形で三塁打になったのでよかったです」  --球宴2人目のサイクル安打  「全然想像していなかったです」  --「サイクル狙え」コールは聞こえた?  「聞こえていたんですかね」  --最後、ベンチで先輩選手が迎えてくれた。距離は縮まったか  「自分から縮まったというのも...。本当によく声もかけていただいたので、初めてだったんですけど、いい先輩たちばかりでした」  --人生でサイクルの経験は  「ないんじゃないですか。あんまりホームランも打たないですしね」  --後半戦に向けて  「この経験というのは、教えてもらったこと、すごいところでできたというのは普段できない。そういうものをしっかり自分のものにしながら。またファンの方々にこれからもずっと楽しんでもらえるようにやっていきたいと思います」

◆甲子園の大歓声を背に受け、純粋に勝負を楽しんだ。全セ・菅野智之投手(29)=巨人=は2回2安打無失点。5年連続6度目の先発で球宴初勝利を飾った。  「肩の力を抜いて打者と勝負できたというのは、今年の自分に足りなかった、忘れていた部分。後半戦に向けて、いいきっかけにしたい」  2学年下で、大学日本代表でもバッテリーを組んだ梅野(阪神)が構えるミットに直球主体で投げ込み、二塁を踏ませない好投だった。  昨季は2年連続で沢村賞に輝いたエースも、今季は5月に腰痛で戦線離脱するなど、8勝4敗で防御率・3・92。前半戦は本来の状態ではなかった。今回の球宴では、ジョンソン(阪神)にスライダーの握りを聞かれるなど、ライバルたちとの交流でも心をリフレッシュ。後半戦の完全復活へにつなげる。(谷川直之)

◆まだ興奮冷め止まぬ甲子園で、全セ・梅野(阪神)が原口に続いた。薄暮の空にアーチを描く。いつものように下を向きながら走り出した。確信した。ホームベースを踏むと両手を力強く握った。  「楽しめたというこの2日間だったという感じで満足しています」  前を打つ原口が自身2打席連発。球場がざわついている中、高橋光(西武)の初球を狙った。内角高めの138キロ直球を振り抜くと、打球は左翼席ギリギリへと飛び込むソロ。球宴史上初となる阪神の選手による連発で満員の甲子園の盛り上がりは最高潮へと達した。  球宴では初の本塁打に「1本出てホッとしている。まさかホームランになるとは思っていなかった」と安堵と驚きが混じった感触を振り返った。  左手首を負傷したためマスクを被ったのは7日の広島戦(甲子園)以来。それでも他球団では菅野(巨人)や柳(中日)といった球界を代表する投手たちをリードし、フル出場。「こんないいピッチャーを打席じゃなくて(みられた)ことで、試合勘を取り戻せたと思う」と好感触だ。  「球場がそういうのを求めているだろうし、本当にこれ以上ないものをタイガースで見せられたんじゃないかなと思う」  本拠地での阪神勢の大活躍に胸を張った。この勢いで、虎の選手会長が盛り上げていく。 (菊地峻太朗)

◆「燕のゴジラ」が初の球宴で"爪痕"を残した。全セ・村上宗隆内野手(19)=ヤクルト=が五回の守備で途中出場し、六回に初安打となる左越え二塁打をマーク。さらに八回にも左前打を放った。  「出ないよりは出たほうがいいので、良かったです」  10代での複数安打は1987年の西武・清原和博(19歳11カ月)以来32年ぶり。全セでは63年の巨人・柴田勲(19歳5カ月)以来56年ぶりで、ヤクルト(前身球団を含む)では初めてだ。  前夜に初出場を果たしたが無安打に終わり、この日は応援が耳に入らないほど「集中していた」という。高橋礼(ソフトバンク)の直球を捉えた初安打の直後には、思わず笑みもこぼれた。  甲子園は九州学院高1年の夏に初出場。自らの失策もあり、初戦で敗退した。今季は5月21日の阪神戦で聖地初アーチを放ち、この日は五回の守備で右前へ抜けようかという強烈なゴロをさばき、攻守で躍動した。  試合前にはパ・リーグトップの29本塁打を放っている山川(西武)とバットを交換するなど充実した時間を過ごした。史上3人目の10代球宴弾は逃したが「また出たいです。結果を残してファンの方に選んでもらえるように頑張りたい」と、新たな誓いを立てた。(横山尚杜)

◆本塁打競争で敗れても、本番で大きな放物線を描いた。全パの「3番・左翼」で出場した吉田正(オリックス)が、球宴初本塁打。計5本塁打のセ・リーグに対し、パ・リーグでただ一人柵越えを放って意地を見せ、敢闘選手賞を受賞した。  「打球がなかなか上がらなかったですけど、しっかりといいスイングができました。点差は離れてましたけど、初ホームランを打てて良かったです」  1-8の三回1死一塁で迎えた第2打席。柳(中日)の投じた1ストライクからの2球目、135キロのカットボールを力強く振り抜くと、打球は瞬く間に右中間スタンド最前列へ。球宴出場4試合目で、待望の初本塁打だ。第1打席でも右前打を放ち、3打数2安打2打点。昨年の初出場から4試合すべてで「H」ランプを灯すなど、12球団のスター選手の中でも存在感を見せている。  試合前に行われた本塁打競争の決勝では3本を放ったが、5本の鈴木(広島)に敗戦。「ちょっとダメでしたね。悔しかったです。来年チャンスがあれば、がんばります」とリベンジを誓った。  前日12日の第1戦の山本に続き、オリックス勢が2試合連続で敢闘選手賞に。賞金100万円をゲットし「きのうの(山本)由伸に続いて獲れたので良かった。(使い道は)特にないんですけど...。このときの物だな、と思い出せるような何か物に」と笑った。  15日の楽天戦(京セラ)から始まるリーグ後半戦にも弾みをつけ、「後半戦、チャンスはあるので、巻き返していきたい」と力を込めた。夢の続きはシーズンで。そのスイングでチームの勝利を呼び込む。 (西垣戸理大)

◆雨でぬれた甲子園が、アウトが増えるごとに沸いた。大にぎわいの球宴のラストを締めたのは全セ・藤川(阪神)。最後の1球が左翼・近本のグラブに収まると、笑顔で捕手の梅野とハイタッチ。全球直球で三者凡退とした。  「(全球直球は)下が悪かったのでね。他の球種を投げるというよりもとりあえずストライク中心に投げていこうと」  今か今かと出番を待つ4万5217人の前に、満を持して登場した。11-3の九回。銀次(楽天)を右飛、甲斐(ソフトバンク)を左飛に仕留めて、2死で代打・森(西武)を打席に迎えた。球宴出場が決まった際には、対戦したい相手として名前を挙げていた一人。1球目、ワンバウンドになった直球はこの日最速の146キロを計測。2球目、真ん中高め140キロで空振りを奪うと、最後は低め142キロで左飛に詰まらせた。貫禄の完全投球で球場の空気を支配した。  小さい頃にあこがれた、球宴ならではの真剣勝負。野茂vs落合、桑田vs清原-。思い出されるのは投手対打者の本気の勝負だった。自分もそんな勝負を見せたい。そして他の選手のそんな勝負を見たいと願っていた。そんなこの日、チームメートの近本を筆頭に全セの面々が躍動。出場選手で最年長のベテランは「僕が出る前に十分そういうプレーがありましたから」と謙遜しながら目尻を下げた。  「自分がどうこうよりきょうはファンがすごいプレーを見られたと思う。タイガースファンにとってはタイガースの選手の活躍もあったし。また後半戦、頑張ります」  気持ちをすぐに切り替え、15日の中日戦(ナゴヤドーム)から始まるシーズン後半戦へ気合を入れ直した。球宴でも大きな存在感を放った右腕が、再びチームのために腕を振る。 (箭内桃子) ★甲子園でのオールスターゲーム  第1回のオールスターゲーム初戦が1951(昭和26)年7月4日に甲子園で開催(全セ○2-1全パ)。以来、今年までで17試合が開催されており、成績は全パの9勝8敗となっている。2005年は阪神から藤川、下柳、矢野、藤本、今岡、鳥谷、金本、赤星の8人が出場し、この年はリーグ優勝を果たした。前回14年は大谷(日本ハム、現エンゼルス)から鳥谷が左前打、マートンが右翼線に適時打を放つなど、虎の野手陣が奮起。藤浪はペーニャ(オリックス)に一発を許すなど2回4失点も、自己最速の156キロを計測した。

◆2度目なら、2日続けて起こるなら、それはもう奇跡じゃない。雨が降っても、心に嵐が吹いても失わなかったみなぎる力で、全セ・原口(阪神)は広い甲子園にもアーチを架けてみせた。「7番・DH」で先発出場し、前夜のカムバック球宴弾から2打席連続弾。雨の本拠地を涙でぬらし、2日にわたって日本中を鳥肌で包んだ。  「一番は野球を楽しむというか、そういう自然と笑顔が出るというね。最初に、野球を始めたころの原点に、すごく戻れたような、この2日間でしたね」  プラスワン投票でたどり着いた、ファンからのギフトだった2試合。力の限りに白球をはじき飛ばし、また笑顔を爆発させた。二回先頭で全パの2番手・高橋光(西武)との対戦し、前夜と同じようにブンブン振った。打球は左翼ポール右へと一直線。原口は白い歯をニコニコで、ゆったりと4つのベースを踏んだ。  スターたちとのハイタッチを終え、一塁側スタンドへ、愛する妻と子が座る方向へとヘルメットを外して"合図"した。東京ドームには来られなかった2人に、かっこいい父として胸を張った。  愛おしくてたまらない1歳の娘に、おみやげやオモチャは買い過ぎというくらい買ってきた。今月の横浜遠征時には"変な声で鳴くニワトリの人形"を買って帰った。驚かせて、楽しませたかった。巨大なクマのぬいぐるみも買いたかったが、大きすぎてグッとこらえた。この雨の中、ジッと座席に座っていられたかは不安だったが、何より贈りたかったホームランを、ついに届けた。  スタンドから見つめていた夫人は、周囲の大歓声に驚き、喜びながらも、力強くこう言った。「野球の神様って言いますけど...。私は本人の力だと思います」。この男を、一番そばで見つめてきた人物の言葉は、これだ。野球の神様が打たせたんじゃない。どんなときも前を向き、蓄え続けてきた原口自身の力が、この2発だ。  「スタメンで使っていただいて、本当に監督、コーチに感謝です。チームも2位で、少しゲーム差は離れていますけど。チャンスをチーム一丸でつかみ取っていけるように」  日本中を震わせた2日間。この力を、全力で虎へと捧ぐ。 (長友孝輔) ★今季の原口  1月24日に、昨年末に受けた人間ドックで大腸がんが判明し、近日中に手術を受けることを自身のツイッターで公表。3月7日に2軍練習に合流し「必ず今年中に1軍に戻って活躍したい」と約束した。5月8日のウエスタン・中日戦(鳴尾浜)の八回に代打で復帰(右飛)。6月4日、交流戦開幕のロッテ戦(ZOZOマリン)で今季初昇格した。九回1死三塁で代打登場し、左翼フェンス直撃の適時二塁打。同9日の日本ハム戦(甲子園)では3-3の九回2死二、三塁で中前に代打サヨナラ打を放った。

◆全セの4番・筒香嘉智外野手(27)=DeNA=が、二回に左中間席へ3ランを放ち、チームに2016年第1戦以来の勝利をもたらした。史上3人目となる4年連続本塁打で、1試合最多本塁打記録に29年ぶりに並ぶ全セの5本塁打を呼び込み、敢闘選手賞を獲得。試合前に行われた本塁打競争では2年連続の優勝を逃したが、"本番"ではきっちりと2020年東京五輪の「日本の4番候補」として存在感を発揮した。  雨ニモ負ケズ-。乾いた打球音を響かせ、今年も筒香が夢アーチをスタンドにほうり込んだ。  「甲子園で初めてのオールスターだし、1本は打ちたいと思っていた。何とか打ててよかったです」  阪神勢の本塁打そろい踏みで甲子園球場が大いに盛り上がる中、5-0の二回1死一、三塁で高橋光(西武)の143キロの初球を捉えた。5年連続ファン投票で選ばれたハマの大砲が、第1戦の2安打1打点に続く"御礼弾"。降りしきる雨もいとわず、声援を送り続けてくれたファンを喜ばせた。  ペナントレースでは同率2位で並ぶ阪神が目下のライバル。「阪神の選手の皆さんがすごいので、勢いに乗せてもらいました」。本拠地で躍動する虎軍団に負けじと存在感を発揮した。  試合前の本塁打競争では、1回戦で同学年の山川(西武)と対戦。2分間で決着せず、1分間の延長戦の末に日本を代表する左右のスラッガー対決を制した。  実は試合前には「甲子園は広いから簡単には打てない。狙いすぎて打撃フォームを崩さないようにしないと」とこぼしていた。ところが、いざ始まってみると力みのないスイングでバットにボールを乗せて運ぶように柵越えを連発。パワーと技術の高さを示した。  準決勝では鈴木(広島)に敗れたが1回戦から計15本は最多。"本番"でも通算536本塁打の山本浩二(広島)、日米通算507本塁打の松井秀喜(巨人)に続く史上3人目の4年連続本塁打を記録した。  日頃から野球人気の低下を憂い、野球界を思った言動を繰り返す。「オールスターにしかできない戦いがある。ファンの皆さんに喜んでいただけるプレーをお見せしたい」。まさに、有言実行の"本塁打ショー"でファンファーストを体現した。  来年は球宴記録に並ぶ5年連続のアーチに期待がかかるが「来年の話よりも、今はペナントが(15日の広島戦で)始まるので、そこに向けて集中したい」と言い切った。夏に強い大砲は、この一発を首位・巨人追撃への号砲とする。 (湯浅大)

◆甲子園は猛虎のためにある! 第2戦が行われ、全セが全パに11-3で快勝。連敗を「5」で止めた。全セ・近本光司外野手(24)=阪神D1位、大阪ガス=が「1番・中堅」で先発し、史上初となる新人初回先頭打者弾&サイクル安打&1試合5安打。MVPに輝いた。15日の中日戦(ナゴヤドーム)からは後半戦。歴史を変えて、さぁ、打倒・巨人や!  二塁をまわって、一度はためらった。でも、アクセルを踏み直した。"M1"とした七回2死一塁。近本が左中間を破った。中継プレーが乱れる。三塁手・松田宣(ソフトバンク)が捕球できなかった。セーフ! 記録は!? 三塁打!  「めちゃくちゃ楽しかったです。いいところに飛んでくれて、いい形で三塁打になってよかったです。みなさんのおかげだと思います」  今球宴、唯一の新人。「1番・中堅」として衝撃の初先発だった。山岡(オリックス)の2球目。そぼふる雨を切り裂き、146キロ直球を左中間席に放り込んだ。新人が球宴で先頭打者弾を放ったのは史上初。170センチながら今季6本塁打。球団では2016年の高山以来の新人王を目指す男に小力があることを、全国にも知らしめた。  二回は一塁線を、五回は左中間を破る二塁打を放ち、三回には右前に運んでいた。  1992年の古田敦也(ヤクルト)以来27年ぶり史上2人目のサイクル安打達成に加え、1試合5安打も最多タイで新人史上初。球団では80年の岡田彰布以来、2人目となる新人MVPに文句なしに輝き、賞金300万円の使い道について問われると「ハッハッハ! 何かパァ~と使いたいです!」と笑顔が弾けた。  近本の人生にとって、いつも"球宴"が転機だった。関学大3年春。野手に転向し、いきなり、リーグ戦でベストナインに輝くと「大学野球関西オールスター5リーグ対抗戦」に選ばれた。11打数3安打も、関西学生野球連盟を優勝に導いた。  その後の活躍を含め、前大阪ガス野球部監督の竹村誠氏(享年57)の目に留まった。その年の秋と4年春に両太腿裏の故障で苦しむも、大阪ガスへの入社が決定した。  「まさか大阪ガスにいけるとは思わなかったです。運が大事なのかな」  運も実力のうち。努力なくして、運もやってこない。前日12日も山田哲(ヤクルト)に走塁を聞いていたが、この日も試合前に筒香(DeNA)を質問攻めしていた。  「ずっと聞きたかった話を聞けたので、よかった。ボールの見逃し方とかですね」  詳細はもちろん"企業秘密"。シーズンで披露する。大学・社会人時代を過ごした西宮での球宴。一瞬たりとも、ムダにしたくはなかった。  「(この2日間は)100点じゃないですか。ファンの人たちにずっと楽しんでもらえるように、やっていきたい」  15日の中日戦からは、後半戦が始まる。首位・巨人とは9・5ゲーム離されているが、虎には強心臓の近本がいる。球宴の歴史を塗り替えた。もう一度、奇跡を呼ぶ。 (竹村岳) 1992年に球宴史上初のサイクル安打を達成し、この日のテレビ中継で解説を務めた古田敦也氏(元ヤクルト) 「すごいことだと思う。僕のことを思い出してくれてうれしい。抜かれたわけじゃなく、並ばれただけです(笑)」

◆監督推薦で初出場を果たした全セ・神里和毅外野手(25)=DeNA=がサンケイスポーツに独占手記を寄せた。所属チームではプロ2年目の今季、リードオフマンとしてブレークを遂げた沖縄出身のイケメンが、華やかな舞台ならではの交流、経験を明かし、15日に再開する後半戦への決意を示した。  初めての球宴を楽しむことができました。無安打に終わったのは残念でしたが、緊張することもなく、シーズン同様に打席に入れました。  チャモさん(ロペス)の代走で初出場し、走るかどうか迷いましたが、ある方からの"指令"が頭をよぎってスタートを切りました。球団OBの佐伯(貴弘)さんから「甲斐(ソフトバンク)のETCのバーを破って(上げて)くれ」と言われていたんです。  雨のこともあり、リードはいつもより小さかったけれど「決められたらラッキー」の思いで走りました。自分としては先に足が二塁ベースに入ったと思ったものの残念ながらアウト。盗塁成功はシーズンにとっておきます。  いろいろな人と会話もできました。梅野さん(阪神)や会沢さん(広島)には、僕と対戦するときには、どういう意識でいるのか聞いてみました。返事はここでは言えませんが「ああ、そう思っているんだ」と興味深かったです。  "球宴仕様"の道具も醍醐味(だいごみ)です。メーカーさんにシルバーの派手なスパイクやオールスターのロゴが刺しゅうされているグラブなどを用意してもらいました。いい記念になります。  僕の中で印象深い球宴といえば1997年。当時は3歳で何年後かに映像で見たのですが、西武・松井稼頭央さん(現西武2軍監督)が1試合で4盗塁を決めた試合です。相手の捕手はヤクルト・古田さん。僕も走力が武器の選手なので、1試合で4回走るすごさを改めて感じました。  球宴は子供の頃からずっとテレビの中の世界でした。プロ野球選手になって、一度は出てみたいと思っていましたが、こんなに早く機会が来るとは。推薦してくださったラミレス監督には感謝しています。  早くファン投票で選んでもらえるような選手になりたい。今は、その思いが一番です。"球宴出場選手"という肩書に恥じぬよう後半戦もたくさん打って、走って、もちろん守備でもチームに貢献したいと思います。(横浜DeNAベイスターズ外野手)