巨人(★3対4☆)ソフトバンク =日本シリーズ4回戦(2019.10.23)・東京ドーム=
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ソフトバンク
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巨人
0000021003621
勝利投手:和田 毅(1勝0敗0S)
(セーブ:森 唯斗(0勝0敗1S))
敗戦投手:菅野 智之(0勝1敗0S)

本塁打
【ソフトバンク】グラシアル(3号・4回表3ラン)
【巨人】岡本 和真(1号・6回裏2ラン)

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◆ソフトバンクが4連勝で3年連続の日本一に輝いた。ソフトバンクは4回表、グラシアルの3ランが飛び出し、先制に成功する。投げては、先発・和田が5回1安打無失点の好投。最後は6番手・森が締めた。なお、MVPには4試合で3本塁打を放った、ソフトバンク・グラシアルが選ばれた。

◆プロ野球日本シリーズ「巨人×ソフトバンク」の第3戦(東京ドーム)で、22日午後6時から放送された日本テレビ系生中継の関東地区の平均視聴率が9・7%だったことが23日、ビデオリサーチの調べで分かった。 19日の第1戦はフジテレビ系で放送され8・4%、20日の第2戦はTBS系で放送され7・3%。3戦までの中では最高となったが、今シリーズ初の2ケタ突破とはならなかった。 第3戦中継では、中日退団が決まっている松坂大輔投手がゲスト解説。ラグビーワールドカップ(W杯)日本代表のプロップ稲垣啓太がゲスト出演した。試合はソフトバンクが6ー2で3連勝となり、日本一に王手をかけた。 第3戦は今シリーズで初めて、裏でラグビーワールドカップの生中継がなかった。第1戦の裏で日本テレビ系で放送された準々決勝ニュージーランド×アイルランドの平均視聴率は16・5%。第2戦の裏でNHKで放送された準々決勝の日本×南アフリカは41・6%と驚異的な数字を記録していた。

◆巨人岡本和真内野手が、日本シリーズ初本塁打となる2ランを放った。3点を追いかける6回2死一塁、ソフトバンク・スアレスの157キロの直球を右翼席にたたき込んだ。 第2戦ではシリーズ初安打となるマルチ安打、初打点をマーク。「とにかく、頑張ります」と言葉に力を込めた男が、結果で示した。

◆巨人丸佳浩外野手(30)のバットから、ようやく快音が響いた。 2点を追う7回2死一、二塁、ソフトバンク5番手モイネロから左越え適時二塁打を放った。今シリーズ16打席目にしての初安打で1点差に迫り、反撃ムードを高めた。

◆今季限りで引退する巨人阿部慎之助捕手(40)がソフトバンク嘉弥真から死球を受けた。 岡本の2ランで1点差に迫った6回2死一塁、若林の代打で登場。大歓声に迎えられ、打席に入った。2球続けて変化球を見送り、3球目はスライダーをファイル。4球目は抜けた140キロが右腕付近に直撃した。 レギュラーシーズンでは通算152死球で歴代4位だった。 8回1死の第2打席目はソフトバンク5番手モイネロと対戦。129キロスライダーを詰まらせて二ゴロに倒れた。

◆ソフトバンクが3年連続10度目の日本一を決めた。球団の歴史は以下の通り。 1938年(昭13)に南海電鉄を経営母体に創設。44年近畿日本、46年に近畿グレートリングと改称。47年から南海ホークス。59年杉浦の4連投4連勝で巨人を破り初の日本一。88年にダイエーが買収し、大阪から福岡に本拠地移転。93年福岡ドーム完成。99、03年に王監督で日本一。球団買収で05年からソフトバンク。11、14年秋山監督で日本一。15、17、18年工藤監督で日本一連覇。1リーグ時代に2度優勝。パ優勝は19度(南海10、ダイエー3、ソフトバンク6)。日本シリーズ優勝10度目。孫正義オーナー。

◆ソフトバンクが4連勝で球団史上初、90~92年の西武以来27年ぶりとなる3年連続日本一を達成した。 守護神森が最終打者となった巨人坂本勇を三振に仕留めるとマウンド付近で歓喜の輪ができた。工藤監督が、孫正義オーナーがともに10度ずつ胴上げで宙を舞った。シリーズ3本塁打のグラシアルがMVP、優秀賞は高橋礼、デスパイネ、松田宣、敢闘賞は巨人亀井。 工藤監督は感無量の様子だった。 「本当に最高の気分です。僕を胴上げしてもらって申し訳ない気持ちでいっぱいだし、もっともっとできたんじゃないかと思う。選手たち、コーチたちが少しずつ勝ってくれることで勇気をもらってここまでこれた。みんな本当にありがとう。昨年もリーグ優勝を逃して日本一になった。スローガンをダッシュにして頑張ってきたけど僕の力不足でリーグ優勝できず選手に迷惑を掛けた。最後は笑って日本一になりたいとここまできた。CSファーストステージ(第2戦)から10連勝。すばらしい選手、仲間とコーチ、スタッフと野球ができた。こんな幸せ者はいない」と声を震わせた。 リーグ2位に終わったソフトバンクだが、今年のポストシーズンはCSファーストステージ第2戦から10連勝で頂点まで駆け上がった。日本シリーズは昨年の第3戦から最長タイとなる8連勝(過去3度)で締めくくった。 00年には巨人長嶋監督とダイエー(現ソフトバンク)王監督による「ON対決」が実現し長嶋監督が日本一に。この日東京ドームで試合を見守った王会長にとっても19年越しの雪辱となった。 ソフトバンク無傷の日本一は、南海時代の59年、巨人に4戦4勝して以来60年ぶり2度目となった。59年当時は杉浦忠が野村克也とバッテリーを組み、4連投4連勝で杉浦がMVPだった。 巨人を破り、ソフトバンク球団で初となるセ6球団制覇となった。 序盤は投手戦で幕を開けた。巨人菅野、ソフトバンク和田がともに3回まで無失点に抑えた。先手を取ったのはソフトバンクだ。グラシアルが4回に2戦連発となる3号3ランで先制した。巨人も6回に反撃し4番岡本の右越え1号2ランで1点差と詰め寄った。 ソフトバンクは7回1死一、二塁から二塁ゴロ併殺をねらった二塁手山本の悪送球が適時失策となり加点、リードを2点差と広げた。 2点を追う巨人は7回に丸のシリーズ初安打となる左越え適時二塁打で1点差とした。 ソフトバンクは先発和田が5回無死点の好投。中継ぎ5人を投入し最後は守護神森が締めた。 巨人は12年を最後に7年間日本一から遠ざかり、球団最長タイ(74~80年、82~88年)のブランクとなった。今季限りでの引退を表明している巨人阿部慎之助捕手は6回2死一塁から代打で登場し死球、そのまま一塁に入り8回の第2打席は二塁ゴロに終わった。

◆序盤は投手戦。巨人先発の菅野は3回まで1安打無失点。ソフトバンク和田も3回まで1安打5奪三振で無失点に抑えている。 ソフトバンクは4回にグラシアルの3ランで先制した。先発和田は5回無失点。巨人は6回に岡本の2ランで1点差に迫った。 7回に両軍1点ずつ挙げたが、ソフトバンクが1点差を守りきりシリーズ4連勝。3年連続の日本一を決めた。 ソフトバンク和田が1勝、森が1セーブ、巨人菅野が1敗。

◆ソフトバンクが3年連続10度目の日本一を果たした。シーズン序盤はけが人を抱えながらの苦しい戦いで2位フィニッシュだったが、ポストシーズンは10連勝するなど3連覇を勝ち取った。

◆ソフトバンクが競り勝ち、球団初の3年連続日本一の快挙を達成した。4回にグラシアルの3ランで先制し、3-2の7回に失策で加点した。巨人は2失策が絡んだ7回の失点が痛かった。6回の岡本の2ランなどで追い上げたが、一歩及ばなかった。またMVPには3本の本塁打を放ったソフトバンク・ジュリスベル・グラシアル内野手が輝いた。

◆「松坂世代」のベテラン左腕が大一番で意地を見せた。ソフトバンク和田毅投手(38)が5回無失点の好投で、巨人菅野に投げ勝った。ルーキー時代の03年以来、16年ぶりに日本シリーズで勝利を飾った。今季は左肩痛から復活を果たし、日本一のかかったマウンドで本領を発揮した。涼しい顔で、和田は大男たちに立ち向かっていった。緩急を使ったベテランの味ある投球。3回2死一、二塁のピンチで丸を見逃し三振に斬ると、味方が先制点をくれた。「初回からいけるところまで全力で、と思っていました。優勝が決まる試合の中で投げられたことは幸せです」。5回をわずか1安打で無失点と好投し、日本シリーズでは新人だった03年以来の白星。「そこまで勝てなかったんだな、と不思議な気持ち」と笑った。 昨年は春キャンプ中に肩を痛め、1試合も1軍で投げられなかった。1年以上の長いリハビリを経て、復活勝利を挙げたのが今年6月。勝った方が交流戦優勝を勝ち取る、巨人との最終戦だった。その時に投げ合ったのも同じ菅野だ。この日も「相手の菅野君も素晴らしい投球をしていたので、負けないようにという思いでした」。03年のシリーズでは3勝3敗の第7戦で完投勝利し、胴上げ投手になっていた。送り出した倉野投手コーチの「大舞台を経験している。こういうところで力を出してくれる」という期待に応えた。 「1年間戦力として投げ続けないと意味がない」。復活を期した今春に掲げた目標だった。1軍昇格は6月までずれ込んだが、それからは1度も大きな離脱なく、ポストシーズンまで走りきった。 2軍暮らしの間も、若手の模範であり続けた。前半戦で先発ローテを守り、大学の後輩でもある大竹にはメールなどでアドバイスを送り続けた。戦力になり、1軍に戻ってきても思いは続く。「筑後にはまだ、一緒にリハビリしてきた若い子もいる。和田さんもああやって治ったんだって、励みにしてもらえるような活躍をしないと」。この日の快投も夢を与えた。完全復活して、もっともっと夢を与え続ける。【山本大地】

◆ソフトバンク和田毅投手が新人だった03年<7>戦以来、16年ぶりシリーズ2勝目。和田の2勝はともに日本一を決める白星だ。 シリーズ勝利としては89年→00年斎藤雅(巨人)の11年ぶりを抜く最長ブランクとなった。和田の38歳8カ月は50年<1>戦若林(毎日)42歳8カ月、02年<3>戦工藤(巨人)39歳5カ月に次いで3位の年長勝利となり、日本一決定試合では15年<5>戦スタンリッジ(ソフトバンク)の36歳11カ月を抜く最年長勝利。

◆ソフトバンク工藤公康監督は4度目の優勝。シリーズで優勝4度以上の監督は5人目で、就任5年間で4度は森監督(西武)に次いで2人目。 工藤監督は14度出場の選手時代に11度優勝し、選手を含め通算15度目のV。選手と監督を合わせた優勝回数は川上監督(巨人)に並び2位タイとなった。西武の選手時代にも3連覇を2度やっており、選手と監督の両方で3連覇は川上監督、森監督(西武)に次いで3人目。選手(90、02年)と監督の両方で無傷の4連勝を経験したのは工藤監督しかいない。 昨年<3>戦からは8連勝で、監督の8連勝は西鉄時代の58年から大洋時代の60年に記録した三原監督、88~91年森監督に次いで3人目のタイ記録。これで工藤監督のシリーズは16勝4敗1分けの勝率8割。2度以上出場した監督で、勝率8割以上は工藤監督だけ。

◆ソフトバンクのグラシアルが決勝弾を放ち、日本シリーズMVPに輝いた。 0-0の4回1死一、三塁。2試合連発となるシリーズ3号3ランを左中間席へ運んだ。巨人菅野のスライダーを完璧にとらえ、ゲームの主導権を握った。大歓声で始まったお立ち台のインタビューでは「全力で戦った結果。ファンのみなさんのおかげです」と感謝。最後は日本語で「アリガト!」と笑みを浮かべた。 「絶対に走者をかえそうと思って打ちにいった。最高の結果になってくれたし、先制できたよかった」 第1戦は逆転2ラン。第3戦は同点ソロ。そしてこの日は先制3ラン。勝負どころでの1発がすべて勝利に直結した。 鋼のような肉体で効果的なアーチを量産。移動中はスマートフォンで動画を視聴。自らが筋力トレーニングをしている姿をチェックしているという。「来日2年目の今年は、少し落ち着いてプレーできているよ」。絶え間ない努力を実らせ、最高の栄誉をものにした。

◆公式戦2位のソフトバンクが4連勝で3年連続10度目の日本一。シリーズ3連覇以上は90~92年西武以来7度目で、ソフトバンクは初めて。 リーグ優勝チーム以外の日本一は07年中日(2位)10年ロッテ(3位)18年ソフトバンク(2位)に次いで4度目となり、2年連続は初めてだ。無傷の4連勝は05年ロッテ以来8度目(4戦4勝は6度目)で、ソフトバンクは南海時代の59年○○○○以来2度目。西武が西鉄時代の57年○○○△○、90年○○○○と無傷の4連勝を2度やっているが、引き分けなしの4戦4勝を2度はソフトバンクが初。昨年の<3>戦からのシリーズ8連勝も88年<3>戦~91年<1>戦西武、00年<3>戦~02年<4>戦巨人、74年<4>戦~10年<1>戦ロッテに並ぶタイ記録となった。 ▼00年の敗退後は03、11、14、15、17~19年と続けて日本一。21世紀は敗退がなく、出場7連続Vは61、63、65~73年巨人の11連続に次いで2度目だ。これで13年楽天から7年続けてパ球団が日本一となり、同一リーグの7連覇はV9巨人の65~73年セ・リーグ以来2度目。00年終了時の優勝回数はセ球団30度、パ球団21度だったが、21世紀はソフトバンクを中心にパ球団が圧倒。優勝回数は両リーグ35度で並び、この4連勝で対戦成績はパ球団が205勝202敗8分けとセ球団を逆転した。

◆ソフトバンクが92年西武以来、球団初となる3年連続日本一を達成した。「SMBC日本シリーズ2019」で巨人を4連勝で下し、ポストシーズン10連勝で頂点に立った。工藤公康監督(56)はポストシーズンで初めてベテラン内川をスタメンから外すなど日本シリーズでも「鬼采配」を見せた。2年連続V逸の悔しさを胸に、下克上を再現した。工藤監督の体が連勝の数と同じ10度、東京ドームに舞った。負けたら終わりのCSファースト第2戦から10連勝。シーズンでは3度壁に阻まれた「10」の大台で日本一まで突き抜けた。1発が出れば逆転サヨナラの場面、守護神の森が坂本勇を空振り三振に仕留めた。マウンドにできた歓喜の輪の中で、選手会長の柳田を見つけると一番先に抱き合った。王球団会長、孫オーナーともがっちり握手。史上初の2年連続下克上で3年連続日本一をつかんだ。 工藤監督は「本当に最高の気分です。本当にみんなご苦労さまでした。ありがとう。僕の力不足でリーグ優勝ができなくて選手に苦労をかけた。こんなすばらしい仲間と野球ができて、こんな幸せものはいない。巨人さんは強かった。わずかな差で勝った」と喜びを爆発させた。 「自分に後悔はしたくない」と、昨季以上に今季は短期決戦の鬼となった。この日は今季ポストシーズン11戦目で内川をスタメンから外した。交流戦で巨人菅野から本塁打を放っている外野手の福田を一塁で起用。早めの代打起用に、セットアッパー甲斐野を回またぎで、8回の男モイネロを7回から投入するなど攻守で攻めの姿勢を貫いた。 15年から就任5年目。契約最終年の今季はリーグ優勝からの日本一しか考えていなかった。故障予防のために春季キャンプから厳しく走り込ませたが、故障者続出という皮肉な結果となった。工藤監督は福岡市内の自宅にそれぞれの選手の体に関するデータなどを管理。その量が増え過ぎ、引っ越しも考えたが、自宅マンションの別室をさらに借りて資料室とした。「もう1部屋借りてね。データはだいぶ出来てきたところはある」。1軍だけではなく、チーム全選手の特徴、状況を知っていたからこそ、若い選手を抜てきし、故障者の穴を埋めることができた。「高橋礼、大竹、(高橋)純平、甲斐野、椎野、松田遼。6人も新しい力が1軍に定着してくれたのは大きかった」とうれしそうに話す。野手でも周東、栗原、釜元、三森らを起用し、優勝争いを繰り広げてきた。 シーズン後半は故障明けのレギュラー陣を早めに復帰させたが、逆に失速。2年連続V逸となった。「選手のコンディショニングを...」と、自身の睡眠時間を削ってまで選手の状態を気にしていた。今年は就任以来一番というくらい選手に積極的に声をかけていた。就任時に禁止していた茶髪、ガムなどをほぼすべて解禁。気を使うあまりに、ある首脳陣が「監督が選手に負けてしまっている」と嘆く状況にもなっていた。 厳しさを前面に出した短期決戦でチームは「勝利」に向かって再びまとまった。「みんなで力を合わせて、強いチームをつくりたい」。6年目の指揮を執る来季こそリーグ優勝からの4年連続日本一を実現しなければならない。工藤ホークスは短期決戦だけでなく、シーズンを通して最強軍団へと進化していく。【石橋隆雄】

◆巨人が屈辱の4連敗で7年ぶりの日本一を逃した。「SMBC日本シリーズ2019」第4戦は、腰痛から復帰した菅野智之投手(30)が7回途中4失点と粘りの投球を見せ、4番岡本和真内野手(23)が反撃の2ランを放ったが、あと1点が遠かった。4年ぶりに復帰した原辰徳監督(61)は5年ぶりのリーグ優勝を果たしながら、悲願の日本一は来季以降に持ち越しになった。東京ドームを揺らすような大歓声に応えられない。岡本の特大2ラン、丸の適時打と最後まで追い詰めたが、あと1点が遠かった。9回2死一塁、キャプテン坂本勇が空振り三振に倒れ、試合が終わった。7年ぶりの日本一を目指した原巨人の挑戦は、29年ぶりの4連敗で幕を閉じた。 原監督は、ソフトバンクとの4試合で感じた差を包み隠すことはなかった。「勢いももちろんですけど、かなり高い壁はある。我々はまだ積み上げていかないといけない。意義ある2019年度でしたけど、宿題、課題というものは残した状態で来季につなごうというところでしょう」。 レギュラーシーズンと合わせて151試合。5年ぶりのリーグ優勝を使命に課せられる中、勝利と後継者の育成をテーマに掲げて戦った。セ・リーグを制し、大きなミッションを達成した翌日の9月22日、阿部を神宮の監督室に呼んだ。語り掛けたのは、自身の引き際だった。「まだできると自分で思っていた。そのときに身を引いた。でも、それで良かった。まだできると思っているからこそ、今が引き際なんだ。余力を残して辞められて今がある」。 選手として「余力」が、指導者としての活力になった。強制ではない。経験談を交えながら互いの思いを伝え合い、握手を交わした。「素晴らしい選手生活だったと思います。最後の最後まで、戦う姿勢はまったく変わらない点は偉大だと思います」と敬意を表した。選手層の厚み、投手陣の底上げ...来季に向けた課題は多い。「2020年度、ジャイアンツは普遍である」と戦い続ける覚悟を示した。【前田祐輔】

◆ソフトバンク選手会長の柳田悠岐外野手(31)が3年連続日本一の歓喜に酔った。マウンド上の輪に入ると、工藤監督が駆け足で抱きついてきた。「一番に来てくれてうれしいですね。最高のチームメートに恵まれたと思いました」。今季は4月から左膝裏痛で約4カ月半の離脱。涙も流すほど悔しさを味わったシーズンだったが、最後に満開の笑顔になれた。 長く辛かったリハビリ。心の支えになった1つがアニメ「スラムダンク」だった。「筑後への行き帰りで毎日2時間。すぐに見終わるよ」。100話を超える大作もあっという間だった。お気に入りは主人公の桜木花道。くしくも同じ身長188センチでひたむきに成長する元気印に心を奪われた。8月に実戦復帰すると「治るかどうか分からない不安がありました。4カ月間を思い出した」と涙が出た。"野球がしたいです"。ため込んだ思いが名場面に重なった。 西武とのCSファイナル初戦。試合前のベンチ裏に「ハッピーバースデー」の声が響いた。柳田の31歳誕生日。球場の計らいでケーキが用意されたが、口にはしなかった。「だって、太るでしょ」。思うように動けなかったリハビリ中、102キロまで増えた体重は今94キロまで減った。「ラーメン食ったら走る」。意識的にランニング量を増やし、失った時間を取り戻そうと必死に練習に励んだ。 今年は仲間に連れてきてもらった日本一だ。「自分のことよりチームの勝利」と願う男は幸せをかみしめながら、20年の巻き返しに目を向けているだろう。【山本大地】

◆ソフトバンク孫正義オーナーが3年連続日本一に喜びを爆発させた。東京ドームで歓喜の瞬間に立ち会い、グラウンドで胴上げされて、宙を舞った。 「10連勝。奇跡と言っていい。そのまま突き抜けての優勝。選手、監督の働きに心から感謝したい。(胴上げは)夢のようです。3連覇でとどまらず、もっともっと勝ち続けるとありがたいなと思います」。ポストシーズン10連勝で下克上を成し遂げたチームを称賛。「世界一」をテーマに掲げる総帥は貪欲に勝利を追求する。

◆日本シリーズMVPを獲得したソフトバンク・グラシアルの一問一答 -今の気持ちは 素直にうれしいですし、これで自分が来てから2年連続でチャンピオンなることができました。長いシーズンではありましたけど、全員が全力で戦った結果だと思います。 -チームメートにケガが多い中で、コンスタントに引っ張った 選手はもちろんですけど、首脳陣の皆さんであったりとか、裏方の皆さんのおかげでもあると思いますし、そういった部分で今こういった結果を出せたことがとてもうれしいです。 -緊張するシリーズに、集中力を発揮 自分自身のキャリアとしては2年目のシーズンということもありまして、1年目の経験が生きているということもありますし、非常に落ち着いた状態でプレーをすることができているのかなと思います。 -ファンにメッセージを 今日の優勝という結果は、ファンの皆さんのおかげだとおもいますし、そういった意味ではいつも通り、とても感謝の気持ちでいっぱいです。いいときも悪いときも、応援をしてくださって、そういった部分が自分自身の力にもなりましたんで、とても感謝してます。 -また活躍を期待していいですね アリガトウ。

◆ソフトバンク工藤公康監督が3年連続日本一に。一問一答は以下の通り -今の心境は ほんとに最高の気分です。ありがとうございます。 -10度宙に舞った 僕を胴上げしてもらってほんとに申し訳ない気持ちでいっぱいです。僕ももっともっとできることがたくさんあったんではないかと、反省をしながらシーズンを過ごしながら来ました。それをコーチの人たち、スタッフの人たち、そして何よりも勇気づけてくれたのが、選手のみんなが勝ってくれることで、少しずつ勇気をもらってここまで来ることができました。ほんとに、みんなご苦労様でした。ありがとう。 -レギュラーシーズン優勝を逃した悔しさもあったと 昨年もリーグ優勝を逃して、日本一なることはできたんですけど、スローガンに奪Shという言葉を入れて、なんとかペナントを取りたいと、強い思いで頑張ってきました。でも僕の力不足があって、優勝できなくて、ほんとに選手には苦労かけたと思います。そういう意味で今年もう一度、日本一になって、みんなと一緒に最後は笑っていたいという強い気持ちもありまして、ここまで頑張ってきましたけど、ほんとに選手たちが、クライマックスのファーストステージから、最初に負けて、その後はもう10連勝と、ほんとにこんな素晴らしい仲間とスタッフとコーチと、野球ができて、こんなに幸せもんはいないです。ほんとにありがとうございます。 -3年連続日本一です ありがとうございます。いやもう、きょう正直、ジャイアンツのファンの方も、声援が素晴らしくて、ベンチにいても震えるぐらいすごい声援の中で、こんなにもプレッシャーがかかるのかと思うぐらい中でやらさしていただいて...。これが、ザ・日本シリーズかなと思って戦った中で、ほんと選手たちが、よく点を取ってくれましたし、よく投げてくれました。それを支えていただいたのが、きょう球場に来ていただいているファンの方が、ジャイアンツの声援に負けないくらいの、大きな声援を選手にくれました。本当、今日の勝利はファンの皆さんに心から捧げたいと思います。本当にありがとうございます。 -福岡に移転して30年。ジャイアンツを倒しました。日本シリーズでセ6球団すべてを倒しての日本一です。 ほんとに今日、こうやって勝てたのも、ほんとにわずかの差だというふうに思いますし、ジャイアンツさん強かったです。僕らが勝てたのはほんの少しの違いかなと思うくらい、だというふうに思ってます。まだまだ強くなるチームだと思いますし、もっともっと強くなれるように、一生懸命頑張ってやっていきたいと思います。 -進化を期待していいですね みんなで力を合わせて一生懸命、強いチームを作れるように頑張っていきます。今日はありがとうございました。

◆巨人スコット・マシソン投手(35)が、今季限りでの退団と母国カナダ代表で東京五輪を目指してのプレーを最後に、現役を引退することを表明した。 試合後に報道陣に対応し「今季限りでジャイアンツを退団します。カナダ代表でのプレーを持って現役を終えたいと思います」と話した。 理由には「自分が描いたピッチングが以前と比べてできなくなった。昨年ひざの手術を受けてから100%のプレーができなかった」と話し「家族との時間を優先したい」とも言った。 来日8年目の今季は28試合に登板し、2勝2敗1セーブ8ホールド、防御率4・37だった。

◆巨人阿部慎之助捕手(40)が強打者のままユニホームを脱いだ。 1点差に迫った6回2死一塁、若林の代打で登場。地鳴りの大歓声に迎えられ、ソフトバンク嘉弥真から死球を受けて出塁した。今シリーズは4戦すべてに出場し13打数3安打2打点。第1戦では令和の日本シリーズ1号となる先制ソロを放った。現役最終打席となった8回1死ではモイネロの前に二ゴロに倒れるも、存在感は別格だった。試合後は両軍から10度ずつ胴上げされ、現役生活に別れを告げた。

◆これ以上ない喜びと、少しばかりの寂しさ...。そんな思いが同居していたかもしれない。ソフトバンク王球団会長は優しい眼差しで日本一を見届けた。 孫オーナーと何度も握手を交わし、柔和な表情で歓喜のナインを見つめ続けた。古巣であり「宿敵」とした巨人をシリーズで倒し日本一に上り詰めた。誰よりも「巨人愛」に満ちていただけに万感の思いがあった。 もう四半世紀も前になる。94年1月。「世界の王」にダイエーから声がかかった。当時監督であり、球団専務でもあった根本陸夫氏は言った。「長男は家を継げるが、次男は家を継げない。巨人の長男は長嶋。ワンちゃんは次男なんだ」。遠い九州の地での監督就任を頼まれた。それから毎月定例のように球団幹部と会食した。だが、受諾の返事は保留した。気持ちに変化があったのは6月になってから。約5カ月間、悩んだ。梅雨の雨が降るころ「次は2人だけではなくてもいいですよ」と、球団幹部に伝えた。巨人監督を辞めて6年の歳月が流れた。現場への思いが募っていたのは確かだった。東京から最も遠い球団。ホークスのユニホームに袖を通す決意を固めた。初めて中内■(いさお)オーナーらと東京・銀座の料亭で膝を交えた。文字通り「ホークス王監督」が決まった瞬間だった。 「東の長嶋」に「西の王」。日本シリーズでの「ON対決」を夢見た。そして就任から6年目の秋、夢がかなった。列島は沸いた。誰よりも王さんが興奮した。必勝のタクトは2勝4敗。涙をのんだ。満面の笑みで宙に舞うミスターの姿を直立不動で見守った。グラウンドでは毅然(きぜん)とした姿を保ったが、戻った宿舎では涙があふれ出た。 時は流れた。あれから19年。球団会長としてチームを育てた。誰よりも熱望した巨人とのシリーズ対決。「やっぱり、巨人を倒して日本一にならないと。みんなそれを目指しているんだから」。圧倒的な強さを見せつけ「古巣」を倒した。 ※■は工へんに右のつくりが刀

◆腰痛から復帰した巨人菅野智之投手が1発に沈んだ。 4回1死一、三塁。外角134キロスライダーをグラシアルにバックスクリーン左へ先制3ランを浴びた。三塁ファウルゾーン上方の1点から4秒、視点を動かせなかった。7回には味方の失策も絡み追加点を献上。「何とかしたいと思って投げた。期待に応えたかった」。7回途中108球6安打4失点(自責3)で降板した。 決して下は向かなかった。9月のある日。ジャイアンツ球場の駐車場で年下の記者に説いた。「マイナスなことばかり言ってると自分に返ってくるんだよ」。この日も交代を告げられ、ベンチへ戻るとすぐに最前列へ。1死満塁を併殺でしのいだ2番手中川を真っ先に出迎えた。 CS回避、宮崎フェニックスリーグを経て約1カ月ぶりの1軍マウンド。奇跡は起こせなかった。「今までがうまくいき過ぎたとも思う。どうにもできない悔しさもあった。厳しく見つめ直して(来季の)キャンプにいい状態で臨みたい」とリベンジを誓った。

◆スタメンを外れたソフトバンク内川聖一内野手(37)は7回1死満塁で代打として登場したが、二ゴロ併殺に倒れた。 ベンチでは大声を出し、チームを鼓舞。4回にはグラシアルの3ランに両手を挙げて喜ぶなどムードを盛り上げた。「よかった。本当にいい思いをさせてもらった」と、日本一をナインと喜んだ。

◆巨人阿部慎之助捕手(40)がユニホームを脱いだ。今季限りでの現役引退を表明して臨んだ日本シリーズで4連敗を喫し、戦いが終わった。1点差に迫った直後の6回2死一塁に代打で登場すると、別格の存在感を醸し出し、ソフトバンク嘉弥真から死球を受けた。8回1死の第2打席はソフトバンク5番手モイネロの前に129キロスライダーを詰まらせて二ゴロに倒れ、現役最後の打席となった。 試合後は囲み取材に応じた。 -日本シリーズで敗退。率直に今の思いは みんなの前でもあいさつさせてもらったんですけど、短期決戦を勝つ難しさを最後の最後まで感じられたことが財産にして終われた。今後の野球人生にすごく役立つんじゃないかなと思っています -ソフトバンクとは、どういった戦いだった 力の差もすごく感じた。その難しさも。これが野球なんだなと感じた。自分の中で精いっぱいのことはできたかな。悔いは残りますけど、来年以降になんとか日本一奪回してもらえるように応援したい -両軍から胴上げをされた。引退の実感は この重い体を10回も上げてもらってうれしいなと思いますし、たくさん切磋琢磨(せっさたくま)してきた選手たちも最後にいたので、すごく幸せものだなと。感謝しています -今後は まずどうしたら勝てるかをまず考えなくちゃいけない。選手1人1人が -今回の日本シリーズは4連敗に終わった すべてにおいて劣っていた。1人1人が自覚して反省して来年にどう生かすか、考える時間をしっかり作らなければいけない。来年は僕はやりませんけど、なんで勝てなかったのかなと、ちょっと考えてみようかなと思います -プロ入りから現役生活19年間をまっとうした こんな長くできると思っていなかった。いろんなことがあって忘れちゃっていることもたくさんある。こうやって最後に最高の仲間、指導者、裏方さんとできて、恵まれた19年間だったなと思います」 -現役最終打席は二ゴロだった あれが最後の打席になると自分で思っていなかった。仲間が同点に追いついて延長でもう1回、回ってくると予想していた。あれが僕の今の力だと思いました -試合後に原監督とはどんな話しをしたか お疲れさんと。いろいろとありがとうございました、と -巨人OBでソフトバンク王球団会長にもあいさつをした これからが、もっと野球人生長くなると思うので、いい指導者になれるように頑張ってくれと王さんにも言っていただいて、工藤さんにもそう言っていただきました -明日からはどう過ごすのか 家族サービスします。子どもたちにも、ろくにお父さんぽいことできていなかったので、できる限り家族に時間を使おうと思います。イチローさんみたいに明日からバッティング練習はしないよ。さすがにもういいかなと思う

◆ソフトバンクは試合後、東京都内のホテルで祝勝会を行った。 3年連続日本一に、王球団会長が「ジャイアンツを破ったということで、少し複雑な心境ですが、みなさんよく戦った」と振り返った。工藤監督も「みんな死力を尽くして10連勝。シーズンにはなかったが、こんな大舞台で出来るのはみんなのおかげです」とあいさつした。 柳田選手会長が「1年間、お疲れさまでした。終わりよければすべてよし。今日という日は今日しかない! カンパイ!」と絶叫して祝勝会がスタート。西武を破ってCSを突破した時は、台風19号の被害などを考慮し、ビールかけなどの祝勝会を行わなかったが、チーム全員で3年連続日本一の喜びに浸った。

◆ソフトバンク内川聖一内野手(37)が日刊スポーツに手記を寄せた。工藤監督就任時の15年から「主将」を任されていたが、今季はその肩書が外れた中で3年ぶりにフルシーズン、レギュラーで出続けた。苦しんだ今季の思いを明かした。また新しい日本一を経験させてもらった。今季は「主将」から外れてのシーズンだった。正直、今も完全には受け止めきれていない。やっぱり「C」マークがある気持ちとない気持ちは全然違う。自分の中の気持ちの引き締まり方が違う。ほかに誰がつけるわけではなく、なくなっていることに、寂しさはあった。自分の中でそれをつけているんだという責任感みたいなものを感じながらやっていたので。 過去2年間ケガして穴をあけながらやってきた。今年は絶対に穴をあけないぞと思って、シーズン通して出場したが、打率2割5分6厘。今まで当たり前に打ってきた立場からすると、数字に対する物足りなさはすごく感じている。 CSファイナル第1戦では代打に長谷川勇を送られた。クソッと思った。選手として、そう思わないとウソだと思うし、そう思わないのであればもう辞めた方がいいと思う。でも、ハセだったから平常心を保てた。ハセも右足首を負傷した後はずっときつい思いをしている。そういうのを見せないけど、やはり本人の中ではすごい葛藤もあったと思うし、今年のキャンプでとことんバットを振っている姿を見ていたから、託せた。打ってくれたからまたこうやって日本一というところを喜び合える。 シーズン後半、精神的にいっぱいいっぱいになっていた時だった。マイナス思考の人間なので、ああ、もう、ちょっとしんどいな、っていう時に、長女が絵を描いてくれた。僕と妻とこども3人の家族の絵を描いて寝室に置いててくれた。あの時はうれしかった。ああ、子どもがこんな気持ちになるまで、俺も野球を頑張れているんだなと。長女と長男は「野球見たい」って言ってくれるから、うれしいなと思うし、妻はしっかりその間、今年2月に生まれた3人目(次男)の子育てを頑張ってくれている。その絵は今もずっと寝室に飾っている。 数字が出ていないから試合に出ていることが支えになったところはある。今まで守備で貢献というのはほぼなかった。基本的には、ただ守っているだけという感じだった。そこがチームの輪のなかで、自分が守備で役に立っている(笑い)というのは、ちょっと意外だったが、シーズンを失策0で終わってやろうという気持ちは当然あった。 CSが始まる前のチームの雰囲気では、今年は負けるなと感じたが、CSファースト初戦の楽天戦に負けて後がなくなった状態から、チームが変わった。やっぱりこのチームは経験がある。 また来シーズンが始まる。根本的に打撃で生きてきた人間なんで。打撃でもう1回という思いは正直ある。自分の立ち位置を自分で確保しないといけない。それをもう1回、自分で取りにいかないといけないんだなと思うと苦しいし、きついことはじまるなと思うけど、クソッと思っているうちは、まだやれるのかなと思う。(ソフトバンク内野手)

◆球団の福岡移転30周年イヤーに、19年ぶりの巨人との日本シリーズを制したソフトバンクの王貞治球団会長(79)が、さらなる「常勝球団」つくりに意欲を見せた。リーグVこそ逃したものの、開幕から故障禍に見舞われたチームを3年連続日本一に導いた工藤監督の手腕を高評価するとともに、若手育成のさらなる強化を図る考えを明かした。ファームの指導強化を求め、ホークスの黄金期形成へ熱い思いを語った。【取材・構成==佐竹英治】-巨人を倒して3年連続の日本一を達成 王会長 とにかく故障者がこんなに出たシーズンは過去を見てもない。本当に工藤監督がよくやりくりした。ファームの人たちが(1軍に)上がってきたけど、物おじしないで、自分の持ち味を十分に出した。工藤監督が旬の選手たちの力を引き出した。過去のプロ野球の歴史を見ても、これだけの故障者を出して、日本一になったのはないのでは。ファームとの連係がしっかりできていた。工藤監督が若い選手の状況をしっかり把握したというのが大きい。来年に向け層の厚みができた。監督としては若い選手たちの力を自分の目で確認できた。来年以降にものすごく大きなことだった。「チーム一丸」の戦いだった。 -リーグVは逃したものの、ポストシーズンは圧倒的な強さだった 王会長 「勝つことが特別なことじゃない」ということになった。僕がホークスに入ってから25年。秋山前監督、工藤監督が優勝争いは当たり前、その中で「勝つ」という戦いを続けてくれた。勝つのは当たり前だ、という「戦いの目標」を選手たちの心の中に植え付けた。戦うチームになってくれた。こんなにうれしいことはない。 -さらに強いチームを目指す 王会長 世代交代というのはどうしてもある。どのチームにもね。その時に若い選手の戦力を、実力を知っておくというのは大きい。周東のような足の速い選手とか。故障者が出たのは「ケガの功名」。そういうことが確認できたというのが大きかった。プロ野球の歴史が80年以上たって「個人対個人」の戦いから「チーム対チーム」の戦いに完全にシフトした。3~5年後を考えた上で、そこに当てはめられそうな選手を補強したい。投手はどうしても故障につながるケースがあるから、頭数は絶対に必要。野手は投手ほど数を必要としないけど、その分、スペシャリストが必要だ。 -育成に関しては 王会長 ファーム施設を選手がどう活用するか。設備がそろっているから選手が上達するというわけではない。教える側の情熱。教える側がもっとグイグイ引っ張っていくというところからスタートしたい。選手を目覚めさせるのはコーチですよ。コーチは体を張らないと使命は果たせない。これには限度、限界がない。選手たちに煙たがられていい。嫌われていい。後で「あの人がいたから」と言ってくれたらそれでいいじゃない。今は、選手の給料も高くなって、コーチに遠慮がある。もう少し徹底できるような体制をつくると同時に、コーチにそういう意識を持って選手に接するようにしていく、というのはチームの方針としたい。 -選手育成は厳しく? 王会長 厳しいというよりも「中身が濃く」ということ。厳しいとかしんどいととらえるんじゃなく、もっと高いところに上るためには「こういうことが必要なんだ」と。「野球にハングリーである」ということが一番大事。「優勝が当たり前」と思えるようになったら強い。パ・リーグの王者になり、日本球界の王者になり...。「めざせ世界一!」...。孫オーナーの不変の目標があるからね。遠い道のりになると思うけど、そこを目指してフロントを含めチーム全体が向かっていくことが大事だ。

◆現役最後の試合を終えた巨人阿部慎之助捕手(40)が日刊スポーツに手記を寄せた。プロ入りした01年から19年間、球界の王道を歩んできた。通算2000安打、400本塁打を達成。球団史上最高の「強打の捕手」として君臨した。厳しさ、優しさ、絶対的なリーダーシップで伝統球団をけん引し続けた。原監督の通算1000勝のすべてに唯一、選手として立ち会った。21世紀の始まりと同時に一時代を築き上げた「背番号10」が感謝の思いを記した。もう、泣いていいですよね。40歳にもなると涙もろくなる。引退を決めた翌日。最後まで泣かないと決めた。勝負の半ばで涙はいらない。最後の最後まで真剣勝負ができて最高でした。ファンの皆さんにも本当に感謝しています。現役生活、最後の手記にありったけの「ありがとう」を記したい。 球団を挙げて盛り上げてくれた本拠地最終戦の「ありがとう慎之助」の試合、クライマックスシリーズ、今回の日本シリーズを戦う中で、みんなの気持ちがすごく伝わってきた。「1試合でも多く」「最後は勝って送り出したい」日本一には届かなかったけど、全力を出し切れたし、みんなの思いがうれしかった。 プロ1年目だった01年の開幕戦でスタメンマスクをかぶらせてもらった。3日前からの39度の高熱が続いた。実家の近くの診療所で夜通し点滴してもらった。意識がもうろうとしていた。緊張とか、そういうものを超越していた。東京ドームのグラウンドに立ったときに身震いがした。「勝つために」と言えば格好いい。でも「負けないように」のほうが強かった。常勝を義務づけられたチームというのは、捕手として負けちゃいけないと理解した。自信なんか、これっぽっちもなかった。若いときは目の前の現実が怖かった。 恐怖をぬぐい去るためには人一倍、練習をするしかなかった。試合前にたくさん言い訳を考えた。試合後の言い訳は許されない。だから、言い訳を試合が始まるまでに1つ、1つ、つぶしていった。守備も攻撃も、頭と体で、負けないための準備をした。ずっと野球のことばっかりを考えてきた。プロとして当たり前だと思ってきた。 個人の記録は「現役を引退してから振り返ればいい」と言ってきた。少しだけ今、振り返ってみると、2000安打も400号もチームに打たせてもらったんだと。打った安打、本塁打より、捕手として打たれたほうがはるかに多い。監督、コーチ、スタッフ、選手が「みんなで勝ちたい」という思いが1本の安打、1本の本塁打につながった。打ったんじゃなくて、打たせてもらった。ありがとう。 今季のリーグ優勝が決まった翌日の9月22日。試合前の練習中に原監督に神宮球場のクラブハウスに呼ばれた。「慎之助に対して考えていることを伝えたい」と、監督の希望、未来像を聞いたときに、すごくうれしかった。こんなに考えてくれているんだと。自分の考えとしては、来年できっぱり辞めようと考えていた。でも、話を聞いて、その瞬間にすっと納得できた。自分が気付いていないことに気付かせてもらった。だから自分の意思として「今年で辞めます」と伝えさせてもらった。 ルーキー時代からずっと「背番号10」と寄り添ってきた。プロ入り時に球団から提示されたのは「10」「22」「23」だった。それまでは縁がなかった番号だけど、伝統球団の中で自分が育ててきたという自負もある。洋服、アクセサリー、腕時計、今となれば身の回りに「10」があふれている。愛着もある。走る本数も1種目10本。最近はおっさんになったから、2、3種目を足して10本かな。今、球界は「10」が捕手の番号になりつつある。少年野球とか高校野球とかでも、そうなってくれたらと、少しだけ楽しみにしている。 19年間の現役生活は長かった。若いときのことなんか覚えていないことも多い。それぐらいまでプレーできたということがうれしい。「終わった」ではなく「次の挑戦が始まる」という気持ちが強い。「まだ現役で出来ると」いう気持ちを今後の活力にしないといけない。オムツを履いていたとき、父親の草野球に連れて行ってもらって野球に出会った。それから、ずっと夢中でいられた。一生の仲間もたくさんできた。 自分も父親になり、野球の練習で泥だけになった長男・成真(小2)の靴を洗っていて身に染みて実感した。両親のおかげで野球を続けられたんだと。最後に一番近くで応援してくれた家族、両親には感謝してもしきれない。 この先も野球人としてまっとうしたい。ありったけの「ありがとう」の思いを込めて。(巨人捕手)

◆ソフトバンクのジュリスベル・グラシアル内野手がシリーズ3号の先制3ラン。ソフトバンクでシリーズ3本塁打以上は、ダイエー時代の03年城島(4本)バルデス以来5人、6度目。 グラシアルは<1>戦で逆転、<3>戦では同点の1発。シリーズで肩書付きの殊勲弾を3本は、68年王、柴田(巨人)80年ライトル(広島)03年金本(阪神)15年山田(ヤクルト)に次いで6人目で、パ・リーグの選手では初めて。また4試合のシリーズで3発は、05年李承■(ロッテ)に並ぶ最多タイ。 ▼グラシアルは今年のCSでも3本塁打で、ポストシーズン(PS)6本目。同一年のPSで6本塁打以上は、7本打った04年和田(西武)に次いで2人目。 ※■は火ヘンに華

◆ソフトバンクのルーキー甲斐野央投手が7回の打席で内野安打。ソフトバンクの新人がシリーズでヒットを打ったのは、南海時代の52年森下に次いで67年ぶり2人目。 また新人投手の安打は、82年<6>戦工藤(西武=現ソフトバンク監督)以来37年ぶり7人目で、球団では初めて。

◆巨人が屈辱の4連敗で7年ぶりの日本一を逃した。「SMBC日本シリーズ2019」第4戦は、腰痛から復帰した菅野智之投手(30)が7回途中4失点と粘りの投球を見せ、4番岡本和真内野手(23)が反撃の2ランを放ったが、あと1点が遠かった。4年ぶりに復帰した原辰徳監督(61)は5年ぶりのリーグ優勝を果たしながら、悲願の日本一は来季以降に持ち越しになった。東京ドームを揺らすような大歓声に応えられない。岡本の特大2ラン、丸の適時打と最後まで追い詰めたが、あと1点が遠かった。9回2死一塁、キャプテン坂本勇が空振り三振に倒れ、試合が終わった。7年ぶりの日本一を目指した原巨人の挑戦は、29年ぶりの4連敗で幕を閉じた。 原監督は、ソフトバンクとの4試合で感じた差を包み隠すことはなかった。「勢いはもちろんですけど、かなり高い壁はある。我々はまだ積み上げていかないといけない。意義ある2019年度でしたが、宿題、課題というものは残した状態で来季につなげるというところでしょう」。 レギュラーシーズンと合わせて151試合。5年ぶりのリーグ優勝を使命に課せられた中、勝利と後継者の育成をテーマに掲げて戦った。セ・リーグを制し、大きなミッションを達成した翌日の9月22日、阿部慎之助を神宮の監督室に呼んだ。語り掛けたのは、自身の引き際だった。「まだできると自分で思っていた。そのときに身を引いた。でも、それで良かった。まだできると思っているからこそ、今が引き際なんだ。余力を残して辞められて今がある」。 選手としての「余力」が、指導者としての活力になった。強制ではない。経験談を交えながら互いの思いを伝え合い、握手を交わした。現役最後の試合を見届けると「素晴らしい選手生活だったと思います。最後の最後まで、戦う姿勢はまったく変わらない。偉大だと思います」と敬意を表した。阿部が去り、マシソンが去り、2度と同じチームで戦えないのがプロ野球。選手層の厚み、投手陣の底上げ...、来季に向けた課題は多い。「2020年度、ジャイアンツは普遍である」と戦い続ける覚悟を示した。【前田祐輔】

◆ソフトバンクが92年西武以来、球団初となる3年連続日本一を達成した。「SMBC日本シリーズ2019」で巨人を4連勝で下し、ポストシーズン10連勝で頂点に立った。工藤公康監督(56)はポストシーズンで初めてベテラン内川をスタメンから外すなど日本シリーズでも「鬼采配」を見せた。2年連続V逸の悔しさを胸に、下克上を再現した。大きく両手を広げた工藤監督が連勝の数と同じ10度、東京ドームに舞った。負けたら終わりのCSファースト第2戦から10連勝で日本一まで突き抜けた。1発が出れば逆転サヨナラの場面、守護神の森が坂本勇を空振り三振に仕留めた。マウンドにできた歓喜の輪の中で、選手会長の柳田を見つけると真っ先に抱き合った。王球団会長、孫オーナーともがっちり握手。史上初の2年連続下克上で3年連続日本一をつかんだ。「本当に最高の気分です。ジャイアンツさん強かったですし、僕らが勝てたのはわずかな差だと思う」。一瞬の気も抜けない中での日本シリーズ4連勝だった。 「自分に後悔はしたくない」と、昨季以上に今季は短期決戦の鬼となった。第4戦は今季ポストシーズン11戦目で内川をスタメンから外した。交流戦で巨人菅野から本塁打を打った外野手の福田を一塁でスタメンさせた。早めの代打。セットアッパー甲斐野を回またぎ起用。8回の男モイネロを7回から投入するなど攻守で攻めの姿勢を貫いた。 15年から就任5年目。契約最終年の今季はリーグ優勝からの日本一しか考えていなかった。故障予防のために春季キャンプから厳しく走り込ませたが、故障者続出という皮肉な結果となった。福岡市内の自宅では、それぞれの選手の体に関するデータなどを管理。その量が増え過ぎ、引っ越しも考えたが、自宅マンションの別室をさらに借りて資料室とした。「もう1部屋借りてね。データはだいぶ出来てきたところはある」。1軍だけではなく、チーム全選手の特徴、状況を知っていたからこそ、若い選手を抜てきし、故障者の穴を埋めることができた。「高橋礼、大竹、(高橋)純平、甲斐野、椎野、松田遼。6人も新しい力が1軍に定着してくれたのは大きかった」とうれしそうに話す。野手でも周東、栗原、釜元、三森らを起用し、優勝争いを繰り広げた。 シーズン後半は故障明けのレギュラー陣を早めに復帰させたが、逆に失速。2年連続V逸となった。「選手のコンディショニングを...」と、睡眠時間を削って気にしていた。今年は就任以来、一番というくらい選手に声をかけた。気を使うあまりに、ある首脳陣が「監督が選手に負けてしまっている」と嘆く状況でもあった。選手に思いが届かない中でのV逸。翌日の仙台空港では憔悴(しょうすい)しきった表情だった。 「今年は何とかペナントを取りたかったが、僕の力不足もあって、優勝できなくて、本当に選手には苦労をかけた」。そう思うからこそ厳しさを前面に出した短期決戦でチームは「勝利」に向かって再びまとまった。「みんなで力を合わせて、強いチームをつくりたい」。6年目の指揮を執る来季こそリーグ優勝からの4年連続日本一を実現しなければならない。圧倒的な連勝の中から、来季へのヒントは見えた。工藤ホークスは短期決戦だけでなく、シーズンを通して最強軍団へと進化していく。【石橋隆雄】

◆ソフトバンクが4連勝で球団史上初、90~92年の西武以来27年ぶりとなる3年連続日本一を達成した。 ▼公式戦2位のソフトバンクが4連勝で3年連続10度目の日本一。シリーズ3連覇以上は90~92年西武以来7度目で、ソフトバンクは初めて。リーグ優勝チーム以外の日本一は07年中日(2位)10年ロッテ(3位)18年ソフトバンク(2位)に次いで4度目となり、2年連続は初めてだ。無傷の4連勝は05年ロッテ以来8度目(4戦4勝は6度目)で、ソフトバンクは南海時代の59年○○○○以来2度目。西武が西鉄時代の57年○○○△○、90年○○○○と無傷の4連勝を2度やっているが、引き分けなしの4戦4勝を2度はソフトバンクが初。昨年の<3>戦からのシリーズ8連勝も88年<3>戦~91年<1>戦西武、00年<3>戦~02年<4>戦巨人、74年<4>戦~10年<1>戦ロッテに並ぶタイ記録となった。 ▼00年の敗退後は03、11、14、15、17~19年と続けて日本一。21世紀は敗退がなく、出場7連続Vは61、63、65~73年巨人の11連続に次いで2度目だ。これで13年楽天から7年続けてパ球団が日本一となり、同一リーグの7連覇はV9巨人の65~73年セ・リーグ以来2度目。00年終了時の優勝回数はセ球団30度、パ球団21度だったが、21世紀はソフトバンクを中心にパ球団が圧倒。優勝回数は両リーグ35度で並び、この4連勝で対戦成績はパ球団が205勝202敗8分けとセ球団を逆転した。

◆プロ野球日本シリーズでソフトバンクが巨人を破って日本一となった第4戦(東京ドーム)で、23日午後6時から放送された日本テレビ系生中継の関東地区の平均視聴率が11・8%だったことが24日、ビデオリサーチの調べで分かった。 今シリーズで初めて地上波で平均2ケタを達成。瞬間最高は21・5%。午後9時39分で、試合終了直前に最後の打者となった巨人坂本の場面だった。 19日の第1戦はフジテレビ系で放送され8・4%、20日の第2戦はTBS系で7・3%。第3戦は日本テレビ系で9・7%だった。 第1戦と第2戦は裏でラグビーワールドカップが生中継され、第1戦の裏で日本テレビ系で放送された準々決勝ニュージーランド×アイルランドの平均視聴率は16・5%。第2戦の裏でNHKで放送された準々決勝の日本×南アフリカは41・6%だった。第3、4戦は裏でラグビーワールドカップの生中継はなかった。

◆ソフトバンクは強かった。巨人に無傷の4連勝で「令和元年」の日本シリーズを制した。92年の西武以来のシリーズ3連覇に加え、史上初となる2年連続「下克上」の制覇。ポストシーズンはクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージの楽天初戦に敗れてからファイナルの西武戦、そして日本シリーズと破竹の10連勝で駆け抜けた。「圧勝」の秋だった。 「自分が後悔したくない」。工藤監督はそう言って鬼になった。ベテラン松田宣をスタメンから外し、内川には迷わず代打を送った。勝負どころでの選手起用は容赦なかった。2年連続してリーグV逸の悔しさが根底にあった。ただ「勝利」のためにタクトを振った。 最後の最後で頂点に立ち、ホークスナインの手で宙を舞った。15年の監督就任から5年で4度目の日本一の舞いである。最大の目標であるリーグV奪回はできなかった。歓喜の胴上げを見つめながらシーズンでも「非情」に徹していれば、V奪回は可能だったのではないかと、ふと思った。 監督業は「孤独」との闘いという。選手の顔色でタクトがにぶってはいけない。ホークスのコーチングアドバイザーを務める金星根(キム・ソングン)氏は言う。「失礼ですが、CSから工藤監督は監督らしい姿になりましたね」。韓国プロ野球で1000勝以上を挙げた「名将」は、この2年間、黙してチームを観察した。「(監督は選手に)面と向かって言えるか、どうかです。遠慮する必要はない。前に立つ人(リーダー)はすべての非難を1人で受け止めなければならない」。就任時に禁止していた茶髪や試合中のガムはいつの間にか緩和された。「和」を求めるがために妥協があったのかもしれない。 今後も厳しさという鎧(よろい)をまとい続けることができるだろうか。それにしてもホークスナインのポテンシャルの高さには、今さらながら恐れ入った。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

◆3年連続日本一を達成したソフトバンク工藤公康監督(56)が一夜明けた24日、早くも来季Vを誓った。 日本シリーズで巨人を4連倒した直後、日付が変わった24日の深夜午前1時過ぎに球団が2年契約の更新を発表。福岡に凱旋(がいせん)した指揮官は来季目標について「リーグ優勝からの4年連続日本一」と力を込め、下克上ではない完全Vへ決意を新たにした。3年連続日本一を達成した一夜明け、ソフトバンクナインが本拠地福岡に戻った。東京から空路、福岡空港に降り立つと、通路を埋め尽くす大勢のファンが待ち構えた。両サイドに約100メートルの大きな花道ができ、柳田ら主力選手が姿を現すと大歓声が上がった。 工藤監督は気持ちを切り替え、早くも決意を新たにした。来季目標は「リーグ優勝からの4年連続日本一」ときっぱり。今季は2年連続リーグ2位から日本一に上り詰めたが、来季は下克上ではない4年連続日本一を目指す意気込みだ。 美酒の余韻真っただ中の前夜、日付が24日に変わった深夜1時過ぎに球団から2年契約の更新が発表された。工藤監督は「20年からの2年間、チームの指揮を任せて頂けることに身の引き締まる思い」とキリリ。「将来に渡って強いホークスであるための、育成、強化に努めたい」と若手投手の底上げの必要を誓った。 11月1日から宮崎で秋季キャンプを張る。指揮官は「全員のレベルアップ。ひとりひとりに足りないもの、必要な部分を鍛えていく。技術も大事。体力も大事」と厳しい秋を予告。「今年1軍で少し投げて感じをつかんだ人間にいろいろ教えていけたら。能力はあるので強くしていきたい」。今季1軍を経験したルーキーの杉山、泉らが来季戦力になれるように鍛え、身内バトルを激化して底上げする方針だ。野手では今季不振だった上林の再生、三森、栗原ら期待の若手を鍛える。育てて勝つ常勝軍団へ。工藤監督の来季は始まっている。【石橋隆雄】

◆SMBC日本シリーズ第3戦(巨人2-6ソフトバンク、ソフトバンク3勝、22日、東京D)SMBC日本シリーズ2019は22日、パ・リーグ2位のソフトバンクが6-2で巨人(セ・リーグ優勝)を下して3連勝で、3年連続10度目の日本一に王手をかけた。工藤公康監督(56)の起用はズバリとはまり、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージから9連勝を飾った。23日の第4戦で球団史上初の3連覇を目指す。  元広島投手の北別府学氏(62)は23日、ブログで「ソフトバンクの選手層の厚さの凄いこと 一朝一夕に出来たものでは有りませんね」と評価。「王会長の下、工藤監督が長年に渡り作りあげてきたチームだと、この日本シリーズの強さを見てつくづく感じます」と絶賛した。  第4戦については「菅野対和田 投手戦になると予想します」と前置きした上で、「菅野投手の慎重かつ繊細で巧妙な投球を見ることが出来なかった今シーズン 今日ソフトバンク相手に昨年までのような投球を見ることが出来れば、この第4戦非常に面白い試合になると思います」と熱戦を期待した。

◆SMBC日本シリーズ第3戦(巨人2-6ソフトバンク、ソフトバンク3勝、22日、東京D)セ・リーグ優勝の巨人はソフトバンクに2-6で逆転負けを喫し、第1戦から3連敗。7年ぶりの日本一へ、崖っぷちに追い込まれた。23日の第4戦は腰痛で離脱していたエース・菅野智之投手(30)が約1カ月ぶりに先発。近鉄に3連敗から4連勝で日本一に輝いた1989年の再現を目指す。  元巨人監督の堀内恒夫氏(71)は23日、ブログで「ソフトバンクはよく研究してきてる その一言に尽きるよ」と脱帽。「これまで投げた千賀くん 高橋くん バンデンハーク よく研究したものを自分を活かしながら攻めている。そしてちゃんと抑えている間に点を取って逃げ切る リリーフ陣の層が厚いから試合を大きく壊すこともない」と指摘した。  後がない巨人には「もうね、3つ負けたんだから 開き直ってやるしかないよ。データだなんだって言ってる場合じゃない」とげきを飛ばし、「相手がどうこうよりもそれよりもまず自分の力 自分の持ち味をしっかり出すこと!」と奮起を促した。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人-ソフトバンク、23日、東京D)車いすテニス女子で東京パラリンピック代表に決まっている上地結衣(三井住友銀行)が始球式を務めた。マウンドの手前から投げた球はワンバウンドになり「ストライクを狙ったけど、距離が足りなかった。少し悔しい」と照れ笑いした。  両チームには東京五輪の野球日本代表候補もいるだけに「国を背負って戦うのは同じ。同じ気持ちで戦えたら」と来年の大舞台を見据えた。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人-ソフトバンク、23日、東京D)ソフトバンクのグラシアルが四回、2試合連続本塁打となる先制3ランを左中間へ放った。1死一、三塁の好機。1ボール2ストライクから、菅野が投じた外角への際どいスライダーを2球見極め、さらに続けた同じ球種がわずかに甘く入ったのを逃さなかった。  キューバ代表として出場した2017年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、同じように東京ドームで菅野から2ランを放っており「最高の結果になってくれた」と胸を張った。

◆巨人・岡本和真内野手(23)が23日、東京ドームで行われた「SMBC日本シリーズ2019」のソフトバンク第4戦に「4番・一塁」で先発出場。3点を追う六回2死一塁から、右翼席へ今シリーズ1号2ランをたたき込んだ。  目の覚めるような弾丸ライナーがスタンドに入ると、本拠地に詰めかけたG党からは割れんばかりの大歓声が起きた。この回から代わったばかりの右腕・スアレスが、1ストライクから投じた2球目だ。やや真ん中寄りに来た157キロの直球を捉えると、打球は右翼席めがけて一直線。若き主砲は、表情を変えないままダイヤモンドを一周した。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人-ソフトバンク、23日、東京D)ソフトバンクの和田は5回1安打無失点と好投した。「行けるところまで全力でと思っていた」と切れのある直球を内外角に投げ分け、二回は3者連続三振を奪う。0-0の三回2死一、二塁では丸を外角の143キロで見逃し三振に仕留め、左拳を握って雄たけびを上げた。  6月に東京ドームの巨人戦で2シーズンぶりの白星を挙げて交流戦優勝に導いており、今回も先発の役割を果たした。昨年は左肩痛で1軍登板がなかった38歳のベテラン。「大事な試合で自分の投球ができた」と満足そうだった。

◆巨人・丸佳浩外野手(30)が23日、東京ドームで行われた「SMBC日本シリーズ2019」のソフトバンク第4戦に「3番・中堅」で先発出場。2点を追う七回2死一、二塁から左翼フェンス直撃の適時二塁打を放った。  やっと出た。打席の前まで、今シリーズ15打席無安打(3四球)だったが、好機で巡ってきた16打席目だ。1ボールからの2球目。モイネロが低めに投じた153キロの直球にやや体勢を崩されながらも、しっかりと捉えた。  今シリーズ初安打が、1点差に迫る一打。チームに再び、流れを呼び戻した。

◆SMBC日本シリーズ2019は23日、東京ドームで第4戦が行われ、パ・リーグ2位からクライマックスシリーズ(CS)を勝ち上がったソフトバンクがセ覇者の巨人に4-3で競り勝って4連勝を飾り3年連続日本一に輝いた。今季限りでの引退を表明している巨人・阿部慎之助捕手(40)は六回から代打で出場。1打数無安打1死球で19年間の現役生活に終止符を打った。  3点を追う六回、2死一塁から4番・岡本が今シリーズ1号2ランを右翼席にたたき込んで1点差に詰め寄ると、続くゲレーロは中前打。6番・若林に代わって代打・阿部がコールされると本拠地のG党は大歓声。ソフトバンクも3番手・嘉弥真を投入したが、カウント2-1から死球となった。  七回からは一塁の守備に就き、3-4の八回1死で迎えた第2打席は4球目を打つも二ゴロ。これが現役生活最後の打席となった。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)SMBC日本シリーズ2019は23日、パ・リーグ2位のソフトバンクが巨人(セ・リーグ優勝)を下して4連勝。3年連続10度目の日本一を決めた。  3連敗を喫し崖っぷちの巨人は菅野が先発、勝てば日本一が決まるソフトバンクは和田が先発登板。巨人は坂本勇を2番・遊撃で起用し、岡本は4番・一塁でオーダーに名を連ねた。阿部はベンチスタート。ソフトバンクはデスパイネが4番・左翼、内川はベンチスタートとなった。  巨人・菅野、ソフトバンク・和田ともに3回まで1安打無失点と上々の立ち上がり。試合が動いたのは四回だった。ソフトバンク・今宮が左前安打で出塁し、その後、二盗。デスパイネも左前安打を放ち、1死一、二塁とチャンスを広げると、グラシアルがバックスクリーン左へ豪快な3点本塁打。CSファイナルステージや日本シリーズの重要な場面で一発を放っているキューバ出身の強打者が、この一戦でも本領を発揮した。  ソフトバンクは六回からスアレスがマウンドへ。巨人は坂本が四球で出塁すると、1死一塁の場面で岡本が右翼スタンドへ2点本塁打。反撃ののろしを上げたが、七回に守備で手痛いミス。ソフトバンク・福田の三ゴロを岡本が弾き失策。さらに1死一、二塁の場面、二塁手に入った山本が二ゴロで併殺を狙ったが、二塁へ悪送球。その間に福田が生還し、4点目を奪いリードを広げた。  巨人はその裏の2死一、二塁の場面で、このシリーズ3試合連続の無安打の丸が、ソフトバンク・モイネロの2球目のストレートを強打。レフトフェンス直撃の適時二塁打で再び1点差に迫ったが、反撃もここまで。ソフトバンクはモイネロが八回、森が九回を抑えて試合を締めくくった。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)SMBC日本シリーズ2019は23日、パ・リーグ2位のソフトバンクが巨人(セ・リーグ優勝)を下して4連勝。3年連続10度目の日本一を決めた。  元日本ハム監督の大島康徳氏(69)はブログで「あっか~ん!巨人。エース菅野の登板が何故今日なのか? 昨日だったのじゃないか? 正しいかどうかは分かりませんし そこにはチーム事情があるのかもしれませんがそれが、私の考えです」と持論を述べた。

◆SMBC日本シリーズ2019は23日、東京ドームで第4戦が行われ、ソフトバンク(パ・リーグ2位)が巨人(セ・リーグ優勝)に4-3で競り勝ち、4連勝として球団史上初の3年連続で10度目(南海、ダイエー時代を含む)のシリーズ制覇を果たした。最高殊勲選手(MVP)には今シリーズ3本塁打のグラシアル(ソフトバンク)が選ばれた。  令和初の頂上決戦は、平成後期の常勝軍団が球界の盟主を圧倒した。"鬼采配"を繰り出した指揮官がようやく鋭い眼光を解いてナインの元へ。歓喜の輪に吸い込まれた工藤監督が10度舞った。  「選手が勝ってくれることで少しずつ勇気をもらってここまで来ることができた。最高の仲間と野球ができて、こんな幸せ者はいない。球場に来てくれたファンの声援が支えてくれた。勝利はファンに心からささげたい」  四回にグラシアルが左中間に先制3ランを放つと、早めの継投に終盤の代打攻勢。最後の1勝も戦力をフル活用した。  2000年のON対決以来の注目の対決で、九州移転後のセ・リーグ全球団撃破が完成。3年連続の日本シリーズ制覇は指揮官が投手として活躍した1990~92年の西武以来。CSファーストステージ第2戦から10連勝は、就任5年の最長を更新した。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)SMBC日本シリーズ2019は23日、パ・リーグ2位のソフトバンクが巨人(セ・リーグ優勝)を下して4連勝。3年連続10度目の日本一を決めた。  ナインらの手で10度中を舞った工藤公康監督(56)は、優勝監督インタビューで喜びを語った。一問一答は以下の通り。  --いまの気持ちを  「本当に最高の気分です! ありがとうございます!」  --ともに戦ってきた選手・コーチの手で10度宙を舞った  「僕を胴上げしてもらって申し訳ない気持ちでいっぱいです。もっともっとできることがたくさんあったのではないかと反省しながらシーズンを過ごしました。それをコーチやスタッフ、なによりも選手のみんなが勝ってくれることで少しずつ勇気をもらってここまで来ることができました。みんな、本当にご苦労さまでした。ありがとう」  --レギュラーシーズンで優勝できなかった悔しさもあったのでは  「昨年もリーグ優勝を逃して...。日本一になることはできたんですけど、スローガンに『奪Sh!(ダッシュ)』という言葉を入れて、なんとかペナントを獲りたいと強い思いでやってきたんですけど、やっぱり僕の力不足があって優勝できなくて、選手には苦労をかけたと思います。ことしもう一度日本一になって、みんなと一緒に最後は笑っていたいという強い気持ちでここまで頑張ってきました。選手たちが、CSの最初に負けて、その後は10連勝。こんなに素晴らしい仲間とスタッフとコーチと野球ができて、こんな幸せ者はいないです。本当にありがとうございます」  --3連覇の偉業  「ジャイアンツのファンの方も声援が素晴らしくて、ベンチにいても震えるくらいすごい声援の中で、こんなにもプレッシャーがくるのかと、これがザ・日本シリーズだなと思う中で戦った。その中で、選手たちがよく点を取ってくれましたし、よく投げてくれましたし、それを支えてくれたのが球場に来ていただいているファンの方。ジャイアンツの声援に負けないくらいの大きな声援を選手にくれました。きょうの勝利はファンのみなさんに心から捧げたいと思います。本当にありがとうございます」  --福岡に移転して30年目の節目。巨人を倒し、セ・6球団すべてを倒して日本一を手に入れた  「きょう勝てたのも本当にわずかな差だと思いますし、ジャイアンツも強かったですし、僕がが勝てたのはほんの少しの違いだなと思っています。まだまだ強くなるチームだと思いますし、もっともっと強くなれるよう一生懸命頑張っていきたいと思います」  --ソフトBの進化を期待してもいいか  「みんなで力を合わせて一生懸命、強いチームを作れるように頑張っていきます」

◆SMBC日本シリーズ2019は23日、東京ドームで第4戦が行われ、ソフトバンク(パ・リーグ2位)が巨人(セ・リーグ優勝)に4-3で競り勝ち、4連勝として球団史上初の3年連続で10度目(南海、ダイエー時代を含む)のシリーズ制覇を果たした。  7年連続でパの球団が日本一となり、70度目の日本シリーズで優勝回数はセ、パのチームが35度ずつで並んだ。  クライマックスシリーズ(CS)で勝ち上がったリーグ優勝以外のチームが日本一になるのは4度目で、パがプレーオフで優勝を決めていた2004~06年を含めるとレギュラーシーズン1位以外のチームが日本一になるのは6度目。  最高殊勲選手(MVP)には今シリーズ3本塁打のグラシアル(ソフトバンク)が選ばれた。就任5年目の工藤監督は3年連続4度目の日本一で、監督としては歴代4位に並んだ。  ソフトバンクは四回にグラシアルの3ランで先制。七回には2失策が絡み1点を加えた。巨人は六回に岡本の2ラン、七回には丸の今シリーズ初安打となる適時打で1点を返したが及ばなかった。 巨人・原監督 「粘り強く戦ったが、ソフトバンクの勢いを、なかなか止めることができなかった。そういうシリーズだった。かなり高い壁はある。それに対して、われわれは積み上げていかないといけない。一つの目標をクリアできなかった」

◆巨人のスコット・マシソン投手が23日のソフトバンク戦後に"引退"を表明した。  「プロ野球人生は引退します。一番の要因は自分の描いた投球が以前と比べてできなくなったこと。去年のひざの手術を受けて、100%のパフォーマンスができなかった。家族との時間も優先させたい。日本でプレーできたことは最高の思い出です」  2012年に入団した長身右腕は13年に40ホールド、16年の41ホールドを挙げて最優秀中継ぎ投手にも選ばれるなど、ブルペンを支え続けた。プロ通算では421試合に登板し、27勝29敗、54セーブ、174ホールドだった。  ただし、「カナダ代表として東京五輪を目指してやっていく」と競技を続ける意向を示している。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)応援に訪れたソフトバンクの孫オーナーも歓喜の胴上げを受けた。「僕はされる立場じゃない。夢のようで舞い上がる気持ちだった。選手、監督らの働きに感謝」と声を弾ませた。  就任5年目で4度の日本一に導いた工藤監督には「(ポストシーズン)10連勝は奇跡と言っていい大変な活躍だった。ずっと張り詰めていただろう。あれだけの集中力はすごい」と手腕を高く評価した。 王貞治ソフトバンク球団会長の話 「ジャイアンツに勝って日本一になりたいとみんな思っている。念願かなったの一言。完璧な形で何も言うことはない。中身も上回っていたと手応えを持てて、会長としてこんなにうれしいことはない」

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)ソフトバンクの守護神、森が胴上げ投手になった。4-3の九回2死から亀井を歩かせ、一発を許せば逆転サヨナラ負けの場面で対峙したのは坂本勇。フルカウントから「僕は打たれるのも抑えるのもこれしかない」と渾身のカットボールを投じ、空振り三振に仕留めた。  本格的に抑えを務めて2年目の今季は、背中痛で6月中旬から約1カ月離脱した。「いなかった時を取り戻したいという思いでやってきた」と連投もいとわず、今シリーズは4試合全てで試合を締めくくった。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)巨人の菅野は七回途中4失点で敗戦投手となり今季を終えた。後のない試合に、腰痛による戦線離脱から9月15日以来で登板。「何とかしたい一心だった」と一回から飛ばし、三回まで無失点。だが四回にグラシアルに先制3ランを浴びると、2-3の七回には味方の2失策に足を引っ張られて追加点を許した。  今季は腰痛が響いて2軍での調整が長くなり「悔しいことばかりだった。今までが順調にいき過ぎていた」と表情を曇らせ、来季に向け「まずはしっかり万全な状況にしたい」と話した。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)巨人はレギュラーシーズンで打線を引っ張った坂本勇、丸ともに今シリーズはわずか1安打と振るわず、本来の力を発揮できなかった。チーム全体でも4試合シリーズ最少に並ぶ22安打にとどまった。  九回2死一塁で空振り三振に倒れ、最後の打者となった坂本勇は「やられっぱなし。力の差を感じた。技術不足」と悔しさをにじませた。吉村打撃総合コーチは「短期決戦の難しさを感じたシリーズだった」と話した。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)ソフトバンクの松田宣は優秀選手に選ばれ「こういうのをあまりもらったことがないのでうれしい」と声を弾ませた。第2戦での先制3ランに続き、3-2の七回1死一塁から遊撃内野安打をマークして貴重な追加点につなげた。  チームの一員としてセ・リーグ6球団全てを破って日本一に輝いた。昨季の日本シリーズでは日本一を決めた第6戦で出番がなかっただけに「全部制覇できてすごくいい経験。自信にしたい」と喜びもひとしおだった。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)ソフトバンクは東京都内のチーム宿舎近くの駐車場で、今季初の祝勝会を行った。パ・リーグは2位に終わり、クライマックスシリーズ(CS)突破の際は台風19号による被害を受け、祝勝会を自粛していた。  王球団会長が「本当におめでとう。素晴らしかった」とねぎらいの言葉をかけ、選手会長の柳田の「終わり良ければ全て良し」のあいさつでビールかけがスタート。用意された大量のビールが次々に泡と消えた。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)巨人の岡本が日本シリーズ初本塁打となる2ランを放った。六回2死一塁でスアレスが投じた157キロの速球を捉えて右翼席へ運んだ。  しかし直後の七回、一塁から移った三塁の守備で福田のゴロをさばけず痛恨の失策。この走者が失点につながった。苦い経験とともにシーズンが終わり「相手も強かったし、またしっかりと練習して頑張る」と悔しさをにじませた。

◆ソフトバンクは24日未明、来季以降の指揮を要請していた工藤公康監督(56)と契約更新に合意したことを発表した。来季から2年契約。今季が3年契約の最終年だった工藤監督は23日に3年連続の日本一を決めたばかり。「2年間チームの指揮を任せて頂けることに身が引き締まる思い。来季はチーム一丸となり、リーグ優勝、そして4年連続日本一を目指し、精いっぱい頑張ります。同時に、将来も強いホークスであるための、育成、強化に努めたいと思っております」と決意表明した。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)松田宣が優秀選手賞に輝いた。クライマックスシリーズでは先発を外れることもあったが、日本シリーズ第2戦では決勝の1号3ランを放ち、この日も2安打。記念のトロフィーや計40万円の賞金をゲットし「あれ(第2戦の3ラン)がよかったと思います。(チームは)ポストシーズンに入って強くなった印象がある。みんな、自信を持ってやっていました」と笑顔だった。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)先発の和田が新人だった2003年の星野阪神との第7戦以来、16年ぶりに日本シリーズで白星をマークした。「大事な試合で自分の投球ができた。優勝が決まるなかで、投げられて幸せです」。昨季は左肩痛で登板のないまま終わった。1年半のリハビリを乗り越えた今季、6月23日の交流戦最終戦で復帰し、2年ぶりの白星を挙げた。そのときと同じ菅野との投げ合い。5回1安打無失点の好投だ。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)丸が七回、今シリーズ初安打となる左越え適時二塁打を放った。しかし、通算では13打数1安打で1打点に終わり「最初から最後までチームに貢献できないシリーズだった」と唇をかんだ。広島に在籍した昨季から2年連続で日本シリーズに出場したが、悲願の日本一を勝ち取れなかった。

◆SMBC日本シリーズ2019は23日、第4戦が行われ、セ・リーグ1位の巨人はパ・リーグ2位から勝ち上がったソフトバンクに3-4で敗れ、4連敗で敗退。現役引退を表明していた阿部慎之助捕手(40)は途中出場で死球と二ゴロで、19年間の現役生活に別れを告げた。来季は原辰徳監督(61)の後継者候補として、2軍監督に就任することが分かった。  中大監督就任前に臨時コーチを務め、阿部に指導した元中日内野手の秋田秀幸氏(64)は、埼玉・熊谷市内でテレビ観戦。「(レギュラーシーズンの)最後の東京ドームに呼んでもらい、慎之助らしい本塁打を見届けました」と明かし、小学生の頃から知る阿部の中大時代を回想した。  そのすごさは、マシン相手の打撃練習を長時間続けても全く平気だったように、とにかくバットを振れたことだという。「毎日1時間以上、平然と打ち続ける選手だった。もちろん遠くへ飛ばす天性の力はあったけど」と秋田氏。「体力」と「気力」はもちろん、「野球が好き」でなければできない。  打撃でアドバイスしたことの一つは、「とにかく最短でボールを捉えること」だった。バットを絶対に遠回りさせずに捉えるスイングからスタート。捕手として学んだ配球の読みも打撃に生かされた。秋田氏は「いつか来るものだけど...」と、阿部がバットを置くことに感慨深げだった。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)東京都内のチーム宿舎近くの駐車場で、今季初の祝勝会を行った。パ・リーグは2位に終わり、クライマックスシリーズ突破の際は台風19号による被害を受け、祝勝会を自粛していた。王球団会長が「本当におめでとう。素晴らしかった」とねぎらいの言葉をかけ、選手会長の柳田の「終わりよければ全てよし」のあいさつでビールかけがスタート。用意された大量のビールが次々に泡と消えた。

◆巨人のスコット・マシソン投手(35)が23日、日本シリーズ終了後に今季限りでプロ野球を引退することを明かした。  「一番の要因は自分の描いた投球が以前と比べてできなくなったこと。昨年(8月)の(左)膝の手術後、100%のパフォーマンスができなくなった」  191センチの長身右腕は2012年の来日後は中継ぎや抑えで活躍。13年、16年には最優秀中継ぎ投手に輝いた。8年目の今季は28試合で2勝2敗、1セーブ8ホールド。通算421試合で27勝29敗、54セーブ、174ホールド、防御率2.46だった。  米大リーグでも活躍した右腕はプロ野球生活に一区切りを付けたが、「カナダ代表として来年の東京五輪を目指してやっていく」と競技は続ける意向を示している。

◆ソフトバンクが3年連続で日本シリーズを制した工藤公康監督(56)に、複数年契約で来季以降の指揮を要請したことが23日、分かった。就任から5年連続2位以上で、2度の優勝と4度の日本一。受諾に支障はなく、今後のチームについてもフロントと話をしている。日本一を見届けた後藤球団社長兼オーナー代行は「正式な話は終わってから」としつつ「工藤監督以上の監督はいないと思います」と期待した。

◆選手会長としてチームをもり立てたソフトバンク・柳田 「うれしいっす。本当に最高のチームメートですね」 ソフトバンク・内川 「(ポストシーズンから)スイッチが入った。最後まで負けずに終わったことがよかったと思います」 四回は左前打でグラシアルの3ランを呼び、九回は遊撃で好守を見せたソフトバンク・今宮 「日本一になれたのはすごくうれしい」 救援してから七回にプロ初安打となるバント安打を記録したソフトバンク・甲斐野 「バントの練習はしっかりしていた。決められてよかった」 投手陣を好リードしたソフトバンク・甲斐 「投手がしっかり投げてくれた結果です」 国内FA権を今季取得したソフトバンク・福田 「きょうまで日本シリーズのことだけを考えていた。(FA権については)また明日から考えます」 第2戦で7回無失点と好投して優秀選手に選ばれたソフトバンク・高橋礼 「マウンドで全てを出し切ることを続けてきて、今回もできました。表彰は松田さんが(第2戦で決勝弾を)打ってくれたおかげ」 六回に阿部へ死球を与えたソフトバンク・嘉弥真 「打ちそうな雰囲気が出ていて厳しくいこうと思ったら、ちょっと抜けてしまった。申し訳ない」 胴上げされたソフトバンク・孫正義オーナー 「僕はされる立場じゃない。夢のようで舞い上がる気持ちだった。選手、監督らの働きに感謝」 ソフトバンク・後藤球団社長兼オーナー代行 「私は子供の頃から強烈なジャイアンツファン。この仕事を始めてから、この日をずっと夢見ていた。ジャイアンツさんの偉大さにはまだまだかないませんが、一歩近づけたのかな」

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)強力打線の中でひときわ輝きを放った。ソフトバンクのジュリスベル・グラシアル内野手(34)が四回、2試合連続本塁打となる先制3ランを左中間へ。「最高の結果になってくれた」と胸を張った。  1ボール2ストライクから、菅野が投じたスライダーが甘く入ったのを逃さなかった。キューバ代表として出場した2017年のワールド・ベースボール・クラシックで、同じように東京ドームで菅野から2ラン。大舞台で、日本を代表するエースから再び貴重な一発を放った。  今シリーズは打率・375(16打数6安打)、3本塁打、6打点。最高殊勲選手(MVP)に選ばれただけでなく、ポストシーズン11試合全てで安打を放つ大車輪の活躍ぶりだった。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)課題を多く残して、戦いが終わった。球団史上3度目の4戦全敗で敗退した原監督は、「ソフトバンクの勢いをなかなか止めることができなかった。かなり高い壁はある」と潔く認めた。  レギュラーシーズンは若手の台頭が優勝への原動力となったが、3年連続日本一のソフトバンクとは経験の差が出た。4試合で2失策した4年目の山本や、第3戦の九回に代走で出た4年目の増田大が暴投の間に一塁から無理に三塁を狙ってアウトになるなど、大きなミスが頻発した。  強みだったはずの坂本勇、丸ら上位打線は当たりが止まり、4試合で終わったシリーズのチーム打率・176は史上最低記録。35三振は同最多と振るわなかった。  セ・リーグが最後に日本一になったのは2012年の巨人が最後で、これで7年連続でパ・リーグ球団が制覇。リーグ間の実力格差も浮き彫りになった。原監督は4年ぶり3度目の監督に就任し、5年ぶりのリーグ制覇と日本シリーズ進出に導いたが、「宿題が残った」と総括。来季は、痛いほど見せつけられた「差」を埋めるシーズンになる。(伊藤昇) 4連敗に主将の巨人・坂本勇 「悔しかった。やられっぱなしだった。力の差を感じた。阿部さんから受け継いだものを継承していけるように。すごく寂しいけど、もっともっとジャイアンツを強くするために頑張ります」 七回に二塁で失策を記録した巨人・山本 「悔しい気持ちと申し訳ない気持ちです。ここで諦めたら終わり。フェニックス(リーグ)にも行くので、来年挽回できるようにしたい」 巨人・山口寿一オーナー 「ホークスと比べてあらゆる総合力で足りていないとはっきりした。来年に向けて、明日から球団として取り組むべきことがある。相当気持ちを入れ直してやっていかないと」 ★ジャイアンツvsホークスの日本シリーズアラカルト  ◆南海の御堂筋パレード(1959年) 51年の初対戦から4度全て、巨人に屈した。59年は杉浦が第1戦から4連投。全てで勝利投手となり球団初の日本一に輝いた。大阪市でのパレードでは先妻の位牌(いはい)をユニホームに忍ばせた鶴岡監督が涙を流し「涙の御堂筋パレード」と呼ばれた。  ◆巨人V9(73年) 65年に川上監督のもと3番・王、4番・長嶋、投手では金田を擁し、4勝1敗で日本一。同年からV9伝説が始まった。V9最後の相手も73年の野村選手兼監督が率いた南海。堀内が救援、先発で2勝を挙げ、日本一となった。  ◆ON対決(2000年) 長嶋監督率いる巨人と王監督のダイエーが対戦。先約のために福岡ドーム(現ヤフオクドーム)が使用できず、変則日程で行われた。巨人は東京ドームでの第1、2戦で連敗したが、福岡ドームに移った第3戦に快勝。敵地で3連勝し、本拠地に戻った第6戦も勝ち4勝2敗で日本一に。長嶋監督は「みなさん、この20世紀、ありがとうございました」と歓喜に酔いしれた。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)巨人と前回対戦した2000年の日本シリーズで監督として指揮したソフトバンク・王貞治球団会長(79)は23日、東京ドームで観戦。長嶋巨人との「ON対決」として注目された中で2勝4敗で敗れた雪辱を、19年ぶりに果たした。  胴上げを終えてベンチに戻るナインに、王会長は自ら近寄ってハイタッチを交わす。4連勝で巨人を撃破。予想を上回る形で幕を閉じた。  「どんな形でも戦えると感じさせてくれるチーム全体が頼もしかった。工藤監督の状況による的確な起用、決断もすごかった」  巨人の選手時代に11度、ダイエー(現ソフトバンク)監督として2度、日本一を味わった王会長も、フロントとして6度目の頂点は格別なものだ。  「長嶋さんとは初めての、そして最後の戦いでしたが、弟分の私として兄貴分の長嶋さんを超えたいという気持ちがありました。2000年は私にとって特別な年だと今でも思っています」  今年1月の会見でこう振り返ったのが、00年の日本シリーズ。巨人のV9を支えた盟友との「ON対決」は、敵地で2連勝しながら4連敗。最後は敵地で宙に舞うミスターを背に、唇をかんだ。  東京ドーム元年の1988年。リーグ2位に終わった責任を取る形で巨人監督を退任し、94年から福岡へ。20年連続Bクラスのチームを日本一まで押し上げた。03年から4年連続でV逸した巨人から復帰待望論。それでも、監督退任後も福岡に骨を埋めた。  令和初の王座をつかみ「念願かなったの一言。完璧な形で何も言うことはない」と笑顔。巨人を投打で圧倒し「中身も上回ったという手応えを持てて、こんなにうれしいことはない。これからは(巨人が)打倒ホークスでかかってくるんじゃないか」と胸を張った。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)胴上げ投手のソフトバンク・森唯斗投手(27)がサンケイスポーツに独占手記を寄せた。今季35セーブの守護神は日本シリーズも炎の4連投で全試合を締めくくった。若返ったリリーフ陣のリーダーの自覚、昨年4月の股関節の手術のリハビリを続けているデニス・サファテ投手(38)への思いを綴って「最強のリリーフ陣」を目指すことを誓った。  あのマウンドにいられたことが、僕にとっては最高だった。自分の投球をして抑えることができた。リーグ優勝ができなかった分も、絶対に日本一になりたかった。もう一度チャンスがあるのではなく、絶対にならないといけない。ホークスはそういうチームだから、達成できてよかった。  今季は環境が変わった。気がつけば、年下の投手ばかり。これまでは何も考えずに(昨季限りで引退した)摂津さんの後をついていくだけだったのに「摂津さんがいない。あ、俺がやらないといけないのか」。いま思えば、一番の分岐点はそこだったのかな。  キャンプには新人もいて、最初の休日に食事に誘った。分からないことだらけだし、次クールで先輩と話しやすくなるようにとも思った。少し前は「俺の役目じゃない」と他人事だったけど、やらないといけない思いがすごく強くなった。  リリーフは経験のない選手ばかり。みんな本当に頑張ったと思う。1年目の甲斐野は、ここまでがむしゃらにきたかな。かわいがっているし、来年どうなるのか、すごく気になる。4年目の(高橋)純平も悩んできたけど、すごく自信がついたように映った。ただ、みんなそれくらいの力は持っている。僕なんかよりもずっと。だから、ここで終わりたくない。自分も含め、もっとできるはず。できれば、これから何年もホークスは強いし、最強のリリーフ陣になれるとも思う。  周りを見るようになって、自分のことも一歩引いてみられるようになった。前は打たれても「何で打たれるんだろ」としか思わなかったけど、絶対に原因がある。ようやく自分で考えられるようになった。スコアラーさんに「こうですよね、やっぱりそうか」と自分から。でも、けがでの離脱は本当に悔しかった。1カ月がすごく長かった。「なぜ俺はあそこにいないんだろう」。テレビを見るのも嫌だった。復帰後すぐに九回に使ってもらえて本当にうれしかったし、また頑張ろうという気持ちが強くなった。  ホークスのクローザーはサファテだというイメージは絶対に消えていない。常に比べられていると思う。デニス(サファテ)がマウンドに立てば試合は終わり。僕はまだそう思われていない。変えないといけないし、デニスが戻っても抑えをやりたい。勝利の瞬間にいられるのはすごいこと。どんなに厳しい状況でも、やりがいしかない。  大好きなデニスには、極力連絡をしなかった。何かあればすぐに連絡したり頼っていたけど、それはどうなのかなと思うようになった。デニスも野球がやりたいし、本人が一番辛い。少しでも負担をかけたり、リハビリを急がせてしまったらいけない。気になるから通訳さんに様子は聞くけど、通訳さんも気を使って必要なこと以外は連絡していない。やっぱり、それがいいよなと思った。日本一になって、やっと連絡ができるかな。  9月に3人目の子供が生まれた。4歳と2歳の子も最近は野球を楽しんでくれるし、僕が出ていることを分かるようになった。キャッチボールがしたいというから家の中でして、妻に怒られたり...。まだ野球で遊びに行っているとしか思っていないだろうから、仕事だと分かってもらうまで頑張りたい。一人増えて、妻も大変。シーズンが終わったし、早く家族のために何かしたい。(福岡ソフトバンクホークス投手) ★今季2勝3敗35S  森は1点リードの九回を無失点で守った。2死一塁で、坂本をカットボールで空振り三振。入団から6年連続の50試合以上となる54試合に登板して2勝3敗、35セーブ。6月16日から右上腕や背中の痛みで自身初の離脱も、7月21日に復帰。ポストシーズンも9試合でマウンドへ。5月18日の日本ハム戦(熊本)から、セーブ機会は29度連続で成功した。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)セ・リーグ優勝の巨人は、ソフトバンクに3-4で惜敗。1990年(対西武)以来の日本シリーズ4連敗で、7年ぶりの日本一はならなかった。腰痛で離脱していた菅野智之投手(30)が先発で9月15日の阪神戦(東京ドーム)以来、約1カ月ぶりに1軍登板。6回1/3で108球を投げ、6安打4失点(自責点3)で8三振を奪う力投だったが、流れを止められなかった。原辰徳監督(61)は「宿題が残った」と総括した。  終戦が決まると、エースは口を真一文字に結んだ。約1カ月ぶりに1軍に帰ってきた菅野が108球の力投でわかせた。  「何とかしたい一心で投げました。ここまで来られたというのは僕だけの力ではないので、いろいろな人に感謝の気持ちを伝えたいです」  東京ドームは揺れた。割れんばかりの大声援を受け、序盤から飛ばした。一回2死。柳田をフルカウントから149キロの内角直球で見逃し三振に抑えると、グラブをたたいてほえた。四回、グラシアルに先制3ランを被弾。七回に味方の失策も絡んで1点を失ったが、1死満塁となった場面で降板するまで、懸命に腕を振った。  今季は腰痛で3度離脱。それでも常に前を向き、1軍復帰だけを目指した。9月中旬からは、暑さの残るジャイアンツ球場で午前9時過ぎから始まる練習の日々。ナイターがない分、「いい循環にしないと」と規則正しい生活を心がけた。  起床し、必ず自宅で朝食をとることを日課とした。白米にみそ汁、サケの塩焼き。「一般的な和定食みたいなものだよ」と栄養を補給した。ビタミンが豊富な果物の摂取も心がけ、球場にブドウを持って入ったこともある。早期復帰を目指して努力を重ねたシーズンを「どうにもできない悔しさもあった。すごい長い1年でしたけど、自分次第で自分の力で変えられるシーズンでした」と振り返った。  「(阿部と)日本一という有終の美を飾りたかったけど、阿部さんの思いもつなげていけたら」と菅野。チームを背負い、来季巻き返す。(赤尾裕希)

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)パ・リーグ2位から勝ち上がったソフトバンクがセ・リーグ優勝の巨人に4-3で競り勝ち、4連勝として球団史上初の3年連続で10度目(南海、ダイエー時代を含む)のシリーズ制覇を果たした。4連勝での日本一は南海時代の1959年以来60年ぶり。就任5年目の工藤公康監督(56)は3年連続4度目の日本一で、監督としては歴代4位に並んだ。  "鬼采配"の仮面が一気に解けた。早足でナインに近寄った工藤監督は柳田に飛びついた。ナインを順番に抱きながら輪の中心へ。10度も宙を舞った。安堵と疲労があふれるように表情を崩し、お立ち台で感謝した。  「こんなにすばらしい仲間と野球ができて、こんな幸せ者はいない。コーチ、スタッフ、何より選手のみんなに勇気をもらった。みんな、本当にご苦労様。ありがとう」  令和初の頂上決戦は、平成後期の常勝軍団の完勝だ。2000年のON対決以来の対戦で、九州移転後のセ・リーグ6球団撃破を達成。4連勝での日本一は南海時代の59年以来となった。  3年連続日本シリーズ制覇は、指揮官が投手として活躍した1990~92年の西武以来4球団目の快挙。クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦から、就任5年で最長の10連勝で頂点を極め、4度の日本一は監督としては歴代4位に並んだ。  フィナーレも動いた。グラシアルの3ランで先制すると、早めの継投。甲斐野やモイネロが回をまたぎ、攻撃は代打攻勢を仕掛けた。CSの松田宣らに続き、今度は内川がベンチスタート。主力にも容赦ない大胆な起用を続けた将は、最後まで戦力をフル活用した。  「僕が胴上げをしてもらって申し訳ない。相手にも自分にも負けずに結果を出してくれた選手が頼もしいし、感謝しています」  決断の度に、謝罪と同時に「悔いは残したくない」と繰り返した。現役29年で224勝の野球人生も「後悔ばかり」。いまも続く無限の反省から「どれだけ野球のことを考える時間を作るか」という信念が生まれた。  評論家時代に「勉強」のために横浜市の自宅に研究室を作った。6試合を同時に録画する6台のテレビ。今季は同じ"基地"を単身赴任の福岡にも用意した。ひとまわり大きなスクリーンも加えて「分析」に進化。まぶたが限界を迎えるまでにらみ続けた。  重いバッグに3台のタブレットを忍ばせ、シーズン中も専門家の学会をのぞく。体のしくみの勉強。知識を伝え、使うことの難しさを痛感して手に取る本も増えた。マネジメント、リーダーとは。妥協なき日々から生まれた勝負強さを、王球団会長も「彼が日頃から試合を振り返り、最高の力を出すことを考えているから」と感服した。  そんな策士が優勝争いの要所でかけた言葉は驚くほど単純だ。「バカになって野球をやろう」。指揮する明るいナインの姿から学んだこと。夢中で白球を追った選手の手による胴上げ。「温かい手が背中を宙に浮かせてくれる気持ちを体いっぱいで感じながら」と感無量で舞った。  ささやかな休息は身の回りの手伝いに福岡を訪れる三女・阿偉さんとの映画鑑賞だ。地下鉄を利用して映画館に向かう。肌で感じる街への何よりの恩返しを終えた。  「きょうの勝利はファンのみなさんに心から捧げたい。まだまだ強くなれるチーム。強くなれるように、みんなで一生懸命頑張っていきます」  2年連続でリーグ優勝を逃した屈辱は消えないが、新たな後悔も糧。野球漬けの旅は、終わりと同時に始まる。 (安藤理) ★南海・1959年の日本シリーズG倒VTR  鶴岡一人監督が率い、55年以来5度目の日本シリーズで巨人と対戦。過去4度はすべて巨人に敗れていたが、杉浦忠が第1戦から4連投し、全試合で勝利投手となりMVPに選出。4連勝で球団初の日本一に輝いた。大阪市でのパレードでは先妻の位牌(いはい)をユニホームに忍ばせた鶴岡監督が涙を流し「涙の御堂筋パレード」と呼ばれた。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)SMBC日本シリーズ2019は23日、第4戦が行われ、巨人はソフトバンクに3-4で敗れ、4連敗。7年ぶりの日本一を逃した。阿部慎之助捕手(40)は途中出場で死球と二ゴロで、19年間の現役生活に別れを告げた。来季は原辰徳監督(61)の後継者候補として、2軍監督に就任することが判明。日本一奪回に向けて、今季ヤクルトで1軍打撃コーチを務めた石井琢朗氏(49)を1軍コーチに招聘(しょうへい)するなどコーチ陣を刷新することも分かった。  小さく、うなずいた。現役最後のゲームセット。阿部は歓喜に沸くソフトバンクの選手たちを見つめ、19年間の選手生活の終わりを、ゆっくりとかみしめた。  「精いっぱいのことはできた。悔いは残るけど、来年以降に日本一を奪回してもらえるように応援したい。最後に最高の仲間、指導者、裏方さんとできて、恵まれた19年間だった」  2-3の六回2死一塁で代打で登場。大声援で迎えられたが、死球を受けた。3-4の八回1死は二ゴロに倒れ、これが現役最終打席になった。ポストシーズン8試合全てに出場し、日本シリーズ第1戦で千賀からソロ本塁打も放つなど、最後までファンを魅了した。  表彰式が終わると、右翼で仲間の手で10度宙に舞い、相手ナインにも胴上げされた。最後は王貞治・ソフトバンク球団会長と握手。「これからもっと野球人生が長くなる。いい指導者になれるように頑張ってくれ」と声をかけられた。四方の客席に手を振り、グラウンドに別れを告げた。  伝統球団で正捕手、主砲、主将の重責を一手に担った。2015年に一塁に転向し、主将の座は坂本勇に託した。17年に2000安打、今年6月に400本塁打を達成。今季は当初目指した捕手復帰を断念しながらも、95試合で打率・297、7本塁打、27打点、出塁率・411。5年ぶりのリーグ優勝に貢献した。  来季も戦力として期待されたが、V決定後に原監督と話し合い、「僕の将来のことやいろんなことを、僕が思っている以上に監督が考えてくださっていた」と決断。現役への未練を断ち、新たな"使命"を受け入れた。  惜しまれながらバットを置いた阿部は高田2軍監督に代わり、次期2軍監督に就任する。若きG戦士たちを預かり、采配や組織づくりを学ぶ。原監督が長嶋監督(当時)のもとで3年間コーチとして監督修行を積んだように、阿部も"帝王学"を吸収する。常勝軍団を知り尽くす背番号10には、原監督の後継者の期待もかけられている。  明るく、優しく、時に厳しい天性のリーダー。「僕が野球をやめても、巨人はずっとありつづける。やっぱりこの球団が好きだし、ずっと強くあってほしい」と阿部。巨人の未来を背負う男が、新たなスタートを切る。

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)巨人は原監督が弱い投手陣をやり繰りして、セ・リーグを制した。なんとか日本シリーズの土俵までたどり着いたけど、そこで力尽きたという感じだよ。短期決戦は、やり繰りに限界があるね。  エースの菅野を第1戦に使えない。ようやく出てきたけど、グラシアルに今季不調のスライダーを投げてやられた。決め球にならないのに、使わざるをえなかった。投打ともに柱がいないチーム状態と同じだよ。  今シリーズで、課題がたくさん出た。ストライクが入らない投手陣。つながらない打線。大事なところでエラーが出る守備。これで勝ってしまったら、来年がしんどくなる。4連敗はいい薬になるだろうね。  ただ、巨人だけの責任ではない。ソフトバンクが歯が立たないほど強いかといえば、そうでもないんだ。リリーフ陣は強力だけど、先発で計算できるのは千賀だけ。野手もシーズンを通して活躍しているのは、そんなにいない。2年連続でリーグ優勝した西武は、投手陣が弱い。そのパ・リーグ球団に7年連続で日本一を許していることを、セ・リーグ6球団がしっかりと受け止めて、チームづくりをしていくべきだと思うよ。(サンケイスポーツ専属評論家)

◆SMBC日本シリーズ第4戦(巨人3-4ソフトバンク、ソフトバンク4勝、23日、東京D)巨人は球団史上3度目の4戦全敗で敗退した。レギュラーシーズンは若手の台頭が優勝への原動力となったが、3年連続日本一のソフトバンクとは経験の差が出た。4試合で2失策した4年目の山本や、第3戦の九回に代走で出た4年目の増田大が暴投の間に一塁から無理に三塁を狙ってアウトになるなど、大きなミスが頻発した。  元巨人監督の堀内恒夫氏(71)は24日、ブログで「巨人のいいとこ全然出せずに終わっちゃったね...」と悔しさを押し殺していた。

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