中日(☆4対2★)阪神 =オープン戦1回戦(2019.02.24)・北谷公園野球場=
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阪神
1010000002701
中日
00120001X4600
勝利投手:柳 裕也(1勝0敗0S)
(セーブ:鈴木 博志(0勝0敗1S))
敗戦投手:藤浪 晋太郎(0勝1敗0S)

本塁打
【阪神】福留 孝介(1号・1回表ソロ)

  DAZN
◆中日は先発・柳が5回2失点の好投。開幕ローテーション入りに向けて、アピールに成功した。一方の阪神は、3番・レフトでスタメン出場の福留が先制ソロを放つ活躍。頼れるベテランが順調な調整ぶりを披露した。

◆中日与田剛監督がオープン戦初白星を手にした。先発柳が5回2失点の粘投。その後4投手をつぎ込んで4-2で逃げ切った。 新指揮官は「うれしいですね。シーズンさながらの緊張感もあった」と振り返った。練習試合を含めて就任以来、NPBチームからの初勝利。 待望のウイニングボールも亀沢から手渡され、笑顔をのぞかせていた。

◆中日京田陽太内野手(24)が24日の阪神とのオープン戦(北谷)で見せた。「1番遊撃」で先発し、昨年8打数無安打と苦戦した阪神藤浪から2二塁打。3回は右中間への浅めの当たりだったが、自慢の脚力を生かしクロスプレーだったが、二塁打を奪い取った。三進後も、大島の一ゴロを野選につなげる好走塁で生還。4回にも同じ右中間へ完璧な二塁打を放った。 「(3回は)迷いなく打った瞬間に(二塁を奪うことを)判断した。(野選での得点も)大島さんがうまく打ってくれた」。5打数2安打の結果にも京田は表情を緩めなかった。「その後がダメ。満足せずに、こだわっていきたい」。 辛口の伊東ヘッドコーチは京田を称賛した。「チームの顔になりつつある選手。今の時代は1番に攻撃的な人がいることもある。彼は足という相手に与えるプレッシャーも持つ。魅力の1つだ」。1年目の17年は6月から1番に固定され、新人王を獲得した。しかし、昨年は開幕から2番で固定。31打席無安打などもがき苦しみ、打順も迷走した。 「秋から目の色が変わっていた。根尾効果もあるんじゃない」と同ヘッドコーチは続けた。ドラフト1位根尾は二刀流と決別し、遊撃1本を宣言し入団。現在は右ふくらはぎの肉離れで2軍調整中だが、同じポジションを競う後輩の存在が先輩の力になっている。打撃の際の肘当て、すね当てを、今年から1年目の青に戻した。3年目のシーズンへ京田が原点に戻った。【伊東大介】

◆先発ローテーション候補の中日柳裕也投手は初回、福留に1発を許したが、要所をピシャリ。5回先頭梅野には9球粘られながら、インコースへのスライダーで見逃し三振に打ち取るなど、成長した姿を見せた。 5回2失点の力投に「シーズン中もああいう風に使いたい。ローテに入れるように、次も結果を残したい」。プロ入り2年間で通算3勝、3年目のドラフト1位は飛躍を誓った。

◆中日与田剛監督がオープン戦初白星を手にした。 「うれしいですね。シーズンさながらの緊張感もあった」

◆遊撃レギュラー再奪取へ、合言葉はチャレンジだ。阪神鳥谷敬内野手(37)が中日とのオープン戦(北谷)で適時二塁打を記録した。 2番遊撃で先発。3回1死二塁、右腕柳に1ボール2ストライクと追い込まれながらカーブにグッと堪えた。力をためてからの強振で右中間最深部まで飛球を届かせ「いいところに飛んでくれた」と笑顔で謙遜。19年オープン戦初安打をタイムリーで決めた。 ベテランならではの巧みな一打。矢野監督はその直後の走塁に目を見張ったという。「いやあ、スゴイよなあ。凡打後の走塁もそうやし、(適時二塁打で)三塁までチャレンジしたのも、すごくいい走りやったと思う。ショートにチャレンジしている気持ちが、ああやって足を動かしていると思うから」と納得顔だ。 鳥谷は適時二塁打を放った際、迷わず二塁ベースを蹴って三塁へ。これは結果的に惜しくもタッチアウトとなったが、3打席目の三ゴロでも速度を緩めることなく一塁へ全力疾走していた。本人は「(三塁へは)厳しいかなと思ったけど、オープン戦だしチャレンジしていこうと思って」と表現。アグレッシブな姿勢で遊撃争いへ本格参戦した。 ここまで実戦4試合で10打数2安打。ライバルの北條やドラフト3位木浪が好調をキープしており、3月以降も激しい競争が続きそうな気配が漂う。この日は当たり損ねのゴロを軽快にさばき、体のキレもあらためて証明。「(今後は)打席の中で自分の感覚と合うようにしていきたい」。逆襲へ、綿密なプランを遂行していく。【佐井陽介】

◆左膝前十字靱帯(じんたい)の再建手術から再起を期す阪神上本博紀内野手が、復活アピールの二盗を決めた。1番二塁で出場。3回1死の一塁走者で、2番鳥谷の初球に好スタートを切った。昨年5月5日の中日戦で同箇所を負傷して以来の初盗塁。 矢野監督は「走れるのは上本の魅力。あれぐらいは普通」としつつ、「(故障明けで)怖かったかもしれん」と評価した。3打席でヒットはなかったが、二塁守備も軽快に処理。上本は「(盗塁は)いけたらいこうと。毎試合毎試合、結果を出していけるように」と引き締めた。

◆セ・リーグ野手最年長の阪神福留が中日とのオープン戦に3番左翼で実戦初出場。初回に先発柳の直球をバックスクリーンに突き刺した。鳥谷も3回に右中間を破る適時二塁打を放ち、ベテランが元気な姿を見せた。 矢野燿大監督の一問一答は以下の通り。 -福留が3ボールからすごい一撃だった 次の(打席の)カーブを打った凡打も紙一重のスイングができていた。何の心配もいらない。 -ベテランで調整任せだ。安心もある 孝介も打撃だけじゃなく走る、守備もしっかりやっているのは、俺らは見ていて分かる。だから、そこに(若手が)どう挑戦状をたたきつけられるかが、俺はもっとほしかった。 -鳥谷は追い込まれてからの打撃の対応で順調だ 順調じゃない? あれだけ球団歴代NO・1のヒットを打った人でも、こうやってここで結果を出すということにトリ自身がこだわって来ていると思う。追い込まれて、ああいう対応ができるのは手応えというか、感触的にはいいものを持っているんじゃないかな。 -藤浪は立ち上がりはよかったが、どう見たか もうちょっと配球的にやり方があるのかなと思ったけど、死球とか四球とか、まだ発展途上で、その後も変なグチャグチャという感じもない。結果的にカウントを悪くして打たれているのは、マイナスの部分を見ればあるけど、やりようとしてはある。今日を悪く思うのは、俺はあんまりよくないというか。後退しているわけではないと思う。

◆与田監督は就任後のオープン戦初勝利に「投手は点を取られても最少失点だった」と喜んだ。失点は先発の柳のみで、救援陣は無失点。「非常に良い形でリズムもつくってくれた。みんな粘ってうまく投げてくれた」と評価した。  監督は試合後、亀沢からウイニングボールをもらった。「自分のプロ野球チームの初勝利なので、ありがとうございますと伝えた」と笑顔だった。

◆中日・京田陽太内野手(24)が、苦手にしていた藤浪から2本の二塁打を放った。昨季8打数無安打と封じ込められただけに「打ててよかった」と声を弾ませた。  一回は空振り三振に倒れたが、三回先頭で右中間へ弾き返すと、相手守備のスキをついて二塁へ。1-2の四回無死一、二塁からは右中間に同点二塁打。遠藤の犠飛で勝ち越しのホームを踏んだ。  伊東ヘッドコーチは「根尾(入団の)効果が多少なりともあると思う。昨秋のキャンプから目の色が変わったみたいだ」と解説した。2017年の新人王だが、昨季は打率を・264から・235と大きく下げた。京田は「そのあとの2打席はダメだった。2本打っても満足せず、1打席1打席にこだわっていきたい」と反省も忘れなかった。 (三木建次)

◆阪神・藤浪晋太郎投手(24)が24日、中日とのオープン戦(北谷)に先発したが、4回4安打3失点。6四死球と乱調だった。  ほぼ左打者の中日打線に対し、二回までは得点を許さなかったが、三回は先頭・京田の二塁打を皮切りに、野選も重なり1失点。四回は先頭・木下拓に死球を与え、四球後、京田に適時二塁打を献上。イニングを重ねるごとに抜け球が目立った。  開幕ローテ入りへ、試練の日々が続いている。

◆阪神の先発藤浪は、4回を投げて毎回の6四死球と制球に苦しんだ。四回は連続四死球でピンチを招き、京田の二塁打などで2失点。右打者の頭部付近に抜ける球もあり「もう少し安定したい。テンポよく、ストライク先行で投げられれば」と反省を口にした。  沖縄・宜野座キャンプでは投げ込みに重点を置き、課題克服に取り組んできた。「三回までは自分の感覚としてはよかった。ボール自体が悪いということはない」と一定の手応えも口にする。  矢野監督は「後退しているわけではない。今すぐ結果が出るのが一番いいが、成長していければいい」と悩める豪腕の奮起に期待した。

◆阪神・青柳晃洋投手(25)は、中日とのオープン戦(北谷)に七回から4番手で登板した。  七回はゼロに抑えたが、八回は先頭に四球を与えると2死から適時打を浴びて1失点。「右打者はしっかり抑えられたのは収穫。左打者に打たれたのが反省です」としながら「昨シーズン中から修正してきた制球は維持できているので」と明るい表情を浮かべた。

◆阪神のD4位・斎藤友貴哉投手(ホンダ)がオープン戦初登板。六回から3番手でマウンドにあがり、先頭打者を歩かせたが、後続を断って無失点デビューを果たした。「少し緊張しました。先頭を意識していたのに、入りが四球になってしまって、反省点です。でも、結果的にゼロに抑えられたことは良かった」。中継ぎの一角で開幕1軍を狙うルーキーが、無難なスタートを切った。

◆「1番・二塁」の阪神・上本が今年初盗塁を決めた。「初めてだったので、成功してホッとしています」。三回の第2打席で遊ゴロ併殺崩れで出塁すると直後の鳥谷の初球、実戦では左膝を負傷した昨年5月5日の中日戦(甲子園)以来となる二盗を成功させた。打撃では3打数無安打に終わり、「毎試合結果を出していけるようにやっていきたい」と力を込めた。

◆止まらん! 阪神のドラフト3位・木浪聖也内野手(24)=ホンダ=は中日戦に「7番・一塁」で出場し、7試合連続となる安打を放った。  「(連続安打は)全く気にしていません。毎日、必死です」  二回2死走者なしで中日先発・柳から中前打。主戦場は二遊間だが、一塁やDHで起用される状況からも首脳陣の期待の高さがうかがえる。  青森山田高の同級生である中日・京田とはこの日、言葉を交わす機会は訪れなかったというが、その姿は刺激になった。  「一流の投手の方の球はなかなか打てないところもありますが、甘い球を仕留められるよう意識していきたいです」  1つずつ結果を積み重ね、レギュラーの座を狙っていく。

◆五回から登板した阪神・ドリスが5球で打者3人を料理した。「少ない球数でツーシームとかで打者をゴロに抑えられたので、よかった」。先頭・阿部を初球のツーシームで一飛に打ち取ると続く井領も1球で左飛に斬った。3人目の石川駿はツーシームで三ゴロにしとめ、1イニングを無失点。虎4年目の助っ人が実戦で結果を残し、守護神の座を確かなものしていく。

◆先発マスクをかぶった阪神・梅野が、持ち前の強肩をみせた。一回2死一塁で中日・大島の二盗をストライク送球で阻止。「自分の持ち味。自分自身にとってもよかったし、晋太郎(藤浪)も立ち上がりは不安だと思うので。シーズン中でも助けてあげられたら」。坂本らと競争の正捕手争いの中、筆頭候補がアピールした。

◆阪神のD1位・近本光司外野手(大阪ガス)が2試合連続安打。「9番・中堅」で先発すると、三回無死で浮いてきた変化球を左前打。「序盤はできるだけ粘って、球数も投げさせないといけない。とらえることができてよかった」。その後は遊飛、見逃し三振で安打は出ず。初見の投手との対戦が続くことにも「どう対応していくかが課題。克服していけるように」と前を向いた。

◆阪神・青柳は七回から4番手で登板した。七回はゼロで抑えたが、八回は先頭に四球を与えると、二死から適時打を浴びて1失点。「右打者はしっかり抑えられたのは収穫。左打者に打たれたのが反省です。ただ、昨シーズン中から修正してきた制球は維持できているので」。表情は明るかった。

◆阪神は藤浪が6四死球と制球を乱した。福留が本塁打、鳥谷が適時打とベテラン勢が光った。矢野監督との一問一答は以下の通り。  --福留が一回に3ボールからひと振り  矢野監督 「ねえ。お見事やね。2アウトになって、3ボールから、まあもちろん打っていくかなとは思ったけど。しかもバックスクリーンにね。一発で仕留めてあそこに打てるというのは、しかも初実戦というか。この前、シート(打撃)っぽいことはやったにしろね。初めてのところ(試合)で出せるというのはすごいし。次のカーブの凡打も紙一重のスイングができていたし。何の心配もいらないなというね」  --ベテランで任せているとは思うが、安心する部分はあるか  「まあ、安心もそうだし。ずっとそういう調整というかな。(福留)孝介もバッティングだけじゃなく、走ることとか、守備のこととかもしっかりやっているというのは、俺らも見ていても分かるし。だから、そこにどう挑戦状をたたきつけられるかというものが、俺としてはもっと欲しいなとはあるけどね」  --鳥谷は走るということに関しても良かった  「いやもう、すごいよな。凡打後の走塁もそうやし。三塁までチャレンジしにいったのも、すごくいい走りやったと思うし。走るというのは、トリ自身もたぶんそこだけじゃなくて、普段見ている姿でも、走るというのはすごく意識して、ずっとキャンプもやっていることやから。あれも、無難にやめてもいいところだけど、やっぱりそういう気持ちが足を動かしている部分と。やっぱりそのショートにチャレンジしているという部分の、そういう気持ちが、ああやって足を動かしていると思うから。すごくいいチャレンジやったと思う」  --若い選手も感じるところがある  「うん、まあまあ、それはプラスアルファの部分でね。それは(福留)孝介もそうやし、トリもそうやし。そういうのはプラスアルファの部分で、感じるところちゃうかな」  --打撃でも追い込まれてからの対応で、そういう意味でも順調  「順調じゃない? あんだけね、歴代球団ナンバーワンのヒットを打った人でも、いや、俺分からんけど(笑) やっぱりこうやってここで結果を出すということに、トリ自身こだわって来ていると思うし。追い込まれて、ああいうふうに対応できているというのは手応えというか、感触的にはいい感じのものを持っているんじゃないかなとは。しゃべっていないけどね。そういうふうに思うけど」  --上本はけが明けで盗塁も決めた  「うん、まあまあ、あれぐらいは普通やと思ってるし。ウエポン(上本)のいいところは意外性のあるパンチ力っていうのはいいところだけど。走れるっていうのが元々の魅力でもあるから。まあまあ、いい意味で、あれぐらいは普通かなと思う。今、言われたように怖さっていうのは、ああいうもの(盗塁)でけがをしてるから、本人的な部分は俺らには分からないから。本人は怖かったかもしれんし。俺らから見たら、そういうものは感じてない」  --藤浪は立ち上がりは良かったが、どう見ているか  「まあまあまあ...。もうちょっとこう、何かこう、配球的に何かこうやり方はあるかなと思ったけど。デッドボールとかフォアボールっていうのは別にまだ。前も言ってるように、まだ発展途上で。まあその後もね、変な、めちゃくちゃというか、そういう感じはないしね。まあ結果、カウント悪くして打たれているというのは、マイナスの部分を見ればまああるけど。ありようとしてはあるかなというふうに思うし。まあキャンプのスタートはすごくいいスタートを切りながら、そこから試行錯誤を、試行錯誤というか、自分でまたいろいろ良いものを見つけながら今やっている途中やから。本人がその中で感じ取ることっていうのがあると思うから。それを次ね、やっていけるようにしたらいいと思う」  --評価するのはまだ先かもしれないが、順調にステップを踏んできている  「今日のことを悪く思う方があんまりよくないというか。後退しているわけではないと思うから。それを後退しているふうに取るというのはよくないと俺は思うから。みんなが厳しい言い方とか、見方をすればもっと見方としては色々あると思うけど、俺はそういうふうにあまり見ないから。競争相手がもちろんいるんだけど、またどうするかというところを今日の中から考えてくれたらいいと思う」

◆衰えを知らない力強い打球がバックスクリーンへと伸びた。4月で42歳を迎えるプロ21年目の福留孝介外野手(41)が、中日戦(北谷)で「3番・左翼」でオープン戦初出場。今年初スイングで1号を放った。  「たくさんのお客さんの中で、まだまだ元気です、若い選手には負けませんというところを少しは見せられたんじゃないでしょうか」  一回2死に先発・柳と対峙すると、3ボールから狙った。外角直球に踏み込み、一閃。一瞬で主役をかっさらった。  「うまく当たってくれました。逆に言えばその前のボールをしっかり見れたとか。今の時期はそれ以外のことが大事。結果が出たことは良かったんじゃないでしょうか」  貫禄のオープン戦初打席初アーチ。三回2死で中飛に倒れたところで、お役御免。矢野監督は「お見事やね。何の心配もいらない」と最敬礼すると同時に「そこ(福留)にどう挑戦状をたたきつけられるかというものが、俺としてはもっと欲しい」とやや下降線をたどってきた若虎に注文をつけた。  「まずはけがをしないことが大前提です。自分のやることを間違わないようにやっていければ」  昨季まで2年間務めた主将の椅子は糸原に引き継いだが、外野のレギュラーまでは譲らない。百戦錬磨のエイトマンがまたチームを救ってくれる。

◆その時、藤浪晋太郎の目には光るものがあった。  2年前の2017年8月16日京セラドームの対広島戦に先発し、4回2/3...107球7安打。だけど7個の四死球...スッぽ抜けたボールは打者菊池の肩口にくいこんだ。  この年、藤浪はプロ初の「不振による2軍落ち」からやっと"復活"してきたばかりだった。  最速は159キロ。当時の金本監督はこのマウンドについて「オーバーな表現かもしれないが、彼の人生を左右するぐらいの思いで見たい...」とまで言っていた。  スピードもあった。0-3とビハインドではあるが誰もが祈るようにみつめていたのだ...。  なぜか走者を背負うと"球が抜ける..."のだ。いわゆる「イップス(緊張感から指先から精密さが奪われる)」そんな単純な視点だけで藤浪レベルの投手をとらえたくはない。  だけど...2年前のアノ時に藤浪はマウンドに歩み寄った香田コーチ(当時)に促されると...顔がひきつっていた。悔しい...悔しい...自分を責めていた。無念。あれだけの"甲子園のヒーロー"としての十字架の重さに彼はそれでも耐えていた。涙が22歳の若者のホホを伝わる...。  覚えていますか。その日の京セラドームには先着1万5000人にプレゼントされるハズだった『藤浪人形』が輸送中のトラブルで6000個が破損するハプニングも起きていた...。なんたる偶然。  「藤浪投手の持ってる資質を思うと考えられんのや。いや考えたくないというべきか...」と編集委員上田雅昭は珍しく記者席でこの日もため息をついた。  実は昨年の2月25日、同じ北谷の中日戦に藤浪は先発した。新しいフォームの微調整も試みた。技術的なことをいえば「両足の幅をせばめて、軸足に体重が乗せやすくなった」らしいのだ。  1年前の北谷は一回に雨が降り途中でノーゲームとなる。京田-アルモンテ-大島とわずか9球投げたところで降雨...そのタッタ9球の白球にも藤浪晋太郎の"炎"は素晴らしかったのに、非情にも涙がしみこんでいった。  彼には阪神のエースの宿命というべきか、村山実-江夏豊らが背負っていた「雨男の悲運」までが背中にのしかかり、心をずぶ濡れにしていった...。  なのに...あれから1年...哀しきリフレインか。いや、馬に食わすほど"悲運のタイガース"を取材してきた私めとしては逆に奇妙な"怪"感となって血が逆流する感覚がよみがえってきたのでございます。  実は江夏豊という大エースはノーコンでした。その彼が2年目にシーズン401個という「奪三振新記録」をマークするのだが、その1968年9月末にさすがに江夏もドドッと疲れが襲う。その時、藤本定義監督は"伊予タヌキ"の本領発揮で逆に江夏に「ええか、とにかく黙ってこの2日間は連日125球の投球練習を続けろ。そして甲子園での巨人4連戦は第1戦は(中1日で)お前、翌日のダブルは村山とバッキー。そして第4戦はまたお前でいく...」と無茶苦茶な指令をだしたのだ。  江夏は驚いた。おっさん何をぬかすんや! 無茶苦茶なことを...おまけに奪三振世界記録すらかかっているというのに...ところが、江夏はその指令を守り巨人相手に第1戦(17日)は139球延長十二回1-0完封勝ち→中1日おいて第4戦(19日)151球3-1完投勝ち...結局この年阪神は巨人に微差の2位となったが、この時のことを藤本老はこういったのである。  「敵を知り味方を知らずに勝つのは二流なんじゃョ...」だと。江夏は過酷な疲労感などすっかりどこかにぶっ飛んでいた...。

◆--上本はけが明けで盗塁も決めた  矢野監督 「あれぐらいは普通やと思ってるし。ウエポン(上本)のいいところは意外性のあるパンチ力っていうのはいいところだけど。走れるっていうのが元々の魅力でもあるから。あれぐらいは普通かな。今、言われたように怖さっていうのは、ああいうもの(盗塁)でけがをしてるから、本人的な部分は俺らには分からないから。本人は怖かったかもしれんし。俺らから見たら、そういうものは感じてない」  --藤浪の評価するのはまだ先か  「今日のことを悪く思う方が、あんまりよくないというか。後退しているわけではないと思うから。それを後退しているふうに取るというのはよくないと俺は思うから。みんなが厳しい言い方とか見方をすれば、もっと見方としては色々あると思うけど、俺はそういうふうにあまり見ないから」

◆先発マスクをかぶった梅野が、持ち前の強肩をみせた。一回2死一塁で大島の二盗をストライク送球で阻止。「自分の持ち味。自分自身にとってもよかったし、晋太郎(藤浪)も立ち上がりは不安だと思うので。シーズン中でも助けてあげられたら」。坂本らと競争の正捕手争いの中、筆頭候補がアピールした。

◆走者を出してから、制球が定まらない。4回で71球を要した藤浪は、さすがに表情を曇らせた。  「三回までいい感じで投げることができたけど、四回が悪かった。(球が)抜けたりとか、四球が出たりとか、もったいなかった。あそこだけですね、反省点は...」  1点リードの四回。先頭の木下拓に死球を与えると、続く渡辺に四球で一、二塁。京田には右中間を破られる同点二塁打を許し、その後、遠藤に決勝犠飛を献上した。ほぼ左打者ばかり並べた竜打線を相手でも回を追うごとに球が抜けていた。  矢野監督は「配球的に何か、やり方はあるかなと思った」とした上で「自分でまたいろいろ、良いものを見つけながらやっている途中」とかばったが...。17日の日本ハム戦(宜野座)でも3回2失点と光が見えない。 藤浪とバッテリーを組んだ阪神・梅野 「左打者が多い中、どうしても外に抜ける球が多かったので、近いところから攻めていかないと。欲をいえば、強弱のある球でストライクがとれたら変わってくると思う」 DeNA・東野スコアラー 「最初はよかったですね。四死球が絡むと、昨年と同様、傾向が悪くなるように見えました」 ヤクルト・山口スコアラー 「きょうは真っすぐの制球が良くなかったみたい。カットボールもいい球もあれば悪い球もあった。ただ、いいコースに決まれば本当に素晴らしい。これからも注視していきたい」

◆オープン戦、中日4-2阪神、24日、北谷)止まらん! 阪神のドラフト3位・木浪聖也内野手(24)=ホンダ=は中日戦に「7番・一塁」で出場し、7試合連続となる安打を放った。  「(連続安打は)全く気にしていません。毎日、必死です」  二回2死走者なしで中日先発・柳から中前打。実戦打率を・444(18打数8安打)とし、首脳陣の評価をまた高めた。  青森山田高の同級生である中日・京田とはこの日、言葉を交わす機会は訪れなかったというが、その姿は刺激になった。  「一流の投手の方の球はなかなか打てないところもありますが、甘い球を仕留められるよう意識していきたいです」  内野なら、どこでも守れる。1つずつ結果を積み重ね、レギュラーの座を狙う。

◆反応したようにガバッと打ちにいき、何かに突き動かされたように三塁へと足を伸ばした。キャンバスを蹴って蹴って、鳥谷は止まらなかった。適時二塁打、そして三塁を狙い憤死。アウトになりベンチへと戻る足取りまで軽かった。遊撃再奪取と、今季に懸ける思いが詰まった激走だった。  「厳しいかなと思ったけど、オープン戦なのでチャレンジしました」  1点リードの三回1死二塁。先制ソロを放った福留と同じくオープン戦初出場だった鳥谷が、さすがの技で右中間を破った。カウント1-2と追い込まれていたが、柳が投じた打者を崩そうという緩いカーブにグッと体を止め、一気に振り抜いた。右中間を深々と破り一走が生還。そして、鳥谷は三塁を目指した-。  フェンス際で右翼・井領が白球を拾い「9-4-5」とつながれてアウトに。鳥谷は淡々としていたが、矢野監督はベンチで笑顔だった。「いやもう、すごいよな。凡打後の走塁もそうやし。三塁までチャレンジしにいったのも、すごくいい走りやったと思うし」と驚くしかなかった。鳥谷ほどの名選手が、この時期に見せてくれた無我夢中の走りに「やっぱりショートにチャレンジしているという部分の、そういう気持ちがああやって足を動かしていると思うから。すごくいいチャレンジやった」と賛辞を送らずにはいられなかった。  北條、ルーキー木浪らと奪い合う遊撃の守備では軽やかに前に出ての処理も1つあった。3打数1安打だったが「打席の中で自分の感覚と合っていけたら」と前を向く。オレはヤレるという決意をにじませながら、鳥谷が春の戦いへと踏み出した。 (長友孝輔) ★虎の遊撃争い  鳥谷、北條だけでなく、実戦7試合連続安打のD3位・木浪聖也内野手(ホンダ)らも含めてし烈。北條は今春の全実戦打率・500(20打数10安打)と打ちまくり、木浪も同・444(18打数8安打)と対抗。実績も経験も負けない鳥谷がエンジンをかけた形だ。

◆若手に負けん! 阪神・福留孝介外野手(41)が「3番・左翼」でオープン戦初出場し、一回にバックスクリーンへ先制ソロ。2000年以来自身19年ぶりのOP戦初打席アーチをかけ、最高のスタートを切った。また、「2番・遊撃」で同じくOP戦初出場の鳥谷敬内野手(37)も三回に右中間を破る適時二塁打。三塁を果敢に狙う激走をみせた。  衰えを知らない力強い打球がバックスクリーンへと伸びた。4月で42歳を迎えるプロ21年目の福留が、今年初スイングで1号。手のひらに感触が残ったまま、意地の一発だったと自画自賛した。  「たくさんのお客さんの中で、まだまだ元気です、若い選手には負けませんというところを少しは見せられたんじゃないでしょうか」  自身初の対外試合に「3番・左翼」で出場。一回2死に先発・柳と対峙すると、3ボールから狙った。外角直球に踏み込み、一閃。この日の目的を「打席に立って、ゲームに入れる体であることの確認」としたが、確認どころか、一瞬で主役をかっさらってみせた。  「うまく当たってくれました。逆に言えばその前のボールをしっかり見れたとか。今の時期はそれ以外のことが大事。結果が出たことは良かったんじゃないでしょうか」  貫禄のオープン戦初打席初アーチ。本人は「いちいち覚えていないよ」とけむに巻いたが、実際は中日でプロ2年目だった2000年以来19年ぶり。そのときも、この北谷という舞台だった。当時は内野守備も荒さが目立ち、星野監督の下、高代内野守備走塁コーチ(現阪神2軍チーフコーチ)からノックの嵐を浴びせられた。その苦悩が今、藤浪らに助言する引きだしになり、若手の台頭を退ける力になった。  三回2死で中飛に倒れたところで、お役御免。矢野監督は「お見事やね。何の心配もいらない」と最敬礼すると同時に「そこ(福留)にどう挑戦状をたたきつけられるかというものが、俺としてはもっと欲しい」とやや下降線をたどってきた若虎に注文をつけた。  「まずはけがをしないことが大前提です。自分のやることを間違わないようにやっていければ」  昨季まで2年間務めた主将の椅子は糸原に引き継いだが、外野のレギュラーまでは譲らない。百戦錬磨のエイトマンがまたチームを救ってくれる。 (竹村岳) 一回、3ボールから福留に本塁打された中日・柳 「カウントを悪くしてストライクを取りにいった球を一発で仕留められた。レベルの高さを感じた」 清水ヘッドコーチ 「若い選手が、孝介さん(福留)すごいじゃなくて、孝介さんに勝つと思ってくれたらそれでいい」 浜中打撃コーチ 「(福留)孝介さん自身も、最高の形で結果を残せてよかった」 ★近年の福留初打席  ◆2016年  3月5日のロッテ戦(甲子園)で「5番・右翼」。大嶺の前に三振  ◆17年  3月12日の巨人戦(甲子園)で「4番・DH」。二ゴロだった  ◆18年  2月25日の中日戦(北谷)で「3番・DH」。一回2死で現阪神のガルシアから強烈な一直。その後、降雨でノーゲーム

◆目先を変えてみては? 阪神は24日、中日戦(北谷)に2-4で敗れた。先発して4回4安打6四死球3失点と乱調だった藤浪晋太郎投手(24)について、中日、阪神などで活躍し、楽天監督も務めた田尾安志氏(65)=サンケイスポーツ専属評論家=が"中継ぎのススメ"だ。変わらぬ投球内容が続く現状への"劇薬"として、1イニングで成功体験を積み重ねる調整方法を提言した。  藤浪は残念ながら、変わってないな、という印象だった。スピードは出ているし、ボール自体は悪くない。コントロールがつけば、本当にいい投手...。そんな状況が、ずっと変わっていない。  腕がサイド気味に"横振り"になっていたが、それが一番、スムーズに投げられるという考えなのだろうし、技術的なことは本人も、コーチ陣も考えてやっているのだろうから、こちらがどうこう言うことではない。  先のクールでも相当、投げこんだようだし、疲れているなかで投げることで上半身の力を抜き、"脱力"して投げる形を身につけようとしているのかもしれない。ただ、その成果がまだ見えてこない。現時点では、先発ローテーションを任せるのは、難しいだろう。  ならば一度、目先を変えてみては? リリーフとして1イニング、という登板をしてみるのも手ではないか。最近の投球を見ると、一回はよくても、イニングが進むにつれて、どんどん悪くなっていく傾向がある。この日も立ち上がりはよかったし、もし一回で降りていたら、いいイメージで終われたはずだ。  中継ぎに転向しろ、ということではない。調整方法として3、4試合、1イニング限定で投げ、いいイメージで成功体験を重ねるというのも、前向きなチャレンジとしてトライする価値はあるのでは、ということだ。  先頭打者を出してはいけない、1点もやってはいけない...という重圧から中継ぎ投手を解放するため、先発をやらせてみるということは、よくある。ただ、その逆はほとんどない。だから成功するかはわからないが、開幕まで1カ月という期間のなかで、このまま藤浪を何回か先発させて、また同じような内容が続いたら、時間もイニングも、もったいない。  試したい先発候補が他にもいるなかで、実戦のイニング数は有意義に使いたい。まだ試せる時間があるからこそ、"1イニング調整"は藤浪に変わるチャンスを生むかもしれない。また、1イニングをきっちり抑えるという経験も、先発に戻ったときに生きてくるはずだ。 (サンケイスポーツ専属評論家)