巨人(★6対7☆)阪神 =クライマックスシリーズ3回戦(2019.10.11)・東京ドーム=
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阪神
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巨人
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勝利投手:藤川 球児(1勝0敗0S)
敗戦投手:中川 皓太(0勝1敗0S)

本塁打
【阪神】梅野 隆太郎(1号・3回表ソロ),大山 悠輔(1号・9回表ソロ)
【巨人】陽 岱鋼(1号・4回裏ソロ),岡本 和真(2号・5回裏2ラン)

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◆阪神がファイナルステージ第3戦を制した。阪神は1-4で迎えた5回表、近本の適時三塁打などで一挙5点を挙げ、逆転に成功する。直後に同点を許すも、9回に大山が値千金のソロを放ち、再びリードを奪った。敗れた巨人は、6番手・中川が痛恨の一発を浴びた。

◆阪神梅野隆太郎捕手(28)が先制ソロを放った。0-0の3回。先頭の8番梅野は、巨人先発戸郷の外角低め148キロ直球をフルスイング。打球は左中間席に飛び込んだ。 「なかなか先制点を取ることができていなかったので、やぎ(青柳)のためにも先制点を取ることができて良かったです。ここから攻守で勢いに乗っていきたいです」 チームはファイナルステージを連敗し、後がない状況。6日のDeNAとのCSファーストステージ第2戦以来、4試合ぶりの適時打でファイナルSで初めて先制に成功した。

◆阪神矢野燿大監督(50)が連日の積極継投に出たが、またもや裏目に出た。 先発青柳は2回まで1安打無失点。1点リードの3回。死球と安打から1死一、三塁のピンチを招いた。3番の左打者丸を迎えたところで、青柳に代えて左腕ガルシアを2番手で送り込んだ。 しかし、託したガルシアが踏ん張れない。丸を四球で歩かせて1死満塁。続く4番岡本に中越えの2点適時二塁打を浴びて逆転を許した。岡本の打球はフェンス際に当たり、リプレー検証となったが判定は二塁打。1死二、三塁で再開された。直後、5番阿部にも右前適時打を浴び、この回3点を失った。 昨日10日の第2戦も同様の展開だった。2回1失点の先発高橋遥に代わり、3回からガルシアが2番手でリリーフ。2イニング目の4回、ゲレーロに2ランを被弾していた。

◆巨人岡本和真内野手(23)と阿部慎之助捕手(40)が、2者連続の適時打を放った。 1点を追う3回1死満塁、岡本が中堅フェンス直撃の2点適時二塁打をマーク。阿部も右前適時打で3点目を奪った。 岡本は「犠牲フライでいいと思っていたので、最高の結果になったと思います」。阿部は「気持ちがボールに乗り移って、(野手の)間を抜けてくれました」とコメントした。

◆阪神近本光司外野手(24)が走者一掃の逆転適時三塁打を放った。 3点を追う5回。巨人2番手桜井の3四死球で無死満塁の絶好機。巨人はここで3番手の左腕高木にスイッチしたが、6番高山が右前適時打。1死となって8番梅野の左前適時打で1点差に迫った。 2死満塁となり、1番近本が右翼線への適時三塁打。全ての走者をかえし、一気の逆転に成功した。近本は「一気に逆転したい場面だったので、何とかしたいという思いでした。気持ちで打ちました」と打席を振り返った。この回、一挙5得点。6-4と試合をひっくり返した。

◆巨人岡本和真内野手(23)が、今シリーズ2本目となる特大の2ランを放ち、同点に追いついた。 2点を追う5回無死一塁、阪神ドリスの直球を中堅バックスクリーン左にたたき込んだ。「つなごうと思って打席に入りましたが、最高の結果になってくれましたね」とコメントした。

◆巨人陽岱鋼外野手が特大アーチを放った。2点リードの4回1死、阪神島本の初球を完璧に捉えた。 バックスクリーンにぶち当てる1発に「打ったのはストレート。初球から積極的にいこうと思っていました。最高の結果になってよかったです」。CS弾は日本ハム時代の14年以来通算3本目となった。

◆負けるとCS敗退が決まる阪神(3位)は6-6の同点の9回に大山のソロ本塁打で勝ち越しに成功。最後は藤川が締めくくった。日本シリーズ進出へ王手を懸けていた巨人は足踏み。対戦成績は巨人の3勝1敗。12日は台風の影響で中止順延が決まっている。

◆阪神は3回に梅野のソロで先制。巨人は3回に岡本の中越え2点適時二塁打、阿部の右前適時打で3点を奪い、逆転した。 阪神は3点を追う5回に高山、梅野、近本の適時打で5点を奪って逆転。巨人はその裏、岡本の2ランで同点に追い付いた。 阪神は9回に大山のソロで1点を勝ち越した。6回途中から岩崎、藤川とつなぎ逃げ切った。巨人は6番手中川が決勝点を許した。

◆阪神は対戦成績を1勝3敗とした(巨人にアドバンテージ1勝)。 CS最終ステージが「1位球団にアドバンテージ1勝、4戦先取」となった08年以降、ストレートで3敗となった後で1勝したのは09年楽天、10年巨人、16年DeNAに続き4球団目。過去3球団はいずれも4戦目●で敗退しており、阪神は依然として厳しい状況にある。

◆阪神がファイナルS初勝利。阪神はDeNAと対戦した1S第1戦で1-7→8-7とCS史上最大の6点差逆転勝ちをしたが、この日は1-4から逆転。 同一年のプレーオフ、CSで3点差以上の逆転勝ちを2度記録したのは10年ロッテ以来2度目で、セ・リーグでは初めて。10年ロッテは西武と対戦した1S第1戦が1-5→6-5、同第2戦が1-4→5-4と2試合連続で3点差以上をひっくり返し、ソフトバンクとのファイナルSでは1勝3敗から3連勝で3位から日本シリーズへ進出。阪神も1勝3敗からの逆転進出はあるか。

◆巨人岡本和真内野手が3安打4打点の活躍も、チームは競り負けた。1点を追う3回1死満塁、阪神ガルシアの直球をはじき返し、中堅フェンス最上部直撃の2点適時二塁打。2点を追う5回無死一塁では、ドリスの直球を中堅バックスクリーン左へ。2打席目の打ち直しのような今CS2本目となる特大2ランで気を吐いたが、試合後は「負けたら意味がないです」と唇をかんだ。 「CS男」と化した。昨年は計18打数1安打と不振に苦しんだが、今年は初戦で丸との2者連続本塁打を含む2安打で勝利に貢献。第2戦もリードを広げる適時打を放った。3戦で打率5割8分3厘、2本塁打、6打点と大暴れで、CSのMVP候補にも挙がる。「やることやって、チームが勝てればそれでいいです」と第4戦に視線を向けた。【久保賢吾】

◆巨人2試合ぶりスタメンの阿部慎之助捕手が、マルチ安打で存在感を示した。 3回は岡本和真内野手の逆転打に続く右前適時打。今CS初の適時打で勢いに乗ると、5回にも右前打で出塁した。 4時間32分の熱戦にフル出場し「いくら打っても、勝てないと意味がない」と悔しさをにじませた。

◆高山は曲芸打法で猛攻を呼び込んだ。3点を追う5回無死満塁、左腕高木の内角高め146キロに詰まりながらも強引に振り抜き、一、二塁間後方に適時打を落とした。悪球打ちには「あまり覚えていない」と照れ笑い。「みんなチャンスで振れていなかったので、全部振ってやろうと思っていました。それより、その後に2打席凡退したことを考えないといけない」と反省も忘れなかった。

◆阪神梅野隆太郎捕手が先制弾&タイムリーで貢献した。 「流れが1発で変わるところで自分のスイングができてよかったです」 3回先頭。巨人先発戸郷の外角低め148キロ直球を左中間席上段へ運ぶ先制ソロ。3度目のCS出場で初アーチとなった。「なかなか先制点を取ることができていなかったので、やぎ(青柳)のためにも先制点を取ることができて良かった」。チームは第3戦で初めて先手を取った。逆転を許して迎えた5回1死満塁では、1点差に迫る左前適時打も放った。 CSファイナルステージ1勝目を勝ち取り、なんとか踏ん張った。「自分たちは追いかける立場。シーズンと違って(目前の白星を)取るか、取られるか、なので」。第4戦も攻める気持ちは変わらない。

◆巨人山口寿一オーナー(62)が試合を観戦し、4打点を挙げた主砲について「今日は岡本は良かったですよね。いいところで活躍をしましたよね」と評価した。 ベテラン阿部には「今日もいいヒットが出ましたし、非常にいい働きをしてくれているんではないでしょうか。あと、チーム全体がすごく団結していると思うんですね。それも阿部のおかげですからね。今日は負けてしまいましたけど、明後日また決めてくれると思います」と期待した。 腰痛からの復帰を目指す菅野については「本人は何とか出たいと思っているでしょうね。日本シリーズに出てきてくれることを待ち望んでいます。本人が一番悔しいでしょうね。今日だって先発したかったと思いますよ」と気遣っていた。

◆巨人がCSファイナルステージ初黒星を喫し、3連勝での日本シリーズ進出はならなかった。 1点先制された直後の3回に岡本和真内野手、阿部慎之助捕手の適時打で逆転し、4回は陽岱鋼外野手のソロで追加点。順調にリードを広げた中で、5回に暗転した。原辰徳監督は「やっぱり1イニング5失点というのはね」と試合の分岐点に挙げた。 3点リードで迎えた5回は、今季先発に転向して8勝を挙げた桜井俊貴投手が四球、死球、四球で無死満塁のピンチを招いて降板。5月31日以来の中継ぎ登板で、1回0/3を5四死球で3失点。3番手高木京介投手も3安打2失点と粘れず、逆転を許した。桜井は9月22日以来の登板だったが、指揮官は「実戦を想定した練習をしていたのかというところだろうね。それはしていなかったということでしょうな。(チーム合計)9つの四死球というのはね。9つでしょ。それはやっぱり守るのは難しいね」と指摘した。 同点の9回は、中川皓太投手が阪神大山に決勝ソロを許して競り負けた。 打線は9安打6得点と主軸が好調の中、原監督は「7、8番。その辺が、この3戦(力を)発揮していないね」と言った。第3戦も計8打数無安打に終わるなど、3試合で下位打線は計1安打にとどまる。「やっぱり大きな試合になれば、小手先の野球は通用しないよね。丹田(たんでん)に力を入れた状態で野球をすることが大事」と上位につなぐ役割を求めた。 台風19号の影響で、12日は東京ドームで非公開練習を行い、仕切り直しの一戦に臨む。【前田祐輔】

◆窮地を救った。阪神近本光司外野手が勢いよく三塁ベースに滑り込む。黄色のメガホンが一斉に揺れると、新人リードオフマンは右拳を突き上げた。 「一気に逆転したい場面だった。冷静な部分もあったけど気持ちが出ました」 1点差に詰め寄った5回、なお2死満塁。高木京の内角高めの直球を振り抜いた。打球が右翼線にはずむと、ぐんぐん加速。走者3人を全員かえす一時逆転の三塁打で一挙5点を挙げ、一気にムードを変えた。3回にも内野安打を放ってマルチ安打。前日15打席ぶり安打を放った男が完全復調もアピールだ。 昨季ドラフトで1位指名を受けて阪神に入団。社会人の最優秀選手賞「橋戸賞」を獲得しても、周囲には「チカモトって誰...?」とささやかれたことがある。それでも「新人王と盗塁王」の獲得を目指して奮闘。有言実行でまずは盗塁王のタイトルを手にした。無名から1年で「チカモト」の名を全国区に押し上げた。 「負けると今シーズンが終わってしまう。(CSは)1本の重みが違う」 1勝しても負ければ終戦の窮地に変わりはない。だがその一振りがチームを勇気づけた。第4戦も背番号5の奮闘に期待だ。【真柴健】

◆神様、仏様、球児様...。阪神藤川球児投手(39)が炎の2イニングで試合を締めくくった。 6-6の8回に登板すると2回を気迫の29球で無安打無失点。9回に大山の勝ち越し弾が飛び出し、ポストシーズン勝利を手にした。CSファーストステージ突破を決めた7日DeNA戦(横浜)に続く、自身2試合連続のイニングまたぎも涼しい顔。「全然疲れてない。今年は全然イニングまたぎもなかったから」と笑った。 見せ場は最終回の主軸斬りだ。先頭坂本勇を2-2と追い込んで外角低め149キロで中飛。続く丸からフォークで空振り三振を奪うと、最後はこの試合3安打の4番岡本と力勝負。3球目149キロで遊ゴロに仕留めると、右手を強く握りしめた。勝利の立役者は「みんなが1点でも少なくと戦ってきてくれた。僕がどうこうではない」とサラリ。今季はレギュラーシーズン巨人戦10試合で防御率0・00。極限の場面でも普段の力を発揮した。 頼もしい守護神の躍動に矢野監督も賛辞を惜しまない。試合後に藤川の話題になると「いやあ、あれはねえ...、すごいよ」と絶賛。「見てても力抜けてたからね。球児も力んでないというか。俺も楽しむって言ってるけど、この状況の場面を、ある意味、そういうように見えたし、だからこそ力まない。そういう部分は出てたと思う」と褒めちぎった。 まだシーズンを終わらせない。この日の練習前、藤川は外野で投手陣が作る輪の中心にいた。負ければ今季が終了する崖っぷちの一戦。経験豊富なベテラン右腕は約3分間、20代が多い若手投手陣に最後まで戦い抜くことを呼びかけた。「ファンの方に1試合でも多く(見せたい)と思う」。強い思いが藤川を突き動かす。【桝井聡】 ▼藤川がファーストS第3戦DeNA戦に続き、今CS2度目の2イニングを投げ勝利投手に。16年の阪神復帰後、藤川は救援登板して2イニングを投げたレギュラーシーズン14試合中、失点したのはわずかに1度。CS2試合を合わせた16試合では、防御率0・84という驚異的な好成績だ。このうち巨人戦6試合では、12イニングで無失点、被安打3と完璧に封じ込んでいる。

◆高卒新人の巨人戸郷翔征投手が先発し、3回1失点とまずまずの投球を見せた。3回にソロで先制点を許したが大崩れはしなかった。 高卒新人では13年阪神藤浪以来史上3人目のCS先発。菅野智之投手の回避で巡った急きょの出番を終え「大事な試合と意識しすぎてしまった」と反省が口をついた。 また、台風19号の影響で順延した第4戦にはルーキー高橋優貴投手が先発を予定する。

◆奇跡への猛虎劇場は終わらない。阪神が4時間を超える巨人との激闘の末、クライマックスシリーズのファイナルステージ第3戦で初勝利を挙げた。6-6の9回、大山悠輔内野手(24)が値千金の決勝ソロ。負ければ3連敗で今季終戦の土俵際、前日は出番すらなかった元4番が日本シリーズ進出への望みをつないだ。希望をつなげる一打が、右中間席最前列に飛び込んだ。大山は一塁を回り、二塁へ向かう途中で着弾を確認。「入ってくれと」。少しだけ頬を緩ませると、チームメートの待つ三塁側ベンチへ。監督、選手に迎えられ、もみくちゃになりながら祝福を受けた。 劇的な1発だった。同点で迎えた9回先頭。時刻は午後10時を回り、鳴り物の応援はなくなった。巨人6番手左腕中川の4球目。128キロスライダーをとらえた。押っつけて押し出した放物線は、ファンもベンチも歓喜のスタンドイン。一振りで激闘に決着をつけ、土俵際のチームを救った。 「自分自身、流れに乗り切れてないところはあった。けど、そんなのは関係なく、打席に入ったら自分のスイングをしようと。その結果、ホームランになったので本当によかったです」 CS男が苦しんだ。ポストシーズンは新人の17年に続く2度目の出場。当時は3試合に先発し、1本塁打を含む4打点、打率5割3分8厘の成績を残した。だが今季はDeNAとのファーストステージは7打数1安打で、3戦目には先発を外れた。巨人とのファイナルステージ第1戦も先発で3打数無安打。前日の第2戦は出番すらなかったが、7番でスタメン復帰して意地を見せた。 8日は東京ドームで行われた指名投手練習に休日返上で参加。ロングティーなどで調整を行った。出場機会がなかった前日10日のナイター後も、宿舎に帰って1人素振りに精を出した。 「負けたら終わり。やるしかない。結果が出てよかったです」 7回の第4打席で、ボテボテながら三塁内野安打で12打席ぶりHランプ。続く打席の劇的弾につなげた。 指揮官はシーズンの大半で4番任せてきた大山の一打に「よく打った。あいつも何かをキッカケにして欲しい。その部分の1本になれば」と笑顔。「こんなゲームは1人ではできない。またこれで、みんなと野球ができる。思い切り楽しんで、ジャイアンツを冷や冷やさせたい」と総力戦の勝利を喜んだ。「1個でいいと思っていない。4つ取ります」と全勝宣言だ。背番号3も気持ちは同じだ。「負けたら終わり。諦めることはないので、最後まで頑張ります」。過去16チーム中、プレーオフとCSで0勝3敗から逆転で日本シリーズに進出した例はない。奇跡への道は13日へつながった。まだ、終わらせない。【奥田隼人】

◆阪神が、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦を制した。 矢野燿大監督の一問一答は以下の通り。 -なんとか1勝した 1個でいいと思っていない。4つ取ります。 -大山はスタメンだが代打など交代も考えたか もちろん考えていたよ。投手も入れなアカンとか。いろいろな巡り合わせもある。そういうのも頭に入れながらね。 -4番で起用し続けた選手だった そりゃ、うれしいよ。でも、悠輔だけじゃなくね。苦しんできている選手たちが打ってくれている。なんか...。そういうやつらも記事にしてほしいなと思う。 -5回の5得点は全員の気持ちがつながった もちろん四死球でしょう。3つともね。そこから(高山)俊がつないでというところから。今日はホームランが出たけど、ウチはつないでいく野球。ジャイアンツは対照的に、ホームランとか長打がチームとしての野球になる。なんとかみんなでっていうのはずっとやってきてること。それをやりきってくれました。 -シーズンから通して後がないところからすごい すごいよな。もちろん、このままあっさり負けるつもりもないし、負けたくもないと気持ちで今日、臨んできた。強くないからこそ気持ちとか、みんなで野球をやっていく部分は大事にしていってくれているのは俺も感じている。それを、また、今日も体現してくれた。すごくいいキッカケになる1勝かなと思います。

◆阪神が、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦を制した。6-6で迎えた9回、大山悠輔内野手(24)が値千金の勝ち越しソロ。2イニング登板の藤川で逃げ切った。負ければ今季終戦の土俵際で、4時間ゲームの末に巨人から1勝をもぎ取り、日本シリーズ進出へ望みをつないだ。 希望をつなげる一打が、右中間席に飛び込んだ。大山は「入ってくれと思って、走っていました」。少しだけ頬を緩ませると、チームメートの待つ一塁側ベンチへ。監督、選手に迎えられ、もみくちゃになりながら祝福を受けた。 劇的な1発だった。同点で迎えた9回先頭。時刻は午後10時を回り、鳴り物の応援はなくなった。巨人中川の4球目。外角から真ん中低めに入ってきた128キロスライダーを捉えた。押っつけて押し出した放物線は、何とかスタンドまで届いた。チームの窮地を土壇場で救った。 「自分自身、流れに乗り切れてないところはあった。けど、そんなのは関係なく、打席に入ったら自分のスイングをしようと。その結果、ホームランになったので本当によかったです」 CS男が苦しんだ。ポストシーズンは新人の17年に続く2度目の出場。当時は3試合に先発し、13打数7安打(1本塁打)4打点、打率5割3分8厘をマークした。しかし、2度目の今季は不振。ファーストステージは7打数1安打。ファイナルステージ第1戦でも3打数無安打。第2戦は出場すらなかった。 8日、東京ドームで行われた指名投手練習に休日返上で参加。ロングティーなどで調整を行った。出場機会がなかった前日10日のナイター後も宿舎に帰り、1人素振りに精を出し、結果につなげた。 「負けたら終わり。1試合、1試合しっかり戦っていきたい。諦めることはないので、最後まで頑張ります」。望みは13日へつながった。まだ、終わらせない。【奥田隼人】

◆阪神の梅野隆太郎捕手(28)が11日、巨人とのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第3戦(東京ドーム)で特大ソロ。このシリーズで初めて先制に成功し、主導権を握った。  0-0の三回無死。マウンドには高卒1年目、19歳の戸郷。148キロ直球を振り抜くと、白球は左翼席上段に着弾。六甲おろしがドームにこだました。梅野にとってはこれがポストシーズン初の本塁打。負ければ終戦という大事な一戦で、大きすぎる先制点だ。

◆巨人のドラフト6位・戸郷翔征投手(19)=聖心ウルスラ学園高=が11日、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦の阪神戦(東京ドーム)に球団の高卒新人としては初めてCSで先発。だが、3回3安打1失点でマウンドを降りた。  一回1死から、北條に左翼線への二塁打を浴びていきなりピンチを招いたが、福留を高めへ投じた149キロの直球で空振り三振。続く4番・マルテも三ゴロに打ち取り、無失点で切り抜けた。  二回は三者凡退に抑えたあとの三回だった。先頭・梅野に先制の左越えソロを被弾。その後、失策や2四球で作った2死満塁のピンチで追加点は与えなかったが、この回限りで降板となった。  高卒新人がCSに登板するのは、2013年10月12日に阪神・藤浪がファーストステージ第1戦の広島戦に登板して以来、6年ぶり。プレーオフ、CSで先発勝利を挙げれば史上初の快挙だったが、かなわなかった。

◆阪神の青柳晃洋投手(25)が11日、巨人とのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第3戦(東京ドーム)に先発。2回1/3を投げ、2安打3四死球で降板した。  先制点をもらった直後の三回。先頭の代打・若林に死球を与えると、亀井にも右前打。坂本は投ゴロで1死一、三塁となり、丸を迎えたところで、矢野監督は立ち上がり、交代を告げた。  バトンを受けたガルシアは、丸に四球を与え1死満塁。岡本に中堅フェンス直撃の2点二塁打を浴びて逆転を許し、続く阿部にも右前適時打を許して3点目を献上した。負ければ終戦となる一戦は三回を終了し、1-3となった。

◆阪神の高山俊外野手(26)が11日、巨人とのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第3戦(東京ドーム)で反撃の適時打。チームを鼓舞する一打で、一気に3点差を逆転した。  1-4の五回。巨人・桜井が3四死球で無死満塁とすると、左腕・高木にスイッチ。ここで高山が打席に立つと、146キロ直球に詰まりながらも右前に落とした。  大山は空振り三振に倒れ1死満塁となるも、梅野が146キロ直球を左前に弾き返し1点差。さらに近本が右翼線に弾き返す間に3人の走者が生還し、6-4と逆転に成功した。

◆巨人の岡本和真内野手(23)が11日、阪神とのクライマックスシリーズ(CS)・ファイナルステージ第3戦(東京ドーム)で、CS2発目となる同点2ラン。「つなごうと思って打席に入りましたが、最高の結果になってくれましたね!」とコメントした。  2点を追う五回無死一塁。この回から登板したドリスの155キロの直球をバックスクリーン左へ。打った瞬間、スタンドインを確信したようにゆっくりと一塁へ走り出した。  岡本は第1戦の一回にソロ。昨年は5試合で18打数1安打と振るわなかっただけに、その日のお立ち台で「きょう2本打ったのでキャリアハイ」と語って笑いを誘っていた。第2戦でも2安打を放ち、今年のCSはこの打席終了時点で10打数6安打6打点と絶好調だ。

◆阪神のラファエル・ドリス投手(31)が11日の巨人とのCSファイナルS第3戦(東京ドーム)の五回から4番手で登板。無死一塁から岡本に中越えの同点2ランを献上した。  高山、梅野、近本の適時打で一挙5点をもぎとり、6-4と試合をひっくり返した直後の五回。4番手で登板したドリスが、手痛い一発を浴びた。  先頭の丸に四球を与え、無死一塁。前の打席でガルシアから逆転の中越え2点二塁打を放っていた岡本を打席に迎え、1ボールからの2球目だった。155キロ直球をフルスイングで捉えられ、白球は中堅スタンドへ一直線。痛恨の同点2ランを被弾し、リードを守ることはできなかった。

◆巨人に日本シリーズ進出王手をかけられた阪神は大山悠輔内野手(24)の勝ち越し弾で勝利を挙げ、望みをつないだ。  「なんとか塁に出ようと打った結果、最高の形になった」大山は6-6で迎えた九回、先頭で打席に断つと、カウント1-2から中川の128キロスライダーを上手くすくい上げ右中間スタンドへ運んだ。これが決勝弾となり崖っぷちのチームを勝利に導いた。  ヒーローの大山は「自分自身、流れに乗り切れてないところがあったんですけど、そんなのは関係なく打席に入ったら自分のスイングしようと思っていたので、その結果ホームランになって本当によかったです。諦めることはないので、最後までがんばります」とファンの声援に応えた。

◆阪神が11日の巨人とのクライマックスシリーズファイナルステージ第3戦(東京ドーム)に7-6で勝利。負ければ巨人が日本シリーズ進出という崖っぷちだったが、ようやく初勝利。奇跡の逆襲へスタートを切った。  6-6で迎えた九回。先頭の大山が右中間へソロ。殊勲の大山は、試合後のヒーローインタビューで「自分自身も流れに乗れてなかった。自分のスイングをしようとして、その結果がホームランになって本当によかった」と笑顔をみせた。  投手6人での継投で、総力戦での勝利。負ければ終戦だった矢野監督も「うれしいです。うちの野球はこういう野球なんで」と、安堵の表情で振り返った。

◆阪神・大山悠輔内野手が11日、巨人とのクライマックスシリーズファイナル第3戦(東京ドーム)の九回、同点の場面で右中間に決勝ソロを放ち、阪神がCSファイナル初勝利を挙げた。大山のヒーローインタビューは以下の通り。  --後がない試合だった  大山「負けられない気持ちはあったんですけど、レギュラーシーズン最後から負けたら終わりというところで、ここまで来ているので、ここから本当のタイガースの強さだと思って試合に臨みました」  --ゲーム中は  「自分自身、流れに乗り切れていないところがあったんですけど、そんなの関係なく、打席に入ったら自分のスイングをしようと思ったので、その結果ホームランになったので本当によかったです」  --九回の本塁打は先頭打者だった  「なんとかうしろにつなごうという気持ちで打席に入ったんですけど、結果的にホームランになってくれたので本当によかったです」  --右方向への当たり。感触は  「入ってくれと思って走ってましたけど、入った瞬間本当によかったですね」  --心強い阪神ファンの一押しがあったのでは  「はい、そうだと思います」  --王者巨人に対して阪神も意地があると思います。第4戦に向けて  「負けたら終わりなので、1試合1試合しっかり戦っていきたいと思います」  --あきらめない気持ちですね  「はい。あきらめることはないので。最後までがんばります」

◆阪神は11日、巨人とのクライマックスシリーズ第3戦(東京ドーム)に7-6で勝ち、初勝利をあげた。矢野燿大監督はチーム一丸の試合の最後に飛び出た大山のV弾を喜び、逆襲を誓った。--期待してきた大山が試合を決めた  「うれしいです」  --チーム全員で勝った  「ウチの野球はこういう野球なのでね。ホントに誰か1人だけでは勝てない。ウチらしく、つなぐ野球をできたなと思います」  --ようやく打線がつながった  「苦しい場面からシーズンも何とかつないできましたし、選手も四球とか、そういうのでしっかりつないでこういうゲームを作ってくれました」  --投手も踏ん張った  「毎日、シーズン最後から本当に大変な場面で行ってくれている。本当に投手陣には感謝です」  --なんとか1勝した  「1個でいいと思っていない。4つ取ります」  --12日は台風で第4戦は13日に順延  「今日みたいな野球をウチはするだけなので。全員で楽しんでいきます」  --大山はそれまでの打席内容を考えれば...  「まあね。まあまあ。でも、結果そういうふうに目立っちゃうというかね。悠輔(大山)がヒーローなんだけど。ヒーローというか。よく打ったんだけど。一人じゃないよね。こんなゲームは一人でできないし。あいつも何かをきっかけにしてほしい部分の一本になればいいしね。昨日、初めて試合に出なかったんかな。そういうことも経験しながらね。悔しい中からね。順調にいっているときも成長はしているけどね。そういうところから成長していける部分もあると思うしね。そういう一本になってくれたらなと思います」  --交代も考えたのでは  「もちろん考えていたよ。ピッチャーも入れなアカンとか。いろいろな巡り合わせもあるんでね。そういうのも頭に入れながらね」  --4番で起用し続けただけに、結果が出るとうれしさも人一倍  「そりゃうれしいよ。でも、悠輔だけじゃなくね。苦しんできている選手たちが、打ってくれているんでね。なんか...。そういうやつらも記事にしてほしいなと思う」  --五回にはビックイニングは気持ちでつないだ  「もちろん。3つとも四球でしょ。そこから俊(高山)がつないで...というところからなんで。きょうはホームランが出たけど、つないでいくというのがウチの野球なんで。ジャイアンツは対照的に、ホームランとか長打がチームとしての野球になると思うんで。なんとかみんなで...っていうのはずっとやってきてることなんで。それをやりきってくれました」  --シーズンから通してあとがないところから。すごい  「すごいよな。もちろん、このままあっさり負けるつもりもないし、負けたくもないと気持ちできょう臨んできたし。みんなももちろん、そういう風になってるから、こういう試合になってるし。ウチのチームの強さっていうのは気持ちの部分で。そういうふうにつなげたり。よく言うけど、現状、ウチは強くないんでね。強くないからこそそういう気持ちとか、みんなで野球をやっていくという部分は大事にしていってくれているのは俺も感じているんで。それをね、また今日も体現してくれたんで。すごくいいきっかけになる1勝かなと思います」  --藤川は九回の厳しい場面を含めて2回無失点  「いやあ、あれはね...、すごいよ。でも、なんか見てても力抜けてたからね。球児も力んでないというか。俺も楽しむって言ってるけど、この状況の場面である意味そういうように見えたし、だからこそ力まない。やっぱりそういう部分は出てたと思うし。あの流れで(九回表に)もう1点入っていたらまた違うんだけど、(木浪が)バント失敗して。一番ね、苦しい場面で。1人でも出たら多分増田が出てきてゲレーロも残ってて1番苦しい場面でね。まぁ球児の経験と楽しむっていうのが、そういうのが見てても見えたので。頼もしく思ってます」  --福留も負傷を抱えながら  「みんなそうなんよね。孝介(福留)もよく(死球に)当たってるし、マルちゃん(マルテ)もね。みんなそういう状況なんやけど、だからこそそういう野球じゃないと勝てないので。それをみんなわかってくれてるのでね。ミスというか、うまくできてない部分はもちろんあるけど、でも前向いてね、明日はないんか。またこれでみんなと野球できるので。また思い切り楽しんで、ジャイアンツを冷や冷やさせたいなと思います」

◆阪神の梅野が3安打2打点をマークし、守っても6投手を懸命にリードして勝利に貢献した。接戦を制し「勝つのは甘くない。守り抜けて良かった」と大きく息をついた。  三回に左翼席上段へ先制ソロを運び「流れを一発で変えようと思った。自分のスイングができた」と勢いに乗った。2-4の五回1死満塁では左前へ適時打を放ってこの回計5点の猛攻につなげ「コンパクトに打つことができた。追い掛けられる状況をつくることができた」と笑顔だった。

◆今季限りで阪神を退団することを明言している鳥谷は、出番なし。4時間32分の死闘で、残る野手は鳥谷を含めて3人だけだったが、ベンチから戦況を見守った。前日10日には代打で登場し、三飛。「自分のできることをやるしかない。出たところでしっかりやるだけです」と力を込めていた。13日からも「虎の鳥谷」を1試合でも長くできるように、全力を尽くす。

◆メラメラメラー、炎のストッパー、39歳の大ベテラン藤川球児のイニングまたぎの熱投が、プロ野球の歴史に新伝説を生むのだー!!  阪神は巨人のアドバンテージによる1敗を入れて3連敗。しかし、3連敗から4連勝の大逆転劇を演じたプロ野球のポストシーズンの歴史はいくつかあります!!  しかし、そこに『雨』という要素が入ってきたのは1958年の西鉄。豊田、中西、大下、そして稲尾様(全て勝ち投手)なんです!!  さあ、この1勝から永遠にプロ野球ファンに語り継がれるポストシーズンのドラマをやってやろーじゃないの!! 12日の第4戦は台風19号の影響を考慮して、すでに中止が決定しています。  お客さまの安全を考えての中止でもあるのですが、もしこの中止により阪神が逆転の4連勝をしたら、ドーム球場なのに中止の奇跡の逆転ドラマとして永遠に残るのだ!! おもしれ~、やったろうやないかー!!  最後に決勝ホーマーの大山、アリガトウ!! 逆転劇のためにあと3試合で10ホーマーの伝説を作ったれー!!

◆--期待してきた大山が試合を決めた  矢野監督「うれしいです」  --チーム全員で  「ウチの野球はこういう野球なのでね。ホントに誰か1人だけでは勝てない。ウチらしく、つなぐ野球をできたなと思います」  --ようやく打線がつながった  「苦しい場面からシーズンも何とかつないできましたし、選手も四球とか、そういうのでしっかりつないでゲームを作ってくれました」  --投手も踏ん張った  「毎日、本当に大変な場面で行ってくれている。本当に投手陣には感謝です」  --1勝した  「1個でいいと思っていない。4つ取ります。今日みたいな野球をうちはするだけ。全員で楽しんでいきます」  --大山は、それまでの打席内容を考えればビックリ  「まあね。でも悠輔(大山)がヒーローなんだけど、一人じゃないよ。こんなゲームは一人でできない。あいつも何かをきっかけにしてほしい。昨日、初めて(大山は)試合に出なかったんかな。そういうことも経験しながらね。そういう(きっかけの)1本になってくれたらなと」  --途中交代も考えたのでは  「もちろん考えていたよ。ピッチャーも入れなアカンとか。いろいろな巡り合わせもあるんでね。そういうのも頭に入れながらね」  --結果が出るとうれしさも人一倍  「そりゃうれしいよ。でも悠輔だけじゃなく、苦しんできている選手たちが打ってくれているんでね。なんか...。そういうやつらも記事にしてほしいなと思う」  --あとがないところから。すごい  「すごいよな。もちろん、このままあっさり負けるつもりもないし。ウチは強くないからこそ、みんなでやっていく部分は大事にしてくれている。それを今日も体現してくれた。すごくいいきっかけになる1勝かなと思います」  --藤川は2回無失点  「いやあ...。すごいよ。でも、なんか見てても力抜けてたからね。力んでないというか。一番苦しい場面でね。球児の経験と楽しむっていうのが、そういうのが見てても見えたので。頼もしく思ってます」  --福留も負傷を抱えながら  「みんなそう(満身創痍)なんよね。(でも)またこれでみんなと野球できる。また思い切り楽しんで、ジャイアンツを冷や冷やさせたいなと思います」

◆虎番たちはグラウンド内でも、グラウンド外でもドタバタだ。  グラウンド内はもちろんクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージの崖っぷちの大一番。巨人に2連敗して王手をかけられ、この試合に負ければシーズンが終わってしまう。勝負師は"たられば"は言わないが、「もし」を考えながら仕事するのが新聞記者です。  ただの終戦ではない。チームの終わりは、鳥谷のタテジマでの最終戦を意味する。キャップ大石豊佳、サブキャップ長友孝輔以下虎番たちは、負けてくれるな、勝って欲しいと祈りつつ、迫り来るタイガース史の節目になるかもしれない瞬間を前に、緊張を隠せない。  戦いの舞台、東京ドーム内には野球殿堂博物館がある。殿堂入りしたレジェンドの肖像レリーフがズラリと並び、プロ野球から社会人、大学、高校、さらには少年野球まで、様々な展示物が。そのプロ野球コーナーには12球団のユニホームが陳列されている。  巨人・坂本勇、DeNA・筒香、広島・鈴木、中日・大島、ヤクルト・山田哲、西武・秋山、ソフトバンク・松田宣、楽天・則本、日本ハム・西川、ロッテ・鈴木、オリックス・吉田正...  いずれ劣らぬチームの顔のユニホームばかり。そして阪神は誰かといえば、背番号1。そう鳥谷のユニホーム。やっぱりタイガースの顔は鳥谷なのだ。ファンが、われわれマスコミが、できることは、鳥谷の姿を目に焼き付けることだけ。  さて、グラウンド外は、関東地方に向かってばく進してくる大迷惑の台風。超大型の台風19号のおかげで、12日の試合は阪神が勝ってもすでに中止が決まっている。さらに、12日の東海道新幹線は計画運休が発表された。  のぞみ号もひかり号も、朝から一本も動かない。世間は大変でしょうが、これは虎番記者にも大打撃。阪神が負けても、飛行機も飛んでないから、関西に帰れない。東京都内のホテルで身動きも取れず、暴風雨が過ぎ去るのを待つしかない。これは辛い。寂しい。想像もしたくない。  「都内のホテルは空き部屋がほとんどないですし、あってもどこも、軒並み、高騰してます。どうしましょう?」  長友が、箭内桃子が、スマホを手にホテルの手配で必死だ。  そんな光景を横目で見ながら、キャップ大石は別の意味で複雑な思いを抱いていた。  「実はあす(12日)は3歳の息子の幼稚園の運動会だったんです。帰るつもりが帰れなくなって、困ったと思っていたら、台風の影響で14日に延期になりまして。その日は何とか行ってあげたいなと思ってます」  ただ、阪神が勝っていけば、14日は大盛り上がりになる。ちなみに、最終戦までもつれれば、現状では15日に。  そして、17日には球界のビッグイベント、ドラフト会議。16日は前日会議が都内で行われる。  「そうなったら、矢野監督も関西に帰れません。キャップの僕も帰れないでしょうね」  大石はポツリ。息子よ、お父さんを許してあげてね。阪神キャップとは、因果な仕事であります。  負けられない試合は、取って取られて。ねじりあいの末、九回にまさかまさかの大山が劇弾。大石パパとしては、うれしいような、悲しいような。それにしても...。タイガースはシーズン終盤から、この試合に負けたら終わる、という試合は全勝です。

◆巨人・若林晃弘内野手が阪神とのCSファイナルステージ第3戦(東京ドーム)の三回に左ふくらはぎに死球を受け、途中交代した。今後については状態をみて判断する。

◆投手陣は6人を注ぎ込むも12安打9四死球と崩れた。中継ぎとして2番手で登板した桜井は、五回に3者連続で四死球を与えるなど計5四死球で3失点。最後は6番手の中川が大山に決勝弾を浴びて、競り負けた。原監督は「(五回は)1イニングに5失点というのはね。9つの四死球というのはね。やっぱり守るのは難しいね」と苦言を呈した。

◆第2戦で右膝に死球を受けて負傷交代した福留はフル出場。CSに入っての3死球で満身創痍だが「全員で必死にやってこういうゲームができて、良かったんじゃないですか」とクールに振り返った。五回は先頭で四球を選んで逆転をお膳立てし、八回は中前打。「塁に出ること。短期決戦なので、やれることをやれて良かった」。百戦錬磨のベテランが痛みに耐えて、チームを引っ張る。

◆今季限りで退団する鳥谷は出番はなし。試合後はバットを手にして球場を後にした。前日10日は代打で三飛に。「自分はできることをしっかりやるだけ」と気持ちを新たにしていた。日本シリーズ出場まで一つも負けられない。チームの勝利に貢献して、最後は甲子園で、虎最後の雄姿を披露する。

◆サンケイスポーツ専属評論家の野村克也氏(84)と江本孟紀氏(72)が、CSファイナルステージ第3戦の巨人-阪神を中継したニッポン放送でダブル解説を務めた。野村氏は「野球は頭のスポーツだと思う」と改めて持論を展開。三回、梅野に先制ソロを浴びた戸郷について江本氏は「梅野はある程度、実績もあるし、甘い球を投げていたら打たれますよ」と指摘した。

◆1点を追う九回2死走者なし。巨人・岡本和真内野手(23)は遊ゴロに倒れ、最後の打者となった。  「負けたら意味がない。やることをやってチームが勝てれば、それでいい」  試合に敗れたが、4番打者は3安打4打点と気を吐いた。三回に2点二塁打、五回は中越えに2ラン。ファイナルステージ3試合で12打数7安打(打率・583)、2本塁打、6打点と好調だ。  九回に大山に勝ち越しソロを許し、総力戦の末に競り負けた巨人。セ・リーグのCSでは2017年のファーストステージ第2戦の阪神-DeNA(甲子園)に次ぐ4時間32分の熱戦だった。  初黒星を喫したものの、3勝1敗で優位は変わらない。台風19号の影響で1日空き、13日の第4戦で仕切り直す。原監督は「しっかりまた準備をして備えます」と気持ちを切り替えた。 (谷川直之) 巨人・山口オーナー 「チーム全体がすごく団結している。それも(今季限りでの現役引退を表明した)阿部のおかげ。今日は負けてしまったが、明後日(13日)決めてくれると思う」

◆このまま負けるわけにはいかない。チーム全員の意志を、選手会長の梅野がド派手な放物線で示してみせた。0-0の三回。先制ソロを、左翼席中段に突き刺した。  「なかなか先制点を取ることができていなかった。一発が出れば流れが変わるとは思っていたんで、良かったです」  第1戦から数え、ファイナルステージ21イニング目にして初めて虎が奪った先制点であり、リードだ。レギュラーシーズンでも対戦がなかった高卒1年目右腕の戸郷の148キロを、カウント3-1から思いきり振り抜いた。  大きな1点だ。DeNAと戦ったファーストステージ、6日の第2戦(横浜)で九回に福留が放った同点ソロ以来、打線はこの日の二回まで29イニング、暴投と犠飛と押し出し以外では得点を生み出せていなかった。前日10日は零封負け。梅野にとってCS初アーチは、チームを勇気づける一発となった。  1-4となった五回には、高山の適時打の後、なお1死満塁で左前適時打。近本の走者一掃の逆転三塁打を呼ぶと、九回にも二塁打で3安打猛打賞。総動員となった投手も懸命のリードで引っ張り、チームを救った。  今季は自己最多の9本塁打で、2桁弾にはあと1本足らなかった。「この1本もカウントしてくれないかなぁ」。激勝を呼ぶシーズン"10号"に笑顔がこぼれた。

◆負けられない大一番でも、24歳のルーキーの勝負強さが頼りになる。のけぞりながら、熱く気持ちで弾き返した。近本が一時逆転となる3点三塁打。歓喜に沸く三塁ベンチへ向けて右腕を強くかざして、崖っぷちの虎を救いあげた。  「どの球を打って、どこに飛んだのか、わからなかった。一気に逆転したい場面だったので、気持ちで打ちました」  1-4で迎えた五回。3四死球で満塁とすると適時打2本で1点差。なお2死満塁で近本が打席に立った。「気持ちが入っていた」-。左腕・高木の内角に入ってきた146キロ直球を力強く右翼線へ。3点三塁打で、一気に逆転に成功した。  「ビジターで(多くは)入れないですけど、(ファンの声援に)感じるものがありますね」  新人のプレーオフ、CSでの1試合3打点は最多タイで、17年の阪神・大山に次いで2年ぶり4人目となった。  新しい相棒も、手元に届いた。前日10日、使用する「ヤナセ社」から練習用のバットが到着。担当者と言葉を交わした。関学大時代から愛用しているが、素材はずっと変わらず「ハードメープル」。プロ入り前に他の素材も打つなどして確認したが「やっぱりいつもの(ハードメープル)ですね」と、なびくことはなかった。激動の1年を支えた相棒が、大きすぎる舞台でも大事な1本を打たせてくれた。  CS6試合、もちろんすべてスタメン出場。シーズン中から変わらない信頼を寄せる矢野監督は「きょうはホームランが出たけど、つないでいくというのがウチの野球。なんとかみんなで...っていうのはずっとやってきてることなんで」と打者9人で5点を奪ったビッグイニングを振り返った。土俵際に立たされ、さらに強くなった一体感を、ここで発揮。その中心にルーキーがいる。  「(安打)1本の重みが違う。負けると今年のシーズンが終わってしまうので。できるだけ長く野球ができるように」  負けられない状況は変わらないが、ここにたどり着くまでもずっと崖っぷちだった。下克上の先頭に、近本が立つ。 (竹村岳)

◆落ち着かない試合を、誰より落ち着いた男が堂々と落ち着かせた。またも八回からの2回をゼロ封。藤川の右腕が白星をたぐり寄せ、そのままつかみ取った。  「きのう(10日)、おとといとはまた違ったこういう試合ができて、ファンの方もついてきてくれるんじゃないか。(回またぎは)全然疲れてないよ。ことしはずっと、1イニングだけで投げさせてもらってきたから」  7日のDeNAとのファーストステージ第3戦(横浜)でも大雨の中で2回0封セーブ。ファイナルステージ進出を決めた。虎のため、ファンのためなら、一肌どころか"何肌でも"脱げる。  この日は同点の八回から登板し、山本、陽、亀井を退け三者凡退。そして直後の九回先頭で大山に劇弾が飛び出すと、当然のようにその裏もマウンドへ。次はGが誇る主軸3人が相手だったが、坂本勇を中飛、丸を空振り三振、岡本を遊ゴロに斬って試合を締めた。  今季はレギュラーシーズンでも巨人戦10試合に登板し、1勝0敗、1ホールドに5セーブ。防御率0・00と圧倒的な強さを見せた。宿敵とのCS。やはり藤川は、強烈な意地を見せた。  「また次に行ける。そういうことでしょう。みんなに喜んでもらいたいですから」  このCSだけでも1勝&2セーブ。しかも13日の第4戦からはセットアッパーのジョンソンも戻ってくる。盤石の救援陣。1つでも多くの歓喜のため、守護神・藤川はまだまだ投げる。 (長友孝輔)

◆まだ終わらせない! 虎の奇跡は続く!! 3位から勝ち上がった阪神が、リーグ優勝した巨人に7-6で競り勝ち、1勝3敗(巨人にリーグ優勝による1勝のアドバンテージ)とした。負けたら終わりの崖っぷちで、不振だった大山悠輔内野手(24)が九回に劇的な勝ち越し本塁打を放った。台風接近のため第4戦は、13日午後3時半から行われる。  オレンジ一色に染まった右翼席の最前列に、虎党の思いを乗せた白球が飛び込んだ。大山が九回に執念の勝ち越しソロ。負ければ終わりの背水の一戦、意地のひと振りで初白星をもぎ取った。  「なんとか後ろにつなごうという気持ちで打席に入ったんですが、結果的にホームランになってくれたので、本当によかったです。『入ってくれ』と思って走っていましたけど、入った瞬間、本当によかったです」  取って取られてのシーソーゲーム。2度追いつかれたが最後に試合を決めた。6-6で迎えた九回先頭。中川に2球で追い込まれたが、カウント1-2から4球目だ。低め128キロスライダーをすくい上げ、4時間32分の死闘に決着をつけた。  過去、相手に無敗で王手をかけられたチームが日本シリーズに進出したことはない。苦しい状況には変わらないが、矢野監督は「すごくいいきっかけになる1勝。ジャイアンツを冷や冷やさせたい」と不敵に話した。  打順の巡りによっては大山の途中交代も「考えていた」という。五回無死満塁で空振り三振など、V弾の打席までCS14打席で2安打、打点0の不振。それでも今季開幕から106試合、4番で起用した男の反発力を信じ、打席に送った。  「そりゃ、うれしい。昨日(10日)は初めて試合に出なかったんかな。悔しい中からきっかけにしてほしい」  変わらぬ熱い期待。大山も「自分自身、流れに乗り切れていないところがあったんですが。そんなの関係なく、打席に入ったら自分のスイングをしようと思っていました」と、目の前の打席だけに集中していた。  どんな時も、前だけを向いてやってきた。長いシーズン、勝利に貢献できる日ばかりではない。終盤には4番も外されるなど、悔しい思いもたくさん味わった。そんなうまくいかなかった打席の後は、必ずスコアボードを見上げてきた-。  「打てない時はどうしても下を向いてしまう。そういう時こそ、なるべく上を見て、前向きに次にいけるように。反省は打席の中でして、ベンチに戻ったら次に切り替えられるようにと思って、やっています」  スコアボードを見れば自然と目線が上がる。球速や、自身のリプレー映像も流れる。「どんな球に対してどうだったかもその場で見られるので。なるべく同じやられ方をしないように」。結果を残すには、うつむいている暇はない。続けてきた心がけが、千金アーチにもつながった。  「負けたら終わりなので1試合1試合しっかり戦っていきたいと思います。諦めることはない。最後まで頑張ります」。突破率0%からの逆襲。V弾を手応えに、奇跡の使者となる。 (箭内桃子)

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