DeNA(★1対2☆)阪神 =クライマックスシリーズ3回戦(2019.10.07)・横浜スタジアム=
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阪神
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DeNA
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勝利投手:ドリス(2勝0敗0S)
(セーブ:藤川 球児(0勝0敗2S))
敗戦投手:エスコバー(0勝2敗0S)
  DAZN
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◆阪神がファイナルステージ進出を決めた。阪神は1-1で迎えた8回表、梅野の犠飛で勝ち越しに成功する。投げては、先発・高橋遥が3回1安打無失点。その後は4人の継投で1失点に抑えた。敗れたDeNAは、7回に一時同点とするも、続く好機を生かせなかった。

◆阪神矢野燿大監督(50)が早めの勝負に出た。 1勝1敗で迎えた第3戦。0-0の4回2死一、二塁。好投の先発高橋遥に、今季限りでの退団を表明している鳥谷を代打に送った。鳥谷は今季CS初出場。ここでラミレス監督もカードを切った。先発右腕の平良に代え、5日初戦で先発した左腕石田を中1日でマウンドに上げた。 鳥谷はフルカウントまでバットを1度も振ることなく、6球目を選んで四球。2死満塁となったが、続く1番近本が一ゴロに倒れて先制はならなかった。 高橋遥は3回を28球、1安打無失点で降板。4回から2番手島本を起用し、継投に入った。

◆阪神がラッキーな形で先制した。 0-0の6回。3番手国吉から先頭の6番高山俊外野手が二塁打。続く梅野隆太郎捕手が送りバントを成功させて1死三塁。8番木浪聖也内野手への初球、右腕の変化球は大きくワンバウンド。捕手伊藤光が制止できず、暴投で三塁走者高山が生還した。 新人木浪はこの日がCS初先発。5日の初戦では途中出場で2打席連続タイムリーを放った。この日も第1打席から連続安打。矢野監督がCS直前に「ラッキーボーイになってくれれば最高」と話していた通り、先制点を呼び込んだ。

◆DeNA平良、阪神高橋遥の両先発が上々の立ち上がり。平良は3回1死二塁のピンチに福留、マルテを連続三振に仕留めた。 阪神は6回、DeNA国吉から高山が左中間二塁打で出塁。梅野の犠打で三進し、国吉の暴投で1点を先制した。

◆阪神が北條史也内野手(25)の失策で同点を許した。 1点リードの7回。3連投となった3番手岩崎の2イニング目。2本の安打と四球で1死満塁のピンチを招いた。続く6番伊藤光が放ったゴロを三塁手の北條がファンブル。拾い直すもボールは手につかず、適時失策となった。内野陣は併殺狙いのシフト。捕球していれば、併殺を狙えた当たりだった。 続く1死満塁のピンチで4番手ドリスが登板。7番柴田を空振り三振、代打佐野を中飛に抑え、追加点を許さなかった。

◆DeNA先発の平良拳太郎投手(24)が大一番で役目を果たした。 毎回走者を背負いながらも、要所を締め4回途中4安打無失点。4回2死一、二塁のピンチを背負い降板したが、2番手石田がピンチを断ち切った。 平良は「しっかり腕を振ることを意識して試合に入りました。大胆に攻めることができ、また冷静な投球もでき、持っているものを出せたと思います」と汗をぬぐった。

◆阪神が無安打で勝ち越しに成功した。 同点の8回1死走者なし。6番高山が5番手エスコバーから死球を受けて出塁。代走に植田が起用された。 続く7番梅野の初球に植田が二盗を決めると、5球目の暴投で三塁まで進んだ。1死三塁となり、梅野は中堅へ飛球を打ち上げた。三塁走者植田は迷わずスタートを切り、快足で犠飛をもぎ取った。

◆阪神(3位)がクライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージでDeNA(2位)を破り、ファイナルステージへ進出した。 阪神は6回に先頭高山の二塁打をきっかけに1死三塁にすると、暴投の間に先制した。追うDeNAに7回1死満塁で北條の適時失策で追いつかれたが、8回に梅野の中犠飛で勝ち越した。守護神の藤川を8回から登板させるなど執念の選手起用で接戦を制した。 第1戦は最大6点差をひっくり返す逆転劇で先勝。第2戦はサヨナラ負けを喫して逆王手をかけられたが、14年以来2度目のファイナルステージ進出をつかみ取った。9日からリーグ優勝した巨人と日本シリーズを懸けて争う。 ▽阪神植田(決勝のホームイン)「(犠飛生還は)思い切って走りました。すごくいいと思うんで、ジャイアンツに勝って日本シリーズにいきたいです」

◆阪神(3位)がクライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージでDeNA(2位)を破り、14年以来2度目のファイナルステージ進出をつかみ取った。9日からリーグ優勝した巨人と日本シリーズを懸けて争う。 ◆CSファイナルステージの主なルール 6試合制。シーズン優勝球団には1勝のアドバンテージが与えられ、全試合ホーム開催。延長戦は12回まで。12回表終了時や12回裏の攻撃中に後攻チームの勝ち上がりが確定した場合、その時点でコールドゲームとなる。引き分けを除いた勝ち数が同じ場合はシーズン優勝球団が勝者。予告先発は両リーグとも実施

◆DeNAの19年シーズンが幕を閉じた。前夜にサヨナラ勝ちを収め、1勝1敗で迎えた第3戦。1点を追う7回1死満塁から相手失策で同点に追いついたが、8回に5番手エスコバーの暴投で勝ち越しを許した。 ラミレス監督は「いい試合だった。我々はベストを尽くして、ベストの結果。何も恥じることはない」と言った。ラミレス政権では初の2位でレギュラーシーズンを終え、CS本拠地開催を決めた。第1戦に石田を投入し、エース今永をブルペン待機させるなど奇策を仕掛けたが、阪神の勢いに屈した。同監督は「応援していただいた方の期待に応えたかった」。試合後、ラミレス監督の続投が発表された。5年目の来季に巻き返す。

◆セ・リーグの1S第1戦は勝利投手が阪神ドリス、敗戦投手はDeNAエスコバーだったが、第3戦も同じ2人が勝利と敗戦。 3試合制の1Sで2勝した投手は06年柳瀬(ソフトバンク)に次いでドリスが2人目。1Sで2敗した投手はエスコバーが初めてとなった。

◆今季限りで退団する阪神鳥谷敬内野手は今季CS初出場で持ち味を発揮した。DeNAとの敵地第3戦は4回2死一、二塁で代打登場。 左腕石田の際どいボールを慎重に見極め、最後はフルカウントから外角低め147キロにバットを止めた。自慢の選球眼で四球を選び、好機を2死満塁に拡大。結局先制点にはつながらなかったが、左翼席の虎党から大歓声を浴びた。 試合後は劇的勝利にも「オレのことはいいから...。出ていた選手に聞いてあげて」と照れ笑いしたが、チーム、自身ともに5年ぶりのCSファイナルステージ進出。悲願の日本一へ、虎の背番号1としての戦いはまだ終わらない。

◆阪神3番手で登板した岩崎優投手は仲間の救援陣に感謝しきりだった。 6回に登板し、同点に追いつかれた7回途中でドリスと交代。「イニングを完了できたらよかったんですけど。助けてもらった」。9日から始まるCSファイナルに向けて「まだ、試合は続くので」と前を向いて切り替えた。

◆阪神ラファエル・ドリス投手は絶体絶命のピンチでこれ以上ない快投を決めた。 7回裏、三塁北條の適時失策で同点とされ、なおも1死満塁で登板。7番柴田はフルカウントからフォークで空振り三振に仕留め、代打佐野もフォークで中飛に抑え込んだ。勝ち越し点を許さず、早くもCS2勝目までゲット。「四球もダメ。自信を持ってストライクゾーンに投げ込もうと思っていた。野球にエラーはつきもの。助け合いだから」と仲間を救って喜んだ。

◆阪神先発の高橋遥人投手が3回1安打無失点と完璧な投球を見せた。 この日最速151キロの直球を序盤から臆せず投げ込んだ。初回1死からソトに右前打を許すも、筒香を遊ゴロ併殺打で切り抜けると、その後は走者を出さず。「いい守備をしてくれましたし、後ろにいいピッチャーもいるので、1人1人思い切っていくだけでした」。 レギュラーシーズン終盤は勝ち星がつかず悔しい時間を過ごしたが、大一番で実力を発揮した。

◆ラッキーボーイは俺だ! CS初スタメンの阪神木浪聖也内野手(25)が3安打猛打賞をマークした。「久しぶりのスタメンだったので、負けられないと思っていた。気持ちが入っていました」。 必死に頑張るから幸運は訪れる。6回1死三塁で打席が巡り、国吉の暴投で先制点を呼び込んだ。8回には一塁ベースに打球が直撃し、二塁打に。まさにラッキーボーイの活躍だ。ファーストステージは7打数5安打で打率7割1分4厘と波に乗った。 社会人時代に負ければ終わりのトーナメントを経験してきた新顔は「一発勝負はプロに入って初めてだった。結果を出さないと、と思っていた」とたくましく振り返った。まだまだ別れの時間は来てほしくない。負ければ、今季限りでの退団を表明している鳥谷とは「ラストゲーム」になってしまうところだった。「(次も)やることは変わらない。勝つだけ。(鳥谷と)ずっと長くやりたいので、勝つしかないです」。 ラッキーボーイにはなったが、運だけじゃない。この1年で培った経験を、まだまだ生かす機会を得た。【真柴健】

◆阪神女房役の梅野隆太郎捕手が攻守で輝きを放った。同点で迎えた7回2死満塁。1ストライクから4番手ドリスのフォークをブロック。代打佐野を中飛に仕留めて絶体絶命のピンチを乗り切った。 8回には1死三塁から執念でボールに中犠飛。決勝の1点をもぎ取った。「海が初球から行ってくれて気分的にも楽になった。海の勇気が後押ししてくれた」と振り返った。走者植田の決死の盗塁がパワーになった。

◆阪神高山俊外野手が全2得点の起点となった。CS第3戦目で初先発。6回の第3打席は先頭で二塁打を放ち、3番手国吉の暴投で先制の本塁を踏んだ。 8回は1死走者なし。5番手エスコバーの153キロ直球を右太ももに受けて出塁。その代走植田が好走塁で決勝点を生んだ。 全員野球の1人として名前を挙げた矢野監督は「(高山)俊の死球とかも、痛かったやろうけど喜んでいる」と執念の姿勢をたたえた。

◆女房役の阪神梅野隆太郎捕手が攻守で輝きを放った。同点で迎えた7回2死満塁。1ストライクから4番手ドリスのフォークをブロック。代打佐野を中飛に仕留めて絶体絶命のピンチを乗り切った。 8回には1死三塁から執念でボールに食らいつき中犠飛。決勝の1点をもぎ取った。梅野は「海が初球から行ってくれて気分的にも楽になった。海の勇気が後押ししてくれた」と走者植田の決死の盗塁がパワーになったと振り返った。 脳腫瘍からの復帰を目指してきた同期入団の横田が現役引退を決意。巨人とのファイナルステージに向けて梅野は「あいつのためにも自分たちのやっているものを少しでも長く見せたい」と熱く語った。 ▽阪神植田(8回、代走で二盗&犠飛で勝ち越しの生還)「代走で行った時に1アウトだったので、なるべく初球(でスタートを)切れるようにと。(飛球は)十分くらいの飛距離かなと思った。(次戦は)いつでもいける準備はしている。頑張ります」

◆下克上や! 阪神がDeNAとの接戦を制し、2勝1敗で5年ぶりのCSファイナルステージ進出を果たした。阪神藤川球児投手(39)が1点リードの8回から登板。今季2度目の「またぎ」となったが、DeNAの強力打線を1四球無安打無失点に抑え、最後を締めた。シーズン奇跡の6連勝フィニッシュに続き、驚異的な底力を発揮。9日から日本シリーズ進出をかけ、巨人と東京ドームで対戦する。どしゃ降りの雨に、マウンドはぬかるんでいた。それでも藤川は集中力を切らさない。勝利を信じたスタンドのファンを思った。「最後まで雨が降っていたけど、ずぶぬれになりながら、たくさんのファンが『今日で野球が終わってほしくない』と思っていたと思う」。9回2死一塁。打席に迎えたのは、6日にサヨナラ本塁打を放った乙坂。内角フォークで詰まらせると、打球は守護神の前に転がった。一塁へ送球。ゲームセットの歓声の中で、ぐっと力強く拳を握った。 悪天候でも鉄壁のリリーフ陣は崩れず、藤川にバトンをつないだ。1点リードの8回から登板。6月9日日本ハム戦(甲子園)以来、今季2度目の回またぎに燃えた。上位打線との対戦で、最もプレッシャーのかかる2イニング。矢野監督は1点を先制した時点で、勝負の局面で藤川に委ねることを決めていた。引き分けでもファイナルには進めない。矢野監督は「うちは同点でもダメなんで。球児には申し訳ないけど、行ききるというか。それぐらいの信頼がもちろん、間違いなくある」と強調した。8回を3者凡退に抑え、9回もロペスに四球を与えただけ。無安打無失点で攻めの起用に応えた。 指揮官との絆が藤川の原動力だ。シーズン中、リリーフ陣が打たれても、四球を出しても、矢野監督は何も言わなかった。簡単なことではない。藤川は言う。「とがめないというか、全くなかった。ピッチャーがマウンド上で、100%の力を出していい、ということになる。これはすごいこと」。初戦で打たれた島本も、2戦目で打たれた岩崎も、この日リベンジの場をもらい、懸命に腕を振った。全幅の信頼に意気を感じて、ブルペンからマウンドに上がる。 そして最後を藤川が締めた。「守るものがないのが強い。監督の采配を見ても、攻める気持ちで行けています」。絆が作ったリーグトップの安定感は、CSでも揺るがない。17年のCSファーストステージ第2戦。甲子園での一戦は、泥にまみれた乱打戦の末に敗れた。雨中の死闘を制し、DeNAにリベンジ。さあ、5年ぶりのファイナル進出。東京ドームのG倒で下克上の完結だ。【磯綾乃】

◆阪神(3位)がクライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージでDeNA(2位)を破り、14年以来2度目のファイナルステージ進出をつかみ取った。 9日からリーグ優勝した巨人と日本シリーズを懸けて争う。 矢野燿大監督の一問一答は以下の通り。 -選手を信じた 俺はもうそれしかできへんし、1人1人の気持ちがつながっている感じがして見ていてうれしい。何が起ころうが俺のなかでは受け止められるような部分では戦ってくれている気持ちがこっちには伝わっている。 -守るものがない気持ちを選手が体現した 本当にそう。自分の思ってるよりもさらにその上のものというか気持ちを。俺もずっと一番大事にしたいなということを。みんながそれ以上のことをやってくれている。本当に素晴らしい。誇りに思います。 -藤川が2回を投げた 足も、こんな滑るなかとか。すごく厳しい条件のなかで球児らしく。行ってくれました。 -岩崎もやり返した シマ(島本)だって第1戦やられて、今日、2イニングしっかりやり返してくれた。優(岩崎)だって。昨日ああいう形になって、またマウンドでも。最後まで粘り強く投げてくれて。ドリスだって、あの場面で3-2まで行った時点で、どうなるかと思うけどしっかり三振取ってくれた。リュウ(梅野)だって、あのワンバウンドを止めたのは、めちゃくちゃすごい。言い出したら、みんな。本当に1人で勝てるような試合じゃない。本当にウチの戦いを、この3試合できた。

◆下克上や! 阪神がDeNAとの接戦を制し、2勝1敗で5年ぶりのCSファイナルステージ進出を果たした。 8回に代走の植田海内野手(23)が決勝点のホームを踏むなど、矢野燿大監督(50)の采配が的中。シーズン奇跡の6連勝フィニッシュに続き、驚異的な底力を発揮した。9日から日本シリーズ進出をかけ、巨人と東京ドームで対戦する。攻める鬼と化した。阪神矢野燿大監督(50)は敵の弱点を突く。同点に追いつかれた直後の8回、大胆に動いた。 マウンドは決してクイックが巧みでないエスコバーだ。1死後、高山が死球で出塁すると俊足の代走植田を投入。梅野への初球だ。完全にモーションを盗み、二塁を陥れた。浮足立つ剛腕の暴投でさらに三塁へ。梅野の浅い中堅への飛球でも勝ち越しの生還。韋駄天(いだてん)の面目躍如だった。 雨中の大熱戦は1球も息つく間がなかった。矢野監督も放心状態だ。「こんな試合をしてくれて、スゴイなあ。うちの選手。(植田)海の足で取った1点。昨日もアウトになっているのに仕掛けるのもスゴイ」。伏線はプレーボールの2時間半ほど前にあった。練習前、矢野監督に声を掛けられた。「今日もスタートどんどん行っていいからな!」。荷は軽くなった。前日6日は1点を追う7回、代走で二盗に失敗していた。汚名返上の二盗になった。今季はリーグ最多のチーム100盗塁。3桁は03年以来、16年ぶり。今季12盗塁を記録した脅威の足が大一番で光った。 率先垂範して、選手を乗せるタイプの指揮官だ。人心掌握のヒントは書籍にも求める。「小説は読まないんだよね」。もっぱら、リーダー論やビジネス書を読みあさるという。松下幸之助、孫正義...。100冊ほど読破する。喜怒哀楽をあらわに戦う。あえて意識して振る舞う部分もあるだろう。あるとき、こう言う。「手本7、8割。信頼2、3割」。上司が部下を導く考え方の1つ。真っ先に自ら手本を示し、そして心を寄せる。ベンチでガッツポーズ、笑顔...。あるべき姿を体現して阪神を変えた。 よく笑うのも、根拠がある。「笑いは究極のパワーやからな。楽しくやると筋肉が緩む。筋肉が緩むと脳も喜ぶ」。力なき者は淘汰(とうた)される厳しい世界だ。それでも笑いの力を信じる。こうも言う。「フクソウとヒンソウって知ってるか?」。顔つきの話だった。福相と貧相。眉間にしわを寄せていては幸せは巡ってこない。この日も薄氷の戦いを制した。最後は笑顔で運を引き寄せた。【酒井俊作】 ▼阪神が14年以来2度目のファイナルS進出を決めた。プレーオフ、CSで3位チームのファイナルS進出は両リーグ16度目で、セ・リーグは4年連続7度目。過去に3位で出場した時の阪神は07、15年とも1Sで敗退しており、3位からは球団初のファイナルS進出だ。3位からファイナルSに出場した過去15度のうち日本シリーズに進出できたのは10年ロッテと17年DeNAだけ。公式戦の阪神は69勝68敗1分けで、貯金1以下のチームが日本シリーズに出場したことはないが、今年の阪神はどうか。

◆雨を裂いた。阪神が、DeNAを競り落としてクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージを突破した。同点の8回、梅野が犠飛を放って勝ち越すと藤川球児投手(39)が登板。雨脚が強まる中で集中を切らさず、2回を無失点に封じて逃げ切った。ペナントレース最終盤に6連勝でAクラス入りを決めた勢いを、短期決戦で遺憾なく発揮。5年ぶりに進出するCSファイナルステージ(9日開幕、東京ドーム)で巨人と対戦する。 懸命につないだバトンを、藤川が受け取った。「最後まで雨が降っていたけど、ずぶぬれになりながら、たくさんのファンが『今日で野球が終わってほしくない』と思っていたと思う」。どしゃぶりの雨。ぬかるんで滑るマウンド。あの時の光景がよぎる。17年のCSファーストステージ第2戦。甲子園での一戦は、泥にまみれた乱打戦の末に敗れた。 青の敵地で悔しさを晴らすときが来た。9回2死一塁。打席は、前日サヨナラ本塁打を放った乙坂。フォークボールで詰まらせると、打球は藤川の前に転がった。ゲームセットの歓声の中で、ぐっと力強く拳を握った。 執念継投の最後を締めた。1点リードの8回から登板。6月9日の日本ハム戦(甲子園)以来、2度目の回またぎで燃えた。最もプレッシャーのかかった2イニング。矢野監督は1-0の時点で、藤川に委ねることを決めていた。1-1になっても藤川。矢野監督は「うちは同点でもだめなんで。球児には申し訳ないけど、行ききるというか。それぐらいの信頼がもちろん、間違いなくある」と強調した。 レギュラーシーズン中、リリーフが打たれても、四球を出しても、矢野監督は何も言わなかった。「とがめないというか、全くなかった。ピッチャーがマウンド上で、100%の力を出していいということになる。これはすごいこと」。藤川は、矢野監督と投手陣の確かな信頼関係を感じ取っていた。 「守るものがないのが強い。監督の采配を見ても、攻める気持ちで行けています」。絆が作ったリーグトップの安定感は揺るがない。宿敵巨人が相手でも最後まで守り抜く。【磯綾乃】

◆阪神・高橋遥人投手(25)が7日のDeNAとのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦(横浜)に先発し、3回1安打無失点で降板した。  初めてのCS登板で役割を果たした。許した安打はわずか1本。一回1死からソトに右前打を浴びたが、筒香を遊ゴロ併殺に仕留めて無失点。二、三回は走者を一人も出さない完璧な投球で主導権を渡さなかった。好投を続けていたが、四回2死一、二塁で打席が回ってきたため代打が送られ交代となった。  今季は5月から先発ローテーションに定着し3勝(9敗)。9月は先発した3戦で0勝3敗、防御率11・07と苦しんだ。それでも前回登板の29日の中日戦(甲子園)では2番手で二回途中を無失点と光明も。ファイナルS進出に向けて勝つしかない一戦で、きっちりと結果を残した。

◆阪神が7日のDeNAとのクライマックス・シリーズファーストステージ第3戦(横浜)で待望の先制点を奪った。  0-0の六回、先頭の高山が左中間を突破する二塁打で出塁。梅野の犠打で1死三塁とし、打席にはこの日2安打の木浪。その初球、153キロ直球がワンバウンド。捕手・伊藤も止めることができず、高山がスライディングで生還。このシリーズ3試合目で、初めて先制点を奪った。

◆クライマックスシリーズ(CS)初登板だった阪神の高橋遥は3回1安打無失点。150キロ超もあった速球は威力があり、四死球もなし。「しっかりバトンをつなげられるように」と話していたサウスポーは「任されたイニングをしっかり0点で抑えることができて良かった」と話した。  一回は1死からソトに右前に運ばれたものの、筒香を遊ゴロ併殺打に仕留めた。二、三回は出塁を許さず、四回表の好機で代打を送られた。  2年目の今季は19試合に登板と飛躍したが、9月は精彩を欠いた。その中でチームは逆転でCSに進み「青柳さんも西さんも責任を持って投げていた。格好いいなと思って見ていた。僕は大事な時に抑えられなかったので、打たれた時のことを生かしていきたい」。強い思いで奮闘した大一番での経験はきっと今後に生きるはずだ。

◆DeNA先発の平良は3回2/3を無失点にしのぎ「大胆に攻めることができ、また冷静な投球もでき、持っているものを出せた」と納得の様子だった。  8月9日を最後に白星がなく、自身4連敗でレギュラーシーズンを終えた。だが、CSで抜てきしたラミレス監督の期待に「しっかり腕を振ることを意識して試合に入った」と一回から飛ばした。三回は1死二塁から福留、マルテを連続三振に仕留めるなど毎回走者を背負いながらも粘りの投球。四回2死一、二塁で降板したが、存在感を示した。

◆阪神・北條史也内野手(25)が7日のDeNAとのクライマックスシリーズファーストステージ第3戦(横浜)の七回1死満塁で三ゴロをファンブル。痛恨の適時失策で1-1と追いつかれた。  3番手・岩崎の2イニング目となった七回。先頭のソトに中前打、1死後ロペスに四球、宮崎に左前打で1死満塁のピンチを背負った。打席に伊藤光を迎え、1ボールからの2球目。三塁への強めのゴロを北條がはじき、後逸。あわてて処理しようと試みるも捕球しきれず、三走の生還を許してしまった。岩崎はここで降板した。

◆阪神・梅野隆太郎捕手(28)が7日のDeNAとのクライマックスシリーズ・ファーストステージ第3戦(横浜)の八回1死三塁で勝ち越しの中犠飛を放った。  1-1の八回。1死から高山が死球で出塁すると、代走・植田が起用された。続く梅野の打席の初球で二盗成功。さらに5球目が暴投となり1死三塁と進塁すると、梅野がきっちりと役割を果たした。カウント2-2からの7球目を振り抜いて浅めの中飛に。植田が快足で本塁に生還し、勝ち越しに成功した。

◆レギュラーシーズン3位の阪神は2位のDeNAに1-2で競り勝ち、2勝1敗で5年ぶりのファイナルステージ進出を決めた。阪神は9日から東京ドームでセ・リーグ王者の巨人とファイナルステージ(6試合制、巨人に1勝のアドバンテージ)を戦う。  阪神は、第1戦で6点差をひっくり返しての大逆転勝ちで王手をかけていたが、第2戦でサヨナラ負け。引き分けすら許されない一戦だった。  0-0の六回、先頭の高山が左中間フェンス直撃の二塁打。続く梅野の犠打で1死三塁とし、打席にはこの日2安打の木浪。その初球、DeNAの3番手・国吉の153キロ直球がワンバウンド。捕手・伊藤も止めることができず、三走・高山が先制のホームを踏んだが、七回1死満塁で打者・伊藤光の三ゴロを三塁手・北條がファンブル。痛恨の適時失策で同点とされた。  しかし八回、1死から高山が死球で出塁すると、矢野監督は代走・植田を起用。続く梅野の打席の初球で二盗成功。さらに5球目が暴投となり1死三塁と進塁すると、梅野がきっちりと役割を果たして中犠飛をマーク。植田が快足を飛ばして生還し、無安打での勝ち越しに成功。1点のリードを守り切り、3位から下剋上で宿敵巨人が待つ東京行きのチケットをつかんだ。  勝ち越しのホームを踏んだ植田はヒーロインタビューで、盗塁について「初球いこうと思っていたんで、いい感じに決まりました。昨日やられてたんで、絶対やり返したるという気持ちで走りました」と振り返り、「(チーム全体が)すごく雰囲気がいいと思うので、絶対にジャイアンツに勝って、日本シリーズに行きたいと思います!」と虎党に誓った。

◆セ・リーグ3位の阪神が7日、同2位のDeNAとのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦(横浜)を2-1で勝利。2勝1敗でステージ突破を決めた。  六回に相手暴投で1点を先制したが、七回1死満塁で北條が三ゴロをファンブル。痛恨の適時失策で1-1と追いつかれた。八回1死三塁で梅野の中犠飛で勝ち越し。その裏から登板した守護神・藤川が2回を無安打無失点に抑える気迫の投球で、最少リードを守り切った。  阪神は2017年のCSファーストSはリーグ2位で進出し、同じDeNA相手に甲子園で第1戦を勝利しながらも、雨の中で2連敗を喫して敗退。この日も横浜スタジアムは試合途中から雨が降ったが、阪神が2年越しの雪辱を果たした。  今季限りでの退団が決まっている鳥谷は四回、代打で今CS初出場し、四球で出塁。9日からのCSファイナルステージで東京ドームに乗り込んで巨人と対戦する。

◆運命の3戦目。ハマスタに大歓声が交錯したのは四回表。好投する高橋遥に代えて代打・鳥谷。これがタテジマ最後かも...。虎党は叫ぶ。祈る。するとDeNA2番手は2日前の先発・石田。矢野、ラミレス両監督の総力タクトが超短期決戦の"明日なき"ムードを盛り上げる。  その鳥谷が映るテレビ画面に向かって、大阪・難波のサンスポ編集局で身勝手な予想が飛び交う。まずは部長・大澤謙一郎。  「四球ですよ」  大当たり。自慢げにハマスタの記者席にLINEしてきた。頼みもしないのに。どんな状況でも選球眼は狂わない鳥谷が立派なだけなのに。  六回1死三塁。今度は局次長・生頼秀基だ。  「木浪、スクイズしろ!」  すると、またしても大澤が「暴投ですよ」。これも的中。そんな運、週末の競馬に残しておけばいいのに。  全国の虎党が手に汗握った夜は、特別な日になった。金田正一さんの訃報。ハマスタでも試合前、両軍がベンチ前に整列して、目を閉じた。  「僕は世代的にも投げている金田さんの印象はなく、むしろご意見番として言いたい放題のイメージですね。ただ、通算400勝はじめ、とてつもない数字を残されたことは分かっています」  生頼や大澤の無責任な予想を横目に聞きながら、当番デスク・野下俊晴は正真正銘のレジェンドに思いをはせていた。  6日夜から、ニュース映像で何度も流れていたのが「トレーバー顔面キック事件」。1991年5月19日、秋田で行われたロッテ-近鉄。死球に激高した近鉄の助っ人は相手投手を外野まで追いかけ回す。近鉄の選手数人が追いついて、羽交い締めにして、三塁側ベンチに連れて帰る。  だがそこで、猛牛ナインは油断した。羽交い締めの手を緩めた途端、トレーバーはロッテベンチに猛突進。が、途中でつまずいた。そこに、金田監督のキックが。  実はあの日、ロッテ担当の大先輩記者は「電車の時間がある」と帰ってしまった。近鉄担当の筆者がなぜか、ロッテ宿舎でカネやんを直撃することに。すると...。  「プロ野球は、このぐらいでないとアカン。ファンも喜んでたか? お前さんたちも元気が大事だぞ」  何が「このぐらい」なのか分からなかったが、なぜか、妙に納得したものだ。胸を張るレジェンドには説得力があった。暴力は絶対ダメなんだけれど。  この日午前、サブキャップ長友孝輔は体調が優れず、横浜市内の耳鼻咽喉科に飛び込んだ。狭い診察室。前の患者さんと話すドクターの声が漏れてきた。聞いちゃいけないが、聞こえてきた。  「2年前も、日本シリーズまで行ったものだから、声の出し過ぎで喉を痛めた患者さんが多かった。あなたもそうです。ことしもですねぇ」  2年前...。雨中のCSがあった。DeNAがシーズン3位から下克上で日本シリーズまで駆け上がり、横浜のファンが声をからしたために、耳鼻咽喉科が"大繁盛"してしまったらしい。  ことし、雨中の死闘を制したのは阪神だった。さあ、東京ドームへ。奇跡の道は続く。虎党大声援もまだまだ続く。声がかれるファンが出てくるはず。関西の耳鼻咽喉科の先生、よろしくお願いします。

◆--最後の1球までわからなかった  矢野監督 「もうね、こんな試合してくれて。すごいなぁと思いながら、うちの選手」  --植田の代走は迷いなく  「いつも迷いないやんけ。いつものうちの野球やろ。特別なことしていないやん」  --選手を信じて  「俺はもうそれしかできへんし、1人1人の気持ちがつながっている感じがして、そういうのが見ててうれしいし。何が起ころうが、俺の中では受け止められる。戦っている気持ちがこっちには伝わっているから」  --守るものがないというのを選手が体現した  「そうそう、ホントにそう。選手たちが自分の思っているよりも、さらに上の気持ちを(出した)。俺もずっとそういうことを(期待していた)。一番、大事にしたいなということを。ホントに素晴らしい。誇りに思います」  --藤川が2イニング  「こっちとしては思っていたところで行って(くれて)。足もこんな滑る中、すごく厳しい条件の中でね」  --岩崎も2イニング目の続投  「島本だって、第1戦やられて、きょう2イニングしっかりやり返してくれたし。優(岩崎)だって、きのうもああいう形になってのマウンドで、粘り強く最後まで投げてくれて。ドリスもあの場面で(カウント)3-2まで行ってどうなるかと思うけど、しっかり三振とってくれて。もう言い出したら、みんなやね。本当に一人で勝てるような試合じゃないからさ。この3試合、本当にウチの戦いというのができたと思います」  --想像を上回る成長を見せている  「(CSが)始まる前に言ったけど、ウチは現状では強いチームにはなれていない。だからこそチーム全員で戦うとか、気持ちの部分でカバーできるところというのが、ウチの強みだと思うから。(高山)俊のデッドボールとかも痛かったやろうけど、喜んでいるし。もう一個一個、なんか(脳裏にプレーが)浮かんでくる」

◆よっしゃア!! 2019年秋、『虎の奇跡、第2章』の始まりやー!!  雨中のマウンドをまるで楽しむように、イニングまたぎでDeNA打線を封じ込んだ藤川球児。男や、素敵や、またほれ直したわ!!  エラーで追い付かれ、なお1死満塁のピンチでドリスが踏んばった。ハラハラ、ドキドキは今季の阪神、そのものや~。  そして八回、代走・植田の盗塁からの、梅野の犠飛。これも矢野阪神やわー!  さあ、いよいよ、優勝チームの巨人さんとの戦いです。正直、3位チームが日本一になれるシステムは釈然としないけど...。例えば、ファーストステージは2位にアドバンテージ『1』、ファイナルステージは優勝チームに『3』。要するに、下位のチームは1敗で即サヨナラにして、優勝チームに最大の敬意を払うべきでは?  と言いつつ、ルールはルール。巨人さん、倒させていただきます!! と高らかに声を上げたけど、ペナント終盤から藤川、岩崎、島本、ドリス、ガルシア、守屋、能見の中継ぎ陣は連投のしすぎで残業違反!?(ジョンソンは妻の出産でいないし)。こーなったら、虎の先発陣、最後の意地を見せるしかないでェ!!

◆3度目のCSで初のファーストステージ敗退。ラミレス監督は「ベストを尽くし、ベストな選手でこういう結果になった。何も恥じることはない」と気丈に振る舞った。今CSでは今永を救援に回し、シーズン終盤は中継ぎだった石田、故障離脱していた浜口、不調だった平良を先発に起用。3投手は期待に応えたが、この日は2つの暴投が2失点に絡んだ。過去2度のCSで『短期決戦の鬼』と称された采配も空回りし、下克上の夢は雨中の激闘に散った。

◆前日6日にサヨナラ弾を浴びた岩崎は3番手で登板。六回こそ三者凡退に仕留めたが、七回は雨で滑るマウンドにも苦しんで1死満塁とし、北條の失策で1失点。ここでマウンドをドリスに譲った。「イニングをまっとうできたら良かったが、助けてもらった」と仲間に感謝しきり。金村投手コーチは「1回1/3とか2/3で代える予定だったが、監督が『きのうのリベンジをさせよう』と」と続投の意図を説明した。

◆島本が初戦のリベンジを果たした。0-0の四回から2番手で登板。第1戦では1回4失点と炎上したが、2回1安打無失点に抑えてみせた。「初戦で点を取られていたので、絶対にやり返そうと思った。抑えられてよかったです」。今季チーム最多63試合に登板し、堂々の防御率1・67という結果を残した育成出身左腕。最後までフル稼働する。

◆先発した高橋遥は3回1安打無失点と、試合を作った。「任されたイニングをしっかり0点で抑えることができて、よかったです」。一回1死からソトに右前打を許したが、筒香を遊ゴロ併殺に仕留めると、その後は二、三回と三者凡退。8月以降は1勝7敗と苦しんだが、大一番で殻を破る快投を見せ、ファイナルステージへ向けて、期待を抱かせた。

◆絶体絶命のピンチを救ったはドリスだ。岩崎が塁を埋め、北條の失策で1-1の同点とされた直後の七回1死満塁で救援。「状況が状況だった。思い切って強い球を投げようと思った」。一時はカウント3-1となり、敵地はお祭り騒ぎだったがフルカウントから柴田をフォークで空振り三振。続く代打佐野もフォークで中飛に斬った。力のこもった12球で第1戦に続いて勝利投手に。北條も岩崎もチームも救い「野球だからエラーはもちろんある。助け合いだ」と胸を張った。

◆ほんの一瞬も止まっていなかった。羽が生え、将に背中を押されたように塁上を駆け回り「代走・植田」が決勝のホームインだ。矢野監督の勝負手がズバリ決まった。  「思いきり走りました。(代走に)行く前から初球で行こうと思っていたんで。いい感じに決まりましたね」  DeNAナインがうなだれながら引き揚げた直後のグラウンド。雨が降りしきるヒーローインタビューで、はにかんだ。  ドリスが絶体絶命のピンチをしのいだ直後、高山が四球で出塁した八回1死で一走に送り込まれた。ナインが、虎党が、息をのむ間もなく、行った。エスコバーが梅野に投じた1球目で二盗に成功。暴投で三進し、そして梅野の中犠飛で生還。定位置より前方の飛球だったが「飛距離十分な打球を打ってくれたので、楽にかえらせてもらいました」と事もなげ。梅野の打席の7球で完結。これぞスペシャリストの仕事だ。  前日6日、第2戦では1点を追う七回に二盗に失敗した。一夜明け、負ければシーズンが終わる一戦を迎えて、しかも出番は終盤。普通の若者なら足がすくむ。だが、背中を押してくれる人がいた。試合前のことだ。  「練習中に(矢野)監督から『きょうも走っていいから』と。『思い切っていけ』と言われていた。ありがたいです。楽な気持ちでスタートできました」  チームの命運を背負っても、足取りは軽かった。指揮官も「(植田)海の足で取った1点やしね。きのうもアウトになっているのに、ああいうふうに仕掛けるっていうのもすごい」と激賞だ。  「すごく雰囲気、いいと思うんで。絶対にジャイアンツに勝って、日本シリーズへ行きたいと思います」  ヒーローインタビューの最後、植田は左翼席の黄色いレインコートの一団と、全国の虎党に誓った。このままセ界をぶっちぎる。 (長友孝輔) 代走で出て二盗を決め、決勝のホームを踏んだ植田について阪神・清水ヘッドコーチ 「あんなの初球に決められるか? 感動ものだよ。準備ができていた」

◆弟分"たち"からもらった勇気をバットに込め、のどから手が出るほどほしかった1点につなげた。ふーっと息をはき、外角直球に梅野が体を倒しながら食らいつく。打球は中堅への浅い飛球。それでも三走・植田がホームを踏んで勝ち越した。雨中の激闘を泥にまみれてモノにした。  「海(植田)がね、初球から(盗塁を)いってくれたことで、自分自身も気持ち的に楽になった。海の勇気が後押ししてくれました」  1-1の八回1死から代走・植田が初球で盗塁を決め、その後、暴投で三進した。ここでやらなきゃ男がすたる。エスコバーの152キロを弾き返し、値千金の勝ち越し犠飛。守りの要としても、岩崎の後を受けたドリスのワンバウンドするフォークを何度も体で止めた。  イニングまたぎの藤川とも「抑えの配球より、2回あったので打者によって偏りなく、奥行きの緩急も1球1球、球児さんも丁寧に投げてくれた」とコミュニケーションを取って修羅場を乗り切った。負けられない。脳腫瘍からの復帰を目指すも、今季限りで無念の現役引退を選択した横田のために-。  2014年の同期入団だった。同じ九州出身とあって、かわいがってきた。9月26日の2軍戦での引退試合を観戦し、自ら騎馬を作って旅立ちを祝った。人目もはばからず、涙も流した。  「横田がね、ああいう形で引退して...。試合中もそういうことを思いながらやっていた。あいつのためにも、1日でも長く自分たちがやっている野球をみながら、思うもんがあると思う」  一人じゃない。遠く離れた場所にも、虎の勝利を願う仲間がいる。その思いが力になる。  「本当に苦しんで勝ち抜いた。ベイスターズの分までという気持ちで戦っていきたい。チームの勢いもある。そのまま持っていけるように」  最高の奇跡を横田に届ける。9日からのファイナルステージも、勝つばい! (新里公章) 適時打なしで2点を奪った打線について阪神・浜中打撃コーチ 「リュウ(梅野)がいいところでね。エスコバーも速いんだけど。うちらしい守備で勝ってくれた。次のステージにもいい形で入っていけます」

◆CS初スタメンとなった木浪が3安打猛打賞。六回の打席では暴投を誘って!? 先制点を呼び込むなど、戦前に矢野監督が指名した通りに、ラッキーボーイとなった。  「久々のスタメンで絶対に勝たないといけなくて、気持ちも入りました。そこで結果が出て、よかったです」  2打数2安打で迎えた六回。1死三塁で打席に入ると、マウンドの国吉へのプレッシャーは明らか。初球が木浪の足もとをエグる大暴投で、三走・高山を生還させた。勝ち越した直後の八回2死からは、打球が一塁ベースに当たって大きく跳ねて右前二塁打に。最後までツキまくった。  CS3戦で7打数5安打と大当たり。「結果が出ることはいいことなので、継続できるようにしたいです」と胸を張り、東京行きのバスに乗った。

◆まだまだ一緒に戦うゾ! 阪神・鳥谷敬内野手(38)が7日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦・DeNA戦(横浜)の四回、代打でシリーズ初出場。得点にはつながらなかったが、四球を選んでチャンスを拡大した。今季限りでの退団を表明しているが、ファイナルステージ進出を決めたことで、もうしばらく雄姿を見られることになった。  青一色の横浜が、熱く黄色に染まった。雨粒に表情が揺らぐことなんて、ない。この姿を見られることが、みんなの幸せだ。鳥谷が今回のCSで初出場。引き分けでも終戦という緊張感あふれる大舞台でも、鳥谷らしさは変わらなかった。  「俺はいいから」  クールに振り返り、バスへと乗り込んだ。  四回2死一、二塁に代打で登場すると3球連続ボールの後、2球を見逃し。フルカウントからの6球目も冷静に見切って四球を選び、満塁に好機を広げた。レギュラーシーズンで歴代14位となる1046四球を記録。好球必打を貫いてきた鳥谷らしさが、一打席に詰まっていた。  8月29日に球団から引退勧告。31日に「タイガースでユニホームを着てやるのは今シーズンで最後」と退団を明言した。終戦すれば即、「虎の鳥谷」ではなくなる。左翼席からは涙まじりの声援が飛び、鳥谷の背中を押した。  チームは暴投などが絡むラッキーもあり、5年ぶりのファイナルステージ進出を決めた。それは鳥谷にとっても、虎戦士でいられる時間が長くなるということ。虎党にとっては一瞬一秒、鳥谷を見ていられる時間が幸せだ。そんな幸運を呼び込む"黄色"は、確かに横浜にあった。  4月22日の月曜日。横浜遠征に向かおうと、鳥谷が新大阪で新幹線を待っているときだった。なんと真後ろに「ドクターイエロー」が停車。新幹線の電気設備や信号設備を検査するための特殊車両だが、見ることができれば幸運とされている"幸せの黄色い列車"だ。意味を伝え聞くと「そういうのはそのときに教えてくれよ」と破顔一笑。「『黄色い、こんな列車があるんだ』と思ったわ。ラッキーとかは思わないけど」。ベンチスタートが続く春先の横浜にこそ、幸運を運んでくれる"吉兆"があった。  「虎の鳥谷」を見られるのは日本シリーズも含めて最大13試合。頂上決戦まで進めばもう一度、甲子園に帰ってくる。幸せも思い出もありったけ持って、東京に行く。 (竹村岳)

◆奇跡は続く! セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ最終第3戦(横浜)が7日に行われ、レギュラーシーズン3位の阪神が2位DeNAに2-1で競り勝ち、5年ぶり2度目のファイナルステージ(9日開幕)進出を決めた。藤川球児投手(39)が八回から登板し、イニングまたぎで仁王立ち。ベイの反撃を封じ込めた。  雨中の激闘を締めくくると、右拳を握り、うなずいた。守護神・藤川が接戦を締めくくる執念のイニングまたぎ。2回無安打無失点で、ファイナルステージに進むための2勝目をつかみ取った。  「みんなでつないで、その最後を任せてもらった。ファンのこともあるし、何とかして監督、コーチ、みんなを東京に連れていきたかった」  七回までに島本、岩崎、ドリスと中継ぎを投入。八回に1点を勝ち越すと、矢野監督の腹は決まった。藤川を八回から投入-。2回を投げるのは6月9日の日本ハム戦(甲子園)以来の"禁じ手"。指揮官が「行くしかない。ウチは同点でもダメ。球児には申し訳ないけど、行ききるというか。それぐらいの信頼が間違いなくある」と意図を明かせば、結果で応えた藤川も「守るものがないのが強み。監督の采配を見てもそう。攻める気持ちで臨めている」とうなずいた。  チームは2017年以来のCS。シリーズ史上最大の"泥試合"となった2年前の甲子園同様、この日の横浜にも強い雨が降ったり止んだり...。八回は難なく三者凡退。九回は雨が強まった。1死となってロペスに四球を出したあと、足場に土を足すために中断。「大事な場面だった。ありがたいですね」。仕切り直して宮崎を一飛。前日、サヨナラ弾の代打・乙坂は投ゴロに打ち取り、ゲームセット。笑顔でガッツポーズを作った。  2年前のリベンジとなったが、矢野監督は「俺らの頭にないわ。目の前でいっぱいいっぱい」。奇跡のCS進出からさらに次のステージに駒を進めた選手らに「こんな試合してくれて、すごいなぁと思いながら、ウチの選手」と目を細めた。  今季も松坂世代の同級生が次々と引退した。館山(ヤクルト)、永川(広島)、実松(日本ハム)...。藤川は「年齢で野球をやっているわけではない」と常々話すが、今もなお輝き続ける背景には、徹底した研究と分析がある。自らの投球に関するデータを3カ月ごとに集めて、細かくチェック。「これはよかった、悪かったとか、配球とか」。インプットしたデータをもとに独自でシチュエーションを設定して、打者を思い浮かべて"対戦"する。「この場面だったら丸(巨人)。これなら坂本(巨人)かな」。暇さえあれば脳内で勝負を繰り返し、実際の試合に備え続ける日々だ。  「せっかく楽しいシーズンなので、きょうで終わることがないように。できるだけ長く最後までいけたらいいですね」  9日からは、いよいよ宿敵巨人の本拠地・東京ドームに乗り込む。頼もしすぎるブルペン陣が力を合わせて、一戦必勝でG倒へ挑む。 (箭内桃子) 接戦を制したことに阪神・福留 「若い選手がこれから成長するためにいい機会になればいい」 この日は4打数無安打だった阪神・近本 「めちゃくちゃうれしいです。それだけです」 ★2017年のCSファーストステージVTR  2位阪神は3位DeNAを甲子園で迎え撃った。10月14日の第1戦は福留の決勝2ランで2-0で先勝。翌15日は雨で試合開始が1時間3分も遅れた。世界最高の技術を誇る阪神園芸が何度も土を入れて整備したが、グラウンドはたっぷり水を含んだ最悪のコンディション。両軍とも随所にミスが出て、6-13で敗れた。16日の雨天中止を挟み、17日に行われた第3戦は先発・能見が0回1/3で3失点KO。1-6でファーストステージ敗退が決まった。

◆DeNA・筒香嘉智外野手(27)が、今オフにポスティングシステムを利用して米大リーグに挑戦することが7日、分かった。球団側も容認し、筒香はすでに有力エージェント会社「ワッサーマン」と契約したことも判明した。チームはこの日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで阪神に1-2で敗れて敗退。2年ぶり3度目のファイナルステージ進出を逃し、今季の全日程を終えた。昨オフにメジャーへの憧れを初めて公言したスラッガーが、夢を追う。  激しい雨が降る横浜の夜空を、筒香は悔しそうに見つめた。本拠地で迎えた終戦。「来年頼むぞ!!」の声も聞こえる中、険しい表情でロッカールームへと引き揚げた。その胸の内は固まっていた。夢のメジャー挑戦へ動く。  「筒香嘉智選手のポスティングをすることが球団として決定したので、ご報告させていただきます。主将で中心選手。球団として戦力としては非常に痛手ですが、小さい頃からの夢であるメジャーリーグに挑戦したいという気持ちを、かなえてあげたいということで決定に至りました」  試合後に三原一晃球団代表が記者会見し、筒香がこのオフにポスティングシステムを利用して大リーグに挑戦することを容認したと明かした。ポスティングでの米球界移籍なら球団初となる。  筒香は昨年11月30日、契約更改後の会見の席で、将来的なメジャーでのプレーを球団に希望したことを明かしていた。海外フリーエージェント(FA)権の取得は早くても2021年シーズン。当時は挑戦時期などには言及していなかった。  今年に入り、球団側と何度か相談。シーズン中のチームへの影響に配慮し、交渉は水面下で行われたが、三原代表は「内々にコミュニケーションを取っていた」と説明。レギュラーシーズン終了後に正式に容認する意向を伝えたという。  筒香は終戦したばかりとあって「僕自身も頭の中でしっかりと整理しながらやりたいですし、まだどうなるか分からない。相談したい方もいますし、それで決められたら」と話すにとどめた。ただ、試合後にはロッカールームで仲間に米挑戦する旨を明かした。  夢へと動き出している。筒香はすでにダルビッシュ(カブス)、前田(ドジャース)、NBAの八村(ウィザーズ)らが所属するエージェント会社「ワッサーマン」と契約していることも判明。同社はスタントン(ヤンキース)がマーリンズと契約更新する際に、北米プロスポーツ史上最高額(当時)の13年総額3億2500万ドル(約350億円)の契約をまとめた実績もある。米球界に太いコネクションを持つだけに、筒香にとっては大きな存在となりそうだ。  三原代表は、話し合いの中で「いつか現役選手として日本に帰ってくるなら必ず(DeNAに)声を掛けてほしい」と伝えると「うれしいです。必ず帰ってきます」と約束したことも明かした。  少年時代にテレビ中継で流れるヤンキース時代の松井秀喜や、ジャイアンツなどで通算762本塁打のバリー・ボンズの姿に心を躍らせていた筒香が、ついに海を渡る。 ★ワッサーマン  ユニバーサル・スタジオ元社長のルー・ワッサーマン氏の孫、ケイシー氏が1998年に設立した米国を代表する代理人事務所。野球、バスケットボール、サッカーなどのスター選手を抱える。大リーグではスタントン(ヤンキース)、NBAではウエストブルック(サンダー)、ゴルフではファウラーが所属。野球部門を率いる代理人はダルビッシュ(カブス)のジョエル・ウルフ氏、前田(ドジャース)のアダム・カッツ氏ら。マイクロソフトなど大企業のスポンサーシップも担う。 ★ポスティングシステム  プロ野球選手が海外FA資格取得前に米球界に移籍できる制度。日本野球機構(NPB)を通じて米大リーグ機構(MLB)に契約可能選手として通知される。17年オフまではNPB球団が2000万ドル(約21億4000万円)を上限に譲渡金の額を設定していたが、昨オフからは選手が結んだ契約金と年俸の総額によってNPB球団への譲渡金の額が決まる。出来高払いに対しても譲渡金が発生し、複数年契約の場合、年度ごとに15%がNPB球団へ支払われる。11月1日から12月5日までに申請することができ、交渉期間は30日間。

◆両軍の得点経過は暴投、失策、そして暴投絡みの犠飛...。しょせん、公式戦の貯金が「2」と「1」の戦い。実力通りの内容だったよ。  DeNAは七回、追いついて、なお一死満塁と一気に決めたい場面で、柴田が三振、佐野が中飛。振り回すばかりで、芸はないし、チーム打撃もできない。本塁打が出れば勝ち、出なければ負けるというチームカラーが、もろに出た。  逆に一発を望めない阪神は、ちょこまかと得点して、なんとかリリーフ陣がしのぐという、これまたシーズンそのままの試合運び。藤川が降雨の悪いコンディションで2イニングを任されたのも、特徴的だった。  まあ、広島が自力CS進出を逃し、オマケでもらったCS。ダメ元と開き直って、よく勝ち上がったと言ってあげよう。  さて、ファイナルだ。巨人にしたら、東京ドームで行う分、本塁打の少ない阪神の方が、やりやすいとは思う。ただし、競り上がってくると、妙なチーム力がつくこともあるから、要警戒。試合間隔が空いて、勝負カンが鈍っている危険性もある。よく指摘されることが、そのまま現象として起こるのもCS。面白くなるかもしれないね。(サンケイスポーツ専属評論家)

◆勝利の原動力は間違いなく投手力だ。先発の高橋遥、2番手・島本、3番手・岩崎。プレッシャーのかかる中で、自分の一番いい球を投げられる精神力は素晴らしい。2イニング目に失点した岩崎は、明らかにぬかるんだマウンドの影響で、責められない。大ピンチをしのいだドリスの粘りも褒めたい。  シーズン終盤、CSの戦いを通じて、阪神ナインが明らかに変わった点がある。追い込まれて強くなっている。前回登板で打たれながら、リベンジした島本が象徴的。前日、盗塁失敗の植田は八回、初球盗塁を決めた。これが決勝点に結びついている。苦しい状況をはね返す力を身につけている。負けられない状況での接戦が続く中で、選手が目に見えて成長していっているのが分かる。  勢いは感じる。が、3試合を目いっぱい戦った上での東京ドームでの巨人戦。有利とはお世辞でも言えない。  ただ、追い込まれて強いということは開き直りができている証拠。巨人相手に再び開き直れれば、面白い戦いができる。 (サンケイスポーツ専属評論家)

◆セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ最終第3戦(横浜)が7日に行われ、レギュラーシーズン3位の阪神が2位DeNAに2-1で競り勝ち、5年ぶり2度目のファイナルステージ(9日開幕)進出を決めた。  元巨人監督の堀内恒夫氏(71)はブログで、「阪神が勝ったね。激しい雨の中 最後までよくやったよ」とたたえた。「やっぱりさ 初戦のひっくり返したのが効いてんだろうなぁ」と勝因を挙げた。

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