広島(★0対2☆)ソフトバンク =日本シリーズ6回戦(2018.11.03)・マツダスタジアム=
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ソフトバンク
0001100002301
広島
0000000000400
勝利投手:バンデンハーク(1勝1敗0S)
(セーブ:森山 孔介(0勝0敗3S))
敗戦投手:ジョンソン(1勝1敗0S)

本塁打
【ソフトバンク】グラシアル(1号・5回表ソロ)

  DAZN
◆ソフトバンクが2年連続9度目の日本一に輝いた。ソフトバンクは4回表、西田のスクイズで先制する。続く5回には、グラシアルのソロが飛び出し、リードを広げた。投げては、先発・バンデンハークが6回無失点の好投。その後は武田、嘉弥真、森とつなぎ、完封リレーで逃げ切った。なお、MVPには6連続盗塁阻止の日本シリーズ新記録をマークした、ソフトバンク・甲斐が選ばれた。

◆ソフトバンク・バンデンハークが今日3日、先発する。 前回第2戦は敵地で5回5失点。2日、負け投手になったが「調子はよくなっている。寒さも感じない」と自信をのぞかせた。198センチ長身右腕は大きなモーションが課題だったが、今季はクイック投法を改善。「コーチと取り組んで、しっかりできるようになってきたのは事実」。甲斐キャノンとのコンビで引き続き、広島に盗塁を許さない。

◆ソフトバンク甲斐拓也捕手がシリーズ5連続盗塁を阻止をし、新記録を樹立した。 1回1死一塁、甲斐が田中の二盗を刺した。際どいタイミングで、いったんセーフの判定となったが、工藤監督がリクエストを要請。判定はアウトと覆り、記録達成となった。 第4戦で4連続盗塁刺を決め、52年広田順(巨人)、58年藤尾茂(巨人)の連続記録に並んでいた。 メジャーリーグでの経験もあるヤクルト青木はこの日、解説席から見守っており、試合前には強肩とコントロール抜群の甲斐に「守備だったら(メジャーでも)イケると思う。際立っている」と称賛していた。

◆ソフトバンク甲斐拓也捕手が日本シリーズ6連続盗塁阻止で、この日樹立したばかりの同シリーズ新記録を更新した。 1回1死一塁、甲斐が田中の二盗を刺した。際どいタイミングで、いったんセーフの判定となったが、工藤監督がリクエストを要請。判定はアウトと覆り、5連続盗塁阻止で記録達成。 さらに2回2死一、三塁から一塁走者安部の二塁盗塁を完璧なタイミングで刺した。 第1戦からの甲斐キャノンを写真で振り返る。

◆ソフトバンク甲斐拓也捕手が日本シリーズ6連続盗塁阻止で、この日樹立したばかりの同シリーズ新記録を更新した。 1回1死一塁、甲斐が田中の二盗を刺した。際どいタイミングで、いったんセーフの判定となったが、工藤監督がリクエストを要請。判定はアウトと覆り、5連続盗塁阻止で記録達成。 さらに2回2死一、三塁から一塁走者安部の二塁盗塁を完璧なタイミングで刺した。 第4戦で4連続盗塁刺を決め、52年広田順(巨人)、58年藤尾茂(巨人)の連続記録に並んでいた。 メジャーリーグでの経験もあるヤクルト青木はこの日、解説席から見守っており、試合前には強肩とコントロール抜群の甲斐に「守備だったら(メジャーでも)イケると思う。際立っている」と称賛していた。

◆広島クリス・ジョンソン投手がソフトバンク打線に先制点を奪われた。 3回まで1安打投球だったが、4回先頭柳田を歩かせ続く中村晃に安打され無死一、二塁。内川が送った1死二、三塁で西田にスクイズを決められて1点を失った。 さらに5回には、2死からグラシアルに左翼へソロ本塁打を浴び、6回3安打2失点で降板した。

◆今季限りでの現役引退を表明している広島新井貴浩内野手(41)が8回、先頭打者として代打で登場した。名前がコールされると、本拠地マツダスタジアムは大きな声援に包まれた。ソフトバンク武田の前に遊ゴロに倒れたが、一塁へ全力疾走を見せた。 崖っぷちに追い込まれ迎えた本拠地での一戦。試合前は「ファンに喜んでもらえるような試合にしたい。自分のことで感傷的になるようなことはない」と話していた。

◆日本一に輝いたソフトバンク工藤公康監督(55)が、選手と監督合わせてシリーズ優勝が王貞治会長(78)を超えた。 監督では自身2年連続3度目の日本一となり、選手時代の11度(西武8、ダイエー1、巨人2)を含めると、14度目の栄冠を手にした。 選手、監督時代を合わせてシリーズ優勝13度で肩を並べていた王球団会長を抜き単独3位に浮上。ちなみに工藤監督より上には森祗晶氏(17度=選11、監6)と川上哲治氏(15度=選4、監11)がいる。

◆今季限りでの現役引退を表明している広島新井貴浩内野手(41)がプロ野球人生に幕を下ろした。34年ぶり4度目の日本一には届かず、最後の花道を飾ることはできなかった。 崖っぷちに追い込まれ迎えた本拠地での一戦。8回、先頭打者として代打で登場した。ソフトバンク武田の前に遊ゴロ。一塁への全力疾走を見せた。9回は一塁の守りについた。最後まで勝利を信じ、2点を追う9回の攻撃もベンチの最前列で立って選手を鼓舞し続けた。敗戦が決まると、目に焼き付けるようにソフトバンクの胴上げを見つめた。 試合前「ファンに喜んでもらえるような試合にしたい。自分のことで感傷的になるようなことはない」と話していた新井。勝利で終えることはできなかった。

◆2年連続9度目の日本一を決めたソフトバンクはパ・リーグ球団史上初のセ・リーグ6球団を全て倒した。 南海、ダイエー時代を含めて広島と対戦するのは初めてだった。これまでシリーズでは巨人(1959年)、阪神(1964、2003、2014年)、中日(1999、2011年)、ヤクルト(2015年)、DeNA(2017年)を下して日本一になっており、パ・リーグで初めて現セ・リーグ6球団を倒したチームになった。 なお、セ・リーグでは巨人の1989年の日本シリーズで近鉄を下し、パ・リーグ6球団制覇をしている。

◆ソフトバンクが4連勝で、広島を下し通算4勝1敗1分けで2年連続9度目の日本一に輝いた。広島は34年ぶり4度目の日本一はならなかった。 シーズン2位から下克上で、パ・リーグ球団では史上初となるセ・リーグ6球団制覇を達成した。 工藤監督は2年連続3度目の頂点。選手時代に11度、監督3度で計4度の日本一は、王会長の13度(選手11度、監督2度)を抜き単独3位となった。 試合はソフトバンクが先手を取った。4回、先頭柳田が四球で出塁すると中村晃が左前で続き無死一、二塁。内川が2戦連続となる犠打を決め1死二、三塁とし、続く西田のスクイズで先制した。 続く5回2死走者なしからグラシアルが、広島先発ジョンソンから左越えに日本シリーズ初となるソロアーチで加点した。 先発バンデンハークは6回を4安打無失点、10奪三振の好投。先発マスクの甲斐も初回に日本シリーズ新記録となる5連続盗塁を阻止。2回にも二盗を阻止し6連続と記録を更新し先発バンデンハークを強力サポートした。 7回からは武田、嘉弥真、9回は守護神・森とつなぎ完封リレーで頂点をつかんだ。

◆「運が良かった」。「ラッキーでした」。ソフトバンク柳田悠岐外野手は、2年連続日本一をつかんだ自身の活躍を、きっとこう表現するだろう。 今季は首位打者、最高出塁率のタイトルを獲得し、本塁打と打点は自己最多をマーク。CSファイナルでもMVPを取ったが常に謙虚だ。どんな結果にも「たまたまです」と話し、力をひけらかすことを一切しない。 当然、運をつかむだけの努力があるからこそだ。今年は「調子は別に良くない」と言い続けた。結果が良くても悪くても、「毎回ピッチャーも違えば、球も違う」と毎日、最善を求めてフォームを模索した。年下の選手やスタッフの声にもいつでも真摯(しんし)に耳を傾けた。「はまるかはまらないかはやってみないとわからない」という小さな修正を重ね、1年間不調の波を作らず打ち続けた。おごりを知らない最強打者に野球の神様がほほえむのは必然だった。

◆ソフトバンクが日本シリーズで広島に勝ち通算4勝1敗1分けで、2年連続日本一に輝いた。球団初となる2位からの下克上だった。MVPには日本シリーズ新記録となる6度連続の盗塁阻止で勝利に大きく貢献した甲斐拓也捕手が選ばれた。 広島の主砲鈴木誠也が三塁ゴロに倒れゲームセット。マウンド付近に歓喜を輪ができた。工藤公康監督(55)の体が胴上げで14度宙を舞った。 勝利監督インタビューで工藤監督は感無量の様子だった。 「選手達がシーズン終盤から休むことなく、満身創いの中で突っ走ってくれたおかげで日本一になれたことを幸せに思う。本当にありがとう。(2位からの日本一は球団初快挙)僕は初めてだけど、2位という悔しい思いをして頑張ろうと、そういう思いが日本一になれたのではないかと思っている。(1、2戦勝ちなしから本拠地で3連勝)福岡にいる皆さんの後押しで本来の形ができて3連勝できた。(4勝1敗1分け)本当に広島さんは強くて、どこで復調するか、逆転されるかと僕の心臓はドキドキして見ていた。お互いに切磋琢磨してわずかの差で僕らが勝てたと思う。(短期決戦の戦い方について)僕だけじゃなく投手コーチと何度も何度も話をして第2先発を作ったほうがいいのではないかとか、アドバイスをもらって、いろんなアイデアをいただいたことがここにつながったと思う。僕は日本一幸せな人間です。選手のみんなありがとう」と叫んだ。 工藤監督は、負ければ敗退のCSファーストステージ、3位日本ハムとの第3戦が「心臓の音が聞こえるくらいドキドキした」という。試合前のシートノックを眺めながら「今日で今年は終わるのかも」とも覚悟した。 CS、日本シリーズでは先発は5回まで持たせず早めの継投が多かった。不振の松田宣浩を外し、三塁にグラシアルを入れるなど、打線も日替わりオーダーだった。 「短期決戦の戦い方。選手には申し訳ない気持ちでいるし、本来は使って、信じて使って負けたらしょうがないじゃないかと、そこまで自分の中でも考えたが、それでもやっぱりみんなが笑って終われるようにしないといけない。それが僕の責任」(工藤監督)。 心を鬼に、選手のプライドより、チームの勝利を最優先した。この日、4回の先制点も6番の内川主将に犠打を命じ、高校野球ばりに西田のスクイズで点をもぎ取った。 選手で11度、監督で2年連続3度目の日本一。選手、監督で最多となる14度の頂点を知る工藤監督は、短期決戦での先制点の重みが相手に多大な重圧となることを一番分かっていた。 秋山前監督からバトンを託され、2015年から4年間で3度の日本一。常勝軍団へと導いた工藤監督が、最後は選手たちを笑顔に変えた。

◆ソフトバンクが4連勝で、広島を下し通算4勝1敗1分けで2年連続9度目の日本一に輝いた。広島は34年ぶり4度目の日本一はならなかった。シリーズMVPには、シリーズ新となる6連続盗塁阻止記録を樹立したソフトバンク甲斐拓也捕手が選出された。 「甲斐キャノン」と恐れられる強肩を存分に発揮した。第4戦までに4連続盗塁刺を決め、52年広田順(巨人)、58年藤尾茂(巨人)の連続記録に並んだ。この日の第6戦、1回1死一塁で田中の二盗を阻止し単独トップに立つと、2回2死一、三塁から一塁走者安部の二塁盗塁を完璧なタイミングで刺した。シリーズを通して、広島の機動力を封じ込めた。 10年育成ドラフト6位から8年目。今年は育成ドラフト入団選手として史上初となる球宴出場も果たした。「育成の星」にまた新たな勲章が加わった。

◆パ・リーグ2位から勝ち上がったソフトバンクがセ・リーグ3連覇の広島を2―0で下し、2年連続9度目の日本一に輝いた。対戦成績は4勝1敗1分け。最高殊勲選手(MVP)には6連続で盗塁を阻止したソフトバンクの甲斐拓也捕手が選ばれた。

◆4連勝で2年連続日本一!ソフトバンクが、セ・リーグ3連覇の広島を2-0で下して対戦成績を4勝1敗1分けとし、前身の南海、ダイエー時代を含めて2年連続9度目の日本一に輝いた。 就任4年目の工藤公康監督は、昨年に続いて3度目の日本一。優勝監督インタビューは次の通り。 -胴上げで15回も宙に舞いました 工藤監督 最高に幸せでしたし、ほんと選手たちがシーズン終盤からほぼ休むことなく、ここまで満身創痍(そうい)の中、突っ走ってくれて、ほんとに最後こういう形で日本一になれたことを本当に幸せに思いますし、選手のみんな、本当にありがとう。 -リーグ2位から勝ち上がっての日本一。球団史上初めての快挙 工藤監督 2位というね、悔しい思いをして。みんなでとにかく、日本一目指して頑張ろうと、その強い思いが、ここまで来られたというふうに思いますし、選手の誰1人、それを疑わずここまで来られたっていうことが、日本一になれたというふうに思ってます。 -1、2戦、白星がないまま福岡に行きました。しかし本拠地で流れを変えた 工藤監督 福岡にいるファンの皆さんの後押しで、本来の自分たちの形であったり野球がしっかりやることができました。その中で3連勝できたんじゃないかと思います。 -相手はセ・リーグ覇者の広島カープ。素晴らしい戦いでしたね 工藤監督 本当に広島さんは強くてね、どこで復調するか、逆転されるかと、僕の心臓もドキドキしながら、常に試合を見てましたけど、ほんとに強いチームでしたし、1つになって日本一を目指そうと、お互いは切磋琢磨(せっさたくま)することができて、ほんとわずかの差で僕らが勝ったんじゃないかと、いうふうに思います。 -采配面を振り返ると、CSから短期決戦という割り切りをして、思い切って先手先手でピッチャーも代えていきました 工藤監督 これは僕だけじゃなくて、ピッチングコーチと何度も何度も話をしながら、先発、それと第2先発と、いう形を作ってやったほうが、短期決戦においてはいいんじゃないかと、アドバイスもいただいた中で、やることができたので、そういう意味ではピッチングコーチのみんながね、いろんなアイデアを出してくれたことが、ここにつながってると思います。 -全国のホークスファンに向けて、日本一の報告、そしてメッセージを 工藤監督 きょう来ていただいたホークスのファンの方、本当にありがとうございました。そして福岡で、待っていてくださるファンの皆さんも、ほんとに日本一という報告をできることをほんとうれしく思います。そして全国にいるホークスのファンの皆さん、ほんと選手の頑張りで日本一になることができました。僕は日本一幸せな人間です。選手のみんな、ほんとに1年間ご苦労さまでした。ありがとう!

◆広島新井貴浩内野手が現役生活を終えた。9月に今季限りでの引退を表明。以後も日本シリーズまで登録を外れることなく、主に代打として、最後まで第一線で戦った。 現役最終戦も代打だった。0-2の8回先頭。武田の前に遊ゴロに倒れた。最後の打席になる可能性もあったが、まだ戦いの途中。場内の大きな拍手に対しても、少し笑みを浮かべただけだった。そのまま9回表の一塁守備にもつき、試合終了の瞬間はベンチで迎えた。日本一に届かないままユニホームを脱ぐことになった。 「もちろん悔しさもあるが、それ以上にみんなにありがとうという気持ちが強いです。本当に感謝したい。かわいい後輩たちに、ありがとうしかない。日本一には届かなかったけど、シリーズ中は選手みんなの必死さがすごく伝わってきた」と柔和な表情で話した。 リーグ3連覇が置き土産になった。主力に20代の選手が多い中で、最年長の新井が模範になり、調整役にもなってきた。来年以降は違った形でのチームの成熟が求められる。今後のカープについて聞かれると「いつも言うけど、カープは家族のようなチームと思っている。今、すごく結束している。それを若い選手、2軍で頑張っている選手、これから入って来る選手たちが引き継いでいってほしい」と願いを込めた。 最後には30人近くいた報道陣1人1人を見渡すように「ありがとうございました」と何度も頭を下げ、笑顔を見せた。

◆ソフトバンクは3日、9度目の日本一を記念して「日本一記念グッズ」の発売や、記念キャンペーンを3日から実施すると発表した。 ホークス公式通販ショップやオフィシャルショップ「ダグアウト」で、Tシャツ、パーカーなどを発売。タカポイントでの「ポイント交換送料割引キャンペーン」や、公式通販ショップで完全送料無料キャンペーンも実施する。

◆2年連続9度目の日本一に輝いたソフトバンクの優勝記念会見が試合後に行われた。工藤監督、柳田悠岐外野手、甲斐拓也捕手の3人が壇上に並び喜びを口にした。 工藤監督に続き、ナインに胴上げされた広島出身の柳田は「夜空がきれいで心地よく、先輩方にも上げていただいて感謝の気持ちでいっぱいです」と故郷の空を万感の思いで見つめていた。「ドラフトのときも上げていただいて、それ以来(胴上げは)8年ぶりでしたけど、いい思い出ができました」と話した。 第6戦は3打数無安打に終わったが、第5戦では延長10回にサヨナラ本塁打を放ちチームに勢いをつけた。しかし、第1、2戦では厳しい内角攻めに苦しむなど苦戦したとあり、広島の印象について「(投手の)球も強いしコントロールも良かった。打つのは難しいと思ったけど前打者がチャンスを作ってくれて楽に打席に入って打点をつけることができた。塁に出れば後ろが返してくれた。チームメートのおかげで日本一になれた」と感謝の言葉をつづった。

◆ソフトバンクが4連勝で、広島を下し通算4勝1敗1分けで2年連続9度目の日本一に輝いた。 シーズン2位から下克上で、パ・リーグ球団では史上初となるセ・リーグ6球団制覇を達成した。 日本シリーズの表彰選手は次の通り。 ▽最高殊勲選手 甲斐(ソフトバンク) ▽優秀選手 森、柳田、中村晃(以上ソフトバンク) ▽敢闘選手 鈴木(広島)

◆ソフトバンクが歓喜のビールかけに酔った。試合後に広島市内の特設会場に移動し、祝勝会を開いた。 後藤球団オーナー代行兼社長、王球団会長、工藤監督のあいさつにの後、今季の球団スローガンである「もう1頂!」のかけ声で鏡割り。続いて壇上に立った柳田選手会長が「最高ー」と号令をかけた。3000本のビールなどがあっという間にはじけ飛んだ。 工藤監督は「1年間ありがとうございました」と選手、ファンに感謝した。

◆MVPに選ばれたソフトバンク甲斐拓也捕手が優勝会見で喜びを語った。 -先ほど、工藤監督からお褒めの言葉もありましたが、MVPの気分は 甲斐 監督からほめてもらうと素直にうれしいです。 -6回も盗塁を阻止しました 甲斐 そこは投手の方のけん制、クイックなど工夫してくれた結果です。今日も野手の方の素晴らしいタッチもありました。自分だけの力ではできない。感謝の気持ちでいっぱいです。 -肩の強さでの勲章でした 甲斐 昔から自分の長所はここだと思ってやってきた。育成時代からこれをアピールするんだという気持ちでやってきた。この舞台で結果を残せたのはうれしい。 -甲斐キャノンと言われたことには 甲斐 自分ではあまりそんなにいいとは思ってないが、素直にうれしいです。 -広島の足の印象は 甲斐 塁に出て、何かを仕掛けてくると思っていたので準備はしていた。常に何かあるなと思っていました。 -プレシャーは感じてましたか 甲斐 怖い部分もあったが、投手もしっかり対応してくれた結果です。 -広島打線に対してのリードは 甲斐 何があるか分からない、素晴らしい打線でした。1球1球気が抜けなかった。自分の選択ミスが負けを呼ぶことがあると思っていたので怖かった。 -それでも投手が向かっていった 甲斐 頼もしかった。本来は自分がリードしないといけないが、支えてもらった部分もたくさんあった。 -1シーズンを振り返って 甲斐 まだまだ力不足のところはたくさんあるし、もっともっと勉強して捕手として投手をリードできるように頑張りたい -盗塁阻止についてコーチなど、どんなアドバイスをもらいましたか 甲斐 吉鶴コーチにはたくさんアドバイスをもらった。こまかに動きのアドバイスももらった。タイミングが合ってないなど。そのおかげで自信をもって臨むことができた。 -高谷捕手はどんな存在ですか 甲斐 存在は大きかった。このような素晴らしい賞をもらえたのも、高谷さんの力もあってこそです。(試合の)しんどい最後の部分は守ってくれた。自分は力不足です。 -ファンへのメッセージは 甲斐 シーズンは2位だったが、ファンの熱い声援で日本一になれた。いいときも悪い時も声援を送ってくれて感謝したい。

◆ソフトバンク柳田悠岐外野手が優勝会見に臨んだ。 -選手会長で日本一の味はどうですか 柳田 苦しいシーズンだったが、日本一という結果にホッとしてます。 -胴上げの気分は 柳田 夜空がきれいで、心地よく、先輩方に上げてもらって感謝の気持ちでいっぱいです。 -広島の地でした 柳田 ドラフトの時に上げてもらって以来、8年ぶりでいい思い出ができました -広島から厳しい攻めを受けました 柳田 球もコントロールもよかった。打つのは難しいが、前の打者がチャンスをつくってくれて、楽に打席に入って点がとれた。また自分が塁に出れば後ろが打ってくれた。チームメートのおかげです。 -苦しい時期を乗り越えた 柳田 監督と選手みんなで食事にいって、選手が思っていること、監督が思っていること、いろいろ話し合った。楽しく食事できた。それでチーム一丸というか、いい波が来ました。チームの勢いが乗ってないなかで、どうしたらいい方向にいくか、選手みんなが思い思いのことを言って、監督さんも受け入れてくれた。ありがたかったし選手もそんな監督を勝たせたいと思った結果だった。 -サヨナラホームランもありました 柳田 あそこだけでした。いい感じにできたのは。でも試合を決める1本が4勝分の1回で出て良かった。微々たる貢献ですけど良かった。 -内川選手がバントしたときなど、いい雰囲気でした 柳田 内川さんほどの打者でもチーム打撃に徹してくれて、良くなった。松田さんもロッカーで打撃のことを考えていた。そんな姿を見てましたが、ゲームでは選手たちを鼓舞してくれた。自分たちもやらないといけないなと思った。 -選手会長としてチームの強さは 柳田 ガムシャラに、チームが束になっていけるところです。 -広島の印象は 柳田 元気がよくて走攻守もいい。チーム一丸というのは、うちと同じスタイルと感じた。 -福岡のファンにメッセージを 柳田 1年間、熱い声援をいただいた。そのおかげで日本一を取れたし、感謝してます。ファン感謝祭でお返しをしたいと思います。

◆ソフトバンク選手らは、試合後、広島市内のホテルで祝勝会を行った。 2年連続日本一に、後藤オーナー代行が「レギュラー2位の悔しさをもとに、よく戦ってくれました。今年は全員野球で勝ち取った日本一だった。次々と離れるなか、いない人にも感謝したい」と話し、王球団会長も「みんなおめでとう。すごかった。素晴らしかった。どんな形でも負けない強さを感じた。長くいるけど、今が一番強い。しばらく野球しなくていいから。気分転換してね。壊すくらいにね」と振り返った。 工藤監督は「素晴らしい日本一。力が思いがひとつになってもう1頂ではないが、日本一になってありがとうございます。忘れてはいけないのはファンのみなさんの支えがあったこと。私も選手に感謝してます。15回も胴上げしてもらってこんな幸せな男はいない。支えてくれたスタッフさんや、みなさんありがとうございました。この喜びを精いっぱい、出すだけ出して、浴びるだけ浴びて。明日からは休みです。まだ練習する人もいますが。喜んで下さい」とあいさつした。 柳田選手会長が「王球団会長が、壊すくらいやっていいということなので最高に盛り上がりましょう。サイコーのかけ声でいきましょう! サイコー」と祝勝会がスタート。チーム全員で2年連続日本一の喜びに浸った。

◆パ・リーグ2位から勝ち上がったソフトバンクがセ・リーグ3連覇の広島を下し、2年連続9度目の日本一に輝いた。対戦成績は4勝1敗1分け。最高殊勲選手(MVP)には6連続で盗塁を阻止したソフトバンクの甲斐拓也捕手が選ばれた。 ▼公式戦2位のソフトバンクが2年連続9度目の日本シリーズ制覇。リーグ優勝チーム以外の日本一は07年中日(2位)10年ロッテ(3位)に次いで3度目(04年西武、05年ロッテは勝率2位も、プレーオフを勝ち抜き優勝)。 07年中日と10年ロッテは公式戦で首位が40日以上あったのに比べ、ソフトバンクの首位は3球団が1勝で並んだ開幕日(3月30日)だけ。公式戦で首位が1日しかないチームの日本一は初めてだ。 ▼00年に敗退後は03、11、14、15、17、18年と続けてV。出場6連続Vは61、63、65~73年巨人の11連続に次ぎ、86~88、90~92年西武と並び2位タイ。初対戦の広島に勝ち、ソフトバンクはセ・リーグ6球団から勝利。6球団以上と対戦は巨人(7球団)西武に次いで3球団目だが、6球団から勝利は巨人と並び最多で、巨人以外の5球団には1度も負けていない。 これで13年楽天から6年連続でパ・リーグチームが日本一となり、同一リーグの6連覇はV9巨人の65~73年セ・リーグ以来2度目。

◆ありがとう、新井さん-。広島新井貴浩内野手(41)が、20年間のプロ野球生活に幕を下ろした。日本シリーズはソフトバンクに1勝4敗1分けで敗退し、新井の現役最後の試合となった。8回、先頭打者の代打で登場し、本拠地の大歓声の中、遊ゴロ。34年ぶり日本一で花道を飾ることはできなかった。 新井コールが幾重にも連なった。8回、代打で2-2から武田の直球をフルスイングした。遊ゴロ。歯を食いしばって一塁へ疾走。全力プレーを貫いた。家族が見守る中、これが最後の打席となった。9回は守り慣れた一塁に入り、終戦を迎えた。ベンチで腕組みし、ソフトバンクの胴上げを見つめた。 「最後まであきらめていなかった。もちろん悔しさもあるが、それ以上にみんなにありがとうという気持ちが強い」。敗戦直後はチームメート1人ずつと握手して感謝を伝えた。 体力、技術の衰えは感じない。食欲もそう。よく同席する球団スタッフは変わらぬ食事量に驚く。動体視力の低下もないという。「よくベテランが真っすぐを捉えたと思って空振りとか言うでしょ。でも自分は去年、12球団で真っすぐをヒットにする確率が一番高かったんですよ」。今季は変化球で攻められ「それを狙い打った」。まだまだ現役でやれる。でも、惜しまれつつ、ユニホームを脱ぐ。「自分が決めたことだから」と後悔はしていない。 金本前阪神監督とチームメートだった中堅時代、大目玉を食らった。チャンスで凡退し、悔しくてベンチにヘルメットを乱暴に置いた。試合後、尊敬する兄貴分から「あの行動は何や! 野球は1人でやるんとちゃう。チームの雰囲気が悪くなる」と殴られかけた。怒りを示すより先にやることがあると教えられた。それが今も生きている。チームは家族同然なんだと。 今シリーズ第5戦は7回に代打で登場。そのまま指名打者に入ったが、延長10回は代打曽根を送られた。「自分が代わったことじゃなくて、海成、頑張れと思っていた。頼むぞと。代打でバントってすごくプレッシャーがかかる。すごいよね。一発で決めるんだから」。悔しさよりも、後輩を全力応援。その姿勢が実に新井らしい。 「カープは家族のようなチーム。今みんなすごく結束している。引き継いでいって欲しい」。果たせなかった日本一は後輩に託す。記録にも記憶にも残る希代のスター。ありがとう、新井さん。感謝を込めた歓声は、いつまでも続いた。【大池和幸】 ◆新井貴浩(あらい・たかひろ)1977年(昭52)1月30日、広島県生まれ。広島工-駒大を経て98年ドラフト6位で広島入団。05年に球団タイの6試合連続本塁打。07年オフにFAで阪神移籍。08年北京五輪では日本代表の4番を打った。同年12月から12年まで労組プロ野球選手会会長。 14年オフ、阪神に自由契約を申し入れ広島復帰。通算2000安打を達成した16年に打率3割、101打点でリーグMVP。05年本塁打王、11年打点王。ベストナイン2度、ゴールデングラブ賞1度。実働20年の通算成績は2383試合、7934打数2203安打(打率2割7分8厘)、319本塁打、1303打点。189センチ、102キロ。右投げ右打ち。

◆ソフトバンク甲斐拓也捕手(25)が日刊スポーツに手記を寄せた。正捕手としてチームを支え、連続盗塁阻止で日本シリーズ新記録を樹立するなど「甲斐キャノン」で広島の機動力を封じ、日本一に大きく貢献した。進化した「甲斐キャノン」。そして真の正捕手へ。思いを明かした。 2年連続の日本一を勝ち取れて本当に良かったです。広島が走ってくるのは最初から頭にありましたし、手ごわい打線でした。投手が頑張った結果だと思うし、僕はリードしきれなかったと思うことばかり。いろんな方に、感謝の思いでいっぱいです。思えば14年6月の初めての1軍戦も広島でした。すごく昔のように思えますね。 「甲斐キャノン」と言って注目してもらえるの素直にうれしいですが、盗塁阻止はピッチャーとの共同作業。ピッチャーがけん制、クイック、リズムを変えたり、頑張ってくれた結果だと思います。 スローイングについては昨年と大きく変えた部分はありませんが、投げ方に関しては工夫して、意識しているところがあります。肩で投げるという人も多いけど、ぼくは手首で投げるタイプ。最終的に離れるのは指先だと思っています。結局、指にかかればいい。 僕は練習の時のキャッチボールで全部考えています。肩や肘の状態とか。投げる感覚も毎日違う。キャッチボールで悪い日は、そのまま投げればワンバウンドになる。自分の状態が分かれば、今日はここに投げようとか、ちょっとしたことですけど、その微調整がうまくいく。去年は疲れもあって、正直に言うとだいぶ肩に疲労がきていました。今年も最初は全くうまくいかなかった。1割も刺せなかったんですよね。それでどうしようかなと思って、考えました。あとは試合前のシートノックで二塁に投げて確認して、の繰り返し。球場によっても変わります。マツダスタジアムは外だし、風もあるし、(ZOZO)マリンとかとも違う。景色も変わります。ベース間の長さは全部同じでも、遠く見える球場、近く見える球場もあります。シートノックで早くそこの感覚をつかむのが大事だと思っています。今回のシリーズではうまくいきましたが、マツダでの第1戦でのシートノックの時に、低く投げても届くなというのが分かった。いつもと一緒でも伸びている感じがあったんです。最終的に僕は、盗塁されてもホームベースを踏ませなければいいという考え方。それができていたのは元チームメートの細川亨さんだった。そういうキャッチャーになりたい。盗塁されても、最終的にバッターを抑えられたらいいと思っている。点を与えないキャッチャーになりたいです。開幕当初は高谷さんらがけがで、ほぼ1人でマスクをかぶりました。きつかったでしょう、しんどかったでしょう、とよく言われたんですが、逆でしたね。充実感があった。ああ、野球やってるなという感じでしたね。勝ちも負けも、キャッチャーの責任。負けたらキャッチャーのせいだと思っています。それを全部味わえていた。このピッチャー、このチームを勝たせたい。やられたら、明日はこういうふうにして絶対勝とうと考えていた。キャッチャーとしての充実感がありました。しんどかったとかは全くありませんでした。僕は全部出て、キャッチャーだと思っています。日本一の瞬間にマスクをかぶって、ピッチャーと抱き合う。そこは今年もできませんでした。味わいたいという、本音の気持ちはあります。まだまだ自分に足りない部分もある。信頼してもらえるキャッチャーになれるよう頑張ります。1年間、応援ありがとうございました。(ソフトバンク捕手)◆甲斐拓也(かい・たくや)1992年(平4)11月5日生まれ、大分市出身。楊志館から10年育成ドラフト6位でソフトバンク入団。登録名は「拓也」。13年オフに支配下登録され、14年プロ初出場。17年に本名の「甲斐拓也」に登録名を変更。同年はレギュラーとして日本一に貢献し、ベストナイン、ゴールデングラブ賞。今季推定年俸4000万円。170センチ、80キロ。右投げ右打ち。

◆ソフトバンク柳田悠岐外野手(30)が故郷で宙に舞った。「ドラフト以来」という胴上げで祝福され、「広島で日本一を決められ幸せ。めちゃくちゃ気持ちよかった」と笑った。「一番野球が好きだった」と冗談交じりに振り返る小学生時代は、野村謙二郎の背番号7に袖を通し、広島市民球場の右翼席でスクワット応援をした。「きつすぎた」という広島商時代も過ごし、広島経済大で礎を築いた。「(胴上げは)夜空がきれいで心地よく、感謝の気持ちでいっぱいです」。生まれ育った大好きな街で歓喜に酔った。 初めて「選手会長」として迎えた8年目。チームの士気に影響を与える立場を自覚する。7月末、首の故障で欠場が続いた。球団の発表は軽度の頸椎(けいつい)捻挫。実際の症状はもっと重かったが、検査のため病院に行ったことすら隠そうとしたこともあった。9月16日、西武戦前には頭部に練習の打球が当たった。翌日から脳振とう特例措置で出場選手登録を外れたが、ベンチ裏には明るい柳田の姿があった。ベテラン松田宣と「おう、ずる休み」。「くそっ、松田さんが当たれば良かったのに」。周囲に笑いを呼ぶやりとりで、必要以上の心配をかけないよう努めた。 「試合に勝つことが一番」。自分の記録より、どんな形でもチームが勝てば喜んだ。この日は無安打だったが、4回先頭で四球を選び、西田のスクイズで「日本一」の決勝ホームを踏んだ。やっと監督を胴上げできた。ふるさと広島がもっと好きになった。【山本大地】

◆ソフトバンク工藤公康監督(55)が、2年連続で日本一監督となった。シーズン2位で短期決戦に入ると、勝利だけを追求した「聖域なき采配」を連発。主将の内川に2戦続けて送りバントを命じ、続く西田のスクイズで先制点を奪取。松田宣は第6戦の出場がなかった。随所に執念のタクトを駆使し、球団史上初、リーグ2位から下克上日本一を達成した。 15回も舞った。工藤監督は「あんなにたくさん上げてもらうとは。みんなの手を感じて、みんなに支えてもらってるんだなと。うれしい思いがこみ上げて、王球団会長にあいさつに行った時にはこらえられなかった」。選手たちの喜びを感じたことがうれしかった。 執念の采配で日本一を決めた。4回無死一、二塁から内川の送りバントで二、三塁に進めた。主将がシリーズ2度目の犠打を決めると最敬礼した。つかんだチャンスは絶対に逃せない。続く7番西田にはカウント0-1からスクイズを命じ、先取点をもぎ取った。 「短期決戦に、こうすれば勝てるという正解はない」。現役時代、3球団で14度シリーズに出場した経験も生かし、短期決戦用の戦いに切り替え徹した。武田、石川を第2先発にして早めの継投で相手を封じた。 CSファイナル第3戦から、工藤政権4年間で今シーズンの1度しかスタメン落ちがない松田宣を外した。「実際、外していいものか悩んだ。だが、今勝つためにはやらなければ」。この日の第6戦では、ついに就任後初の出番なし。大きな決断だった。シーズン中も重い断を下した。8月16日に心身ともに疲れ切っていた内川を抹消した。「2000安打を達成した達成感もあっただろうし、何か迷っていた。考える時間も含めて体をよくしなさいと」。3位だったチームはそこから9連勝。勝ち続け、2位となった。自身が外れ好調となったチームに戻りにくかった内川も、CSファイナルで復帰。「また戦力になってくれた。主将の復帰は大きい」。36歳の内川、35歳の松田宣への聖域なき決断は、強いメッセージとなった。今季、打の柱だった柳田にも、9月16日、西武戦の練習中に打球を受けたことに対しては厳しかった。「彼自身、そういうところでストレッチをやっていればボールが飛んでくると分かったはず。ケガはよくないが、失敗して学ぶことで大きな野球選手になる」。防げたケガで直接対決に出られなかった事実を糧にすることを期待した。「1人1人が何をすべきか理解している」。能力の高い選手たちが、言わずとも自ら動く大人のチームになったことを認める。就任時に「茶髪、ヒゲ、ガムなど禁止」と厳しい姿勢を打ち出したが、今年8月にはガムを解禁。茶髪、ヒゲも黙認している。だが工藤監督は「よくなかったかな。今は認めているけど、来年は締める。キャンプも厳しいものにする」と言った。2年連続日本一でも、リーグ優勝は逃した。選手に歩み寄るばかりでは、組織として強くならない。来季は契約最終年。自分にも選手にも厳しく、リーグ優勝奪回からの3年連続日本一を目指す。【石橋隆雄】◆工藤公康(くどう・きみやす)1963年(昭38)5月5日、愛知県生まれ。名古屋電気(現愛工大名電)から81年ドラフト6位で西武入団。94年オフにダイエー、99年オフに巨人へFA移籍。07~09年は横浜。10年に西武復帰後、無所属だった11年12月に引退表明。プロ野球最多タイの実働29年で通算224勝142敗3セーブ、防御率3・45。93、99年リーグMVP。最優秀防御率、最高勝率を各4度、最多奪三振2度。選手で日本シリーズ出場14度は王(巨人)に並ぶ最多。計11度の日本一。15年にソフトバンク監督就任し、15、17年日本一。87、15年正力賞。16年殿堂入り。

◆一塁側ベンチで背筋を伸ばした広島緒方孝市監督(49)は、最後まで表情を変えなかった。「勝つチャンスは十分にあった。力の差は感じていない。自分の力不足。期待に応えられずに本当に申し訳ない」。指揮官として2年ぶり2度目の挑戦となった日本一への道のりはまたもかなわず、本拠地マツダスタジアムで涙をのんだ。 王手をかけられて迎えた本拠地試合。攻めのタクトは空回りした。1回、田中の盗塁は1度セーフと判定されるもリクエストの結果アウトに。続く2回は2死一、三塁から、二盗を狙って失敗。打順は下位の8番石原。2ストライクというバッテリー有利なカウントからの盗塁死に、広島ベンチの空気は一気に重くなった。8番からの攻撃となった3回を3者凡退に抑えられると、以降は二塁すら踏むことができなかった。 セ・リーグを圧倒した戦い方を貫くつもりだった。打力は太刀打ちできた。先発中継ぎの駒不足は差となって表れ、何より持ち味の足技がソフトバンクの守備力の前に封じられた。「選手はカープの野球を信じて最後まで戦ってくれた。ソフトバンクに隙がなかった」。シリーズ通して9度狙った盗塁はすべて阻まれた。 勝ちたかった。この日、指揮官に大きな影響を与えた1人、三村元広島監督の命日だった。3連敗を喫した翌2日の移動日前には、実家の佐賀・鳥栖市にある母の墓前で手を合わせた。同日も、父のいる実家には立ち寄らず、午前8時過ぎには広島に戻った。日本一になってから報告するつもりだった。監督就任以来、4年かけたチームでの日本一は自分だけでなく、選手、球団、ファンが願った夢。その道のりは険しく、厳しいものだとあらためて痛感させられた。【前原淳】

◆広島新井貴浩内野手(41)が、20年間のプロ野球生活に幕を下ろした。日本シリーズはソフトバンクに1勝4敗1分けで敗退し、新井の現役ラスト試合となった。最後となった打席は8回先頭の代打で遊ゴロだった。34年ぶりの日本一で、引退の花道を飾ることはできなかった。 三振だけはするなよ。新井の打席を、そんな思いで見ていた。新井の出番はどこで来るのか。チャンスでの代打ならいいけれど。そう思って試合を見ていた。抑え込まれている流れを変えようということか8回の先頭で打席に入った。しかし結果は遊ゴロ。安打は出なかったが一塁まで一心不乱に走る姿を見ていた。 日本一で引退になれば最高だった。しかし、そんなにうまくはいかない。ソフトバンクは故障者が出ても、それを補って勝った。底力があった。勝つものがいれば、負けるものがいるのが勝負の世界。それでも引退が決まっているのに最高の舞台で戦力としてベンチに入っていたのは本当に幸せなことだと思う。 観客が少なかった広島市民球場時代、さらに阪神に移籍していたことを考えれば、この満員のマツダスタジアムで、日本シリーズで、選手としての最後を迎えられるとは新井本人も予想もしていなかったことではないだろうか。 25年ぶりに広島がリーグ優勝した一昨年。ボクも本当は日本シリーズが終わってから引退を表明するつもりだった。でも「ファンが最後の姿だと分かって黒田さんを見たいんじゃないですか」と言ってきたのは新井だった。そう思って、シリーズ前に引退を明かした。 長い時間を彼と過ごしてきたが本当にじっくり話すようになったのは03、04年ぐらいからだろうか。新井が主砲、ボクがエースと言われるようになったころだ。どうしたらチームを強くできるか。どうやったらカープが強くなるのか。そんなことを話しながら酒を飲んだものだ。 ともにFAでチームを離れたが広島に戻ってきた。復帰は同じ14年のオフ、15年のシーズンだった。彼が復帰を迷っているようなので「お前のプレースタイルはカープに絶対、合う。チームが声を掛けてくれてるんだったら戻るべきだ」と言った。 広島に戻ってきたこの4年間の新井は泥まみれになってがむしゃらにやっていた。40歳前、そして40歳を超えた体であれだけやったのはすごい。若い選手たちは、今は体も動くし、思うようにプレーもできるだろうし、その状態はまだよく分からないだろう。でも自分が40歳近くになったとき、新井のこの4年間の姿を思い出してほしい。 新井がいなかったらボクも復帰して活躍できなかっただろうし、リーグ3連覇もなかったと思う。だけど彼が広島に戻ってきたことの最大の意味は若手にあの姿を見せたことだと思う。今はお疲れさんという言葉しか浮かばない。(元広島投手・黒田博樹)

◆広い肩幅で、極上のダークスーツをパリッと着こなす。真っ赤に染まったマツダスタジアムのマウンドへ、広島出身の歌手で俳優の吉川晃司(53)が大歓声を受けて向かった。 少年時代はカープの帽子をかぶって通学した生粋の広島ファン。TBS系列のドラマ「下町ロケット」に帝国重工の財前部長役で出演中で、ドラマと同じスーツを脱げば、ベストの背中に「カープ坊や」が現れた。「どこかにカープをつけておきたかった」と、ワンバウンド始球式を苦笑いで振り返った。 広島が最後に日本一になった84年、19歳の吉川は大ヒットソング「モニカ」でデビューした。今季の開幕戦は広島出身の世良公則が君が代独唱を行い、16年のCSファイナルは奥田民生が始球式に登場。今や「カープ芸人」の言葉も定着。アーティストを数多く輩出する土地柄で、そんな有名人たちからも熱烈に愛されるのが、広島ならではの光景になってきた。 吉川は、父が原爆に被爆し「被爆2世」にあたる。13年8月6日には背番号「8・6」のユニホームで始球式を行い、5回終了時に「イマジン」を独唱。忘れられない思い出は、広島が初優勝した75年、10歳の時に見た故郷の姿だった。 「初めて優勝したパレードの時にね、皆さんご家族の遺影とかを持って並んでいたのを、すごく強烈に覚えてます。みんな『おめでとう』ではなく『ありがとう』って言ってました。カープはやっぱり戦後の復興のシンボル。市民の思いから生まれた球団で、そこは他の球団と違うところがあると思います」 吉川がデビューした84年に生まれた先発ジョンソンは、6回2失点と好投した。初のリーグ3連覇で、日本シリーズに進出。34年ぶりの夢はかなわなかったが、みんなきっと「♪Oh サンクス、サンクス、サンクス、サンクス、カープ♪」なんだ。【前田祐輔】

◆パ・リーグ2位のソフトバンクが2年連続の日本一に輝いた。「SMBC日本シリーズ」第6戦で、セ・リーグ3連覇の広島を2-0で下して対戦成績を4勝1敗1分けとし、9度目のシリーズ制覇を果たした。下克上日本一の立役者は甲斐拓也捕手(25)。1、2回に二盗を阻むなど、今シリーズは6度の盗塁をすべて阻止して広島の機動力を封じた。野手としては初めて打点0で、育成選手として初めて最高殊勲選手(MVP)に選ばれた。 甲斐が「甲斐キャノン」と呼ばれる強肩で歴史をつくった。今シリーズは挑まれた6度の盗塁をすべて阻止。セ・リーグトップの95盗塁を誇った広島の足を封じてMVPまで獲得した。打撃では6戦でわずか2安打0打点だっただけに「ちょっとびっくり。僕とは思わなかったので本当にうれしい」と驚き半分で笑った。 巻き返しを狙った広島の勢いを序盤で止めた。初回1死一塁。外角チェンジアップを捕球し、体勢を崩しながらも昨年のセ・リーグ盗塁王の田中を刺した。際どいタイミングで審判の判定はセーフだったが、工藤監督のリクエストによるリプレー検証で覆った。「立ち上がりは大事にしているところ。自分でも刺せたことは大きい」。さらに2回1死一、三塁では、先発バンデンハークが転がるほど低く鋭い送球で、安部の二盗を阻んだ。「機動力を使ってくると思っていたので準備をしてきた。こういう結果になってうれしい」と感慨深げだった。 シーズン、CS、日本シリーズを合わせて157試合目。体は悲鳴をあげていた。「腰も、股関節も、膝も。痛いところだらけですよ」。シーズン終盤には12連戦もあり、回復が追いつかない。「寝ても寝た気がしない」という夜も1度や2度ではなかった。それでも、母小百合さん(51)が女手ひとつで育ててくれた強い体で、最後まで戦い抜くことができた。6回を終えると、4安打無失点で切り抜けたバンデンハークと熱い握手を交わし、笑みがはじけた。7回からは高谷にマスクを譲ったが、守備からリズムと勢いをもたらし「1つのミスもそうだけど(盗塁でも)流れを持って行かれる。シリーズ前は不安もあったけど、良かった。投手の方に感謝したい」と喜びに浸った。日本一の瞬間は昨年に続いてベンチから見守った。まだまだ進化の途中。「真の正捕手」を目指し、キャノンを磨き続ける。【山本大地】▼甲斐が1回に田中、2回に安部の盗塁を刺し、6度すべて盗塁を阻止してMVPを獲得した。1シリーズで6盗塁刺は52年広田(巨人=許盗塁3、盗塁刺6)に並ぶタイ記録で、6連続盗塁刺は52年広田、58年藤尾(巨人)の4連続を抜くシリーズ新記録だ。甲斐の打撃成績は14打数2安打、打率1割4分3厘の打点0。68年高田(巨人)が打率3割8分5厘の1打点でMVPを獲得したが、野手で打点0のMVPは史上初。打率も96年ニール(オリックス)の1割7分6厘(17打数3安打で2V打)を抜いて野手のMVP最低打率で、甲斐が「肩」でMVPに輝いた。なお、甲斐は昨年<6>戦でも白崎(DeNA)を刺しており、昨年からは7連続でアウトにしている。

◆ソフトバンク西田が、値千金の決勝スクイズを決めた。 内川が送りバントを決めた直後の4回1死二、三塁。1ストライクからの2球目を完璧に転がした。「プレッシャーなく、冷静にできた。本当なら(今宮)健太が出るところで出させてもらった。なんとか役に立ちたかった」。ポストシーズンに入り随所で効果的な仕事を果たし、勝負強さが際立った。 ▼ソフトバンクは4回に7番西田のスクイズで先制。スクイズ成功は09年第4戦森本(日本ハム)以来で、ソフトバンクでは55年第1戦蔭山以来2度目。シリーズでスクイズの勝利打点は75年第5戦大橋(阪急)に次いで43年ぶり2度目だ。4回は6番内川も送りバント。送りバント→スクイズの連続犠打は55年第1戦南海の森下→蔭山、82年第6戦西武の大田→大石、06年第5戦日本ハムの鶴岡→金子に次いで4度目。

◆ソフトバンク森が初の胴上げ投手になった。 9回に登場した守護神は菊池、丸を仕留めると、最後は今シリーズ好調の鈴木に粘られたが最後は三塁ゴロに打ち取った。「僕がここをやるとは思わなかった。できたことは自信になるし、使い続けてくれた監督、コーチに感謝します。(今日は)ブルペンでフワフワしていた」とホッとした表情を見せた。日本シリーズは5試合、5回1/3を無失点、3セーブ2ホールドで優秀選手に選ばれた。

◆ソフトバンク先発バンデンハークが、最速156キロの直球を武器に10三振を奪う快投でチームを頂点に導いた。 初回、2回と先頭打者にヒットを許したが3回以降は別人。4回には菊池、丸、鈴木を3者連続空振り三振。6回無失点の好投に真っ赤に染まるスタンドも黙らせた。「攻撃的な投球をしようと思っていた。強いストレートを投げることができた。拓也(甲斐)のリードと盗塁阻止には本当に感謝だよ」。第2戦では敗戦投手になっていただけに、しっかり雪辱も果たした。

◆初の下克上で日本一連覇を達成したホークスだが「短期決戦に弱い」レッテルを貼られていた時期があった。リーグ優勝して日本一となった03年の翌年、プレーオフ制が導入された04年も「リーグ優勝」した。ただし当時は優勝扱いではなく「勝率1位」。優勝はプレーオフを勝ち抜いたチームに与えられた。そのプレーオフで、あと1勝足りず日本シリーズに進出できなかった。ダイエーからソフトバンクとなった05年も「勝率1位」ながらプレーオフ敗退。シーズンだけなら03年から「3連覇」も、短期決戦で屈辱を味わった。 04年、5試合制だった西武とのプレーオフ第2ステージ。2勝2敗で迎えた第5戦で延長10回の末に敗れた。実は第2ステージで戦う両チームに5ゲーム差があれば1位チームに1勝のアドバンテージが与えられていたがゲーム差は4・5。この年、球界再編問題で選手会によるストライキで中止となった2試合がともに西武戦。行われていたら、1勝のアドバンテージを得ていたかもしれない。 05年、第2ステージの相手はロッテで、この年も両者のゲーム差は4・5。あと1歩でアドバンテージは与えられなかった。ロッテに2敗を喫し王手をかけられたが、そこから巻き返し、逆王手をかけた。だれもが「リベンジ」と思ったがまたも1点差に泣いた。 06年から1位球団には無条件で1勝のアドバンテージが与えられることになったが、その年は3位。第1ステージを制したが、第2ステージで1位日本ハムに連敗。沢村賞右腕、斉藤が9回サヨナラ負けで札幌ドームのマウンドに泣き崩れたシーンは有名だ。04、05年のプレーオフでは4番だった松中の不振もクローズアップされた。エース、4番が屈辱を味わった。 その歴史を真逆に塗り替えた。勝率1位チームが優勝扱いとなった後、10年にリーグ優勝を果たすと11、14、15、17年と過去9年間で5度リーグ優勝を果たし、5度日本一に輝いた。「短期決戦に弱い」ホークスが「短期決戦が得意」なホークスに変身した。 若田部投手コーチはいう。「うちは守備がいい。短期決戦はやはり最後は守り。その中で投手陣も自分の力を発揮できている。守りがいいのは心強い」。さらに今年は、内川、今宮と故障者がクライマックスシリーズ、日本シリーズから加わり、活躍。今宮は「しっかり準備できたことですね」と振り返る。コンディションは大丈夫でも気持ちで試合に入るのは難しいが、経験と準備がすんなりゲームに入っていけた。さらに「先のことを考えずに目の前のことに集中することが大事」という。12年からレギュラーを取り、4度の日本一を経験した遊撃手の言葉は重い。 今の勝負強さからは想像つかないほど勝負弱かったホークス。しかし、その屈辱があったからこそ、今年の下克上が生まれたのかもしれない。【浦田由紀夫】

◆やはり、というべきか。今年もソフトバンクは強かった。2年連続で日本一に駆け上がった。ホークスの連続日本一は14年、15年に続き、この5年で2度目。まさに圧倒的な強さを発揮していると言っても過言ではない。ホークスは平成と時を合わせて大阪から福岡にやってきた。この30シーズンで計7度の日本一は12球団最多。特に平成後期の10年間は「ソフトバンクの時代」であった。優勝5度、Bクラスは1回しかなかった。そして平成最後の日本一チームとなった。 さて、ホークスの今年を総括すると「勝った」のであろうか。それとも「負けた」のであろうか...。実はこの単純な問いに、考えれば考えるほどすっきりした答えが見いだせない。緊張感100%のクライマックス・シリーズ(CS)をファーストステージから計8試合。3位日本ハム、そして1位西武を見事に破って日本シリーズに進出。セ界3連覇の広島も撃破した。「下克上」と言われるリーグ2位からの逆襲で頂点に立った。この意味では「勝った」のであろうが、短期決戦のルール上の勝利でもある。143試合のリーグ戦を振り返れば、西武に6・5ゲーム差をつけられて2位に甘んじた。かつてのV9巨人を抜くリーグV+シリーズ10連覇をぶち上げた孫球団オーナーの思想からすれば「負けた」シーズンでもあったはず。だからこそ、元号も変わり新時代に突入する来季は「王者」のプライドを持ちつつ「挑戦者」の意気込みを忘れてはならない。 チームの世代交代が言われるが、まだ「成長期」でもある。印象的だったのは西武を下しCSファイナル突破した日のチーム祝勝会。主力選手たちは「ビールかけ」に疑問を投げかけていた。「リーグV、日本一なら堂々とできるけど、2位からのCS突破では...。(ビールかけを)やる必要はないのでは」。ある主力選手はそう話した。リーグ戦で敗れた悔しさを内包したままでは、素直に喜べないという心境だ。若手ははしゃいだ。祝勝会を取材した地元テレビ局関係者は「いつものノリではなかった。特に主力選手はほとんど(ビールかけ中の)インタビューに応えなかった」と話していた。 悔しかったのだ。選手たちは「負けた」シーズンと、その肌でしっかり感じ取っていたのだ。「強き伝統」をつむぐのは「悔しさ」の募らせ方かもしれない。シーズン2位に甘んじた悔しさを肥やしたからこそシリーズ制覇を果たせたようにも思う。勝たなくてはならない、というプレッシャーから解放された気持ちもあったかもしれない。ベテラン川島が叫んだ「俺たちは2位なんだ!」という合言葉には複雑な意味が隠されていたように感じる。「勝っても」「負けても」最後は勝つ-。本当の「強さ」を鎧(よろい)のように身にまとうための通過点の日本一でもあったように思う。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

◆反撃の旗手を託された広島の左腕ジョンソンが無念の負け投手となった。 4回、先頭柳田を歩かせ、続く中村晃に安打され無死一、二塁。内川が送った1死二、三塁で西田にスクイズを決められて先制点を奪われた。さらに5回には、2死からグラシアルに左翼へソロ本塁打を浴び、6回3安打2失点で降板。日本シリーズは今回の第2戦と16年と合わせ2勝していたが、悔しい初黒星となってしまった。

◆ソフトバンクの助っ人、ジュリスベル・グラシアル内野手(33)が、日本シリーズ初アーチをマークした。 1-0で迎えた5回2死走者なし、カウント1-2と追い込まれていたが、低めの変化球をすくい上げると、打球は左翼席に吸い込まれた。「打ったのはツーシームかチェンジアップ。崩されたけど、打った瞬間いったと思った。2アウトランナー無しだったが追加点が欲しいところで打てて良かったよ」。 4回には内川の2戦連続犠打でつかんだ1死二、三塁のチャンスから、西田がスクイズを成功させて先制。リズムをつかんだ直後だっただけに、貴重な追加点となるソロとなった。

◆SMBC日本シリーズ2018は3日、舞台をマツダスタジアムに戻して第6戦が行われる。後がなくなった広島は2日、主力が休養した。  大半の野手が午前に広島に戻って休養し、決戦に備えた。前日1日の第5戦で五回にモイネロからシリーズ1号2ランを放って復調の気配を示した丸は、「もう状態うんぬんではなく、頑張るしかない」と厳しい表情。田中も「一筋縄ではいかない。頑張ります」と覚悟を口にした。松山はマツダスタジアムで約3時間、ウエートトレーニングなどを行い、「勝つだけです」と言い残して球場を後にした。 第6戦でブルペン待機して登板する可能性について広島・大瀬良 「いけと言われればいきます」 第5戦で柳田にサヨナラ本塁打を浴びた広島・中崎 「勝つだけなので。また頑張ります」

◆日本一に王手をかけているソフトバンク・工藤公康監督(55)は2日、広島への移動前にヤフオクドームでの投手指名練習を視察。「選手全員が満足するさい配はできない」と非情に徹して、最後の1勝をもぎとることを宣言した。  優勢だからこそ、一気に決める。工藤監督は「第6戦勝負」を明言した。  「マツダスタジアムの熱気をしっかり受け止めて、この一戦にかけるぐらいの気持ちでやらないと、逆に広島に勢いをつけてしまう」  そのために、貫いてきた非情さい配をさらに加速させる。CSで松田宣をスタメンから外し、第5戦では内川に送りバントを命じた。守護神・森には八回途中から"イニングまたぎ"。決断、また決断で日本一が目前の位置まできている。  「本心は、打つべき人が打って、バントが必要な人が犠打をやる。それが理想。でも、結果が全ての世界。選手全員が満足するさい配なんてできない。選手が勝って喜ぶ姿が見たい。勝利を選手にあげたい。そのために、苦しい決断をする。それが僕の仕事です」  あと1勝のためなら、実績のあるベテランたちに再び送りバントがあるかもしれない。「体力的に限界」と映る選手たちに"酷使"を強いるかもしれない。それも、最大目標・日本一のため。スマイルの裏に隠した鬼の決断で、きょう、2年連続日本一をもぎとる。 (上田雅昭)

◆日本シリーズ1勝1分け3敗で34年ぶりの日本一へ崖っぷちの広島は2日、マツダスタジアムで一部の投手が練習を行った。今季限りでの現役引退を表明している新井貴浩内野手(41)は博多駅から新幹線で広島へ移動後は休養にあて、本拠地で戦う3日の第6戦に向けて「簡単に終わるつもりはない。負けたくない」と熱く語った。  「新井さん、頑張ってくださ~い!」  敵地で3連敗を喫し、広島駅に戻ったナインを逆転の日本一を願うカープファンの熱気が出迎えた。期待を肌で感じた新井もネバーギブアップ宣言。引退へのカウントダウンが始まっている広島生まれのスラッガーが思いを語った。  「ホームはすごい歓声がもらえるのでありがたいです。あしたの試合で終わるつもりはない。負けたくない。かわいい後輩と最後まで戦いたい」  360度真っ赤に染まる球場がナインを後押しする。本拠地マツダスタジアムでは今季、レギュラーシーズンは勝率・647(44勝24敗2分け)を誇る。巨人とのCSファイナルステージでは3連勝、日本シリーズでも第1戦は2-2で延長十二回引き分け、第2戦は5-1で完勝した。  悪夢を断ち切る。前日1日の第5戦(ヤフオクドーム)は延長十回に守護神・中崎が柳田にサヨナラ本塁打を浴びた。1勝1分け3敗となって土俵際に追い込まれたが、2年前の経験を踏まえて、プロ20年目のベテランは「どの試合も紙一重。全員の気迫をすごく感じる。2年前とは違う」と前を向いた。  2016年の日本ハムとの日本シリーズでは本拠地2連勝後、敵地札幌ドームで3連敗。再び本拠地に戻っても悪い流れを止めきれず、目の前で胴上げを許す屈辱を味わった。その悔しさをバネにした田中、菊池、丸、鈴木がこの2年で成長。新井も、負ければ日本一の夢が絶たれる大事な第6戦で20年間の集大成をみせる。  「もうあと何打席立てるかわからない。とにかく最後の最後まで諦めないで思い切ってプレーをしたいね」。本拠地3連勝で34年ぶりの日本一へ。反骨の男・新井が鷹投手陣を打ち崩して最後の花道を飾る。 (柏村翔)

◆ソフトバンクのデスパイネが左膝痛のため、今宮が左太もも裏の不安のため、それぞれベンチ入りメンバーから外れて欠場。藤本打撃コーチは「デスパイネは歩くのも痛い。(今宮は)やろうとすればできるけど、無理はさせたくない」と説明した。

◆ソフトバンクが2年連続の日本一をつかんだ。対戦成績を3勝1敗1分けとしていたソフトバンクがセ・リーグ覇者の広島に2-0で快勝。ソフトバンクがパ・リーグ2位から9度目(前身の南海、ダイエー時代を含む)の日本一に到達した。  先発のリック・バンデンハーク投手(33)が6回92球を投げて4安打無失点と好投。七回から武田-嘉弥真-森が無失点でつないだ。打線も、四回に一死二、三塁から西田が投前スクイズを決めて先制。さらに、五回にも二死走者なしからグラシアルが左翼席に飛び込むシリーズ1号ソロを放つなど、投打がかみ合った。  広島先発のジョンソンは六回の打席で代打を送られ降板。6回3安打2失点だった。  敵地で15度宙に舞った工藤公康監督(55)は、この日も非情さい配を見せた。第5戦で、主将の内川にバントを命じ、8年ぶりとなる犠打を決めさせたが、この日の四回無死一、二塁の場面でも内川に犠打を命じ、大きな先制点へとつなげた。  平成最後の日本シリーズは10月27日、1986年の広島-西武以来32年ぶりとなる引き分けで幕開け。第2戦は、広島がマツダスタジアムで先勝したが、第3戦からソフトバンクが4連勝。平成最後の頂上決戦を制した。

◆広島・新井貴浩内野手(41)が20年間に及んだプロ野球人生に幕を下ろした。土俵際からの3連勝を狙っていた広島は本拠地に舞台を移しての一戦に0-2で敗れ、34年ぶりの日本一に届かなかった。  2点を追う八回先頭に新井が代打で登場すると、球場全体から拍手が鳴り響いた。"最終打席"は遊ゴロだった。最後の花道を飾れなかったが、試合後、マツダスタジアムに集まったコイ党に頭を下げた。引き揚げるまで涙は見せなかった。  新井は9月5日に「若手の成長」を理由に今季限りでの現役引退を表明していた。  広島に生まれ、広島県民に愛されたスラッガーは、広島工高-駒沢大から1999年にドラフト6位で広島に入団。ドラフト6位以下の入団では史上2人目の通算2000安打を達成(当時)、セ・リーグ歴代最年長MVP(39歳)に輝くなど、持ち前のパワーと努力で数々の奇跡を起こした。

◆広島のジョンソンは6回3安打2失点で降板した。0-0の四回、先頭打者の柳田に四球を与え、左前打と犠打で1死二、三塁のピンチを招くと、西田に簡単にスクイズを決められ、先制を許した。  五回にも2死でグラシアルにソロを浴び、リードを広げられた。第2戦で勝利投手となり「短期決戦でもシーズン一試合一試合と変わらない気持ちで投げている」と大一番にも冷静に臨んで好投したが、援護がなく2連勝はならなかった。

◆ソフトバンクが2年連続の日本一をつかんだ。対戦成績を3勝1敗1分けとしていたソフトバンクがセ・リーグ覇者の広島に2-0で快勝。ソフトバンクがパ・リーグ2位から9度目(前身の南海、ダイエー時代を含む)の日本一に到達した。  敵地で15度宙に舞った工藤公康監督(55)はお立ち台で、晴れやかな顔で選手とファンに感謝を告げた。一問一答は以下の通り。  --15回宙に舞った感想は  「最高に幸せでしたし、選手たちがシーズン終盤からほぼ休むことなく、ここまでね、満身創痍(そうい)の中突っ走ってくれて。最後、こういう形で日本一になれたことを本当に幸せに思いますし、選手のみんな、本当にありがとう!」  --パ・リーグ2位からの日本一は球団史上初の快挙  「2位という悔しい思いをして、みんなでとにかく日本一目指して頑張ろうと、その強い思いがあったからここまでこれたと思いますし。選手の誰一人それを疑わず、ここまで来れたから日本一になれたと思っています」  --白星がないまま戻った本拠地で流れを変えた  「福岡にいるファンのみなさんの後押しで、本来の自分たちの形であったり、野球をしっかりやることができました。その中で3連勝できたんだと思います」  --広島との決戦は素晴らしい戦いだった  「本当に広島さんは強くてね。どこで逆転されるかと、僕の心臓もドキドキしながら常に試合を見ていました。本当に強いチームでしたし、一つになって日本一を目指そうと、お互いが切磋琢磨することができて。本当にわずかな差で僕らが勝てたんじゃないかと思います」  --日本シリーズでは積極的な采配もあった  「これは僕だけじゃなくて、投手コーチと何度も何度も話をしながら、先発、第2先発という形を作ってやったほうが、短期決戦にはいいんじゃないかというアドバイスをいただいた中でやることができたので。そういう意味では、投手コーチのみんながいろんなアイデアを出してくれたことが、ここにつながっていると思います」  --ファンにメッセージを  「きょう来ていただいたホークスのファンの方、本当にありがとうございました。そして、福岡で待っていてくださるファンのみなさんにも、日本一という報告ができることを本当にうれしく思います。そして全国にいるファンのみなさん、選手の頑張りで日本一になることができました。僕は日本一幸せな人間です。選手のみんな、本当に一年間ご苦労様でした!ありがとう!」

◆ソフトバンクが2年連続の日本一をつかんだ。対戦成績を3勝1敗1分けとしていたソフトバンクがセ・リーグ覇者の広島に2-0で快勝。ソフトバンクがパ・リーグ2位から9度目(前身の南海、ダイエー時代を含む)の日本一に到達した。  日本シリーズ新記録となる6連続盗塁阻止をマークしたソフトバンク・甲斐拓也捕手(25)が最高殊勲選手に輝いた。  またまた甲斐キャノンが炸裂した。一回一死一塁、二盗を試みた広島・田中に対してすばやく送球。判定はセーフとなったが、工藤監督がリクエストを要求。リプレー検証の結果、判定が覆ってアウトとなり、甲斐は5者連続盗塁阻止となった。  甲斐は二回二死一、三塁にも広島・安部の二盗を阻止し、記録を「6」に更新した。

◆ソフトバンクが2年連続の日本一をつかんだ。対戦成績を3勝1敗1分けとしていたソフトバンクがセ・リーグ覇者の広島に2-0で快勝。ソフトバンクがパ・リーグ2位から9度目(前身の南海、ダイエー時代を含む)の日本一に到達した。日本シリーズ新記録となる6連続盗塁阻止をマークしたソフトバンク・甲斐拓也捕手(25)が最高殊勲選手に輝いた。  広島OBの北別府学氏(61)は自身のブログで「この甲斐という捕手バケモンだ」とお手上げ状態。「2点を跳ね返す力が無かったということ 日本一という大目標はまたお預けとなりました」と肩を落とした。

◆SMBC日本シリーズ2018は3日、マツダスタジアムに舞台を戻して第6戦が行われ、ソフトバンク(パ・リーグ2位)が広島(セ・リーグ優勝)に2-0で勝ち、4連勝で対戦成績を4勝1敗1分けとして2年連続9度目(南海、ダイエー時代を含む)のシリーズ制覇を果たした。  クライマックスシリーズ(CS)で勝ち上がったリーグ優勝以外のチームが日本一になるのは3度目で、パがプレーオフで優勝を決めていた2004~06年を含めるとレギュラーシーズン1位以外のチームが日本一になるのは5度目。6年連続でパのチームがシリーズを制した。  就任4年目の工藤監督は昨年に続いて3度目の日本一で、南海、ダイエー時代を通じて球団では鶴岡、王、秋山を抜いて最多の優勝回数となった。  ソフトバンクは四回、西田のスクイズで1点を先制し、五回にグラシアルの左越え本塁打で1点を加えた。 広島・緒方監督 「勝つチャンスは十分にあった。力の差は感じていない。この結果は自分の責任、力不足。期待に応えられなくて本当に申し訳ない。選手はカープの野球を信じて最後まで戦ってくれた。ソフトバンクに隙がなかった」 ソフトバンク・王貞治球団会長の話 「本当に強かった。広島も強くて、いつもより苦労したけど、バッテリーがいい仕事をしてくれた。工藤監督の統率力がチームを一丸にした」

◆2年連続の日本一に、地元の福岡は歓喜に沸いた。プロ野球ソフトバンクホークスの本拠地、ヤフオクドーム(福岡市)では3日、日本シリーズ第6戦のパブリックビューイング(PV)が行われた。駆け付けた1万6千人近くのファンらは、勝利が決まると「やったー」と叫んだ。  ソフトバンクの森唯斗投手が九回裏、広島の最後の打者を打ち取ると、観客席から白や黄色の風船が飛び交った。ユニホームを身にまとって大型スクリーンに熱い視線を注いでいたファンらは、手を取り合ってはしゃいだり万歳三唱したりして、喜びを分かち合った。  「投手陣が安定し、ソフトバンクの強さを感じた」と、長男と応援に来た福岡市城南区の会社員佐藤仁さん(39)は感無量。友人と観戦していた同市博多区の中学3年江頭礼子さん(14)は「スクイズで先制した場面に、しびれた」と振り返った。

◆ソフトバンクは四回1死二、三塁で西田がスクイズを決め、先制した。左太もも裏の不安のため欠場した今宮に代わって第1戦以来の先発。「健太(今宮)の分まで頑張ろうと思った。冷静にできた」とほっとした様子で振り返った。  難敵のジョンソンが相手で、小技を絡めた。先頭の柳田が四球で出塁し、中村晃の左前打で一、二塁。続く内川が第5戦に続き、送りバントを手堅く決める。内川は「当然、バントだと思った。勝利に貢献できて幸せ」と話し、日本一について「みんなの力で監督を胴上げできて良かった」と笑顔だった。

◆広島は今シリーズで8度盗塁を試みて全て失敗し、足を使った攻撃を封じられて敗れた。田中は一回に二盗に失敗し、シリーズ最多に並ぶ3度の盗塁失敗。「甲斐選手が一枚も二枚も上手だった」と潔く相手の強肩をたたえた。  二回2死一、三塁では安部が二盗に失敗。チームはシリーズを通じて積極性が裏目に出て流れをつかめなかった。田中は「ああいう捕手、バッテリーから盗塁を決められる選手になりたい」と来季への課題を挙げた。

◆ソフトバンクの柳田は故郷の広島で日本一に輝いた。「ドラフト以来」という胴上げで祝福され「幸せです。めっちゃ気持ち良かった」と喜びに浸った。  四回に先頭打者で四球を選び、スクイズで先制のホームを踏んだ。第5戦では延長十回に日本シリーズ初アーチとなるサヨナラ本塁打を放って日本一に貢献し、優秀選手に選ばれた。今季、チームの選手会長に就任して栄冠をつかみ「チームのおかげ。大変でしたけど、いい形でシーズンを終われてほっとしている」と感謝した。

◆広島の4番鈴木が6試合で打率4割5分5厘、3本塁打、6打点で敢闘選手となり「全部、自分の力を出し切れた。楽しみながらできた」と充実感をにじませた。  奮闘及ばず、悲願の日本一は逃した。「悔しい思いもあるけど、いい試合ができたし、自分たちの力を出して負けた」と潔かった。来季へ「シーズンの成績には満足していない。もうちょっと確実性を求めたい」とさらなる成長を期した。

◆ソフトバンクの森が九回を締めくくり、胴上げ投手になった。4月から故障で離脱したサファテの代役で抑えを務め、レギュラーシーズンはリーグトップの37セーブ、日本シリーズでも3セーブを挙げた。「僕がここ(抑え)でやれるとは思わなかった。自信になる」と笑った。  日本一が近づくにつれ気持ちは高ぶり、ブルペンでは「フワフワしていた」という。ただ、マウンドに上がれば打者に集中。ストライクを先行させ、危なげなく3人で抑えた。「ちょっと休んで、またしっかりやりたい。来年の戦いが始まる」と貪欲に言った。

◆ソフトバンクのグラシアルが1-0の五回2死無走者でポストシーズン初となる本塁打を放った。追い込まれながらも、ジョンソンの低めの球を左翼席に運び「崩されたけど、打った瞬間に行ったと思った」と誇らしげに話した。  今季加入したキューバ出身の右打者。後半戦にチームの巻き返しに大きく貢献し、来季について「また日本でプレーできれば」と意欲を示した。

◆広島の丸が今シリーズ、最後まで苦しんだ。緩急を駆使するバンデンハークと森の前に4打数無安打で3三振と立て直せなかった。6試合シリーズでのワーストを更新する12三振を喫するなど、6戦でわずか4安打で打率1割6分とブレーキとなり「悔しいシリーズになってしまった」と話した。  今季は不動の3番打者としてリーグ2位の39本塁打をマークし、クライマックスシリーズでも2本塁打を放つなど打線を引っ張った。現状に満足する様子はなく「毎年レベルアップが必要だと思う」と力を込めた。

◆SMBC日本シリーズ2018は3日、マツダスタジアムに舞台を戻して第6戦が行われ、ソフトバンク(パ・リーグ2位)が広島(セ・リーグ優勝)に2-0で勝ち、4連勝で対戦成績を4勝1敗1分けとして2年連続9度目(南海、ダイエー時代を含む)のシリーズ制覇を果たした。  クライマックスシリーズ(CS)で勝ち上がったリーグ優勝以外のチームが日本一になるのは3度目で、パがプレーオフで優勝を決めていた2004~06年を含めるとレギュラーシーズン1位以外のチームが日本一になるのは5度目。6年連続でパのチームがシリーズを制した。  就任4年目の工藤監督は昨年に続いて3度目の日本一で、南海、ダイエー時代を通じて球団では鶴岡、王、秋山を抜いて最多の優勝回数となった。 武田 「(今シリーズ計7回1/3を1失点)一番は楽しかった。ある程度、自分の投球ができた」 上林 「(第4戦で先制2ラン)1試合はチームの役に立てて良かった。去年より、あっという間に終わった」 中村晃 「(優秀選手)最後、いい形で終われて良かった。去年よりはいい打撃ができた」 嘉弥真 「みんなで頑張って日本一になれて、今年もとてもうれしい」 加治屋 「(ポストシーズンを含め81試合登板)けがなく来られたのは自信になる。課題も見つかった」

◆ソフトバンクは広島市内のチーム宿舎に戻ってビールかけで喜びを分かち合った。選手会長の柳田の「最高!」との雄たけびを合図に、記念の黄色いTシャツを着て大はしゃぎ。王球団会長は「本当に強かった。すごかった。素晴らしかった。長く野球界にいるが今の君たちが一番」とねぎらった。

◆69回目を迎えた日本シリーズ。延長戦のルールが変更され、第7戦まではこれまでの「十五回打ち切り」からレギュラーシーズンと同じく「十二回打ち切り」となった。  変更のきっかけをつくったのは広島だ。昨年、12球団の幹部が出席した会議で「ベンチ入りの人数は同じなのに、日本シリーズだけなぜ延長戦のルールが違うのか」と提起。1年間の議論を重ねた結果、「レギュラーシーズンに準ずる」ことが決まった。  今シリーズは広島・緒方、ソフトバンク・工藤両監督ともに早めの継投が目立ち、第1戦はいきなり引き分け。第5戦を終えて4時間超えが2試合、3試合が1点差以内の接戦というのも、3イニング短縮された影響かもしれない。

◆プロ野球ソフトバンクホークスの本拠地、ヤフオクドーム(福岡市)で3日、日本シリーズ第6戦のパブリックビューイングが行われた。2年連続日本一が決まると1万6000人近くのファンから大歓声が起きた。福岡市の会社員、佐藤仁さん(39)は「投手陣が安定し、ソフトバンクの強さを感じた」と感無量の面持ち。  東京でも「スポーツ&メキシカンバー ロスカボス池袋西口店」(豊島区)に集まったファンが大喜び。宮崎県日向市出身の整骨医、塩月貴大さん(25)は「ダイエー時代からホークス一筋。短期決戦の戦い方を知っていた」と笑った。

◆球団タイ記録のシリーズ3本塁打を放った鈴木が敢闘選手賞に輝いた。6試合で打率・455、3本塁打、6打点。九回二死から三ゴロに倒れて、最後の打者となったが、この日も1安打を放ち「自分の力は出し切れた。迷いなく打席に入れた」と納得の表情。「新井さんと(日本一になる)最後までやれなかったので悔いはありますが、(ソフトバンクに負けたのは)悔しさよりも完敗という感じ」とサバサバしていた。

◆ジョンソンは6回3安打2失点で役割を果たしたとはいえ、悔しさが残る結果に終わった。四回一死二、三塁で西田に先制のスクイズを決められ、五回は二死からグラシアルに手痛い一発を食らった。捕手の石原が「一つも負けられないところで、いい投球をしてくれた」とねぎらったが、流れを変えられず、左腕は硬い表情で「別に話すことはない」と言い残して球場を去った。

◆今季、国内FA権を取得した松山は権利を行使しない方針だ。試合後、近日中にも球団と話し合うことを明かし、「ちょっと時間があるので、しっかり考えていい返事ができるように。(悔しさを晴らしたいかを問われ)もちろんありますね」と話した。今季は11年目で初めて規定打席に届き、打率・302、12本塁打、74打点。球団幹部も「必要な戦力」と評価している。

◆王貞治球団会長(78)はポストシーズンをたくましく勝ち抜いたチームを「ただ一言。本当に強かった。広島も強くて、いつもより苦労したけど、バッテリーがいい仕事をしてくれた」とたたえた。今季は春季キャンプから積極的にグラウンドに出て上林、甲斐ら伸び盛りの若手に声をかけてまわった。その甲斐がMVPに選ばれ、「ちゃんと見ていてくれたんだなあ、と。他の選手にも励みになる」と万感の面持ちだった。8月に体調不良で入院したが、復帰した頃からチームは快進撃。「監督が一番いい仕事をしたね。統率力がチームを一丸にした」と工藤監督への賛辞を惜しまなかった。

◆1984年から遠ざかる日本一に、またも届かず。緒方監督は「自分の力不足」と何度もわびた。リーグ最多の95盗塁を誇る機動力が機能せず、この日も一回と二回に盗塁を試みたが、いずれもアウトに。今季41度の逆転勝ちを演じた反発力は鳴りをひそめた。それでも指揮官は「力の差は感じていない」とし「この経験を来年に生かしたい。ユニホームを着ている以上、(シーズンが)終わった瞬間から次の戦いが始まっている」と前を向いた。

◆大好きな街、生まれ育った広島で、"カープ男子"柳田が宙に舞った。7度も。ギータ・スマイルがはじけた。  「気持ちよかったですね。広島で胴上げ。幸せでした。空がきれいでしたよ。胴上げなんて、ドラフトの時以来かな」  選手会長の仕事を全うした1年。公式戦は悔しい2位だったが、打率・352で3年ぶりの首位打者。CSはMVPでチームを日本シリーズに導き、頂上決戦は第5戦でサヨナラ弾を放って王手をかけた。そして優秀選手賞に。この日も四回先頭で四球を選ぶと、西田のスクイズで先制のホームに滑り込んだ。  「めちゃくちゃいい時期はないけど、修正しながらできた」と振り返る今季。土台に主力打者の自覚がある。「コーチも忙しいし、全部みられるわけではない。自分で何とかできることはしないと」。ときには、まるで受験生のように資料室に食事を持ち込んで自習。「自分の形で打てているか。それができれば凡打も納得できる」。自身の映像に目を血眼にした。  「『打っているときはこう、このタイプの投手のときはこの形で打っている』とか、スコアラーさんが映像解析もしながら説明してくれるので参考になります」  自主トレは浜涯打撃投手に同行を依頼。「いつも投げてくれている人なら普段との違いも聞きやすい」。シーズン中は練習後に関本データ分析担当ディレクターの元を訪れるのが日課になった。  関本氏はもともと、データ分析のIT化のためにスコアラーに加わったシステムエンジニアだ。今季は「現場にいるのなら、選手のことを近くで見ようと思った。ファンのように、ただ見ているだけです。教えられるわけではないので」と春季キャンプからグラウンドに出ていた。  その視線に気が付いた背番号9。いまでは、よき相談役だ。「けっこう細かい部分もみてくれているんですよ」。どんな"目"も味方。規格外のフルスイングに自主性とスタッフとの輪で進化する最強打者は、チームに関わる全員と喜びを分かち合った。  「みんなのおかげで、ここまできました」  広島ファンだった少年は、誰もが認める日本一の4番打者になった。

◆セ・リーグ3連覇の広島は、パ・リーグ2位から勝ち上がったソフトバンクに0-2で敗れ、34年ぶりの日本一はならなかった。今季限りで現役を引退する新井貴浩内野手(41)は八回に代打で出場し、遊ゴロに倒れたものの、いつも通りに全力疾走し、一塁の守備にも就いた。有終の美は飾れなかったが、笑顔で手を振ってファンに別れを告げた。  日本一の夢がついえた瞬間、新井の20年の現役生活にも幕が降りた。笑顔でスタンドのファンに手を振ったあと、涙をこらえてグラウンドに深々と一礼した。  「悔しいけど、ホントにみんなにありがとうという思いが強い。長いようで短い20年。お世話になった方々、ファンの皆様にありがとうございますという気持ち」  試合後のロッカールームでは1人1人と握手をして「ありがとう」と感謝を伝えた。自身3度目、最後の大舞台で頂点には届かなかったが、新井らしく元気に振り返った。  0-2の八回先頭に代打として登場。武田の速球を振り抜いたが、打球はボテボテの遊ゴロ。それでも信条の全力疾走で一塁へ駆け抜けると球場から大きな拍手が沸き起こった。  喜びと悲しみが入り交じった。2008年に広島から阪神へFA移籍すると、市民球場での試合時には大ブーイングが沸き起こった。そうした背景があるにもかかわらず、15年に阪神を自由契約になった後には、初めてFAでの出戻りを認めてくれた。ファンも温かく迎えてくれた。  忘れられない打席がある。15年3月27日のマツダスタジアムでのヤクルトとの開幕戦の七回に代打で登場。「ブーイングだろうな」と覚悟したが、杞憂だった。盛大な歓声が心に響き「カープのために」残りの野球人生を捧げる決意をした。  後輩へのサポートを惜しまなかった。ロッカールーム、グラウンドでの声かけはもちろん、食事に誘って野球談義をしたりと精神的な支柱の役割を担った。新井が、投手野手、若手ベテランと分け隔てなく接したことで、チーム内のすべての"壁"を取っ払われた。家族のような結束が生まれ、全員野球で球団史上3連覇を手にした。  「日本一には届かなかったけど、日本シリーズ中はみんなの必死さはすごく伝わった。カープは家族と思っている。すべての選手に頑張ってほしい」  将来的に球団は指導者としての復帰を歓迎する意向を示しているが、一度グラウンドを離れて、野球評論家として活動する予定。広島出身でカープファンのみならず全国の野球ファンに愛された名打者が静かにバットを置く。 (柏村翔)

◆2年連続で日本一に輝いたソフトバンクから、甲斐拓也捕手(25)が最高殊勲選手(MVP)に選ばれた。今シリーズは打率・143ながら、投手陣を好リードし、盗塁を6連続で阻止して広島の機動力を"完封"。育成ドラフト出身では初の栄誉となった。  何度も審判の右手が握られた。観客席がMVP発表前に口々に名前を呼ぶ。敵地ファンまで魅了した甲斐が、お立ち台へ-。球界ナンバーワンの鉄砲肩が、最後まで広島の攻撃を封じた。  「ちょっと、びっくりです。まさか、です」  打率・143。代わりに盗塁阻止率10割だ。6試合で2安打での勲章に戸惑いを隠せないが、何度もチームを救った肩がこの日も序盤に輝いた。  一回に完璧なスタートを切った田中の二盗を封じた。際どいタイミングで一度はセーフも、工藤監督のリクエストが成功。60年ぶりに日本シリーズ記録を更新する5者連続の盗塁阻止を記録すると、二回二死一、三塁で一走・安部の二盗を封じて6連続に更新した。  「広島の機動力はシリーズ前から正直、不安でした。投手がクイックやけん制をしてくれた。自分ひとりでは無理です。感謝したいです」  セ・リーグトップ95盗塁のカープに共同作業で勝負した。同一シリーズ6度の盗塁阻止も1952年の広田(巨人)に並ぶ最多タイ。チームの盗塁阻止も日本シリーズ新記録の8個を数えた。  「昔から自分の長所は肩だと思ってやってきたので、結果が出せてよかった」  日本シリーズMVPは育成ドラフト出身では初の栄光だ。母子家庭に育ち、2011年の最下位指名となる育成ドラフト6位。同期入団で同じく育成の千賀いわく「入団したときは僕より球が速かった」という強肩が評価され、1軍にはい上がった昨季は、いきなりベストナインとゴールデングラブ賞を獲得したが、謙虚さだけは忘れない。  「自分はまだまだ力不足。投手に逆に支えてもらって感謝しています。MVPは高谷さんあってのこと。苦しいところで守ってくれました」  終盤の守りはベテランの高谷に譲る"準正捕手"。それでも、早出の打撃練習を欠かさず、試合後は全配球をその日のうちに見直す日々が報われた。いつでも最後に球場を後にする男が今季最後のヒーロー。"甲斐キャノン"が、全国にとどろいた。 甲斐のMVPにソフトバンク・達川ヘッドコーチ 「歴史を変えた。甲斐が取れたのも、最後まであきらめずに挑戦し続けたカープの選手のおかげでもある。アグレッシブな走塁は素晴らしかったし、そこは紙一重の攻防だった」 一回に二盗を刺された広島・田中 「甲斐選手が一枚も二枚も上でした。ああいう捕手から盗塁を決められる選手になりたい」

◆SMBC日本シリーズ2018は、広島市のマツダスタジアムに3万723人を集めて第6戦が行われ、パ・リーグ2位から勝ち上がったソフトバンクがセ・リーグ3連覇の広島を2-0で下し、対戦成績を4勝1敗1分けとして前身の南海、ダイエー時代を含めて2年連続9度目の日本一に輝いた。就任4年目の工藤公康監督(55)は、昨年に続いて3度目の日本一。"平成最後の大舞台"で、平成最多を更新する7度目の頂点にチームを導いた。  真っ赤に染まった敵地で、常勝軍団の指揮官が宙に舞った。力尽きるまで腕を上げたナインの手で15度胴上げされた工藤監督は、目を真っ赤にして思いの丈を響かせた。  「最高に幸せです。シーズン終盤から満身創痍(そうい)の中で突っ走ってくれた。選手のみんな、本当にありがとう! (胴上げは)手の感触が伝わってきて、みんなに支えられてきたんだなと思いました」  最終戦も大技小技でセ・リーグ王者を圧倒した。四回は無死一、二塁で主将の内川が2試合連続の犠打を決め、続く西田のスクイズで先制。五回には、グラシアルの豪快な一発で追加点を挙げた。投げてはバンデンハークが6回10奪三振と力投し、盤石の継投で勝利につなげた。  敵地で1敗1分けのスタートとなったが、シリーズ新記録となる本拠地12連勝で王手をかけ、最後は広島で一気に決めた。2年連続の日本一は、球団史上初のレギュラーシーズン2位以下からの"下克上"による頂点となった。  転機は前半最後のカードとなった日本ハム戦での2夜連続の大敗。後半戦開始前、指揮官はナインに呼びかけた。  「やっぱり、野球は明るく楽しく。どんな結果になっても、こちらが責任を取るから」  すると、勝率5割前後をさまよったチームは一変した。  もう一つの分岐点は8月上旬。立場上、特定の選手との宴席はご法度にしていたが、口癖でもある「心を一つに、チームを一つに」を実現するため、思い切った行動に出た。「何組かに分けよう」。ベテラン、若手、捕手、外国人。それぞれと食事会を開いた。  結果は「吉」と出た。雑談から始まった若手組との焼き肉店での会は予想以上の長時間に及び、中村晃が野球談義の突破口を開くと20代前半の選手が次々と監督に思いを伝えた。中には「こう使ってほしい」と"無礼講"の訴えも飛び出したが、工藤監督は全てに真摯に耳を傾けた。  ベテラン組からは背中を押された。開催時点で残り49試合。「40勝9敗でいきましょう。それなら優勝できる」と不可能に近い目標を立て、36勝13敗の結果を出した。「選手一人一人が満足する采配はできない」と心を鬼にできたのも、選手との距離が縮まったからこそ。今シリーズでは松田宣が精彩を欠くと先発を外し、第5、6戦では主将の内川に8年ぶりの犠打を決めさせるなど勝負に徹した。  「『勝ちたい』という気持ちが、ベンチのみんなの声から伝わってきた。このチームの監督ができて幸せです」。平成時代に行われた30度の日本シリーズで、巨人を抜いて7度目の日本一に輝いたソフトバンク。「平成最強軍団」が球史にその名を刻んだ。 (安藤理) 四回無死一、二塁で連夜の犠打を決めたソフトバンク・内川 「そうだろうなと思っていた。どんな形でも、点につながるところで仕事ができたのはうれしい」 10三振を奪い、6回無失点のソフトバンク・バンデンハーク 「素晴らしい気分。(甲斐)拓也がそこにいるだけで安心する。クイックが多少遅くても余裕でアウトだからね」 ★第6戦の主な記録  【新記録】▽シリーズ最多盗塁刺8 広島▽シリーズ最多ホールド15 ソフトバンク▽シリーズ最多ホールド合計22 ソフトバンク15、広島7▽捕手のシリーズ最多補殺11 甲斐(ソフトバンク)  【タイ記録】▽シリーズ最多盗塁刺3 田中(広島)=3人目、3度目▽1試合最多三振13 広島=8度目▽シリーズ最多セーブ3 森(ソフトバンク)=6人目、6度目  【その他の記録】▽1試合2桁奪三振 バンデンハーク(ソフトバンク)=21人目、24度目 ★6試合シリーズの主な記録    【新記録】▽シリーズ最少二塁打3 ソフトバンク▽シリーズ最多盗塁刺3 田中(広島)▽シリーズ最多盗塁刺8 広島▽シリーズ最多三振12 丸(広島)▽シリーズ最多三振64 広島▽捕手シリーズ最多補殺11 甲斐(ソフトバンク)  【タイ記録】▽シリーズ最少盗塁0 広島=3度目▽シリーズ最少完投合計0=14度目▽シリーズ最多与死球2 ヘルウェグ(広島)=8人目、8度目▽シリーズ最少併殺1 広島=2度目

◆ソフトバンクがセ・リーグ覇者の広島に快勝。パ・リーグ2位から9度目(前身の南海、ダイエー時代を含む)の日本一に到達した。日本シリーズ新記録となる6連続盗塁阻止をマークしたソフトバンク・甲斐拓也捕手(25)が最高殊勲選手に輝いた。  サンケイスポーツ専属評論家の野村克也氏(83)は、3日深夜放送のTBS系「S☆1」にVTR出演。甲斐キャノンと称される甲斐の強肩について、「ベリーグッド!」と絶賛、「強肩はいっぱいいるけど、フットワークとモーション、足の運びがいい。スローイングも完璧」と手放しで褒めていた。  甲斐は今シリーズ、挑まれた6度の盗塁を全て阻止したが、会心のプレーはこの日の一回だった。1死一塁で外角のチェンジアップを捕球し、体勢を崩しながらも昨年のセ・リーグ盗塁王の田中を刺した。

◆広島はあまりにも無策すぎたね。日頃はあり得ない一回の菊池の犠打失敗に始まり、次々と甲斐に盗塁を阻止されているのにエンドランも何もしない。それじゃベンチの空気も悪くなるよ。我慢してきたジョンソンも限界を超えてイライラが出て、丁寧に投げはしたがグラシアルの好きなコースで本塁打を喫した。  対するソフトバンクはスクイズで先制したり、余裕の試合運びでペースを譲らなかった。  結局、ソフトバンクの強さばかりが強調されるシリーズになってしまったのは、リーグ戦の違いにあるね。ダントツに強かった西武、貯金のあった3位・日本ハムという"歯応え"のあるチームと戦ってきた2位・ソフトバンク。下克上なんて好きではないけど、日本シリーズに出る資格は十分にあった。  それに比べてセ・リーグは2位のヤクルトこそ終盤に貯金をつくったが、3位の巨人は借金チーム。広島はそんな緊張感のない相手としか戦ってこなかったから、その差が出たわけよ。  広島の敗戦ではあるけど、セ・リーグの敗北。その他5球団にも責任はある。来季は奮起を望みたいね。 (サンケイスポーツ専属評論家)