ヤクルト(★1対4☆)巨人 =クライマックスシリーズ1回戦(2018.10.13)・明治神宮=
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巨人
1010002004611
ヤクルト
0100000001400
勝利投手:上原 浩治(1勝0敗0S)
(セーブ:山口 俊(0勝0敗1S))
敗戦投手:小川 泰弘(0勝1敗0S)

本塁打
【巨人】坂本 勇人(1号・3回表ソロ)

  DAZN
◆巨人がファイナルステージ進出に王手をかけた。巨人は初回、岡本の犠飛で先制する。その後同点を許すも、3回表に坂本勇のソロで勝ち越すと、7回には陽の適時打などで2点を加えた。投げては、先発・今村が5回途中1失点。その後は3人の継投で逃げ切った。敗れたヤクルトは、打線が沈黙した。

◆レギュラーシーズン3位巨人が接戦を制し、CS初陣を先勝した。これで巨人は広島と対戦するCSファイナルステージ進出へ王手をかけた。 巨人は1回1死二、三塁、4番岡本の右犠飛で先制。巨人戦8連勝中のヤクルト先発小川から貴重な先取点を奪った。 1点を追うヤクルトは2回2死二塁に中村の適時中二塁打で追いついた。 巨人は1-1の3回1死に坂本が左翼席へ勝ち越しソロを放った。 巨人は5回2死二塁で、先発今村から上原を投入。山田哲人に変化球で空振り三振に仕留め、一打同点のピンチを脱した。上原は6回も続投し、2三振を奪うなど3者凡退に抑えた。 巨人は7回無死、陽岱鋼の左中間への二塁打で一塁走者の長野が一気に生還。ヤクルト先発の小川は6回3分の1、4失点で降板し、ハフに交代した。巨人は代打亀井の適時打でさらに1点を加えて、リードを3点に広げた。 巨人は7回に畠、8回から2イニングを山口俊で締めくくった。 勝った巨人は3年ぶりCSファイナルステージ進出へあと1勝とした。 敗れたヤクルトはCSファイナルステージへ残り2試合一戦も落とせなくなった。 第2戦目の先発はヤクルト原樹理、巨人菅野。

◆ヤクルト中村悠平捕手が、中越えの同点適時二塁打を放った。 0-1の2回2死二塁、カウント2ボールから、巨人今村のフォークが浮いたのを逃さずに仕留めた。「打者有利なカウントだったので、ゾーンを上げて待っていました。甘くきたので思い切って打つことができました」と振り返った。

◆巨人坂本勇人内野手が球団最多のCS通算7本目となる、1号ソロを放った。 1点差を追いつかれた直後の3回1死。カウント1-1からヤクルト小川の外角低めのスライダーに反応。泳がされながらもバットを残し、拾い上げた。打球は左翼席最前列へと飛び込み、歓声が上がった。「体勢は崩されましたが、うまく芯で捉えることができました」と頼れる主将が納得のひと振りで、主導権を渡さなかった。

◆巨人上原浩治投手が一打同点のピンチを抑えるなど、CS初陣の先勝に大きく貢献した。5回2死二塁で先発今村に代わって登板。 10年ぶりのCSのマウンドでは、ヤクルト山田哲人にカウント1ボール2ストライクの場面で変化球で空振り三振に抑えた。6回も続投し、2三振を奪うなど三者凡退に抑えた。「嫌な思いでした。とにかく0でその回(5回)が終わりましたし、次の回も0に抑えることができてうれしいですね」と振り返った。 巨人は広島と対戦するCSファイナルステージ進出へ王手をかけた。第2戦の先発は菅野になるが、「(菅野に)1人で投げきって下さい。あと一つ勝ってファイナルの方に進めるようにしたい」と意気込んだ。

◆巨人がCS第1戦を快勝し、CSファイナルステージ進出へ王手をかけた。同点の3回、坂本勇のソロで勝ち越すと、7回に陽岱鋼の適時二塁打などで2点を加えた。巨人は先発今村が4回2/3まで3安打1失点と好投、2番手上原らリリーフ陣もヤクルト打線を封じた。第2戦先発はヤクルトが原、巨人が菅野と発表。

◆ヤクルトは、巨人キラーのライアン小川泰弘投手を先発に立てたが、初戦を落とした。1回に岡本に先制犠飛を打たれると、同点に追いついた直後の3回には坂本勇に勝ち越し弾を浴びた。変化球をうまく拾われた。4~6回は無安打に抑えたが、7回に連打を浴びて降板した。 巨人戦では16年から8連勝中だった小川での敗戦はダメージが大きい。小川監督は「(小川は)いい時と悪い時があるが、今日は決していい方ではなかった。何とか粘っていたけど。今日は終わってしまったので、明日頑張るしかない」と切り替えを強調した。

◆巨人坂本勇人内野手(29)が決勝弾で天敵を沈めた。同点の3回1死、ヤクルト小川の外角スライダーに体勢を崩されながらも左翼席まで運んだ。 16年4月から8連敗中だった小川に土をつけた。 坂本勇が3回に勝ち越し本塁打。CSの本塁打は16年1Sの2戦以来7本目で、そのうち肩書付きの殊勲アーチが同点3本、逆転1本、勝ち越し1本の5本。プレーオフ、CSの最多本塁打はウッズ(中日)ら3人の8本で、坂本勇の7本はチーム最多で歴代4位タイ。殊勲アーチ5本は和田(中日)里崎(ロッテ)内川(ソフトバンク)に並び最多となった。

◆1点リードの5回2死二塁。ブルペンから巨人上原が飛び出した。「行けと言われたところで行くだけ」。対するは今季対戦成績3打数2安打のヤクルト山田哲。「今年打たれているので、嫌だなと思った」と悪夢もよぎったが、一瞬で振り払った。1ボールからスプリット、直球で追い込むと、最後は宝刀スプリットで空振り三振。「うまく落ちてくれた。(小林)誠司のリードもよかった」。心からあふれる喜びを包み隠さず出した。 これだけでは終わらない。ベンチへ戻ると、斎藤投手総合コーチから今季初の回またぎ指令が出た。「頭にはなかった。それでもあれこれ考えても疲れるだけ。気持ちを切ることなくいけた」と43歳の大ベテランらしく受け止めた。3番バレンティンを捕邪飛、4番雄平、5番大引を連続三振。1回1/3を無失点。任務を完璧に遂行した。 メジャー9年間で計4度のポストシーズンを戦い抜いてきた。19試合で1勝1敗7セーブと無類の勝負強さを発揮してきた。「短期決戦は何が起こるか分からない。内容はどうこうじゃない。勝つことだけが大事」。13年にはレッドソックスでワールドシリーズの胴上げ投手に。「言葉では言い表せない。もう、あれ以上の経験はないと思う」。一生の財産が、日本で初の5回からの救援登板も好結果へと導いた。 日本球界では10年ぶりの白星もついたが「こういう時は誰についたとかじゃなく、チームが勝つことが大事」と意に介さない。今日14日は自身も背負った「19」をつけるエース菅野が先発。ヒーローインタビューで「明日は1人で投げきってください!」と後輩への"アメリカン・ジョーク"も飛んだ。米国帰りのレジェンド右腕がビッグウエーブを生み出した。【桑原幹久】

◆2位ヤクルトが"巨人キラー"小川で初戦を落とした。初回に岡本の犠飛で先制を許すと、同点に追いついた直後の3回には坂本勇に決勝ソロ。7回に陽の適時二塁打で追加点を奪われ、なお1死三塁のピンチを招いて降板した。8連勝中だった巨人に7回途中4失点で黒星を喫し「勝てなかったのがすべてなので悔しい」と表情を硬くした。 打線も沈黙した。中村の適時二塁打による1得点のみで、4安打。守備でも細かなミスが出た。75勝中38度の逆転勝利を収めた粘り強さも発揮できず、土俵際に追い込まれた。小川監督は「今日を振り返っても仕方ない。とにかく明日、やるしかない」と厳しい表情で言葉を絞り出した。 "難敵打破"なくして、ヤクルトに未来はない。負けられない今日の第2戦で対戦する巨人菅野には、通算6勝16敗と大きく負け越している。だが神宮に限れば5勝1敗で、今季も土をつけた。勝つには菅野を打ち崩すしかないかと聞かれた指揮官は「もう、それしかない」と語気を強めた。昨季96敗から2位と大躍進を決めたヤクルトが、神宮の大歓声を味方に、なりふり構わず巨人の進撃を止める。【浜本卓也】

◆今季限りで退任する巨人高橋由伸監督(43)が「ジャイアンツ・キリング」への1勝目を挙げた。ヤクルトとのクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージ初戦で4-1と快勝した。積極果敢な采配で初回から田中俊の二盗をきっかけに公式戦8連敗中だった小川から先制点を奪取。5回途中からは盟友上原を投入し、ピンチを遮断すると7回はエンドランを成功させて追加点を奪取。勝率5割未満チームが1度もなし得ていない日本シリーズ進出、そして6年ぶりの日本一へ、執念が詰まったラストタクトで導く。 高橋監督は英断した。1点リードの5回2死二塁。こんなに早く盟友上原を送り込んだことはない。「流れを止めるために行ってもらった。場数は一番踏んでいる投手」。同じ年、同じ日に生を授かった43歳右腕が流れを断ち切るシーンを、ベンチから見届けた。 「失うものはない」。勝率5割未満のギリギリ3位で2年ぶりCSをつかんだ。かつて日本シリーズに出たチームもない。史上最底辺からの挑戦者として指揮した。初回1死一塁から田中俊が二盗を成功させた。シーズンで6盗塁を100%決めているが、初球の企画は技術と勇気が不可欠。「俊太の思いきりが出た」。岡本の先制犠飛で8連敗中の小川から先手を奪う。1点リードの7回無死一塁からエンドランを仕掛け、陽岱鋼の適時二塁打で均衡を破った。代打亀井もダメ押し適時打。采配がビタビタ決まった。流れを、目に見えないうねりを、自ら生み出した。9月19日DeNA戦。完敗を喫し、就任3年で初めて会見に姿を見せず、言葉を発しなかった。感情を整えられなかったのか。違った。高橋監督 感情はいつもあるけど、あの試合は何かを越えたとかではない。話すことは監督としての義務。ああすれば、いろいろ言われることも分かっていた。ただ、雰囲気を、空気を、何かを変えなきゃいけなかった。このままではいけないと。あの場で、思いついたわけじゃないし、前からアリかなと思っていた。むやみやたらではダメ。自分なりの根拠がある。批判を恐れて動かないのはいけない。つきものだから。一線を越えたと思われた行動は、計算と感覚と勇気に裏付けされた決断。だからベンチからきびすを返し、引き揚げた。何かの転機となることを信じて-。以降、チームは最終戦まで6勝2敗1分けと好転した。3日には就任後3年連続のV逸の責任を背負い、辞任を表明した。翌日のミーティングでは「勝敗の責任を取るのが俺の仕事。悔しいけれど、現実はこうなっている。目を背けることはできない」と涙ぐんだ。CS初戦も制した。すべての行動が、源流となって今の巨人を推進している。まだ奇跡への道のりは長い。勇猛果敢な采配に「後がないというのがあるので、シーズンと違った部分をね」と短い言葉に収めた。高橋監督が思いのままに動く。【広重竜太】

◆初ものでクライマックスシリーズ(CS)の初陣を制した。巨人岡本和真内野手(22)が、プロ入り初の犠飛で先制。レギュラーシーズンで歴代最年少を更新する22歳シーズンでの「3割30本100打点」を達成した若き主砲の打点で試合を動かした。1点リードの5回2死二塁のピンチで登板した上原浩治投手(43)が、今季初のイニングまたぎでパーフェクト救援。日本では08年以来のポストシーズンで、今季初の勝利を挙げた。 やっぱり、ファーストスイングがうまかった。1回1死二、三塁。岡本がヤクルト小川に食らいついた。自身初のCS、第1打席の初球。見送ってもおかしくない外角高めの143キロカットボールに、思い切りバットを伸ばした。下っ面をたたいた打球はタッチアップに十分な飛距離。「何とかバットに当てようと思った。うまく飛んでくれて良かったです」と三塁走者田中俊を悠々と生還させる先制の犠飛を放った。 詰まりかけた流れを、スッキリとおさめた。犠飛の直前、マギーの大飛球に二塁走者田中俊が惑った。右翼手の頭上をギリギリ越えたため、二、三塁間からは捕球したようにも見えた。そのため三塁進塁にとどめられた。手放しそうになった絶好の先制機を、若き主砲が1球で取り返した。「割と初回にチャンスが回ってきてたので、良かったです」とシーズンで培った勝負強さを発揮。意外にも犠飛はプロで初めて。100打点を記録した今季でも1本もなかった。 打席を離れれば、22歳の素顔が垣間見える。9月23日、甲子園での阪神戦後。宿舎の食事会場でビールを1杯だけ飲んだ。右手に死球を受け24打席ぶりにヒット。呪縛から解放され、ひっそりと、ささやかな祝杯を挙げた。「今季はずっと飲んでなかったんですが、久しぶりに飲んだ。1口目は今までにないぐらい、おいしかった。でも最後は苦かった」。ご褒美のつもりだったが、苦味にちょっぴり当てられ、飲み干した。プロの世界は甘くない。苦しんだ先に至福がある。自身を戒めた。 ファーストステージ突破へ王手をかけ、クラブハウスへと引き揚げると仲間から出迎えられた。輪に飛び込もうとした瞬間に「サイレント・トリートメント」を食らい「なんでやねん」と笑顔を振りまいた。愛される若き主砲。「もうしばらくは飲まなくていい」と決めた苦い美酒は、日本一のビールかけまで取っておく。【島根純】 ▼22歳3カ月の4番岡本が先制犠飛。日本シリーズでは高卒1年目の86年清原(西武)が4番を打っているが、プレーオフ、CSでは13年1S第1戦浅村(西武)の22歳11カ月を抜く最年少4番。

◆巨人・岡本和真内野手(22)が13日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦のヤクルト戦(神宮)に「4番・左翼」で先発出場。一回一死二、三塁から先制の右犠飛を放った。  相対したのは、チームが8連敗中と苦手とするヤクルト・小川。一死から田中俊の四球、マギーの右越え二塁打で好機を作ると、若き4番がきっちりバットで仕事を果たした。

◆巨人・坂本勇人内野手(29)が13日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦のヤクルト戦(神宮)に「1番・遊撃」で先発出場。1-1と同点の三回一死から、左翼席へ勝ち越しのソロ本塁打を放った。  泳がされながらも、スタンドまで運んだ。これで、球団最多となるCS通算7本塁打目。ファイナルステージ進出へ、主将がバットで牽引(けんいん)する。

◆巨人・上原浩治投手(43)が13日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦のヤクルト戦(神宮)の1点リードした五回二死二塁から2番手として登板。ヤクルト・山田哲を空振り三振に抑えた。  「内容どうこうではない。結果がすべて。勝つことが大事」  こう口にしていた上原が、しっかり結果で示した。1球目は低めのスプリットから入り、2球目もスプリットでストライクを取り、カウント1-1。136キロの直球でストライクを取り、4球目のスプリットで山田哲のバットの空を切った。  今年、10年ぶりに日本球界に復帰。米大リーグ、レッドソックス時代の2013年には、ワールドシリーズで胴上げ投手にもなったが、日本でのポストシーズン登板は08年11月1日の日本シリーズ、西武戦以来、10年ぶりとなった。  「久しぶりなので、どうなるのかわからなういけど、楽しみ。一体感を味わいたい」と口にしていた上原。回をまたぎ、六回も登板し、バレンティンを捕邪飛、雄平、大引を空振り三振に抑えた。

◆巨人・今村信貴投手(24)が13日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦のヤクルト戦(神宮)に先発。五回二死の場面でマウンドを降りたが、ヤクルト打線を1点に抑える粘りの投球を見せた。  試合前日、「イニング関係なく、初回から全力でいきたい。初戦に選んでいただいた感謝の気持ちを持ってマウンドに立ちたい」と口にしていた今村。言葉通り、一回から全力でヤクルト打線に向かっていった。  先頭・坂口を3球で空振り三振に抑えると、山田哲を右飛。バレンティンに四球を与えたが、雄平を一ゴロに仕留めて無失点。二回には先頭・大引に四球を与えて、二死から中村に中越え適時二塁打を浴び、1点を失った。  その後も、毎回走者を背負う苦しい展開だったが、粘りの投球で追加点を与えず。4回2/3で80球を投げ、3安打1失点。緊迫した雰囲気の中、しっかりとゲームを作った。

◆巨人の岡本が0-0の一回に犠飛で先制点をもたらした。1死二、三塁で初球の外角球を右翼へ打ち上げ、レギュラーシーズンで8連敗中とチームが苦手にしている小川から幸先よく1点をもぎ取った。  初めて出場したCSの第1打席で、今季100打点をマークした実力を示した。4番の務めを果たし「とにかく前に飛ばそうと思っていた。先制点につながって良かった」とほっとした様子だった。

◆巨人・陽岱鋼外野手(31)が13日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦のヤクルト戦(神宮)に「7番・中堅」で先発出場。1点リードの七回無死一塁から、左中間へ適時二塁打を放った。  高橋監督の采配がズバリ、はまった。この回、先頭の長野が左前打で出塁。続く陽岱鋼の打席で、カウント1-0からの2球目に、ヒットエンドランのサインを出した。体勢を崩されながらも、陽岱鋼が左中間へ運び、長野も激走でホームイン。8連敗中と苦手としているヤクルト・小川をこの回で降板させた。

◆巨人・亀井善行外野手(36)が13日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦のヤクルト戦(神宮)の七回一死三塁から、代打で出場。中前に落とす適時打を放った。  この回、陽岱鋼の左中間適時二塁打でリードを2点差に広げた直後だ。代わったばかりのヤクルト・ハフにカウント1-2と追い込まれた後の4球目。内角の球を振り抜くと、打球は中前に落ちた。  レギュラーシーズン最終盤。川崎市のジャイアンツ球場で行われた全体練習の日、フリー打撃後、各自、選手が引き上げる中、亀井は室内練習場で黙々とマシン打撃を行った。  「試合に出させてもらっているわけだから、何とかしないと。チャンスでも打てなくなってきている。なかなか体と頭が一致しないけど...」  プロ14年目の36歳。苦しみながらも、決して努力を怠らない。そのひたむきな姿勢が、貴重な追加点を生んだ。

◆レギュラーシーズン3位の巨人が小刻みな加点でリードを奪い、投手陣はヤクルト打線を4安打1失点に抑えて先勝。クライマックスシリーズ・ファイナルステージ(17日開幕、マツダ)進出に王手をかけた。  ヤクルトは小川、巨人は今村が先発登板。巨人は一回、四球とマギーの二塁打で一死二、三塁とすると、岡本が右犠飛を打ち上げて先制した。  ヤクルトも二回一死二塁から中村が中越え適時三塁打を放ち追いつくが、巨人は直後の三回一死から坂本勇が左翼席最前列に飛び込むソロ本塁打を放ち勝ち越した。  その後、ヤクルト・小川は立ち直りを見せ、四、五回をいずれも三者凡退に抑える。対する巨人・今村は三、四回と走者を出しながらも無失点で切り抜けたが、五回二死から坂口に二塁打を浴びて降板。あとを受けた2番手・上原は山田哲を空振り三振に切って取り、ヤクルトに得点を与えなかった。  巨人は1点リードの七回、先頭の長野が左前打で出塁すると、続く陽岱鋼が遊撃の頭を越える適時二塁打を放ち点差を広げる。次打者の亀井が犠打を決め、一死三塁となったところでヤクルトは小川を下げて2番手・ハフをマウンドに送る。上原に代わって打席に入った亀井は中堅への浅いフライを打ち上げるが、ボールは中堅・坂口と二塁・山田哲の間に落ちる適時打となった。  巨人は七回に畠、八回からは山口俊が登板。2イニングを完璧に抑え、反撃を許さなかった。

◆レギュラーシーズン3位の巨人が小刻みな加点でリードを奪い、投手陣はヤクルト打線を4安打1失点に抑えて先勝。クライマックスシリーズ・ファイナルステージ(17日開幕、マツダ)進出に王手をかけた。  以下、2番手として登板しピンチをしのいだ上原の一問一答。  --五回二死二塁、打者・山田哲の場面で登板。心境は  「嫌でした」  --見事に抑えた  「いやもうとにかくゼロでね、あの回を終わりましたし、次の回もゼロで抑えることができたので、それはもう本当にうれしいですね」  --イニングをまたいでの登板、指示は  「投げ終わった後にもう1回ということを言われましたんで、気持ちを切ることなく次の回にきちんと行けることができましたね」  --七回には味方が追加点  「こういう短期決戦は何点あってもいいわけですし、守る方は1点でも少なくということでね、それができた。今日はいい試合だったと思います」  --この先の戦いで大事なことは  「勝つことだけです。内容どうこうじゃなくて、勝つことが大事なんで、みんなでね」  --明日の先発の菅野に期待することは  「1人で投げ切ってください」  --ファンへ  「とにかくあと1つですね、勝ってファイナルの方に進めるように頑張りたいと思います」

◆ヤクルトは打線がつながらなかった。左太もも裏を痛める青木に代わって2番に入った山田哲は意気込みが空回りして4打数無安打のブレーキに。三回無死一塁で二ゴロ併殺打、五回2死二塁で空振り三振を喫し「短期決戦は結果が全てなので...」と悔しそうに振り返った。  打率3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーを達成してチームに貢献した山田哲は「まだ決まったわけではない。粘り強さを出してチーム全体で戦いたい」と気持ちを切り替えた。出番はなかったものの代打に備えていた青木も「短期決戦は流れをどうつかむか。あした勝たないと」と雪辱を期した。 ヤクルト・小川監督 「(先発の小川は)いい方ではなかった。何とか粘ってはいたけど、結果的にはこうなってしまったので。とにかく明日頑張るしかない」 中村(二回に適時二塁打) 「打者有利なカウントだったのでゾーンを上げて待っていた。甘く来たので思い切って打つことができた」 ヤクルト・田畑投手コーチ(小川に) 「状態はそこまで良くなかったが、失投らしい失投は多くなかった。流れが向こうにあったというところ」

◆巨人の山口俊は八回から登板して打者6人を完璧に抑え、2回無失点で初出場のCSでセーブを挙げた。球速150キロ前後の直球を軸に打たせて取り「1点差より楽な展開で投げられた。次につながる」とうなずいた。  球数は25球だった。14日以降も緊迫した試合展開が予想される中、報道陣から連投できるか聞かれると「もちろん」と頼もしく即答した。 今村(五回途中1失点) 「いい緊張感を持って投げることができた。何とか1点に抑えることができて良かった」 陽岱鋼(七回無死一塁で適時二塁打) 「最初はバントかと思ったが、ヒットエンドランだったのでゴロでもいいから何とかバットに当てようと思っていた」 亀井(七回に代打で適時打) 「何とかバットに当てようと思っていた」

◆高橋監督の采配で駄目押しに成功した。1点リードの七回、先頭の長野が左前打で無死一塁。続く陽岱鋼の2球目にヒットエンドランを敢行。打球は遊撃手の頭上を越して中前に落ち、長野は一気に三塁を回って間一髪で生還した。陽岱鋼は「ゴロでもいいから、なんとかバットに当てようと思った」と笑顔。指揮官の攻撃的な戦術が功を奏した。

◆「2番・二塁」で先発した山田哲は4打数無安打。三回、無死一塁では二ゴロ併殺打に打ち取られ、五、八回の打席は空振り三振に倒れた。「内容がよかったというのはいらない。結果がすべてなので」と悔やんだ。敗戦でチームは追い込まれたが「まだ決まったわけではない。粘り強さを見せてチーム全員で勝ちにいきたい」と前を向いた。

◆継投もズバリとはまった。上原の後を受けて2年目右腕の畠が七回から登板し、1回を無失点。3点リードの八回からは山口俊が登板し、2回を無安打投球。CS初登板で初セーブを挙げた。今季終盤に先発から抑えにまわった山口俊は「1点差より楽な展開で投げられた。次につながります。あすも? もちろん投げます」と頼もしかった。

◆ヤクルトのトレーナー陣がそろって赤いランニングシューズを履いていた。これはクライマックスシリーズが開幕するのを控え、ブキャナンとハフの両助っ人投手が日頃の感謝をこめてプレゼントしたものだという。  川端チーフトレーナーは前日12日には「練習で履くのはもったいないくらい」と自分のシューズを履いていたが、開幕したこの日、うれしそうにプレゼント品を履いた。ブキャナンは「シーズンでは投手も野手も一丸となって戦うことができていた。ポストシーズンでもそれを続けるだけ」と一体感を強調。裏方も含めたチーム一丸でファーストステージを勝ち抜く。

◆セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージ(3試合制)が開幕し、レギュラーシーズン3位・巨人が同2位・ヤクルトに4-1で勝利した。  〔1〕公式戦3位の巨人が先勝。セのCSファーストステージで第1戦に勝利した球団は過去11度のうち9度でファイナルステージに進出、突破率は81・8%。プレーオフ、CSで3位球団が先勝したケースはセ・パを合わせて過去12度中11度で進出。逃したのは2009年のヤクルトだけで、突破率は91・7%と非常に高い。  〔2〕プレーオフ、CSで公式戦の勝率5割未満の3位球団(巨人は・486)がファーストステージ第1戦に勝ったのは09年のヤクルト(・497、敗退)、13年の広島(・489、ファイナルステージ進出)、16年のDeNA(・493、同)に次いで4球団目。  〔3〕43歳6カ月の上原が勝利投手。40歳以上になってプレーオフ、CSで白星を挙げたのは、08年の阪神・下柳剛の40歳5カ月(第1ステージ第2戦)、13年の楽天・斎藤隆の43歳8カ月(ファイナルステージ第4戦)に次いで3人目で、年長2番目。セでは最年長勝利となった。

◆ヤクルトは13日、巨人に1-4で敗戦。レギュラーシーズンでは、2016年4月から巨人戦8連勝の小川泰弘投手(28)が先発したが、七回途中5安打4失点で敗戦投手となった。痛恨の1敗でCS敗退危機に追い込まれた。  2戦先勝の短期決戦で試合の流れを呼び込めなかった。土俵際に追い込まれ、小川監督は厳しい表情を浮かべた。  「きょうは終わってしまったので、また明日、頑張るしかない。きょうのことを振り返っても仕方がない」  レギュラーシーズンでは16年4月から巨人戦8連勝。中11日と万全を期した先発の小川が七回途中4失点と苦しんだ。一回一死一塁から初球に二盗を許し、続くマギーの右中間への飛球は雄平が捕球できず、二塁打に。七回無死一塁からは陽にエンドランで適時打を許し、守備のミスも絡んで4点目を奪われた。  「状態うんぬんではなく、勝たないといけない試合だった。悔しい」と小川。短期決戦仕様で勢いに乗った巨人に対し、紙一重の差が点差になって表れた。  この日、チームは2日のDeNA戦(神宮)で左太ももを痛めた青木を登録し、代打待機させる決断を下した。「短期決戦は流れをどうつかむか。明日勝てるようにしたい」と青木。14日の先発は菅野で状況が整えば代打で出場する可能性はある。  試合前のミーティングでは石井打撃コーチらが「ここにいる幸せを感じながらプレーしよう」と呼びかけたという。試合後にはシーズン中と同様に、ベンチ裏で振り込む選手の姿があった。昨季96敗から再起した底力を見せるときが来た。 (長崎右) 小川についてヤクルト・田畑投手コーチ 「状態はそこまでよくはなかったけれど、一発勝負なので...。七回はもったいなかった」

◆巨人・坂本勇人内野手(29)が三回、決勝の左越えソロを放った。試合後は興奮気味に口を開いた。  「初戦が大事だった。チーム全員で戦えた。結果的にあれが本塁打になってくれてよかった」  同点の三回一死、小川が外角低めに投じたスライダーに泳がされながら、最後は左腕一本で左翼席へ運んだ。球団最多、球界全体でも歴代4位タイのCS通算7本目のアーチで、試合の流れを引き寄せた。  今季限りで退任する高橋監督と目指す下克上。3年間、勝利と世代交代をともに追いかけたが、一度も優勝に届かなかった。「(高橋監督と)1試合でも多くやりたい。その気持ちを持って戦いたい」。悔しさは、日本一になることでしか晴らせない。  頼もしい主将の一発に、高橋監督も「(同点にされて)向こうにいきかけた流れを止めてくれた」とねぎらった。3年間で8連敗していた小川からもぎ取った先勝で、由伸巨人が勢いづく。 (谷川直之)

◆セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージ(3試合制)が開幕し、レギュラーシーズン3位・巨人が同2位・ヤクルトに4-1で勝利した。五回二死から登板した上原浩治投手(43)が六回も含めて打者4人から3三振を奪うなど完璧に抑え、日本では10年ぶりの白星を飾った。43歳6カ月のCS白星でリーグ最年長記録を達成。14日の第2戦で勝てば、3年ぶりのファイナルステージ進出が決まる。  右翼席から聞こえる燕党の大歓声も、相手に渡りかけた流れも完全に封じ込めた。1点リードの五回二死二塁。先発の今村からバトンタッチを受けた上原が山田哲を伝家の宝刀、フォークボールで空振り三振に斬った。  「(山田哲に)今シーズン打たれているので、嫌な感じはしましたけど、その中で抑えることができたのでよかった」  ベテランらしい熟練の技が光った。フォークと直球を交互に使って追い込むと、カウント1-2から真ん中低めに落ちる決め球で三振を奪った。  そして、日本球界復帰後は初めての回またぎとなった六回はバレンティンを捕邪飛、雄平と大引は連続で空振り三振を奪い、打者4人から3K。魂を込めた17球で無安打無失点に抑えた。  救援陣が無失点に抑え、上原はレギュラーシーズンも含めて、日本球界復帰後の初勝利を飾った。43歳6カ月でのCS白星は、セ・リーグ最年長記録を更新した。  大舞台はめっぽう強い。若手時代から日本シリーズや、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシックで好投してきた。米移籍後も、レッドソックス時代の2013年は、リーグ優勝決定シリーズMVPに輝き、ワールドシリーズでも胴上げ投手になるなど、重圧がかかる場面で結果を残してきた。  勝ちたい理由があった。今月3日、同じ1975年4月3日生まれの高橋監督が今季限りの退任を発表した。翌4日、広島戦前のミーティングで涙をこぼしながら報告する様子を目の当たりにした。「(辞任に)思うことだらけ。僕ら選手は残り2試合を最後までやることが大事」と誓い、連勝でCS進出を勝ち取った。グラウンドを離れれば「親友」のラスト采配に報いるため、43歳はマウンドで必死に腕を振った。  「今はあと1つ勝つという気持ちしかない」と上原。14日に勝てばファイナルステージ進出が決定する。先発はエースの菅野。百戦錬磨のベテランの力投が、下克上への号砲を鳴らした。 (赤尾裕希) 上原について巨人・高橋監督 「流れを止めるために行ってもらった。場数は一番踏んでいる投手。後がないので、(采配は)シーズンと違った部分がある」 ★上原の大舞台での好投  ◆日本シリーズ 2000年の第3戦でダイエー(現ソフトバンク)を8回8安打3失点に抑えてシリーズ初登板勝利。02年の第1戦では西武を6安打1失点に抑えて完投勝利。いずれも日本一に輝いた。  ◆WBC 06年の第1回大会で、準決勝の韓国戦に先発して7回3安打無失点。2敗していた韓国を抑え、侍ジャパンを初優勝に導いた。  ◆米大リーグ レッドソックスの抑えとして、13年のア・リーグ優勝決定シリーズでタイガース相手に1勝3セーブ。日本選手初のMVPを受賞した。カージナルスと対戦したワールドシリーズでは、5試合に登板して無失点。第6戦で胴上げ投手となった。

◆負けてもともと、失うものなどない-。3位チームの強みが、攻守にわたって、もろに出た。巨人の開き直りが、ヤクルトをのみ込んだよ。  一回一死一塁で、初球から田中俊が単独スチール成功。これが先制点につながった。七回無死一塁では、陽がヒットエンドランを決めて、一走・長野が一気に生還。これほどの高橋監督の積極果敢な策は、レギュラーシーズン中、めったにみられなかった。  投手リレーでも、賭けに成功したよ。五回二死二塁で先発・今村をスパッと降板させ、上原を投入。しかもイニングまたぎで投げさせた。  ベンチの決断と思い切りのよさは、選手にも如実に伝わる。勝ち試合の雰囲気が、みるみる出てきた。数試合に1度、こういう野球を展開していれば、優勝争いにからめたのではないかな。  逆にヤクルトは、上位チームのプレッシャーで、ガチガチだった。「俺が、俺が」といわんばかりのバレンティンのむちゃ振りが、ナインにも伝染した。巨人戦に強い小川にしても、抑えるのが当たり前...とみられた分、ここで打たれたら...とリキみが出た。  クライマックスシリーズとは、そういう戦い。改めて、考えさせられることも多かったね。 (サンケイスポーツ専属評論家)