1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | 安 | 失 | 本 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
巨人 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 6 | 0 | 0 |
ソフトバンク | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | X | 4 | 5 | 0 | 2 |
勝利投手:松本 龍憲(1勝0敗0S) (セーブ:森 唯斗(0勝0敗1S)) 敗戦投手:畠 世周(0勝1敗0S) 本塁打 |
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◆ソフトバンクが4連勝で4年連続の日本一に輝いた。ソフトバンクは1点を先制された直後の1回裏、柳田の2ランで試合をひっくり返す。続く2回には甲斐が2ランを放ち、リードを広げた。投げては、7投手の継投で1失点。最後は、守護神・森が締めた。なお、MVPにはソフトバンク・栗原が選ばれた。
◆3連敗で迎えた巨人は大きく打線を組み替えた。若林晃弘内野手(27)を1番で起用するなど、4選手を今シリーズ初のスタメン起用。坂本勇人内野手(31)が2番、丸佳浩外野手(31)が3番に入り、8月23日広島戦以来の「サカマルオカ」の並びが復活した。
◆日本シリーズ第5戦に先発が予想される巨人菅野智之投手(31)が、第4戦でベンチ入りした。第1戦に先発し、6回4失点で降板。球数は87球だった。試合後、広報を通じ「次のチャンスがあると思うので、それに向けてしっかりと調整します」とコメント。中4日で第5戦に調整を進めたが、3連敗と崖っぷちの状況だけにベンチ入りし、チームを鼓舞する。
◆巨人が今シリーズ初の先制点を奪い、4戦目にして初めてリードした。初のスタメン起用となった1番若林晃弘内野手(27)が右中間二塁打で出塁。続く2番坂本勇人内野手(31)が和田の121キロを捉え、左翼フェンス直撃の適時二塁打で先制した。 3連敗で迎えた巨人は大きく打線を組み替えた。4選手を今シリーズ初のスタメン起用。坂本勇人内野手(31)が2番、丸佳浩外野手(31)が3番に入り、8月23日広島戦以来の「サカマルオカ」の並びが復活していた。
◆巨人中島宏之内野手(38)が9球粘った末に空振り三振に倒れた。空振りとファウルで3球で追い込まれたが、1球のボールを挟んだカウント2-2から9球連続ファウル。迎えた14球目は、低めの130キロチェンジアップにバットが空を切った。
◆ソフトバンク柳田悠岐外野手(32)が鮮やかな逆転アーチだ。1回、巨人に1点を先制された直後の攻撃。1死二塁で巨人先発畠の内角フォークを豪快に引っ張った。打球は瞬く間に右翼席へ。1号2ランで試合をひっくり返した。「チャンスでしたし、初球から集中して打ちにいくことができました。先制されて、すぐに逆転できて良かったです」。 日本シリーズで3年連続弾。主砲らしい働きで、先制で勢いに乗りたい巨人の出ばなをくじいた。チームはポストシーズン21試合連続の本塁打。日本一に王手をかけた一戦も、容赦なく破壊力を見せつけた。
◆巨人畠世周投手(26)が2回途中4安打4失点でKOされた。 1回に打線が今シリーズ初の先制点を奪うも、すぐに逆転を許した。1回1死から中村晃に二塁打を浴びると、続く柳田に初球139キロのフォークをフルスイングされ、右翼スタンドへ逆転2ランを運ばれた。 2回2死一塁からは甲斐に148キロ直球を左翼席へ。登板前日には「強い気持ちで1球1球を投げ込みます。自分が持っているものを全て出したい」と意気込んでいたが、流れを引き寄せることはできなかった。 2番手で大江がマウンドに向かった。
◆ソフトバンク甲斐拓也捕手(28)が巨人先発畠にKO弾を見舞った。1点リードの2回2死一塁。速球をフルスイングして、左翼ポール際に2号2ランを突き刺した。「何とかしようという気持ちだけで打ちました。追加点を取れて良かったし、最後まで集中していきます」。 この一撃で敵将の原監督もたまらず2番手大江に継投。リードを3点に広げる、値千金の本塁打になった。22日の第2戦以来のアーチ。日本シリーズでの球団捕手の複数本塁打は03年ダイエー城島(4本塁打)以来。シーズン11発のパンチ力が光った。
◆ラグビー元日本代表WTBの福岡堅樹(28=パナソニック)が日本シリーズ第4戦の始球式を務めた。 丁寧な投球フォームから、力のあるボールをノーバウンドで捕手に投げ込んだ。「マウンドに立って投球する夢がかない、大変うれしく感じています。プロ野球最高峰の舞台で、選手や観客の皆さんから大きなエネルギーをもらえたので、僕もラグビーを盛り上げていきたいと思います」とコメントした。
◆ソフトバンク先発の和田毅投手(39)が2回、1失点で降板した。初回、先頭若林、2番坂本と連続二塁打を浴び、巨人に1点先制を許した。6番中島には14球粘られる(結果は空振り三振)など、初回だけで35球を費やした。 2回は1死二塁のピンチも無失点に切り抜けたが2イニングで48球を投げ降板となった。「大事な試合を任せてもらったのに、2イニングしか投げる事ができずに申し訳ない。その気持ちしかありません」とコメントに悔しさをにじませた。 味方が2回までに4点を援護したが、短期決戦の鬼・工藤公康監督(57)は早めの継投策を決断。昨年、和田は第4戦で5回0封で4連勝に貢献したが、今年は短いイニングでの交代となった。
◆巨人戸郷翔征投手(20)は第1戦、第2戦に続いて今シリーズ3試合目の登板となった。 3回2死一、二塁、2番手大江が連続四死球を与え、右打者デスパイネの打席となった場面で3番手としてマウンドへ上がった。四球で2死満塁とするも、続く牧原を一ゴロに抑え無失点で切り抜けた。 戸郷は今季先発として9勝6敗も今シリーズは中継ぎとしてチームを支えていた。
◆ソフトバンク14年ドラフト1位の松本裕樹投手(24)が6年目で日本シリーズ初登板した。2番手で3回からマウンドへ。5回途中まで2回2/3を2安打無失点に抑え、先発和田が2回で降板した後をしっかり抑えた。 最速153キロの直球とカーブを主体に3回は2番坂本からを三者凡退。「準備はできていました。(降板する時の)和田さんの悔しそうな姿が見えたので、和田さんの思いも感じながら投げました」と頼もしかった。
◆巨人チアゴ・ビエイラ投手(27)が今季自己最速の164キロを計測した。 3点ビハインドの6回、4番手で登板。2死から牧原へ投じた3球目のボールと空振り三振を奪った5球目に2度、記録した。日本シリーズでは最速で、日本球界では大谷翔平(日本ハム)が16年CSで計測した165キロに次ぐ歴代2位となった。
◆巨人菅野智之投手(31)がブルペンで投球練習を行い、中3日でのリリーフ登板に備えた。 千賀と投げ合った第1戦では、6回6安打4失点。87球で降板し「次のチャンスがあると思うので、それに向けてしっかりと調整します」。原監督も「トータルでというところを考えての最善策」と次回の早期登板を示唆していた。 3点ビハインドの7回2死一塁、セットアッパーの中川が5番手でマウンドに上がるなど、投手陣一丸となって戦っている。
◆巨人大城卓三捕手(27)がソフトバンク周東の二盗を阻止した。 7回2死一塁、中村晃への2球目、今季50盗塁を決め盗塁王に輝いた周東の二盗を、この回から守備に就いた大城がストライク送球で防いだ。
◆ソフトバンクが2年連続で巨人を4連勝で下し、前身の南海、ダイエー時代を含めて4年連続11度目の日本一を決めた。日本シリーズ4連覇はパ・リーグ史上初めて。 1点を先制された直後の初回、柳田悠岐外野手(32)が畠から日本シリーズ3年連続本塁打となる逆転の2ランを放った。2回は甲斐拓也捕手(28)の2ランで突き放した。先発の和田毅投手(39)を2回3安打1失点で交代し、その後は6投手による継投でリードを守った。 工藤公康監督(57)は就任6年で日本シリーズに5度進んで、すべて優勝。現役時代は14度出場して11度優勝しており、通算16度目の日本一となった。これで選手で4度、監督で11度の川上哲治(巨人)を超えて単独2位となった。最多は選手で6度、監督で11度、合わせて17度の森祇晶(西武)。 新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕は6月まで遅れ、8月にはソフトバンクも長谷川勇也外野手(35)が感染した。試合中止もあったが、その後は感染者を出すことなく戦い抜いた。 日本リーズ12連勝、ポストシーズン16連勝でともに自軍の持つプロ野球記録を更新して、コロナ禍の特殊なシーズンを歓喜で締めくくった。
◆8年ぶりの日本一を目指した巨人の挑戦は、2年連続の4連敗で幕を閉じた。1安打完封負けを喫した前夜から、今シリーズ初スタメンを4人起用するなど大幅にメンバーを入れ替えて臨んだ。 1番に起用された若林晃弘内野手(27)は2安打するなど見せ場は作った。1回には、若林を二塁に置き、2番起用の坂本勇人内野手(31)が左翼フェンス直撃の適時二塁打。今シリーズ初の先制点を奪った。だが、先発畠が2回途中までに柳田、甲斐に2本の2ランを浴びるなど踏ん張り切れず、すぐさま逆転を許した。 3回2死一、二塁から3番手でマウンドに上がった高卒2年目の戸郷が、2回1/3無安打4奪三振無失点と試合を立て直すなど、中継ぎ4投手が無失点と踏ん張ったが、時既に遅し。打線は3回から継投に入ったソフトバンク投手陣の前に得点を奪えず。9回は4番岡本からの好打順だったが、無得点に終わった。
◆巨人は初回に1点を先制。ソフトバンクは直後に柳田の1号2ランで逆転。2回にも甲斐の2号2ランであっさり突き放した。 巨人、ソフトバンクともに継投に入った。ソフトバンクは3回から6回まで無安打無得点。巨人も2安打を放ったがホームが遠い。 ソフトバンクが2年連続で巨人を4連勝で下し、前身の南海、ダイエー時代を含めて4年連続11度目の日本一を決めた。日本シリーズ4連覇はパ・リーグ史上初めて。 ソフトバンク松本が1勝目、森が1セーブ目、巨人畠が1敗目。
◆敗れた巨人がシリーズを通じてソフトバンク投手陣の前に沈黙し、不名誉な記録を数多く更新する結果となった。 4試合の合計得点数4は05年阪神が4戦合計「33-4」で敗れた際に記録した数と並んで最少。 安打数も05年阪神、07年日本ハム、19年巨人の22安打を下回る16安打だった。 チーム打率は1割3分2厘で、07年日本ハムが記録した1割4分7厘を下回り最低。 三振数も計41個で、19年巨人が記録した4試合でのシリーズ最多三振35を更新した。
◆高卒2年目の巨人戸郷翔征投手が敢闘選手賞を受賞した。今季9勝を挙げながら日本シリーズでは、チームトップの3試合に中継ぎ登板。5回2/32安打2失点、8三振を奪った。 「今年、1年間ローテーションを守ることができた経験を生かせた。来年は日本一を必ずとれるように頑張ります」と来季、頂点を目指す。
◆SMBC日本シリーズ2020の第4戦は3連勝のソフトバンクが本拠地ペイペイドームで巨人と対戦し4-1で勝利。4年連続の日本一を達成した。
◆ソフトバンク甲斐拓也捕手が2回にシリーズ2号2ラン。甲斐は2本とも打順9番での1発。9番打者のシリーズ2本塁打は、73年堀内(巨人)18年安部(広島)に次いで3人目で、パ・リーグの9番打者では初めて。 過去2人はともに1試合2発で、複数試合で本塁打を打った9番打者は甲斐が初めて。
◆ソフトバンク栗原陵矢捕手が日本シリーズMVPを獲得した。第1戦では巨人菅野から先制2ランを打つなど3安打4打点。第2戦ではシリーズタイ記録の1試合4安打を記録し、4戦でチームトップの打率5割を残した。 「最高の気分です。先輩方に、少しご飯でもおごってあげようかな」と笑いを誘い「本当に元気をもらいました。皆さんに元気を5倍、10倍...元気100倍、アンパンマン!」とモノマネでインタビューを締め、盛り上げた。また、ムーア、中村晃、柳田が優秀選手に選ばれた。 ◆日本シリーズ・ニッカンMVP査定 栗原と柳田が6ポイントで同点だった。栗原は<1><2>戦で8打数7安打。特にエース菅野からの4打点は光った。打率5割、出塁率5割8分8厘はチームトップ。今シリーズの勝利打点は柳田2、栗原と中村晃が各1で、柳田がチーム最多だった。
◆巨人は日本シリーズで13年<7>戦から9連敗。シリーズ9連敗は巨人が58~61年に続けたワースト記録に並んだ。原監督のシリーズ9連敗は水原監督の10連敗(58、59年巨人で8連敗、62年東映で2連敗)以来2人目で、巨人の監督では水原監督の8連敗を更新する最多となった。 ▼巨人のチーム打率1割3分2厘、シリーズ16安打はワースト新。41三振も4試合制では最多。チーム4得点は4試合制で05年阪神に並ぶ最少だった。
◆巨人坂本勇人内野手が今シリーズチーム初の先制打を放ったが、勝利に結び付かなかった。 1回無死二塁、左翼フェンス直撃の適時二塁打も以降は2三振など無安打。「去年の悔しい思いを今年は何とかやり返したいという気持ちで臨みましたが、力足らずが結果に表れてしまいました。期待に応えることはできませんでしたが、来年チームとして成長した姿を見せられるように頑張ります」。敗戦を受け止めながらも、前を向いた。
◆ソフトバンク栗原陵矢捕手(24)が日本シリーズMVPに選ばれた。第1戦で巨人菅野から先制2ランを放つなど4試合で14打数7安打1本塁打4打点と活躍した。 表彰選手は以下の通り。 ▼最高殊勲選手(賞金700万円、トロフィー)=栗原陵矢(ソ) ▼優秀選手(賞金100万円、トロフィー)=ムーア(ソ)、柳田悠岐(ソ)、中村晃(ソ) ▼敢闘選手(賞金100万円、トロフィー)=戸郷翔征(巨)
◆日本シリーズの優秀選手としてマット・ムーア投手(31)、柳田悠岐外野手(32)、中村晃外野手(31)の3人が選ばれた。 ムーアは第3戦に先発し7回を無安打に抑える好投で勝利投手となった。柳田は第4戦では1回に決勝弾となる逆転1号2ランを放つなど4試合で14打数6安打、打率4割2分9厘、1本塁打3打点と活躍。中村晃は第3戦で3回に決勝弾となる先制2ランを放つなど15打数5安打、打率3割3分3厘、1本塁打4打点と打線を引っ張った。
◆ソフトバンクが完勝で4連覇を果たした。工藤公康監督(57)の本拠地での優勝監督インタビュー一問一答は以下の通り。 -おめでとうございます 工藤監督 どうもありがとうございます。ファンの皆様、ありがとうございます。 -4連勝だった 工藤監督 正直、ホッとしています。それと同時にうれしくてうれしくて。地元福岡で日本一になることができて最高です。 -柳田、甲斐に本塁打が出た 工藤監督 このシリーズで初めて先制されたんですけど、柳田君がすぐにホームランを打ってくれて、あれで一気にベンチの雰囲気も変わりました。選手の勢いも変わりました。これでいけるんじゃないかなという雰囲気にさせてくれました。ナイスホームランだったと思います。 -甲斐がシリーズ通じて巨人を抑えた 工藤監督 ホントね、甲斐君のリード、素晴らしかったなと思います。そしてピッチャー陣もよく甲斐君のリードにしっかり応えてくれて、シーズン以上の投球をしてくれた。本当にみんな、よく頑張ってくれた。 -4年連続日本一はパ・リーグでは史上初めて 工藤監督 昨年、日本一になって4連覇が目標になりました。その目標に対して選手たちも本当に今年は苦しいシーズンのなかでの始まりでしたけれども、そういうなかでも一生懸命プレーをしてくれ、そして勝ってくれ、そしてリーグ優勝してくれたことで、また大きな目標に向かって、4連覇という目標が本当に現実味を増してきたなかで、この日本シリーズ、こんな素晴らしい戦いをしてくれた選手たちに本当に感謝です。 -今季はプロ野球がファンに力を与えた 工藤監督 本当に今年、多くの方の支援がなくては、我々は開幕することすらできなかったと思います。医療従事者の皆様、NPBの皆様、球団の皆様、そして、ファンの皆様が我々に元気を与えてくれ、そして勇気を与えてくれたことが何よりも勝利につながったと思います。ファンの皆様とともにこうして日本一になったことの喜びを一緒に味わうことができて僕は本当に幸せです。1年間、応援、ありがとうございました。
◆05年に誕生したソフトバンク球団は4年連続の日本一で16年目のシーズンを終えた。一塁ベースコーチの本多雄一内野守備走塁コーチ(36)は選手、コーチとしてこの間、7度の日本一に貢献。ルーキーイヤーから活躍した「いぶし銀」がホークスの強さの秘密、黄金時代づくりにまい進する思いを語った。本多コーチはソフトバンクのユニホームを着続けてきた。球団誕生2年目の06年に入団。ルーキー時代からチームを背負い、2度の盗塁王に輝いた。選手として11、14、15、17、18年、コーチとしては19、20年と日本一をつかんだ。 本多コーチ 入団したころから比べると周囲の見方が変わってきたのを感じる。野球界の技術も雰囲気も変わってきた。未来もどんどん変わっていくんだろうなと思う。 16年間で大きく変わってきたのが選手間の空気だという。「昔は先輩と話すこともなく、背中を見て盗んでいた。今は先輩が後輩を優しく指導する」。今季、今宮が故障で離脱後は周東、川瀬、牧原が試合に出ながらポジション争いをしたが、ミスも出た。そんな時、ベテラン野手たちが励まし続けた。「そういうことができるホークスだから強いのだと思います」と分析した。 入団したころは王球団会長が監督だった。「会話はあまりしていないんですが『足が速いからそれを生かせ』『パンチ力があるから続けろ』と、これしか覚えてない。でもこれをひたすら続けました」。秋山監督からは「レギュラーの自覚を持つこと」を教わった。現在もレギュラーが休まずに活躍し、それが若手を育てていると感じている。「あいつがやっているからオレは負けない。それの積み重ねが大事。うちのチームはそれがあるから強いんだと思う」。そして工藤監督の下、指導者として自分も成長を欲している。「選手時代にはなかった考えがコーチの立場になって分かることがある。これからの野球人生にいかしたい」。毎日その日のことをノートに箇条書きで書き留めてきた。その姿勢はこれからも勝ち続けていく使命を背負うチームだから必要となる。 本多コーチ 僕らは勝つため、優勝するための常勝軍団。これからもそこを求めないといけない。失敗も成功もあるが、1人1人が毎日、目的意識を持ってやるという認識をもってほしい。技術を教えるのは難しいが、自分の意識ひとつで変わるということは、口うるさく言っていきたい。 巨人を圧倒して4年連続日本一。「セ・リーグ覇者相手にパ・リーグ覇者が負けるわけにはいかない。これからも向かっていく姿勢は持つべきです」。競争の中にも上下の助け合いもある。ソフトバンクの良き伝統を体感し続けてきた言葉には重みがある。【浦田由紀夫】
◆最強ソフトバンク時代だ! 巨人を2年連続の4連勝で下し、前身の南海、ダイエー時代を含めて4年連続11度目の日本一に輝いた。主砲の柳田悠岐外野手(32)が初回に逆転2ランを放ち、これが日本一決定弾となった。昨年オフにメジャー挑戦の夢を断念し、7年契約を結んだ。38歳になる契約最終年まで勝ち続ければ、あの巨人の「V9」を超える「V10」。新たな伝説を超人が引っ張っていく。ついに真打ち登場だ。柳田が今シリーズ1号本塁打をかっ飛ばし、巨人の希望を砕いた。1回1死二塁で畠の初球フォークをとらえ、弾丸ライナーで右翼席へ。「チャンスでしたし、初球から集中して打ちにいくことができました」。初回に今シリーズ初めて先制を許したが、20分後に逆転2ラン。力の差を見せつけた。 日本シリーズでは18年の初本塁打から3年連続のアーチとなった。今年は初戦こそ無安打も、第2、第3戦で2安打ずつ。追い込まれてから技ありの軽打あり、豪快な中越えの長打ありと、柳田らしさを存分に発揮した。シリーズ開幕前には「そこで戦えるチームは2チームしかいない。そういう場に立てることに、感謝してプレーしています。泣いても笑っても残り少し。悔いのないように今年を締めくくりたい」。大舞台で野球ができる喜びを感じ、楽しむスタンスで普段通りのプレーにつなげた。パ・リーグ初の4年連続日本一を勝ち取り、激しいハイタッチの嵐で髪が乱れるほどに喜び合った。 「運命」が柳田の未来を変えた。昨年は左膝裏のケガで長期離脱し、海外フリーエージェント(FA)権の取得が最短で21年にまで遅れた。「流れとか運命とかを信じるタイプ」。憧れだったメジャー挑戦の夢を封印し、オフにソフトバンクと7年契約を結んだ。当初は「野球は36歳まで」と話したこともあった。理由は「やりたいことが他にもいろいろあるんよ」。独特の感性を持つ柳田らしい。 だが、7年契約を満了すれば38歳までプレーすることになった。「フィニッシュです。そこまで決まっている」と、契約満了後は現役引退も頭にある。"ラストイヤー"まで日本一を続ければ、前人未到の「V10」だ。巨人以来の「V9」を本気で狙うチームの中心に、柳田がいる。【山本大地】
◆巨人岡本和真内野手(24)が敗戦を受け止め、来季の巻き返しを誓った。 「昨年、4連敗してやり返そうという気持ちで臨んだ日本シリーズでしたが、まだまだいろんな意味でやらないといけないものがあると感じました。力足らずで、こういう結果なのが現実。来年また優勝して、やり返したい」と悔しさをかみしめた。 今季は自身初のタイトルとなる本塁打、打点の2冠に輝いた。今シリーズでも不動の4番として全試合で「4番三塁」で先発出場したが、13打数1安打に終わった。「僕がもっと打てばチームが乗ったと思うし、勝てることはできたと思います。この思いを絶対に忘れず、来年を迎えたい」と前を向いた。 最後はファンに向け「コロナの影響で無観客もあり、人数も制限されて、いつもと違った苦しいシーズンだったと思います。応援は力になりました。1年間ありがとうございました」と感謝を口にした。
◆目を背けたくなるような現実を直視するしかない。セ・リーグ覇者として迎えた日本シリーズで4戦全敗。昨季からソフトバンクに8連敗。2シーズン連続の4連敗は、プロ野球史上初の屈辱になった。 3点を追う9回。ベンチで仁王立ちする原監督は、眉間に深いしわを寄せ、厳しい表情で戦況を見つめた。1死一、二塁から田中俊が見逃し三振に倒れ、代打に亀井を送る。苦楽をともにしたベテランの打球が力なく二塁手の頭上に飛ぶと、原巨人の20年シーズンが終わった。 「打線がなかなか機能しなかった。今日も1点。(第1戦から)1点、2点、0点、1点か。やっぱり攻撃型のチームという中で、攻撃が機能しなかった」 負ければシーズン終了の崖っぷちで、大幅にオーダーを変更した。クリーンアップを解体し、2番坂本、3番丸、4番岡本の「サカマルオカ」の並びを8月23日広島戦以来、3カ月ぶりに復活させた。1回は無死二塁から、坂本の左越え二塁打で今シリーズ初めて先制した。 ベンチのムードは最高潮に達したが「2点目」が遠い。無死二塁から丸が一邪飛に倒れると、後続が倒れ追加点を奪えなかった。その裏、ソフトバンク柳田の一振りで瞬時に逆転を許した。2回にも甲斐に2ランを浴びて3点差に広げられると、鉄壁なソフトバンク投手陣を打ち崩す力は備わっていなかった。 4試合で計4得点は歴代ワーストタイ。原監督は「私を含めて、コーチ、選手、まだ一回りも二回りも大きくならないといけないね。具体的にはまだ整理はついてないけど。我々は必要としているものがあるということですよ。1人1人がね」と言った。開幕が約3カ月遅れた特別なシーズンは、大きな喜びと確かな課題を残して幕を閉じた。【前田祐輔】
◆SMBC日本シリーズ2020の第4戦は3連勝のソフトバンクが本拠地ペイペイドームで巨人と対戦し4-1で勝利。4年連続の日本一を達成した。ソフトバンク孫正義オーナーは「最高ですね。打つべき人が打って、投げるべき人が投げて。チームが本当に一丸となってすばらしいチームになった。やる以上は勝たなきゃいかん。監督も選手も一心で頑張ったと思う。工藤監督にはご苦労さま、感謝申し上げますと言った。すばらしいチームワークで一生懸命にプレーをしていただいた。4連覇があるということは次は5連覇を目指して頑張ってほしい」。
◆ソフトバンクが2年連続で巨人を4連勝で下し、前身の南海、ダイエー時代を含めて4年連続11度目の日本一を決めた。日本シリーズ4連覇はパ・リーグ史上初めて。ソフトバンクの周東佑京内野手の足が最後に封じられた。7回に死球で出塁すると続く中村晃の2球目に二盗を試みたが、巨人捕手大城に刺された。4戦すべて1番打者としてフル出場したが、巨人のマークは厳しく16打数1安打、打率0割6分3厘とバットは抑え込まれたが、第1戦では8回に二盗を決めた。「何もできなかったのが、素直にある。勝ったことはうれしいが個人的には悔しい」と、この経験を来年への糧とする。
◆ソフトバンクが2年連続で巨人を4連勝で下し、前身の南海、ダイエー時代を含めて4年連続11度目の日本一を決めた。日本シリーズ4連覇はパ・リーグ史上初めて。ソフトバンクの守護神・森唯斗投手がヒヤヒヤながら9回を締めた。3点差でバトンを受けたが先頭岡本を歩かせ、1死後中島に右前打。1死一、二塁と1発出れば同点のピンチを招いた。だが田中俊を147キロの直球で見逃し三振、最後は代打亀井を二飛に仕留めた。「最後の最後まで不甲斐ない投球が続いた。でもチームが勝てたことは本当によかった」とホッとした様子だった。
◆工藤ソフトバンクが新伝説を作った。日本一の瞬間、工藤公康監督は(57)はベンチで両手を顔の前でしっかりと握りしめた。巨人に対し全てで力の差を見せつけた。日本シリーズ12連勝、ポストシーズン(PS)16連勝はともにプロ野球記録を更新。新型コロナウイルス感染予防のためリーグ優勝と同様に胴上げはなかったが、グラウンドで会心の笑みを浮かべて万歳三唱した。優勝監督インタビューで声を弾ませた。 「うれしくてうれしくて地元福岡で日本一になれて最高です。選手たちも苦しいシーズンだったが、最後はこんな素晴らしい戦いをしてくれて感謝してます」。 就任6年で日本シリーズに5度進んで、すべて優勝。現役時代は14度出場して11度優勝しており、通算16度目の日本一となった。これで選手で4度、監督で11度の川上哲治(巨人)を超えて単独2位となった。 「チームが連勝していると『自分で止めたくないな』って思っちゃう。プレッシャーだよね。でもそのプレッシャーは嫌じゃないんだよ」 現役時代、勝ち続けることへの重圧を力に変えてきた。西武、ダイエー、巨人で頂点を味わった。西武の黄金時代を担った左腕は、勝ち続ける使命を背負った。指導者でも同じ。パ・リーグの雄となっていたソフトバンクの監督を引き受け、強いプレッシャーの中で頂点に立ち続ける。「私自身、プレッシャーもありましたが、楽しみな部分もあった。これからも強いホークスでいられるよう、一生懸命頑張ります」。工藤ホークスは野球界に真の強さを刻んだ。【浦田由紀夫】 ▼工藤監督は4年連続5度目の日本一。シリーズで優勝5度は川上監督(巨人)の11度、森監督(西武)の6度に次ぎ、水原監督(巨人、東映)と並び3位タイ。シリーズ4連覇は65~73年川上監督に次いで2人目となり、就任6年目で5度日本一は森監督と工藤監督しかいない。工藤監督は選手時代の11度と合わせ、シリーズは通算16度目のV。選手と監督を合わせた優勝回数では川上監督の15度を抜き、森監督がマークした17度の最多記録へあと1度に迫った。これでシリーズの監督成績は通算20勝4敗1分け。25試合目で20勝到達は川上監督と森監督の30試合を抜く最速記録だ。
◆ソフトバンクがセ・リーグ王者の巨人を2年連続の4連勝で下し、パ・リーグ史上初の4連覇を決めた。 ▼ソフトバンクが昨年に続き4連勝で4年連続11度目の日本一。シリーズ4連覇は65~73年巨人の9連覇以来2度目で、パの球団では初。無傷の4連勝は昨年のソフトバンク以来9度目(4戦4勝は7度目)となり、2年連続はソフトバンクが初めて。ソフトバンクは南海時代の59年にも巨人相手に4戦4勝しており、無傷の4連勝を3度も初めてだ。シリーズは18年<3>戦から12連勝、本拠地では11年<7>戦から16連勝と、圧倒的な強さを見せている。 ▼ダイエー時代の00年に敗れた後は03、11、14、15、17~20年と続けて日本一。出場8連続Vは61、63、65~73年巨人の11連続に次ぐ2位の記録。パの球団は13年楽天から8年連続日本一となり、同一リーグの8年連続Vも65~73年セに次いで2度目だ。02年終了時の日本一回数はセ球団32度、パ球団21度でセ球団が大きくリードしていたが、その後はセ球団3度、パ球団15度と、ソフトバンクのおかげで日本一回数もパ球団が36度で逆転。シリーズでパ球団がリードは毎日が日本一になった第1回の50年以来、70年ぶりだ。
◆もう「鷹の時代」と言っていいだろう。2年連続、日本シリーズで巨人を倒した。それもまた、一気の4連勝。不滅といわれた巨人V9を超える「V10」を目標に掲げるソフトバンクは、平成から令和の時代をまたぎ「王者」に君臨した。 ホークスが福岡に羽を下ろして32シーズンが終わった。苦難の船出から年を経るごとにチームは力をつけた。リーグ初優勝が移転11年目の99年。「リーグは6球団しかないから6年に1度は優勝してもらわんと」。ダイエー時代、先代の中内功オーナー(故人)はBクラスに低迷し続けるチームをそう言って揶揄(やゆ)した。球団に「同好会は終わった」という横断幕を送りつけ、キャンプ地に張り出せと指示したこともあった。何とも懐かしい思い出だ。 新世紀に入ってからは「常勝軍団」と呼ぶにふさわしい戦いぶりだ。この20年間でリーグV7度、日本一8度。編成費は、青天井といわれる豊富な資金力もあってチームを強化。選手層の厚さは紛れもなく、12球団一だろう。涙をのんだ巨人同様に「必勝」を義務づけられ、結果を出し続けている。 昭和の時代は「巨人 大鵬 卵焼き」と言われ、ダイエー初V時には、中内オーナーも心を躍らせ「これからは 『ダイエー 曙 ハンバーガー』ですな」と言った。さて、令和新時代は何と呼ぼう。世界が新型コロナウイルスに侵されて、苦難の1年となった。球界も3カ月遅れの開幕となった。経営的にも痛打され、ホークスも今年は約100億円の赤字を覚悟しなければならない。球団事務所は職員の机も半減させ、在宅勤務との苦肉のシフトで乗り切った。 日本一のコバルトブルーのチャンピオンフラッグが何とも誇らしい。「非日常」が日常となった今、ホークスにはさらに強きチームを目指してもらいたい。【ソフトバンク担当 佐竹英治】
◆日本シリーズ・ニッカンMVP査定。 栗原と柳田が6ポイントで同点だった。栗原は第1、第2戦で8打数7安打。特にエース菅野からの4打点は光った。打率5割、出塁率5割8分8厘はチームトップ。今シリーズの勝利打点は柳田2、栗原と中村晃が各1で、柳田がチーム最多だった。
◆25日午後6時半からフジテレビ系で生放送された、プロ野球のSMBC日本シリーズ2020、ソフトバンク-巨人の第4戦平均視聴率が9・0%(関東地区)だったことが26日、ビデオリサーチの調べで分かった。北部九州地区では27・8%をマークした。 試合は4ー1でソフトバンクが2年連続で巨人を4連勝で下し、前身の南海、ダイエー時代を含めて4年連続11度目の日本一を決めた。日本シリーズ4連覇はパ・リーグ史上初めてだった。
◆SMBC日本シリーズ2020は24日、ペイペイドームに舞台を移して第3戦が行われ、3年ぶりにパ・リーグを制したソフトバンクがセ・リーグ2連覇の巨人に4-0で3連勝を飾り、4年連続11度目の日本一にあと1勝とした。日本シリーズ11連勝、ポストシーズン15連勝はともにプロ野球記録を更新。25日、史上初となる2年連続の4連勝を狙う! 盤石のリレーは、最悪の状況から始まった。一回先頭の遊ゴロを牧原がまさかの悪送球。無死二塁とされたが、米大リーグ通算54勝の左腕、ムーアは動じなかった。 「普段から『今投げるこの1球、それが一番大事な球』というふうに考えて投げている。どういう経緯で二塁に行ったとかもう関係なく、この1球で自分ができるベストなことをしようと、それしか考えていなかった」 1死後、坂本、岡本を最速154キロの直球と変化球のコンビネーションで追い詰め、空振り三振、遊ゴロでピンチを脱した。 第2子の誕生を間近に控え、夫人はすでに米国へ帰国。自身も歓喜の輪から即、飛び立つべく準備を進めてきた。「髪の毛はきれいに整えた。ひげだけ長いとちょっと不釣り合いかな、と」。自慢のひげを剃って登ったマウンド。7回を無安打無失点でG打線もサッパリ剃り残しナシだ。 93球での降板。勝利監督インタビューに立った工藤監督は「どうしても勝ちたかった。このペイペイドームで負けるわけにはいかないという思いがあったので。すみません、七回で代えさせてもらいました」と謝った。 勝負に徹し、八回はモイネロ、九回は守護神の森。2死から丸に中前打を許し、2007年の中日以外なしえていない無安打無失点リレーはならなかったが、それをどうこういう指揮官ではない。「プレッシャーかかりますよね。森が一生懸命なにか『あ~、すいません!』って言っていたんですけど」と笑顔で受け止めると、「やっぱりゼロで抑えて帰ってくるのが、リリーフにとっては一番大事なこと。あれはもうナイスピッチングです」とねぎらった。 考え得るベストに近い形で、あと1勝までバトンをつないだ。昨年も日本一を決めた4戦目に先発した和田の左腕から、一気に歓喜のときをたぐり寄せる。(長友孝輔)
◆SMBC日本シリーズ2020は24日、ペイペイドームに舞台を移して第3戦が行われ、3年ぶりにパ・リーグを制したソフトバンクがセ・リーグ2連覇の巨人に4-0で3連勝を飾り、4年連続11度目の日本一にあと1勝とした。三回に中村晃外野手(31)が先制2ランを放ち、3投手でG打線をわずか1安打に封じた。日本シリーズ11連勝、ポストシーズン15連勝はともにプロ野球記録を更新。25日、史上初となる2年連続の4連勝を狙う! 福岡で鷹は負けない。全体重を乗せたひと振りが、集中力の象徴だ。着弾を確信して、すっと右手を掲げた。ソフトバンクが3連勝。中村晃の決勝2ランで、4年連続日本一に王手をかけた。 「ホーム初戦でしたし、取れたのは大きいと思います。(本塁打は)いい手応えでした」 京セラで2連勝し、本拠地での1戦目。1万7297人のファンに渾身のアーチを届けた。 0-0の三回2死、周東の内野安打に失策も絡んで2死二塁で、打席に立った。カウント2-2からの141キロフォークを逃さず、一閃。鮮やかな放物線を右翼席に突き刺した。 七回にも適時打を放ち3打点。ロッテとのクライマックスシリーズ(CS)第2戦でも2本塁打4打点などの活躍で、CSのMVPに輝いた。短期決戦で、より際立つ勝負強さに「たまたまでしょ」と笑ったが、工藤監督は「さすが選手会長。打った瞬間、いったと思った」と最敬礼だ。 その他の写真(2/3枚) 21日の1戦目。内野ゴロを放った巨人・丸が一塁を駆け抜けた際に、中村晃の左足と交錯した。トレーナーも駆け寄ってきたが、痛がる素振りも見せなかった。その日の夜。丸から着信があった。 「偶然当たっちゃったと思うだけでした。僕と丸の中でもう終わっているので」 翌22日にはグラウンドでも直接、謝罪された。同じ1989年生まれの31歳。帝京高時代には、丸の千葉経大付高と練習試合の経験もあるなど、ともに高卒からプロでも同じ時間を歩んできた。「同級生ですし、丸のこともよく知っていますし」。緊迫した頂上決戦でのアクシデントにも、2人の絆には関係なかった。 ポストシーズン15連勝&日本シリーズ11連勝。本拠地での日本シリーズも15連勝となった。パ・リーグ初となる4年連続日本一まで、あと1勝。さらに史上初となる2年連続の4連勝Vも現実味を帯びてきた。それでも工藤監督が「浮足立たないように。自分たちの野球を信じてここまでやってきたので」と引き締めれば、中村晃にも油断は一切、ない。 「最高の雰囲気でできていると思います。最後の力を振り絞って、あした勝てるように」 3勝0敗。王手をかけても変わらない表情が、寡黙な選手会長らしかった。(竹村岳)
◆対戦成績を3勝0敗とし4年連続日本一に王手をかけたソフトバンク・工藤公康監督(57)が試合前に取材対応。現役時代に11度の日本一をつかんだ経験から、日本一が懸かったマウンドで心がけてきたことを振り返った。 「不安だったり恐怖に打ち勝つということですかね。やっぱり気持ちが弱く出てしまうと、いい結果というのがなかなか出なかった。自分自身に負けないように。マウンドに上がったら、とにかく自分のボールを信じて投げるということが何より大事だと思うので」 もし打たれたら-。もし自分が投げるこの試合で日本一を決められなかったら-。そんな弱さを捨て去る必要があった。 「投げる前から結果はついてこない。投げる前から考えても、仕方がないので。そこは自分の球を信じて、やっぱり投げるのが、ピッチャーにとっては一番大事かなと思います」 昨季と同じように、第4戦のマウンドには和田毅投手(39)が上がる。新人だった2003年には阪神との日本シリーズ第7戦で先発。完投で胴上げ投手となった経験もある大ベテラン左腕に指揮官は「いつもと変わらず投げてもらえれば。シーズン後半のピッチングを見れば、いい状態で来ているなと思いますし。顔を見ても状態が良さそう」と語っていた。
◆4年連続の日本一を目指すソフトバンクの柳田悠岐外野手(32)が逆転2ラン。スタンドインを確信して、華麗にバットを放り投げた。 一回に先発・和田が連打を浴びて失点。今シリーズで初めてリードを許す展開になったが、勢いたっぷりのホークスには関係なかった。 一回1死、先発・畠から中村晃が右翼線二塁打。柳田が打席に立つと、初球の139キロを一閃。強烈なライナーを右翼席まで運んだ。今シリーズ初アーチだ。 「打ったのはフォーク。チャンスでしたし、初球から集中して打ちにいくことができました。先制されて、すぐに逆転できてよかったです」と広報を通じてコメントを寄せた。
◆ソフトバンク・甲斐拓也捕手(28)が追加点となる2ラン。今シリーズ2号を突き刺し、巨人を突き放した。 一回に柳田の2ランで逆転した直後だった。二回2死二塁で打席に立つと、先発・畠の148キロ直球をフルスイング。切れるか切れないか身を乗り出して打球の行方を見守ったが、左翼ポール際に着弾した。 「打ったのはまっすぐ。何とかしようという気持ちだけで打ちました。追加点を取れてよかったし、最後まで集中していきます」と広報を通じて語った。
◆巨人の畠は先発して日本シリーズ初登板を果たしたが2本の2ランを浴びて二回途中でKOされた。1点を先行して迎えた一回1死二塁で柳田に初球のフォークボールを右翼席に運ばれると1-2の二回2死一塁では甲斐に直球を左翼ポール際に打ち込まれて降板。「先制して、いい流れになったところで自分が粘り切れずに悔しい」とうなだれた。 入団4年目の26歳。今季はプロ初完封を含む4勝(4敗)を挙げた。「自分が持っているものを全て出したい」と意気込んで臨んだ登板で役割を果たせなかった。
◆巨人の坂本が0-0の一回に適時二塁打を放った。先頭打者の若林が二塁打で出塁して無死二塁で、和田の内寄りの変化球を鋭い回転で振り抜いて左越えへ運び「自分がランナーをかえす気持ちでいった」とうなずいた。 第3戦では無安打に終わり、チームがわずか1安打で零敗を喫した。打順がこれまでの3番から2番に上がり、主将として「攻める気持ちを出していきたい」と臨んだ。チームでウィーラーの2ランと犠飛以外で今シリーズ初の打点を挙げ、意地を見せた。
◆ソフトバンクの和田は2回で48球を要し、3安打1失点で降板した。一回、先頭打者の若林と坂本に連続二塁打を浴びて先制された。なお2死一、二塁では中島に追い込んでから9球連続ファウルで粘られたが、チェンジアップで空振り三振に仕留め切り抜けた。 昨年の日本シリーズでは同じ第4戦に先発し、5回無失点で勝利投手になった。再現を狙った登板でリードは守って降板したが、速球の切れを欠き「大事な試合を任せてもらったのに2イニングしか投げられず申し訳ない」と振り返った。
◆巨人のビエイラが日本シリーズ最速となる球速164キロをマークした。4番手として登板した六回、2死無走者での牧原との対戦で、2ストライクから内角高めに外れた3球目の速球で164キロを計測。ファウルを挟み、再び164キロで空振り三振に仕留めた。 ビエイラはブラジル出身で今季巨人に加入した27歳の右投手。8月と10月に163キロをマークしていた。プロ野球最速は米大リーグ、エンゼルスの大谷が日本ハム時代の2016年にクライマックスシリーズ(CS)で記録した165キロ。
◆ソフトバンクの松本が日本シリーズ初登板で好投した。4-1の三回から2番手でマウンドに上がり、坂本、丸、岡本の好打順を三者凡退に抑えるなど2回2/3を2安打無失点、4三振。150キロ超の速球に切れのある変化球を交えて抑え「しっかりと準備はできていた」と納得の表情だった。 岩手・盛岡大付高からドラフト1位で2015年に入団し、今季はレギュラーシーズンで自己最多の25試合に投げた。先発の和田が2回1失点で早々と降板しただけに「和田さんの悔しそうな表情が見えたので、和田さんの思いも感じながら投げた」と振り返った。
◆ソフトバンクが巨人を破り、パ・リーグでは初となる4年連続日本一に輝いた。また2年連続の4連勝日本一は史上初。 コロナ禍の影響で胴上げはなく、ナインはマウンドを中心に大きな輪を作って、万歳で喜びを表現した。 「正直、ほっとしています。うれしくてうれしくて...。地元の福岡で日本一になれて最高です」と、お立ち台での優勝インタビューに応じた工藤公康監督(57)は就任6年目で日本シリーズは5戦5勝。日本一5回は、川上哲治(巨人)の11、森祇晶(西武)の6に次いで、水原茂(巨人4、東映1)に並ぶ3位タイとなった。 ソフトバンクは一回に柳田悠岐外野手(32)がシリーズ1号となる逆転2ラン。二回には甲斐拓也捕手(28)の2号2ランで加点。その後は継投で逃げ切った。巨人はシリーズを通して、投打の歯車がかみ合わなかった。
◆ソフトバンクが巨人を破り、パ・リーグでは初となる4年連続日本一に輝いた。また2年連続の4連勝日本一は史上初。
◆ソフトバンクが怒濤の4連勝で4年連続日本一となり、MVPは栗原陵矢捕手(24)が選ばれた。 お立ち台でインタビューを受けた栗原は「最高の気分です。先輩方に、ごはんでもおごってあげようかな、という思いです」と笑顔。今シリーズは14打数7安打1本塁打4打点。菅野から放った第1戦の本塁打で、チームに勢いをつけた。
◆2年連続の屈辱に、巨人・原辰徳監督は「攻撃型のチームが攻撃が機能しなかった。私を含め、コーチ、選手が一回りも二回りも大きくならないといけない」と言葉を絞り出した。4戦でわずか4得点、41三振を喫した。これで日本シリーズは2013年楽天戦から9連敗となり、59年ぶり2度目の屈辱。原監督にとっても9連敗で、巨人では1958年第4戦から翌59年第4戦まで8連敗した水原茂監督の8連敗を超える球団ワースト記録となった。
◆巨人は4連敗で敗退となった。原辰徳監督(62)は2年連続で同じ相手に4戦全敗で終わった日本シリーズを振り返った。一問一答は以下の通り。 --敗退 「そうですねえ。まあ、打線がなかなか機能しなかった。(第1戦からの得点が)1点、2点、0点、1点か。やっぱり攻撃型のチームという中で、攻撃がなかなか機能しなかったですね」 --打線を組み替えた 「いい形で1番(若林)、2番(坂本)と(一回に得点した)。私も含めて、コーチ、選手、まだ一回りも二回りも大きくならないといけないね」 --そこが一番実感したか 「まあ、その、大きくならないといけないというぐらいでね。具体的には、まだ整理はついていないけどね」 --まだ途上 「必要なことが多いということでしょうな」 --相手の強い球を捉えられなかった 「投手ももちろん、あれだけ本塁打を何本打たれたかっていうところもあるし。そこをやっぱり、まだまだ我々は必要としているものがあるということですよ。1人1人がね」
◆巨人は2年連続でソフトバンクに4戦全敗で敗退した。シリーズ通算16安打は、2005年の阪神と昨年の巨人が記録した22安打(ともに4試合)を下回り、史上ワーストとなった。4得点も2005年の阪神に並ぶワーストタイ。ソフトバンク投手陣の前に、打線が力を発揮できなかった。
◆巨人・坂本勇人内野手(31)が敗戦後にコメントを発表し、来季の雪辱を誓った。 「去年の悔しい思いを、今年は何とかやり返したいという気持ちで臨みましたが、力足らずが結果に表れてしまいました。この悔しい気持ちを一人一人が強く持って、来年レベルアップできるようにしたい。ファンの方には、一年間温かい応援をいただきありがとうございました。期待に応えることはできませんでしたが、来年チームとして成長した姿を見せられるように頑張ります」 2015年に主将に就任してから初めての日本一を狙ったが、2年連続で同じ相手に4連敗の屈辱を味わった。坂本はこのシリーズ4試合で打率・214、1打点。この日は3番からかつての定位置である2番に座り、一回に左翼へ先制の適時二塁打を放った。守っても三遊間の難しいゴロをさばく好守を披露するなど躍動したが、勝利に導くことはできなかった。
◆ソフトバンクの王球団会長は、巨人相手に2年連続で4連勝を飾った日本シリーズに「初戦の千賀の働きと栗原のホームランが流れをつくって、その勢いでここまで来た感じ」と、第1戦で7回無失点のエースと、先制2ランを放った新星に賛辞を贈った。 自らが現役時代を過ごした巨人には「来年こそ発奮して、強いジャイアンツが誕生すると思う」と期待を込めた。「そのジャイアンツを倒すのが来年の目標になるだろう。われわれにはゴールがない」とさらなるチームの発展を願った。
◆巨人の戸郷は今シリーズで3試合に中継ぎ登板し、計5回2/3を2失点で敢闘選手賞に選ばれた。第4戦は三回途中から3番手で投げ、四回を3者三振とするなど2回1/3を無安打無失点と好投した。大舞台で物おじせず速球を投げ込み「去年よりは自分自身の成長した姿を見せられた。1年間ローテーションを守った経験を生かせた」とうなずいた。 宮崎・聖心ウルスラ学園高出のエース候補は今季、先発で9勝6敗と飛躍の年となった。「来年は日本一を必ず取れるように頑張る」と雪辱を期した。
◆巨人の岡本は今シリーズ13打数1安打で5三振を喫し、主砲の役割を果たせなかった。「昨年、4連敗してやり返そうという気持ちで臨んだが、まだまだやらないといけないものがあると感じた。力足らずでこういう結果なのが現実」と唇をかんだ。 第1戦の第1打席では千賀の内角直球にバットをへし折られて捕邪飛に倒れた。「僕がもっと打てばチームが乗ったと思うし、勝てたと思う。この思いを絶対に忘れず、来年を迎えたい」と精進を誓った。
◆ソフトバンク・王貞治会長は「不足はない」と語っていた巨人をまたも4連勝で退けたナインに賛辞が止まらなかった。 「短期決戦は投手だからね。(2本塁打も放った)甲斐に賞がなくて残念だった。甲斐のリードが良い何て言われて、夢みたいだったんじゃないか本人も」 そして巨人は必ず立ち上がると信じてもいる。「残念ながら持ち味は出せなかったですよね。来年こそ自分たちがという思いを持って、やっぱり発奮してくるんじゃないか」と期待を寄せ「そのジャイアンツをまたやっつけて勝つというのがまた新たな目標になる。われわれにはゴールがない。常に前へ前へ行くしかない」と力強く言い切った。
◆ソフトバンクのモイネロが4-1の八回を三者凡退に抑え、日本シリーズ通算7ホールドで、山口(巨人)の最多記録に並んだ。今シリーズは3試合に登板。3イニング、九つのアウトのうち八つを三振で奪う圧巻の投球だった。 キューバ出身の24歳左腕は今季50試合に登板。40ホールドポイントを挙げ、自身初の最優秀中継ぎのタイトルに輝いた。安定した救援陣の中でひときわ存在感が光った。
◆ソフトバンクが2年連続のシリーズ4連勝を飾り、パ・リーグ史上初の4連覇を達成した。孫正義オーナー(63)が取材に対応した。主な一問一答は以下の通り。 --日本一になった 「もう最高ですね」 --4連勝で 「本当に打つべき人が打って、投げるべき人が投げて、素晴らしい闘志あふれる激走とか。チームが一丸になって、監督を中心に素晴らしいチームになったと思います」 --初の2年連続4連勝。記録もたくさんついてきた 「やる以上はですね、勝たないといかん。監督も選手もその一心で頑張ったと思います。ファンのみなさんがコロナの大変な時期に一生懸命、応援いただいた。そういう気持ちが選手にも伝わったと思います。本当にファンのみなさんには感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます」 --最初はファンも入れなかった 「本当に今年、こういうコロナ禍の中で観客を入れての試合が再開できるのか、僕も心配しましたけど。やっとワクチンがいくつか成功したというニュースがきています。日本にも、もうすぐ届くと思いますので。ぜひ来年はファンのみなさま全員が集まって。この球場を満杯にして、大きな声で声援できるような、そんな1年になってほしいと思います」 --ホークスの優勝が力になる 「いろんな苦しいことがある。こういう世の中ですから。少しでも喜びや感動、みなさんに明るくなってもらえるといいなと思います」 --工藤監督にも声を 「本当にご苦労さまと。感謝申し上げますと」 --選手への思いは 「素晴らしいチームワークで一生懸命にプレーしていただいた。4連覇があるということは次は5連覇もあるということですから。このオフ、しっかり体を休めて。また春のキャンプに向けてしっかりと鍛えていただいて。5連覇を目指して頑張ってほしいと思います」
◆ソフトバンク・王貞治会長(80)は試合後、会見に応じた。主な内容は以下の通り。 --4連敗となった巨人はどう見るか 「ジャイアンツは残念ながら持ち味は出せなかったですよね。やはりこういう戦いは、また来年もあるわけですから。来年こそ自分たちがという思いを持ってね、やっぱり発奮してくるんじゃないかと。そう思います」 (さらに続けて) 「だから来年はやっぱり、また違った意味で強いジャイアンツが誕生すると思うので。そのジャイアンツをまたやっつけて勝つというのがわれわれのまた新たな目標になりますので。もう、われわれにはゴールがないんですよ」 --しかし本当に強かった 「ねえ、強かったねえ」 --シリーズ前に栗原には「三振してもいいから」と 「そうそうそう! 三振したからって誰も文句言わんのよ。あそこで思い切ってバットを振ってくれりゃあ、それでいいことだからね。とにかくみんな、甲斐もよくリードして。ホームランも2本打ったしね。甲斐に賞がなかったのが残念だったけど。でも彼も自信を持ってね。褒められないキャッチャーが、やっと何かこのごろ新聞見てると褒められるようになったからよかったね。キャッチャーっていうのはどうしても褒められることがないんだよね。『甲斐のリードがいい』なんて言われて、夢みたいだったんじゃないか、本人も」
◆ソフトバンクはペイペイドームで祝勝会を実施し、新型コロナウイルス感染防止のため、リーグ戦に続き恒例のビールかけは自粛した。 中村晃選手会長の「4年連続日本一」というかけ声に選手らが「さあ行こう」と応えると、くす玉が割られ、クラッカーを鳴らして喜びあった。
◆一回に逆転2ランを放ったソフトバンク・柳田悠岐外野手(32)が取材に対応した。主な一問一答は以下の通り。 --1年が終わった 「いい1年だったなと思います」 --1打席目から集中力があらわれた 「1打席1打席、集中して。悔いのないように打席に立っています」 --打率・429 「打率とか気にせず、いいところで打てればと思っていましたけど。チームの勝利にちょっとは貢献できたかなと思います」 --きょうは逆転弾 「よかったです。満足しています」 --日本シリーズでも勝負強い 「チームが勝てればいいと思っていますけど。チームの勝ちにつながってよかったです」 --日本一になれた 「達成感がありますけど。少し体を休めてまた来年に向けてやりたいと思っています」 --11月まで続いた1年だった 「疲れましたよ。疲れましたけど、みんなでこうやって喜べるということは本当に幸せなことだと思います」 --今年はリーグ優勝からの日本一。気持ちも違う 「もちろんです。リーグで優勝できて、その勢いで勝てたのも自信になりますし、達成感があります」 --来年もバージョンアップ 「もっともっと野球がうまくならないと。やられると思うので。また休んで、始動するときから気持ちを入れ替えてやっていきたいと思います」 --5連覇が目標 「来年もこうやってみんなで喜びたいので。来年、頑張りたいと思います」
◆ソフトバンク・工藤公康監督(57)は試合後、共同記者会見に応じた。主な、やりとりは以下の通り。 --ホークスの新しい歴史が生まれた 「そうですね、それもこのチームは王会長が『強いチームにしたい』という強い思いで作られたチームだというふうに思いますので。それを秋山監督、私と受け継いできたつもりではいます。私の足りないところは選手たちがカバーしてくれたおかげでここまで来られたというふうに思っていますので」 --3年ぶりのリーグ優勝からの日本一 「やはりリーグ優勝してというのは大きな目標でもありましたので。3年連続でリーグ優勝を逃すわけにはいかないと。日本一になることよりも、まずリーグでしっかり勝っていかなければいけないという思いは、シーズン前は強く思っていました」 --1戦目、栗原の活躍で先手を取れた 「いやもう、あのホームランを、ライトへ飛んでいくボールを見るときにですね、クライマックスシリーズで悔しい思いをした栗原君がああやってね、1打席目からしっかり結果が出たというのは見ていてホッとしましたし。やはりそこに行くまでの、短い時間ではありましたけど、そういう中でいろいろ苦労したんだろうな、と。試行錯誤しながらね、この日本シリーズに臨んだんだろうなというふうに、飛んでいくボールを見ながら、ちょっと考えていました」 --日本一に手ごたえを感じたタイミングやプレーはあったか 「いや、これで行けるなというタイミングは正直、最後のアウトを取るまでは感じるというか、そうは思っていませんでしたし。野球はやっぱり3アウトの声を聞くまでは何が起こるか分からない、と。特に日本シリーズというところは、1つ間違えば、私自身も経験がありますけど、ガラッと雰囲気が変わってしまうというところもありますので」 --最後にファンへメッセージを 「2020年、本当に苦しいシーズンではありましたけど、ファンの皆様の支えでなんとか日本一になることができました。ありがとうございます。これからも強いホークスでいられるように一生懸命頑張りますので、ホークスを心から応援してくださるファンの皆様、これからもよろしくお願いします」
◆MVP(最高殊勲選手)には、ソフトバンク・栗原陵矢捕手(24)が輝いた。 「最高です。レギュラーシーズン(打率・243)で打てなかったので、何とか日本シリーズで力になりたいと思っていた」。6年目の今季。打力を買われて外野手としてレギュラーに抜てきされ、工藤監督からは「駄目だったら使った監督が悪いという気持ちで打ちにいけ」と声を掛けられ続けた。 日本シリーズ第1戦。ファーストスイングで菅野から本塁打を放ち、計14打数7安打4打点。チームのV4への道は、栗原の一撃から始まったといっても過言ではなかった。 賞金計700万円をゲットした栗原はベンチからの冷やかしの声に「この先輩方に少しでもご飯をおごってあげようかなという気持ち」と切り返し、自主トレを行った中村晃にも「晃さんには何か買ってあげたいな」と水を向けた。 そして最後には、スタンドに向かって「皆さんに元気を。5倍、10倍、50倍...、元気100倍、アンパンマン!」。栗原はシーズン中も試合前の円陣で、アンパンマンの声を務めてきた声優・戸田恵子そっくりの声色で「元気100倍、アンパンマン!」と声出しをして、チームを盛り立ててきた。
◆ソフトバンクのブルペンを支えた高橋礼投手(25)が本紙に独占手記を寄せた。今季は先発から中継ぎに配置転換され、チームトップタイの52試合に登板。活躍の背景には工藤公康監督(57)からのアドバイスがあった。 長い戦いでしたが、日本一になれました。チームの中でも何かで一番になりたくて。登板数が1位だったので、1年間投げ切れてよかったです。 年間を通して中継ぎをして、切り替えの難しさを感じました。黙々と抑える大変さが、すごくあって。一喜一憂しないことが難しくて、調子や気持ちの波はほぼなくて抑えてもうれしくないというか。でも、そういうのがベテランの中継ぎの方々にはある。2戦目では満塁をしのぎましたけど、僕も最近になって、やっとできてきました。 工藤監督には非常に気にかけていただきました。ブルペンでの過ごし方で、僕は球種が少ないので「ストライクが入る、勝負になる球を見つけろ」といわれて。"その球はきょうは勝負球として使う"というやり方を教えてもらいました。 今年は新型コロナウイルスと戦った特別なシーズン。コロナではないですが、4月には母方の祖母が亡くなりました。第1波のときで、お葬式にもいけなくて。母も悲しんで、僕も最後の姿を見られなくてすごく残念でした。シーズン中も僕らが感染することでチームに迷惑がかかる。リスクは避けたいと行動したつもりです。 去年なら森(唯斗)さんのお誘いでご飯にもいくんですけど、なくなって、今年は一人の時間が増えました。朝、ランニングしたりして、考える時間を作りましたね。特に8、9月。一人だからこそ、自分の良さとかを、どう武器に変えられるのかを考えられました。打たれたら打たれっぱなし、抑えたら抑えっぱなしということがないようにしていました。 1年間応援、ありがとうございました。悔しいシーズンだったので正直休むつもりはないです。もうきょうから、動いていこうと思います。(福岡ソフトバンクホークス投手)
◆SMBC日本シリーズ2020は25日、3年ぶりにパ・リーグを制したソフトバンクがセ・リーグ2連覇の巨人に4連勝を飾り、4年連続11度目の日本一を達成した。2年連続4戦全勝は日本シリーズ史上初。工藤公康監督(57)に率いられ日本シリーズ12連勝、ポストシーズン16連勝と圧倒。1強時代が訪れた! リーグを制して、この景色が見たかった。金の紙吹雪の中、マスクを着けたまま輪になる。思いあふれる万歳三唱だ。ホークスがパ史上初、4年連続日本一。新型コロナウイルスが直撃した特別な一年に、工藤監督の胴上げは必要なかった。 「正直、ほっとしています。うれしくてうれしくて、福岡で日本一になれて最高です」 一回に今シリーズで初めてリードを許すも、直後に柳田が逆転2ラン。甲斐にも2ランが飛び出し、7人継投でG打線を封じた。史上初、2年連続4戦全勝Vが完結した。 就任6年目で5度目の日本一。巨人、東映などで監督を務めた水原茂に並んで歴代3位だ。際立つ短期決戦の強さ。ポストシーズンで16連勝、日本シリーズでは3年をまたいで12連勝とした。18年と19年は2位から勝ち抜いての日本一。本物の頂点だけを目指した。 悔しさが始まりだった。西武に連覇を許した昨季、チーム582得点はリーグ4位。本塁打が出やすい本拠地だからこそ、今季は「つながり」を掲げた。1月31日。宮崎市内のホテルで全選手を前に、宣言した。 「ベースランニングをしない人は(2軍に)落とします」 1点にこだわり、貫いた。120試合で打順は113通り。531得点はリーグ2位に飛躍した。頂上決戦でも鷹打線は一丸だった。 つながりは、断たれようともした。新型コロナウイルスの影響で、チーム作りが頓挫。4月の自粛期間中は週1度のオンライン会議に監督・コーチ、スタッフがそろって画面越しに選手の現状を報告した。7月には親会社が唾液でのPCR検査を行う新会社を設立。キットの提供を受け、9月下旬以降は週4回の検査を実施した。すぐに陰性を確認でき、精神面の安定が終盤を支えた。 その他の写真(2/2枚) 知ったのは医療従事者の厳しい現実。最前線で戦うお医者さんや看護師さんの子どもが学校でいじめにあう状況が、テレビから飛び込んできた。すぐに立ち上がった。 「僕らは医療従事者のみなさんをヒーローだと思っています」 5月に福岡看護協会に2万枚のマスクを贈呈を発表。慈善活動はこっそりとしてきたが雅子夫人から「(看護師さんにとっても)励みになるんじゃない?」。声を上げることで差別・偏見から救えればと贈呈を発表した。世界が落ち着いていれば球場に招待するプランもあった。できなかった代わりに青と黄色のユニホーム17万着を福岡の病院に配布。福岡、九州、野球ファンが一つとなり、つかんだ頂点だ。 「ファンのみなさまとともに日本一になる喜びを味わうことできて幸せです。1年間、応援ありがとうございました!」 福岡を日本一にした。プロ野球の力とホークスの強さの証明が、またここから始まる。(竹村岳)
◆SMBC日本シリーズ2020は25日、第4戦が行われ、巨人はソフトバンクに1-4で敗れて史上初となる2年連続の4戦全敗を喫した。そんな中、球団は今オフに菅野智之投手(31)のポスティングシステムを利用した米大リーグの挑戦を容認する方向であることが判明。本人が決断すれば今オフに海を渡る可能性が高まった。 試合後の表彰式で歓喜に沸くソフトバンクナインを、菅野は三塁側ベンチ前から悔しそうに見つめた。リーグ2連覇は果たしたが、今年も自身初の日本一には届かず。サンチェスに肩をポンポンとたたかれ、やり切れない様子でダッグアウトの裏に消えていった。 21日の第1戦は先発で6回4失点。2度目の登板機会がなく日本シリーズに敗退した一方で、球団が今オフ、菅野のポスティングシステムの利用を容認する方向となったことが判明。メジャーリーガー「SUGANO」誕生へ、歯車が大きく動き出した。 「菅野投手は功労者。選手がより大きな、高いフィールドで勝負したいという希望を球団として止める権利はない」 球団首脳が明らかにした。菅野は今季、開幕戦から13連勝してプロ野球記録を樹立。14勝2敗で最多勝と最高勝率の2冠に輝いた。新フォームに取り組んだことで昨季に苦しんだ腰痛も軽減され、2連覇に貢献。シリーズには敗れたが、海外挑戦への舞台は整った。 その他の写真(2/2枚) 菅野は2017年のオフに、メジャーへの思いを初めて公言。巨人はポスティングでの移籍を認めてこなかったため、海外FA権の行使を前提として「あと3、4年ある。絶対的な力をつけて、文句なしに行けるように」としていた。 ただ、昨オフに山口俊が球団で初めて同制度を利用して米大リーグ入りしたことで、状況が一変。山口寿一オーナーも昨年、「海外FA権を取得して挑戦というのが基本であるというのが、従来と変わらない考え」と強調した上で、「菅野の場合はドラフトで1年待ってジャイアンツに来てくれた。1年を棒に振っているわけですよね。その分、海外FA権を取得する時期も後の方にずれているという事情はある」としていた。 新型コロナウイルスの影響で今季のメジャーは60試合の短縮開催となり、来季の見通しも不透明。これまで菅野は日本一だけを目指して戦ってきたため、シリーズが終了した今、ポスティングの申請を希望するのか、それとも残留を選ぶのか、改めて熟考するとみられる。 もし菅野がメジャー行きを決断すれば、ダルビッシュ有(カブス)や前田健太(ツインズ)らが契約する大手の「ワッサーマン」が代理人事務所の有力候補になりそうだ。 近日中に菅野は球団と話し合いの場を持つ予定。球団が容認する方向となったことで、あとは自身の考え次第。申請期限の12月12日までに、大きな決断を下す。
◆巨人OBとして一方的な展開は歯がゆいが、巨人の9連覇(1965-73年)以来となるソフトバンクの4連覇には、感慨深いものがある。 前身のダイエーで98年から3年間、助監督兼打撃コーチとして巨人時代の盟友、王貞治監督(現球団会長)を支えた。当時のチームは南海時代から97年まで、実に20年連続Bクラス。95年に就任した王監督が孤軍奮闘して「勝つこと」を植え付けようとしても、なかなか伝わらなかった。監督の選手時代の実績が偉大すぎたのかもしれない。 私は怠慢プレーをした選手を叱り、ミーティングもよく開いた。98年は3位タイに上がり、99年にダイエーとして初優勝し、日本シリーズでは中日を下して日本一。翌年もリーグを2連覇した。 それから20年たったチームは、ベテランが若手の手本になり、監督やコーチがきつく言わなくてもよくなった。これが強いチームの伝統だ。柳田ら中心選手が元気なうちは、まだまだ連覇を伸ばすだろう。 V9当時は「巨人に負けるな」が11球団共通の思い。今や「ソフトバンクに負けるな」に変わった。もう「常勝軍団」と呼んでいい。 (本紙専属評論家)
◆本紙専属評論家の江本孟紀氏(73)は、「ソフトバンクの意識の高さ」を4連覇の要因に挙げ、組織全体のどん欲さと競争原理を評価。巨人OBで、ソフトバンクの前身のダイエーで助監督を務めた黒江透修氏(81)は、「V4」を感慨深く見つめた。 力の差もさることながら、最も両チームで違いを感じたのは、意識の高さだったよ。 ソフトバンクは昨年、一昨年と公式戦は2位。王球団会長も結構、気にしていたらしい。 リーグ優勝して日本一にならない限り、真の勝者とはいえない-。現状維持で満足することなく、どん欲に高みを目指そう-。 選手もスタッフも、それを至上命題としていたからこそ、みなぎるようなエネルギーを発していたのだろう。 巨人に、そこまでの意識があったかどうか。リーグ戦は連覇した。菅野以外、突出した成績を残す選手がいない中、独走で優勝した。まあ、よくやったよ...。そのレベルの達成感で、止まっているように映った。 ソフトバンクには、上っ面だけではわからない強さもある。1軍を支える2軍、3軍のファームが、どこよりも整備され、充実している。しかも、選手の昇格・降格だけでなく、監督やスタッフの入れ替えも激しい。 あちこちに張り巡らされた競争原理が、組織を押し上げているわけだ。 セ・リーグはもういい加減、ソフトバンクの強さを検証し、研究し、取り入れるべきだと思う。巨人が2年連続で惨敗したのは、何よりの契機ではないか。巨人だけの責任ではない。巨人にかなわなかった5チームにも、大いに問題がある。リーグ全体で、肝に銘じるときが来たよ。 (本紙専属評論家)
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