1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 | 安 | 失 | 本 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
広島 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 8 | 0 | 2 |
ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1X | 5 | 9 | 0 | 2 |
勝利投手:加治屋 蓮(1勝0敗0S) 敗戦投手:中﨑 翔太(0勝1敗0S) 本塁打 |
◆ソフトバンクが劇的なサヨナラ勝ちで2年連続の日本一に王手をかけた。ソフトバンクは1点を追う7回裏、明石のソロで同点とする。そのまま迎えた延長10回には、柳田にソロが飛び出し、試合を決めた。敗れた広島は、3度のリードを投手陣が守りきれなかった。
◆広島が敵地で初めて先制点を奪った。2回1死から松山竜平外野手が右翼ポール際に二塁打。2死一、三塁で、会沢翼捕手が中前にはじき返して1点をゲットした。 打撃にも定評のある8番打者は「先制点につながるヒットが出てよかった。うまく反応できました」と振り返った。 続く野間峻祥外野手も右前打を放ち、二塁走者の安部友裕内野手が本塁に突っ込んだが、上林ノーバウンド返球にタッチアウト。2点目は阻止された。
◆ソフトバンク・アルフレド・デスパイネ外野手が1日、左膝痛のため日本シリーズ第5戦のベンチを外れた。 全体練習にも参加せず、ベンチ裏でケアなどを行った。デスパイネは第3戦、第4戦と2試合連続で本塁打を放つなど、打率3割3分3厘、6打点と活躍していた。この日の朝に痛みを感じたという。 工藤監督は「今日は難しいということだった。移動日もあるので」と2日間休養し第6戦は、当日の状態を見て判断する。
◆ソフトバンク中村晃外野手が逆転打を放った。1点を追う4回無死満塁、追い込まれながらも広島先発の大瀬良から中前へしぶとく運んだ。 二塁走者のグラシアルも生還し、逆転に成功した。 守備では初回2死で丸のライナー性の当たりにスライディングキャッチ。攻守でチームを鼓舞した。
◆広島丸佳浩外野手が逆転1号2ランを放った。1点を追う5回2死二塁、ソフトバンク2番手のモイネロから右翼席へ運んだ。 4回に逆転を許したばかりだったが、早速試合をひっくり返した。 この打席までシリーズ打率が1割台と本来の力を発揮できていなかったが、1点がほしい場面で仕事をやってのけた。
◆ソフトバンク中村晃外野手(28)が勝負強さを発揮する適時打を放った。 1点を先制されて迎えた4回無死満塁。広島先発の大瀬良の外角への落ちる変化球に対して、バットですくうような打撃の技ありの一打。2者がホームインし一時、逆転に成功した。「打ったのはフォーク。うまく拾えました」。第1戦ではチームで打ちあぐねていた大瀬良から値千金の一打だった。
◆広島丸佳浩外野手に待望の1発が飛び出した。 1点を追う5回2死二塁。代わったばかりのモイネロの149キロの高め直球にタイミングを合わせると、ライナー性の打球はあっという間に右翼フェンスを越えた。シリーズ1号の逆転2ラン。「しっかり反応してコンパクトに打つことができました」と納得の一振りだった。 セ・リーグのMVP筆頭候補は日本シリーズに入ると大不振。前の打席まで18打数2安打と元気がなかった。 守りにつく際には恒例の敬礼ポーズを披露し、左翼側を埋めた広島ファンを喜ばせた。
◆広島が会沢翼捕手のシリーズ1号ソロで再び先行した。 同点に追いつかれた直後の6回2死から武田の高めのスライダーをたたいた。打球は高々と上がり、左翼席最前列に吸い込まれた。「必死に食らいついていきました。よく入ってくれましたね」。本人も二塁ベースを回ったところで止まるほど、ギリギリの一打だった。
◆広島大瀬良大地投手は5回途中3失点で降板した。千賀と同じく初戦から中4日での先発だった。 相手打線の1巡目は切れ味のあるカットボールで危なげなく打ち取ったが、4回に乱れた。先頭明石への四球から無死満塁とされ、中村に2点適時打を浴びた。その後のピンチでは追加点を許さず、エースの意地を示した。大瀬良は「先頭の四球が失点につながったのが反省点」と悔やんだ。 丸の逆転弾が出た直後の5回は内野安打2本でピンチを招いた。ともに打ち取った当たりだったが、1死二、三塁となったところでヘルウェグにバトンを渡した。同点に追いつかれたが、助っ人右腕はこのピンチをしのいだ。
◆ソフトバンク明石健志内野手(32)が、広島左腕のフランスアから同点弾を放った。 1点を追う7回裏1死走者なしから、甘く入った変化球を強振すると、打球は右翼越えのソロとなった。 「打ったのはスライダーです。打った瞬間入ると思いましたが、奇跡です」と自分でもビックリしていた。
◆第5戦は、両チーム譲らず初戦以来の延長戦に突入した。広島が2回2死一、三塁で会沢の適時打で先制。2-2の6回に広島会沢の1号ソロで勝ち越した。ソフトバンクは7回に明石の1号ソロで追いつき、試合を振り出しに戻した。 その後は両チームの中継ぎ陣が踏ん張り、3-3で延長戦に突入した。 今シリーズから延長戦は15回から12回に縮められている。今シリーズは引き分けが一度あるため第7戦を3勝3敗1分けの可能性もあり、その場合は延長回の制限なしで5日に第8戦がマツダスタジアムで行われる。
◆連覇を狙うソフトバンクが、34年ぶり4度目の日本一を目指す広島を下し本拠地3連勝で日本一に王手をかけた。通算3勝1敗1分けとなった。先に王手をかけたチームは過去68度のうち、57度日本一になっており、V確率は84%になる。 広島が先手を奪った。2回2死一、三塁で会沢が中前へ適時打を放ち先制。さらに2死一、二塁で野間が右安打を放ったが、右翼上林の好返球で二塁走者が本塁憤死で2点目を奪えなかった。それでも勝利した第2戦以来の先制点となった。 ソフトバンクは4回に無死満塁で中村が中前打を放ち、二塁走者のグラシアルも生還して逆転に成功した。初回の守備で中村は丸のライナー性の当たりにスライディングキャッチ。攻守でチームを鼓舞した。 逆転を許した広島は一発攻勢で形勢逆転。5回2死二塁で丸の逆転1号2ランで飛び出た。5回に柳田の投ゴロの間に追いつかれたが、6回に会沢の左翼席へ1号ソロで勝ち越した。 ソフトバンクは7回に明石の1号ソロで追いつき、最後は延長10回に柳田のサヨナラ本塁打で勝利を収めた。柳田は「(バットが)うわー折れたと思ったんですけど、テラス入ったんで良かったです」とギータ節で振り返った。 ソフトバンクは本拠地で12連勝となった。第4戦では11年に中日との第7戦から続く、日本シリーズ本拠地最多連勝記録を45年ぶりに更新する11連勝を挙げており、この1勝でさらに伸ばした。工藤監督は「とにかく今年最後のヤフオクの試合だったので勝って終わりたかった。王手が懸かり、日本一になれるように。あさっての試合できっと日本一になります」とファンへV宣言をした。 広島はソフトバンクに3連敗を喫した。パ・リーグの本拠地では巨人が楽天と対戦した13年の第7戦から14年阪神、15年ヤクルト、16年広島、17年DeNAと12連敗中だった。今年も第3、4戦に続きこの日もヤフオクドームで敗戦して15連敗。セ・リーグが抱える暗黒の歴史を拭い去ることはできなかった。 第6戦は移動日を挟んで3日から広島本拠地のマツダスタジアムに移る。今シリーズは引き分けが一度あるため第7戦を3勝3敗1分けの可能性もあり、その場合は延長回の制限なしで5日に第8戦がマツダスタジアムで行われる。
◆ソフトバンクが延長10回、柳田のソロ本塁打でサヨナラ勝ち。対戦成績を3勝1敗1引き分けとし、日本一に王手をかけた。
◆連覇を狙うソフトバンクが延長10回に柳田悠岐外野手の劇的なサヨナラ本塁打で、日本一へ王手をかけた。 同点で迎えた延長10回無死。先頭の柳田が広島の守護神・中崎の内寄りに入ってきたスライダーを逃さず、右翼テラス席へ運び去った。 劇的な柳田のサヨナラ本塁打で決着をつけた工藤公康監督も興奮気味だった。「本当にまさかというか、追いついて追い越されて、追いついてと見ている人にとっては興奮する試合だったと思いますが、僕の心臓は飛び出しそうでした。(柳田のサヨナラ弾は)頭の中では打ってくれればと思ったけど。さすが4番、ウチの中心としてシーズンやってくれただけのことはある。大きな試合で大きな仕事をしてくれた」と主砲に称賛の声を惜しまなかった。 本拠地3連勝で3勝1敗とし2年連続日本一へ王手をかけた。「(継投で)途中、失敗もありピッチャーには申し訳ないという思いがあったが、リリーフ陣が本当によく投げてくれた。(本拠地12連勝)ファンの熱い声援が選手の背中を押してくれている。選手たちも思い切ってプレーできている。とにかく今年最後のヤフオクの試合だったので勝って終わりたかった。王手が懸かり、日本一になれるように。あさっての試合できっと日本一になります」。勝っても言葉を選ぶように謙そんしてきた工藤監督の口からついにV宣言が飛び出した。
◆ソフトバンク柳田悠岐外野手が自身日本シリーズ初となるサヨナラ本塁打を放った。延長10回無死、広島中崎から右翼席へ運んだ。 「久々にももクロの怪盗少女が流れたんでめちゃめちゃテンションが上がった。(本塁打を狙う気は)全くないですけど、はい。ないです。うわー折れたと思ったんですけど、テラス入ったんで良かったです」とギータ節で振り返った。 柳田は過去14、15、17年の日本シリーズに出場しているが、いずれもノーアーチ。今年は第1、2戦は広島バッテリーに徹底的にマークされ、1安打に抑えられていた。勢いに乗って故郷の広島で連覇をつかみ取る。
◆広島は延長10回サヨナラ負けで、がけっぷちに追い込まれた。ホームで引き分け、白星と好スタートを切りながら、3連敗。前回16年の日本シリーズ(対日本ハム)に続いて敵地で3戦全敗を喫した。 両軍、1歩も譲らない競り合い。広島緒方孝市監督は5回途中でエース大瀬良から継投策へ。6回2死二塁からは信頼度の高いセットアッパーのフランスアを投入した。9回途中まで起用したが執念は実らず、10回は抑えの中崎が打たれた。以下、緒方監督の一問一答。 --早めの継投を仕掛けた 緒方監督 選手がしっかりプレーしてくれているから。 --フランスアも早い回から 緒方監督 普通だろう。 (続けて)また明日しっかりコンディションを整えて、広島に帰ってやるだけ。 --丸に1発が出た 緒方監督 心配していないよ。
◆広島の守護神・中崎翔太投手がサヨナラ弾を浴びた。4-4で迎えた延長10回裏、先頭打者のソフトバンクの4番・柳田に1ボールからの2球目を右翼テラス席へ持っていかれた。 9回1死二塁でフランスアを救援してピンチを脱出していたが、続投した10回に痛恨の被弾。 ソフトバンクに日本一へ王手をかけられる悔しいサヨナラ負けに、中崎は「甘かった。ど真ん中でした。次、頑張ります」と言葉を振り絞った。
◆広島は前日に続いて本塁クロスプレーで得点を阻まれた。 2回に会沢の中前打で1点を先制。続く2死一、二塁で野間峻祥外野手が右前打。俊足の二塁走者安部は迷わず三塁を回ったが、前進してきた上林のノーバウンドのストライク返球にあい、寸前でタッチアウトになった。捕手の甲斐が捕球したミットの位置にスライディングするような形で、まさに数センチの攻防だった。 4回に1-2と逆転された。2点目を防がれたことで、先制の勢いを断ち切られたような格好になった。 高信二ヘッドコーチは「あれはもう向こうの、上林くんのファインプレーだから。2死だし、当然(三塁コーチが)回すところ」と振り返った。 広島は前日の第4戦でも初回1死一塁から丸が右中間に二塁打。一塁走者菊池が本塁を狙ったが憤死した。柳田-明石-甲斐と寸分の狂いもない中継プレーの前に、先制点を奪えず、主導権を握られていた。ともに走者は俊足。状況的にも本塁突入の指示は間違っていない。ただ、結果的に、試合の流れに関わるプレーになった。
◆悪いけどバントしてくれ-。4回だ。中村晃の中前2点適時打で一時逆転した直後の無死一、二塁。工藤監督は内川の右肩を抱いて、話した。希代の好打者にとって、10年の横浜(現DeNA)時代以来、ソフトバンク移籍後は初めての犠打だった。1球ボールを見送ると、しっかり投前に転がした。試合後の工藤監督は「内川を呼んで、悪いけどバントしてくれと。(決めた後)帽子を取ってありがとうと伝えた」と言った。 この日は2試合連続本塁打のデスパイネが左膝痛のため、ベンチを外れた。大砲不在の中、執念の作戦。決めた内川の笑顔に、ナインの士気は高まった。 継投でも、執念をみせた。早め早めに動いた。先発千賀を1点リードの5回2死二塁で交代させた。打者は左の丸。今季、開幕投手を任せ、エースとして13勝挙げた右腕よりも、左腕モイネロを選んだ。工藤監督は「(千賀が)制球に苦しんでいたので代えたが...。すみませんでした」。モイネロが丸に逆転2ランを浴びる最悪な結果にはなったが「今日は投手をつぎ込んでいく」と迷いはなかった。 8回2死からは加治屋ではなく、守護神森を早めに投入。スタンドもどよめく継投だったが、6回に本塁打を放った会沢を、森が見逃し三振に仕留めた。9回も、森はマウンドに立った。 ヤフオクドームでの日本シリーズは12連勝。工藤監督は「ファンのみなさんのおかげ。今年最後のヤフオクは勝って終わりたかった」と感謝した。 シーズン143試合、CS8試合、この日の日本シリーズ第5戦で今季156試合目となった。工藤監督は前日10月31日から、球場入りの時間を遅くした。これまでナイターは午前10時30分だったが、第4戦からは午後1時に替えた。前日は自宅周辺をジョギング、この日は熱い湯でじっくり半身浴をして大舞台に備えた。 工藤監督はお立ち台で「途中(継投)失敗もありピッチャーには申し訳ないという思いがあったが、リリーフ陣が本当によく投げてくれた。きっと日本一になります」と約束した。球団初の下克上日本一まで、あと1勝だ。【石橋隆雄】
◆広島丸が5回に目覚めの1発を放った。代わったばかりのモイネロの高め直球をたたいた打球は、弾丸ライナーで右翼テラス席を越えてスタンドに突き刺さった。「いいスイングで捉えられた」。"逆シリーズ男"を返上する1発で、復調ののろしを上げた。 4戦目までわずか2安打、打率1割2分5厘と沈黙した。バットをムチのようにしならせるスイングは影を潜め、バットの軌道が遠回りする「ドアスイング」になっていた。ようやく飛び出した今シリーズ初弾はコンパクトに振り抜いて生まれたもの。7回の中前打もシャープな打撃だった。 それでも本人は「1本出た出ないというよりも、しっかり大事な場面で結果を出せるように頑張りたかった」と、9回2死二塁での凡退を悔やんだ。チームは1勝3敗1分けとなり、崖っぷちに立たされた。「終わったことをくよくよしてもしょうがない。開き直ってやるしかない」。丸とともに、チームははい上がる。
◆ソフトバンク上林がレーザービームを発射した。1点を先制された2回2死一、二塁。野間の右前打をダッシュでつかむと、本塁へノーバウンド返球。甲斐のミットに収まり、二塁から本塁を狙った安部を刺した。「右中間寄りに守っていました。あの回は1点で終わったのは大きかったです」。広島に行きかけた流れを止めた。 今季は全143試合に出場し、2年連続リーグ最多の10補殺を記録した。今では正確で素早い返球も、ファーム時代はシュート回転し、目標からそれてばかりだった。井出2軍外野守備走塁コーチの指導で少しずつ矯正。練習が実った。 黄色のグラブは、先輩城所からの借り物だ。今年4月8日、仙台での楽天戦で打球をグラブに当てながらはじいた。その後は城所が「オレのを使えよ」と貸してくれたグラブで守り続ける。上林は「いまさら返すって、僕から言えますかね」と苦笑い。先輩に支えられ、全力プレーを続ける。
◆ソフトバンクが柳田悠岐外野手(30)のサヨナラ本塁打で2年連続日本一へ王手をかけた。「SMBC日本シリーズ」第5戦は4-4同点の延長10回、柳田がバットを折りながら右翼へソロを放つ離れ業で劇的に決着させた。1点を追う7回には今季1本塁打の伏兵、明石健志内野手(32)が値千金の同点ソロ。ヤフオクドームでの日本シリーズ連勝を12に伸ばし、明日3日からは舞台を広島に移して歓喜の胴上げを目指す。 やはり決めたのはこの男だった。半分が広島ファンの赤で染まるヤフオクドームを歓喜の渦に巻き込んだ。同点の延長10回の先頭打席。柳田は広島守護神、中崎の内角低めの変化球を振り抜いた。 「久々にももクロの怪盗少女が流れたので、めちゃくちゃテンション上がりました。バット折れていたので、新しいバットを補充します。うわー、折れたー、と思ったんですけど、テラスに入ってびっくりしました」 「初心ですね」と、登場曲を突然、以前使っていた大好きなももいろクローバーZの「行くぜっ! 怪盗少女」に替えた打席だった。バットの先を折りながら、ソフトバンクファンの待つ右翼席にぶち込む離れ業。ダイヤモンドを1周すると、歓喜の仲間にもみくちゃだ。「疲れました。絶対みんなも疲れてたでしょ。打てて良かった」。自身の日本シリーズ初本塁打で4時間半に及ぼうかという死闘を締め、豪快に笑った。 コメント同様、ぶっ飛びなプレーをする要因は、日々柔軟に変化する打撃フォームだ。相手投手や自身の状態に合わせ、構え方や足の上げ方を微調整して対応。藤本打撃コーチが「天才」と評するゆえんだ。この日は第1戦で二ゴロ、三振と抑えられた大瀬良が相手だった。「クイックを使ったり、うまくタイミングを外された」反省を踏まえ、早い段階でトップを作り始動しやすい形を試した。練習では内川のバットを手に取ったこともあった。打撃練習で使ったが「レベル高え。オレのバットは初心者用やもん。内川さんのバットはプロ用。難しい」と舌を巻いた。「うまくなりたい」という探求心が主砲の打棒を支えている。故郷広島での第2戦を終えた夜は、広島経済大時代の旧友たちと旧交を深め、「ちょっと飲み過ぎましたね」と幸せそうな笑みを浮かべた。「普段はあまり行けない。友達に会えるのが一番ですよ。ぼくも普通の人間ですから」。激戦の合間のささやかな時間が、大きな力になった。3連勝で王手をかけ、広島へ再び戻る。「あと1つ勝つまで、相当しんどいと思いますけど、束になれば勝てると思う」。故郷に、2年連続日本一の錦を飾る。【山本大地】▼柳田がサヨナラ本塁打を放った。柳田はシリーズ通算21試合目の出場で、これが初本塁打だった。シリーズのサヨナラ本塁打は16年<5>戦西川(日本ハム)以来16人、17度目。ソフトバンクでは南海時代の64年<4>戦、66年<5>戦ハドリ、14年<4>戦中村晃に次いで3人、4度目になる。4番打者のサヨナラ本塁打は71年<3>戦王(巨人)08年<2>戦ラミレス(巨人)に次いで3人目となり、巨人以外の4番打者では初めてサヨナラ本塁打を記録した。
◆広島は延長10回サヨナラ負けで、がけっぷちに追い込まれた。ホームで引き分け、白星と好スタートを切りながら、3連敗。前回16年の日本シリーズ(対日本ハム)に続いて敵地で3戦全敗を喫し、セ・リーグのチームはパ・リーグ本拠地で15連敗となった。緒方孝市監督(49)は5回途中で継投策へ。執念は実らなかったが、本拠地マツダスタジアムで逆襲を狙う。 セ・リーグ王者は死力を尽くして敗れ、崖っぷちに立たされた。早めの継投を仕掛け、終盤は必死に得点圏に進めたが勝ち越しを阻まれた。緒方監督は敗戦直後、淡々と口を開いた。 「選手はしっかりプレーしてくれているから。また明日、しっかりコンディションを整えて、広島に戻ってやるだけ」。勝てば五分で広島に戻るはずが、一気に苦しくなった。 執念の前がかり継投も実らなかった。5回に丸の逆転2ランが出ると、その裏のピンチで先発大瀬良からヘルウェグにスイッチ。追いつかれて会沢のソロで再び1点リードに変わった6回は一岡を送り出した。 さらに2死二塁のピンチで、本来なら7回か8回を投げるセットアッパーのフランスアを投入した。7回に明石に同点ソロを許しても、全幅の信頼を置く左腕には続投指示。9回1死まで投げた。2回2/3は7月の勝ちパターン定着後、最長イニングだった。 最後は延長10回、中崎が柳田にサヨナラ弾を浴びた。「甘かった。ど真ん中でした。次、頑張ります」と甘く入ったスライダーを悔やんだ。どちらに転んでもおかしくない試合。畝投手コーチは「手は尽くした」と守護神を責めなかった。 依然として盗塁ゼロと足技を封じられたまま。それでも不振の丸に1発が出て、打線下位で会沢も相手にプレッシャーを与えている。4番鈴木は日本シリーズタイ記録となる4打席連続四球で、懸命につないだ。試合後は「勝つしかないので、頑張ります」とポツリ。もちろん誰も34年ぶり日本一をあきらめていない。背中を押してくれるホームの観客の前で、勝利を続けるしかない。【大池和幸】
◆広島のエース大瀬良は、中4日で5回途中3失点と踏ん張った。 4回は四球から2失点。逆転直後の5回は内野安打2本から追いつかれた。「結果が全て。受け止める」。試合前、宿舎近くの神社を1人で訪れ、縁結びの神様に白星との縁を願った。敵地では初の行動。この試合にかける思いが表れた。第6戦以降について「いくつもり。チームのために頑張る」とブルペン待機も辞さない構えを示した。
◆最後は壮絶に散った。「SMBC日本シリーズ」第5戦は延長10回、守護神中崎がソフトバンク柳田にサヨナラ弾を浴びた。対戦成績は1勝3敗1分けと崖っぷち。しかし、望みは捨てない。広島会沢翼捕手(30)が奮闘した。6回に自身シリーズ初本塁打を記録した選手会長は、今シリーズで抑え込まれていたソフトバンク武田に1発を見舞った。明日3日からは本拠地マツダスタジアムに戻る。熱烈ファンをバックに逆転日本一を目指す。 コイの兄貴が苦手な第2先発から1発を放った。同点の6回。会沢はソフトバンク武田の内角スライダーをたたいた。高々と舞い上がった打球は、左翼テラス席に吸い込まれた。二塁ベース上で戸惑った様子の会沢は本塁打を確認すると、表情を緩めた。 捕手として投手陣をリードするだけでなく、バットでもチームを引っ張る。2回2死一、三塁からソフトバンク千賀の真っすぐを強振。中堅前にはじき返して、先制点を奪った。「先制点につながるヒットが出て良かったです。うまく反応出来ました」。先発大瀬良を勇気づけた。 広島にとって、短期決戦での第2先発には、苦い経験がある。一昨年は日本ハムのバースの前に勢いを止められ、昨年はCSでDeNA今永の存在で、早まった継投の前に屈した。ソフトバンク武田にも、前日まで3試合で4イニングを無失点に抑えられていた。6回の打席の会沢も3球で追い込まれるも、ファウルで食らいついた。8球目も完璧な当たりではなかったが、左翼ポール際に吸い込まれた。「必死に食らいついていきました。よく入ってくれましたね」。第2先発の呪縛を解いた。 会沢にとってはヤフオクドームの呪縛も解いた。猛打賞を記録した30日第3戦が同球場初安打だった。この日は初本塁打となる1発で完全に苦手意識を拭い去った。今シリーズはソフトバンク捕手甲斐の強肩「甲斐キャノン」が騒がれているが、会沢にはリーグ屈指の打力がある。規定打席未到達ながら打率は3割超、本塁打は球団捕手新の13本を記録した。 マスクをかぶっては投手陣を苦心のリードで支えた。先発大瀬良は5回途中でマウンドを降り、そこからは中継ぎ陣をもり立てた。接戦の中、連勝で勢いに乗るソフトバンク打線相手に細心の注意を払った。敵地で劣勢に立たされる中、頼れる選手会長が攻守に存在感を見せた。【前原淳】
◆ヤフオクドームで懐かしい人物に出会った。「いやあ、本当は投球を見るのはドキドキしてしまって。心配で見ることができないんですけどね」。そう言って苦笑いを浮かべたのは九州共立大の元野球部監督の仲里清氏だった。メガネの奥の瞳は心配げでもあり、とはいえ大きな期待感に満ちているようでもあった。広島先発・大瀬良の大学時代の恩師である。4年間、手塩にかけて育てた右腕の晴れ姿。シリーズ2度目となる先発マウンドに期待と不安が入り交じりながら声援を送った。シリーズ初戦(マツダスタジアム)で先発した大瀬良は5回2失点。失策絡みで失点した場面では「何やってんだ!」と広島の守備についついテレビに向かって叫んだという。「『チケット取りましょうか?』と大瀬良に言われたけど、自分で来ました。今日は申し訳ないけど、カープを応援させてもらいます」。そう言って球場に消えて行った。教え子は粘投したものの、引き分けとなった初戦と同じように勝ち負けは付くことなくマウンドを下りた。 スタンドで手に汗握ったのは教え子を見守る恩師だけではない。文字通り「緊迫戦」となった。回が進むにつれてベンチの動きも慌ただしくなった。工藤ホークスは1点を追う7回に明石が起死回生の1号同点ソロを右翼テラス席に運んだ。再び敵地・マツダスタジアムに戻る。それだけに、この日の試合は絶対に取りたかった。2年連続日本一を狙う工藤ホークス、そして34年ぶりの頂点を目指す緒方広島...。まだ「死闘」は続く。【ソフトバンク担当 佐竹英治】
◆ソフトバンクのデスパイネが左膝痛のためベンチ入りメンバーから外れ、欠場。第3戦に3ラン、第4戦でソロを放っていた。工藤監督は第6戦以降の起用について「しっかり(状態を)確認しながら」と話した。
◆広島・会沢翼捕手(30)が先制打を放った。広島が先制したのは、第2戦以来3試合ぶり。 会沢は0-0で迎えた二回、二死一、三塁のチャンスで打席立つと、千賀の初球148キロ真っすぐを捉える投手強襲の中前適時打を放った。なおも一、二塁から野間が右前打を放ち、二走・安部が本塁を狙うも上林の好返球で憤死した。 会沢は「先制点につながるヒットが出てよかったです。うまく反応できました」とコメントした。
◆広島・丸が待望の今シリーズ1号2ラン。1-2の五回二死二塁で千賀からスイッチしたばかりの左腕モイネロの149キロ直球を右翼席へ弾丸ライナーで運んだ。 「しっかり反応してコンパクトに打つことが出来ました」 試合前時点の4試合で打率・125(16打数2安打)、1打点。この日も1打席目も当たりは良かったが、左翼・中村晃の好守に阻まれ左飛、2打席目は見逃し三振を喫していたが、3打席目に目覚めの一発を放った。
◆ソフトバンクの中村晃が0-1の四回に2点適時打を放った。無死満塁の好機で大瀬良に追い込まれたものの、外角低めに落ちる球に反応して鋭く二遊間を破り「うまく拾えた」と自賛した。 3試合連続安打で、第3戦の先制打以来の打点をマーク。左翼の守備では一回に丸の当たりを前進しながら滑り込んで捕るなど、攻守にはつらつとプレーしている。
◆ソフトバンク先発の千賀滉大投手(25)は五回途中4安打2失点で降板した。 千賀は二回、二死二塁から会沢に投手強襲の適時打を浴び先制点を与えた。三回、四回は無失点に抑えたが、1点リードで迎えた五回、一死から田中に右中間フェンス直撃の二塁打を許すと、続く菊池を空振りの三振に抑えたところで降板。しかし2番手のモイネロが丸に2ランを浴びた。 千賀は「大事な先制点を、相手に与えてしまい申し訳ない。 ランナーを残してマウンドを降りることになってしまい、 迷惑をかけてしまった」と肩を落とした。
◆広島・会沢が3-3の六回二死から武田のスライダーを振り抜き、左翼のテラス席に着弾した。日本シリーズ初めての本塁打が貴重な勝ち越し点となり「必死に食らいついていきました。よく入ってくれました」。二回には千賀の直球を中前へ弾き返して先制点をマーク。レギュラーシーズンは規定打席未到達ながら打率・305、13本塁打、42打点の"打てる捕手"が攻守で存在感を発揮している。
◆中4日で今シリーズ2度目の先発をした広島・大瀬良は4回1/3を5安打3失点で降板した。 「四回、先頭打者への四球が失点につながってしまったのが反省点です」。1-0の四回に先頭明石に四球、グラシアルの左前打、柳田への四球で満塁とし、中村晃の中前2点打で逆転を許した。10月27日の開幕戦(マツダ)でも5回2失点で降板し、日本シリーズ初勝利は持ち越しとなった。
◆ソフトバンクの明石が3-4の七回1死からフランスアの浮いたスライダーを捉え、右越えにソロ本塁打を運んだ。相手の救援陣の柱から貴重な一発を放ち「打った瞬間に入ると思ったが、奇跡です」と照れた。 レギュラーシーズンは45試合に出場し、わずか1本塁打だった。ただ、日本ハムとのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦での先制本塁打に続き、今ポストシーズン2発目。伏兵が意外性のある打撃を見せている。
◆ソフトバンクが4-4の十回、先頭の4番・柳田がサヨナラソロ本塁打を放ち3連勝。2年連続9度目の日本一に王手をかけた。広島はシーソーゲームをものにできず、あとがない状態で3日の第6戦から本拠地・マツダスタジアムに戻ることになった。 引き分けに終わった第1戦と同じく、ソフトバンクは千賀、広島は大瀬良が先発登板。広島は二回一死から5番・松山が右翼フェンス直撃の二塁打を放つと、6番・西川の四球などで二死一、三塁とし、8番・会沢が投手強襲の中前適時打を放って先制した。9番・野間も右前打で続き二走・安部が本塁を狙ったが、右翼・上林の好返球に刺された。 ソフトバンクは四回、先頭の2番・明石が四球を選び、3番・グラシアルが左前打。4番・柳田も四球で無死満塁のチャンスを作ると、5番・中村晃が中前2点打を放ち逆転に成功した。 五回、広島は一死から1番・田中がフェンス直撃の中越え二塁打を放つと、二死後にソフトバンクは2番手・モイネロをマウンドに送る。迎えた3番・丸の打球はライナーで右翼席に飛び込む逆転2ランとなった。ソフトバンクもその裏、2本の内野安打で一死二、三塁とすると広島は2番手・ヘルウェグを投入。3番・グラシアルが死球で満塁とすると、4番・柳田の投ゴロの間に三走・甲斐が生還し追いつく。 広島は六回、8番・会沢がソフトバンクの3番手・武田から左翼ポール際ホームランテラスに飛び込むソロ本塁打で勝ち越した。ソフトバンクは七回一死で広島の4番手・フランスアから2番・明石が右翼席へソロ本塁打を放ち試合を振り出しに戻した。 ソフトバンクは八回二死から守護神・森を投入。回またぎとなった九回には二死二塁のピンチをしのいだ。対する広島もフランスアが六回途中からロングリリーフ。九回、先頭の高田を一塁内野安打で出塁させ、高谷の犠打で一死二塁としたところで広島は抑えのエース・中崎が登板。1番・上林を申告敬遠すると、2番・明石を左飛、3番・グラシアルを三飛に打ち取り、試合は延長戦に突入した。 延長十回、ソフトバンクは加治屋が無得点に抑えると、その裏、続投した中崎に対し柳田が一振りで試合を決めた。
◆ソフトバンク・柳田悠岐外野手(30)がサヨナラのソロ本塁打を放ち2年連続の日本一に王手をかけた。 ソフトバンクの4番が、大一番で試合を決める一発を放った。柳田は4-4で迎えた延長十回、先頭で打席に立つとカウントワンボールから中崎の変化球をフルスイング。打球は右翼席へ飛び込んだ。 ヒーローの柳田は、「久々に(登場曲の)ももクロの怪盗少女が流れたので、めちゃくちゃテンションあがってました」と打席を振り返った。 打った瞬間にバットが折れたが「うわ~折れたと思ったんですけどテラスに入っていたのでビックリしました。新しいバットをまた補充します」と明かし笑いを誘った。 ファンに向けて「こんな、夜遅くまでみなさんありがとうございます。マツダスタジアムに行きますけど、みなさんも新幹線に乗って、車でもいいですし、ヒッチハイクでもいいですし来る手段はなんでもあるので、広島で会いましょう」と呼びかけた。
◆日本シリーズで先勝を許した後に3連勝するのは今回で11度目となった。過去10度のうち9度が日本一に輝いており、優勝確率は9割。最近では2014年にソフトバンクが阪神に第1戦で敗れた後に4連勝してシリーズを制している。 追い込まれた側で唯一劣勢をはね返したのは、1955年の巨人。第5戦から3連勝して南海(現ソフトバンク)に逆転勝ちしている。
◆初顔合わせとなった、広島とソフトバンクの日本シリーズ。斉藤コミッショナーは「広島と福岡ですから、巌流島対決です」と表現した。かつて宮本武蔵と佐々木小次郎の決戦が行われた巌流島は、広島と福岡の間にある、山口県の下関市にある。山口県は広島県と同じ中国地方ながら、気象区分では「九州北部」に含まれるという微妙な立場? の地域だ。 ソフトバンクは球場でそんな山口県の名酒「獺祭(だっさい)」を販売している。シリーズ中は専用カップ入りで、担当者は「下関方面からも多くのファンに来ていただいた。今年は山口県にもPRを推進しており、その一環です」。シーズンオフには同県でのイベントも実施予定。日本一になれば山口県は鷹党で一色に!? ソフトバンクは武蔵になれるのか...。
◆勝利インタビューで、工藤監督は「心臓が飛び出しそうでした」と胸をなで下ろした。結果的に継投ミスとなったのは五回、千賀をモイネロに代えた直後に被弾。報道陣から問われると「すみませんでした」と謝罪した。八回二死から登板し、ポストシーズン初のイニングまたぎとなった守護神・森には「申し訳ないけれど、回またぎがあるから」と試合前にお願いしていたという。中継ぎの切り札・石川が故障離脱するなか、工藤ホークスが底力をみせた。
◆プロ初の中4日で先発した大瀬良は五回途中5安打3失点で降板した。四回は2四球と安打で無死満塁のピンチを招き、中村晃に逆転の2点打。五回一死二、三塁でマウンドを降りた。10月27日の開幕戦(マツダ)は5回2失点。「マウンドに上がれば疲れはない」と意気込んだセ最多勝右腕は「(四回は)先頭の四球が失点につながった。それが反省点です」と振り返った。
◆故障者続出の中、今宮に再びアクシデント発生だ。六回の第3打席、左翼線二塁打を放ったが、走塁中に足に異常発生。二塁にヘッドスライディングで辿り着いたものの代走が送られてベンチに下がった。シーズン終盤には左太もも裏の故障で1カ月近く離脱。今シリーズ2戦目から復帰していた。試合後、本人は「大事を取ってです。気を遣ってもらいました」と大丈夫を強調していたが、果たして...。
◆3-3に追いつかれた直後の六回、会沢が左翼テラス席に一時勝ち越しのソロアーチを放った。二回には先制打を放ち、守りだけでなくバットでも存在感を示した。レギュラーシーズンで規定打席に至らずも打率・305、13本塁打、42打点を記録した打てる捕手は「必死に食らいついていった。よく入ってくれたが...」と語った。
◆2試合連続で本塁打を放っていたソフトバンク・デスパイネが1日、左膝に痛みを訴えて欠場した。前日10月31日から異変を訴え、試合後に悪化したという。試合前練習も回避してベンチ入りメンバーからも外れた。工藤監督は「今後も厳しいとは聞いていない。あしたも(移動日が)1日ある」と第6戦(マツダ)での復帰を期待。代わって右手親指を負傷して第4戦を欠場したグラシアルが復帰した。
◆ソフトバンクは、5-4で広島にサヨナラ勝ち。3-4の七回一死で明石健志内野手(32)が値千金の同点本塁打を放った。 「いい感じで打てた。緩急にうまく対応できた」 3-4の七回一死からフランスアの浮いたスライダーを捉え、右翼のテラス席にシリーズ1号ソロを運んだ。熱戦を再び振り出しに戻した殊勲者は、ベンチのガッツポーズを背に表情を緩めずベースを回った。 レギュラーシーズンは45試合に出場し、わずか1本塁打。15年目で通算でも10本塁打の伏兵が見せた、意外性のある打撃だった。日本ハムとのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦でも先制弾を放っており、今ポストシーズン2発目となった。 チームは、四回の逆転と五回の同点に続いて3度もビハインドをはね返し「勢いもある。ここまで来たら決めたい」と明石。昨年はDeNAとの第5戦で二ゴロを取り損ない、決勝点を献上した。「それを教訓に」と臨む舞台で、酸いも甘いも知る生え抜きが常勝軍団の底力を示した。
◆九回途中からマウンドに上がった中崎が4-4の延長十回、柳田にサヨナラ弾を浴びた。チームの敗戦を一人で背負う格好となった守護神は放心状態で「甘かったです。ど真ん中でした。次は頑張ります」とうなだれた。畝投手コーチは「ウチとしては手は尽くしたから。(王手をかけられて)あとは(投手を)つぎ込んでいくしかない」と必死で前を向いた。
◆大型ビジョンに映し出される「打率・111、0本塁打、1打点」。シリーズで不振に陥っていた広島・丸に、5試合目にしてようやく待望の一発が飛び出した。だが、サヨナラ負け...。もう1つも負けられなくなって、試合後は必死に前を向くしかなかった。 「くよくよしてもしようがない。後がないので、開き直っていくしかない」 1-2の五回二死二塁で、先発・千賀から代わったばかりのモイネロの3球目、高めの149キロを一閃。右翼席に弾丸ライナーで1号2ランを突き刺した。一塁キャンバスを回るとこぶしを握って"ヨッシャ!"。七回にも武田から中前打を放ち、マルチ安打とした。 レギュラーシーズンでは打率・306、自己最多の39本塁打、97打点。出塁率はリーグトップの・468でリーグ3連覇に大いに貢献したが、シリーズで大ブレーキになっている。この日の午前には、ベンチメンバーが遠征先の宿舎で行う「朝素振り」に参加した。迎打撃コーチとスイングの間の取り方や軌道を確認して球場へ。微調整の成果を発揮したが、投手陣が踏ん張れなかった。 2013年の楽天-巨人の第7戦(Kスタ宮城)から続く日本シリーズでのセ・リーグの敵地連敗は「15」まで伸びた。カープも2016年の日本ハムとの頂上決戦で札幌ドームで3連敗し、今年も3連敗で計6連敗。2年前にそのまま敗れた緒方監督は「選手たちはいいプレーをしてくれた。コンディションを整えて、あさってにマツダでやるだけ」と切り替えを強調した。 「きょうに関してはいいスイングができたと思います。投手と勝負ができた。最後は勝ちたかったですけど...」と丸。ソフトバンクが王手をかけて、34年ぶりの日本一へもう崖っぷち。復調した赤ヘル打線のキーマンが、3日からのマツダで猛反撃する。 (柏村翔)
◆パ・リーグ2位からクライマックスシリーズ(CS)を勝ち上がったソフトバンクが、セ・リーグ3連覇の広島に延長十回、5-4でサヨナラ勝ち。柳田悠岐外野手(30)がバットを折りながら日本シリーズ初アーチを放って試合を決めた。対戦成績を3勝1敗1分けとし、2年連続9度目(前身の南海、ダイエー時代を含む)の日本一に、あと1勝。2日は試合がなく、第6戦は3日にマツダスタジアムで行われる。 ナインが、ファンが飛び上がって打球を追った。死闘は主役の一発で決着した。豪快なサヨナラ弾で、2年連続日本一に王手。フィナーレで、柳田の圧倒的なパワーが爆発した。 「打った瞬間は『あっ』で、歓声で『えっ』です。歓声が運んでくれました」 4-4の延長十回、先頭で中崎のスライダーを右翼ホームランテラスへ。自身の日本シリーズ通算21試合、96打席目での初アーチは劇的な一発。しかも「あっ」の真相は驚がくだ。 「バットが折れた。うわ、折れたと思ったら入ってびっくり。初めての経験でうれしいです」 今季、同じ芸当をやってのけたオリックス・吉田正になぞって「吉田正以来、ですね」と笑顔。規格外の打撃で、日本シリーズのサヨナラ弾は史上16人目、17度目。チームはシリーズ新記録を更新する本拠地12連勝で頂点まで残り1勝だ。 「みんな疲れていて『誰か頼む』って感じでした」 引き分けの第1戦に続く2度目の延長戦だ。3度もビハインドをはね返したが、CSファーストステージから勝ち上がったチームは傷だらけ。デスパイネが左膝痛で欠場し、今宮も負傷交代。自身も四回に自打球で倒れ込んだ。「痛いです。でもやれている。出られるので、大丈夫」。すべてが報われる一発に、工藤監督も「打ってくれと思ったけど、まさか。さすが4番」と声が震えた。 試合後のヒーローは死闘とは対照的だ。折れたバットについて「もったいないので...。ゴルフの景品に」と笑顔。CSのMVP賞金100万円もオフに選手会が主催するチームスタッフの慰労会にあてる。全額を商品券に変えて配るつもりだ。そのCSのMVPも最後の2戦連発で奪ったが、今回も同じ臭い。今季最後のヤフオクドームは爆笑のお立ち台で締めた。 「あと、ひとつです。マツダスタジアムですけど、新幹線でも車でも、ヒッチハイクでも、来る手段はいくらでもあります。広島で会いましょう!」。舞台は再び自身の故郷へ。最後は底力と一体感の勝負。頂点まで、もうひと踏ん張りだ。 (安藤理) 七回に同点弾を放ったソフトバンク・明石 「打った瞬間に入ると思いましたけど、奇跡です。勢いもある。ここまで来たら決めたい」 二回に右翼から矢のような送球で、追加点を防いだソフトバンク・上林 「イメージができていた。刺す自信はあった」 柳田についてソフトバンク・王球団会長 「やっと役者が仕事をしてくれたね。本人も打てなくて悩んでいたけど、これで吹っ切れるでしょう。ムードは最高」
◆柳田のサヨナラ本塁打は、カウント1-0からひざ元へのやや甘めのスライダーだった。あらかじめ待っていたコースと球種だろう。バットが折れたというが、しっかり呼び込んで捉えたからテラス席に届いた。バットを内側から出してフェアゾーンに運んだのは見事だった。 ここまでは広島の内角攻めに苦しんでいた。ボール球に手を出すことも多く、本来の打撃にはほど遠かったが、延長十回の先頭での打席。腹をくくって内角に的を絞っていたのだと推測する。そこに、会沢は外角に構えていたが中崎のボールは内角寄りに。広島にとっては痛恨の1球だろう。 敵地に乗り込むソフトバンクとしては、第6戦で一気に決めたいところだ。広島の先発は、第2戦でやられたジョンソンだろう。内角に食い込むカットボール、スライダーに対して右打者がいかに対応するかが鍵になる。その点で、この日精彩を欠いた内川、松田宣の奮起に期待したい。 追い込まれた広島だが、救いは不振だった丸に復調の兆しが見えたこと。1日空くとはいえ、救援陣には疲労の色もみえる。ジョンソンがある程度長い回を投げることが重要になる。 (サンケイスポーツ専属評論家)
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