広島(2対2)ソフトバンク =日本シリーズ1回戦(2018.10.27)・マツダスタジアム=
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ソフトバンク
0000200000002610
広島
2000000000002811
勝利投手:-
敗戦投手:-

本塁打
【広島】菊池 涼介(1号・1回裏ソロ)

  DAZN
◆広島は初回、菊池のソロと松山の適時打で2点を先制する。一方のソフトバンクは5回表、代打・デスパイネの適時打に相手失策が絡み、試合を振り出しに戻した。その後は両軍の救援陣が無失点に抑え、日本シリーズ第1戦は規定により延長12回引き分けに終わった。

◆広島が1回に2点を先制した。まず1死から菊池涼介内野手(28)が左中間へソロアーチ。 「打ったのはストレート。3-1のバッティングカウントだったので積極的にいきました。必死に打ちにいった結果、うまくとらえることが出来ました」と振り返った。 さらに四球と安打で一、二塁から松山の右前打で2点目を追加した。

◆ロックバンド「くるり」のボーカル岸田繁(42)が君が代独唱を務めた。大の広島ファンとして知られる岸田は、黒のスーツにネクタイを締めて、やや緊張したような面持ちで歌い上げた。 「緊張もしたけど、何よりこのシリーズを楽しみにして来ました。CSでの広島の勝ち方が、最近の強いカープらしくなっていた。力の入れ方、抜け方というか。個人的には田中広輔選手が(レギュラーシーズン終盤に)1番に戻ってきたのがうれしい。新しい選手も台頭している。いいシリーズになってほしいです」と高い期待を込めた。 始球式はフェンシング日本代表の宮脇花綸(21=慶大)が務めた。

◆SMBC日本シリーズ2018は27日、マツダスタジアムで第1戦が行われ、34年ぶり4度目の日本一を目指す広島と2連覇のかかるソフトバンクは延長12回の末、2-2の引き分けとなった。シリーズの引き分けは10年第6戦中日-ロッテ戦以来8年ぶり8度目。 同シリーズ第1戦の引き分けは86年の西武-広島戦以来、32年ぶり3度目となり、平成では初。 広島が先手を取った。1回1死、菊池が左中間席に先制ソロ本塁打を放った。さらに1死一、二塁で松山が適時右前打で2点目を加えた。150キロ台の速球を投げ込むソフトバンク千賀の立ち上がりを攻め立てた。 ソフトバンクが5回に反撃。先頭の中村がチーム初安打で出塁するなど、2死二、三塁で千賀のところで代打でデスパイネを起用。デスパイネの二遊間のゴロに菊池が追いつき一塁へ送球するも、一塁松山の後逸で2者生還して追いついた。(記録は安打と松山の失策) その後は、両チーム継投策で決着がつかず、引き分けとなった。 日本シリーズは全試合がナイターで行われ、どちらかが4勝した時点で終了する。第3戦からヤフオクドームに移り、第6戦があれば再びマツダスタジアムに戻る。また第7戦までは延長12回で打ち切り。第8戦以降は延長回の制限なし。引き分けがあり、第7戦で優勝が決定しない場合は、第7戦を行った球場で翌日に第8戦を行う。第9戦が必要な場合は1日移動日を設け、もう一方の球場で行う。

◆平成最後の日本シリーズが開幕。今年は初顔合わせの広島とソフトバンクになった。広島は34年ぶり4度目、ソフトバンクは2年連続9度目の日本一を目指す。先勝すれば(△○も含む)V確率は63%。

◆ソフトバンク内川聖一内野手が負傷交代した。 11回2死一、三塁の打席で広島ヘルウェグの失投が左足に当たり死球。顔をしかめて一塁に進めず、代走高田を送られた。 「太ももにもろに入りましたね。痛いです...。(今日28日は)出られれば出たい」と苦しそうに話したが、足を引きずりながらも自力で歩いて帰りのバスに乗り込んだ。 5回には無死一塁でチャンスを広げる中前打を放ち同点に貢献。短期決戦の鬼らしい打撃を見せていた。28日の出場は当日の状態を見て判断される。

◆ソフトバンク柳田悠岐外野手が、地元広島での日本シリーズ初戦に臨んだ。 4番で出場も広島投手陣に抑えられ、3打数無安打。2四死球だった。「相手にいいところに投げられましたね。クイックを使ったり、うまいことタイミングを変えたりもあった」と相手をたたえた。 8回2死一塁でフランスアと対戦。高め直球を空振り三振し、悔しそうにニヤリと笑った。「あそこはホームランを狙っていた。当たらんかったっすね。最後が一番速かった」。力勝負に充実感をにじませた。 試合を終え球場を出たのは午後11時半ごろだった。「疲れました。ゆっくり寝ます」と言いながらも表情は明るかった。

◆ソフトバンク工藤公康監督が、野手を全員使い切り、7人継投で12回引き分けに持ち込んだ。 工藤監督は「この引き分けは大きい。明日に必ずつながる引き分けだと思う。よく追いつき、よく投げてくれた」と、粘りに粘ったナインをほめた。 「あそこは勝負だと思ってデスパイネを使った。よく打って、よく走ってくれた」。2点を追う5回2死二、三塁。先発千賀の打順で、この日スタメンを外れていたデスパイネを迷いなく代打で送った。二塁ベース右へのゴロで懸命に走り内野安打。一塁手松山が送球をトンネルし適時打と相手失策で2点入り同点に追いついた。 工藤監督自慢の第2先発コンビ武田、石川が5回から2イニングずつ無失点。9回は森、10、11回は加治屋、12回はルーキーの高橋礼、モイネロで広島打線を抑え込んだ。工藤監督は「1点取られたら終わり。そこを分かって大きな舞台で持っているものを出せるというのは、なかなかできることではない」と救援陣をたたえた。

◆延長12回の末にドローに終わった。広島緒方孝市監督は先発大瀬良を含む8人の投手を繰り出した。以下は試合後のコメント。 -引き分けという結果について 緒方監督 投手陣が頑張ってくれた。(大瀬良)大地もプレッシャーがかかる中、しっかりいい投球をしてくれた。 -5回の失点には失策が絡んだ 緒方監督 (菊池が)難しい打球になったけど、よく追いついて投げてくれた。仕方ない失点。 -1回に2点を先制 緒方監督 最初はこちらのペースで試合ができた。そのあともう1点というところ。 -救援陣が頑張った 緒方監督 また明日のメンバーを考えながらやっていきたい。

◆7月にソフトバンクから移籍した広島曽根海成内野手(23)が、日本シリーズ初出場を果たした。 ソフトバンク時代は昨年2試合に出場しただけだったが、広島移籍後はユーティリティー選手として出場機会を増やしていた。初めての日本シリーズが、つい3カ月前まで所属していた古巣。特別な感情を持って晴れ舞台に臨んだ。 出番は2-2の5回。無死一塁で代打をコールされた。役割は犠打。「足が震えた。吐きそうでした」。武田の初球を投前にバントし、成功させた。 強めの打球だったため「危なかった。転がして、危ないと思ったので投手に『ファースト、ファースト!』と叫びました」とちゃめっ気たっぷりに話した。

◆第1戦の27日に31歳の誕生日を迎えた広島ジェイ・ジャクソン投手が"日本シリーズ7連投"だ。 11回に登板し、安打と犠打で1死一、二塁のピンチで中村晃を中飛に打ち取って降板した。ヘルウェグが後続を断ち無失点。ジャクソンは16年の同シリーズで6戦連続登板しており、今回で"7連投"。 セットアッパーだった16年と違い、現在は役割が変わっているが「もちろん、今回も任されれば頑張りたい」と"8連投"以上にも意欲を見せていた。

◆広島は、昨年の日本一軍団と互角に渡り合った。ブルペン7人を投入。残っていたのはロング救援要員の中村祐だけだった。まさに総力リレー。試合後の緒方監督は勝ちきれなかったことより、真っ先に投手の粘りを称賛した。 「投手陣が頑張ってくれたね。(大瀬良)大地もプレッシャーがかかる中、しっかりいい投球をしてくれた」。昨年までの日本シリーズ延長15回制が、今年から12回制に変更された。可能性の高まった引き分けという結果が、さっそく表れた。 大瀬良が5回2失点と役割を果たし、ベンチは6回から継投に入った。中継ぎに回した岡田が6回を踏ん張り、セットアッパーのフランスアは8回から2イニングを抑えた。延長11回はジャクソン、ヘルウェグの助っ人2人でピンチをしのいだ。12回はシーズン防御率13点台の中田が2四球を許しながらもしのいだ。 打線は1回に菊池のソロ本塁打と松山の適時打で好投手の千賀から2点を先制。指揮官は「最初はこちらのペースで試合ができた。そのあともう1点というところ。自分の中で考えながら、明日のゲームに生かせたら」と話した。ソフトバンクのリリーフ6人から得点を奪えなかったが、4番の鈴木は「ほとんどの投手を見られた。それは収穫」と前を向いた。 今季限りで現役引退する新井も12回1死一塁から代打で登場。大歓声の中でボテボテの投ゴロに終わったが、進塁打という最低限の仕事はこなした。「緊迫した初戦だった。その中でみんなしっかり動けていた。(引き分けを)前向きにとらえて、明日に向けて準備したい」。鈴木も「4番が打たないと。僕が打てば結果はついてくる」と意気込んだ。初顔合わせの今シリーズ。早くも歴史的な熱戦の予感が漂ってきた。【大池和幸】

◆34年ぶりの日本一を目指す広島か、2年連続のソフトバンクか。平成最後の日本シリーズは、69年の歴史の中で、初顔合わせ同士の対戦になった。クライマックスシリーズ(CS)に続き、両チームの話題などを「日本S 広島の陣」と題して、探ります。 25日に行われたプロ野球ドラフト会議では、史上最多となる11球団の1位指名が高校生野手に集中した。能力の高い高校生を育てて勝つことが球界のトレンドになる中、日本最高峰の戦いとなる日本シリーズ初戦の高卒スタメン野手は、ソフトバンク6人(上林、明石、中村晃、内川、西田、甲斐)、広島4人(丸、鈴木、会沢、安部)だった。 広島が1回に先制した直後、千葉経大付出身の3番丸が四球を選び、二松学舎大付(東東京)出身の4番鈴木が右前打でつないで2点目を呼び込んだ。ともに高卒のたたき上げ。近年の「育てて勝つ」トレンドの代名詞のような存在だ。 2人とも高校時代は投手だったが、今季39本塁打、97打点の丸は日本ハム斎藤をまねた軸足を曲げる投球フォームが話題のエースだった。斎藤の早大入学直後で時代は"佑ちゃんフィーバー"真っただ中。スカウト歴42年の広島苑田スカウト統括部長は「肩が強くて足も速い。何よりタイミングの取り方がうまかった。打者で見に来たと言ったら驚いた顔されました」と懐かしむ。07年高校生ドラフト3巡目で指名。今は始動時にグリップの位置を下げる「ヒッチ」の動きで間合いをはかり、同スカウトは「イチローも青木も、いいバッターはタイミング」と、能力の高い選手を厳しい練習で鍛え上げてきた。 ソフトバンクも丸と同じ07年高校生ドラフト3巡目の中村晃がチームの中軸に育つ。ともに高卒野手を重視する中、日本シリーズ"前哨戦"となった4球団競合の報徳学園・小園のクジ引きは広島が勝利した。00年以降、両チームの"直接対決"は16年に5球団競合したソフトバンク田中正以来で、対戦成績は1勝1敗。運は五分の戦いは、試合も延長12回引き分けでスタートした。【前田祐輔】

◆1点以上に大きな意味を持つ本塁打だった。初回、広島菊池が千賀の直球を強振。ボール気味の高めを思い切りたたき、左翼席に運んだ。「3-1の打撃カウントだったので、積極的にいった。必死に打ちにいった結果、うまくとらえることができました」と先制ソロを振り返った。 球界屈指のフォークを操る右腕に対し、チーム内で「追い込まれたら終わり」と共有。ミーティングでも早いカウントからの仕掛けと、直球狙いの指示があった。相手バッテリーにその後の配球を迷わせる効果もあったはず。CSファイナル第2戦で決勝3ランを放ち、好守も合わせて同CSのMVPに。勝負どころでの仕事ぶりが光る。 二塁守備では5回2死二、三塁で二遊間への打球に素早く回り込み一塁に送球。松山がそらし2点を失ったが、玉木内野守備走塁コーチは「ヒットゾーン。キクしか捕れない」。ぎりぎりのプレーだったと振り返った。

◆ソフトバンク甲斐が、自慢の強肩で広島の「足」を封じた。0-0の9回裏2死一塁。代打メヒアが四球で出塁し代走上本が告げられた。二盗を許せば一気にサヨナラのピンチとなる場面。田中の4球目にスタートを切った上本に対し、素早いフットワークからの矢のような「ストライク」を送球して刺してみせた。「あのプレーは大きかったね」。盗塁阻止率リーグNO・1のプライドがある。まさに自画自賛のプレーを満足げに振り返った。 試合前「広島の予習はバッチリですよ」と胸を張っていた。打線はもちろん、相手の足も頭に入っていたがしっかり実戦に生かした。甲斐に触発されたのか、延長11回には甲斐に代わった高谷もワンバウンドの難しい投球をうまくさばいて野間の二盗を封じた。今シリーズ、広島の「足技」を封じる意味でも甲斐、高谷の盗塁阻止は価値あるプレーだった。

◆広島とソフトバンクによる日本シリーズ第1戦は、延長12回4時間38分の激闘の末、2-2の引き分けに終わった。ソフトバンク工藤公康監督(55)は先発千賀の初回2失点を打線が5回に挽回すると、5回から武田、石川、森、加治屋、高橋礼、モイネロの6投手をつぎ込んだ。広島緒方孝市監督(49)も先発大瀬良から、岡田、一岡、フランスア、中崎、ジャクソン、ヘルウェグ、中田とつないで、しのぎきった。日本シリーズの初戦引き分けは、工藤監督が西武時代にMVPに輝いた86年の西武-広島戦以来32年ぶり。2年連続日本一を目指すソフトバンクの吉兆となるか。 ソフトバンク工藤監督が、短期決戦用の継投で、自身がMVPに輝いた86年日本シリーズ以来の初戦引き分けに持ち込んだ。吉兆とばかりに「この引き分けは大きい。明日に必ずつながる引き分け」と喜んだ。 初回に2失点も2回から立ち直った千賀をスパッとあきらめ、5回2死二、三塁で代打デスパイネを送った。起用が当たって同点に追いついた5回からは、武田を投入。2イニング目の6回に1死一、三塁のピンチを迎えたが会沢を一飛、安部にはフルカウントから高めにフォークを投げ、空振り三振。武田は「早く行くことを予想していた。最後は気持ちだと思っていた」と感情を表に出した。 7、8回は石川が2回無失点。今季チームトップタイ13勝、うち6勝を中継ぎで挙げた右腕もきっちりと仕事をした。石川は「マウンドがイメージより硬く、傾斜があったのでばらついたが、セットで投げて修正できた」と、慣れないマウンドにもすぐに対応した。 工藤監督は「第2先発の2人がよく投げてくれた」とねぎらった。CSでは先発が4枚しかそろわない中でも、武田、石川を先発に戻さず中継ぎを厚くしたことで、3位日本ハム、1位西武を抑え込んで勝ち上がった。下克上の道を歩む中で完成されたパターンだった。 同監督は「日本シリーズは移動日がある」と話す。連戦で決着をつけるCSと違い移動日が2度、計2日ある。その2日が、2人のロングリリーフという新たな適性を後押しする。「連投もありえます」と話すように、武田、石川が今日以降連投できるのは心強い。 第2先発コンビが4イニング投げたことで、9回は森、10回と11回は本来8回を任される加治屋が投げた。12回は高橋礼とモイネロで締めた。6人のリリーフ陣が「0」を8個並べた。広島のブルペンで残ったのは中村祐のみ。ソフトバンクはスアレス、嘉弥真を温存できた。敵地で引き分けた意義は大きい。【石橋隆雄】

◆ソフトバンク工藤監督の攻めの采配もズバリと当たった。「あそこは勝負だと思ってデスパイネを使った」。2点を追う5回2死二、三塁。切り札のデスパイネを代打起用し、同点に追いついた。指名打者が使えないセ本拠地のためスタメンを外れていた。先発千賀に代えて、迷いなく送った。二遊間へゴロを放ったデスパイネは全力疾走。二塁手菊池の送球を一塁松山が後逸(記録は1ヒット1エラー)。2点が入った。キューバの大砲は「いつものようにしっかり準備して、集中して打席に立ちました。大事な場面で2点入って良かった」と分厚く膨らんだ胸を張った。 CSでは上林と並びチームトップタイの10打点を挙げていたデスパイネ。だが、村松外野守備走塁コーチの「風が吹くと(マツダスタジアムの)外野の守りは難しい」という意見を採用。試合前練習が始まる前にデスパイネを監督室に呼び、本人に直接話した。 ソフトバンク打線は広島先発大瀬良の立ち上がりを狙ったが、4回まではノーヒットと完璧に抑え込まれていた。嫌な流れになってしまったが、積極策で引き戻した。7回には2死走者なしでも、代打松田宣を送るなど、積極策を貫いた。 西武とのCSファイナルステージでは4勝したすべてで先制点を挙げた。5試合で63安打44得点と猛打で山賊打線に打ち勝ったが、日本シリーズ初戦は広島投手陣の前になかなか追加点を挙げられなかった。内川が「こっちが大チャンスの時でも、(ホークスファンの)声援がかき消されることによって、そんなにチャンスではないような気になったりする。球場の雰囲気に惑わされないように」と話していたように、厳しい戦い。試合は12回で引き分けたが、敵地で価値あるドローとなった。【石橋隆雄】

◆「SMBC日本シリーズ」が27日に開幕し、ソフトバンクが延長12回4時間38分の激闘の末、2-2の引き分けに持ち込んだ。日本シリーズの初戦引き分けは、工藤監督が西武時代にMVPに輝いた86年の西武-広島戦以来球界32年ぶり。工藤ホークス、2年連続日本一へ吉兆だ。 ◆工藤監督の86年日本シリーズ 公式戦で11勝を挙げた西武工藤は、広島との日本シリーズでも躍動。第2戦で先発し黒星も、7回2失点と好投を見せた。3敗1分けと後がない第5戦では延長10回からマウンドに立ち、12回裏に津田からサヨナラ打。これで流れが変わった。第6戦も救援に立ちセーブを挙げる。史上初めて行われた第8戦では最後の2イニングをノーヒットに抑え、胴上げ投手に。4試合に登板し15イニング2失点、17奪三振で防御率1・20の好成績でシリーズMVPに輝いた。 ▼第1戦は延長12回、2-2の引き分け。日本シリーズの引き分けは中日とロッテが対戦した10年第6戦以来、8年ぶり8度目。いきなり第1戦が引き分けは75年阪急-広島戦、86年広島-西武戦に次いで3度目となり、すべて広島が絡んでいる。第1戦に引き分けた広島は75年△●●△●●、86年△○○○●●●●と、過去2度とも日本一を逃したが、今年はどうか。 ◆延長12回 日本シリーズの第7戦までの延長規定は94年から昨年まで、延長15回で打ち切りだったが、今年1月のセ、パ理事会および実行委員会で12回打ち切りに変更することが決まった。変更理由について日本野球機構・井原事務局長は「公式戦に準じるため」と説明。第8戦以降はこれまで通り無制限。

◆「SMBC日本シリーズ」が27日に開幕し、ソフトバンクが延長12回4時間38分の激闘の末、2-2の引き分けに持ち込んだ。先発千賀の初回2失点を打線が5回に挽回。5回からは武田、石川、森、加治屋、高橋礼、モイネロの6投手が0のバトンをつないだ。日本シリーズの初戦引き分けは、工藤監督が西武時代にMVPに輝いた86年の西武-広島戦以来球界32年ぶり。工藤ホークス、2年連続日本一へ吉兆だ。 ソフトバンク工藤公康監督(55)の、早めの継投が決まり、12回引き分けに持ち込んだ。「この引き分けは大きい。明日に必ずつながる引き分け」と喜んだ。 初回に2失点も2回から立ち直った千賀をスパッとあきらめ代打デスパイネを送った。追いついた5回からは武田を投入。2イニング目の6回に1死一、三塁のピンチを迎えたが会沢を一飛、安部にはフルカウントから高めにフォークを投げ、空振り三振。武田は「ヨッシャー!」とほえ、グラブをたたいた。「早く行くことを予想していた。最後は気持ちだと思っていた」と感情を表に出した。 7、8回は石川が2イニング無失点。今季チームトップタイ13勝、そのうち6勝を中継ぎで挙げた右腕もきっちり仕事をした。石川は「マウンドがイメージより硬く、傾斜があったのでばらついたが、セットで投げて修正できた」と、慣れない敵地にもすぐ対応した。工藤監督は「第2先発の2人がよく投げてくれた。(第2戦以降の)連投もありえます」と、全幅の信頼を置く。CSでは先発が4枚しかそろわない中でも、武田、石川を先発に戻さず。中継ぎを厚くしたことで、3位日本ハム、1位西武を抑え込んで勝ち上がってきた。下克上の道を歩む中で完成されたパターンとなった。日本シリーズは移動日が2日あることもプラスだ。 第2先発コンビが4イニング投げたことで、9回は森、10回と11回は本来8回を任される加治屋が投げた。12回は高橋礼とモイネロで締めた。延長15回から12回へ今季からルールが変わり「シーズンと同じ。使い切れるのは大きい」と話していた。工藤監督にとっては現役時代の86年に西武で広島と延長14回時間切れ引き分け以来の引き分けとなる。6人のリリーフ陣が「0」を8個並べ、敵地での大きな引き分けをつかんだ。【石橋隆雄】

◆平成最後の日本シリーズは第1戦からいきなりの「総力戦」となった。西武とのCSファイナルSを5試合44得点と打力で制した工藤ホークスにとって、まったく様相の違った戦いとなった。先発千賀が初回に2点を失い、追う展開となった。指名打者(DH)制のないセ・リーグ球場でのこの2試合、代打の出しどころもゲームを左右する大きなポイント。5回2死二、三塁で千賀の打席に代打デスパイネを送り、敵失も誘って2得点。追いついた。 広島にとっては痛恨事だったろう。緊迫戦の中で「ミス」は文字通り命取り、である。シリーズ開幕を迎えるにあたって、ホークスのキャプテン内川は言った。「(マツダスタジアムの)雰囲気に惑わされないようにしないといけない。自分たちのペースでやれるか。声援の大きさで試合の流れが大きく変わることもあるので」。心配事はホームチームである広島に出た。360度、真っ赤に染まるスタンドの威圧感はイニングを重ねるごとに薄らいだようにも感じた。海の向こうではワールドシリーズ第3戦でドジャースが延長18回の末、サヨナラ勝利。7時間を超える気の遠くなるようなロングゲームを制して、ようやく本拠地で白星を手にした。 延長12回。グラシアルが中飛に倒れ、ホークスの勝利はなくなった。敵のミスから同点に追いつきながら試合をひっくり返すまでいかなかった。それにしても強烈な内角攻めに苦しんだ4番柳田の打撃が気になる。今後を左右する執拗な広島の柳田封じだった。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

◆「SMBC日本シリーズ」はいきなりの死闘だ。2年ぶりに進出した広島と2年連続日本一を目指すソフトバンクの頂上決戦。1回、広島が菊池のソロなどで2点を先制すると、ソフトバンクが5回、デスパイネの二塁内野安打と失策で追いつく展開。両軍投手陣のつばぜり合いが最後まで続いた。その熱い戦いを広島OB、日米203勝のレジェンド黒田博樹氏(43)が独自の視線で見る「特別観戦記」。初戦から延長戦に突入した試合。黒田氏は「わずかなアドバンテージを得たのは広島」とみた。  ◇  ◇  ◇ まさか、こんな展開になるとは...。昼間、ドジャースとレッドソックスのワールドシリーズをテレビで見ていた。4年間プレーしたチームでもあるし、延長に入ったけれど見始めると最後まで見てしまった。夜にマツダスタジアムに来たのだが、こちらは延長12回引き分け。昼夜で古巣の長い試合を見ることになった。 両軍、ブルペン投手を大量につぎ込み、どうしても勝ちたかった試合だった。それで白星を取れなかったのはともに痛いのだが違った見方もできる。中継ぎ、抑えの投手が初戦からそろって登板することができた、という点だ。 なにしろ日本シリーズの大舞台。どんな投手でも投げるまでは緊張する。それが1戦目から実現し、みんなが好投した。両軍の攻撃陣に決め手がなかったといえばそれまでだが本当によく投げていたと思う。1戦目を見て「このシリーズは簡単には終わらないな」という印象を持った。 広島にとって先発大瀬良の好投もプラスだろう。実は少し不安視していた。試合前の投球練習中、カットボール、スライダーが指に引っ掛かっていたからだ。 そう思っていたら最初の打者・上林に投げた1球目は内角へワンバウンドするボールになった。しかし上林はどういう考えだったのかは分からないが、これに手を出し、空振りした。 どんな投手でも立ち上がりは緊張する。さらにビッグゲームになればなるほど投手は最初のストライク、最初のアウトが少しでも早く欲しいもの。大瀬良にとって、これはかなりラッキーだった。結果もそうなった。 カウント2ボール1ストライクになった後の4球目。これも高めの球を上林はファウルした。見極めていれば先頭打者をストレートの四球で出塁させていたところだ。だが結局、三振に切り、大瀬良は最初のアウトを取れた。 まず欲しい1死を幸運な形で取れたことにより乗っていけた。4回2死まで1人の走者も出さなかったこともあり、思い切りのいいフォークを織り交ぜて、いいイメージで投げることができた。投げている姿が頼もしく見えた。大瀬良は中4日で第5戦に投げる可能性もある。5回で降板したが日本シリーズ開幕投手として最低限の仕事は果たしたといえる。 この引き分けがどちらに有利に働くかは何ともいえない。だが、28日以降にもつれて3勝3敗になった場合、ルール上、第8戦はマツダスタジアムで戦う。それを考えれば地元の試合が増えた広島がほんの少しだけアドバンテージを得たような気はする。(元広島投手) ◆第1戦は延長12回、2-2の引き分け。日本シリーズの引き分けは中日とロッテが対戦した10年第6戦以来、8年ぶり8度目。いきなり第1戦が引き分けは75年阪急-広島戦、86年広島-西武戦に次いで3度目となり、すべて広島が絡んでいる。第1戦に引き分けた広島は75年△●●△●●、86年△○○○●●●●と、過去2度とも日本一を逃したが、今年はどうか。

◆ソフトバンクの内川が0-2の五回無死一塁で中前打を放ち、好機を広げた。2死後に代打デスパイネの適時内野安打に失策が絡んでチームは2点を奪った。  指名打者制のないセ・リーグ球場での試合で、工藤監督はデスパイネを先発から外した。短期決戦で勝負強さを発揮する内川が早速存在感を見せたが、延長十一回に左太ももに投球を受け、そのまま交代。試合後は足を引きずりながら引き揚げ「痛いですよ。(第2戦に)出られるように頑張ります」と話した。 武田(2番手で2回を無失点) 「いい感じで投げられている。シリーズは救援陣全体で抑えていかないといけない」 石川(2回を無失点) 「いつも通りの投球ができた」 森(九回に登板して無失点) 「0点で抑えられたし、チームも負けなかったので良かった」

◆ソフトバンクのデスパイネが適時内野安打を放った。0-2の五回2死二、三塁で千賀の代打で登場。二遊間へのゴロを菊池に捕球されたが、全力で駆け抜けてヒットにする。一塁手の松山が捕り損ね、二塁走者が同点のホームを踏んだ。  セ・リーグの本拠地球場では指名打者を使えず、外野守備にやや不安のあるデスパイネは先発しなかった。「ここ一番で」と考えていた工藤監督の期待に渋い仕事で応えた。

◆広島の松山は攻守で明暗が分かれた。  一回の打席では千賀の変化球を捉えて右前に追加点打。「食らい付いた。前のポイントでうまく対応することができた」と自賛する一打だった。  しかし2-0の五回の一塁守備で手痛い失策を犯した。2死二、三塁からデスパイネの打球(記録は内野安打)を捕った二塁手の菊池の送球を後逸。二塁走者も生還して追い付かれた。

◆セ・リーグ3連覇し34年ぶり4度目の日本一を目指す広島とパ・リーグ2位からクライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜いた昨年日本一のソフトバンクは延長十二回を戦い両チーム譲らず引き分けに終わった。  広島は一回、菊池が左翼スタンドへソロ本塁打を放ち先制。さらに一死一、二塁から松山が右前適時打を放ち2-0。  ソフトバンクは五回、二死二、三塁から千賀に代わって打席に立ったデスパイネが二塁への適時内野安打を放つと、菊池からの送球を一塁手・松山が捕球ミスする間に2点を奪い同点に追いついた。ソフトバンク先発の千賀は4回3安打2失点。  広島は五回、無死一塁から大瀬良に代打を送り曽根が投犠打を決めるなど、二死一、三塁としたが、丸が二飛に倒れた。先発の大瀬良は、5回3安打2失点だった。  その後、両チームともに点を奪うことができず、試合は延長戦に突入。  ソフトバンクは十一回、二死満塁のチャンスを作ったが、代打・福田が左飛。さらに十二回、二死一、二塁のチャンスでグラシアルが中飛に倒れた。  広島は十二回、二死二塁から田中が空振りの三振に倒れた。

◆日本シリーズの初戦が引き分けになったのは史上3度目。いずれも広島が出場したシリーズだが、1975年は阪急、86年は西武が日本一になり、広島は優勝を逃している。 広島・緒方監督 「投手陣が頑張ってくれた。(大瀬良)大地も初戦でプレッシャーがかかる中、しっかりといい投球をしてくれた。五回の失点は仕方ない。最初はこっちのペースでゲームができた。また明日メンバーを考えながら戦いたい」 ソフトバンク・工藤監督 「この引き分けは本当に大きい。よく追い付いたし、よくその後も抑えた。大きな舞台で自分の持っているものを出すのはなかなかできないこと。みんな本当にナイスピッチング。第2戦に必ずつながる」

◆今季限りで現役を退く広島の新井は、延長十二回1死一塁から代打で登場。大歓声に迎えられたが、最後は投ゴロに倒れ「何とかしたかったが、いいところに投げられた。見送ったらボールかな」と悔しがった。  チームは2点先行から追い付かれても、一度もリードを許さずに引き分け。精神的支柱のベテランは「緊迫した初戦だった。前向きに捉えて明日に向けて準備したい」と表情を引き締めた。 鈴木(2安打) 「後ろにつなぐ意識で打席に入った。ほとんどの投手を見られたという意味では収穫はある」 中田(延長十二回に登板し、無失点) 「しびれたけど、いつも通りという気持ちでいった。結果的にゼロで良かった」 会沢(大瀬良に) 「いい投球をしてくれた。他の投手も頑張ってくれた」

◆第1戦が引き分けたことで、第7戦を行ってなお優勝が決定しない場合には、第7戦が行われるマツダスタジアムで翌日に第8戦が行われる。さらに第9戦が必要な場合には、移動日を1日設け、ヤフオクドームで行われる。第8戦以降は延長回の制限はない。

◆中日・松坂が、テレビ中継のゲスト解説でマツダスタジアムを訪れた。中日がドラフト1位指名で根尾(大阪桐蔭高)の交渉権を獲得したことは、自宅のある米国で知った。  「華のある選手だなと思っていた。交渉権を獲得できてよかった」。来春の沖縄・北谷キャンプでは対面に注目が集まる。「でも僕はドラゴンズにいるか、まだわからないので。残ったら楽しみにしている」と、11月中旬の契約更改交渉に向けてニヤリ。  その後は放送席から熱戦を見守り、「立ち上がりが気になります」と話した直後に、千賀が先制ソロを被弾。大瀬良が四回に柳田を内角低めの直球で見逃し三振に仕留めると「僕も同じところに投げます」とズバリ。「しゃべりは得意ではないんですよ」と言っていたが、キレのある分析を連発した。

◆日本シリーズを最後に現役引退する新井は2-2の十二回一死一塁から代打で登場したが、投ゴロに倒れた。スタンドからは大きなため息が起こった。「少しボール球だったかな。緊迫した初戦だった。勝てなかったが、(引き分けを)前向きにとらえて、明日、頑張ります」と気持ちを入れ替えていた。

◆大瀬良は気迫の投球で先発の役割を果たした。一回に2点の援護をもらうと四回まで無安打投球。2-0の五回二死二、三塁で、代打デスパイネの二塁への内野安打に松山の失策が重なる不運もあり5回2失点(自責1)で降板にはなったが、「普段通りの気持ちで試合を迎えることができた。全体的には悪くなく、自分の投球ができた」。緒方監督の期待に十分に応えた。  戦況次第では、中4日で第5戦に臨む可能性もある。「そうなればしっかりと腹をくくってやりたい」。新エースはフル回転する覚悟だ。

◆立ち上がりに崩れた千賀は4回3安打2失点で悔しい降板。「久しぶりの屋外の試合で、感覚がちょっと...。でも、何とか2失点で抑えて、試合を壊さなかったのでよかったです」。一回に菊池に先制ソロ。四球と連打で2点を失った。二回以降は完璧も、五回に好機で打席がまわって代打を送られた。昨年に続く日本シリーズ初戦の先発で2年連続勝利は逃したが、61球で交代。中4日で第5戦に向かう可能性が高い。

◆「6番・一塁」でスタメン出場の内川は延長十一回二死一、三塁の勝ち越し機に打席が巡ってきたが、左太ももに死球を受けて退場。試合後も足を引きずりながらバスに向かった。「痛いよ。明日? 何とか出られるように努力します」。シーズン後半の故障、不調から立ち直り、CSから1軍に戻ってきたベテランが欠けるのは大きな痛手。回復状況が気になるところだ。

◆試合後のベンチ裏に次々と明るい声が響いた。野手はベンチ入り16人を使い切り、投手も先発の千賀を含めた7人が登板。九回で決着した1966年第1戦の南海、69年第6戦の阪急と並び、史上最多タイの23人を起用した工藤監督は、リリーフ陣に最大限の敬意を表した。  「みんなよく投げてくれた。1点取られたら終わりと分かった上で、大きな舞台で力を出してくれた。なかなかできることではない」  一回に2点を先制される苦しい展開から価値あるドローだ。五回から登板した武田は六回一死一、三塁で会沢を一飛。安部から空振り三振を奪ってほえた。石川も七、八回を無失点でつなぎ、終盤は森、加治屋ら勝ちパターンの継投。先発の千賀を含めた7人が二回以降はゼロを並べた。  ベンチは五回二死二、三塁で千賀に迷わず代打・デスパイネを送った。指揮官は「あそこが勝負だと思った」と積極策。松田宣、長谷川勇、川島と豊富な代打を次々と送るプランは、分厚いリリーフ陣の存在があるからこそなせる業だ。  「第2先発も含めて、武田くんもいたし、延長になっても投手は用意できると思った」  すっかり切り札として定着した第2先発。シーズン前半は先発を務めた武田と石川がロングリリーフも見据えて待機する。それぞれ2勝を挙げたCS突破後、早々に日本シリーズでの継続を決めたが、初戦でさっそく機能した。  第1戦の引き分けは1986年の広島-西武以来だ。その32年前、西武の若手、工藤は4試合に登板した。3連敗の後、第5戦で自らサヨナラ打。その夜、ナインは敗れて慰労会を開く予定だったという。「『また広島に戻るのかよ』って白い目で見られたね」。そこから4連勝で日本一。ときおり語る思い出の"再現"は吉兆だ。  「大きい引き分け。必ず明日につながる。本当にナイスゲームでした」  競ったら負けない。十分に強さを証明した鷹が2年連続の日本一へ、勝ちに等しい発進だ。 (安藤理)

◆マツダスタジアムで開幕してセ・リーグ覇者の広島とパ・リーグ2位からクライマックスシリーズ(CS)を勝ち上がったソフトバンクが対戦し、延長十二回の末、2-2で引き分けた。第1戦の引き分けは1986年の広島-西武以来32年ぶり。日本シリーズ史上最多タイの両軍計44人が出場した総力戦で、広島は8投手、ソフトバンクも7投手の継投で乗り切った。  日本シリーズ開幕戦は4時間38分の大激戦となった。両軍44人が出場したのは日本シリーズタイ記録。広島・緒方監督は8投手をつぎ込む執念の継投で昨季日本一の鷹軍団に食い下がったが、決定打を欠き、延長十二回ドロー決着に終わった。  「序盤はこっちのペースでゲームができていたけど、あと1本のところで追加点を奪うことができなかった」  鮮やかな先制攻撃だった。一回一死から、菊池がソフトバンク・千賀の高めの直球を振り抜き、左中間へ自身シリーズ初本塁打となる先制ソロを放った。一気にマツダスタジアムが盛り上がり、なお一、二塁の好機で松山が右前適時打を放って幸先のいいスタート切ったが、追加点を奪えないまま迎えた中盤に、手痛いミスがあった。  0-2の五回二死二、三塁で、菊池は、代打・デスパイネの中前へ抜けそうなゴロ打球に追いつき好捕。体勢を反転させてツーバウンドで送球したが、一塁の松山が後逸(記録は安打と松山の失策)。ボールがファウルゾーンに転々とする間に二走にも生還され、試合は振り出しに戻ってしまった。  試合の分岐点となったプレー。緒方監督は「菊池がよく追いついてくれた」と責めなかったが、玉木内野守備走塁コーチは「ヒットゾーンに飛んでいたのを理解してほしい。あれは菊池しか捕球できない。一塁手が止めてほしい」と苦言を呈した。「守り勝つ野球」が指揮官が掲げるチームのスローガン。第2戦以降に向けて、この日起きたプレーについても反省し、検証する。  「あした頑張ります」と菊池も前を向いた。平成最後の頂上決戦。シーズン中も成功と失敗を繰り返して勝ち進んできた赤ヘルが、悔しい引き分けを教訓に第2戦での勝利を目指す。(柏村翔) 初の日本シリーズ4番を務めて2安打した広島・鈴木 「セとは違うタイプの投手だった。ほとんどの投手を見ることができたのでそこは収穫だと思います」

◆両チームとも打線のチームでありながら、初戦のせいかまだ勢いが出なかった。そのかわり、どちらも投手が好投したので延長までもつれた。後ろになるに従ってプレッシャーがかかるものだけど、広島は7人、ソフトバンクも6人の中継ぎ投手が引き締めた。珍しい試合だったよ。  とはいえ、広島としては惜しまれるのは五回の守備の乱れだね。連打を浴びた後の挟殺プレーで三塁走者をアウトにはしたが、打者まで二塁に進ませて二、三塁。結局、この失敗が響いた。  大瀬良はデスパイネの初球はストライクからボールになるスライダーで入り、3球目もボールになる球を振らせた。それなのに三振を狙ったのか、次の球は甘く高めに浮いた球を打たれた。歩かせるつもりでもいい場面。今季15勝の自信もあるだろうし、余裕があっただけに、1つのミスが試合の流れを左右するということよ。  どちらも打線がいつもの状態ではなかったけど、2戦目以降は先発投手によってがらっと変わることもある。1戦目とは違った展開になるだろうね。 (サンケイスポーツ専属評論家)