阪神(☆3対2★)DeNA =リーグ戦4回戦(2020.07.10)・阪神甲子園球場=
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DeNA
100012401
阪神
30000X3702
勝利投手:青柳 晃洋(2勝1敗0S)
敗戦投手:大貫 晋一(0勝2敗0S)

本塁打
【DeNA】梶谷 隆幸(3号・1回表ソロ)
【阪神】近本 光司(2号・1回裏ソロ),大山 悠輔(3号・1回裏ソロ)

  DAZN
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◆阪神が降雨コールド勝ち。阪神は先制を許した直後の1回裏、近本の先頭打者本塁打で同点とする。その後も大山の本塁打が飛び出すなど、この回3点を挙げた。投げては、先発・青柳が5回2失点の好投で今季2勝目。敗れたDeNAは、先発・大貫が誤算だった。

◆阪神-DeNA4回戦が開催される甲子園は午後4時に開門した。客を入れて試合を実施する初日。観客はサーモグラフィーによる体温チェックを受け、1メートル以上の間隔を空けて入場。球場内のビジョンには試合観戦に関するお願いが映し出され、マスクの着用やこまめな消毒などが呼びかけられた。 また、内野グラウンドからファウルゾーンにかけて全面シートが敷かれていたが、午後4時過ぎにはがされ始めた。

◆両チームのスタメンが発表された。先発は阪神が青柳晃洋投手(26)で、DeNAが大貫晋一投手(26)。阪神は大山を3試合連続で4番に起用。現在3試合連続マルチ安打と好調の男が、チームを4連勝へと導けるか。左ふくらはぎの張りを訴えているマルテは、試合前練習では屋内でフリー打撃を行っていたが、この日もベンチスタートとなった。

◆甲子園にファンが戻ってきた! 有観客試合初日のこの日、甲子園は午後4時に開門した。試合が始まると、ファンは拍手やメガホンをたたいて選手に声援を送った。 阪神ファンの曽我部始さん(50代)と優子さん(40代)は、この日のために購入した阪神柄のマスクを着用。元々この日のチケットを持っていたが、ネットで再購入した際は約1時間ほど購入までに時間がかかったという。毎年6回ほど観戦。メガホンやジェット風船を使って応援していたが、新たな応援方法を事前に調べ、この日はジェット風船の絵と「勝つで」の文字が書かれた手作りボードを持参した。始さんは「やっと来たな、という感じです」と笑顔だった。 甲子園の年間シートを6年連続で買っていたという淀谷浩二さん(50代)は、今季ここまでの試合はテレビ観戦。「今日のチケットが発売されてすぐに買いました。中で買えるか分からないので、軽食を持ってきました。消毒や手洗いはこまめにしようと思います」と新型コロナウイルス感染予防もばっちり。淀谷さんとともに訪れた大高太治さん(43)は、阪神西勇のユニホームを着用。この日が初観戦で「静岡県出身で中日ファンだったんですが、大阪にずっと住んでいるのでみんなと楽しもうと思って、今年から阪神ファンになりました。めっちゃ楽しみにしていました」と心待ちにしていた。 阪神ボーアのユニホームを着た渡部裕之さん(54)「2、3週間前に買いました。キャンプでも見ていたし、ボーアにかけな仕方ないと思っていた。買うか正直迷いましたが...昨日打ったから着られました!」と急ぎ足で球場へ。誰もがこの日を待っていた。

◆早速有観客の力を発揮? 阪神とDeNAが有観客試合となった初日に、両軍が先頭打者アーチを放つという珍しい光景が生まれた。 まずはDeNAの1番梶谷だ。阪神の先発青柳の3球目、内角131キロカットボールを引っ張り、右翼席に先制ソロを放った。 その裏、阪神の1番近本も続いた。DeNAの先発大貫の3球目、内角低め129キロスプリットを右中間スタンドへ。"先頭打者アーチ返し"ですぐに同点に追いついた。近本も「打った瞬間は入るとは思わなかったですが、ファンの方の声援が打球を後押ししてくれたと思います」と球場に駆け付けたファンへ感謝した。 その後は2番糸原が三塁打を放ち、3番糸井の遊ゴロの間に逆転。さらに4番大山にも左翼への3号ソロが生まれた。有観客試合が始まった日の初回に3点を奪い、早くも打線爆発の予感を漂わせた。

◆阪神大山悠輔内野手(25)が、3試合連続の4番起用に応える豪快なアーチを放った。 近本の先頭打者アーチと糸井の内野ゴロの間に逆転し、2-1で迎えた1回の第1打席。1死走者なしで、DeNAの先発大貫の3球目、137キロカットボールを振りぬいた。打球は降りしきる雨を切り裂いて、まばらにファンが座る左翼スタンドへ。リードを広げる3号ソロになった。 「いい流れで回ってきたので、その流れに乗って打つことができました。ここからも気を引き締めて頑張ります」。 大山は5日の広島戦(マツダ)以来2試合ぶりの1発で、直近4試合では3発目。虎の和製大砲が量産態勢に入った。

◆阪神-DeNA戦は初回表に梶谷隆幸外野手、初回裏に近本光司外野手が先頭打者本塁打を放った。 両軍が初回先頭打者本塁打は19年6月21日、交流戦で荻野(ロッテ)と山田哲(ヤクルト)が打ち合って以来、プロ野球15度目。セ・リーグでは08年7月15日の荒木(中日)と高橋由(巨人)以来6度目。甲子園球場では78年6月7日の高木守(中日)と中村勝(阪神)に次いで2度目。

◆DeNA梶谷、阪神近本の1番打者が初回に先頭打者アーチを記録。阪神は4番大山の3号ソロなどでこの回3点を奪った。 5回表を終えて降雨中断。天候は回復せず5回コールドで試合終了。阪神は4連勝。先発青柳は今季2勝目を挙げた。敗れたDeNAは大貫が2敗目。

◆阪神が5回雨天コールドで連勝を4に伸ばした。先発青柳は初回、1番梶谷に先頭打者アーチを許したが、その裏に1番近本が"先頭打者アーチ返し"ですぐに同点に追いついた。さらに糸原が三塁打を放ち、糸井の遊ゴロの間に生還し勝ち越し。大山の3号ソロも飛び出して、試合を有利に進めた。 青柳は2点リードの5回、2死二塁から梶谷に左前適時打を許して1点差に詰め寄られた。雨は激しくなり、マウンド状況は厳しかったが、続くソトにインコースを攻め続け、最後は外角低めに沈んでいくスライダーで空振り三振。5回表のDeNAの攻撃が終わったところで試合が中断され、その後、雨天コールドが決まり、阪神に勝利をつかんだ。青柳は今季2勝目(1敗)。 この日から有観客試合となったプロ野球。降りしきる雨でも甲子園で応援し続けたファンに、忘れらない1勝を届けた。 矢野燿大監督にとっても忘れられない勝利。主なコメントは以下の通り。   -今日は忘れられない日になると言われていたが 矢野監督 初めてお客さんに入ってもらう試合で、また雨で5回で。本当に忘れられないですし、僕の一生の思い出に残る1勝かなと思います。 -ファンの存在は違う 矢野監督 そうですね。最後もあと1人のところで『青柳、頑張れ』という声がスタンドから。僕が座っているところ、そこでも声聞こえていましたし、やっぱりファンの人の声援は僕らの大きな力になるなと。今日はまだ制限ありますけど、それでも強く感じました。 -最後はどんな気持ちでファンにあいさつを 矢野監督 スタンドでずっと雨にぬれながら、最後までいてくれたファンに、最後、勝利の喜びを一緒に感じとれたのはうれしく思いますし、こんな大変な中、来てくれたことに感謝しています。

◆有観客第1号は「ハマの韋駄天(いだてん)」! DeNA梶谷が、阪神青柳から3号初回先頭打者本塁打を放った。生観戦を待ちわびたファンに、12球団で最初のホームランボールをプレゼントした。 絶好調のベテランが、青柳の3球目を完璧に捉えた。右翼席へ突き刺さる先頭弾を「グッドスイング! 最近、小手先のスイングになっていたので、しっかりトップを作りいいスイングができました」と冷静に振り返った。試合前からラミレス監督が「他のチームの1番と比べてもベストのリードオフマン」と評したように、第2打席に右前打。1点を追う5回2死二塁では「追い込まれていたので逆方向に打つよう意識していた」と、しぶとく左前に適時打。3打数3安打2打点の活躍で、打率は3割6分8厘まで跳ね上がり、出塁率4割6分9厘はチーム1位。指揮官も「アンビリーバボーな数字が並んでいる」と舌を巻く。 試合は5回降雨コールド負け。ラミレス監督は「自然現象なのでどうすることもできない。また明日しっかり」と切り替えた。試合のなかった巨人とは1・5ゲーム差に離れたが、頼もしい「ハマの韋駄天」がいる限り、簡単に勢いは止まらない。【鈴木正章】

◆DeNAは5回雨天コールドで連勝を逃した。 アレックス・ラミレス監督は3回無死一塁で桜井周斗投手が強攻して併殺打に倒れたことについて「バントのサインを出したが、彼が間違えた。ピッチングは悪くなかった。今年一番の投球をしてくれたかな」。

◆阪神が5回雨天コールドで連勝を4に伸ばした。矢野燿大監督の一問一答は以下の通り。 -忘れられない日になると言われていたが 初めてお客さんに入ってもらう試合で、また雨で5回で。本当に忘れられないですし、僕の一生の思い出に残る1勝かなと思います。 -ファンの存在は違う 最後もあと1人のところで『青柳、頑張れ』という声がスタンドから。僕が座っているところ、そこでも声聞こえていましたし、やっぱりファンの人の声援は僕らの大きな力になるなと。今日はまだ制限ありますけど、それでも強く感じました。 -最後はどんな気持ちでファンにあいさつを スタンドでずっと雨にぬれながら、最後までいてくれたファンに、最後、勝利の喜びを一緒に感じとれたのはうれしく思いますし、こんな大変な中、来てくれたことに感謝しています。 -5回守備中、ファンの拍手、手拍子もベンチで聞こえていた もちろん。そういう最後のひと押しってのは間違いなくあるし、そういうところでも、ファンに入ってもらえるってやっぱりすごいこと。初回の近本の(本塁打)で一気にムードが(高まった)。制限がある中でも入ってもらっているファンの皆さんが大きな声援をくれたので、初回もああいう攻撃になったっていうのはある。やっぱりファンの皆さんの前で野球できるのはね。天候的に悪条件だったけど、本当にそういうのを感じた試合になりました。 -11日はエース西勇。連勝を伸ばしたい まだまだ借りはあるのでね。みんなの状態はまだまだ上がると思う。やっぱり点を取れると、お客さんが入ってもらう中で、ホームでやれるのはすごく盛り上がる。そういうところでは西にも援護して、西らしいピッチングをしてくれて、またファンの人たちと喜び合いたいと思います。

◆女房役の阪神梅野隆太郎捕手も青柳をもりたてた。 「無駄な四球をがんがん出さなかったのが良かった。ゴロを打たせながら」と奮闘した右腕の投球を振り返った。青柳は天候不良で登板日がずれることが多いが「いやあ『雨柳』ってね(笑い)。この時期余計ね。ネタにしながら」といじる場面も。選手会長として有観客試合について「ホームで相手も嫌だろうな、と球場の雰囲気がさせてくれた」と語り、ファンの存在に感謝していた。

◆阪神ボーアとサンズの新助っ人野手コンビも初の有観客試合で快音をひびかせた。 サンズは1回の打席で左翼線二塁打。ボーアは3回に強烈な打球の中前打を放った。ボーアは出場4試合連続安打で、打率も2割5分まで上がってきた。

◆キャプテン阪神糸原健斗内野手が攻守で勝利に貢献した。バットでは1回、近本の先頭打者アーチで同点に追いついた直後。 大貫から右翼フェンス直撃の三塁打を放って勝ち越し点のチャンスメーク。糸井の遊ゴロで決勝ホームを踏んだ。二塁守備でも雨の中、5回先頭戸柱をゴロを好捕するなどハッスルした。

◆もう代役とは言わせないん弾! 阪神大山悠輔内野手(25)が、3試合連続の4番起用に応える豪快なアーチを放った。 近本の先頭打者弾などで逆転し、2-1で迎えた1回の第1打席。1死走者なしで、先発大貫の3球目、137キロカットボールを振り抜いた。「2点逆転してすごく勢いに乗ってるところだったので、その流れに乗ってスイングした結果がホームランだった」。打球は降りしきる雨を切り裂き、ファンがまばらに座る左翼スタンドへ。リードを広げる3号ソロになった。 4日の広島戦で、左ふくらはぎの張りを訴えたマルテに代わって途中出場し、今季1号。矢野監督は翌日、ボーアではなく大山に主砲の席を渡し、翌5日に2戦連発で応えた。「マルテのけがでチャンスが巡ってきましたけど、そこで自分の結果を残さないと生き残っていけない」。危機感を持って打席に入り、これで4戦3発。虎の和製大砲が赤丸急上昇の量産態勢だ。 マルテに開幕三塁を譲り、必死に出場機会を求めた。6月中旬、打席確保のため2軍の名古屋遠征に同行。同11日に2軍戦が雨天中止になると、中村2軍外野守備走塁コーチから雨の中、左翼でノックに励んだ。「1試合1試合必死にやるだけ」。本職でなくても試合に出れられればいい。そんな気概を見せ続けていた大山に結果がついてきた。 この日から有観客試合となり、ファンの前で4番はオレをアピールする強烈アーチを放った。「うれしかったです」。雨の甲子園で「4番大山」が輝いた。【只松憲】

◆阪神は甲子園でDeNAに5回降雨コールド勝ちを決めて4連勝。1点を追う初回、近本光司外野手(25)の先頭打者弾が逆転の呼び水となった。近本は「ファンの声援が後押ししてくれた」と感謝。球場にファンが戻り、猛虎ナインは心強い声援を力に逆襲を期す。虎の切り込み隊長が待ちわびたファンを沸かせた。1回、先頭近本がDeNA大貫の3球目スプリットをとらえた。打球は降りしきる雨を切り裂いてバックスクリーン右横へ一直線。大声での声援が禁止された甲子園で、思わずドッと歓声が起きた。その直後に拍手とメガホンの音が鳴り響いた。打った近本は、白球を押し上げたファンの思いを感じ取った。 「打った瞬間は入るとは思わなかったですが、ファンの方の声援が打球を後押ししてくれたと思います」 1回表、DeNAの1番梶谷がソロ本塁打を右翼席にかけた。両軍先頭打者本塁打は、セ・リーグでは6度目。甲子園では78年6月7日中日戦で高木守道、中村勝広が打って以来、42年ぶりだった。今季初めて観客を迎えた高揚感が、レアな記録を引き寄せた。 珍アーチが猛攻を呼んだ。2番糸原が右翼フェンス直撃の三塁打を放つと、続く糸井の遊ゴロの間に生還。続いて打席に立った4番大山が3号ソロを左翼スタンドへたたき込んだ。雨脚が強くなる甲子園。初回から主導権を握った打線の火付け役に矢野監督も「近本で一気にムードが(高まった)。チカが出てくると、相手にとっては脅威」と称えた。 プロ2年目の今季から重さ、長さを変えずバットを「タイ・カッブ型」に変更した。グリップエンドに向かってなだらかに太くなるフレア状。「無駄な力を入れずにバットを握れている。それはいいのかなと思う」と効果を実感。初回の一撃も力みのないスイングから放物線が生まれた。6月下旬には打率1割1分4厘とどん底だった打棒も復活しつつある。 24分間の中断も、天候の回復が見込めず降雨コールドとなった。阪神は3試合連続の雨天中止を挟んで4連勝。まだ最下位からは抜け出せないが、借金を4まで減らした。矢野監督も歴史的試合の目撃者となった観客4945人の力を実感。「コロナの影響で当たり前がどんどんなくなった。こういうことがあったからこそ、またファンの人とのつながりが強くなる」と力を込める。近本は「一戦一戦全力プレーでチーム一丸で戦う」と宣言。日常への1歩を近本のアーチが刻んだ。【桝井聡】

◆阪神先発の青柳晃洋投手(26)が雨の甲子園でファンの声援を力に変えた。5回4安打2失点。泥だらけになってつかんだ2勝目は、今季最長のチーム4連勝をもたらした。 1点差に詰め寄られた5回2死一塁。青柳が1球を投じるたびに、拍手が球場を包み込み、次第に手拍子へと変わっていった。「拍手もそうですし、『頑張れー』って声も聞こえてきたので、本当に励みになりました」。ぬかるんだマウンドに足をとられ、何度も体勢を崩しながら、粘るソトに必死に投げ続けた。カウント2-2からの8球目、外角低めに決めたスライダーで空振りを奪った。 「やっぱり最後厳しい時に、ファンの声援で三振を取れたかなと思うので、すごくありがたかったです」。今季初めてのファンのエールに背中を押され、5回を投げきった。その後雨が激しくなり、そのままコールドで試合終了。もし、ソトに打たれていたら、雨で中断し、ゲーム自体が成立しなかったかもしれない。 初回、先頭の梶谷に本塁打を浴びても、すぐに切り替えた。ツーシームを主体にテンポよく投げ続け、奪ったゴロアウトは10個。「雨の中、本当に野手にやめてくれって言われてたんですけど(笑い)僕はそういうスタイルなんで、自分のスタイルを貫いてなんとか投げました」。昨季も3度の先発予定が雨天中止となった「雨男」。この日は7、8日の登板予定が延び、やっと巡ってきたマウンドだった。「前日の調整を何回も何回も...」。難しい調整にも動じず、気持ちを切らさなかった。 矢野監督は「最高のピッチングだった」と悪条件で投げ抜いた右腕の成長を実感。「最後のひと押しってのは間違いなくあるし、ファンに入ってもらえるってやっぱりすごいことやなって」。最後の1アウトを後押しした、ファンの存在の大きさを再確認した。 3戦2勝の青柳は、これで先発陣リーグ3位の防御率1・59。「結局マウンド上がっても雨男って状況だったので。雨男スタイルを貫いて動じず頑張っていきたいと思います」。26歳の右腕が、雨もしたたる強い男になった。【磯綾乃】

◆球場にファンが帰ってきた! プロ野球が10日から人数を制限しての有観客試合を開始。約4万7000人収容の甲子園では、入場の上限となる5000人のチケットが完売。空席が目立つ寂しさもあったが、ソーシャルディスタンスを保って試合が行われた。虎番の奥田隼人記者がファンとしてスタンドに潜入し、新スタイルの観戦を体験した。スタンドはガラガラ...という訳ではない。新型コロナウイルス対策で約4万7000人収容の甲子園では、上限が5000人。全体数に対して約9分の1というファンの配置だった。少し寂しい感じもあったが、その分、応援の音もよく響いたように思う。 土砂降りの甲子園。審判が降雨コールドゲームを宣告すと、この試合で一番!? の拍手、歓声が巻き起こった。選手たちはベンチを出て、雨にぬれながら客席にあいさつ。ファンの前での"初勝利"を報告した。本来なら、歌唱ではなく鑑賞を推奨した上で勝利の六甲おろしが流れるはず...だった。しかし、降雨コールドとイレギュラーな終わり方のため、お預け。球場職員は「本来なら流れるんですけどね...」と説明していた。 午後4時に開門。待ちに待ったファンが次々とゲートをくぐった。サーモグラフィーによる検温も立ち止まることなく、スムーズに入場することができた。一塁ベンチ後方、前から20段目あたりに着席。座席は1列約10席のところに5席間隔を空け、2人が着席した。前後の列に人が座ることはなく、ゆとりを持って観戦することができた。 小雨がぱらつく中、プレーボール。いきなり先発青柳が梶谷に先頭打者アーチを浴びた。ビジターのDeNAが攻撃する際は応援歌は流れず、静寂がグラウンドを包む。「あ~」という虎党の悲鳴もよく響いた。打球音や選手同士の掛け声も、よく聞こえた。 阪神の攻撃は、応援団が収録した応援歌が流れる。ファンは音に合わせて手やメガホンをたたいて応援。大声を張り上げての応援は禁止となっているのだが、勝負どころではついつい力の入った声援も聞こえた。「近本~!」「大山~!」。従来のスタイルよりファンの数も声援も制限されている。リズムを刻む音も気合の入ってしまった声援も、より響く印象だった。 腹ごしらえには名物甲子園カレー。現金の受け渡しは感染対策でトレーを介した。マスク、手袋姿の売り子さんからは、レモン酎ハイを1杯。対応前には消毒を徹底していた。声の代わりに手を挙げての呼び込みなので、見つけてもらうまでに大きなアピールが必要だった。 雨脚が強まる5回表の攻撃。ぬかるむマウンドに青柳が土を入れてもらうよう要求すると「阪神園芸がんばれ~!」「青柳がんばれ~!」と声が飛んだ。DeNAソトが自打球を当ててベンチからトレーナー出てきた際には「はよ、せんかい!」と、試合進行をせかすヤジも。無事に5回を抑えると、ひときわ大きな拍手がナインに送られた。 5000枚のチケットは完売し、実際に4945人が来場した。ソーシャルディスタンスを保った中での有観客試合。早く超満員のスタンドを見たい気もするが、今は「with コロナ」で最大限に楽みたいと思う。選手はファンの応援からパワーをもらい、ファンはまた、選手のプレーからパワーをもらう。両者がそろって初めて「プロ野球が帰ってきた」と、実感した1日だった。

◆今季初の有観客での開催となった甲子園は午後4時から入場を開始。開門と同時に多くのファンが観客席に入場した。この日から5000人を上限に観戦が可能となり、来場者はアルプススタンドを除く内外野の観客席に、5席以上の間隔を空けて座った。  入場口では、フェースシールドを付けた係員がサーモグラフィーを通して来場者の体温を確認した。1メートル以上の間隔を空けて並び、順番に入場。場内の飲食販売は店員、来場客ともに注文前にアルコール消毒を実施するなど、新型コロナウイルスの感染予防に十分に注意して試合を開催する。

◆阪神・近本光司外野手(25)が「1番・中堅」で先発出場。一回の第1打席に、バックスクリーン右に同点の2号ソロを放った。  「初球から積極的にスイングすることを心掛けて打席に入りました。打った瞬間は入るとは思わなかったですが、ファンの方の声援が打球を後押ししてくれたと思います。次の打席以降も集中して頑張ります」  この日から観客を動員した有観客試合がスタート。甲子園に5000人のファンが詰めかけた。 先発の青柳がDeNAの梶谷に先頭打者弾を浴びた直後、虎党の悲鳴を近本がさっそく歓声へと変えた。大貫の129キロ変化球を一閃。打球はファンの待つ外野スタンドへと弾んだ。お返しの先頭打者弾ですぐさま同点に追いつくと、続く糸原が右翼フェンス直撃の三塁打。糸井の遊ゴロの間に生還し、あっさり逆転。さらには4番・大山が左翼席へ3号ソロを放ち、3-1とした。ファンの前で猛虎打線が覚醒した。

◆DeNA・大貫晋一投手が10日、阪神4回戦(甲子園)に先発。わずか1回30球、4安打3失点でノックアウトされた。  「先制していただいたにも関わらず、その裏に逆転を許し、かつ初回で降板することになり、チームならびに、中継ぎ陣に申し訳ないです」  一回、梶谷の先頭打者本塁打で先制したその裏、近本に先頭打者本塁打を許して追いつかれた。続く糸原に右越え三塁打、糸井の遊ゴロの間に勝ち越されると、4番・大山に左翼席へのソロを浴びていきなり3失点を喫した。  さらにサンズに左翼線への二塁打を浴び、満塁のピンチを招くなど、有観客初戦で一回から打者9人の猛攻を浴びた。

◆DeNAは10日、阪神4回戦(甲子園)に2-3で敗れた。  一回に梶谷が先頭打者本塁打を放つも、その裏、先発の大貫が2本塁打を浴びて1回3失点でノックアウトされた。  五回に梶谷の左前適時打で1点を返したが、追いつけず。その裏の守りにつこうとしたところで雨が強まり中断。雨足は弱まることなく、そのまま試合成立でコールドゲームとなった。  試合が中止となった首位・巨人とのゲーム差も1・5に広がった。

◆阪神はDeNA戦に五回表終了後に降雨コールドとなり、3-2で勝利。初めて観客を入れて行われた試合を勝利で飾り、今季初の4連勝となった。  DeNA・梶谷に先頭打者本塁打で先制されたが、その裏。近本が今季2本目となる先頭打者本塁打を放ち、同点に追いつく。さらに、糸原の右翼フェンス直撃の三塁打で続くと、糸井の遊ゴロの間に生還。続く大山も左越えの3号ソロを放ち、3-1と逆転に成功した。  先発の青柳は一回に梶谷にソロを被弾。五回にも2死二死二塁から梶谷に適時打を浴びたが、ソトを空振り三振に斬った。  試合は五回表を終了した、午後7時36分から降雨のため中断し、そのまま降雨コールドとなった。

◆DeNAは10日、阪神4回戦(甲子園)に2-3で敗れた。五回表終了後に雨脚が強まり、コールドゲームとなった。  一回に梶谷が先頭打者本塁打を放つも、その裏、大貫が2本塁打を浴びて1回3失点でノックアウトされた。  2点を追う三回、先頭の柴田が内野安打で出塁も、続く「9番・投手」の桜井が、バントのサインを間違えてバスター。結果は最悪の併殺打となり、追い上げムードに水を差した。五回に梶谷の左前適時打で1点を返したが、結果的に1点及ばなかっただけに痛いミスとなった。  ラミレス監督は「今日に限れば自然現象なのでどうすることもできない。終わったことはどうすることもできないので、残っている試合をいいものにできるようにしたい」と前を向いた。

◆今季初めて観客を迎えた一戦は一回から激しく動いた。DeNAの梶谷が先頭打者本塁打を放つと、その裏には阪神の1番近本も中越えに打ち込んだ。両チームによる初回先頭打者本塁打は昨年6月21日のヤクルト-ロッテ以来で、プロ野球15度目となった。  感染症対策で声を張り上げての応援が禁止される中、最初の一発では小さくどよめく程度だったスタンドが近本の一撃では歓声で沸いた。初回先頭打者アーチが5年ぶり5本目の梶谷は「グッドスイング!」と自賛し、早くも今季2度目で3本目の近本は「積極的にスイングすることを心掛けて打席に入った」と振り返った。(甲子園)

◆DeNAは逆転負けを喫した。相性のよくない甲子園で、梶谷が一回に先頭打者本塁打を放って先制。しかし大貫が近本に先頭打者アーチでお返しされ、計4本の長打を浴びるなどして3点を失った。五回に1点差に追い上げても雨が強まり、コールドゲーム。出だしの失点が響いた。  大貫を1回で交代させたラミレス監督は「彼の持ち味が全く出せなかった。残念な内容だった」と失望感を口にした。大貫は開幕から2戦全敗となり「チームならびに中継ぎ陣に申し訳ない」と頭を下げた。

◆中日は10日、広島4回戦(ナゴヤドーム)を延長十回のすえに3-2でサヨナラ勝ちした。  6月19日の開幕以降は無観客試合が続いていたが、この試合から5000人を上限として有観客で開催。ナゴヤドームに詰めかけた4958人の観客は座席の間隔を空けながら観戦を楽しんだ。  グラウンドでプレーした選手たちもこれまでと一変した雰囲気を体感。九回に同点の中犠飛を放った中日・大島は「やっと試合をしている感じがしました。いままで当たり前にあったファンの声援のありがたさを改めて実感しました」とコメント。先発したエース・大野雄も「改めてファンの前でプレーできる喜びを感じました。野手の皆さんが追いついてくれて、最後は勝利という最高の形で終われて、それをファンの皆さんと共有することができてうれしいです」と選手一丸、スタンドと一体となってつかんだ1勝をよろこんだ。  また、与田監督も「本当に練習時間からファンの方が徐々に詰めかけてきてくれた中で『やっとこの瞬間が来たんだな』と。たくさんの方の声援を聞きながら、よりしっかりと戦っていかなければいけないなと思いました」。心強さを感じると同時に、昇竜復活に向けてここから、さらに気を引き締めて戦っていくつもりだ。

◆阪神の青柳は雨で足元がぬかるむ中、粘りの投球だった。五回は梶谷の適時打で1点差に追い上げられ、なお2死一塁でソトにファウルで粘られても最後は外角の変化球で空振り三振。観客の声援に後押しされ「頑張れという声が励みになった。すごい力になった」と感謝した。直後に降雨コールドゲームが決まり、2勝目を挙げた。  先発予定の試合での雨天中止が続き、6月30日以来の登板にも「気持ちだけ切らさずに行った」と泰然と調整を行った。矢野監督は「全てにおいて成長を感じる」と絶賛した。(甲子園)

◆DeNAは阪神に逆転負けを喫し、3位に後退した。五回に1点差に追い上げても雨が強まり、コールドゲーム。出だしの失点が響いた。  先発の大貫が2本塁打を浴びて1回3失点でKOされた。「先制していただいたにもかかわらず、初回で降板することになり、チームならびに中継ぎ陣に申し訳ない」と肩を落とした。  2点を追う三回無死一塁では、桜井が送りバントのサインを間違えてバスターし、併殺に。悔しさの残る敗戦となった。  大貫を1回で交代させたラミレス監督は「彼の持ち味が全く出せなかった。残念な内容だった」と失望感を口にし、「残っている試合をいいものにできるようにしたい」と努めて前を向いた。(浜浦日向)

◆前日9日の巨人戦(甲子園)で決勝2ランを放ったボーアは10日のDeNA戦で4試合連続安打をマーク。三回先頭、苦手としている左腕の桜井から中前打を放った。3戦連発とはならなかったが、徐々に調子を取り戻して打率は・250(52打数13安打)まで上昇。さらなる爆発の予感が漂っている。

◆どしゃぶりの雨のなか、虎党のエールは「青柳、頑張れ」から「あと1球コール」に変わった。マウンドに砂が入れられて迎えたソトとの対決。青柳はぬかるんだ土に足を取られながらも踏ん張った。  「足が滑るという感じでしたが、これまでの無観客とは全然違う緊張感もありましたし、厳しいときにファンの声援があって、最後は三振を取れたかなと思う。ありがたかったです」  1点差に詰め寄られた五回2死一塁。カウント2-2から空振り三振に仕留めた瞬間、声援が甲子園に響き渡った。5回2失点でしのいだ右腕の第一声は、有観客試合初日、熱い声援を送ってくれた4945人のファンへの感謝だ。  一回、先頭打者の梶谷に右翼席へ運ばれるとスタンドからはため息が漏れた。「(ファンの声は)十分聞こえていました。3球で1点を取られたんで、次のバッターへと(気持ちを切り替えた)」。低めに変化球を集めて15個のアウトのうち内野ゴロは10個。「雨なので、野手には『(守りにくいから)やめてくれ』って言われたが、僕はそういうスタイルなんで」と笑った。  先発予定の7、8日の巨人戦(甲子園)が雨天中止で、仕切り直しの3度目も雨だった。昨季もチーム5試合あった雨天中止のうち、青柳の先発予定が3度。「"雨男スタイル"を貫いて(悪天候も)動じずに、頑張っていきたいと思います」。チームを4連勝へと導いた"雨男"は、泥だらけのユニホームを見ながら胸を張った。(三木建次)

◆音楽ユニット「globe」(グローブ)のメンバーで熱烈な阪神ファンのマーク・パンサー(50)が有観客初日となった10日、DeNA戦(甲子園)に足を運び、サンケイスポーツに観戦記を寄せた。選手がグラウンドに出る際のBGMのリミックスを手がけており、雨のなかでのチームの勝利を「完璧!」と喜んだ。  いやぁ、面白かった! 感動しました。雨でビシャビシャになったけど、きょうの甲子園は、僕にとっては間違いなく完璧でした。  試合開始から少し遅れて到着したんです。だから一回表の梶谷選手のホームランは見てなくて。球場に入ったら、もう1点取られていて。みんなニコニコしてないし、エッ? と思っていたら、いきなり近本選手がホームランを打ってくれました。あれで一気に空気が変わりましたね。2点取って、大山選手もホームランを打って。青柳選手の頑張りもすごかった。雨の中で、五回はよく踏ん張ってくれました。  あれだけ雨が降れば、帰り出すお客さんがいてもおかしくないのに、誰も帰りませんでした。みんな、この日を待っていたんだなぁと思いましたね。以前のような大勢での応援ではないけど「空いている」という感じはなかったです。確かに一定の間隔を空けて座っているし、鳴り物の応援もないんだけど、声を出すのも、クラップ(拍手)のタイミングもピッタリだったんですよ。大雨の中でも、すごく盛り上がっていましたね。  バックネット裏で見ていたので、ファンの声も、選手の声も聞こえるし、審判さんの声も聞こえて、これはこれで新しいな! と感じました。応援に行くチャンスのある方は、ぜひ球場に行ってほしいと思います。  開幕直後はなかなか勝てなかったけど、僕はずっと周囲に「ボーアがいるから大丈夫だよ」と前向きに話していました。きょうも打ってくれて、エンジンがかかってきたなと思います。ボーア選手だけじゃない。みんな甲子園に戻ってきて、いよいよエンジンがかかってきたなとみています。  僕は矢野監督も選手のことも大好き。このチームで優勝してほしいと思っているし、優勝できると思っています。今年はコロナ禍もあって、本当に大変な年になっています。だからこそ、みんなで前向きにタイガースを応援していきたい。今年のチームは強い! 優勝目指して、頑張ろう!

◆一投一打への歓喜、激励-。試合開始直後から興奮が高まった甲子園は、4番の一発で完全に目を覚ました。拍手に包まれたダイヤモンド一周に「うれしかった」と笑顔。大山が完璧なアーチで虎党を歓迎した。  「無観客と違う雰囲気がありましたし、やっぱり声援の力はすごく大きいなと感じた。逆転して勢いに乗っているところだったので、流れに乗ってスイングした結果。すごくよかったです」  一回1死、2-1と逆転した直後に大貫のカットボールを仕留めた。快音と同時に本塁打を確信した場内の歓声に乗り、3号ソロが左翼席に突き刺さった。  「すごくいいスイングができていると思いますけど一打席、一試合を必死にやるだけ。油断しないように」  左ふくらはぎ痛のマルテに代わって途中出場した4日の広島戦(マツダ)で1号を放ち、翌日から4番に座った。3試合で10打数5安打2本塁打、5打点。4戦3発の活躍に矢野監督は「本当に中身が(いい)ね。いまの打撃を続けてくれたら頼もしい」と絶賛。7日には「(マルテを)押しのけていくのなら本物。期待している」と注目していたが、期待通りの活躍だ。昨季は108試合で4番を務めながら、助っ人に定位置を譲った男がこのチャンスを逃すはずがない。  「出られなかった時期は悔しかったですし、それでも出たときに結果を残せるように準備してきた。マルテのけがでチャンスはきましたけど、そこで結果を残さないと生き残っていけない。そういう危機感を持って常に試合に臨んでいます」  悪天候で室内での練習が続くが、フリー打撃以外も空いた時間はマシンと向き合う。「しっかり準備できているからこその(いい)スイングだと思う」。キャンプでも毎日のように最後まで打ち込んでいた。待望の出番で、4連勝の立役者になっている。  「全員の力だと思うので、しっかり勢いに乗って一つでも勝っていけるように。それになんとかついていけるように頑張りたいと思います」  助っ人も魅力的だが、虎党の願いは生え抜きの大砲の覚醒。野球に飢えたファンの前で、誓いの一発だ。(安藤理)

◆虎党のおかげや!! 阪神はDeNA戦に3-2(五回裏無死降雨コールド)で勝ち、今季初の4連勝を飾った。近本光司外野手(25)が0-1の一回に球団42年ぶりとなる"先頭打者弾返し"。新型コロナウイルスの影響で開幕から無観客試合が続いていたが、この日から甲子園に帰ってきたファンの声援を受けて逆転勝利した。やっぱり虎党の力が必要や!!  甲子園に帰ってきた声援が白球に乗り移る。雨を切り裂き、打球は虎党の待つスタンドに消えた。球場に響き渡る大歓声。全速力で一塁を駆けた近本がふっと速度を緩めた。今季初めて観客を迎えた一戦で同点の先頭打者弾。いの一番に口にしたのはファンへの感謝だった。  「打った瞬間は三塁まで行く意識で走っていました。入るとは思わなかったですが、ファンの方の声援が打球を後押ししてくれたと思います。久しぶりの観客が入っての試合だったので、拍手や歓声でとても良い緊張感がありました」  梶谷の先頭打者弾で先制された直後の一回だ。大貫の129キロスプリットをうまくすくいあげた。打球はフェンスをギリギリ越え、バックスクリーン右に飛び込んだ。阪神では実に42年ぶりとなる"お返し"の先頭打者アーチに4945人の虎党も大興奮。この回、一挙3得点で逆転した猛虎打線の口火を切った。  この日から新型コロナウイルス感染拡大の影響で制限されてきた球場観戦がようやく解禁。それでも、大声を張り上げての応援や、鳴り物の使用は禁止されるなど、まだいつもの日常は遠い。そんな中、大雨でも甲子園に詰めかけたファンは勝利を信じて応援バットをたたき、一つ一つのプレーに拍手を送った。  「きょう来てくれたファンの方々に『きょう来てよかったな』と思ってもらえるようなプレーができてよかった」  誰よりもファンを思う背番号「5」はホッと息を吐いた。練習試合がなかった5月は「近本チャレンジ」と称して、SNS上でファンと交流。虎党の投稿に、コメントをつけて返信することもあった。2月24日を最後に無観客試合が続いていたが、この日が来ることをずっと待ち望んでいた。137日ぶりに虎党の前でプレー。背中を押してくれる一番の味方に、勝利という最高の結果で応えてみせた。  歴史的な一日を終えた矢野監督は「本当に忘れられないですし、思い出に残る1勝かなと思います」と目を細めた。ファンの帰ってきた甲子園。その声援が生み出した近本の一発には「最後のひと押しってのは間違いなくある。ファンに入ってもらえるってやっぱりすごいことやなって」と絆を強く実感した。  チームは連勝を4に伸ばした。まだまだ本拠地・甲子園で試合は続く。声援をくれるファンも球場にいる。  「一戦一戦全力プレーでチーム一丸となって戦っていきたいと思います」  近本が力を込めた。5位広島とは0・5差。最下位からの下剋上へ、スタンドと一体となった虎の快進撃が始まった。(原田遼太郎)

◆お客さまは神様でーす! 天(雨)も虎に味方しての4連勝。バンザーイ!! やっぱり、お客さんも含めての風景。それがプロ野球なのだと、つくづく感動した試合だったのだ。  一回。青柳がDeNA・梶谷に先頭打者アーチを許す。しかし、その裏に約5000人の『虎愛』という追い風が、近本の先頭打者アーチ返しをたたき出し、糸原の三塁打、そして大山の本塁打などで3点を奪って、あっさりと逆転。頼りになるね~!  さらに雨が激しくなり、降雨コールドゲームも視野に入った五回。1点差に詰め寄られ、なお2死一塁でバッターは2年連続の本塁打王のソト...。一発を浴びれば逆転されるピンチに、マウンドは雨でグシャグシャの大窮地...。  そのとき、スタンドに響く「青柳、ガンバレー!」の声援。それを機にさざ波のように始まった拍手が、あっという間に大きなうねりとなり、マウンドの青柳に注ぎ込まれたのだ。そして青柳は、ソトのバットに空を切らせたのだった。ジ~ン、俺は猛虎ナインと虎党でつかみ取ったシーンに涙がにじんでました。  最後に5回で15アウトのうち、4奪三振以外の全てを内野ゴロアウトに斬った青柳の集中力に最大の敬意を払います。

◆大山には去年までなかった集中力が出てきている。2-1と逆転した直後の一回1死。走者がいなくなった場面で、甘いボールだったとはいえ一発で仕留めた。結果的にも大きな3点目で、見事な4番の仕事だ。  去年までの大山には、同じようなボールを見逃したり、ファウルしたりして、もったいないと思わされることも多かった。今季は開幕から代打としてベンチに控えて、三塁を競うマルテが好調を維持していた。だがマルテがけがをしたタイミングで、いきなり4番に据えてもらった。『よしっ!』と思ったところもあったのだろう。  スイングに思い切りを感じる。いきなり結果も出て、どんどん余裕が出てきた。去年100試合以上、4番に座った経験が、今になって生きてきている。4番になってずっと、チームを勝たせている。  大山、ボーアに当たりが出て、打線がつながるようになったことで先発投手も踏ん張れるようになった。この日は雨に助けられたが、リリーフを立て直し、頼もしくなってきた打線は大山を中心にして、まずは勝率を5割に戻したい。(本紙専属評論家)

◆DeNA・梶谷隆幸外野手(31)が、10日の阪神戦(甲子園)で12球団の"有観客試合1号"となる先頭打者本塁打を放った。右翼席へ今季3本塁打目となるアーチを架け「しっかりトップをつくり、いいスイングができた」と振り返った。試合は無念の降雨コールドで敗れたが、五回に左前適時打を放つなど3安打2打点の活躍。打率をリーグ4位タイの・368に上げた。

◆ついに球場にファンが帰ってきた。プロ野球は10日から有観客試合が再開。DeNA戦が行われた甲子園にも縦じまのユニホームを身にまとった虎党が詰めかけ、勝利の美酒に酔いしれた。  ファンの存在は選手にとっても大きい。先頭打者弾を放った近本光司外野手(25)が「ファンの方の声援が打球を後押ししてくれた」と話せば、選手会長の梅野隆太郎捕手(29)も「ホームで相手が嫌だろうなという雰囲気にしてくれる」。さらに矢野燿大監督(51)は「やっぱりファンの人の声援は僕らの大きな力になる」と感謝した。  ただ、球場に最大で入れる人数は5000人。大声を張り上げての応援や鳴り物の使用は禁止され、名物のジェット風船も行われない。日常に戻るにはまだまだ時間がかかる。それでも、こんなときだからこそ、ファンは新たな応援スタイルを確立しつつあった。  観戦に訪れた草野光治さん(48)は「選手のタオルを掲げることはできるので持ってきました」。球場では応援バットをたたき、選手を鼓舞するファンも多くいた。ナイスプレーには大きな拍手が送られる。コロナに合わせた応援方式を、球団も趣向を凝らしたグッズで後押ししている。  公式オンラインショップ「T-SHOP」では、「ジェット風船タオル」が連日売り上げ1位。本物を打ち上げる代わりに、球場でタオルを掲げ、ラッキーセブンを彩ることができる。さらにコロナ対策に欠かせないマスク。タイガースのロゴが入り、ホーム、ビジターのユニホームをモチーフにしたものなどデザインもさまざま。球場に入場する際は、マスクの着用が義務化されているため、観戦にはもってこいだ。  グッズ商品を担当する営業部の河内英人氏は「ジェット風船が飛ばせないなら、新しい演出で楽しんでもらう。これから暑い時期になり、マスクをつけるのも大変ですが、タイガースグッズで観戦の楽しみに変えてもらえたら」と話した。やはり、球場はファンがいないと盛り上がらない。コロナに負けない新しい応援を、ファンと球団が一丸となり作り上げていく。(原田遼太郎)

DAZN

<セ・リーグ順位表推移>

順位チーム名 勝数負数引分勝率首位差残試合 得点失点本塁打盗塁打率防御率
1
(-)
巨人
1051 0.667
(-)
-
(-)
10484
(-)
51
(-)
20
(-)
12
(-)
0.263
(-)
3.210
(-)
2
(1↑)
ヤクルト
971 0.563
(-)
1.5
(-)
10380
(-)
85
(-)
17
(-)
16
(-)
0.248
(-)
4.380
(-)
3
(1↓)
DeNA
1080 0.556
(↓0.032)
1.5
(↓0.5)
10286
(+2)
67
(+3)
19
(+1)
3
(-)
0.294
(↓0.002)
3.650
(↓0.09)
4
(1↑)
中日
8101 0.444
(↑0.032)
3.5
(↑0.5)
10167
(+3)
82
(+2)
11
(+1)
3
(-)
0.259
(-)
4.210
(↑0.15)
5
(1↓)
広島
691 0.400
(↓0.029)
4
(↓0.5)
10466
(+2)
68
(+3)
18
(+1)
5
(-)
0.269
(↓0.009)
4.100
(↑0.16)
6
(-)
阪神
6100 0.375
(↑0.042)
4.5
(↑0.5)
10446
(+3)
76
(+2)
17
(+2)
13
(-)
0.228
(↑0.006
4.680
(↑0.05)