ヤクルト(2対2)阪神 =リーグ戦5回戦(2019.04.17)・明治神宮=
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阪神
0002000000002711
ヤクルト
0000000200002900
勝利投手:-
敗戦投手:-

本塁打
【阪神】大山 悠輔(2号・4回表2ラン)

  DAZN
◆阪神は4回表、4番・大山の2ランで先制に成功する。一方のヤクルトは2点を追う8回、1死満塁の好機でバレンティンの適時打が飛び出し、試合を振り出しに戻した。その後は延長戦に突入するも、両軍の救援陣が踏ん張り、試合は規定により引き分けに終わった。

◆阪神の4番大山悠輔内野手(24)が先制の2号2ランを放った。4回1死から糸井が右前打を放ち、1死一塁の場面。1ストライクからヤクルト・ブキャナンの2球目をフルスイング。黄色く染まった左翼席に突き刺した。 大山は「しっかりと自分の強いスイングをすることができた結果が、ホームランにつながったと思います。青柳さんをなんとか早い段階で援護したかったので、先制することができて良かったです」とコメントした。

◆迷いなく振り抜いた。阪神大山悠輔内野手が、バットを持ったまま一塁ベース方向に2度、3度とサイドステップ。左翼ポール際に飛んでいく打球の行方を目で追った。白球は、そのままスタンドに着弾。先制2号2ランを神宮の夜空に描いた。 「しっかりと自分の強いスイングをすることができた結果がホームランにつながったと思います」 4回だった。1死一塁でヤクルト先発ブキャナンの2球目を強振。真ん中に来た131キロチェンジアップを左翼席にたたき込んだ。5試合ぶりのベース1周。ゆったりと本塁を踏むと、がっちり糸井とエルボータッチだ。 なんとしても手に入れたい先制点を4番のバットで勝ち取った。この日は試合前の円陣を2分近くも組むなど、打線が「投手陣を援護するぞ」という雰囲気が漂っていた。「(先発の)青柳さんをなんとか早い段階で援護したかったので、先制することができてよかったです」。ベンチ前で祝福される背番号3は笑みを浮かべた。 体重移動の工夫が奏功した。大山は試合前に清水ヘッドコーチから助言を受けていた。スイング時に体重が後ろに残りすぎることもあり、1歩後ろにステップするように指示を受けた。1度下がってから、思い切って前で捉える。その教えが本番でも生きた。 ただ、大山の2ランだけでは勝ち切れなかった。試合後、三塁側ベンチからクラブハウスに向かう大山が、スタンドで声援を送るファンの前で声をしぼり出した。「勝たないと意味がないので。明日、勝てるように頑張ります」。猛虎打線の火付け役へ。もちろん重圧はある。だが...。やはり4番が打たないと、何も始まりはしない。【真柴健】

◆阪神青柳が今季最長の7回を投げて5安打無失点と好投した。序盤からテンポよくボールを投げ込み、強力ヤクルト打線を料理。3回には自身の悪送球から1死一、三塁の場面を招いたが、「ミスをしても次という野球を(昨年の)ファームで教わったので」。山田哲を低めのスライダーで三塁併殺に仕留めて最大の危機を脱出した。 「2回以降はランナーを背負う投球になってしまいましたが、梅野さんのリードと、野手の方々の守備に助けてもらい、なんとか粘ってゼロで抑えることができた」。走者を許しても大崩れすることなく、6回、7回は3者凡退で中継ぎにバトンタッチした。 ただ、好投も今季初勝利はお預けになった。2点リードの8回に中継ぎ陣が同点に追いつかれ、白星が消えた。開幕から3試合、計18イニングを投げて味方の援護点は2点と不運な面もある。それでも青柳は「僕の勝ちはまた次に取れればいいんで」と前向き。防御率は2・50で西に次いでチーム2位。この日、ガルシアが再調整のため出場選手登録を抹消されたが、青柳は週明けカードで存在感を示してきた。今季最多111球を投げたが、これについても「自分の中ではもう少しいけたかなと思うけど、打順の巡りもあるので」と頼もしかった。【桝井聡】

◆守護神不在の戦いを強いられた虎が、執念ドローだ。阪神はヤクルト5回戦(神宮)で延長12回の末に引き分けだったが、守護神ラファエル・ドリス投手(31)が体調不良のため不在だった。その中で8回に同点に追いつかれたものの、救援陣は9回以降再び0行進。リリーフ陣は19年の虎で要だけに、踏ん張った意味は決して小さくないはずだ。守護神が消えた。チームの緊急事態にブルペン陣が奮い立った。3時間53分の総力戦で今季初のドローゲーム。矢野監督は神宮の三塁側クラブハウスで「何回もピンチを作りながらも本当に投手が粘ってくれた。負けなくて助かった部分ももちろんある。本当に、投手陣が作ってくれた引き分け」と粘り腰を評価した。 8回、同点に追いつかれてからは強力なヤクルト打線の脅威にさらされ、防戦一方だった。最大の窮地は延長10回だ。4番手桑原が攻め立てられ、無死満塁の大ピンチを招く。絶体絶命だ。それでも、バレンティンを遊ゴロ併殺に仕留め、後続も断って難を逃れた。9回にも1死三塁のサヨナラ機に陥るが、広岡のスクイズ失敗、三塁走者の挟殺で命からがら踏ん張った。 一大事だった。試合中、三塁側ブルペンで明らかな異変があった。2-0でリードした終盤は必勝リレーの準備に入る。だが、ブルペンで肩を作るのは能見とジョンソンだけ。ドリスの姿がない。8回に2人が続々と登板後、ブルペンで投げ始めたのは守屋だった。守護神不在-。矢野監督は「今日は体調不良で投げられなかった。もともと使えない状況のなかで青柳もあそこまでしっかり投げてくれた」と事情を明かした。 勝ち展開の駒が1人足りない。通常なら8回先頭からジョンソンを積極投入できる局面でも温存せざるを得なかった。能見は1死を奪った後、慎重な責めが裏目に出る。2四球を与えて降板。継投したジョンソンも山田哲への初球変化球が抜けて頭部付近への死球...。1死満塁でバレンティンに同点2点打を浴び、なお得点圏に走者を許すが耐えた。 敗戦目前の徳俵まで追い込まれながら、7投手のリレーで何とか踏みとどまった。指揮官は「2点を取られた場面は俺は責めるようなことは何もない。投手は投げる姿勢を本当に今日もしっかり投げてくれた」と言い、続ける。「5回からノーヒットやったっけ。やっぱり、もう打つしかないでしょう」。停滞ムードを打破すべく、打線の奮起を求める。引き分けに持ち込んだ執念で、勢いを作りたい。【酒井俊作】

◆延長12回に6番手でマウンドに上がった阪神守屋功輝がプロ初ホールドを記録した。 先頭の広岡を、フルカウントから遊ゴロに仕留めると7番手島本にスイッチ。今季はここまで7試合に登板して自責0を継続。試合は引き分けたが、プロ5年目でうれしい初ホールドとなった。

◆ヤクルトは好機を逃し、引き分けた。 同点の9回1死三塁、カウント2-2から広岡がスクイズを失敗して空振り三振。飛び出した三塁走者村上は帰塁できずにタッチアウト。併殺で無得点に終わった。10回無死満塁でもバレンティンが遊ゴロ併殺、雄平が一ゴロに倒れるなど最後の一押しができず。 小川監督は「サヨナラのチャンスだったけど、それも野球。最後に点を取れればよかったですけど」と振り返った。

◆ヤクルトのデビッド・ブキャナン投手が復活を印象づけた。 4回に大山に先制の2ランを浴びたが、5回以降は安打を許さず。下半身のコンディション不良からの復帰2戦目で、8回4安打2失点と好投した。小川監督は「低めに、丁寧に投げてくれた」と評価した。

◆阪神リリーフ陣をリードし、なんとかドローに持ち込んだ梅野隆太郎捕手が、ホッとした表情で延長10回裏無死満塁の危機を乗り切った場面を振り返った。 4番バレンティンを遊-捕-一の併殺、雄平を一ゴロに仕留めた。「割り切っていくしかない。そういう気持ちで乗り切りました。ここ最近、先発を引っ張れていなかったのでどんな形でも粘れてよかったです」と話した。

◆阪神・大山悠輔内野手(24)が17日、ヤクルト戦(神宮)に「4番・三塁」でスタメン出場し、四回1死一塁でカウント0-1からヤクルト先発・ブキャナンのど真ん中131キロを豪快に振り抜き、左翼席へ今季2号の先制2ランをたたき込んだ。4月11日のDeNA戦(甲子園)以来、5試合ぶりの1発で先発・青柳を援護した。

◆阪神は17日、神宮でヤクルトと対戦、延長十二回、2-2で引き分けた。阪神は四回1死から糸井が右前打で出塁すると、続く大山が左翼ポール際に2号2ランを放って先取点を奪った。  青柳は7回5安打無失点と好投し、今季初勝利の権利を持ってマウンドを降りたが、リリーフが誤算。八回、2番手能見が代打・大引、青木への連続四球で1死一、二塁。代わった3番手ジョンソンが、山田哲への死球で1死満塁とし、バレンティンに左前同点2点打を浴びた。  阪神は延長十回、無死満塁のピンチを迎えたが、桑原がバレンティンを遊ゴロ併殺に打ち取り、岩崎が雄平を一ゴロに仕留めた。  抑えのドリスはベンチ入りしていたが、僅差の展開にもかかわらず登板しなかった。体調面などで何らかのアクシデントが発生していた可能性もある。

◆阪神・矢野燿大監督は17日、神宮球場で延長十二回、2-2でヤクルトと引き分けた試合後、登板しなかった守護神ドリスについて「まあちょっと体調不良というか、きょうはちょっと投げられなかったから」と明らかにした。  7回5安打無失点と好投した先発青柳に代え、八回、能見を投入。連続四球などで1死一、二塁とし、3番手ジョンソンにスイッチしたが、山田哲に死球で1死満塁とし、バレンティンに左前2点同点打を浴びた。その後は桑原、岩崎、守屋、島本と7投手をつぎ込んで無失点で切り抜けたが、今季3セーブ、防御率0・00のドリスは体調不良で登板できなかった。

◆阪神・矢野燿大監督は17日、延長十二回、ヤクルトと2-2で引き分けた試合後、7回無失点と好投した先発青柳の投球内容をたたえた。  「内容的にも、投げっぷりも、すべて含めてホント堂々と投げてくれたし。だからこそね、アイツに勝ちを何とかつけたあげたかった」  守護神のドリスが体調不良で登板できない状況で投手陣が踏ん張っただけに、大山の2ランだけに終わった打線に言及。  「本当に打線は、きょうはもう1本どこかでやっぱり打ってやらないと。2点で行っているっていうのが結果、こういう苦しい展開になっている。そういうところが、まだまだ解消できていない」  八回から登板した能見については「あそこはね、慎重になるし、まあ(同点2点打を浴びた)ジョンソンだって、もちろん責めるつもりもないし。なんとか打線の奮起が、あってくれたら。2点取られたところもね、俺が責めるようなことは何もない。五回から(八回まで)ノーヒットやったっけ? もう打つしか、ないでしょ」と繰り返し打線の奮起を求めた。

◆神様~! 俺たち阪神ファンが前世でどんなひどいことをしたっていうんですか(涙) プロ野球観戦って『娯楽』ですよね?  なのに何で今日は勝てるかとほくそ笑みかけた八回に同点とされただけでなく、九回1死三塁でサヨナラ負けの針のムシロに座らされ...そのピンチを広岡のスクイズ失敗で切り抜けたと思ったら、十回無死満塁の絶体絶命の大ピンチのさらなる針のムシロが用意されてるって? も~いや!!  ところが、そのピンチを脱して、勝てなかったけど引き分けたというのは、まだ神は虎を見捨てていない...と見るべきか?  とにかく打てなさ過ぎるー!! 延長12回で7安打。得点は四回の大山の2ランだけっていうのは、どないなっとんねん!?  ボールが小さ過ぎて見えないならハズキルーペをかけろー! そしてヤクルトに対抗すべく♪ブルブルアイアイブルーベリーアイのわかさ生活のブルーベリーアイ飲めー!! ♪グルグルグルグルグルコサミンで膝も強くしろー!!  ついでに青汁もにんにく卵黄にすっぽん皇帝に何でも摂っとけーって、俺もう壊れそーだよ!!

◆長い一日になりました。  この日のヤクルト戦は通常より30分遅い午後6時半開始でした。これは、今回の3連戦が16日の第1戦は愛媛・松山、第2、第3戦は神宮球場という変則日程だったことから、両チームの選手の疲労を考慮して時間に余裕を持たせるためと、飛行機移動にアクシデントで大幅な遅れが出た場合を想定しての時間設定だそうです。  「それでも、さすがにこの移動はしんどいです」。トラ番竹村岳も声が少し疲れていました。竹村は、15日が休みだったので2日連続の当日移動でした。  「きのうも朝、大阪から松山に飛んで、ナイターを取材して。きょうもまた朝から...」  その寝ぼけまなこが松山空港で、ぱっと開きました。大勢のファンが出発ロビーに集まっていて、阪神の選手もせっせとサインに応じていたからです。  「朝から集まる阪神ファンもすごいし、選手もすごい。しんどいとか言ってたらダメだなと思いました」  そこへ「そうだよ。ファンサービスは大事」と割り込んできたのが元トラ番でオリックス担当の西垣戸理大です。オリックスは本拠地・京セラドームでのナイター、日本ハム戦でした。午前中から何をしているのかと思ったら、シーズン中でもファンサービスをしようと考えた西村監督が、東明、山崎福両投手を連れて京セラドーム近くの大阪市立中泉尾小学校を訪問。ここに取材に出向き、自分の小学生時代を思い出すシーンに出くわしたのです。  「監督が会場に入る前に、司会の方が子どもたちに『きょうはオリックスの監督と選手が来てくれています。みんな、オリックスの監督、誰だか知っていますか』と聞いたんです」  すると子どもたちが声をそろえて「知らな~い!!」。西垣戸は「自分と一緒」とずっこけそうになりました。20年前。小4のときです。地元の三重・伊賀市で名球会主催の野球教室が行われました。  「当時『メイキュウカイ』が何か知らなくて。野球が好きな友だちに誘われて、ただついていったんです。教わりながら、このおじいちゃん、誰なんやろ? と思っていました」  今の仕事に就いて「名球会」が何であるかを知り、当時の友人に「あのとき来てたの、誰?」と聞いたらしい。すると「金田正一、高木守道、駒田徳広」。「え~!?」。驚くのが遅い。  「小学生が『知らな~い!!』というのはしようがないんです。そして、だから行く意味があるんです。僕みたいにあとになって思い出したりとか、ありますから」  「パ・リーグは、ファンサービスに熱心やからな」。今度割り込んできたのは、神宮球場のベテラン編集委員上田雅昭です。上田によると、たとえば西武ではナイターの試合後に球場にファンを招き入れて野球教室をやったりしているらしい。  ファンサービスはいろいろですが、もちろん一番は勝つこと。七回まではスイスイと進んで、朝、松山空港で見た阪神ファンの喜ぶ姿が、同じ光景が神宮球場でも見られると期待したけれど、まさかの延長突入。十二回引き分け。30分早く、いつも通り始まっていたら、ヤクルトの反撃はなかったかもしれないのに...なわけはないか。

◆――青柳は粘り強く投げた  矢野監督 「だからこそ、勝ちを何とかつけてあげたかった。本当に打線の、きょうはもう1本、どこかで打ってやらないと。2点でいっているっていうのが結果、やっぱりこういう苦しい展開になったりというところが、まだまだ解消できていないんで。本当にいくピッチャー、いくピッチャーがね、頑張ってくれたと思います」  ――能見は慎重になった?  「まあ、あそこ(八回)はね、慎重になるし。ジョンソンだって、もちろん責めるつもりもないし。ピッチャーは本当にやることをみんな、最後のシマ(島本)の投げっぷりもね。守屋も『(投げる相手は)1人!』ってなっているところで投げてくれたし。ピッチャーは本当に投げる姿勢とか姿というのは、本当にきょうも、しっかり投げてくれた。それになんとか打線の奮起があってくれたらな...というところなんで。(八回に)2点取られたところも、俺が責めるようなことは何もない」

◆山田哲が八回1死一、二塁でジョンソンの抜けたスライダーを頭部に受けた。すぐに立ち上がり「痛みはないです。大丈夫です。病院にもいかないです」と説明した。延長十回の打席にも立って中前打を放ち「(怖さは)そこまでなかった。集中していました」と精神的な影響も否定した。

◆勝ちたかった。もっと打っておけば...。執念のドロー劇の後、クラブハウスへと急ぐ大山は、グッと唇をかんでいた。  「勝たないと意味がないので、あした勝てるように頑張ります」  0-0の四回1死一塁。1ストライクから、ヤクルトの先発・ブキャナンの131キロチェンジアップを振り抜いた。打球は切れそうで切れない、左翼ポールを巻く2号2ラン。11日のDeNA戦(甲子園)以来、20打席ぶりのアーチで主導権を握った。  しかし...。2-2の九回1死二塁では、石山の初球を打ち上げて二飛。勝ち越しの絶好機にあと1本が打てなかった。矢野監督も打線全体を総評して「もう1本、どこかで打ってやらないと」。大山も「頑張ります」と言うしかなかった。  チームを勝たせてこそ主砲。次こそ心の底から笑ってみせる。そのためには、白星しかない。 四回に先制の2ランを放った大山について阪神・清水ヘッドコーチ 「(打撃は)よくなってきている。また明日期待しましょう」 大山の2ランを含めた打線について阪神・浜中打撃コーチ 「ホームランでいい形で先制できたけど、どこかでもう1点取れていれば楽だった。ピタッと止まってしまったことを課題にしていかないと」

◆午後10時以降は鳴り物による声援が禁止された神宮に、嘆声が響いた。前夜試合のあった松山からこの日移動し、3時間53分の死闘。ヤクルト・小川淳司監督(61)は延長十二回、2-2の引き分けを冷静に振り返った。  「よく追いついたと思う。お互いに決め手がなかった。サヨナラのチャンスはあったが、それを生かすことができなかった」  前日までの7試合で計63得点した強力打線が粘りを見せた。2点を追う八回、代打・大引、青木の四球、山田哲の頭部への死球などで1死満塁とすると、バレンティンが左前に2点打を放って同点。しかし、その後のサヨナラ機は逃した。  九回1死三塁では、広岡の5球目にスクイズを選択したが空振りして三振し、三走・村上が刺されて無得点。さらに、十回無死満塁の絶好機にはバレンティンが遊ゴロ併殺打、雄平が一ゴロに倒れて無得点と、あと一押しが届かなかった。  とはいえ、七回まで青柳の前に5安打無得点と敗戦ムードの中、打線が集中力を見せた。先発ブキャナンは8回4安打2失点と好投。救援陣は九回以降を4投手で無失点と流れを渡さなかった。  「(先発の)ブキャナンは低めに投げていたし、リリーフもよく粘った。青柳にチャンスをもらえなかった。そういう流れからすれば、よく追いついたと思う」と指揮官。粘りの姿勢で首位を堅守し2位との差を2ゲームに広げた。 (長崎右) 八回1死満塁で2点打を放ったヤクルト・バレンティン 「好球必打でいきました。(前打者の山田哲が頭部死球を受け)燃える気持ちでした」 九回1死三塁でスクイズを決められなかったヤクルト・広岡 「完全に僕の失敗。当てれば勝てた試合で申し訳ない」 無失点でつないだ救援陣にヤクルト・田畑投手コーチ 「素晴らしい。試合の流れがいろいろある中で、みんな粘り強く投げてくれた」

◆直球で押し込み、変化球を低めに集めて凡打の山を築いた。先発の青柳は7回無失点と好投。守護神ドリスが不在のなかで今季最長イニングを投げたが、またも今季初勝利はつかめなかった。  「チームが負けなかったので、よかったです」  ここ3試合で31得点と猛威をふるう燕打線に、冷静に立ち向かった。三回1死から太田に左前打。続く青木を低めの変化球で投ゴロに仕留めたかに思われたが、自ら二塁に悪送球して一、三塁のピンチ。打席にはトリプルスリー3度の山田哲だ。だが、ここもシュートで内角をエグり、最後は低めのスライダーを打たせて三ゴロ併殺。五回も2死一、二塁で青木を低めのツーシームで一ゴロに打ち取り、スコアボードに「0」を並べた。  今季ここまで2度の登板は、いずれも打線の援護がなかった。3日の巨人戦(東京ドーム)は5回4失点、前回10日のDeNA戦(甲子園)は6回1失点。計11回で味方の援護は「0」。ともに敗戦投手となった。だが、この日は右腕の粘りに応えて四回に大山が先制の2号2ラン。打線の奮起に呼応するように六回1死からは三者連続で空振り三振を奪い、さらにギアを上げた。  神宮はプロ初登板。敵の本拠地では昨季から公式戦4連敗中で、嫌なイメージを払拭したかった。111球の力投劇も3番手のジョンソンが打たれて同点。またも勝ち星は幻と消えた。「球数もあったけど、もうちょっといけたかな」と余力十分の変則右腕を、矢野監督は「内容的にも投げっぷりも、すべて含めてホント堂々と投げてくれた」と絶賛。「だからこそ、アイツに勝ちを何とかつけてあげたかった」と悔やんだ。  「チームは負けなかったので。僕自体の勝ちは、次に取れれば...」  青柳にとってもチームの勝利こそ優先。ローテ通りなら次回は24日のDeNA戦(横浜)で先発する見通し。黙々と腕を振り、次こそ仲間も自身も白星へ導いてみせる。 (織原祥平)

◆負けなかった...。阪神は17日、今季初の神宮で首位ヤクルトと延長十二回、2-2でドロー。試合前にラファエル・ドリス投手(31)を体調不良で欠く中、八回に追いつかれながらも矢野燿大監督(50)は今季最多7人の執念継投で、勝ち越しを許さなかった。勝ちたかったけど、この引き分けが浮上のきっかけとなることを信じてるで!  逃げ切れなかった。逃げ切るための切り札を欠く中、矢野監督はアツく冷静に、手札を次々に切った。危ないなんてものじゃない。ドリス不在の中、サヨナラ負けの危機が何度も襲ったが、執念継投でドローにした。  「結果的に言うとね、何回もピンチ作りながらも、本当にピッチャーみんなが粘ってくれた。負けなくて助かった、という部分ももちろんある」  ドリスが体調不良で試合前の練習を早退。指揮官は試合後、曇った表情で「体調不良というか、きょうは投げられなかった。もともと使えない状況」と説明した。  守護神がいれば八回先頭からジョンソンだが、誰か1人挟まなければならない。そこで左腕・能見を送り出した。ところが四球で走者をため、3番手のジョンソンも死球と適時打で同点。ここから粘った。ジョンソンが九回1死三塁のサヨナラ負けの危機で、カーブで広岡のスクイズを阻止して乗り切る(三振のち三走を挟殺)と桑原、岩崎とつぎこみ、十回無死満塁の危機も乗り越えた。  一丸でこぎつけた2-2の延長十二回。今季最多6人目の継投となる守屋を送り込み、広岡を遊ゴロで1死。すると将は7番手に島本だ。登板8戦すべてがビハインド時だった左腕を左打者の上田、青木にぶつけた。  もう勝ちはないが"負けるワケにはいかない"という執念に、島本も奮い立った。「同点だったので、投げっぷりで抑えようと思った。点を取られたらおしまい。みんな頑張ってくれていたので」。最後は145キロ直球で青木を二直。松山から空路移動して、3時間53分の死闘。若手リリーフ陣も含めた青柳-能見-ジョンソン-桑原-岩崎-守屋-島本の7人で、最後までつないだ。  ファンの前を歩いて帰る、試合後の三塁側ファウルグラウンド。目の前にあるブルペンをずっと見ていた虎党も、もちろん気になっていた。福原コーチが引き揚げる際には「福原さ~ん、ドリスどうした~!?」という声が...。今季は1失点もせずに3セーブを挙げ、つい先日、来日80セーブを挙げたばかりの守護神が不在。負けないために、全員の力を結集した。  「投手王国」という前評判だったが、開幕してみればチーム防御率はリーグワーストの4・65。直近4試合も9、10、2、9失点と、投壊しかかっていた。踏ん張れた意義は大きい。  「本当に、ピッチャー陣が作ってくれた引き分け。もちろん(大山)悠輔の2点は入ってるんだけど、まあやっぱり五回から(八回まで)ノーヒットやったっけ? もう打つしかないでしょ」  四回の2点のみに終わり、並べてしまった「0」が恨めしい。あとは打の奮起で、一気にかみ合う。そう将に確信させる、7人の奮投だった。 (長友孝輔) 八回から登板も2与四球で降板した阪神・能見 「申し訳ない。青柳がいい投球をしていたのに。後ろの投手にも迷惑をかけた。次、青柳が頑張ったときはしっかり抑えたい」 八回に2点打を許し、同点とされた阪神・ジョンソン 「自分の仕事ができたとはいえない。能見さんの走者を還してしまって申し訳ない。だけど負けなかったのはよかった」 ブルペン陣について阪神・福原投手コーチ 「(中継ぎ陣が)頑張ってくれました。次につながる。守屋と島本はいい経験をしている。(ドリスについて)大丈夫じゃないですか?」

◆守護神ドリス不在の中で救援陣が踏ん張ってのドロー。サンケイスポーツ専属評論家で元楽天監督の田尾安志氏(65)は執念リレーを評価しつつも、青柳を七回で降板させた継投には疑問を呈した。「野球は相手が嫌がることをするべき」がその理由だ。  もったいない、というのが本音だ。好投・青柳を七回投げ切ったところで交代させた。7回という投球回、111球という球数。矢野監督が交代に踏み切ったのは、この2つの条件だろう。最近の野球のセオリーでは、それが正解なのかもしれない。  ただ、これは結果論ではなく、この日の青柳なら続投させてほしかった。そう感じるのは六、七回の投球。尻上がりに調子を上げてきて、絶好調のヤクルト打線が、あのムービングファストボールに手も足も出なくなっていた。六回から七回にかけてバレンティン、雄平、西浦の三者連続三振は、球威があるから真ん中に投げても空振りが奪える状態。まさしく「怖いものなし」の投球だった。ヤクルト打線は完全に嫌がっていた。相手の嫌がることを徹底的にするのが、勝利への近道だ。  しかも、勢いに乗っているから、疲れは全く感じられなかった。絶対的とは言い切れない今の救援陣と、青柳があと30球投げることを比較したら、青柳を選ぶべきだったのではないか。  もう1つ、付け加えたいのは勝負事の駆け引き。これはヤクルト・小川監督と私が話して一致したのだが、勝っているチームが、負けているチームより先に先発を交代させる必要がない、という考え方だ。これも勝負事の鉄則。この日もブキャナンが続投している中で、先に青柳を交代させてしまった。改めてもったいなさを感じる。  ただ、青柳の投球は大きな成果。次の登板が楽しみだ。

◆ヤクルト打線が、さりげなく他チームを"牽制(けんせい)"する、嫌らしい攻撃を見せた。2-2の九回、1死三塁のサヨナラ機。9番に入っていた広岡に、フルカウントから命じた、3バントスクイズだ。  結果は、ジョンソンのカーブが外角低めに外れ、広岡は空振り。三走・村上が挟殺され、併殺となった。しかし、作戦としては間違っていない。  通常なら1、2番までかけて、じっくり攻めるところ。あの場面では、1番に投手の石山が入っていたため、ベンチに残っている代打要員との兼ね合いなどを考慮して、スクイズに打って出たわけだ。  しかも、決してバントが上手とはいえない広岡にスクイズ。ただ打って勝つ、というだけではない。こうしたオプションも持っているということを、他チームに植え付ける十分な効果があったと思う。  好調の青柳を打ちあぐねながら、交代後にきっちり追いついた。そして、他チームを牽制。価値ある引き分けといってよい。 (サンケイスポーツ専属評論家)

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
ヤクルト
1151 0.688
(-)
-
(-)
12696
(+2)
64
(+2)
20
(-)
5
(-)
0.252
(↓0.002)
3.450
(↑0.15)
2
(-)
巨人
970 0.563
(↓0.037)
2
(↓0.5)
12777
(+4)
67
(+5)
25
(+1)
5
(-)
0.276
(↓0.005)
3.860
(↓0.08)
2
(2↑)
中日
970 0.563
(↑0.03)
2
(↑0.5)
12772
(+3)
52
(+1)
16
(-)
13
(-)
0.280
(↓0.001)
3.210
(↑0.15)
4
(1↓)
DeNA
980 0.529
(↓0.034)
2.5
(↓0.5)
12672
(+1)
65
(+3)
19
(-)
4
(-)
0.247
(↓0.002)
3.460
(-)
5
(-)
阪神
6101 0.375
(-)
5
(-)
12658
(+2)
87
(+2)
10
(+1)
6
(+1)
0.227
(↓0.004)
4.650
(↑0.26)
6
(-)
広島
5120 0.294
(↑0.044)
6.5
(↑0.5)
12652
(+5)
92
(+4)
15
(+1)
5
(-)
0.210
(↑0.003)
4.350
(↑0.02)