ソフトバンク(★2対4☆)日本ハム =クライマックスシリーズ2回戦(2018.10.14)・福岡ヤフオクドーム=
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日本ハム
0011000204701
ソフトバンク
0001001002611
勝利投手:マルティネス(1勝0敗0S)
(セーブ:石川 直也(0勝0敗1S))
敗戦投手:加治屋 蓮(0勝1敗0S)

本塁打
【日本ハム】横尾 俊建(1号・3回表ソロ)
【ソフトバンク】中村 晃(1号・4回裏ソロ)

  DAZN
◆日本ハムがファーストステージの勝敗をタイに戻した。日本ハムは3回表、横尾のソロで先制する。その後2-2で迎えた8回には、大田泰と近藤の連続適時打で勝ち越しに成功した。投げては、先発・マルティネスが7回2失点の好投。敗れたソフトバンクは、4番手・加治屋が誤算だった。

◆日本ハム中田翔内野手(29)が、初回の守備でアクシデントに見舞われた。 1回裏、ソフトバンク先頭上林が放った打球が、打球処理に入った中田の股間付近を直撃。素早くこぼれたボールを拾い、一塁ベースカバーに入ったマルティネスへとボールを送りアウトとした。しかし、その直後、両ひざに手をついてしばらくうずくまった。 しばらく痛みをこらえる険しい表情を見せたが、幸い大事には至らなかった模様。無事プレーを再開した。

◆日本ハム横尾俊建内野手(25)が、先制のソロ本塁打を放った。 0-0の3回1死、ソフトバンク先発千賀の外角高めに浮いた128キロの変化球を豪快に振り抜くと、打球は左翼ポール最上部に直撃した。 CS初の本塁打に「感触が良かったので打った瞬間行ったと思いました。とにかく、チームが勝てるように最後まで一生懸命頑張ります」と話した。

◆日本ハムのオズワルド・アルシア外野手(27)が追加点となる適時打を放った。 1-0の4回1死一、三塁で、ソフトバンク先発千賀の変化球を右前へ運ぶ適時打とし、一塁上で大きくガッツポーズした。「いい場面で1本打てた。(千賀は)すべての球種が素晴らしいので直球に遅れないようにして、変化球に対応していこうと考えていた。二塁手の頭上を抜くような打球を意識して、何とか食らいつけた」と喜んだ。

◆日本ハムがソフトバンクに競り勝ち、西武とのファイナルステージ進出へ逆王手をかけた。 3回に先制。2死から8番横尾がソフトバンク先発千賀の外角高めに浮いた128キロの変化球を豪快に振り抜くと、打球は左翼ポール最上部に直撃した。「感触が良かったので打った瞬間行ったと思いました」とCS初の本塁打。続く4回には1死一、三塁で、5番アルシアが千賀の変化球を右前へ運ぶ適時打。「二塁手の頭上を抜くような打球を意識して、何とか食らいつけた」と一塁上で大きくガッツポーズした。 追うソフトバンクは4回、先頭の3番中村晃が右翼へソロ本塁打を放ち反撃開始。7回、先頭の5番デスパイネが三塁線を破る一打で激走し二塁打とすると2死後、8番高田が左翼へ適時打を放ち追いついた。 日本ハムは8回、2死から1番西川が右翼へ二塁打を放つと大田が左翼へ勝ち越しの適時二塁打。続く近藤も右中間を破る適時二塁打を放ち、突き放した。 投げては7回2失点の先発マルティネスから8回は宮西、9回は石川直が無失点で締めた。ファイナルステージ進出の行方は15日の第3戦に委ねられた。

◆日本ハムのニック・マルティネス投手が力投し、CS初登板で白星をつかんだ。 2点リードの4回、中村晃に右越えソロを献上も、強力打線相手に間合いを取り、自らのペースを貫き立ち向かった。1点リードの7回に同点とされ、7回5安打2失点で降板。 今季は対ソフトバンク戦4試合で、防御率1・86の好相性を誇ってきた。「鶴岡さんが、いつも通り最高のリードをしてくれた。際どいゴロなども多い中、野手陣の守備にも助けられたし、(西川)遥輝(大田)泰示、近藤も最高のタイミングで打ってくれた」とチームメートへの感謝を忘れなかった。

◆日本ハム大田泰示外野手が、崖っぷちのチームを救う一打を放った。2-2の同点に追いつかれた直後の8回、2死から1番西川が右翼へ二塁打。チャンスで打席に入った。カウント1-0から外角低めのフォークを2連続空振りし追い込まれた。同じく外角低めの厳しいコースを2球続けて見切り6球目、真ん中低めに入った直球を振り抜いた。左翼へ決勝の適時二塁打。続く近藤も適時二塁打で続いた。 試合後のヒーローインタビューで「気持ちだけ。勝つことだけを考えた」と大田。「ボール球に手を出して追い込まれた。そこから食らいついた」と決勝打を振り返った。 今季限りで引退した矢野のユニフォームに身を包んでヒーローインタビューに臨んだ。「昨日、電話しました。アドバイスをもらったので打てたと思う」。同じく巨人から移籍した兄貴分の助言にも応えた。 「ホッとしているけど明日がある。一生懸命、必死に、泥だらけになってやるだけ。明日も勝ちます」と大田。逆王手の勢いでファイナルステージ進出を決める。

◆日本ハムが接戦を制し、CSファイナルステージ進出へ逆王手をかけた。 2-2の8回2死走者なしから、試合が動いた。1番西川が中堅フェンス直撃の二塁打で出塁。続く2番大田が勝ち越しの左越え適時二塁打。さらに3番近藤も右中間へ適時二塁打を放った。 決勝打を放った大田は「ボール球に手を出して追い込まれて、本当に食らいつくだけだった。(打球が)本当にいいところに飛んでくれた」と、笑顔で振り返った。 栗山監督は「ギリギリに追い込まれた時に、どういう野球をするのですか?というところだった。(西川)ハルキがね、ああいう形で2アウトから行ってくれて、すごくいい攻撃だったっと思います。(大田は)一生懸命になりすぎてて、自分の形が崩れそうになっていたところもあった。(大田)タイシの必死さがね。あそこで打たないと嫌だなぁと思って見ていた。あの1本でタイシも明日(普通に)野球が出来る」と、振り返った。 これで1勝1敗とし、勝たなければいけない15日の第3戦に臨む。

◆ソフトバンク加治屋蓮投手(26)が敗戦投手になった。同点の8回2死から3連続二塁打を打たれ、2点を失った。 2死から西川に二塁打を打たれ、打者は大田。1ボールから2球続けてフォークで空振りを取り、追い込んだ。そこから2球続けてフォークが外れ、フルカウントに。次も捕手甲斐からの要求はフォークだったが、首を振って直球を選択しファウル。そして7球目だ。加治屋は再び、フォークのサインに首を振った。「今年一番成長できた」と話す、内角直球での勝負を選んだ。だが甘く入り、左中間へ勝ち越し打を許す。続く近藤にも二塁打を打たれ、2点のリードを奪われた。 加治屋は「自分を信じていった結果。もっと厳しく行ける場面でもあった。詰めの甘さが出たのかなと思う」と悔やみ「また明日、絶対リベンジします」と気合を入れなおした。

◆日本ハムが接戦を制し、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ進出に逆王手をかけた。2-2の8回2死二塁で、大田泰示外野手(28)が、CS7打席目で初安打となる決勝の左越え適時二塁打を放った。レギュラーシーズンから続いていた対ソフトバンクの連敗は8でストップ。対戦成績を1勝1敗とし、今日15日の最終第3戦で勝てば2年ぶりのファイナルステージ進出だ。 気持ちで打った。大田のバットが窮地のチームを救った。同点に追いつかれた直後の8回2死二塁。ソフトバンク加治屋の149キロ真っすぐに反応した。「ボール球に手を出して追い込まれて...。食らいつくだけで、本当にいいところに飛んでくれて良かったです」。打球は左翼手・グラシアルの頭を越えていった。決勝の適時二塁打。二塁ベース上で、ベンチに向かって大きくガッツポーズした。 必死だった。8回の打席に向かう前のことだ。「ヨコ、貸して」。3回に先制ソロを放っていた横尾のバットを借りた。「こういうので吹っ切れたらいいなと思ったし、自分の目に見えるところで変化を起こそうと思った」。第1戦では7回に代打が送られるなど、決勝打まで6打数無安打。悪い流れを変えるべく、なりふり構わず、どうにかしたいという思いで歩み寄った後輩のバットから執念のCS初安打が生まれた。 前夜には、尊敬する先輩にもアドバイスを請うていた。今季限りで現役引退する矢野に電話したという。「(打てなくて)悔しかったし、(気持ちを)落ち着かせてくれた」。安心できる先輩の声を聞いて心も整え、最高の結果を出した。試合後には感謝の思いを示すように、矢野の背番号「37」のユニホームを着てヒーローインタビューへ。「アドバイスをもらったので、安打が打てたと思います」と、メッセージを送った。 値千金の一打で、負ければ終わりという崖っぷちから1勝1敗の五分へと盛り返した。「勝つしかないんで、貪欲に必死になって一生懸命やるだけです。とにかくみんなで束になって、数少ないチャンスをものにしてやっていければいい」。目指すところは日本一だけ。ファイナルステージへ、この勢いのまま駆け上がる。【山崎純一】

◆JR博多駅から新幹線つばめで24分、筑後船小屋駅を降りるとすぐにソフトバンクのファーム施設「ホークスベースボールパーク筑後」が見えてくる。総工費約60億円かけて16年に完成。広大な敷地の中に両翼100メートル、中堅122メートルの全面人工芝球場にサブ球場、室内練習場、選手寮...と最新設備が整う。 CSの試合前練習と同時刻に、背番号3ケタをつけた3軍の育成選手たちが汗を流していた。10年に興南(沖縄)を甲子園春夏連覇に導いた島袋も背番号「143」を背負う。球場ツアーで少年野球チームを引率した女性は「ヤフオクドームと同じ広さですが、ホームランテラスがないので、ここで練習するとホームランが出やすくなりますよ」と説明。この日先発した育成出身バッテリーの「千賀&甲斐」を夢見て、日本屈指の環境で練習を積む。 ソフトバンクは05年から育成選手を計54人指名し、17人が支配下選手になった。"伝説のドラフト"は10年。育成4位で千賀、同5位牧原、同6位で甲斐を獲得した。当時指名に携わった関係者は「育成は一芸が大事。甲斐はとにかく肩が強かった」と言う。170センチと小柄で、他球団は身長を理由にリスト外にしていた。メガネの捕手は通用しない概念を変えた古田敦也のように強肩を武器に「小柄な捕手」への偏見を払拭(ふっしょく)している。 千賀は6回2失点で試合をつくり、甲斐は1回無死一塁から飛び出した盗塁王の西川を刺した。一方で五分に戻した日本ハムは、育成選手を取らない。イースタン・リーグの試合数では十分な実戦経験を積ませられないことが理由で、その分期待の若手を強化指定選手として、2軍戦で定められた年間打席数や登板数を与える。西川、中島...クローザー石川直もそんな育成法でチャンスをつかんだ。 ちなみに育成選手を最も指名しているのは巨人の計65人で、支配下選手になったのは16人。両軍とも独自の育成哲学を持つ中で、決勝打を放ったのは巨人ドラフト1位の日本ハム大田だった。【前田祐輔】

◆日本ハム中田が、とんだ災難に見舞われた。1回の一塁守備で強烈なゴロが急所に直撃。もん絶しながらも一塁ベースカバーに入った投手に送球し、アウトを取った。 しばらく動けなかったが、攻撃では4回の第2打席で追加点につながる左前打。ゴロが股間に当たったのは初めてで、普段はファウルカップをつけない派の中田も「まだ痛い。気分悪い。明日からは"金カップ"つけるよ」と、さすがに懲りていた。

◆日本ハムは8回に西川、大田、近藤の連続二塁打で勝ち越し。プレーオフ、CSで1イニング3者連続二塁打は、15年1S第1戦でロッテの福浦、クルーズ、鈴木が記録して以来2度目。 日本シリーズでは四球を挟まない3者連続二塁打は記録されておらず、今回の日本ハムがポストシーズン史上2度目だ。勝利打点は勝ち越し打の大田。今季公式戦の大田は規定打席に到達しなかったものの、勝利打点はリーグ5位の12度、肩書付きの殊勲安打がリーグ10位の21本。規定打席に到達しない打者では両部門とも両リーグ1位の勝負強さを土壇場で発揮した。

◆日本ハムが1勝1敗に追い付いた。 3試合制のプレーオフ、CSで1勝1敗となったのは過去15度。追い付いたチームが第3戦も連勝したのは昨年のDeNAと楽天まで4度あり、突破確率は27%。

◆日本ハム栗山監督は、躍動した選手たちを頼もしく見ていた。 試合を決めた8回の攻撃。2死無走者から1番西川、2番大田、3番近藤の3連続二塁打で2点を奪った。「(1番から)ハルキ(西川)、タイシ(大田)、コンちゃん(近藤)という、本当にいいバッターをつなげているつもりなので。本能というか本質的なものが、追い込まれれば追い込まれるほど出ると思っていた。いい攻撃だった」。7回に同点に追いつかれていた。盛り上がる敵地の雰囲気にのみ込まれず、試合の流れを引き戻した3人の底力を信じていた。 重要視していた第2戦を取った。12日のCS前日会見で「2つ目を取れば、勢いが付いて、そのまま行ける」と見据えていた。今日15日も連勝すれば、勢い十分で西武との最終決戦に臨める。「こういうギリギリの勝負をする。そういう中で何が生まれるのか。野球のすごさを、我々もやりながら感じていたい。なんとか、もう少し野球をやっていられるように頑張ります」。3位からの下克上ロードは、ここからが本番だ。【木下大輔】

◆日本ハムのニック・マルティネス投手(28)が、クライマックスシリーズ(CS)初登板で初勝利を挙げた。前日の第1戦で12安打を許し、8失点で敗れたソフトバンク打線を相手に、7回5安打2失点と力投した。来日1年目の今季は、上沢とともに投手2本柱の1人としてフル回転。大舞台でも頼もしさを発揮し、今日15日の第3戦へ望みをつなげた。 何度もほえ、拳を振り乱した。マルティネスが、あふれ出る闘志を力に変えた。「とてもアドレナリンが高く出ていたよ」。来日1年目。野球人生で初めてのプレーオフのマウンドは、興奮の連続だった。「少し熱くなっていると意識する中で、だいぶ結果は変わってくる。良いところを引き出せたね」。前日の第1戦8失点で敗れた強力打線に、7回2失点。力強くCS初勝利をつかんだ。 ボルテージを、いきなり振り切った。1回先頭上林の打球が、一塁中田の股間付近を直撃。アウトにしてからもん絶する主将に、心配そうに駆け寄り、声をかけた。続く明石のファウルゾーンへの飛球は、三塁横尾が客席ギリギリ、捕球後は転がりながらアウトを取った。「一番大事な(試合の入りの)時に、みんなが力を出してくれて勝利につながった」。胸を打たれ、意気に感じ、そして熱が入った。 今季は上沢とともに、2本柱の1人として10勝をマーク。中でもソフトバンク戦は、先発した4試合で防御率1・86を誇った。「常に集中力を切らさないことが大事」と気構えを明かし、この日は「気持ちが高ぶっている中での制球が大切」と大一番での力投につなげた。栗山監督は「普通(シーズン中)の時のように、自分の力を出してくれた」と度胸を評価した。 力の源になっている妻キンバリーさんと娘ヴェラちゃんは、米国に帰国中。連絡は毎日取り合い、試合中は時差で夜中だったが、ネットテレビを通してエールをもらった。「僕も頑張ったけど、今日はチームのみんながしっかり力を出し切った」。気迫満点の助っ人が、チームの息を吹き返させた。【田中彩友美】 ▼日本ハム先発マルティネスが7回5安打2失点で、CS初登板を白星で飾った。日本ハム外国人投手のCS勝利は、07年ロッテとの第2ステージ(当時)第3戦グリン、12年ソフトバンクとのファイナルステージ第3戦ウルフ、14年オリックスとのファーストステージ第3戦クロッタに続いて4人目。

◆ソフトバンクが日本ハムに競り負け、クライマックスシリーズ(CS)第1ステージ突破に逆王手をかけられた。工藤公康監督(55)は、勝つか引き分ければ5年連続ファイナルステージに進出し、負ければ敗退となる第3戦の先発に東浜巨投手(28)を起用する。責任感の強い右腕にプレッシャーがかかる大一番を任せ、総力戦で突破する。 エース千賀で連勝突破を狙ったが、8回に4番手の加治屋がつかまった。逆王手を許す悔しい敗戦にも、工藤監督は「粘り強く戦ってくれた。マルティネスにはうまく緩急をつけられた」と、7回に1度追いついた粘りを前向きにとらえた。 負ければシーズン終了となる大事な第3戦の先発は東浜に託す。工藤監督は「責任感が強いことなども考えたうえ。彼の持っているものをしっかり出してくれれば」と、起用の理由を説明した。東浜は試合後「ここまで来たので力を出すだけ。やるしかない。調整の難しさなどは考えずに明日(15日)の試合だけを考えていた」と、巡ってきた大一番へ気合を入れ直した。 CS2試合で日本ハム打線を見た東浜は冷静だった。「印象うんぬんじゃない。短期決戦は1戦1戦別物。(第3戦は)また違った戦いになる。しっかり投げたい」。今季は右肩痛で5月26日に離脱した。8試合で1勝5敗。それでも完投負けが2試合あった。右膝や右肩に違和感を覚えながらも、昨季最多勝右腕の責任感で投げ続けた。8月に復帰後は9戦で負けなしの6連勝。10月は2戦2勝で防御率0・71と絶好調だ。 シーズン最終戦の8日ロッテ戦で7勝目を挙げた時、「まだ離脱した分を返せていない」と、CSへの強い思いを口にした。ポストシーズンはCSは過去6試合(先発1試合)、日本シリーズは3試合(先発2試合)でまだ0勝。チームが崖っぷちの今こそ、ポストシーズン初勝利を挙げたい。倉野投手統括コーチも「かかる期待は大きい。後半戦は状態もいいので」と話す。 07年からのパの第1ステージで○●から第3戦を迎えたチームは6度あり、そのうち5度は勝って突破している。東浜が初回から全力で飛ばし、武田、石川が待機する分厚い救援陣に早めにバトンを渡す。工藤監督が就任以来、1度も逃していないファイナルステージ進出を決める。【石橋隆雄】

◆王手をかけた工藤ソフトバンクは、所沢への切符を連勝で手にすることはできなかった。日本ハムとのクライマックスシリーズは1勝1敗。最終3戦目にもつれ込んだ。「やるしかないじゃろ。勝ったらファイナルステージ。負けたら終わりじゃ。でも、これからどうしたら勝てるか考えるわ」。試合後、達川ヘッドコーチはそう言った。泣いても笑っても、今日15日の一戦で勝負は決まる。 それにしても日本ハムとは「因縁の対決」が多い。 一昨年のシーズンは11・5ゲーム差をひっくり返されリーグ優勝をさらわれると、CSファイナルでも涙をのんだ。日本ハムとはプレーオフ、CS制度になって計4回(ファースト、ファイナル含めて)の対戦があるが、ホークスが勝ったのは14年のファイナルでの1度きりだ。時計の針を戻せば、06年に札幌ドームのマウンドで泣き崩れたエース斉藤の姿が思い浮かぶし、12年は西武を倒してファイナルに進んだものの、3連敗(アドバンテージ1勝)で完敗した。ただ、3度の敗戦とも敵地・札幌ドームだった。やはり、短期決戦のホームアドバンテージは大きい。 必勝法に頭を悩ませている達川ヘッドコーチも「安心データ」を持ち出して気持ちを整えていた。「過去に2回しかないんじゃろ」。これまでに、第1ステージ、ファーストステージでは初戦白星のチームが抜けきれなかったのは、パ・リーグでは14年間で06年、17年の西武だけだ。そう簡単に負けることはないと思うのだが...。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

◆ソフトバンクの勝利の方程式が崩れた。同点の8回に加治屋が2点を失い、日本ハムと1勝1敗に持ち込まれた。 加治屋はサインに首を振った。8回2死二塁で打者大田。フルカウントになり7球目だ。選択したのは「今年一番成長できたインコース真っすぐ」。だが真ん中付近に甘く入り、左中間を破る勝ち越し打。続く近藤にも打たれ、2点を失った。「自分を信じていった結果。もっと厳しく行ける場面でもあった。詰めの甘さが出たのかなと思う」。捕手甲斐の要求は、この打席で2度空振りさせていたフォークだった。「冷静になっていれば...。フォークに合っていないのは誰が見てもわかるところ。もっと余裕を持った精神状態でマウンドに上がらないといけない」と、悔しさを込めて振り返った。 工藤監督の信頼は揺るがない。「打たれることもある。ずっと信頼して使ってきた。そこは変わらない」。今日15日も変わらず、勝利のかかった場面ではセットアッパーとして加治屋を起用する。今季リーグ最多72試合に投げた右腕も「コーチ、野手の方からも『切り替えて頼むぞ』と言っていただいた。また明日、絶対リベンジしたい...リベンジします」。静かな口調で言い切った。【山本大地】

◆パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージ(3試合制)第2戦は、日本ハムが4-2で競り勝ち、1勝1敗とした。15日の第3戦に勝てばCS・ファイナルステージ(17日開幕、メットライフ)進出が決まる。第3戦終了時点で勝敗数が同じ場合は、レギュラーシーズン2位球団が進出となるため、引き分けでもソフトバンクが進出となる。  日本ハムが、負けられない一戦をものにした。8番・横尾が三回に先制ソロを放つと、四回には一死一、三塁からアルシアが適時打を放ち2-0とした。先発のマルティネスがその裏にソロ、七回に適時打を浴びて同点とされたが、八回二死走者なしから1番・西川が右中間フェンス直撃の二塁打。2番・大田が左中間へ適時二塁打、3番・近藤が右中間へ適時二塁打を放ち、4-2と勝ち越した。  マルティネスは7回107球を投げて5安打2失点。八回からは宮西、石川がともに1回を無失点で抑え、日本ハムが逃げ切った。

◆ソフトバンクの千賀は6回3安打2失点(自責点1)。三回に横尾に先制ソロを献上、四回は遊撃手の高田の一塁悪送球で先頭打者を出し、1死一、三塁からアルシアに適時打を浴びた。  試合はつくり「それなりの役割は果たしたと思う」と言いながらも、111球を要して攻撃にリズムをもたらせなかった点を反省。「テンポの悪さはずっと僕の課題の一つ。ジャパさん(高田)も僕のテンポが悪くなかったら、失策をしていなかった」と自らを責めた。 嘉弥真(七回に2番手で登板し1/3回を1安打無失点) 「球が高かった。ここぞ、というときに力みすぎ」 大竹(CS初登板で1回1/3を無失点) 「リズムよく投げられた。真っすぐの調子が良かった」

◆パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージ(3試合制)第2戦は、日本ハムが4-2で競り勝ち、1勝1敗とした。15日の第3戦に勝てば、2年ぶりのCS・ファイナルステージ(17日開幕、メットライフ)進出が決まる。  2-2の八回二死二塁から勝ち越し打を放った大田泰示外野手(28)は試合後、今季限りで引退する"兄貴分"矢野のユニフォーム姿でヒーローインタビューに応じた。お立ち台での一問一答は以下の通り。  --どういった思いで試合に入った  「本当に気持だけです。勝つことだけを考えて全員準備しましたし、本当にいい結果になってよかったです」  --勝ち越し打の感触はどうだった  「ボール球に手を出して追い込まれて、本当に食らいつくだけで...。本当にいいところに飛んでくれてよかったです」  --これがCS初安打  「ほっとしましたけど、きょう勝って明日もあるので、しっかり準備して、あしたもっと打てるように頑張りたいと思います」  --試合前、栗山監督は「この2戦目を取れば流れが変わる」と話していた  「きのうは圧倒的な打力で負けてしまったので、きょうはマル(ティネス)ちゃんがしっかり抑えてくれて、いい流れで打撃もできましたし、このまま勢いに乗ってあしたもいければと思います」  --今季限りで引退の矢野のユニフォームを着てのお立ち台  「きのう電話しました。アドバイスもらったので、ヒットを打てたと思いますし、なにより兄貴分の矢野さんが引退して、矢野さんの分まで頑張りたいと思います」  --あすに向けて意気込みを  「勝つしかないいんで、どん欲に、必死になって一生懸命頑張るので、あしたも応援よろしくお願いします」

◆ソフトバンクの中村晃が2点を追う四回に技ありのソロを放った。マルティネスのチェンジアップに体勢を崩されながら右越えに運び「しっかり捉えられた。いい投手から打てて良かった」と喜んだ。  オフに長打力アップを目指してトレーニングに励み、今季は自己最多となる14本塁打をマークした。第3戦の相手先発、杉浦について「しっかり映像を見て研究したい」と次を見据えた。

◆日本ハムの横尾がCS初本塁打で勢いを付けた。0-0の三回1死から左翼ポール直撃の一発を放ち「最高の形で先制点が取れた」と表情を緩めた。  それまで無安打投球だった千賀の浮いたスライダーを思い切り引っ張り「角度的にファウルと思った。いい感じで捉えられたので、切れなかった」と自画自賛した。レアードが左腹斜筋肉離れで戦列を離れ、代役で三塁に入っている。持ち前の長打力で穴を埋めた。 近藤(八回に適時二塁打) 「いつやっても緊張感がある。流れで打たせてもらった」

◆日本ハムの石川直がCSで初登板しセーブを挙げた。4-2の九回を完璧に抑え「緊張感がある中で(しっかりと)投げることができた」と胸を張った。  最速155キロの直球と落差の大きいフォークボールでデスパイネ、グラシアルから連続三振を奪い、松田宣は左邪飛に仕留めた。一発のある3人を封じ「いい打者が並んでいたけれど、初球からいい球を投げられて良かった」と笑顔だった。 日本ハム・吉井投手コーチ(石川直に) 「開幕のころに比べればしっかり投げている。頼もしく感じた」

◆ソフトバンクの高田はミスにめげず、躍動した。遊撃の守備で四回に一塁悪送球で先頭打者を出して2点目につなげられたが、1-2の七回2死三塁の打席では左前へ適時打。マルティネスのカーブを捉え「何とか取り返さないといけないと思っていた」と振り返った。  チームは敗れたものの、守りでも五、七回に難しい当たりを好捕して意地を見せた。不動の遊撃手だった今宮を左太もも痛で欠き、先発を任されている。勝負の第3戦へ「冷静さを失わないようにしたい」と話した。 柳田(3打数無安打) 「いいところに投げられたらなかなか打てない」

◆勝利を呼び込んだ八回二死からの3者連続二塁打。先陣を切った西川は、一回に四球で出塁しながら甲斐に一塁で刺されるという盗塁王には悔しい場面もあったが、「反省してすぐ切り替えた」。4点目をたたき出した近藤は「(レギュラーシーズン)3位なので攻め続けたい」と気合を込めた。

◆好調の中村晃が反撃のソロを放った。「カットボールとチェンジアップが気になるので、(狙いを)どちらかにしていきました。きょうもきのうも感覚は違うし、あした、またどうするかです」。四回先頭で、マルティネスのチェンジアップを右翼ホームランテラスへ。第1戦の猛打賞に続く活躍。昨年のファイナルステージでも2本の決勝本塁打を放った勝負強さは健在だ。

◆八回に登板した宮西は今季のCSで初ホールドをマークすると、九回に投げた石川直はCS初登板セーブを記録。宮西は4-2と勝ち越した直後の八回二死二塁で柳田を低めのスライダーで泳がせて右飛に仕留め「点を取ってくれたので、流れ的には大丈夫かなと思っていた」と汗をぬぐった。九回を3者凡退に抑えた石川直は「直球は狙ったところに投げられたし、フォークもいいところに決まった」と満足そうだった。

◆千賀は6回3安打2失点(自責1)でリードを許して交代した。「先制点を与えて流れを悪くしてしまった。それなりの役目は果たせたけど、イニングも、もっと投げれる投手にならないと」。三回に許した初安打が横尾の先制ソロ。四回は味方の失策から失点した。他の4イニングは三者凡退も、ファウルで粘られて球数が増えた。CSは通算4度目の先発で、未勝利(0勝2敗)のままだ。

◆先発のマルティネスが7回5安打2失点。日米を通じて人生初のポストシーズン登板となった右腕は「状態はよかった。すべての球種でストライクが取れた」と納得の表情。5月に日本で第1子の長女が誕生。家族は現在、米国で生活しており、この日はインターネットで観戦していたという。まな娘の話になると「大きくなっている。少し太ってきたかな」と優しい笑顔。新米パパが大きな1勝をささげた。

◆パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ(3試合制)第2戦は、3位日本ハムが4-2で2位ソフトバンクに競り勝ち、対戦成績を1勝1敗とした。15日の最終第3戦で、ソフトバンクが勝つか引き分ければ5年連続で、日本ハムが勝てば2年ぶりのファイナルステージ進出が決まる。  試合終了の瞬間、将の視線は落ちなかった。ソフトバンク・工藤監督はナインの肩を順にたたくと、会見場でも重い空気はなかった。  「これまでも彼(加治屋)のことは信頼してきた。あしたも変わらないです」  同点の八回に投入した加治屋がつかまった。二死二塁で大田にフルカウント。得意球のフォークの要求に首を振って投じた内角直球を、左中間に運ばれた。球団タイ記録の72試合に登板したセットアッパーは猛省した。  「ことし自分が成長できたのは内角のまっすぐ。自分を信じて選択したけど、フォークに合っていなかったのは誰がみても明らか。冷静になれませんでした。あした絶対にリベンジします」  今季中に大田を内角で仕留めた記憶もあって選んだ勝負球。裏目に出たが、指揮官はコーチ陣の前でも「あしたも同じ局面で使う」と宣言した。  四回に失点につながる失策を犯した高田には「いいから明るく前を向いて」とすぐに声をかけた。その後は好プレーを連発。七回二死三塁で、コーチ陣から代打の提案もあったが、そのまま打席に送って同点打。2試合で8打数無安打の松田宣についても「大丈夫。打ってくれます」と即答した。その心情を達川ヘッドコーチも代弁した。  「調子のいい悪いはあるけど、1年頑張った人を信頼することは大事」  昨年のCSでは窮地で奇襲も目立った将。今度は"心中"で、勝負の第3戦に臨む。(安藤理) 四回に失点につながる失策も、その後は好守を連発して七回に同点打も放ったソフトバンク・高田 「なんとか取り返したかった。絶対に打たないといけないと思いました」 第3戦に先発するソフトバンク・東浜 「ここまできたら力を出し切るだけ。(相手の)印象うんぬんじゃないです」 2試合で8打数無安打のソフトバンク・松田宣 「結果が出ていないけど、あしたはナイターだから考える時間もある。短期決戦は、その場でどう合わせるか」

◆パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦が行われ、リーグ3位・日本ハムは、同2位・ソフトバンクに4-2で勝ち1勝1敗とした。2-2の八回二死二塁で大田泰示外野手(28)が決勝の左越え適時二塁打を放つなど、3者連続の二塁打で勝利を決定付けた。15日の第3戦に勝てば、2年ぶりのファイナルステージ(メットライフ)進出が決まる。  チームの思いを乗せた打球が左翼手・グラシアルの頭上を越えた。2-2と追いつかれた直後の八回二死二塁。大田が加治屋の149キロの直球を捉えた。打球が抜けると右手で力強いガッツポーズを繰り出し、ほえた。  「気持ちだけです。勝つことだけ考えた。いい結果になって、よかったです」  必死に食らいついた。二死から前打者の西川が右中間フェンス直撃の二塁打。このチャンスでボール球に手を出して簡単に追い込まれながらも粘り、フルカウントからの7球目を振り抜いた。続く近藤も右中間適時二塁打を放ち、3者連続二塁打で2点を勝ち越した。  巨人時代の2014年以来となるCSの舞台。前日13日の第1戦で3打数無安打に終わり、七回の打席で代打を送られた。この日も安打が出ず「吹っ切れたらいいな」と第1打席に先制のソロ本塁打を放った横尾のバットを手に取り、第4打席で結果につなげた。  "兄貴分"の思いも背負ってCSに臨んでいる。同じく巨人からトレードで移籍した矢野が今季限りでの現役引退を決断。10日のロッテ戦(札幌ドーム)後に行われた引退セレモニーでは花束を手渡して号泣。翌11日のシートノックでは矢野のユニホームを着て登場し、試合中はベンチに飾った。前日の試合後には、矢野に電話をかけて「どんな感じで見えましたか」と相談もしていた。この日のお立ち台は矢野のユニホームを着て上がり「アドバイスをもらってヒットを打てた。矢野さんの分まで頑張りたい」と白い歯をのぞかせた。  3位からの下克上へ。今季、チームを支えた2番打者が、チームの流れを変えた。 (中田愛沙美) 三回に左翼ポール直撃の先制ソロを放った日本ハム・横尾 「角度的にファウルと思ったが、いい感じで捉えられたので、切れなかった」

◆1球の怖さを改めて思い知らされた。大田の勝ち越し二塁打の場面である。八回二死二塁でフルカウント。加治屋が投じたのは149キロの速球。捕手の甲斐は内角を要求したが、投げきれずに真ん中に入った。痛恨の失投である。  ボールゾーンに落とすフォークで空振りを2度奪って追い込んだが、同じ軌道のフォークを2球見極められてフルカウントに。その経緯を踏まえれば、強いボールで内角を突く配球は間違いではなかったと思う。ただ、加治屋が腹をくくりきれなかったのではないか。  歩かせれば(もしくはぶつければ)、次打者は近藤。その思いが内角を厳しく攻めきれなかったとみる。投手目線で言わせてもらえば、あの場面で「絶対に内角に投げる」という強い気持ちがあれば、甘く入ることはまずない。  日本ハムはマルティネスの好投が光った。真っすぐに力があったほか、カットボール、チェンジアップ、ツーシームを駆使してホームベースを広く使い、ソフトバンクの勢いを止めた。  がっぷり四つで迎える第3戦の行方は正直読めない。いずれにせよ総力戦。両監督がどのようにカードを切っていくか、注目したい。 (サンケイスポーツ専属評論家)