西武(★5対6☆)ソフトバンク =クライマックスシリーズ5回戦(2018.10.21)・メットライフドーム=
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ソフトバンク
30000102061201
西武
0000210115902
勝利投手:石川 柊太(1勝0敗0S)
(セーブ:森山 孔介(0勝0敗1S))
敗戦投手:ウルフ(0勝1敗0S)

本塁打
【ソフトバンク】柳田 悠岐(2号・6回表ソロ)
【西武】浅村 栄斗(2号・6回裏ソロ),中村 剛也(1号・9回裏ソロ)

  DAZN
◆ソフトバンクが2年連続となる日本シリーズ進出を決めた。ソフトバンクは初回、柳田が走者一掃の3点適時打を放ち先制する。その後、6回表には柳田のソロ、8回には上林の2点適時打で追加点を挙げた。投げては、先発・高橋礼が5回途中2失点の好投。敗れた西武は反撃を見せるも、あと一歩及ばなかった。

◆前日20日の第4戦の1回に、ソフトバンク・デスパイネの空振りしたバットが左手首に直撃して負傷交代した西武森友哉捕手(23)が、患部にサポーターを巻きながら試合前練習に参加した。 キャッチボールや、防具を付けての二塁送球などで感触を確かめたが、フリー打撃は行わなかった。練習を終えると「大丈夫です」と言って引き揚げた。 前日の試合中に東京・立川市内の病院で検査を受け、骨に異常はなく打撲と診断された。

◆西武辻発彦監督(59)が森友哉捕手(23)の出場を示唆した。 森は捕手で出場した前日20日の第4戦の1回、ソフトバンク・デスパイネの空振りしたバットが左手首に直撃して負傷交代。打撲と診断された。この日の練習後、「大丈夫です」と言って引き揚げた。 辻監督は「本人が大丈夫といえば、大丈夫だろう。(打撃の)調子が良いから」と、勝負強いバットに期待していた。

◆ソフトバンク柳田悠岐外野手が1本塁打4打点の活躍で首位西武を破り、2年連続18度目の日本シリーズ進出へ導いた。 1回無死満塁、柳田がフルカウントの6球目を捉え、走者一掃となる左翼へ適時二塁打で3点を先取した。6回にはウルフから右中間席へソロ本塁打を放ち、貴重な追加点をたたき出した。ファーストステージは打率1割1分1厘と苦しんだが、ファイナルステージは全試合4番打者として打率4割5分、2本塁打、8打点の活躍で打線を支えた。 MVP受賞が決まり、「自分でいいのかなという気持ち。みなさんのおかげです」と感謝した。 これで04年以降のプレーオフ、CSで球団史上初の下克上となり、ソフトバンクは27日からセ・リーグ覇者の広島相手に日本シリーズを戦う。「頑張ります。(広島は)やっぱ強いチームなんで。ここまできたらあと4つ勝ちます」と2年連続9度目の日本一をファンに約束した。

◆レギュラーシーズン2位のソフトバンクがリーグ優勝の西武を破り、2年連続18度目の日本シリーズ進出を決めた。 ソフトバンクは第3戦から西武に3連勝し、アドバンテージ含め通算成績4勝2敗。04年以降プレーオフ、CSを通じて球団史上初の下克上となった。 連勝中のソフトバンクが先手を奪った。1回無死満塁から柳田が左中間へ走者一掃の適時二塁打を放ち3点を先制した。 3点を追う西武は5回無死一、三塁から森の右前適時打、さらに無死一、三塁からメヒアの遊ゴロ併殺の間に1点を加え1点差と詰め寄った。 リードが1点となったソフトバンクは、6回無死。柳田の右中間席へのソロ本塁打で加点した。 2点を追う西武も6回1死から浅村の中越えソロ本塁打で1点差とした。 ソフトバンクは8回2死一、二塁から、上林が右翼へ2点適時三塁打を放ち6-3とした。 3点を追う西武は8回1死三塁から浅村の二塁ゴロの間に1点。さらに9回2死から中村が1号ソロを放ったが、あと1点届かず、10年ぶり日本シリーズ進出はならなかった。 ソフトバンク柳田はCSファーストステージで打率1割1分1厘だったが、ファイナルステージで打率4割5分、8打点、2本塁打と勝負強さを発揮し、MVPに輝いた。 2年連続9度目の日本一を目指すソフトバンクは、セ・リーグ覇者でCSを勝ち抜いた広島と日本シリーズで対戦する。日本シリーズ(7回戦制)は10月27日からセ・リーグ本拠地のマツダスタジアムで行われる。

◆ソフトバンクが西武に勝利し、2年連続の日本シリーズ進出を決めた。 柳田が初回に走者一掃の適時二塁打、6回には2試合連続となる本塁打を放つなど4打点の活躍を見せた。 西武は中盤以降反撃を見せ、最終回1点差にまで迫ったが及ばなかった。

◆日本シリーズ進出を逃した西武辻発彦監督(59)が、ファンの前で男泣きした。 マウンド付近に全選手が整列する前でマイクの前に立つと、涙がこぼれ落ち、両手で顔を覆った。 「悔しいです。まさか今日2018年シーズンが終了するとは思ってもいませんでした。日本一になる夢を選手とともに持って、今日まで戦ってきました」と声を張った。 昨年はCSファーストステージで敗戦。「去年の悔しさが今年の成長につながった。またこの敗戦から選手はパワーをためて、来年に向かっていけたらと思います」と言った。

◆今季限りで引退する西武松井稼頭央内野手(42)が、慣れ親しんだ本拠地の遊撃の位置に座り込んで手をつき、感謝と別れを告げた。 日本シリーズ進出を逃した試合後、選手たちの手で背番号と同じ7度、宙を舞った。選手とともにグラウンドを1周すると、最後は1人で三塁側ベンチを飛び出し、左翼スタンドのファンにあいさつ。 その左翼からの帰り。遊撃の位置に立つと、大歓声の中、そっと手をついた。走攻守3拍子そろった希代の名遊撃手は、ファンと家族に見守られながら、現役最後の試合を終えた。

◆西武の居郷肇社長は21日、今季の全日程終了後に後藤高志オーナーとともに、辻発彦監督(59)に来季の続投要請を行い、受諾されたと発表した。契約年数は2年。 また鈴木葉留彦球団本部長が退任し、渡辺久信シニアディレクター(SD)が、球団本部ゼネラルマネジャー(GM)に就任する。 新たに2年契約を結んだ辻監督は「歴史的に複数年契約という形はとってきてない球団ですが、2年という期間を私に与えて頂いたということは、それだけ期待されているということだと思う。さらに精進しないといけない」と言った。

◆ソフトバンクのルーキー高橋礼投手が大仕事をやってのけた。 CS初先発で3回まで完全投球。5回に2点を失い、2死から秋山に内野安打され降板した。惜しくも白星は逃したが堂々たる投球でチームを日本シリーズに導いた。「緊張することなく試合に入れました。イニングの途中で降板し、中継ぎの皆さんに申し訳ないです」。反省も口にしたが、抜てきに応えた。 倉野投手統括コーチは「期待以上のピッチング。ストライクゾーンで勝負してくれた。ひそかに、うまくいけば5回までいけるかも、と思っていた。これだけの投球をしてくれるとチームも助かる」とたたえた。 高橋礼は、専大からドラフト2位で入団し、シーズンは12試合に登板。日米野球の侍ジャパンにも選出されている。

◆今季限りで引退する西武松井稼頭央外野手(42)が、慣れ親しんだ本拠地の遊撃の位置に座り込んで手をつき、感謝と別れを告げた。 日本シリーズ進出を逃した試合後、選手たちの手で背番号と同じ7度、宙を舞った。選手とともにグラウンドを1周すると、最後は1人で左翼スタンドのファンのもとへと走り、頭を下げた。 その左翼からの帰り。遊撃の位置に立つと、大歓声の中、そっと右手をついた。 走攻守3拍子そろった希代の名遊撃手は、ファンと家族に見守られながら、現役最後の試合を終えた。「まさか、胴上げされるとは思っていませんでした。選手の皆さんには、本当に感謝しています」。 ファンへの思いも口にした。「15年ぶりに戻ってきて、FAで出たのに受け入れていただいた。声援が力になり、頑張っていけました。ここ3年ぐらいは何回も心が折れそうになってきたけど、声援が励みになりました。感謝しています」と話した。

◆第4戦の1回にソフトバンク・デスパイネの空振りしたバットが左手首を直撃し、負傷交代していた西武の森友哉捕手は、スタメンで強行出場した。 打撲と診断されていた。5回無死一、三塁で右前打を放ち、打点を挙げた。「(痛み止めの)ボルタレンとアドレナリンでなんとか大丈夫でした」と明かした。 捕手、指名打者として136試合に出場した今季を振り返り「濃かったですね。いろいろ勉強させていただいた。来年も、今年以上にできるようにしたい」と話した。

◆長時間にわたるリプレー検証が行われた。 西武が0-3と3点を追う5回、先頭外崎からの3連打と内野ゴロの間に2点を返し、1点差に追い上げた。さらに秋山が内野安打で出塁。続く源田の打席で二盗を試みた。好スタートで足から滑り込んだ。タイミング的にはセーフのようにも見えたが、判定はアウト。すかさず、辻監督がリクエストを申し出た。 ここからが長かった。審判団の協議が10分を超えたあたりで場内からブーイングが起きた。直後に、ようやく検証が終了。判定どおりアウトで、リクエストは失敗に終わった。 場内に流れた映像ではセーフのようにも見えたため、西武ファンから、さらにブーイングが起きた。

◆西武の秋山翔吾外野手が、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ敗退について「先頭で出ることが多い1番の僕が、チャンスを作れなかった」と悔やんだ。 5回2死、CSファイナルステージで2本目となる内野安打。すかさず二盗を仕掛けたが、二塁塁審の判定はアウト。辻監督がリクエストを要求した。2-3と追い上げた直後だったが、約10分間にわたって中断し、判定も覆らず。試合の流れも変わった。 8回には、先頭でフルカウントから二塁打を放った。浅村の二ゴロの間に生還し「自分が塁に出れば、後ろがかえしてくれる。まだまだ力が足りないなと思った」と振り返った。 CSファイナルシリーズの期間中も試合後に居残りで打撃練習を行うなど、調整を重ねていた。この日は、4回の第2打席で登場曲も変更した。「CSの難しさで、早く波に乗らないといけないと思っていたけど、それができなかった」と反省していた。

◆西武浅村栄斗内野手が悔しさをにじませた。 「これがソフトバンクとの差だと思う。悔しいし、つらいですね。優勝して、ソフトバンクにも(リーグ戦で)勝ち越して、CSで負けた。ここぞでの強さの差かなと思う。(ソフトバンクには)こういう舞台に慣れている選手がたくさんいる。みんなどっしり戦っている印象があった。それと比べると緊張もありましたし、慣れない部分もあった」と唇をかんだ。 自身は、この日の6回にソロアーチをバックスクリーンに運ぶなど、5戦で打率4割2分1厘をマーク。計2本塁打の6打点と奮闘したが「たまたま僕が調子よかっただけ。自分も(シーズン中)悪いときもあった。チームとしての差を、短期決戦で改めて感じたのもあります」と振り返った。

◆ソフトバンク上林誠知外野手が8回の2点三塁打で今シリーズ10打点。プレーオフ、CSで10打点以上は04年カブレラ(西武=13)フェルナンデス(西武=11)09年スレッジ(日本ハム=10)18年デスパイネ(ソフトバンク=10)に次いで5人目で、日本人では初。 上林はファイナルSだけで10打点で、1ステージで10打点は09年2Sスレッジ以来2人目の最多タイ記録だ。また三塁打はファイナルS1、3戦に続いて3本目。同一年のポストシーズンで3三塁打は史上初めて。

◆ソフトバンク柳田悠岐外野手が満塁走者一掃の先制二塁打を放ち、4戦に続いてV打点。同一シーズンのプレーオフ、CSで2試合連続勝利打点は82年1、2戦大田(西武)15年ファイナルS1~3戦内川(ソフトバンク)16年ファイナルS1、2戦丸(広島)17年ファイナルS3、4戦中村晃(ソフトバンク)に次いで5人目。王手試合から連続は内川に次いで2人目だ。 ▼今年のCSでソフトバンクは満塁でよく打ち、1Sから通算10打数9安打の打率9割で21打点。満塁で猛打のソフトバンクはプレーオフ、CS史上初めてファイナルSをオール5点以上で突破した。

◆西武に引導を渡したのは、やはり柳田だった。ソフトバンクは初回、ウルフを攻め無死満塁。4番が左中間へはじき返した走者一掃の二塁打が決勝点となった。「チーム全体で束になれたことが一番。いいバッティングができました」。今ステージでは第4戦でも決勝2ラン。5戦で打率4割5分、2本塁打、8打点と打ちまくった。CSでは自身初のMVPで賞金100万円ゲット。「みなさんのおかげなので、チーム、スタッフに還元します」と謙虚に話した。 揺れる流れも強引に引き寄せた。秋山の二盗を巡り、約10分のリプレー検証で間延びした直後の6回。先頭の打席で破格のパワーを繰り出した。右翼手の外崎が前進しかけたほど高く舞いあがった飛球は、右中間席へポトリと落ちた。この4打点目が西武に甚大なダメージを与えた。 生還すると満面の笑みで両方の二の腕を順番にたたき、握りこぶしを外に突きだし「最高!」。今季途中から本塁打後にするパフォーマンスを披露した。「だって、ホームランって最高でしょ」。人気ユーチューバーとなったボクシング亀田兄弟の父、亀田史郎氏の決めポーズをもらった。松田宣の「熱男~~!」。デスパイネの「足上げ」に続くソフト名物が出て、CS突破は決まった。 広島との選手権に歩を進めた。広島で生まれ育ち、大のカープファンだった。2年連続の日本一へ向け、故郷に凱旋(がいせん)できる。「日本シリーズでカープと戦える。小さい頃から思うと、考えられない。かみしめて頑張ります」。 CS前には「今年、野球ができるのもあとちょっと。来年まで野球ができない。大事にやっている」と言い、試合後は「また大舞台で野球ができるとワクワクしています。今年は工藤監督を胴上げできていない。ここまできたらあと4つ勝ちます」と言った。規格外の野球小僧。打ち続ける。【山本大地】

◆打ち合いを制したのはソフトバンクだ。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第5戦は、ソフトバンク柳田悠岐外野手(30)が1回の決勝3点適時二塁打と6回のソロで4打点の活躍。球団初となるシーズン2位からのCS突破に成功した。4番打者は5試合で打率4割5分、2本塁打、8打点と暴れMVPを獲得した。敗退した西武辻発彦監督(59)は悔しさの余り号泣した。ソフトバンクは27日から始まる広島との日本シリーズに進む。 マイクの前に立った辻監督は両手で頭を抱えた。下を向き、言葉が出ない。目は真っ赤。おえつを漏らした。昨年、父を亡くした時にも人前では涙を見せなかった九州男児が衆人環視で泣いた。10秒以上。やっと落ち着き、口を開いた。 「悔しいです。まさか今日、2018年のシーズンが終了するとは考えてもいませんでした」 本音だった。自慢の山賊打線がソフトバンクに屈した。しかも、自らが理想とする守り重視、隙を突く野球をしてやられた。 崖っぷちの一戦は誤算で始まった。初回。先発ウルフが先頭上林に初球を右翼線二塁打とされた。明石には死球。グラシアルには初球でセーフティーバントを決められた。無死満塁から柳田の左中間二塁打で、あっという間の3失点。辻監督は「無警戒だった」とセーフティーを振り返った。序盤で主導権を失い、リードできぬまま敗れた。 アドバンテージを除けば1勝4敗の完敗。ソフトバンクとの差を問われ「やっぱり中の投手が強い。本当にタフ」と相手を褒めた。4敗はいずれも先制を許し、一時逆転は1度だけ。短期決戦で目いっぱい投げられると厳しかった。 自軍のリリーフ陣は総じて球のキレを欠いた。辻監督は「期間が空き、調整がうまくいかなかった」と認めた。ファーストステージを横目に1週間、宮崎でフェニックスリーグに参加。投手の調整は基本的に個々に任された。まずは疲労回復に努めた選手が多かったが、リリーフ陣からは「対バッターの試合勘が難しい」との声が出た。野手も秋山、中村らが前日まで不振。チームとしてピークを合わせる点でも、ソフトバンクと経験の差が出た。 悔しさを晴らすのは来季しかない。辻監督は「(2位の)去年の悔しさを今年、晴らした。今年の悔しさは1つ上のレベル。この悔しさをもってチーム力を上げていかないと」と決意表明した。【古川真弥】 ◆西武辻監督の息子・泰史さん(観戦に訪れ、セレモニーでもらい泣き)「おやじが泣くところを、初めて見ました」

◆西武秋山が、約10分間の試合中断を悔やんだ。5回、12打席ぶりとなる一塁への内野安打を放った。すかさず二盗を仕掛けたが二塁塁審の判定はアウト。辻監督がリクエストを要求したものの覆らなかった。2-3と追い上げた直後だったが「なんでこんなに長いのかなと思った」。試合が止まり、直後に柳田のソロで2点差とされた。5戦目にして初のマルチ安打も「結果が出るのが遅かった。点を取り切れなかったことは僕が原因。攻守すべてでパワーアップに取り組む」と責任を背負った。 ◆森責任審判(5回、秋山の二盗アウトの判定について)「確証を得る映像がなかった。(長い中断について)ケース・バイ・ケースで、重大な場合なので何回もじっくり見ました」

◆西武ブライアン・ウルフ投手(37)が21日、来季の現役続行は未定とした。ソフトバンク戦に先発し、5回2/3、8安打4失点。CS開始前に今季限りでの引退も考えていると口にしていたが、試合後は「家族と相談したい。まだ考えられない」と明言しなかった。 なお、デュアンテ・ヒース投手(33)カイル・マーティン投手(27)郭俊麟投手(26)の去就は今後の交渉次第だが、3人とも西武残留を希望している。ファビオ・カスティーヨ投手(29)は退団が濃厚。エルネスト・メヒア内野手(32)は来季が3年契約の3年目。

◆そっと右手を置いた。日米25年間の現役生活を終えた西武松井。セレモニーでは、後輩たちの手で背番号と同じ7度、胴上げされた。最後は1人で左翼のファンのもとへ行き一礼。引き揚げる途中、遊撃の定位置で足を止め、グラウンドを愛でるように触れた。 「ライオンズに入団して、ショートとして育ててもらった場所。現役として『ありがとうございました』という気持ちでした」 テクニカルコーチ兼任で、15年ぶりに古巣に復帰した。出場30試合にとどまり、成績もふるわなかった。9月初め。「心が折れてもおかしくないよね。でも、現役でいる限り、2軍でも試合に出る可能性がある。1本でも多くヒットを打ちたい」と漏らした。登録抹消を経て引退を決意した。 三塁、さらに外野に転向したが「引退試合ではショートを守りたい」と言っていた。ただ、遊撃はフルイニング出場を続ける源田。真剣勝負が続き引退試合の機会はなかった。感謝を込め、遊撃にサヨナラした。 CS出場はなかったが、ベンチ入り。練習から「チームなので。準備するだけでした」とプロであり続けた。その姿は敵軍にも届いた。ソフトバンクの遊撃は、楽天で一緒だった西田。13年のCSでベンチ入りしたが、出場なく、遊撃松井を目に焼き付けた。あれから5年。今ステージでブレークし「稼頭央さんにいいところを見せられました」と喜んだ。志は引き継がれている。【古川真弥】

◆ソフトバンク森がCS制覇を締めくくった。2点リードの9回に登板。2死から中村にソロを浴びたが、続く森を二ゴロに打ち取った。 捕手の高谷と抱き合い「いつも通りに入っていけました。終わった、という感じでしたね」とホッとした顔を見せた。「絶対日本一になりたい。最後のマウンドに立ちます」。日本シリーズでもフル回転し、胴上げ投手になることを誓った。

◆ソフトバンク西田が、ラッキーボーイの活躍でCSファイナル突破に貢献した。3戦続けて8番遊撃で先発出場。1打席目に中前打で出塁すると、内野安打、左前打と連ね、ファイナルステージ5試合で12打数7安打、打率5割8分3厘と打ちまくった。 「自信を持ってやれました。偶然ではなく、シーズン終盤から継続してやりたかったことができたと思う」と満足げに振り返った。日本ハムとのCSファーストステージ直前には王球団会長から直々に打撃アドバイスを受け「シンプルで分かりやすかった」。昨年まで在籍した楽天ではCS出場の経験はなく「ベンチで見ていただけ。緊張はすると思うけど、シーズン通りにやりたい」と話していたが、今ステージ初戦で西武菊池の151キロの直球を右前にはじき返し波に乗った。一躍脚光を浴びたが「たまたま短期決戦でチャンスをもらって試合に出て結果を出せただけ」と謙虚だ。 チームの内野手争いは厳しい。負傷の今宮に代わって遊撃を守り、抜てきに応えている。「苦しいときも声を掛け合ってチーム一丸となる強さがある」。次の舞台は日本シリーズだ。【佐竹英治】

◆ソフトバンク工藤公康監督(55)が攻めの采配を貫き、CSファイナルステージを突破した。先攻となる敵地で4勝すべて先制点を奪った。「先に攻めるのは悪くない」。この日も初回から速攻だった。1番上林が初球を右翼へ二塁打。明石が死球で出塁すると、続くグラシアルは自らの判断で初球を一、二塁間へプッシュバント。内野安打で満塁とすると、柳田の先制3点適時打につなげた。ノーサインでの奇襲に工藤監督は「ビックリした。頭脳プレー。勇気を持ってやってくれた」と喜んだ。 シーズンでは西武に6・5ゲーム差をつけられ2位に終わり、連覇を逃した。「挑戦する気持ち。それだけだった」。その言葉を采配で示してみせた。第2戦からミランダ、千賀、東浜と中4日の強攻ローテーション。谷間のこの日はシーズン0勝ルーキーの高橋礼を先発させた。第3戦では工藤政権で不動の三塁手松田宣を不振のためスタメンから外した。「苦渋の決断だった」が、吉と出た。代わりに出た内川が結果を出したが、この日は先発ウルフとの相性のよさを買い、長谷川勇を先発起用。松田宣、内川ともベンチスタートで戦った。 後藤球団社長は「決断ができるのがリーダー。チームが勝つために、よりよい選択ができる。僕らも見習わないといけない」と話し、世界的な巨大企業ソフトバンクグループの金庫番をうならせた。63安打44得点で山賊打線を圧倒した工藤監督は「広島は西武と同じで打ち勝ってきた。しっかり準備したい」。202発打線で連続日本一をつかみにいく。【石橋隆雄】

◆天高く馬肥ゆる秋...。秋晴れのすがすがしい空気の中、ホークスがCSファイナルの激戦を制した。シーズンは2位に終わったが、短期決戦で無類の力を発揮。昨年の日本一チームが苦境のシーズンを乗り越え「下克上」を果たした。「馬肥ゆる」ならぬ「鷹肥ゆる」秋であった。中国故事によると、「馬肥ゆる」はかつて北方騎馬民族が夏場の草をしっかり食した馬ととともに攻め入る、という警戒の秋を意味しての言葉だったようだ。西武にとってはまさに「鷹」がさらに爪を研ぎ、攻め入ったようなものだったろう。どう猛な獅子の牙も通用しなかった。 この5戦、「打撃戦」を制したようで、実は「投げ勝った」ように思う。第2戦からはミランダ、千賀、東浜の3先発投手がともに中4日で登板。首脳陣は早め早めの継投策を準備して戦った。ファイナルシリーズに入ってさらに投手ミーティングで投手陣に植え付けたのが「攻め」の気持ちだった。「打たれてもいい。かわす投球はいけない。攻める投球をしろ。(西武打線を)怖がるな」-。この日、先発した新人サブマリン高橋礼も思い切って腕を振った。 若田部投手コーチは言った。「ストライクの中でしっかり勝負できたのではないでしょうか」。西武の粘りもあって4点を失ったものの、5戦目は1四球。僅少差の試合でやはり西武は四死球絡みで2点を失っていた。サファテ、岩崎、和田...。大きな戦力を失って戦い続けた投手陣が、まさに「奮投」した短期決戦ではなかっただろうか。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

◆パ・リーグ2位のソフトバンクが西武に3連勝。通算成績4勝2敗(西武のアドバンテージ1勝を含む)で2年連続18回目の日本シリーズ進出を決めた。  ソフトバンクは一回、無死満塁のチャンスで柳田が左中間を破る走者一掃の二塁打を放ち3点を先制。1点差に迫られた六回、先頭の柳田が右中間スタンドへソロ本塁打を放つと、再び1点差に迫られた八回、二死一、二塁から上林が右越えの2点三塁打を放ちリードを広げた。2点リードの九回に森が中村にソロ本塁打を浴び1点差に詰め寄られたが逃げ切った。  工藤監督は2年連続の日本シリーズ進出を決め、「メットライフドームにたくさんのホークスファンの方に駆けつけていただいて、熱い応援をしていただいて、選手たちも燃えて戦うことができて、うれしく思います。今は勝ってホッとしています」と安堵の表情。  日本シリーズに向けて、「僕らの最終目標は日本一なので、そに向かって、選手たちがよくがんばってくれたと思います。パ・リーグの代表としてしっかりセ・リーグと戦っていきたいと思います。これで福岡に帰ることができますし、ファンのみなさんの前でまた戦えることができますし、やるからには日本一になれるようにがんばります」と意気込んだ。

◆パ・リーグ2位のソフトバンクが西武に3連勝。通算成績4勝2敗(西武のアドバンテージ1勝を含む)で2年連続18回目の日本シリーズ進出を決めた。  ソフトバンクは一回、無死満塁のチャンスで柳田が左中間を破る走者一掃の二塁打を放ち3点を先制。  西武は五回、無死一、三塁のチャンスで森が左前適時打を放つと、続くメヒアの遊ゴロ併殺の間に三走・中村が生還し2-3と1点差に迫った。ソフトバンクは二死から秋山に一塁内野安打を打たれた場面で高橋礼に代えてモイネロをマウンドに送った。  ソフトバンクは六回、先頭の柳田が右中間スタンドへソロ本塁打を放ち4-2とした。西武は二死一塁の場面で、ウルフに代えて平井をマウンドに送った。西武は六回の攻撃、浅村がバックスクリーン左へソロ本塁打を放ち再び1点差に迫った。  ソフトバンクは八回、二死一、二塁から上林が右越えの2点三塁打を放ち6-3とリードを広げた。  西武は八回、一死三塁から浅村のニゴロの間に三走・秋山が生還し1点を返した。  ソフトバンクには2点リードの九回、森が中村にソロ本塁打を浴び1点差に迫られたが、最後は森を二ゴロに抑え、逃げ切った。

◆プロ野球ソフトバンクは21日、埼玉県所沢市のメットライフドームで行われたパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第5戦で10年ぶりにリーグ優勝した西武を6-5で破り、3連勝で対戦成績を4勝1敗として2年連続で日本シリーズ進出を決めた。  今季のソフトバンクは西武に6・5ゲーム差の2位だった。リーグ優勝しなかったチームがCSを突破するのは、パでは3位から勝ち上がって日本シリーズを制した2010年のロッテ以来。  日本シリーズは27日に広島市のマツダスタジアムで開幕し、セ・リーグを3連覇し、2年ぶりにCSを突破した広島と対戦する。 ソフトバンク・工藤監督 「ほっとしている。挑戦する気持ち、それだけだった。ここでやったことで、選手はまた成長してくれた。日本一を目指して頑張っていく」

◆プロ野球ソフトバンクは21日、埼玉県所沢市のメットライフドームで行われたパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第5戦で10年ぶりにリーグ優勝した西武を6-5で破り、3連勝で対戦成績を4勝1敗として2年連続で日本シリーズ進出を決めた。  今季のソフトバンクは西武に6・5ゲーム差の2位だった。リーグ優勝しなかったチームがCSを突破するのは、パでは3位から勝ち上がって日本シリーズを制した2010年のロッテ以来。 西武・辻監督 「負けたのは非常に悔しい。点を取られても取り返して、最後まで食らい付く、うちらしい試合だった。ソフトバンクは中継ぎの投手が強かった」

◆ソフトバンクの新人で下手投げの高橋礼が五回途中まで2失点と踏ん張った。丁寧に低めを突き、三回までは一人の走者も許さず、いい流れをつくった。「大事な試合。気負わないように投げた」とほっとした様子だった。  専大からドラフト2位で入団し、レギュラーシーズンは12試合に登板した。日米野球の代表メンバーに選ばれており「自信が出てきた。今後につなげたい」と意欲的に話した。

◆ソフトバンクの森がリードを守り切った。6-4の九回に登板し、二死で中村にソロを浴びたが、最後は森を二ゴロに仕留め「(試合には)いつも通り入っていけた。打たれた球は甘く入った」と息をついた。  5年目の今季は故障で離脱したサファテの代役を務め、37セーブで初の最多セーブに輝いた。ファイナルステージでは3試合に登板し、計3回を1失点で「次もあるし、しっかり修正して日本一を目指したい」と日本シリーズへ意気込んだ。 グラシアル(一回のバント安打に) 「走者を進めることを考えた。自分の仕事ができた」 ソフトバンク・達川ヘッドコーチ 「たまたまうちは一番いい状態で(ファイナルステージに)来られた。運が良かったから勝たせていただいた」

◆ソフトバンクの上林が2安打2打点で1番打者として打線をけん引した。一回、初球を右翼線二塁打として先制の足場をつくると、4-3の八回には右越えに2点三塁打を放った。「一回はチームを勢いづけたかった。八回の2点も大きかったし、自分を褒めたい」と胸を張った。  この日の2本の長打で1973年から82年の前後期制の時代を含むプレーオフ、CSで最多のシリーズ6長打となった。シリーズ10打点も最多記録に並び「記録のためにやっているわけではないが、名前が残るのはうれしい」と控えめに喜んだ。

◆ソフトバンクの西田は3打数3安打で、ファイナルステージで計12打数7安打と大当たりだった。「シーズン終盤から(状態が)いい感じで来ていた。チャンスをもらって結果を残せた」と笑顔だった。  第4戦で意表を突いてセーフティーバントを成功させたのに続き、八回の犠打が野選を誘った。楽天からトレードで今季加入し、レギュラーシーズンは打率2割1分1厘だったが、短期決戦でラッキーボーイとなり「成長を感じている」と胸を張った。

◆西武の4番・山川はチームの敗退が決まり、「悔しいけど、力不足。(相手4番の)柳田さんはあんなに打ったのに、自分は大事なところで打てなかった」と責任を背負い込むように話した。  レギュラーシーズンは47本塁打で初のタイトルとなる本塁打王に輝いたが、「日本シリーズにも行けなかったし、何も満足感はない」と言う。「もっと打った人は(過去に)いる。足りないのは技術。練習するしかない」と強い向上心を示した。 秋山(2安打を放つもCSで不振が続き) 「結果が出るのが遅すぎた。レギュラーシーズンとは違って結果が全て」 源田(敗退に) 「相手が強かった。僕自身はプレーも気持ちも普段と変わらずにできた」

◆西武の辻監督は2点を返して1点差に迫った五回、内野安打で出塁した秋山が二盗に失敗した場面でリクエストを試みたが、結果は覆らなかった。  秋山の右足が二塁ベースに早く付いたようにも見えたが、スライディングで土が舞い上がり、映像でも確認は難航。約10分をかけて検証した責任審判員の森三塁塁審は「重大な場面なので何度も確かめた。確証ある映像がなかったので判定通りとした」と説明した。

◆西武の浅村は2-4の六回にソロを放つなど2打点を挙げたが、日本シリーズ進出を逃し「短期決戦で、チームとしてソフトバンクとの差を改めて感じた。悔しい」と負けを認めた。  今季、国内フリーエージェント(FA)権を取得した。レギュラーシーズンで32本塁打、127打点をマークし、打点王を獲得した強打の二塁手の去就に注目が集まる。「自分の今後の野球人生もある。じっくり考えたい」と話した。

◆今季限りで現役を引退する西武の松井はCSを出番なく終えた。試合後は胴上げされ、ファンへあいさつした後、遊撃の定位置付近でグラウンドに手をついた。「ライオンズに入団し、ショートとして育ててもらった。ありがとうございました、と思って」と感慨深そうに話した。  今季は外野手兼テクニカルコーチを務め、今後は指導者として球団に残る予定。若手の多いチームに「本当に頼もしい。優勝して自信になると思う」と期待を込めた。

◆ソフトバンクは東京都立川市のチーム宿舎で祝勝会を行い、CS突破を喜び合った。チームの選手会長を務める柳田の掛け声でビールかけが始まり、約20分で3000本が空になるはしゃぎぶりだった。

◆先発を任されたサブマリン、D2位・高橋礼(専大)は三回まで1人の走者も許さず、五回途中降板も6安打2失点の合格ピッチングだった。「僕は大舞台とは思っていないので。緊張もせずに投げられました」と、シーズン未勝利とは思えない強心臓ぶり。日本シリーズでの登板を問われると「投げられれば...。大舞台ですから頑張ります」と笑顔だった。

◆CS5試合で打率・150に終わった秋山は、「1番があれだけ塁に出られなければ、勝ちにつながるのは難しい」と悔やんだ。前日まで4試合で16打数1安打。この日は八回に左中間二塁打で出塁して4点目のホームを踏むなど2安打したが、時すでに遅かった。今季はリーグ最多安打(195)と優勝の原動力になったが「まだ納得できるものではない」とレベルアップを誓った。

◆パ・リーグ2位のソフトバンクは、10年ぶりにリーグを制した西武を6-5で下し、3連勝で対戦成績を4勝2敗(西武のアドバンテージ1勝を含む)として2年連続18度目の日本シリーズ進出を決めた。柳田悠岐外野手(30)が一回に先制の3点打、六回にソロを放つなど勝利に貢献。最優秀選手(MVP)に選ばれた。  東京・立川市のチーム宿舎で祝勝会が開催され、後藤オーナー代行、王球団会長、工藤監督のあいさつに続き、選手会長の柳田が乾杯の音頭を取った。初の大役で「ホテルの方々、ありがとうございます」とお礼も忘れずに「酒は飲んでも飲まれるな。でも、そんなの関係ない。きょうは浴びまくりましょう、いくでー!」と号令をかけ、ビールかけをスタート。ビール3000本に日本酒は4樽と一升瓶60本、480本のコーラで喜びを分かち合った。

◆中村が2点ビハインドの九回二死から意地のCS1号ソロ。森の122キロのカーブを捉え、左翼席中段に運んだ。CS通算9号は和田一浩、タイロン・ウッズ、内川を抜き、単独トップに立った。春先は不調に苦しみながら6月以降28本塁打と復権し、優勝の原動力に。1年を振り返り「いろいろありましたけど...っていうシーズンでした。少しだけゆっくりさせてもらいます」と話した。

◆終わってみれば"決勝点"は八回二死一、二塁から上林が右越えの適時三塁打でたたき出した2点だった。「1点差だったので打ててよかった。自分で自分を褒めたいです」。どこかで聞いたセリフも、充実感があるからこそ。昨年のポストシーズンは不振で、ベンチで寂しい日々を過ごしたが、今年はMVPの柳田を上回る10打点。驚異の勝負強さを身につけた若鷹が、主役の1人として日本シリーズに挑む。

◆待てども待てども審判団が出てこない。選手たちは待ちぼうけ。球場のざわめきは徐々に広がり、最後はブーイングに変わった。10分を超えたリプレー検証が、試合の流れを大きく変えた。  3点ビハインドで迎えた五回の西武の攻撃。森の右前適時打などで2点を返し、二死から内野安打で出塁した秋山が、源田の打席でスタートを切った。甲斐の二塁送球でアウトと判定されたが、微妙なタイミング。辻監督がこの日2度目のリクエストを要求し、長いリプレー検証の末、最終的に判定通りとなった。  「何パターンかじっくり見ましたが、セーフに覆すだけの確証ある映像がなかったということで判定通りとしました」と森責任審判。検証時間は原則5分以内と決められているが、スライディングの際に土が舞い、タッチの瞬間が映っていなかったことが判断に迷った原因だったようだ。西武は反撃及ばずCS敗退。今季から導入されたリクエスト制度が、勝負のあやとなった。

◆ソフトバンク・工藤公康監督(55)は"おきて破り"の采配で、すごみを見せた。  「苦渋の決断です。勇気が要りました」  19日の第3戦で不振に苦しむ松田宣を先発メンバーから外し「7番」にファイナルステージから合流した内川を入れた。王手をかけたこの日は、内川も松田宣も外して長谷川勇をスタメン起用。最強チームを背負ってきた3人の男を"日替わり"で起用する決断が見事に的中した。  「よく踏ん切ったし、勝利につながったから良かった。いい決断だった」。王貞治球団会長も、現役時代に計11度の日本一を経験した「優勝請負人」のタクトをたたえた。  思い切った選手起用も全てコーチとの相談のたまもの。工藤監督は「みんなに相談しながらです」とうなずいた。周囲の声に耳を傾け、時には報道陣にも「力を貸して」と口にした。2年連続の頂点へ『鷹の逆襲・完結編』が間もなく始まる。 (上田雅昭)

◆西武はソフトバンクに5-6で敗れ、10年ぶりの日本シリーズ進出を逃した。5月に国内フリーエージェント(FA)権を取得した浅村栄斗内野手(27)に対し、最大級の評価を与えて慰留に動くことが判明。既に最低ラインとして3年総額12億円を提示しており、他球団の動向次第で条件を見直す方針であることが分かった。また、今季で2年契約が満了する辻発彦監督(59)は、来季の続投が決定。新たに2年契約を結ぶことが発表された。  悲願の日本シリーズ進出を逃し、浅村の目から涙があふれた。  「優勝してソフトバンクに勝ち越した。同じ相手にクライマックスで負けるっていうのが辛い。このチームで日本一になりたかった」  昨季から主将を務める浅村は今季球団新記録の127打点を挙げ、自身2度目の打点王に輝いた。得点圏打率はリーグ2位の・369。無類の勝負強さで「獅子おどし打線」を牽引(けんいん)し、10年ぶりのリーグ優勝に導いた。  この日も六回に追撃のソロを放つなど2打点をマーク。ファイナルステージ全5試合で安打を放ち、計6打点を挙げた。悔しさを感じながらも「個人として、やり残したものはない。満足いく成績で、多少はチームを引っ張って来られたと思う」とうなずいた。  球団にとって、主将の引き留めは今オフの最重要課題だ。浅村は試合後、FA権の行使について「終わったばかりなので、今どうこうではないですけど、自分の今後の野球人生もある。まずはライオンズの球団の方と話して、そこからゆっくり考えたい」と揺れる胸中を明かした。  関係者の話を総合すると、レギュラーシーズン終了後に話し合いの場が持たれ、球団側は最低ラインとして3年総額12億円を提示したもよう。今後、本格的な交渉に入るが、ソフトバンク、楽天などが水面下で獲得調査に動いており、条件を大幅に見直す可能性もある。2013年オフに中村と結んだ球団最高額となる4年総額20億円規模の大型契約も視野に入る。  悲願達成には不動の3番打者の存在が欠かせない。球団は全力で浅村の引き留めを図る。 ★フリーエージェント(FA)  資格を満たした選手がどのチームとも自由に契約できる制度。145日以上出場選手登録されたシーズンを1年として計算。国内FAは計8年(ドラフトで2008年以降に入団した大学生・社会人選手は7年)に達すると資格を取得でき、権利を行使することによってNPB球団と契約できる。海外FAでは9年で国内外球団と契約できる。国内球団に移籍した場合には、移籍先球団は前球団に対し年俸ランクに応じて金銭もしくは選手で補償しなければならない。行使した選手の権利再取得は4年後。

◆あと1点、届かなかった。試合後のセレモニー。マイクの前に立った辻監督は両手で顔を覆い、数秒間の沈黙を経て震える声を絞り出した。  「悔しいです。まさか、2018年シーズンが終わるとは考えてもいませんでした」  10年ぶりの悲願まで道半ば。あふれる涙をこらえられなかった。  王手をかけられて迎えた崖っぷちの戦いで、先発・ウルフが柳田に3点二塁打を浴び、いきなり3失点。白星を挙げた18日の第2戦以外は全て先制点を献上する悪い流れを止められなかった。  それでも3点を追う五回、前日20日に左手首の打撲を負った森が反撃の右前適時打、六回に浅村、九回二死で中村がソロを放ち、1点差まで詰め寄った。あと一歩及ばなかったが、指揮官は「点を取られても取り返して最後まで食らい付く。うちらしい試合だった」と奮闘した選手たちをたたえた。  就任1年目は2位でチームを4年ぶりのCSに導き、今季は10年ぶりのリーグ優勝をもたらした。試合後、辻監督は後藤オーナーから続投を要請されて受諾。新たに2年契約を結んだ。契約延長時は単年が球団の"慣例"だけに、高い評価の表れといえる。  「期待していただいている。常勝チームになるように頑張りたい。課題は投手力。うちも立て直して強くならないと」と辻監督。レギュラーシーズンで1度も首位を譲らず、6・5ゲーム差をつけた相手に最後は敗れた。来年は必ず笑顔で終わる。強い思いを胸に、29日から秋季練習をスタートさせる。 (花里雄太) CSは打率・188、2本塁打だった西武・山川 「悔しいけど、力不足。(相手4番の)柳田さんはあんなに打ったのに、自分は大事なところで打てなかった」 敗退に西武・源田 「相手が強かった。僕自身はプレーも気持ちも普段と変わらずにできた」

◆パ・リーグ2位のソフトバンクは、10年ぶりにリーグを制した西武を6-5で下し、3連勝で対戦成績を4勝2敗(西武のアドバンテージ1勝を含む)として2年連続18度目の日本シリーズ進出を決めた。柳田悠岐外野手(30)が一回に先制の3点打、六回にソロを放つなど勝利に貢献。最優秀選手(MVP)に選ばれた。2年連続の日本一を懸けた広島との日本シリーズは、27日に敵地・マツダスタジアムで開幕する。  ナインがベンチを飛び出し、一斉に集まった。今季屈辱にまみれた敵地でやり返し、いつも以上に喜びを爆発させた。強力打線に打ち勝った猛打の主役は柳田。最終戦も4打点を挙げ、2位以下から日本シリーズに進出する球団史上初の"下克上"にチームを導いた。  「勢いに乗せてもらいました。チームのために点を取るのが自分の仕事。いい仕事ができた」  まずは一回無死満塁で左中間へ走者一掃の二塁打を放ち、先制の3点をもたらした。1点差の六回先頭では右中間席へのソロでリードを広げた。  6点を挙げたチームは、1963年の日本シリーズ(7試合)で40得点した巨人を超え、ポストシーズン新記録の44得点を5試合でたたき出した。63安打もCS新記録。中でも、柳田はファイナルステージ5試合で打率・450(20打数9安打)、8打点をマークし、ラスト2試合で本塁打を連発と格別の輝きを放ち、文句なしにMVPを獲得した。  今季1度も西武からリーグ首位を奪えなかったソフトバンクだが、敵地で3勝9敗と負け越したことが大きな要因となった。柳田も敵地で打率・192(26打数5安打)、0本塁打と低迷。直接対決で痛恨の5連敗を喫した9月には、打球が頭部を直撃して大事な試合で欠場を強いられるなど悔しい思いを残した。  しかし、大舞台で最高のリベンジ。工藤監督は「悔しい思いをしっかり持ってくれたのが一番」と選手たちをたたえ、主砲も「悔しい思いをしたし、個人的にもメットライフドームでいい成績を残せていなかったので」とうなずいた。  秋山幸二前監督(56)に授かった"金言"が、活躍の礎となった。「あまり(バットを)変えない方がいい。自分の調子が悪いか、バットが悪いか分からなくなる」。CS中も打撃の微調整を繰り返す一方、いろいろなものに手を出してきたバットの材質を終盤戦でメープルに固定した。信じて決めた相棒で快音を連発した。  夏場には球場のグラウンドキーパーのために食事会を開くなど、周囲への感謝も忘れない。MVPの賞金100万円を受け取った選手会長は「僕でいいのかな。皆さんのおかげなので、みんなに還元したい。特に裏方さんに」と笑った。  「(広島は)生まれ育った街。日本シリーズでカープと戦えるなんて想像できなかった。かみしめて頑張ります。工藤監督を胴上げしたいです」  広島出身で広島商高、広島経大に進み、元々はカープの大ファン。球団としても、広島との日本シリーズは史上初の組み合わせとなる。2年連続の日本一と故郷への恩返しへ。"ギータ"が最後の大仕事を見据えた。 (安藤理) 一回無死一、二塁から一塁前へバント安打を決め、続く柳田の3点二塁打を呼んだソフトバンク・グラシアル 「サインではない。自分の判断。あの場面はどういうプレーが必要なのかを考えた」 3打数3安打で、ファイナルステージで計12打数7安打と大当たりだったソフトバンク・西田 「シーズン終盤から(状態が)いい感じで来ていた。チャンスをもらって結果を残せた」

◆レギュラーシーズンは西武が制した。しかし、地力はソフトバンクが上であることを改めて感じた5試合だった。  シーズンでは故障者が続出して苦戦を余儀なくされたが、その間に重責を任されてきた選手がここにきて一本立ちした。特筆すべきは救援陣だろう。サファテ、岩崎を欠く中で森、加治屋、石川らが経験を積み、安心して終盤を任せられるようになった。我慢しながら彼らを育て上げた工藤監督の手腕は見事だ。  故障者が続々と復帰した野手の充実ぶりも著しい。なにしろ内川、松田宣が先発を外れるのだ。他球団ならレギュラーを張れる選手が、ほかにもベンチに多数控えている。選手層は圧倒的だ。  西武は第1戦を落としたのが痛かった。エースの菊池で勝てば乗っていけただろうが、逆にソフトバンクの底力を肌で感じる試合になった。来季リベンジを果たすには、投手陣の整備が何よりも必要だ。とはいえ、一度も首位を譲ることなくゴールしたシーズンの戦いは圧巻だった。この敗戦が糧になるはずだ。  日本シリーズはソフトバンクと広島の激突になった。ともに打力、機動力に秀でたチーム。ポイントは投手になるだろう。ソフトバンクでは、この日先発して試合をつくった高橋礼が面白い。数少ない右のアンダーハンド。広島打線は戸惑うのではないか。 (サンケイスポーツ専属評論家)